以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
図1〜図7は本発明の一実施例を示すものであり、図1は車両用ブレーキ装置の全体構成を示すブレーキ液圧系統図、図2はマスタシリンダ、液圧ブースタおよびストロークシミュレータの縦断面図、図3はマスタシリンダの拡大縦断面図、図4は液圧ブースタの拡大縦断面図、図5は図4の要部拡大図、図6はストロークシミュレータの拡大縦断面図、図7はストロークシミュレータの作用特性図である。
先ず図1において、四輪車両のブレーキ装置は、タンデム型であるマスタシリンダMと、ブレーキペダル11から入力されるブレーキ操作力に応じて液圧発生源12の液圧を調圧して前記マスタシリンダMに作用せしめる液圧制御装置としての液圧ブースタ13と、前記ブレーキペダル11および液圧ブースタ13間に介装されるストロークシミュレータ14とを備える。
図2を併せて参照して、前記マスタシリンダMおよび液圧ブースタ13に共通なケーシング15は、前端を閉じた有底円筒状の第1シリンダ体16と、内向き鍔部17aを後端に有して円筒状に形成されるとともに第1シリンダ体16の後部に同軸に結合される第2シリンダ体17と、第1および第2シリンダ体16,17間に挟持されるリング状のセパレータ18と、セパレータ18および第1シリンダ体16の後端間に挟まれる外向き鍔部19aを後端に有して第1シリンダ体16の後部に嵌入、固定される円筒状のスリーブ19とを備える。
このようなケーシング15には、その前端側から順に、第1シリンダ体16の前部内周で形成される第1シリンダ孔20と、第1シリンダ孔20よりも小径にしてスリーブ19の内周で形成される第2シリンダ孔21と、第2シリンダ孔21よりもわずかに小径にして前記セパレータ18の内周で形成される第3シリンダ孔22と、内向き鍔部17aを除く部分で第2シリンダ体17の内周で形成されて第2シリンダ孔21とほぼ同一径を有する第4シリンダ孔23と、第2シリンダ体17における内向き鍔部17aの内周で第4シリンダ孔23よりも小径に形成される第5シリンダ孔24とが、同軸に連なるようにして配設される。
図3を併せて参照して、マスタシリンダMは、倍力液圧室25に背面を臨ませるとともに後方側にばね付勢される後部マスタピストン26がケーシング15の第2シリンダ孔21に摺動可能に嵌合されるとともに、後方側にばね付勢されつつ後部マスタピストン26の前方に配置される前部マスタピストン27がケーシング15の第1シリンダ孔20に摺動可能に嵌合されて成り、後部マスタピストン26および前部マスタピストン27間には後部出力液圧室28が形成され、ケーシング15の前端部すなわち第1シリンダ体16の前端部に液密に嵌合される円盤状のシート保持部材30および前部マスタピストン27間に前部出力液圧室29が形成される。
前方側を開放した有底円筒状に形成された後部マスタピストン26と、スリーブ19との間の軸方向に間隔をあけた2箇所には環状のピストン側シール部材31およびスリーブ側シール部材32が介装されており、ピストン側シール部材31は、第2シリンダ孔21の内面に摺接するようにして後部マスタピストン26の後部外周に装着され、スリーブ側シール部材32は、後部マスタピストン26が後退限位置にあるときには後部マスタピストン26の前部外周に接触する位置でスリーブ19の内周に装着される。
一方、スリーブ19の外周および第1シリンダ体16間には環状開放室33が形成されており、この環状開放室33の軸方向両端部は、スリーブ19の前部外周に装着されて第1シリンダ体16の内周に弾発的に接触する環状のシール部材34と、スリーブ19の後部外周に装着されて第1シリンダ体16の内周に弾発的に接触する環状のシール部材35とでシールされる。しかもスリーブ19には、該スリーブ19および後部マスタピストン26間に介装される前記両シール部材31,32間に位置する複数の連通孔36…が、スリーブ19の内周および後部マスタピストン26の外周間のうち軸方向両端が前記両シール部材31,32でシールされる部分を前記環状開放室33に通じさせるようにして設けられる。
前部マスタピストン27の外周には、第1シリンダ体16の内周との間に後部環状室37を形成する環状凹部38が設けられており、後部環状室37に通じるとともに前記環状開放室33に通じる後部開放ポート39が第1シリンダ体16に設けられる。この後部開放ポート39は、図1で示すように、相互に独立してリザーバ40内に形成される第1〜第3油溜め室41,42,43のうち第2油溜め室42に連通される。
前部マスタピストン27の外周には、後部出力液圧室28および前記後部環状室37間に介在する後部リップシール44が後部出力液圧室28にブレーキ液を補充すべく後部環状室37から後部出力液圧室28側へのブレーキ液の流通を許容するようにして装着されるとともに、前部出力液圧室29および前記後部環状室37間に介在する前部リップシール45が装着される。而してスリーブ19の内周で形成される第2シリンダ孔21は、第1シリンダ孔20よりも小径であり、後部マスタピストン26の前記ピストン側シール部材31およびスリーブ側シール部材32によるシール径は、前部マスタピストン27の前記両リップシール44,45によるシール径よりも小径である。
前部マスタピストン27の後端中央部には、外周にゴムから成る環状のシート部材48が焼き付けられる弁孔形成部材49が圧入されており、この弁孔形成部材49が中央部に備える弁孔50を前記後部環状室37に通じさせる複数の連通路51…が前部マスタピストン27の後部に設けられる。
前記シート部材48に着座して前記弁孔50を塞ぎ得る円盤状の弁体52が、後部および前部マスタピストン26,27間の最大間隔を規制するようにして後部および前部マスタピストン26,27間に設けられる最大間隔規制手段53の一部を構成するロッド54の前端寄りに一体に設けられ、ロッド54の前端部は、前記シート部材48から前記弁体52が離座したときには弁孔50内をブレーキ液が流通するのを許容するようにして弁孔50に挿入される。
前記最大間隔規制手段53は、前端部を閉塞した有底円筒状に形成されて後部マスタピストン26に当接される後部リテーナ55と、後端部を閉塞した有底円筒状に形成されて前部マスタピストン27の後端に当接される前部リテーナ56と、後部および前部リテーナ55,56間に縮設されて後部マスタピストン26を後方側に付勢する後部戻しばね57と、後部リテーナ55の前端閉塞部および前部リテーナ56の後部閉塞端を移動自在に貫通する前記ロッド54とから成るものである。
ロッド54には、前記後部リテーナ55の前端閉塞部に後方から係合し得る係合鍔54aが後端に設けられるとともに、前記前部リテーナ56の後端閉塞部に前方側から係合し得る係合段部54bが前記弁体52の後方に位置するようにして設けられる。また後部リテーナ55内には、前記係合鍔54aの軸方向移動をガイドするガイド筒58が嵌合、固定される。
このような最大間隔規制手段53によれば、後部戻しばね57が発揮するばね力により後部リテーナ55が後部マスタピストン26に実質的には固定され、また後部戻しばね57が発揮するばね力により前部リテーナ56が前部マスタピストン27に実質的には固定されており、後部マスタピストン26が図3で示すように後退限位置にある状態で、係合鍔54aが後部リテーナ55の前部閉塞端に後方から係合し、係合段部54bが前部リテーナ56の後部閉塞端に前方から係合することで後部および前部マスタピストン26,27間の最大間隔が規制されることになり、この際、弁体52はシート部材48から離座して弁孔50を開放している。
しかも前部リテーナ56および弁体52間には、後部戻しばね57よりもばね荷重の小さな弁ばね59が縮設されており、後部マスタピストン26が後退限位置から前進するのに伴って弁体52は弁ばね59のばね力によりシート部材48に着座して弁孔50を閉じることになる。
第1シリンダ孔20の前端部内面およびシート保持部材30間には環状の前部環状室60が形成されており、前部環状室60に通じる前部開放ポート61が第1シリンダ体16の前部に設けられる。この前部開放ポート61は、図1で示すように、リザーバ40内に形成される第3油溜め室43に連通される。しかもシート保持部材30の外周には、前部出力液圧室29にブレーキ液を補充すべく前部環状室60から前部出力液圧室29側へのブレーキ液の流通を許容するリップシール62が、第1シリンダ体16の内周に弾発的に接触するようにして装着される。
シート保持部材30の中央部には、外周にゴムから成る環状のシート部材63が焼き付けられる弁孔形成部材64が圧入されており、この弁孔形成部材64が中央部に備える弁孔65を前記前部環状室60に通じさせる複数の連通溝66…がシート保持部材30の前面に設けられる。
前記シート部材63に着座して前記弁孔65を塞ぎ得る円盤状の弁体67が、シート保持部材30および前部マスタピストン27間の最大間隔を規制するようにしてシート保持部材30および前部マスタピストン27間に設けられる最大間隔規制手段68の一部を構成するロッド69の前端寄りに一体に設けられ、ロッド69の前端部は、前記シート部材63から前記弁体67が離座したときには弁孔65内をブレーキ液が流通するのを許容するようにして弁孔65に挿入される。
前記最大間隔規制手段68は、前端部を閉塞した有底円筒状に形成されて前部マスタピストン27に当接される後部リテーナ70と、後端部を閉塞した有底円筒状に形成されてシート保持部材30の後端に当接される前部リテーナ71と、後部および前部リテーナ70,71間に縮設されて前部マスタピストン27を後方側に向けて付勢する前部戻しばね72と、後部リテーナ70の前端閉塞部および前部リテーナ71の後部閉塞端を移動自在に貫通する前記ロッド69とから成る。
ロッド69には、前記後部リテーナ70の前端閉塞部に後方から係合し得る係合鍔69aが後端に設けられるとともに、前記前部リテーナ71の後端閉塞部に前方側から係合し得る係合段部69bが前記弁体67の後方に位置するようにして設けられる。また後部リテーナ70内には、前記係合鍔69aの軸方向移動をガイドするガイド筒73が嵌合、固定される。
このような最大間隔規制手段68によれば、前部戻しばね72が発揮するばね力により後部リテーナ70が前部マスタピストン27に実質的には固定され、また前部戻しばね72が発揮するばね力により前部リテーナ71がシート保持部材30に実質的には固定されており、前部マスタピストン27が図3で示すように後退限位置にある状態で、係合鍔69aが後部リテーナ70の前部閉塞端に後方から係合し、係合段部69bが前部リテーナ71の後部閉塞端に前方から係合することでシート保持部材30および前部マスタピストン27間の最大間隔が規制されることになり、この際、弁体67はシート部材63から離座して弁孔65を開放している。
しかも前部リテーナ71および弁体67間には、前部戻しばね72よりもばね荷重の小さな弁ばね74が縮設されており、前部マスタピストン27が後退限位置から前進するのに伴って、弁体67は弁ばね74のばね力によりシート部材63に着座して弁孔65を閉じることになる。
第1シリンダ体16には、後部マスタピストン26の前進作動に応じて高圧となる後部出力液圧室28の液圧を出力する後部出力ポート77と、前部マスタピストン27の前進作動に応じて高圧となる前部出力液液圧室29の液圧を出力する前部出力ポート78とが設けられる。しかも図1で示すように、後部出力ポート77は、第1調圧手段79Aを介して右前輪および左後輪用車輪ブレーキBA,BBに接続され、前部出力ポート78は、第2調圧手段79Bを介して左前輪および右後輪用車輪ブレーキBC,BDに接続される。
第1調圧手段79Aは、後部出力ポート77および右前輪用車輪ブレーキBA間に介設される常開型電磁弁80Aと、後部出力ポート77および左後輪用車輪ブレーキBB間に介設される常開型電磁弁80Bと、後部出力ポート77側へのブレーキ液の流通を許容して前記両常開型電磁弁80A,80Bにそれぞれ並列に接続される一方向弁81A,81Bと、右前輪用車輪ブレーキBAおよび第1リザーバ82A間に介設される常閉型電磁弁83Aと、左後輪用車輪ブレーキBBおよび第1リザーバ82A間に介設される常閉型電磁弁83Bと、第1リザーバ82Aから汲み上げたブレーキ液を後部出力ポート77側に戻す第1戻しポンプ84Aと、第1戻しポンプ84Aおよび後部出力ポート77間に設けられるオリフィス85Aとを備える。
また第2調圧手段79Bは、前部出力ポート78および左前輪用車輪ブレーキBC間に介設される常開型電磁弁80Cと、前部出力ポート78および右後輪用車輪ブレーキBD間に介設される常開型電磁弁80Dと、前部出力ポート78側へのブレーキ液の流通を許容して前記両常開型電磁弁80C,80Dにそれぞれ並列に接続される一方向弁81C,81Dと、左前輪用車輪ブレーキBCおよび第2リザーバ82B間に介設される常閉型電磁弁83Cと、右後輪用車輪ブレーキBDおよび第2リザーバ82B間に介設される常閉型電磁弁83Dと、第2リザーバ82Bから汲み上げたブレーキ液を前部出力ポート78側に戻す第2戻しポンプ84Bと、第2戻しポンプ84Bおよび前部出力ポート78間に設けられるオリフィス85Bとを備える。
第1および第2戻しポンプ84A,84Bは、単一の電動モータ86に共通に連結されており、両戻しポンプ84A,84Bは電動モータ86によって共通に作動せしめられる。
このような第1および第2調圧手段79A,79Bによれば、後部および前部出力ポート77,78から出力されるブレーキ液圧を自在に調圧することができ、ブレーキ操作時のアンチロックブレーキ制御や、非ブレーキ操作状態でのトラクション制御等を第1および第2調圧手段79A,79Bの調圧制御によって実行することができる。
図4において、液圧ブースタ13は、前面を倍力液圧室25に臨ませてケーシング15に摺動可能に収容される段付き円筒状のバックアップピストン88と、該バックアップピストン88に内蔵される制御弁手段89と、前記倍力液圧室25の液圧に基づく反力ならびにブレーキペダル11からストロークシミュレータ14を介して入力されるブレーキ操作力が釣り合うように作動して前記制御弁手段89を調圧作動せしめる制御ピストン90と、前記制御弁手段89および制御ピストン90間に介装される反力手段91とを備える。
前記バックアップピストン88は、第4シリンダ孔23に摺動可能に嵌合されるピストン主部88aと、第3シリンダ孔22を摺動可能に貫通するようにしてピストン主部88aの前端に同軸にかつ一体に連なる円筒状の押圧部88bと、ピストン主部88aの後端に同軸にかつ一体に連なって第5シリンダ孔24を摺動自在に貫通するとともにケーシング15から後方に延出される円筒状の延長筒部88cとを一体に備え、押圧部88bは、後部マスタピストン26の後端に直接当接して該後部マスタピストン26を前進側に押圧することが可能である。
しかもピストン主部88aおよび延長筒部88c間でバックアップピストン88の外周には後方側に臨む規制段部88dが形成されており、この規制段部88dがケーシング15における第2シリンダ体17の後端の内向き鍔部17aに前方側から当接することにより、ケーシング15内でのバックアップピストン88の後退限位置が規制される。
前記バックアップピストン88におけるピストン主部88aの外周には第4シリンダ孔23の内周に弾発的に摺接する環状のシール部材93,94が軸方向に間隔をあけて装着され、セパレータ18の内周には、バックアップピストン88における押圧部88bの外周に弾発的に摺接する環状のシール部材95が装着される。而して第3シリンダ孔22は、ほぼ同径である第2および第4シリンダ孔21,23よりもわずかに小径であり、前記押圧部88bは、後部マスタピストン26およびピストン主部88aのシール径よりも小径のシール径でケーシング15の第3シリンダ孔22に摺動自在に嵌合されることになる。
前記ケーシング15の第2シリンダ体17および前記バックアップピストン88間には、前記ピストン主部88aの外周に装着される一対のシール部材93,94のうち前方側のシール部材93と、セパレータ18の内周に装着されるシール部材95とで軸方向両端がシールされる環状の入力室96が形成され、この入力室96は、第2シリンダ体17に設けられた入力ポート97に連通される。
ところでバックアップピストン88の押圧部88bでマスタシリンダMにおける後部マスタピストン26を前進方向に押圧する際には、倍力液圧室25の容積が増大し、入力室96の容積が減少することになるが、倍力液圧室25の容積増大量は入力室96の容積減少量とほぼ同一に設定される。
前記入力ポート97は、図1で示すように液圧発生源12に連通される。而して液圧発生源12は、リザーバ40の第1油溜め室41からブレーキ液をくみ上げる液圧ポンプ98と、該液圧ポンプ98の吐出口に接続されるアキュムレータ99と、液圧ポンプ98の吐出口および第1油溜め室41間に設けられるリリーフ弁100と、液圧ポンプ98の作動を制御するためにアキュムレータ99の液圧を検出する液圧センサ101とを備えるものであり、常時一定に保持される高圧のブレーキ液が液圧発生源12から前記入力ポート97すなわち入力室96に供給されることになる。
ところでケーシング15内での後退限位置が規制されるバックアップピストン88および後部マスタピストン26間には、前記倍力液圧室25に収容されるばね102が縮設されており、このばね102のばね力により、バックアップピストン88および後部マスタピストン26は相互に離間する方向に付勢されることになる。
而して、非ブレーキ操作状態では、ケーシング15の前端閉塞部および後部マスタピストン26間の間隔は、最大間隔規制手段53,68の働きにより一定の最大間隔に規制されるものであり、その状態での後部マスタピストン26と、後退限位置にあるバックアップピストン88の前端との間には、後部マスタピストン26をバックアップピストン88に前方から近接対向させるようにして間隙92が形成される。而して前記ばね102のばね荷重は、後部戻しばね57および前部戻しばね72のばね荷重よりも小さく設定されるものであり、前記ばね102により、非ブレーキ操作状態で前記後部マスタピストン26およびバックアップピストン88間の間隙92が維持される。
また前記液圧発生源12の出力液圧が前記入力室96に作用するのに応じて前記バックアップピストン88には後退方向の液圧力が作用し、前記ばね102のばね力もバックアップピストン88に後退方向に作用するのであるが、前記後退方向の液圧力と、前記ばね102による後退方向のばね力との合力は、300〜1000Nに設定されることが望ましい。
ケーシング15において第2シリンダ体17、第1シリンダ体16およびスリーブ19には、前記倍力液圧室25に通じる倍力液圧入力ポート103が設けられており、この倍力液圧入力ポート103は、図1で示すように、常閉型の自動ブレーキ加圧用リニアソレノイド弁104を介して液圧発生源12に接続されるとともに、リザーバ40の第1油溜め室41に常閉型の回生協調用減圧リニアソレノイド弁105を介して接続される。すなわち倍力液圧室25および液圧発生源12間に常開型の自動ブレーキ加圧用リニアソレノイド弁104が介設され、倍力液圧室25およびリザーバ40間に常閉型の回生協調用減圧リニアソレノイド弁105が介設される。
バックアップピストン88におけるピストン主部88aおよびケーシング15の第2シリンダ体17間には、前記ピストン主部88aの外周に装着された一対のシール部材93,94で軸方向両端がシールされるようにして環状の出力室106が形成されており、該出力室106に通じる倍力液圧出力ポート107が第2シリンダ体17に設けられる。
前記倍力液圧出力ポート107は、直列に接続された常開型の自動ブレーキ減圧用リニアソレノイド弁108および常開型の回生協調用加圧リニアソレノイド弁109を介して前記倍力液圧入力ポート103に接続されており、第1の一方向弁110が、前記倍力液圧出力ポート107から前記倍力液圧入力ポート103側へのブレーキ液の流通を許容するようにして自動ブレーキ減圧用リニアソレノイド弁108に並列に接続され、第2の一方向弁111が、前記倍力液圧入力ポート103から前記倍力液圧出力ポート107側へのブレーキ液の流通を許容するようにして前記回生協調用加圧リニアソレノイド弁109に並列に接続される。
すなわち出力室106および倍力液圧室25間に、第1の一方向弁110が並列に接続された自動ブレーキ減圧用リニアソレノイド弁108が介設されるとともに、第2の一方向弁111が並列に接続された回生協調用加圧リニアソレノイド弁109が介設されることになる。
しかも倍力液圧出力ポート107および自動ブレーキ減圧用リニアソレノイド弁108間にはブレーキ操作量検出用液圧センサ112が接続され、回生協調用加圧リニアソレノイド弁109および倍力液圧入力ポート103間に自動ブレーキフィードバック制御用液圧センサ113が接続される。
図5を併せて参照して、制御弁手段89は、第1の開閉弁としての増圧弁116および第2の開閉弁としての減圧弁117で構成されるものであり、液圧発生源12の出力液圧低下時には前記入力室96および前記出力室106間を連通させるとともに前記出力室106をリザーバ40の第1油溜め室41に連通させることを可能としてバックアップピストン88のピストン主部88aに内蔵される。
バックアップピストン88のピストン主部88aには、段付円筒状のハウジング主体119と、該ハウジング主体119の前端に液密に嵌合、固定される端壁部材120とから成る弁ハウジング118が同軸に嵌合、固定される。前記ピストン主部88aの内面には、マスタシリンダM側に臨む環状の段部121が設けられており、前記弁ハウジング118は、段部121に当接するまで前記ピストン主部88aに前方から嵌合され、段部121との間に弁ハウジング118を挟持する円盤状の押さえ部材122が、バックアップピストン88のピストン主部88aに螺合される。而して倍力液圧室25に収納されるばね102はマスタシリンダMの後部マスタピストン26および前記押さえ部材122間に縮設される。
前記弁ハウジング118よりも後方でバックアップピストン88におけるピストン主部88aには、半径方向内方に張り出す内向き鍔部88eが一体に設けられており、第4シリンダ孔23と同軸の挿通孔123が前記内向き鍔部88eの内周で形成され、弾性部材によりリング板状に形成されるシート部材132が、内向き鍔部88eに前方側から当接される。また内向き鍔部88eおよび弁ハウジング118間で前記ピストン主部88aの内面には、軸方向に間隔をあけて一対の規制段部124,125が設けられる。
反力手段91は、第1反力ピストン126と、第1反力ピストン126を軸方向相対摺動可能に嵌合せしめる段付き円筒状の第2反力ピストン127とから成り、第2反力ピストン127は、前記両規制段部124,125の少なくとも一方で後退限が規制されるようにして前記ピストン主部88aに摺動可能に嵌合され、第1反力ピストン126の外周には第2反力ピストン127の内周に摺接する環状のシール部材128が装着され、第2反力ピストン127の外周にはピストン主部88aの内周に摺接する環状のシール部材129が装着される。
弁ハウジング118よりも後方でバックアップピストン88のピストン主部88a内には、前記第1および第2反力ピストン126,127の前端を臨ませる制御側液室130が形成されており、この制御側液室130は、前記ピストン主部88aに設けられた複数の連通孔131…を介して出力室106に連通する。而して出力室106は、常開型の自動ブレーキ減圧用リニアソレノイド弁108および常開型の回生協調用加圧リニアソレノイド109を介して倍力液圧室25に接続されるものであり、通常ブレーキ時には、制御側液室130の液圧は倍力液圧室25の液圧に等しく、したがって第1および第2反力ピストン126,127の前端には倍力液圧室25の液圧が作用することになる。
図6を併せて参照して、制御ピストン90は、前端に端壁90aを有した段付きの有底円筒状に形成されるものであり、バックアップピストン88の延長筒部88cおよびピストン主部88aの後部に相対摺動可能に嵌合される。しかもバックアップピストン88の延長筒部88cの後端部内面には止め輪133が装着されており、制御ピストン90の後端が該止め輪133に当接することにより、制御ピストン90のバックアップピストン88からの離脱が阻止される。
第1反力ピストン126は、前記挿通孔123を貫通して後方に延びる延長筒部126aを同軸にかつ一体に有しており、この延長筒部126aの後端は、前記制御ピストン90の前端の端壁90aに常時当接され、制御側液室130には、第1反力ピストン126の後端すなわち前記延長筒部126aの後端を制御ピストン90の端壁90aに接触させるようにばね付勢するばね力を発揮して弁ハウジング118および第1反力ピストン126の前端間に縮設されるばね140が収容され、このばね140のばね力はごく弱く設定される。
また第2反力ピストン127には、第1反力ピストン126の延長筒部126aを同軸に囲繞して前記挿通孔123に挿通される延長筒部127aが同軸にかつ一体に設けられており、第2反力ピストン127が、前記両規制段部124,125の少なくとも一方に当接して後退限位置にある状態で、第2反力ピストン127における延長筒部27aの後端は、バックアップピストン88の内向き鍔部88eに当接しているシート部材132よりも後方にあるものの、第1反力ピストン126における延長筒部126aの後端よりも前方に配置される。
したがってバックアップピストン88に対する制御ピストン90の前進作動時に、第1反力ピストン126は制御ピストン90とともに前進し、第2反力ピストン127の後端は、制御ピストン90の前進移動量が所定値以上となったときに制御ピストン90の前端の端壁90aに当接することになる。
前記制御ピストン90の前部外周にはバックアップピストン88におけるピストン主部88aの後部内周に弾発的に接触する環状のシール部材134が装着されており、前記ピストン主部88a内の後部には、前記シール部材134によって外部との間がシールされる解放室135が、制御ピストン90の前端を臨ませるようにして形成される。一方、ケーシング15における第2シリンダ体17には、リザーバ40における第1油溜め室41に通じる解放ポート136ならびに解放ポート136に通じる解放通路137が設けられるとともに、第4シリンダ孔23の内面に開口する環状凹部138が前記解放通路137に通じるようにして設けられる。しかもバックアップピストン88には、前記解放室135を前記環状凹部138に常時連通させる複数の連通孔139…が設けられており、前記環状凹部138の前方でバックアップピストン88の外周に装着された環状のシール部材94と、第5シリンダ孔24の内面に装着されてバックアップピストン88における延長筒部88cの外周に摺接する環状のシール部材141とで、前記環状凹部138が前後からシールされる。このようにして解放室135はリザーバ40の第1油溜め室41に常時連通される。
弁ハウジング118におけるハウジング主体119には、制御側液室130内で後方に延びる円筒状のガイド筒119aが一体に設けられるとともに、そのガイド筒119aの前端から半径方向内方に張出す内向き鍔部119bが一体に設けられており、弁ハウジング118内において、前記内向き鍔部119bおよび端壁部材120間には、入力側液室143が形成される。また弁ハウジング118におけるハウジング主体119の外周には環状凹部144が設けられており、ハウジング主体119には前記入力側液室143を環状凹部144に通じさせる複数の連通孔145…が設けられる。またバックアップピストン88のピストン主部88aには、前記環状凹部144に内端を通じさせるようにして第2シリンダ体17の半径方向に延びる複数の連通路146…が、外端を入力室96に通じさせるようにして設けられており、前記入力側液室143は液圧発生源12に通じることになる。しかも弁ハウジング118におけるハウジング主体119の外周には、前記環状凹部144を相互間に挟む一対の環状であるシール部材147,148が、前記ピストン主部88aの内周に弾発的に接触するようにして装着される。
増圧弁116は、前記弁ハウジング118における内向き鍔部119bの内周部で形成されて入力側液室143側に臨む増圧用弁座150と、該増圧用弁座150に着座することを可能として入力側液室143に収容される第1弁体としてのポペット型の増圧用弁体151とで構成される。ハウジング主体119の内向き鍔部119bの内周面は、入力側液室143および制御側液室130間を連通し得る増圧用流路152を形成するものであり、この増圧用流路152の前端は前記増圧用弁座150の中央部に開口する。また増圧用弁体151は、弁ハウジング118との間に縮設される増圧用弁ばね153によって後方側すなわち増圧用弁座150に着座する方向にばね付勢される。
増圧用弁体151には、弁ハウジング118における端壁部材120の中央部を液密にかつ軸方向移動可能に貫通するロッド部151aが一体に設けられており、このロッド部151aの前端は、前記端壁部材120および押さえ部材122間に形成される液圧室154に臨む。また押さえ部材122には、前記液圧室154を倍力液圧室25に通じさせる連通孔155が設けられており、増圧用弁体151の前端には倍力液圧室25の液圧が後方に向けて作用することになる。しかも倍力液圧室25の液圧を受ける前記増圧用弁体151の前端受圧面積と、該増圧用弁体151が増圧用弁座150に着座したときのシール面積とはほぼ等しく設定される。すなわちロッド部151aの直径と、増圧用弁体151の増圧用弁座150への着座部の直径とがほぼ等しくなるように設定される。
第1反力ピストン126における延長筒部126a内には、後端が制御ピストン90の前端で閉塞される解放側液室157が形成されており、第1反力ピストン126には、前記制御側液室130に臨む減圧用弁座158と、制御側液室130に通じ得る前端を前記減圧用弁座158の中央部に開口させるとともに後端を解放側液室157に開口させた減圧用流路159とが同軸に設けられる。
減圧弁117は、前記減圧用弁座158と、後端を前記弁座158に着座させることを可能として第1反力ピストン126の前方で制御側液室130に収容されるとともに後退限を規制されつつ後方にばね付勢される第2弁体としてのポペット型の減圧用弁体160とで構成され、減圧用弁体160は増圧用流路152と同軸上を往復作動可能であり、減圧用弁ばね161により減圧用弁座158に着座する方向にばね付勢される。
制御側液室130内に収容される前記減圧用弁体160は弁ハウジング118のガイド筒119aに軸方向スライド可能に保持され、ガイド筒119aの後端部には、前記減圧用弁体160に後方から当接して該減圧用弁体160の後退限を規制する止め輪162が装着される。
しかも減圧用弁体160には、前記増圧用流路152に挿通可能として前方に延びるロッド部160aが支軸としても機能すべく同軸にかつ一体に設けられており、このロッド部160aの先端は、増圧弁116における増圧用弁体151に当接し、前記増圧用弁ばね153のばね力に抗して増圧用弁座150から離座する方向すなわち開弁方向に押圧することが可能である。
また第1反力ピストン126の延長筒部126aには、解放側液室157に通じる解放孔163が前記延長筒部126aの外面に開口するようにして設けられており、解放側液室157は、前記解放孔163ならびに第1および第2反力ピストン126,127の延長筒部126a,127a間の間隙を経て解放室135に連通している。
ところで増圧弁116の開弁時に、液圧発生源12に通じている前記入力側液室143内のブレーキ液は増圧用流路152から制御側液室130に流入することになるが、そのブレーキ液流入量は、前記増圧用流路152および制御側液室130間の液圧差に応じて前記増圧用流路152の制御側液室130への開口面積を変化させる流量制御弁165によって制御される。
前記流量制御弁165は、弁ハウジング118における内向き鍔部119bの内周部に制御側液室130側から着座して増圧用流路152を閉鎖し得るようにしてガイド筒119aに収容される弁体164を備え、該弁体164を内向き鍔部119bの内周部に着座せしめる側にばね付勢するとともに減圧用弁体160を減圧用弁座158に着座せしめる側にばね付勢する減圧用弁ばね161が、前記弁体164および減圧用弁体160間に縮設される。しかも前記弁体164は、増圧用流路152と同軸にして減圧用弁体160に一体に設けられるロッド部160aに摺動可能に支持される。
また減圧弁117の開弁時に、制御側液圧室130内のブレーキ液は減圧用流路159から解放側液室157に流出することになるが、そのブレーキ液流出量は、前記減圧用流路159および解放側液室157間の液圧差に応じて前記減圧用流路159の解放側液室157への開口面積を変化させる流量制御弁168によって制御される。
この流量制御弁168は、解放側液室157に臨む部分で第1反力ピストン126の後部に着座して減圧用流路159を閉鎖し得るようにして第1反力ピストン126の延長筒部126aに収容される弁体169を備える。また延長筒部126a内には、制御ピストン90の前端に当接する支持部材170が収容されており、前記弁体169を第1反力ピストン126の後部に着座せしめる側にばね付勢する弁ばね171が、前記弁体169および支持部材170間に縮設される。しかも前記弁体169は、減圧用流路159と同軸にして支持部材170に一体に設けられる支軸170aに摺動可能に支持される。
このような液圧ブースタ13では、ブレーキペダル11からのブレーキ操作入力がストロークシミュレータ14を介して制御ピストン90に入力され、制御ピストン90から反力手段91に前方に向けての押圧力が作用する。而してバックアップピストン88に対する制御ピストン90の前進方向の移動量が所定値未満の状態では、制御ピストン90には第1反力ピストン126が当接しており、第1反力ピストン126の前進に応じて減圧用弁座158に減圧用弁体160が着座することで減圧弁117が閉弁して制御側液室130およびリザーバ40間が遮断され、制御ピストン90、第1反力ピストン126および減圧用弁体160がさらに前進することで、減圧用弁体160のロッド部160aで押される増圧用弁体151が増圧用弁座150から離座することにより増圧弁116が開弁して液圧発生源12の出力液圧が制御側液室130に作用する。また減圧弁117の閉弁状態では第1反力ピストン126の前部に制御側液室130および倍力液圧室25の液圧が作用しており、ブレーキペダル11からのブレーキ操作入力と、制御側液室130の液圧に基づく液圧力とが釣り合うように第1反力ピストン126および制御ピストン90が後退することで減圧弁117が開弁するとともに増圧弁116が閉弁し、そのような増圧弁116および減圧弁117の開閉を繰り返すことで、液圧発生源12の出力液圧がブレーキペダル11からのブレーキ操作入力に応じた倍力液圧に調圧されて制御側液室130すなわち倍力液圧室25に作用することになる。またバックアップピストン88に対する制御ピストン90の前進方向の移動量が所定値以上になると、制御ピストン90には第1反力ピストン126だけでなく第2反力ピストン127も当接することになり、制御側液室130の液圧によって第2反力ピストン127を後方に向けて押圧する液圧力も反力として加わるので、制御ピストン90に作用する反力は大きくなる。
ストロークシミュレータ14は、制御ピストン90に軸方向スライド可能に収容される入力ピストン174と、該入力ピストン174および前記制御ピストン90間に直列に介装される弾性体175およびコイルばね176と、入力ピストン174に連動して制御ピストン90に軸方向摺動可能に嵌合されるシミュレータピストン177とを備えて制御ピストン90とともにバックアップピストン88に内蔵され、しかもストロークシミュレータ14は、制御ピストン90に内蔵される。
入力ピストン174は、制御ピストン90の後端部に装着される止め輪178によって後退限位置が規制されるようにして、制御ピストン90の後部に摺動可能に嵌合され、ブレーキペダル11に連なる入力ロッド179の前端部が入力ピストン174に首振り可能に連接される。すなわち入力ピストン174には、ブレーキペダル11の操作に応じたブレーキ操作力が入力ロッド179を介して入力され、そのブレーキ操作力の入力に応じて入力ピストン179は前進作動する。しかも入力ピストン174の外周には、制御ピストン90の内周に摺接する環状のシール部材184が装着される。
弾性体175は、ゴム等の弾性材料によって筒状に形成されるものであり、この弾性体175と、弾性体175よりもばね荷重を小さく設定した金属製のコイルばね176とは、入力ピストン174および前記制御ピストン90間にシミュレータピストン177を介して直列に介装され、シミュレータピストン177は、制御ピストン90に摺動可能に嵌合される円盤部177aと、コイルばね176内に延びるようにして前記円盤部177aに一体に連設される有底円筒部177bとを有する。
入力ピストン174の中央部には、ガイド軸180の後部が同軸に圧入、固定されており、このガイド軸180の前部は、前記シミュレータピストン177における円盤部177aの中央部を軸方向移動可能に貫通し、該シミュレータピストン177における有底円筒部177bに摺動可能に嵌合される。
弾性体175は、ガイド軸180を嵌合せしめることで内周側に撓むことを規制された状態でシミュレータピストン177の円盤部177aおよび入力ピストン174間に介装されており、入力ピストン174の前進動作に伴う軸方向圧縮力の作用に応じて拡径するように撓むことで制御ピストン90の内周に弾発的に接触することが可能である。
コイルばね176は、前記シミュレータピストン177の円盤部177aおよび制御ピストン90の前端閉塞部との間に設けられるものであり、入力ピストン174が後退限にある状態で前記コイルばね176は外力を加えない自然な状態からわずかに収縮した状態にある。すなわち弾性体175は、コイルばね176からの荷重が予め作用した状態にある。
またシミュレータピストン177における有底円筒部177bの前端閉塞部には、ガイド軸180の前進、後退に応じて有底円筒部177b内の加、減圧が生じることがないようにするための透孔181が設けられる。
ところで、シミュレータピストン177と、制御ピストン90の前端の端壁90aとの間にはストローク液室182が形成されており、バックアップピストン88に対して制御ピストン90が前進限まで前進したとき、すなわちシート部材132に前記端壁90aを当接させるまで制御ピストン90が前進したときに前記シート部材132で閉塞される複数のポート183…が、制御ピストン90の端壁90aに設けられ、これらのポート183…は、バックアップピストン88に対する前進限から制御ピストン90が後退したときに開放し、前記ストローク液室182を解放室135すなわちリザーバ40に連通させる。
次にこの実施例の作用について説明すると、タンデム型のマスタシリンダMは、倍力液圧室25に背面を臨ませた後部マスタピストン26と、該後部マスタピストン26との間に後部出力液圧室28を形成するとともに前面を前部出力液圧室29に臨ませた前部マスタピストン27とがケーシング15に摺動可能に収容されて成り、前記ケーシング15には、倍力液圧室25に前面を臨ませつつ後退限を規制されるバックアップピストン88が、倍力液圧室25の液圧低下時にはブレーキペダル11の操作に応じて後部マスタピストン26を後方から直接押圧し得るようにして摺動可能に嵌合され、前記倍力液圧室25の液圧は、液圧発生源12の出力液圧がブレーキペダル11のブレーキ操作に応じた液圧ブースタ13の作動によってブレーキ操作入力に対応した倍力液圧に調圧されるものであり、後部マスタピストン26のケーシング15へのシール径が、前部マスタピストン27のケーシング17へのシール径よりも小径に設定されている。
したがって後部マスタピストン26のストロークに対する後部出力液圧室28の容積変化量を比較的大きく設定することが可能であり、倍力液圧室25の液圧低下時に、バックアップピストン88で後部マスタピストン26を直接押圧する際に、ブレーキペダル11の操作量すなわちバックアップピストン88および後部マスタピストン26のストロークに対する後部出力液圧室28の液圧変化量を比較的大きくし、ブレーキ効力を高めることができる。
またバックアップピストン88は、後部マスタピストン26のシール径とほぼ同一のシール径でケーシング15に摺動自在に嵌合されるピストン主部88aと、後部マスタピストン26およびピストン主部88aのシール径よりも小径のシール径でケーシング15に摺動自在に嵌合されるとともに後部マスタピストン26の後端に当接して押圧することを可能としてピストン主部88aの前端に同軸に連なる押圧部88bとを備えるものであり、ピストン主部88aおよび押圧部88bとケーシング15との間にそれぞれ介装されるシール部材93,95で軸方向両端がシールされる環状の入力室96が液圧発生源12に通じるようにしてバックアップピストン88およびケーシング15間に形成され、液圧発生源12の出力液圧低下時には入力室96と倍力液圧室25に接続される出力室106との間を連通させるとともに出力室106をリザーバ40に連通させるようにして前記入力室96および出力室106間に介在して液圧ブースタ13の一部を構成する制御弁手段89が、バックアップピストン88に内蔵され、押圧部88bで後部マスタピストン26を前進方向に押圧する際の倍力液圧室25の容積増大量が入力室96の容積減少量とほぼ同一に設定されている。
したがって入力室96の液圧すなわち液圧発生源12の液圧が低下すると、バックアップピストン88を後退限側に押しつける液圧力が低下するので、ブレーキペダル11の操作に応じてバックアップピストン88を前進させることができ、バックアップピストン88の前部の押圧部88bを、ケーシング15への後部マスタピストン26の摺接部内面との間に隙間を持たせつつ後部マスタピストン26に当接させ、後部マスタピストン26を前進させることにより、マスタシリンダMから倍力されたブレーキ液圧を出力することが可能となる。このようなバックアップピストン88および後部マスタピストン26の前進時に、バックアップピストン88のピストン主部88aおよび後部マスタピストン26のシール径はほぼ同一であり、バックアップピストン88が備える押圧部88bで後部マスタピストン26を前進方向に押圧する際の倍力液圧室25の容積増大量が入力室96の容積減少量とほぼ同一に設定されており、倍力液圧室25および入力室96間は制御弁手段89を介して連通しているので、バックアップピストン88および後部マスタピストン26の前進時に倍力液圧室25の液圧が増圧されることはない。すなわち部品点数を低減した単純な構成で、バックアップピストン88の前進時に倍力液圧室25の液圧が増大することを回避することができる。
またケーシング15内での後退限位置が規制されるバックアップピストン88および後部マスタピストン26間に、それらのピストン88,26を離間させる方向に付勢するばね102が設けられるので、液圧発生源12の液圧低下に応じて、ブレーキペダル11によりバックアップピストン88を前進させる際に、無効ストロークを確保することができる。
しかも液圧発生源12の出力液圧が入力室96に作用するのに応じてバックアップピストン88に作用する後退方向の液圧力と、前記ばね102によってバックアップピストン88を後退方向に付勢するばね付勢力との合力が、300〜1000Nに設定されているので、液圧発生源12が正常に作動している状態では、バックアップピストン88を後退限位置に安定的に保持することができる。すなわちバックアップピストン88を後退方向に付勢する力が300N以上であることにより、液圧発生源12の出力液圧およびバックアップピストン88の摺動抵抗を考慮した上でバックアップピストン88を確実に後退方向に付勢することが可能であり、またバックアップピストン88を後退方向に付勢する力を1000N以下とすることにより、マスタシリンダMの後部マスタピストン26を押し込んでしまうことがないようにすることができる。
ところで、液圧発生源12および倍力液圧室25間には、常閉型の自動ブレーキ加圧用リニアソレノイド弁104が介設され、出力室106および倍力液圧室25間には、常開型の自動ブレーキ減圧用リニアソレノイド弁108と、出力室106から倍力液圧室25側へのブレーキ液の流通を許容するようにして自動ブレーキ減圧用リニアソレノイド弁108に並列に接続される第1の一方向弁110とが介設されており、ブレーキペダル11の非操作時、すなわち制御弁手段89の非作動時にも、自動ブレーキ加圧用リニアソレノイド弁104および自動ブレーキ減圧用リニアソレノイド弁108を開閉制御して倍力液圧室25の液圧を調圧することにより、非ブレーキ操作状態で車輪ブレーキBA〜BDにブレーキ液圧を作用せしめるようにした自動ブレーキ制御を行うことができる。しかも自動ブレーキ時に自動ブレーキ減圧用リニアソレノイド弁108が閉弁している状態でブレーキペダル11を操作することで制御弁手段89が作動して、倍力液圧室25の液圧よりも高い液圧が出力室106に生じたときには、第1の一方向弁110を介して出力室106の液圧を倍力液圧室25に作用せしめることができ、通常のブレーキ操作時と同様にマスタシリンダMを作動せしめることができる。
また倍力液圧室25およびリザーバ40間に、常閉型の回生協調用減圧リニアソレノイド弁105が介設され、出力室106および倍力液圧室25間には、常開型の回生協調用加圧リニアソレノイド弁109と、倍力液圧室25から出力室106側へのブレーキ液の流通を許容するようにして回生協調用加圧リニアソレノイド弁109に並列に接続される第2の一方向弁111とが介設されているので、ブレーキ操作状態での回生時に、回生協調用加圧リニアソレノイド弁109および回生協調用減圧リニアソレノイド弁105を開閉制御して倍力液圧室25の液圧を調圧することにより、通常のブレーキ時とはオフセットした状態のブレーキ液圧をマスタシリンダMから出力することができ、回生協調用加圧リニアソレノイド弁109の閉弁時にブレーキペダル11を戻したときには、第2の一方向弁111を介して倍力液圧室25の液圧をリザーバ40側に逃がすことが可能となる。
またケーシング15は、前部マスタピストン27を摺動自在に嵌合させる第1シリンダ体16と、後部マスタピストン26を摺動可能に嵌合させるようにして第1シリンダ体16内に嵌入、固定されるとともにリザーバ40に通じる環状開放室33を第1シリンダ体16との間に形成する円筒状のスリーブ19とを備えるものであり、スリーブ19に摺動可能に嵌合される後部マスタピストン26およびスリーブ19間の軸方向に間隔をあけた2箇所に、環状のピストン側シール部材31およびスリーブ側シール部材32が介装され、後部マスタピストン26の外周およびスリーブ19の内周間のうち前記両シール部材31,32で軸方向両端がシールされる部分を環状開放室33に通じさせる連通孔36がスリーブ19に設けられている。
このため、ケーシング15の一部を構成するスリーブ19および後部マスタピストン26間に介装される一対の前記シール部材31,32のうち倍力液圧室25側にあるピストン側シール部材31がシール機能を発揮し得なくなった場合には、倍力液圧室25のブレーキ液が後部マスタピストン26およびスリーブ19間、連通孔36および環状開放室33を経てリザーバ40に戻されることになり、この際、倍力液圧室25の液圧低下に応じてバックアップピストン88が後部マスタピストン26を直接押圧するので、倍力液圧を得ることはできなくなるが、タンデム型のマスタシリンダMに接続される2系統のブレーキ液圧系統で車輪ブレーキBA〜BDをブレーキ作動せしめるようになる。
また両シール部材31,32のうち後部出力液圧室28側にあるスリーブ側シール部材32がシール機能を発揮し得なくなった場合には、後部出力液圧室28のブレーキ液が後部マスタピストン26およびスリーブ19間、連通孔36および環状開放室33を経てリザーバ40に戻されることになり、この際、後部出力液圧室28に連なるブレーキ液圧系統の車輪ブレーキBA,BBではブレーキ液圧を得ることはできなくなるが、倍力液圧室25の液圧が後部マスタピストン26に作用するのに応じて前部マスタピストン27を倍力作動せしめ、前部出力液圧室29に連なるブレーキ液圧系統で倍力されたブレーキ液圧を車輪ブレーキBC,BDに作用せしめることができる。
すなわちスリーブ19および後部マスタピストン26間に介装される一対のシール部材31,32の一方がシール機能を発揮しなくなった場合には、各車輪ブレーキBA〜BDの作動状態が変化するので、両シール部材31,32のどちらが損傷したかを明確に検知することが可能となる。
また両シール部材31,32の一方であるピストン側シール部材31は、後部マスタピストン26の後部外周に装着され、両シール部材31,32の他方であるスリーブ側シール部材32は、後退限にある後部マスタピストン26の前部外周に接触するようにしてスリーブ19の内周に装着されるので、後部マスタピストン26のストロークにかかわらず、スリーブ19の軸方向長さすなわちケーシング15の軸方向長さが延びるのを回避しつつ、後部マスタピストン26およびスリーブ19間に一対のシール部材31,32を介装することができる。
さらに後部マスタピストン26は、非ブレーキ操作状態において、最大間隔規制手段53,68の働きによりケーシング15の前端閉塞部との間の間隔を一定の最大間隔に規制されつつ後部戻しばね57で後方側に向けて付勢されており、その状態での後部マスタピストン26の後端と、後退限位置にあるバックアップピストン88の前端との間には、後部マスタピストン26をバックアップピストン88に前方から近接対向させるようにして間隙92が形成されている。このような間隙92で、マスタシリンダM側およびバックアップピストン88側の軸方向公差を吸収することができ、後部マスタピストン26を後方側に付勢する後部戻しばね57をそのセット荷重以上のばね荷重となるように圧縮することを回避し、ブレーキペダル11の無効ストロークが増大することを回避することができる。
しかもバックアップピストン88および後部マスタピストン26間には、後部戻しばね57よりもばね荷重の小さなばね102が、後部マスタピストン26を前方側に付勢するようにして縮設されるので、ブレーキペダル11の非操作状態で、後部および前部マスタピストン26,27がバックアップピストン88に当接する側に移動しないようにして後部マスタピストン26およびバックアップピストン88間の間隙92を維持することができる。
液圧ブースタ13は、前記バックアップピストン88と、該バックアップピストン88に内蔵される前記制御弁手段89と、倍力液圧室25の液圧に基づく反力ならびにブレーキペダル11からストロークシミュレータ14を介して入力されるブレーキ操作力が釣り合うように作動して制御弁手段89を調圧作動せしめる制御ピストン90と、前記制御弁手段89および制御ピストン90間に介装される反力手段91とを備えるものであり、制御弁手段89は、制御ピストン90の前進時に開弁するとともに制御ピストン90の後退時に閉弁するようにして倍力液圧室25に接続された制御側液室130および液圧発生源12間に介設される増圧弁116と、制御ピストン90の前進時に閉弁するとともに制御ピストン90の後退時に開弁するようにして制御側液室130およびリザーバ40間に介設される減圧弁117とで構成される。しかも制御ピストン90がバックアップピストン88に相対摺動可能に嵌合され、該バックアップピストン88内に形成される制御側液室130に前端を臨ませて反力手段91を構成する第1および第2反力ピストン126,127のうち第1反力ピストン126の後端に制御ピストン90が同軸に連接され、反力手段91の前方でバックアップピストン88内には弁ハウジング118が嵌合、固定され、減圧弁117は、第1反力ピストン126の前端部に設けられる減圧用弁座158と、後退限を規制されつつ後方にばね付勢されて弁ハウジング118に収容されるポペット型の減圧用弁体160とで構成され、増圧弁116は、減圧用弁体160が備えるロッド部160aを挿通させ得るようにして制御側液室130に連通する増圧用流路152を形成して弁ハウジング118に設けられる増圧用弁座150と、前記ロッド部160aによって前方に押されることを可能として弁ハウジング118内に収容されるとともに後方側にばね付勢されるポペット型の増圧用弁体151とで構成される。
したがってケーシング15に摺動可能に収容されるバックアップピストン88に、制御ピストン90、反力手段91、減圧弁116および増圧弁117で構成される制御弁手段89を予め組み込んでおくことが可能であり、制御ピストン90、反力手段91、制御弁手段89のケーシング15への組付けが容易となる。
しかも増圧用弁体151が増圧用弁座150に着座したときのシール面積と、倍力液圧室25の液圧を受ける増圧用弁体151の前端受圧面積がほぼ等しく設定されるので、増圧弁116が備えるポペット型の増圧用弁体151の両端に作用する液圧力はほぼ等しく、減圧弁117が備える減圧用弁体160のロッド部160aから増圧用弁体151に作用する開弁方向の力と、増圧用弁体151を後方に付勢するばね力とが釣り合うように増圧用弁体151が作動するので、増圧弁116の作動性を向上せしめることができる。また増圧用弁体151を後方に付勢するばね付勢力は増圧用弁体151を減圧用弁体160に追随させるだけの弱いばね力であればよく、また減圧用弁体160を後方に付勢するばね付勢力も減圧用弁体160を反力手段91に追随させるだけの弱いばね力であればよいので、反力手段91に作用するばね力はごく弱いものとなり、反力手段91に作用する反力のほとんどを倍力液圧室25の液圧に基づくものとして反力フィーリングの向上を図ることができる。
また弁ハウジング118は、前方に臨んでバックアップピストン88に設けられる段部121と、バックアップピストン88に螺合される押さえ部材122との間に挟持されるようにしてバックアップピストン88に嵌合、固定され、押さえ部材122には、増圧用弁体151が備えるロッド部151aの前端を臨ませるようにして該押さえ部材122および弁ハウジング118間に形成される液圧室154を倍力液圧室25に通じさせる連通孔155が設けられるので、増圧用弁体151の前端に倍力液圧室25の液圧を作用せしめる液圧路を簡単に構成することができる。
ところで、液圧ブースタ13は、上述のように倍力液圧室25の液圧低下時にはブレーキペダル11の操作に応じて後部マスタピストン26を直接押圧し得るバックアップピストン88を含むものであり、制御ピストン90およびストロークシミュレータ14が、バックアップピストン88に内蔵されるので、制御ピストン90に連接されるようにしてストロークシミュレータ14をバックアップピストン88に組み込んだ状態で、液圧ブースタ13をケーシング15に組付ければよいので組付け作業性を向上せしめることができる。
しかもストロークシミュレータ14が制御ピストン90に内蔵されるので、液圧ブースタ13およびストロークシミュレータ14の軸方向全体長さを抑えるとともに、ストロークシミュレータ14の作動不良が生じても、ブレーキペダル11からストロークシミュレータ14を介して制御ピストン90にブレーキ操作力を入力可能である。
また制御ピストン90は前端に端壁90aを有して有底円筒状に形成され、ストロークシミュレータ14は、ブレーキペダル11に連なる入力ピストン174と、制御ピストン90の端壁90aとの間にストローク液室182を形成して制御ピストン90に摺動可能に嵌合されるとともに入力ピストン174に連動、連結されるシミュレータピストン177と、入力ピストン174および制御ピストン90間に設けられる弾性体175およびコイルばね176とを備え、バックアップピストン88に対する制御ピストン90の前進方向の移動量が所定値を超えるのに応じてシート部材132で閉塞されるポート183…が、開放時にはストローク液室182をリザーバ40に通じさせるようにして制御ピストン90の端壁90aに設けられている。
したがってバックアップピストン88に対する制御ピストン90の前進方向の移動量が所定値を超えるのに応じて制御ピストン90のポート183…が閉じられると、ストローク液室182が密閉状態となって制御ピストン90に対するシミュレータピストン177の前進方向の移動が規制されるので、シミュレータピストン177の前進方向移動端を規制するために強度を有する規制部を設けることなく、制御ピストン90に対するシミュレータピストン177の前進方向の移動端を容易に規制することができる、液圧発生源12の失陥時にはストロークシミュレータ14により無効となるブレーキペダル11のストロークおよび反力の増大を抑えることができる。
さらにブレーキペダル11から入力ピストン174に作用するブレーキ操作力は、シミュレータピストン177を介して直列に接続される弾性体175およびコイルばね176を介して制御ピストン90に伝達されるものであり、コイルばね176のばね定数は弾性体175のばね定数よりも小さく設定されている。したがって図7で示すように、ブレーキ操作荷重が小さい領域ではコイルばね176が発揮するばね力に対抗してブレーキペダル11を踏み込むので、ブレーキペダル11の操作ストローク量の変化に対する操作荷重の変化は緩やかとなり、次いでブレーキ操作荷重が大きくなると、弾性体175が発揮するばね力に対抗してブレーキペダル1を踏み込むのでブレーキペダル11の操作ストローク量の変化に対する操作荷重の変化は比較的大きく変化することになる。
しかも弾性体175は、入力ピストン174の前進動作に伴う軸方向圧縮力の作用に応じて拡径するように撓むことで制御ピストン90の内周に弾発的に接触するようにして筒状に形成されるものであるので、ブレーキペダル11の踏み込み時には、弾性体175の弾発力ならびに弾性体175および制御ピストン90間に生じる摩擦力の和に打ち勝つ操作力でブレーキペダル11を操作する必要があるのに対し、ブレーキ操作力を緩めるときには、弾性体175が制御ピストン90の内周に摺接している間は前記摩擦力がブレーキペダル11にその戻し方向とは逆方向に作用するので、ストロークシミュレータ14でのブレーキ操作ストロークおよび操作荷重の関係でのヒステリシス幅を、図7で示すように大きくすることができ、ドライバの操作負担を軽減することができる。
さらに弾性体175には、コイルばね176からの荷重が予め作用した状態にあるので、弾性体175にへたりが生じたとしても、コイルばね176でそのへたりを吸収するようにして、通常ブレーキ時の無効ストローク感をなくし、弾性体175のへたりには関係なく、コイルばね176および弾性体175による2段階の操作シミュレート特性を得ることができる。
反力手段91は、後端を制御ピストン90の前端閉塞部に常時当接させる第1反力ピストン126と、バックアップピストン88に対する制御ピストン90の前進時に該制御ピストン90の前進移動量が所定値以上となるのに応じて後端を制御ピストン90の前端閉塞部に当接させる第2反力ピストン127とが、それらの前端に倍力液圧室25の液圧を作用させるようにしつつ前記液圧ブースタの一部を構成するようにしてバックアップピストン88に相対摺動可能に装着されて成るものであり、液圧発生源12の非失陥状態であって倍力液圧室25の液圧が低いときに、ブレーキペダル11からスパイク入力があっても、制御ピストン90の端壁90aに設けられたポート183…が閉鎖される前に、制御ピストン90には第1および第2反力ピストン126,127の後端が当接し、制御ピストン90に作用する反力が大きくなるので、前記ポート183…が閉鎖されることがないようにして、ストロークシミュレータ14が誤ってロック状態とならないようにして、ブレーキペダル11のストローク不足が生じることを防止することができる。
さらに増圧弁116の開弁時に、入力側液室143内のブレーキ液は増圧用流路152から制御側液室130に流入することになるが、そのブレーキ液流入量は、前記増圧用流路152および制御側液室130間の液圧差に応じて前記増圧用流路152の制御側液室130への開口面積を変化させる流量制御弁165によって制御され、減圧弁117の開弁時に、制御側液圧室130内のブレーキ液は減圧用流路159から解放側液室157に流出することになるが、そのブレーキ液流出量は、減圧用流路159および解放側液室157間の液圧差に応じて前記減圧用流路159の解放側液室157への開口面積を変化させる流量制御弁168によって制御される。
したがって増圧弁116および減圧弁117の開弁に伴って一方の液室143,130からの高圧の作動液が流路152,159を経て他方の液室130,157に流れる際に、前記流量制御弁165,168で整流されるとともに流量が制御されることになり、ブレーキ液が前記流路152,159から他方の液室130,157に流れる際に急激な圧力変化が生じることを抑制し、増圧弁116および減圧弁117の作動に伴う作動音や脈動音の発生を抑制することができる。
また流量制御弁165,168の弁体164,169が、直線状に延びる前記流路152,159と同軸のロッド部160aおよび支軸170aに摺動可能に支持されるとともに前記他方の液室130,157への前記流路152,159の開口端を閉じる側にばね付勢されるので、各弁体164,169の自励振動が生じることを防止し、自励振動による騒音が発生することを防止することができる。
さらに入力側液室143および制御側液室130間に介設される増圧弁116は、増圧用流路152の入力側液室143への開口端を中央部に臨ませる増圧用弁座150と、増圧用弁座150に着座する側にばね付勢されつつ入力側液室143に収容される増圧用弁体151とを備え、増圧弁116の開弁時には閉弁するようにして解放側液室157および前記制御側液室130間に介設される減圧弁117は、増圧弁116の前記増圧用流路152と同軸上を往復移動可能として前記制御側液室130に収容される減圧用弁体160を備え、この減圧用弁体160に、増圧用弁体151に当接して開弁方向に押圧すべく増圧用流路152に挿通可能な前記ロッド部160aが一体に設けられるので、増圧弁116および減圧弁117の開閉作動で制御側液室130の液圧を制御するにあたり、増圧弁116を開弁作動せしめるために減圧弁117の減圧用弁体160に一体に設けられるロッド部160aで流量制御弁165の弁体166を支持するので、部品点数を少なくして液圧ブースタ13全体のコンパクト化を図ることができる。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
たとえば上記実施例では、タンデム型のマスタシリンダMを備える車両用ブレーキ装置について説明したが、本発明は、単一のマスタピストンがケーシングに摺動可能に収容されるマスタシリンダを備える車両用ブレーキ装置にも適用可能である。