JP3932893B2 - 銅電解用アノードの表面膨れ防止方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、銅精錬操業での銅電解用アノード鋳造工程において、、アノード表面の膨れを防止し、鋳造工程および電解工程の安定化を可能とする銅電解用アノードの冷却方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
銅の精錬工程において産出されるアノードは、次の工程である電解精錬工程でさらに純度の高い電気銅に仕上げられ製品とされるが、このアノードの品質、形状が次の電解精錬工程の操業に大きな影響を及ぼす。安定した電解精錬工程の操業に求められるアノードの形状は、均一な厚み、平滑な表面などである。
【0003】
従来のアノード鋳造設備は、図2に、また、アノードの形状は、図5に示す。上記アノード鋳造設備は鋳型搬送装置であるターンテーブル1上に複数の鋳型2を載せて、ターンテーブル1を回転させながら鋳型2を連続的に搬送し、溶融銅を鋳型2に鋳込むとともにアノード剥取手段である一次ピン押し上げ機9の位置で固化したアノード2aを剥ぎ取るように構成されている。また、上記ターンテーブル1上の鋳型2の下方側と上方側には、冷却手段7である冷却水散布ノズル7aと7bが設けられ、これにより鋳込後のアノード2aおよび鋳型2の冷却が行われる。また、ターンテーブル1に近接して、固形化したアノード2aを鋳型2から剥取る一次ピン押し上げ機9および鋳型2の表面に離型剤を散布する離型材散布装置6が設けられている。
【0004】
上記の装置においてターンテーブル1上の鋳型2に鋳込まれた溶融銅は、その後、図4に示すように鋳型2の下方側に複数個設けられる下方側ノズル7aおよび鋳型の上方側に複数個設けられる上方側ノズル7bにより冷却水が散布され、冷却固化し、図5に示される形状のアノード2aとなる。この固化したアノード2aは図3に示されるアノード押し上げ棒9aによって鋳型2の底面から押し上げられた後に、アノード2a本体の頂部の両側に形成された、一対の耳部2bが図示しない剥ぎ取り手段によって引っかけられ、持ち上げられて、そのまま冷却漕10に挿入される。アノード2aを剥ぎ取られた鋳型2は、次の鋳造に備えて、離形剤散布装置6によって粘土水が散布される。
【0005】
上記のようなアノード鋳造装置では、鋳造される溶融銅の温度は、1100℃乃至1150℃である。鋳込まれた溶融銅は、鋳型の上下からの散水により、剥ぎ取り位置までの間に650℃乃至750℃に冷却される。この時、アノードの温度が十分に冷却されていないと鋳型底面からの押し上げ棒9aによる押し上げの際、あるいは冷却漕10へ挿入するための運搬時に、アノードの強度が十分でないためアノードが曲がってしまう。また、この冷却過程において、鋳造開始時には鋳型の保有熱が小さいため、鋳込み後の溶融銅の冷却が早まり、O2、SO2ガス、水蒸気などが抜ける前に、アノード表面が固化し、この表面に膨れと呼ばれる数cm〜数十cmの直径で厚み数mm〜数cmの凹凸が複数個生じる。
【0006】
また、上記工程における鋳造終了直前において、溶融銅の温度が1100℃を下まわることで、鋳込み後の溶融銅の冷却が早まり、鋳造開始時と同様、アノード表面の膨れが複数生じる。このアノード表面の膨れは、次の工程である電解工程において、電極間の接触や、電極表面相互の局部的距離の不均一により、ショート本数の増加、電流効率の低下などの問題を生じる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記アノードの表面形状の膨れ問題に関して、鋳込み直後の溶融銅の表面の温度を制御、保温することによりアノード表面の膨れの発生を抑止し、鋳造工程、電解工程の安定化の向上を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、銅電解用アノードの鋳造過程において、鋳型へ溶融銅を鋳込んだ後、アノード表面に冷却水をかけてアノード表面の冷却を行う前に、溶融銅の表面を加熱して所定の温度に保つことにより、溶融銅に含まれるガス及び水蒸気を除去した後、鋳型中のアノードに冷却水をかけて冷却し、アノード表面の膨れを防止することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、銅電解用アノードの鋳造過程において、1100℃乃至1150℃の温度の溶融銅を30乃至140℃の温度の鋳型へ鋳込んだ後、アノード表面に冷却水をかけてアノード表面の冷却を行う前に、溶融銅の表面を加熱して1100℃乃至1150℃の温度に保ち、溶融銅に含まれるガス及び水蒸気を抜いた後、アノード表面に冷却水をかけて、鋳型中のアノードを鋳型から剥ぎ取る時点におけるアノード表面を650℃乃至750℃の温度に冷却し、アノード表面を固形化し、アノード表面の膨れを防止することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、銅電解用アノードの鋳造過程において、1100℃を下まわる温度の溶融銅を150乃至200℃の温度の鋳型へ鋳込んだ後、アノード表面に冷却水をかけてアノード表面の冷却を行う前に、溶融銅の表面を加熱して1100℃を下まわる温度に保ち、溶融銅に含まれるガス及び水蒸気を抜いた後、アノード表面に冷却水をかけて、鋳型中のアノードを鋳型から剥ぎ取る時点におけるアノード表面を650℃乃至750℃の温度に冷却し、アノード表面を固形化し、アノード表面の膨れを防止することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、銅電解用アノードの鋳造過程において、鋳型へ1150℃を下まわる温度の溶融銅を鋳込んだ後、溶融銅の表面を加熱して150乃至180秒間保温した後、アノードを鋳型から剥ぎ取る時点におけるアノード表面の温度が650乃至700℃になるように鋳型中のアノードを冷却し、アノードの膨れの発生を防止することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用い実施例を参照して説明する。
実施例1
本発明の第1の実施形態を図1〜4を用いて説明する。図1に示されるように、本実施例に係る銅アノード鋳造装置は、ターンテーブル1と、該ターンテーブル1の上に載置された複数の鋳型2と、溜桶3と、計量樋4と、冷却水散布ノズル7a(n1〜n7),7b(n8〜n13)(図4参照)と、冷却フード7cと、冷却漕10と加熱装置であるプロパンガスバーナ8とアノード剥取手段である一次ピン押し上げ機9と、離型剤散布装置6を備えており、計量樋4から鋳型2に鋳込まれたアノード2aを矢印の方向に移動させつつ、冷却、加熱、および剥取りを順次行うように構成されている。
【0013】
銅アノード回転鋳造工程において、転炉から産出される粗銅を精製炉での精製処理を行った溶融粗銅は、流し樋および溜桶3を介して、一定量ずつ計量樋4に供給され、計量樋4から、一定量の溶融精製粗銅が、溶融銅鋳込み位置5において、ターンテーブル1上の鋳型2の中に注入される。
【0014】
実施例1では、上記溜桶3,計量樋4を経て溶融銅鋳込み位置5において鋳型2へ注入される溶融粗銅の温度は1100℃乃至1150℃であり、また、鋳造開始時の鋳型2の温度は、30℃乃至140℃である。このような状態において、360〜400kgの溶融粗銅が鋳型2に注入される。アノードの鋳造速度は、100トン/時間であり、鋳造サイクルは、アノード1枚当たり25〜28秒である。
【0015】
上記の鋳込みから、30〜70秒経過後に、図1に示すように、ターンテーブル1の溶融銅鋳込み位置5の近傍に設置された加熱装置であるプロパンガスバーナー8により鋳型2上の熔融銅の表面を加熱して、熔融銅表面の温度の制御、保温を行い、熔融銅表面の固化を和らげる。この後、鋳込みから150〜180秒後にアノード表面への冷却水散布を開始することで、アノード表面が固化する前に、熔融銅中のガス、水蒸気等を抜気、除去する。なお、上記加熱手段としては、プロパンガスバーナに限定されるものではない。
【0016】
上記のガス、水蒸気等を抜気、除去後、アノード表面が固化し始めるが、その後、図1および図4に示すような複数の冷却ノズル7a(n1〜n7)および7b(n1〜n13)を調整し、アノードがアノード剥ぎ取り位置、すなわち、一次ピン押し上げ機9の位置に達するまでアノード表面に冷却水を散布する。この実施例では溶融銅の鋳込みから150〜180秒後にアノード表面へ冷却水を散布し、一次ピン押し上げ機9でアノードを押し上げる時点においてアノードが650℃乃至750℃に冷却されるようにする。これによりガス、水蒸気が熔銅中から抜けた後で熔融銅の表面が固化することで、アノードの表面が膨れることを防止する。なお、図1においてn1〜n13に対応する○と●は、冷却速度の関係でノズルの使用位置を例示したものであり、○が未使用、●は使用中の冷却水散布ノズルを示す。
【0017】
上記実施例1のアノード鋳造装置を用いた場合、溶融銅温度、鋳型温度によって、熔融銅表面への保温時間およびアノード表面への冷却水散布開始時間は変化する。
【0018】
実施例2
実施例2においては、鋳造終了間際に溶融銅の温度が下がる場合の対応を示す。上記実施例1におけるアノード鋳造装置を用い、同様なプロセスで溶融銅表面を保温した後、アノードの冷却を行う。実施例2では、鋳込み時の温度が1100℃を下まわる熔融銅を温度が150乃至200℃の鋳型2へ360乃至400Kgを鋳込み、30〜70秒後に上記実施例1と同様に加熱装置8を用いて鋳型2の溶融銅の表面を加熱し、保温を行い、溶融銅表面の冷却固化を和らげる。上記の鋳込みから150〜180秒後に、鋳型2中のアノード2aの表面へ冷却水の散布を開始する。以下のプロセスは、実施例1の場合と同様である。この方法により、熔融銅表面の冷却固化が早まる際に生じるアノード表面の膨れが無くなった。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の銅電解用アノードの冷却方法によれば、アノード表面の膨れの少ない形状の良好なアノードを鋳造することができ、アノード形状の品質が向上し、次工程である電解工程の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられるアノード鋳造装置における加熱手段と鋳型の冷却手段の設置位置を示す図である。
【図2】従来のアノード鋳造用鋳型搬送装置の全体構成図である。
【図3】(a)はアノード鋳造用の銅鋳型の平面図、(b)はその側面図である。
【図4】アノード鋳造装置における鋳型の冷却手段の構成図である。
【図5】アノードの形状、寸法を示す図である。
【符号の説明】
1 ターンテーブル
2 鋳型
2a アノード
2b アノード耳部
3 溜桶
4 計量樋
5 溶融銅鋳込み位置
6 離型剤散布装置
7 冷却手段
7a 下方側冷却水散布ノズル
7b 上方側冷却水散布ノズル
7c 冷却フード
8 プロパンガスバーナ(加熱装置)
9 一次ピン押し上げ機
9a 一次ピン押し上げ棒
10 冷却漕

Claims (4)

  1. 銅電解用アノードの鋳造過程において、
    鋳型へ溶融銅を鋳込んだ後、アノード表面に冷却水をかけてアノード表面の冷却を行う前に、
    溶融銅の表面を加熱して所定の温度に保つことにより、
    溶融銅に含まれるガス及び水蒸気を除去した後、
    鋳型中のアノードに冷却水をかけて冷却することを特徴とする、
    アノード表面の膨れを防止する方法。
  2. 銅電解用アノードの鋳造過程において、
    1100℃乃至1150℃の温度の溶融銅を30乃至140℃の温度の鋳型へ鋳込んだ後、アノード表面に冷却水をかけてアノード表面の冷却を行う前に、
    溶融銅の表面を加熱して1100℃乃至1150℃の温度に保ち、
    溶融銅に含まれるガス及び水蒸気を抜いた後、
    アノード表面に冷却水をかけて、鋳型中のアノードを鋳型から剥ぎ取る時点におけるアノード表面を650℃乃至750℃の温度に冷却し、
    アノード表面を固形化することを特徴とする
    アノード表面の膨れを防止する方法。
  3. 銅電解用アノードの鋳造過程において、
    1100℃を下まわる温度の溶融銅を150乃至200℃の温度の鋳型へ鋳込んだ後、アノード表面に冷却水をかけてアノード表面の冷却を行う前に、
    溶融銅の表面を加熱して表面が固化しないような温度に保ち、
    溶融銅に含まれるガス及び水蒸気を抜いた後、
    アノード表面に冷却水をかけて、鋳型中のアノードを鋳型から剥ぎ取る時点におけるアノード表面を650℃乃至750℃の温度に冷却し、
    アノード表面を固形化することを特徴とする
    アノード表面の膨れを防止する方法。
  4. 前記請求項1において、
    鋳型へ1150℃を下まわる温度の溶融銅を鋳込んだ後、溶融銅の表面を加熱して150乃至180秒間、保温し、
    アノードを鋳型から剥ぎ取る時点におけるアノード表面の温度が650℃乃至750℃になるように鋳型中のアノードを冷却することを特徴とする
    銅電解用アノードの鋳造方法。
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