JP3932924B2 - 車速制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、予め定められた目標制限速度を越えないようにエンジン回転速度または燃料噴射量を制限して車速制限を行う車速制限手段を備えた車速制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、大型車両用の車速制御装置としては、例えば特開平6−144078号公報に開示されているように、車両速度が予め定められた目標制限速度以上であることを検出すると、エンジン回転速度や燃料噴射量を低く抑えることにより車速制限を行うものが知られている。しかしながら、大型車両では、運転者(ドライバー)によるシフトダウンの際にエンジン回転速度を合わせるためにクラッチを切ってアクセルペダルを踏み込み、エンジンの吹き上げを行なう場合があり、車速制限実行中にこのような変速操作を行うと、うまく回転速度合わせができないという問題があった。
【0003】
そこで、従来より、既存のクラッチスイッチによって運転者がクラッチペダルを踏んだことを検出したら、所定時間が経過するまでの間、車速制限を一時的に解除するようにした車速制御装置(従来の技術)が知られている。しかるに、既存のクラッチスイッチは、運転者が浅くクラッチペダルを踏むとクラッチが断となった信号を出力するため、このクラッチスイッチからの信号を使用すると、所謂半クラッチ(エンジンの動力が変速機に未だ接続されている)状態にも関わらず、車速制限が解除されてしまうといった問題点があった。
【0004】
このような問題点を解決する目的で、例えば特開平11−351000号公報においては、ニュートラルスイッチによってシフトレバーがニュートラル位置にあることが検出された時点から、シフトレバーがニュートラル位置にないことを検出された後に一定期間が経過する時点まで、車速制限を一時的に解除するようにした車速制御装置(従来の技術)が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の車速制御装置において、クラッチスイッチやニュートラルスイッチが故障した時には、車速制限の解除ができなくなる、あるいは常時車速制限が解除される場合があった。また、自動変速機では、クラッチスイッチやニュートラルスイッチ等を使用して車速制限の解除を行なうことができないため、シフトダウンの際にエンジンの吹き上げが困難となり、スムーズな変速操作ができなくなる場合があった。
【0006】
さらに、エンジンから変速機へ伝達される回転動力の断続を正確に検出する方法がないため、車速制限の解除期間は運転者の変速操作が開始されてから一定時間という時間により設定するしかなく、車両の運転状態や運転者の癖等により、最適な車速制限の解除期間を設定することができない場合があった。例えば運転者の癖等によって、一定時間よりも早く変速操作が終了する場合、一定時間よりも遅くまで変速操作が行なわれる場合、あるいはシフトレバーを長時間ニュートラル位置で保持した後にシフトダウンが行なわれる場合等がある。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、車速制限の解除ができなくなったり、常時車速制限が解除されたりすることのない車速制御装置を提供することを目的とする。また、車速制限の解除を確実に実施できるようにして、スムーズな変速が可能となる車速制御装置を提供することを目的とする。さらに、車両の運転状態や運転者の癖等に関わらず、最適な車速制限の解除期間を設定することのできる車速制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、運転者により動力伝達系の変速操作が開始されると動力伝達系のギア比(減速比)が変化する。このとき、ギア比変化検出手段によって動力伝達系のギア比の変化が検出される。そして、動力伝達系のギア比の変化を検出した場合には、車速制限手段による車速制限が解除される。したがって、車速制限期間中でも、動力伝達系のギア比の変化を検出した時点で、車速制限が解除されるように構成されているので、運転者による変速操作の際のエンジンの吹き上げが可能になり、車速制限実行中の運転者による変速操作(例えばシフトダウンまたはキックダウン)をスムーズに行なうことができるようになる。
そして、車速制限解除手段による車速制限の解除期間中に、車速検出手段によって検出された車両速度を現在の速度値とし、その現在の速度値が、車速最小値算出手段によって算出された車両速度の最小値よりも大きくなったら、車速制限手段による車速制限を再開させる構成を採用することにより、車両の運転状態や運転者の癖等に関わらず、最適な車速制限の解除期間を設定することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、現在のギア比となまし処理後のギア比との比較結果に応じて動力伝達系のギア比の変化の有無を検出することにより、パワートレイン系のねじり等によるギア比の変化をキャンセルすることができる。また、動力伝達系のギア比の変化の有無を検出することによって、車速制限の解除と車速制限とを切り替えることができるので、車速制限の解除ができなくなったり、常時車速制限が解除されたりすることもない。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、例えばクラッチスイッチ、ニュートラルスイッチ、キックダウンスイッチ、シフトレバー位置センサ、ソレノイドバルブ等の変速操作検出手段によって乗員による動力伝達系の変速操作を検出した時点で、車速制限手段による車速制限を解除することにより、運転者による変速操作の際のエンジンの吹き上げが可能になり、車速制限実行中の運転者による変速操作(例えばシフトダウンまたはキックダウン)をスムーズに行なうことができるようになる。
【0011】
請求項4に記載の発明によれば、変速信号出力手段からアクチュエータへ変速信号が出力された時点で、車速制限手段による車速制限を解除することにより、動力伝達系による変速動作の際のエンジンの吹き上げが可能になり、車速制限実行中の変速動作をスムーズに行なうことができるようになる。また、請求項5に記載の発明によれば、例えば連続的に滑らかに自動的に変速を行なう自動変速機等の動力伝達系の油圧回路を切り替えて動力伝達系の歯車の噛み合い状態を変更(変速)するためのアクチュエータへの変速信号とは、運転者または動力伝達系を制御する制御ユニットが変速意思または変速要求があるときに、動力伝達系における変速過程を示す信号であり、また、動力伝達系における変速開始から変速終了までを示す信号であることを特徴としている。さらに、請求項6に記載の発明によれば、アクチュエータへの変速信号とは、運転者または動力伝達系を制御する制御ユニットからの要求変速段であり、また、現在の変速段であり、また、要求変速段とするためのギア比であることを特徴としている。
【0012】
請求項7に記載の発明によれば、アクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度が所定値以下となった場合、すなわち、運転者がアクセルペダルを戻した場合には、エンジンのトルクがあまり発生しないため、車両速度の上昇は有り得ないので、車速制限手段による車速制限を解除することができる。それによって、請求項1に記載の発明と同様な効果を達成できる。また、請求項8に記載の発明によれば、上記の所定値とは、アクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度のなまし処理後の値、あるいはn秒前の過去のアクセル開度値、あるいはゼロ度であることを特徴としている。
【0013】
請求項9に記載の発明によれば、減速状態検出手段によって車両の減速状態を検出した場合には、車速制限手段による車速制限を解除することにより、運転者による変速操作の際のエンジンの吹き上げが可能になり、車速制限実行中の運転者による変速操作(例えばシフトダウンまたはキックダウン)をスムーズに行なうことができるようになる。
【0014】
請求項10に記載の発明によれば、車速制限解除手段による車速制限の解除期間中に、車速検出手段によって検出された車両速度を現在の速度値とし、その現在の速度値が、過去値記憶手段によって記憶された過去の速度値以上に大きくなったら、車速制限手段による車速制限を再開させる構成を採用することにより、車両の運転状態や運転者の癖等に関わらず、最適な車速制限の解除期間を設定することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
[第1実施例の構成]
図1ないし図6は本発明の第1実施例を示したもので、図1はコモンレール式燃料噴射システムの全体構成を示した図である。
【0016】
本実施例のコモンレール式燃料噴射システムは、本発明の車速制御装置を適用した一例であって、大型車両(例えば重量物運搬用トレーラを牽引する車両)に搭載されるものであり、主として、ディーゼルエンジン(以下エンジンと言う)1の各気筒に噴射供給する燃料噴射圧に相当する高圧燃料を蓄圧する蓄圧容器としてのコモンレール2と、エンジン1の各気筒毎に搭載された複数個(本例では4個)のインジェクタ3と、後記する吸入調量弁を経て加圧室内に吸入される燃料を加圧してコモンレール2に圧送するサプライポンプ4と、複数個のインジェクタ3およびサプライポンプ4を電子制御する電子制御ユニット(エンジン制御装置:以下エンジンECUと呼ぶ)10とから構成されている。
【0017】
コモンレール2には、連続的に燃料噴射圧に相当するコモンレール圧が蓄圧される必要があり、そのために燃料配管(高圧燃料流路)11を介して高圧燃料を吐出するサプライポンプ4の吐出口と接続されている。なお、インジェクタ3からのリーク燃料およびサプライポンプ4からのリーク燃料は、リーク配管(燃料還流路)12、13、14を経て燃料タンク5にリターンされる。また、コモンレール2から燃料タンク5へのリリーフ配管(燃料還流路)15には、プレッシャリミッタ16が取り付けられている。そのプレッシャリミッタ16は、コモンレール2内の燃料圧が限界設定圧を超えた際に開弁して燃料圧を限界設定圧以下に抑えるための圧力安全弁である。
【0018】
各気筒のインジェクタ3は、コモンレール2より分岐する複数の分岐管の下流端に接続されて、コモンレール2に蓄圧された高圧燃料をエンジン1の各気筒に噴射供給する燃料噴射ノズル、およびこの燃料噴射ノズル内に収容されたノズルニードルの背圧制御を行なう電磁式アクチュエータとしての電磁弁等よりなる電磁式燃料噴射弁である。そして、各気筒のインジェクタ3からエンジン1の各気筒への燃料噴射は、電磁弁への通電および通電停止(ON/OFF)により電子制御される。つまり、インジェクタ3の電磁弁が開弁している間、コモンレール2に蓄圧された高圧燃料がエンジン1の気筒内に噴射供給される。
【0019】
サプライポンプ4は、エンジン1のクランク軸(クランクシャフト)21の回転に伴ってポンプ駆動軸22が回転することで燃料タンク5内の燃料を汲み上げる周知のフィードポンプ(低圧供給ポンプ:図示せず)を内蔵している。このサプライポンプ4は、ポンプ駆動軸22により駆動されるプランジャ(図示せず)、およびこのプランジャの往復運動により燃料を加圧する加圧室(プランジャ室)を有している。
【0020】
そして、サプライポンプ4は、吸入調量弁6を経て加圧室内に吸入される燃料を加圧して吐出口からコモンレール2へ高圧燃料を圧送する高圧供給ポンプ(燃料供給ポンプ)である。燃料配管17の継手部からサプライポンプ4の加圧室への燃料流路には、その燃料流路の開口度合を調整するための吸入調量弁(SCV)6が取り付けられている。
【0021】
吸入調量弁6は、ポンプ駆動回路43を介してエンジンECU10からのポンプ駆動信号によって電子制御されることにより、サプライポンプ4のポンプ室から加圧室内に吸入される燃料の吸入量を調整するポンプ圧力制御弁(吸入量調整用電磁弁)で、各インジェクタ3からエンジン1へ噴射供給する燃料噴射圧(燃料圧)に相当するコモンレール圧を変更する。なお、吸入調量弁6は、サプライポンプ4のポンプ室から加圧室への燃料流路の開度を変更するバルブ(弁体)と、ポンプ駆動信号(吸入調量弁指令値)に応じてバルブの弁開度を調整するためのソレノイドコイル(電磁コイル)を有し、ソレノイドコイルへの通電が停止されると弁開度が全開状態となるノーマリオープンタイプの電磁弁(ポンプ流量制御弁)である。
【0022】
本実施例のエンジンECU10は、図2に示したように、制御処理、演算処理を行なうCPU、ROMやRAM等のメモリ、入力回路、出力回路、電源回路等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータ41、インジェクタ駆動回路42、ポンプ駆動回路43およびタイマーカウンタ44を有している。なお、タイマーカウンタ44は、時間計測を行なうためのものである。
【0023】
エンジンECU10のインジェクタ駆動回路42には、インジェクタ3の電磁弁が電気的に接続されている。また、ポンプ駆動回路43には、サプライポンプ4の吸入調量弁6が電気的に接続されている。また、マイクロコンピュータ41の入力回路には、回転速度センサ31からのエンジン回転数信号、アクセル開度センサ32からのアクセル開度信号、冷却水温センサ33からのエンジン冷却水温信号、コモンレール圧センサ34からのコモンレール圧信号、および車速センサ35からの車速信号等が入力されるように構成されている。例えば各種センサからのセンサ信号は、A/D変換器でA/D変換された後にマイクロコンピュータ41に入力されるように構成されている。
【0024】
そして、エンジンECU10は、エンジン1の運転条件に応じた最適な噴射時期(θt)、目標噴射量(=噴射期間:Q)を決定する噴射量、噴射時期決定手段と、エンジン1の運転条件または燃料噴射圧(つまりコモンレール圧)および目標噴射量(Q)に応じた噴射パルス時間(噴射パルス幅)を演算する噴射パルス幅決定手段と、インジェクタ駆動回路42を介して各気筒のインジェクタ3の電磁弁にパルス状のインジェクタ駆動電流(噴射パルス)を印加するインジェクタ駆動手段とを備えている。
【0025】
すなわち、エンジンECU10は、回転速度センサ31によって検出されたエンジン回転速度(以下エンジン回転数と言う:NE)およびアクセル開度センサ32によって検出されたアクセル開度(ACCP)等のエンジン運転情報に冷却水温センサ33によって検出されたエンジン冷却水温(THW)を加味して目標噴射量(Q)を算出し、エンジン1の運転条件または燃料噴射圧(つまりコモンレール圧)および目標噴射量(Q)から算出された噴射パルス幅に応じて各気筒のインジェクタ3の電磁弁にインジェクタ噴射パルスを印加するように構成されている。これにより、エンジン1が運転される。
【0026】
また、エンジンECU10は、エンジン1の運転条件に応じた最適な燃料噴射圧(つまり目標コモンレール圧)を演算し、ポンプ駆動回路43を介してサプライポンプ4の吸入調量弁6を駆動する吐出量制御手段でもある。すなわち、エンジンECU10は、回転速度センサ31によって検出されたエンジン回転数(NE)およびアクセル開度センサ32によって検出されたアクセル開度(ACCP)等から目標コモンレール圧(Pct)を算出し、この目標コモンレール圧(Pct)を達成するために、吸入調量弁6のソレノイドコイルにポンプ駆動信号(吸入調量弁指令値)を出力するように構成されている。
【0027】
さらに、より好ましくは、コモンレール圧センサ34によって検出されるコモンレール圧(Pcr)がエンジン1の運転条件によって決定される目標コモンレール圧(Pct)と略一致するようにサプライポンプ4の吸入調量弁6へのポンプ駆動信号(吸入調量弁指令値)をフィードバック制御することが望ましい。なお、吸入調量弁6への吸入調量弁指令値(駆動電流値)の制御は、デューティ(duty)制御により行なうことが望ましい。すなわち、目標コモンレール圧(または目標ポンプ圧送量)に応じて単位時間当たりのポンプ駆動信号のオン/オフの割合(通電時間割合・デューティ比)を調整して、吸入調量弁6の弁開度を変化させるデューティ制御を用いることで、高精度なデジタル制御が可能になる。
【0028】
ここで、本実施例では、エンジン1の運転条件を検出する運転条件検出手段として回転速度センサ31、アクセル開度センサ32を用いて目標噴射量(Q)、噴射時期(θt)、目標コモンレール圧(Pct)を演算するようにしているが、コモンレール圧センサ34によって検出されるコモンレール圧(Pcr)、あるいは運転条件検出手段としてのその他のセンサ類(例えば冷却水温センサ、吸気温センサ、吸気圧センサ、燃料温度センサ、気筒判別センサ、噴射時期センサ等)からの検出信号(エンジン運転情報)を加味して目標噴射量(Q)、噴射時期(θt)および目標コモンレール圧(Pct)を補正するようにしても良い。
【0029】
そして、本実施例のエンジンECU10は、車速センサ35によって検出された車両速度(以下車速と略す:SPD)が予め定められた目標制限速度以上であることを検出すると、エンジン1の各気筒に噴射供給する実際の燃料噴射量を低く抑えることにより車速制限を行なう車速制限手段を有している。これは、目標噴射量よりも小さい燃料噴射量を噴射した場合には、エンジン回転数は目標噴射量に対応する値よりも小さくなり、エンジン1のトルクが不足し、その車速を維持することができなくなる。これにより、燃料噴射量を目標噴射量よりも小さくすることで、エンジン回転数を制限でき、ひいては車速を制限できる。
【0030】
また、エンジンECU10は、回転速度センサ31によって検出されたエンジン回転数(NE)および車速センサ35によって検出された車速(SPD)から、エンジン1の回転動力を車輪に伝達する動力伝達装置としての手動歯車変速機(動力伝達系)9のギア比を算出し、運転者によるシフトチェンジ操作の開始によるギア比の変化を検出するギア比変化検出手段を有している。なお、手動歯車変速機9のギア比の変化の有無の検出は、ギア比のなまし値と現在の値とを比較する方法が望ましい。さらに、運転者によるシフトチェンジ操作の開始によるギア比の変化を検出した時点から所定の条件を満足する(例えば所定時間が経過する)までの間、車速制限制御を解除する車速制限解除手段を有している。
【0031】
次に、本実施例の車速制限処理方法を図1ないし図4に基づいて簡単に説明する。ここで、図3は車速制限処理方法を示したフローチャートである。このフローチャートは、図示しないイグニッションスイッチがONとなった後に、所定のタイミング毎に繰り返される。
【0032】
先ず、例えば大型車両に対して法的に義務づけられている制限速度である目標制限車速(VSL)を読み込む(ステップS1)。次に、車速センサ35によって検出される車速(SPD)が目標制限車速(VSL)を越えているか否かを判定する(ステップS2)。この判定結果がNOの場合、つまり車速制限期間中ではないと判断した場合には、車速制限用噴射量を最大噴射量よりも大きく設定する(ステップS3)。次に、アクセル開度センサ32によって検出されるアクセル開度(ACCP)より求められる目標噴射量、最大噴射量制限、その他の補正噴射量等を考慮した後、それらの最小値として最終噴射量を算出する(ステップS4)。その後に、図3のルーチンを抜ける。
【0033】
また、ステップS2の判定結果がYESの場合、つまり車速制限期間中であると判断した場合には、タイマーカウンタ44のカウント値(CV)がゼロであるか否かを判定する(ステップS5)。この判定結果がNOの場合には、ステップS3の処理に進む。
【0034】
また、ステップS5の判定結果がYESの場合、つまりカウント値(CV)がゼロの場合には、目標制限車速(VSL)を越えないように制御するフィードバック噴射量演算のため、車速(SPD)と目標制限車速(VSL)との偏差を算出する(ステップS6)。
【0035】
次に、比例動作、積分動作によるフィードバック噴射量を算出する(ステップS7)。次に、比例、積分噴射量を合算して車速制限用噴射量を算出する(ステップS8)。そして、ステップS4において、車速制限用噴射量とアクセル開度(ACCP)より求められる目標噴射量のうち小さい方を最終噴射量とする。
【0036】
以上のように、車速が目標制限車速(VSL)を越え、カウント値(CV)がゼロの場合には、エンジン1の各気筒への実際の燃料噴射量が目標噴射量よりも抑えられる。その結果、エンジン1のトルクが不足し、その車速を維持することができず、減速する。つまり、燃料噴射量を制限することにより、エンジン回転数が制限され、ひいては車速が制限される。
【0037】
ここで、図4は車速制限一時解除方法を示したフローチャートである。このフローチャートは、車速制限処理と同様に、イグニッションスイッチがONとなった後に、所定のタイミング毎に繰り返される。
【0038】
先ず、カウント値(CV)をリセットする(ステップS11)。次に、手動歯車変速機9のギア比の変化の有無を判定する(ステップS12)。この判定結果がNOの場合、つまり手動歯車変速機9のギア比の変化が無いと判断した場合には、車速制限一時解除を実施せず、図4のルーチンを抜ける。
【0039】
なお、ギア比の変化の有無の検出は、手動歯車変速機9等の動力伝達装置(パワートレイン)系のねじり等のバラツキを考慮し、ギア比のなまし処理後の値と現在の値とを比較する方法が望ましい。例えばギア比(現在の値:GR)は、下記の数1の式によって求められる。
【0040】
【数1】
但し、NEは回転速度センサ31によって検出されるエンジン回転数で、SPDは車速センサ35によって検出される車速である。
【0041】
また、ギア比のなまし処理後の値(GRSM)は、下記の数2の式によって求められる。
【数2】
【0042】
そして、ギア比の変化の有無は、下記の数3の式が所定値(α)を越えたか否かで判断できる。すなわち、下記の数3の式が所定値(α)を越えたら、ギア比の変化が有ると判断できる。
【数3】
但し、ABSは絶対値である。
【0043】
また、ステップS12の判定結果がYESの場合、つまり上記の数3の式が所定値(α)を越え、運転者のシフトチェンジ操作の開始によるギア比の変化が有ると判断した場合には、タイマーカウンタ44のカウント値(CV)に定数A(一定期間:例えば5〜10秒間)をセットする(ステップS13)。次に、カウント値(CV)の減算を開始する(ステップS14)。次に、減算後のカウント値(CV)がゼロになったか否かを判定する(ステップS15)。この判定結果がNOの場合には、ステップS14の処理に戻る。また、ステップS15の判定結果がYESの場合には、車速制限一時解除を終了し、図4のルーチンを抜ける。ここで求めているギア比は、動力伝達系全てを含んでいるためクラッチ操作の検出も可能である。
【0044】
以上のように、手動歯車変速機9のギア比の変化を検出することにより、運転者のシフトチェンジ操作または手動歯車変速機9の変速作動を検出することができる。よって、クラッチスイッチやニュートラルスイッチ等の変速操作検出手段以外の信号を用いて運転者のシフトチェンジ操作または手動歯車変速機9の変速作動を検出することができるので、車速制限実施中であっても、運転者がシフトチェンジ操作(例えば5速→4速、4速→3速、3速→2速等のシフトダウン操作)を開始することによる、手動歯車変速機9のギア比の変化を検出した時点から、一定時間が経過するまでの期間(車速制限解除期間)は、一時的にエンジン回転数の制限による車速制限は行なわれない。したがって、この車速制限解除期間中であれば、エンジン回転数は制限されないため、シフトチェンジ操作(例えばシフトダウン操作)の際のエンジン回転数合わせやエンジンの吹き上げをスムーズに行なうことができる。
【0045】
また、例えばクラッチスイッチやニュートラルスイッチ等の変速操作検出手段が故障した場合でも、運転者がシフトダウン操作の開始時を検出することができるので、車速制限制御の解除ができなくなったり、あるいは車速制限制御が常時解除されたりする不具合が生じることはない。また、自動変速機(機械式を含む)においても、本実施例を採用することにより、車速制限制御の解除ができるようになるため、車速制限制御実施中のシフトダウン操作またはシフトダウン指令(キックダウン等)がスムーズにできるようになる。
【0046】
次に、図5および図6は本発明の第1実施例を示したもので、図5はエンジンECUの回路構成を示した図である。
【0047】
本実施例のエンジンECU10は、第1実施例と同様な構成のマイクロコンピュータ41、インジェクタ駆動回路42、ポンプ駆動回路43およびタイマーカウンタ44を有している。また、マイクロコンピュータ41の入力回路には、回転速度センサ31からのエンジン回転数信号、アクセル開度センサ32からのアクセル開度信号、冷却水温センサ33からのエンジン冷却水温信号、コモンレール圧センサ34からのコモンレール圧信号、および車速センサ35からの車速信号の他に、ニュートラルスイッチ36からのニュートラル信号等が入力されるようになっている。
【0048】
なお、ニュートラルスイッチ36は、運転者による手動歯車変速機9のシフトチェンジ(変速)操作を検出する変速操作検出手段であって、図示しないシフトレバーがニュートラル位置にあるときにオン(ON)信号を出力し、また、シフトレバーがそれ以外の位置にあるときにオフ(OFF)信号を出力する。
【0049】
[第1実施例の特徴]
次に、本実施例の車速制限一時解除方法を図5および図6に基づいて簡単に説明する。ここで、図6は車速制限一時解除方法を示したフローチャートである。このフローチャートは、図3のフローチャートと同様に、イグニッションスイッチがONとなった後に、所定のタイミング毎に繰り返される。
【0050】
先ず、カウント値(CV)をリセットする(ステップS21)。次に、ニュートラルスイッチ36のニュートラル信号がONからOFFになったか否かを判定する(ステップS22)。この判定結果がNOの場合には、車速制限一時解除を実施せず、図6のルーチンを抜ける。
【0051】
また、ステップS22の判定結果がYESの場合には、タイマーカウンタ44のカウント値(CV)に定数Aをセットする(ステップS23)。次に、車速制限解除期間中の車速の最小値を算出する(車速最小値算出手段)。そして、車速制限解除期間中の車速の最小値をMin車速としてメモリに記憶する(車速最小値記憶手段)。そして、車速センサ35によって検出される車速(SPD)が、メモリに記憶されたMin車速に所定値(α)を加算した値よりも大きいか否かを判定する(ステップS24)。なお、所定値(α)は、定常走行時の検出車速のバラツキに対して有意な値である。
【0052】
このステップS24の判定結果がYESの場合には、タイマーカウンタ44のカウント値(CV)をゼロにして車速制限一時解除を終了し(ステップS25)、車速制限制御を再開するため、図6のルーチンを抜ける。
【0053】
また、ステップS24の判定結果がNOの場合には、カウント値(CV)の減算を開始する(ステップS26)。次に、減算後のカウント値(CV)がゼロになったか否かを判定する(ステップS27)。この判定結果がNOの場合には、ステップS24の処理に戻る。また、ステップS27の判定結果がYESの場合には、車速制限一時解除を終了し、図6のルーチンを抜ける。
【0054】
以上のように、車速制限実施中であっても、運転者がシフトチェンジ操作(例えば5速→4速、4速→3速、3速→2速等のシフトダウン操作)を開始してシフトレバーがニュートラル位置になった時点から、一定時間が経過するまでの期間(車速制限解除期間)は、一時的にエンジン回転数の制限による車速制限は行なわれない。したがって、この車速制限解除期間中であれば、エンジン回転数は制限されないため、シフトチェンジ操作(例えばシフトダウン操作)の際のエンジン回転数合わせやエンジンの吹き上げをスムーズに行なうことができる。
【0055】
また、車速制限解除期間中に、運転者によるシフトダウンが終了し、クラッチが繋がれ、エンジン1と手動歯車変速機9との動力の接続が成され、その後に車両が加速状態(車速が増加)に移行した場合には、シフトレバーがニュートラル位置になった時点から一定時間が経過していなくても、車速制限制御を再開させるようにしている。これにより、車両の走行状態(運転状態)や運転者の癖等に関わらず、最適な車速制限の解除期間を設定することができる。
【0056】
また、本実施例では、車速制限制御を解除するためにニュートラルスイッチ36を設けているので、運転者がクラッチペダルを踏むとON信号を出力するクラッチスイッチを設けた場合よりも精度良く、運転者のシフトダウン操作を検出することができる。すなわち、クラッチペダルを浅く踏む半クラッチ状態で、つまりエンジン1と手動歯車変速機9との動力が繋がれている状態で車速制限制御が解除されてしまう不具合を回避できる。
【0057】
[第2実施例の構成]
図7および図8は本発明の第2実施例を示したもので、図7はエンジンECUの回路構成を示した図である。
【0058】
本実施例のエンジンECU10は、第1実施例と同様な構成のマイクロコンピュータ41、インジェクタ駆動回路42、ポンプ駆動回路43およびタイマーカウンタ44を有している。また、マイクロコンピュータ41の入力回路には、回転速度センサ31からのエンジン回転数信号、アクセル開度センサ32からのアクセル開度信号、冷却水温センサ33からのエンジン冷却水温信号、コモンレール圧センサ34からのコモンレール圧信号、および車速センサ35からの車速信号の他に、シフト操作スイッチ37からのシフト操作信号等が入力されるようになっている。
【0059】
なお、シフト操作スイッチ37は、運転者による自動変速機(オートマチックトランスミッション)のシフトチェンジ(変速)操作を検出する変速操作検出手段であって、図示しないセレクタレバーがシフトダウン操作されたときにオン(ON)信号を出力し、また、セレクタレバーがそれ以外のときにオフ(OFF)信号を出力する。
【0060】
そして、シフト操作スイッチ37としては、セレクタレバーまたはセレクタバルブ、あるいはそれに連動する部材の位置を検出するスイッチ(位置センサ)、自動変速機の油圧回路を切り替えるアクチュエータとしての変速用ソレノイドバルブ、あるいはそれに連動する部材の位置を検出するスイッチ(位置センサ)、自動変速機の油圧回路を切り替えるアクチュエータとしての変速用ソレノイドバルブの通電状態を検出するセンサ等が考えられる。
【0061】
[第2実施例の特徴]
次に、本実施例の車速制限一時解除方法を図7および図8に基づいて簡単に説明する。ここで、図8は車速制限一時解除方法を示したフローチャートである。このフローチャートは、第1実施例と同様に、イグニッションスイッチがONとなった後に、所定のタイミング毎に繰り返される。
【0062】
先ず、カウント値(CV)をリセットする(ステップS31)。次に、自動変速機のシフト変化の有無を判定する。具体的には、運転者が自動変速機のダウンシフト操作(例えばDレンジ→Lレンジ)を行なったか否かを判定する。例えばシフト操作スイッチ37がONからOFFになったか否かを判定する(ステップS32)。この判定結果がNOの場合には、車速制限一時解除を実施せず、図8のルーチンを抜ける。
【0063】
また、ステップS32の判定結果がYESの場合には、タイマーカウンタ44のカウント値(CV)に定数Aをセットする(ステップS33)。次に、カウント値(CV)の減算を開始する(ステップS34)。次に、減算後のカウント値(CV)がゼロになったか否かを判定する(ステップS35)。この判定結果がNOの場合には、ステップS34の処理に戻る。また、ステップS35の判定結果がYESの場合には、車速制限一時解除を終了し、図8のルーチンを抜ける。
【0064】
以上のように、ギアまたはシフト位置を検出する信号が変化することにより、自動変速機の変速作動の開始を検出することができる。このため、車速制限実施中であっても、運転者によるシフト操作(例えばDレンジ→Lレンジのシフトダウン操作)を検出した時点から、一定時間が経過するまでの期間(車速制限解除期間)は、一時的にエンジン回転数の制限による車速制限は行なわれない。したがって、この車速制限解除期間中であれば、エンジン回転数は制限されないため、シフトダウン操作の際のエンジンの吹き上げが可能になり、スムーズな変速が可能になる。
【0065】
また、自動変速機のシフトダウン操作は、一般的に一定時間で終了するので、運転者によるシフト操作(例えばDレンジ→Lレンジのシフトダウン操作)を検出し車速制限制御の解除を開始してから所定時間が経過した後には、車速制限制御を再開させるようにしている。なお、シフト操作スイッチ37として、オーバードライブとアンダードライブとを切り替えるO/Dスイッチを用いても良く、また、アクセルペダルを急激に深く踏み込んでキックダウンさせる時に信号を出力するキックダウンスイッチを用いても良い。
【0066】
[第3実施例の構成]
図9および図10は本発明の第3実施例を示したもので、図9はエンジンECUの回路構成を示した図である。
【0067】
本実施例のエンジンECU10は、第1実施例と同様な構成のマイクロコンピュータ41、インジェクタ駆動回路42、ポンプ駆動回路43およびタイマーカウンタ44を有している。また、マイクロコンピュータ41の入力回路には、自動変速機(動力伝達系)の油圧回路内の変速用ソレノイドバルブやロックアップクラッチを駆動するロックアップソレノイドバルブ等を電子制御するオートマチックトランスミッション制御用のECU38からのCAN等のECU間通信信号(CAN受信信号)、つまり変速信号を入力することが可能である。なお、変速用ソレノイドバルブは、自動変速機の油圧回路を切り替えて自動変速機の歯車の噛み合い状態を変更し、自動変速機の変速段(シフトパターン)をL(ロー)、S(セカンド)、D(ドライブ)等に変速させるアクチュエータである。
【0068】
このECU38は、制御処理、演算処理を行うCPU、ROMやRAM等のメモリ、入力回路、出力回路、電源回路等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータを内蔵し、自動変速機の油圧回路内のソレノイドバルブに変速信号(変速指令信号)を出力する変速信号出力手段であって、車速センサ、スロットル開度センサ、各種スイッチ信号を入力して、車両の走行状態を検出し、変速点、ロックアップクラッチ作動点を演算し、油圧回路をソレノイドバルブで切り替え、最適な変速作動、ロックアップ作動を行なう自動変速機用電子制御ユニットである。
【0069】
また、ECU38から自動変速機の油圧回路内のソレノイドバルブへ変速信号(変速指令信号)が出力されると、ECU38からエンジンECU10へ自動変速機の変速開始信号が送信され、その後に所定時間が経過した後に、ECU38からエンジンECU10へ自動変速機の変速終了信号が送信されるように構成されている。
【0070】
なお、変速信号とは、例えばCANのPGN:ETC2・Selected・Gear等の通信信号であり、運転者が変速意思があるときに、実際に自動変速機における変速過程を示す信号であり、自動変速機における変速開始から変速終了までを示す信号である。その信号とは、運転者からの要求変速段であり、また、現在の変速段であり、また、要求変速段とするためのギア比である。あるいは、信号とは、油圧回路を切り替えるソレノイドバルブへ出力する信号、またはセレクタレバーまたはセレクタバルブ、あるいはそれに連動する部材の位置を検出するスイッチ(位置センサ)から出力される信号である。
【0071】
[第3実施例の特徴]
次に、本実施例の車速制限処理方法を図9および図10に基づいて簡単に説明する。ここで、図10は車速制限処理方法を示したフローチャートである。このフローチャートは、第1実施例と同様に、イグニッションスイッチがONとなった後に、所定のタイミング毎に繰り返される。
【0072】
本実施例では、ステップS1〜ステップS4、ステップS6〜ステップS8は、第1実施例のステップS1〜ステップS4、ステップS6〜ステップS8の処理と同一であるので説明を省略する。ステップS2の判定結果がYESの場合、つまり車速制限期間中であると判断した場合には、ECU38からエンジンECU10へのCAN等のECU間通信信号(CAN受信信号)が自動変速機における変速過程(シフト期間中である状態)を示す変速信号(変速過程信号)であるか否かを判定する(ステップS9)。この判定結果がYESの場合には、ステップS3の処理に進み、また、その判定結果がNOの場合には、ステップS5の処理に進む。
【0073】
以上のように、CAN等のECU間通信信号から自動変速機の変速作動の開始および終了を検出することができる。それによって、車速が目標制限車速(VSL)を越え、運転者のシフト操作(例えばDレンジ→Lレンジ)を検出した場合には、エンジン回転数の制限による車速制限を一時的に解除するようにしている。また、CAN等のECU間通信信号から変速終了の情報(例えばギアイン信号)を検出したら、車速制限制御を再開させるようにしている。したがって、この車速制限解除期間中であれば、エンジン回転数は制限されないため、シフト操作の際のエンジンの吹き上げが可能になり、スムーズな変速が可能になる。なお、CAN等のECU間通信信号から自動変速機のニュートラル情報を検出したら、車速制限制御を解除するようにしても良い。
【0074】
[第4実施例]
図11は本発明の第4実施例を示したもので、車速制限処理方法を示したフローチャートである。このフローチャートは、第1実施例と同様に、イグニッションスイッチがONとなった後に、所定のタイミング毎に繰り返される。
【0075】
先ず、アクセル開度の判定を行なう。すなわち、アクセル開度センサ32によって検出されるアクセル開度の現在値と所定値(例えばアクセル開度のなまし処理後の値)とを比較する。具体的には、アクセル開度の現在値がアクセル開度のなまし処理後の値以下であるか否かを判定する(ステップS51)。なお、アクセル開度のなまし処理後の値としては、アクセル開度の変化に余裕を持たせるために、n秒前の過去のアクセル開度値を用いている。
【0076】
そのステップS51の判定結果がNOの場合には、タイマーカウンタ44のカウント値(CV)がゼロではないか否かを判定する(ステップS52)。この判定結果がYESの場合には、ステップS55の処理に進む。また、ステップS52の判定結果がNOの場合には、車速制限制御は必要であると判断できるため、カウント値(CV)をリセットする(ステップS53)。その後に、図11のルーチンを抜ける。
【0077】
また、ステップS51の判定結果がYESの場合には、タイマーカウンタ44のカウント値(CV)に定数Kをセットする(ステップS54)。次に、アクセル開度の判定直後の車速(SPD)を過去の速度値として保存する(過去値記憶手段:ステップS55)。次に、一定時間後の現在の速度値と保存してある過去の速度値とを比較する。なお、一定時間の間に車両が減速した後に、減速状態から加速状態に移行している可能性も考慮して、この処理では車速最小値(SPDMIN)を算出する(車速最小値算出手段:ステップS56)。
【0078】
次に、現在の速度値が過去の速度値未満であるか否かを判定する(減速状態検出手段、加速状態検出手段:ステップS57)。この判定結果がNOの場合、つまり過去の速度値よりも現在の速度値の方が大きい場合には、ステップS53の処理に進み、車速制限制御は必要であると判断する。つまり車両が加速していると判断できる。
【0079】
また、ステップS57の判定結果がYESの場合には、現在の速度値が車速最小値(SPDMIN)以下であるか否かを判定する(減速状態検出手段、加速状態検出手段:ステップS58)。この判定結果がNOの場合、つまり過去の速度値に比べて現在の速度値が小さくても、車速最小値(SPDMIN)よりも現在の速度値の方が大きい場合にも、ステップS53の処理に進み、車速制限制御は必要であると判断する。つまり車両が加速していると判断できる。
【0080】
また、ステップS58の判定結果がYESの場合には、車速制限制御を解除しても良いと判断する。つまり、車両が減速していると判断できるので、タイマーカウンタ44のカウント値(CV)をゼロを除く値(例えばCVまたは定数K)に設定する(ステップS59)。その後に、図11のルーチンを抜ける。
なお、カウント値(CV)を減算することによって何らかの条件で加速状態の判定ができなかった時のために、車速制限制御の解除の最大時間を設定しても良い。
【0081】
以上のように、運転者がアクセルペダルを戻している状態では、エンジン1のトルクは発生しないので、車両の加速状態(車速の上昇)は有り得ない。つまり、減速(車速が減少)している場合には、車速制限制御を解除することができる。また、車速制限制御を解除している間に、車両の加速状態を検出した場合には、再び車速制限制御を実施することにより、車両の走行状態(運転状態)や運転者の癖等に関わらず、最適な車速制限の解除期間を設定することができる。
【0082】
[第5実施例]
図12は本発明の第5実施例を示したもので、車速制限処理方法を示したフローチャートである。このフローチャートは、第4実施例と同様に、イグニッションスイッチがONとなった後に、所定のタイミング毎に繰り返される。
【0083】
本実施例では、第4実施例のステップS58の代わりに、車両が減速状態であるか否か(つまり加速状態であるか)を判定する。具体的には、n秒前の過去の速度値と現在の速度値とを比較する(ステップS60)。この処理の場合には、n秒前の過去の速度値と現在の速度値とを比較する際に、ある程度の余分を持たせておいて、車速の変化に余裕を持たせる。
【0084】
すなわち、n秒前の過去の速度値と現在の速度値との変化量がある一定量よりも小さい場合には、車両が減速状態であると判断して、ステップS59の処理に進み、車速制限制御を解除しても良いと判断する。また、n秒前の過去の速度値と現在の速度値との変化量がある一定量よりも大きい場合には、車両が加速状態であると判断して、ステップS53の処理に進み、車速制限制御を必要と判断する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 コモンレール式燃料噴射システムの全体構成を示した概略図である(第1実施例)。
【図2】 エンジンECUの回路構成を示したブロック図である(第1実施例)。
【図3】 車速制限処理方法を示したフローチャートである(第1実施例)。
【図4】 車速制限一時解除方法を示したフローチャートである(第1実施例)。
【図5】 エンジンECUの回路構成を示したブロック図である(第1実施例)。
【図6】 車速制限一時解除方法を示したフローチャートである(第1実施例)。
【図7】 エンジンECUの回路構成を示したブロック図である(第2実施例)。
【図8】 車速制限一時解除方法を示したフローチャートである(第2実施例)。
【図9】 エンジンECUの回路構成を示したブロック図である(第3実施例)。
【図10】 車速制限処理方法を示したフローチャートである(第3実施例)。
【図11】 車速制限処理方法を示したフローチャートである(第4実施例)。
【図12】 車速制限処理方法を示したフローチャートである(第5実施例)。
【符号の説明】
1 エンジン
3 インジェクタ
4 サプライポンプ
6 吸入調量弁
9 手動歯車変速機(動力伝達系)
10 エンジンECU(車速制限手段、車速制限解除手段、減速状態検出手段、加速状態検出手段、車速最小値算出手段、過去値記憶手段)
31 回転速度センサ(ギア比変化検出手段)
32 アクセル開度センサ(アクセル開度検出手段)
35 車速センサ(車速検出手段、ギア比変化検出手段)
36 ニュートラルスイッチ(変速操作検出手段)
37 シフト操作スイッチ(変速操作検出手段)
38 ECU(変速信号出力手段)
Claims (10)
- (a)予め定められた目標制限速度を越えないようにエンジン回転速度または燃料噴射量を制限して車速制限を行う車速制限手段と、
(b)動力伝達系のギア比の変化を検出するギア比変化検出手段と、
(c)このギア比変化検出手段によってギア比の変化を検出した際に、前記車速制限手段による車速制限を解除する車速制限解除手段と
を備えた車速制御装置において、
前記車速制限手段は、車両速度を検出する車速検出手段、および前記車速制限解除手段による車速制限の解除期間中の車両速度の最小値を算出する車速最小値算出手段を有し、 前記車速制限解除手段による車速制限の解除期間中に、前記車速検出手段によって検出された車両速度を現在の速度値とし、
その現在の速度値が、前記車速最小値算出手段によって算出された車両速度の最小値よりも大きくなったら、前記車速制限手段による車速制限を再開させることを特徴とする車速制御装置。 - 請求項1に記載の車速制御装置において、
前記ギア比変化検出手段は、現在のギア比となまし処理後のギア比とを比較し、この比較結果に応じて前記動力伝達系のギア比の変化の有無を検出することを特徴とする車速制御装置。 - 請求項1に記載の車速制御装置において、
前記ギア比変化検出手段に代えて、乗員による動力伝達系の変速操作を検出する変速操作検出手段を備え、
前記車速制限解除手段は、前記変速操作検出手段によって前記動力伝達系の変速操作を検出した際に、前記車速制限手段による車速制限を解除することを特徴とする車速制御装置。 - 請求項1に記載の車速制御装置において、
前記ギア比変化検出手段に代えて、動力伝達系の油圧回路を切り替えるアクチュエータへ変速信号を出力する変速信号出力手段を備え、
前記車速制限解除手段は、前記変速信号出力手段から前記アクチュエータへ変速信号が出力された際に、前記車速制限手段による車速制限を解除することを特徴とする車速制御装置。 - 請求項4に記載の車速制御装置において、
前記アクチュエータへの変速信号とは、運転者または前記動力伝達系を制御する制御ユニットが変速意思または変速要求があるときに、前記動力伝達系における変速過程を示す信号であり、また、前記動力伝達系における変速開始から変速終了までを示す信号であることを特徴とする車速制御装置。 - 請求項5に記載の車速制御装置において、
前記アクチュエータへの変速信号とは、運転者または前記動力伝達系を制御する制御ユニットからの要求変速段であり、また、現在の変速段であり、また、前記要求変速段とするためのギア比であることを特徴とする車速制御装置。 - 請求項1に記載の車速制御装置において、
前記ギア比変化検出手段に代えて、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段を備え、
前記車速制限解除手段は、前記アクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度が所定値以下となった際に、前記車速制限手段による車速制限を解除することを特徴とする車速制御装置。 - 請求項7に記載の車速制御装置において、
前記所定値とは、前記アクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度のなまし処理後の値、あるいはn秒前の過去のアクセル開度値、あるいはゼロ度であることを特徴とする車速制御装置。 - 請求項1に記載の車速制御装置において、
前記ギア比変化検出手段に代えて、車両の減速状態を検出する減速状態検出手段を備え、
前記車速制限解除手段は、前記減速状態検出手段によって車両の減速状態を検出した際に、前記車速制限手段による車速制限を解除することを特徴とする車速制御装置。 - 請求項1に記載の車速制御装置において、
前記車速制限手段は、車両速度を検出する車速検出手段、および前記車速制限解除手段による車速制限の開始時に前記車速検出手段によって検出された車両速度を過去の速度値として記憶する過去値記憶手段を有し、
前記車速制限解除手段による車速制限の解除期間中に、前記車速検出手段によって検出された車両速度を現在の速度値とし、
その現在の速度値が、前記過去値記憶手段によって記憶された過去の速度値以上に大きくなったら、前記車速制限手段による車速制限を再開させることを特徴とする車速制御装置。
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