JP3935007B2 - 効果装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、入力楽音信号に効果を付与して出力する効果装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、入力楽音信号に効果を付与して出力する効果装置が広く知られており、そのような効果装置の一種として、入力楽音信号に残響効果を付与する電子リバーブが知られている。ここで、電子リバーブが開発される以前にもコイルバネ(スプリング)を用いた機械式残響装置、いわゆるスプリングリバーブが普及しており、そのスプリングリバーブを用いると、純粋な残響音からは外れるものの、従来の電子リバーブにはない独得の効果が付与されることから、今だに根強い人気がある。しかしながらそのスプリングリバーブを当事の機械式のまま再製造すると電子リバーブに比べコストがかさむという問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑み、電子リバーブとしては従来にない効果を付与することのできる効果装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の効果装置は、入力楽音信号に基づいて、その入力楽音信号により表わされる楽音が所定の第1の時間間隔で減衰しながら繰り返す楽音を表わす分散楽音信号を生成する分散処理を行なう分散処理部と、分散処理部で分散処理が行なわれた後の分散楽音信号に基づいて、その分散楽音信号により表わされる楽音が上記第1の時間間隔よりも大きい所定の第2の時間間隔で減衰しながら繰り返す楽音を表わすループ楽音信号を生成するループ処理を行なうループ処理部と、分散処理部とループ処理部との間に介在し、分散処理部で得られた分散楽音信号にローパスフィルタリング処理を施す、カットオフ周波数の調整が自在なローパスフィルタを有するフィルタ部と、入力楽音信号により表わされる楽音のアタックを検出するアタック検出部と、上記フィルタ部のローパスフィルタのカットオフ周波数を、上記アタック検出部におけるアタックの検出タイミングに応じてそのアタックのレベルに応じた第1の周波数に設定するとともに、アタック通過後に、カットオフ周波数を、上記第1の周波数よりも高い所定の第2の周波数に変化させるフィルタ制御部とを備えたことを特徴とする。
【0005】
本発明の効果装置では、上記分散処理部により、スプリングを経由して機械的に伝達する間に生じる楽音信号の‘分散’が再現され、上記ループ処理部により、スプリングの端まで伝達した楽音信号がそのスプリングの端で反射してそのスプリングを往復する楽音信号の‘ループ’が再現され、さらにアタック検出部で楽音のアタックを検出してフィルタ部のローパスフィルタのカットオフ周波数を上述のように変化させることにより、アタック時のスプリングリバーブの特徴である、アタックがスプリングに伝達されるときに生じる「ピシャ」という音が再現される。
【0006】
これにより、本発明の効果装置によれば、従来の電子リバーブと比べ機械式のスプリングリバーブに極めて近い効果が付与される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0008】
図1は、本発明の効果装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【0009】
この効果装置100は、操作子101とDSP(ディジタルシグナルプロセッサ)102とから構成されている。
【0010】
操作子101は、操作に応じて、DSP102で構成されるループ処理部209(図2参照)に時間を設定する操作子である。
【0011】
また、DSP102は、入力楽音信号に効果付与処理を施すことにより出力楽音信号を生成する。
【0012】
図2は、図1の効果装置100のDSP102での効果付与処理を示す機能ブロック図である。
【0013】
入力楽音信号は、分散処理部202と遅延処理部204に入力される。
【0014】
ここでは、先ず分散処理部202を経由する楽音信号の処理について先に説明する。
【0015】
分散処理部202では、入力楽音信号により表わされる楽音が所定の第1の時間間隔で減衰しながら繰り返す楽音を表わす分散楽音信号を生成する分散処理が行なわれる。
【0016】
この分散処理部202は、本実施形態では、ディレイライン、スルーライン、およびフィードバックラインを持つオールパスフィルタで構成されている。本実施形態ではこのオールパスフィルタを4段直列に接続し、複数の異なる遅延時間を有する音響信号を生成している。
【0017】
図3は楽音信号の模式図である。
【0018】
ここで、図3(A)は入力楽音信号を模式的に表わしたものであり、ここでは、図3(A)に示すように、インパルス的な楽音信号が入力されたものとする。
【0019】
図3(B)は、分散処理部202で生成された分散楽音信号を表わしている。
【0020】
分散処理部202に図3(A)に示すインパルス状の楽音信号が入力されてその分散処理部202で分散処理が行なわれると、図3(B)に示すような、入力楽音信号が減衰しながら繰り返す分散楽音信号が生成される。ここでは、この繰り返し周期T1を第1の時間間隔と称する。
【0021】
この分散処理部202は、いわゆるスプリングリバーブのスプリングを経由して機械的に伝達する楽音が図3(B)のように‘分散’することを再現している。
【0022】
分散処理部202で得られた分散楽音信号は、次にフィルタ部203に入力されるが、フィルタ部203についての説明は後に譲り、ここでは分散処理部202で得られた分散楽音信号がフィルタ部203を素通りしてループ処理部209に入力されるものとする。
【0023】
このループ処理部209では、入力されてきた分散楽音信号に基づいて、その分散楽音信号が上記の第1の時間間隔(図3(B)に示す周期T1)よりも大きな第2の時間間隔で減衰しながら繰り返す楽音を表わすループ楽音信号を生成するループ処理が行なわれる。
【0024】
図3(C)は、ループ処理信号を模式的に表わした図であり、図3(B)に示す分散処理信号が周期T1よりも長い周期T2(ここではこれを第2の時間間隔と称する)で繰り返している。
【0025】
このループ処理部209は、スプリングリバーブにおける、スプリングを経由して伝達する楽音がスプリングの端で反射しながら往復することにより付与される残響効果を再現したものである。本実施形態では、ループ処理部209に櫛型フィルタとディレイラインが組み込まれており、単に減衰しながら繰り返すだけでなく、減衰しながら特定の周波数を早く減衰させ一層リアルな残響効果が付与されるよう構成されている。
【0026】
このループ処理部209で用いられる第2の時間間隔(周期T2)は、図1に示す操作子101により変更自在に設定される。
【0027】
次に、フィルタ部203でのフィルタリング処理、およびそのフィルタリング処理の制御方法について説明する。
【0028】
フィルタ部203には、状態変数フィルタ(state variable filter)によるローパスフィルタが構成されており、このフィルタ部203は、スプリングリバーブ独特の音を付加する作用をなす。このフィルタ部203は、状態変数フィルタとバイパス回路で構成され、状態変数フィルタのカットオフ周波数と、本実施形態ではさらに共振周波数Qと出力音量レベルが制御部207により制御される。ここでは、カットオフ周波数とQ、出力音量レベルを時間的に変化させるように制御することにより、スプリングリバーブを用いた場合に発生する音響効果を発生する。特に入力楽音信号のレベルが急激に上昇するアタック部に独特の効果音が付加される。
【0029】
入力楽音信号は、分散処理部202に入力されるとともに、遅延処理部204に入力される。この遅延処理部204では、ディレイラインにより、入力楽音信号に基づく制御信号を作り出すための遅延が行われる。オールパスフィルタで構成される分散処理部202で処理された楽音信号は複数のディレイラインを通過しているため所定の遅延時間を含んでいる。さらにアタック信号検出部205による遅延も考慮される。すなわち、この遅延処理部204は、フィルタ部203において、分散処理部202からの分散楽音信号に対し、制御部207による制御を行うため、制御信号と分散処理部からの音響信号の遅延時間を合わせるために前もって遅延処理を行うものである。尚、この遅延処理部204は制御信号生成部206の後段に配置しても同様の作用を成す。
【0030】
遅延処理部204での遅延を受けた入力楽音信号はアタック信号検出部205に入力される。このアタック信号検出部では、入力楽音信号が所定のレベルと比較されアタックとして検出されるとともに、入力レベルに応じたレベルであって、かつ所定の時間幅のパルスを出力する。このアタック信号検出部205には、アタック検出のためのピークホールド回路が形成されている。
【0031】
図4は、制御信号生成過程の説明図であり、入力楽音信号(A)、アタック信号検出部205から出力される、アタック検出信号(B)、および、以下に説明する制御信号生成部206で生成される制御信号(C)を示している。
【0032】
図4(B)のアタック検出信号は、アタック信号検出部205から出力される、アタックを検出したことを示す信号であり、そのアタック信号の時間軸上のタイミングがアタック検出タイミングを表わし、その信号レベルがアタックの強さを表わしている。
【0033】
図4(B)のアタック検出信号は、制御信号生成部206に入力される。
【0034】
この制御信号生成部206は、図4(B)のアタック検出信号の入力を受け、図4(C)に示すような、そのアタック検出信号の信号レベルに応じた減衰カーブを持った制御信号を生成して制御部207に供給する。
【0035】
制御部207は、制御信号生成部208で生成された、図4(C)に示す制御信号の入力を受け、フィルタ部203に状態変数フィルタで構成されたローパスフィルタを、入力楽音信号のアタックレベルに応じて制御する。
【0036】
図5は、フィルタ部203によるフィルタリング処理の説明図である。
【0037】
このフィルタ部203では、制御部209の制御を受けて、そのフィルタ部203に状態変数フィルタとして構成されたローパスフィルタ内のカットオフ周波数が、アタックのタイミングに合わせてそのアタックのレベルに応じた第1の周波数f1に設定され、アタック通過後に、そのカットオフ周波数が、図4(C)の制御信号の減衰カーブに従って徐々に、その第1の周波数f1よりも高い所定の第2の周波数f2に変化する。また、このカットオフ周波数の変化とともにその状態変数フィルタのQ値も変化し、出力音量レベルも変化する。こうすることにより、このフィルタ部203で、スプリングリバーブ特有のアタックのタイミングにおける「ピシャ」という効果音が付加される。
【0038】
このようにして、本実施形態では、スプリングリバーブ特有の効果音を含め、スプリングリバーブにより付与される効果が高精度に再現される。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、従来の電子リバーブにはない効果が付与される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の効果装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の効果装置のDSPでの効果付与処理を示す機能ブロック図である。
【図3】楽音信号の模式図である。
【図4】制御信号生成過程の説明図である。
【図5】フィルタ部によるフィルタリング処理の説明図である。
【符号の説明】
100 効果装置
101 操作子
102 DSP(ディジタルシグナルプロセッサ)
202 分散処理部
203 フィルタ部
204 遅延処理部
205 アタック信号検出部
206 制御信号生成部
207 制御部
209 ループ処理部
Claims (1)
- 入力楽音信号に基づいて、該入力楽音信号により表わされる楽音が所定の第1の時間間隔で減衰しながら繰り返す楽音を表わす分散楽音信号を生成する分散処理を行なう分散処理部と、
前記分散処理部で分散処理が行なわれた後の分散楽音信号に基づいて、該分散楽音信号により表わされる楽音が前記第1の時間間隔よりも大きい所定の第2の時間間隔で減衰しながら繰り返す楽音を表わすループ楽音信号を生成するループ処理を行なうループ処理部と、
前記分散処理部と前記ループ処理部との間に介在し、該分散処理部で得られた分散楽音信号にローパスフィルタリング処理を施す、カットオフ周波数の調整が自在なローパスフィルタを有するフィルタ部と、
前記入力楽音信号により表わされる楽音のアタックを検出するアタック検出部と、
前記フィルタ部のローパスフィルタのカットオフ周波数を、前記アタック検出部におけるアタックの検出タイミングに応じて該アタックのレベルに応じた第1の周波数に設定するとともに、アタック通過後に、該カットオフ周波数を、該第1の周波数よりも高い所定の第2の周波数に変化させるフィルタ制御部とを備えたことを特徴とする効果装置。
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