JP3933949B2 - 反射鏡支持機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、望遠鏡等に用いられる反射鏡支持機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4は従来例1の反射鏡支持機構の構成を示す概略的な説明図であり、図4(a)は反射鏡を含む支持機構の平面図、図4(b)は図4(a)をC−C線で切ったときの断面図である。なお、断面を示すハッチングは一部省略している。
【0003】
図において、31は反射鏡支持機構である。32は望遠鏡等に搭載される反射鏡であり、32aは反射鏡32の反射面である表面、32bは反射鏡32の裏面である。33は反射鏡32を支持するミラーホルダである。この反射鏡支持機構31は、反射鏡32を、周縁部付近の三点においてミラーホルダ33に押し付けて支持する構造である。ミラーホルダ33は反射鏡32の下方と、反射鏡32を押し付ける三点部分の側面側とに被るように位置する。33aは上述の下方のミラーホルダ、33bは側面側のミラーホルダである。34は側面側のミラーホルダ33bの上側に、後述する樹脂パッド35を介して取り付けられた板ばねであり、反射鏡32の表面32aを弾性力で下方のミラーホルダ33a方向に押し付ける。
【0004】
35は反射鏡32の表面32aを保護するために板ばね34と反射鏡32の表面32aとの間に挿入された樹脂パッドである。36は反射鏡32の裏面32bを保護するために反射鏡32の裏面32bと下方のミラーホルダ33aとの間隙に設けられた樹脂パッドである。樹脂パッド35および36により、反射鏡32が直接ミラーホルダ33に接触して傷がつかないようになっている。37は反射鏡32の側面と側面側のミラーホルダ33bとの間隙に充填された充填材であり、シリコンゴム等からなる。
【0005】
この反射鏡支持機構31では、反射鏡32は、ミラーホルダ33と板ばね34とで反射鏡32の周縁部付近の三点を挟み込むことによって、支持、固定されている。反射鏡32は、その厚み方向においては弾性力で支持され、面内方向においては摩擦力のみで支持されている。
【0006】
次に、他の従来の反射鏡支持機構について説明する。
図5は特開昭61−6614号公報に開示された従来例2の反射鏡支持機構41の概略的な断面図である。図において、41は反射鏡支持機構である。42は望遠鏡等に搭載される反射鏡である。42aは反射鏡の反射面である表面、42bは反射鏡42の裏面である。42cは反射鏡の側面一周に設けられた溝である。43は反射鏡42を支持する反射鏡収納ホルダである。44は内側に突起を有する割入リングであり、溝42cにはめ込まれている。45は締付けリングネジであり、46は反射鏡収納ホルダ43と締付けリングネジ45を結合するネジ部である。47は反射鏡42の裏面42bと反射鏡収納ホルダ43との間隙に設けられたウェーブワッシャー等のバネ材である。
【0007】
この反射鏡支持機構41では、反射鏡42は、締付けリングネジ45により割入リング44を反射鏡42の厚み方向に抑えながら、締付けリングネジ45をネジ部46で反射鏡収納ホルダ43に結合することによって、支持、固定されている。反射鏡42の厚み方向の押圧力はバネ材47によって調整されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の反射鏡支持機構は以上のように構成されているので、以下に示すような課題があった。
【0009】
従来例1の反射鏡支持機構31の場合、反射鏡32の表面32aに直接押付力が作用するように構成されているので、荷重点である板ばね34近傍の反射鏡32の表面32aが大きく変形し、鏡面精度が劣化するという課題があった。また、反射鏡32の表面32aに異物である板ばね34が直接に接触するので、反射面に傷がつくおそれがあるという課題があった。
【0010】
一方、従来例2の反射鏡支持機構41の場合、反射鏡42の面内方向に圧縮力が作用するように構成されているので、この圧縮力によって反射鏡が変形し、鏡面精度が劣化するという課題があった。また、反射鏡42と割入リング44との熱膨張係数が異なるため、反射鏡42および反射鏡42を支持する部分の温度変化によって、反射鏡42の面内方向の圧縮力が変動し、その結果、反射鏡42が変形して鏡面精度が劣化するおそれがあるという課題があった。
【0011】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、反射鏡の鏡面精度を維持することが可能な反射鏡支持機構を得ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る反射鏡支持機構は、側面に凹部を有する反射鏡と、反射鏡を支持するベースと、凹部のベース側表面をベース側に押し付ける弾性部材と、反射鏡の裏面とベースとの間隙に、反射鏡の裏面への接触部が平面状であり、ベースへの接触部が球面状である、反射鏡の裏面を保護する保護用パッドを備えたものである。
【0017】
この発明に係る反射鏡支持機構は、護用パッドが、反射鏡の裏面への接触部を含んだ上層パッドと、ベースへの接触部を含んだ下層パッドとの二層構造であり、下層パッドの材料が上層パッドの材料よりも熱膨張係数が小さいものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による反射鏡支持機構1の構成を示す概略的な説明図であり、図1(a)は反射鏡を含む支持機構の平面図、図1(b)は図1(a)をA−A線で切ったときの断面図である。なお、断面を示すハッチングは一部省略している。図2は反射鏡支持機構1を構成する反射鏡2の説明図であり、反射鏡の平面図および二方向からみた側面図を示す。
【0020】
図において、1は反射鏡支持機構である。2は望遠鏡等に搭載される反射鏡であり、2aは反射鏡2の表面、2bは反射鏡2の裏面、2cは反射鏡2の側面である。2Zは反射鏡2の中心部を軸として120°の等間隔で側面2cの三箇所に設けられたザグリ部(凹部)である。ザグリ部2Zは3箇所以上設ける場合もある。ザグリ部2Zの断面形状は、逆コの字型になっており、ザグリ部2Zの下側表面2d(後述する下方のミラーホルダ3a側の表面)は反射鏡2の裏面2bと平行である。ザグリ部2Zは、例えば切削加工により形成される。3は反射鏡2を支持するミラーホルダ(ベース)である。この反射鏡支持機構1は、反射鏡2を、3箇所のザグリ部2Zにおいてミラーホルダ3に押し付けて支持する構造である。ミラーホルダ3は反射鏡2の下方と、反射鏡2を押し付ける三点部分の側面側とに被るように位置する。3aは上述の下方のミラーホルダ、3bは側面側のミラーホルダである。
【0021】
4は側面側のミラーホルダ3bの上側に、後述する樹脂パッド5を介して取り付けられた板ばね(弾性部材)であり、ザグリ部2Zの下側表面2dを弾性力で下方のミラーホルダ3a方向に押し付ける。板ばね4の押付力は、反射鏡2がその面内方向に移動可能な程度の大きさである。
【0022】
5はザグリ部2Zの下側表面2dを保護するために板ばね4とザグリ部2Zの下側表面2dとの間に挿入された第一のパッド(第一の保護用パッド)である。6は反射鏡2の裏面2bを保護するために反射鏡2の裏面2bと下方のミラーホルダ3aとの間隙に設けられた第二のパッド(第二の保護用パッド)である。第一のパッド5および第二のパッド6は樹脂からなり、これらにより、反射鏡2が板ばね4またはミラーホルダ3に直接接触して傷がつかないようになっている。パッドを形成する材料は、反射鏡2を傷つけない柔らかい材料でれば、樹脂以外のものであってもよい。
【0023】
第二のパッド6は半球状であり、反射鏡2の裏面2bに接触する部分が平面状であり、下方のミラーホルダ3aに接触する部分が球面状である。このため、反射鏡2やパッドに製作誤差が生じた場合でも、球面状の部分が回転して平面状の部分が反射鏡2の裏面2bに密着する。従って、方形の樹脂パッドの場合に生じる、製作誤差による、いわゆる片当たり(パッドの片方の縁のみで反射鏡に接するような状態)を避けることができる。なお、球面状の部分が接触する下方のミラーホルダ3aの部分は凹んでおり、第二のパッド6の位置決めが容易になるようになっている。
【0024】
7は反射鏡2の側面2cと側面側のミラーホルダ3bとの間隙に充填された充填材であり、シリコンゴム等からなる。充填材7により、反射鏡2やミラーホルダ3が振動や熱変形によって位置ずれしないように、また反射鏡2がその面内方向に移動したときにミラーホルダ3と衝突して損傷しないようになっている。
【0025】
この反射鏡支持機構1では、反射鏡2は、その側面2cに設けられた3箇所のザグリ部2Zを板ばね4によってミラーホルダ3に押し付けることにより、支持、固定されている。反射鏡2は、その厚み方向においては弾性力で支持され、面内方向においては摩擦力のみで支持されている。反射鏡2はその面内方向において、ある程度の移動が可能である。
【0026】
以上のように、この実施の形態1の反射鏡支持機構1によれば、反射鏡2の側面2cに設けられた3箇所のザグリ部2Zを、板ばね4でミラーホルダ3に押さえつけることにより、反射鏡2の表面2aを直接押さえ付けることなく、反射鏡2を支持、固定する。従って、反射鏡の表面2aの変形が抑制され、鏡面精度を保つことができるという効果が得られる。
【0027】
また、この実施の形態1によれば、反射鏡2はその面内方向においてある程度の移動が可能であるので、温度変化が生じたときに反射鏡2とミラーホルダ3との熱膨張係数の差異による、反射鏡2とその支持箇所の相対位置の変化が拘束されない。従って、反射鏡2の面内方向に圧縮力が作用せず、鏡面精度の劣化を防ぐことができるという効果が得られる。
【0028】
また、この実施の形態1によれば、ザグリ部2Zの下側表面2dが反射鏡2の裏面2bと平行であるので、面内方向の分圧の発生が抑制され、鏡面精度の劣化を防ぐことができるという効果が得られる。
【0029】
また、この実施の形態1によれば、ザグリ部2Zの下側表面2dを保護する第一のパッド5と反射鏡2の裏面2bを保護する第二のパッド6とを備えているので、反射鏡2が板ばね4またはミラーホルダ3に直接接触して傷がつかず、反射鏡2にクラックが生じる危険が少ないという効果が得られる。
【0030】
また、この実施の形態1によれば、反射鏡2の裏面を保護する第二のパッド6のミラーホルダ3への接触部が球面状であるので、パッドのいわゆる片当りを防ぐことができる。従って、パッドの片当りによる局部的な曲げモーメントが発生せず、鏡面精度の劣化を防ぐことができるという効果が得られる。
【0031】
実施の形態2.
実施の形態1のように、第二のパッド全体を樹脂で形成した場合、第二のパッドの熱膨張係数が周囲の部品に比べて大きく、その結果、温度変化が生じたときに第二のパッドの熱変形によって反射鏡が変形し、鏡面精度が劣化することが考えられる。実施の形態2では、第二のパッドの一部を樹脂より熱膨張係数が低い材料で形成し、第二のパッドの熱膨張係数を低減する場合について説明する。
【0032】
図3はこの発明の実施の形態2による反射鏡支持機構11の構成を示す概略的な説明図であり、図3(a)は反射鏡を含む支持機構の平面図、図3(b)は図3(a)をB−B線で切ったときの断面図である。なお、断面を示すハッチングは一部省略している。
【0033】
図において、11は反射鏡支持機構である。16は反射鏡2の裏面2bを保護するために反射鏡2の裏面2bと下方のミラーホルダ3aの間隙に設けられた第二のパッド(第二の保護用パッド)である。16aは下方のミラーホルダ3aに接触する下層パッドであり、16bは発射鏡2の裏面2bに接触する上層パッドである。第二のパッド16は反射鏡側の上層パッド16bとミラーホルダ側の下層パッド16aとの2層構造である。上層パッド16bは樹脂からなる。下層パッド16aは上層パッド16bよりも熱膨張係数が低い材料、例えば超低熱膨張合金であるスーパーインバーからなる。下層パッド16aおよび上層パッド16bは例えば機械加工で形成される。上層パッド16bと下層パッド16aは板ばね4の押付力によって固定されている。
その他の構成要素は実施の形態1と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0034】
以上のように、この実施の形態2によれば、反射鏡2の裏面を保護する第二のパッド16を、下方のミラーホルダ3aに接触する下層パッド16aと発射鏡2の裏面2bに接触する上層パッド16bとの二層構造とし、上層パッド16bを樹脂で形成し、下層パッド16a樹脂より熱膨張係数が低い材料で形成したので、第二のパッド16の熱膨張係数と周囲の部品の熱膨張係数の差が小さくなり、熱膨張係数の差異による鏡面精度の劣化を低減することができるという効果が得られる。
【0035】
また、この実施の形態2によれば、下層パッド16a超低熱膨張合金で形成したので、反射鏡2を支持する三箇所のそれぞれの点で温度差が生じたとき、それぞれの点に作用する力を最小にすることができ、鏡面精度の劣化をさらに防ぐことができるという効果が得られる。
【0036】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、側面に凹部を有する反射鏡と、反射鏡を支持するベースと、凹部のベース側表面をベース側に押し付ける弾性部材と、反射鏡の裏面とベースとの間隙に、反射鏡の裏面への接触部が平面状であり、ベースへの接触部が球面状である、反射鏡の裏面を保護する保護用パッドを備えるように反射鏡支持機構を構成したので、反射鏡の表面を直接押さえつけることなく反射鏡を支持、固定することができ、パッドのいわゆる片当たりによる局部的な曲げモーメントが発生せず、鏡面精度の劣化を防ぐことが可能な反射鏡支持機構が得られる効果がある。
【0041】
この発明によれば、護用パッドが、反射鏡の裏面への接触部を含んだ上層パッドと、ベースへの接触部を含んだ下層パッドとの二層構造であり、下層パッドの材料は上層パッドの材料よりも熱膨張係数が小さくなるように反射鏡支持機構を構成したので、護用パッドの熱膨張係数と周囲の部品との熱膨張係数の差が小さくなり、熱膨張係数の差異による鏡面精度の劣化を低減することが可能な反射鏡支持機構が得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による反射鏡支持機構の構成を示す概略的な説明図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による反射鏡支持機構の反射鏡を示す概略的な説明図である。
【図3】 この発明の実施の形態2による反射鏡支持機構の構成を示す概略的な説明図である。
【図4】 従来例1の反射鏡支持機構の構成を示す概略的な説明図である。
【図5】 従来例2の反射鏡支持機構の構成を示す概略的な説明図である。
【符号の説明】
1,11 反射鏡支持機構、2 反射鏡、2a 表面、2b 裏面、2c 側面、2d 下側表面、2Z ザグリ部(凹部)、3 ミラーホルダ(ベース)、3a 下方のミラーホルダ、3b 側面側のミラーホルダ、4 板ばね(弾性部材)、5 第一のパッド(第一の保護用パッド)、6,16 第二のパッド(第二の保護用パッド)、7 充填材、16a 下層パッド、16b 上層パッド。

Claims (2)

  1. 側面に凹部を有する反射鏡と、
    該反射鏡を支持するベースと、
    上記凹部のベース側表面を上記ベース側に押し付ける弾性部材と
    上記反射鏡の裏面と上記ベースとの間隙に、上記反射鏡の裏面への接触部が平面状であり、上記ベースへの接触部が球面状である、上記反射鏡の裏面を保護する保護用パッドと
    を備えた反射鏡支持機構。
  2. 護用パッドは、反射鏡の裏面への接触部を含んだ上層パッドと、ベースへの接触部を含んだ下層パッドとの二層構造であり、上記下層パッドの材料は上記上層パッドの材料よりも熱膨張係数が小さいことを特徴とする請求項記載の反射鏡支持機構。
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