JP3932759B2 - 熱間加工性に優れた銅合金 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間加工性に優れた銅合金に関し、特に、鋳造割れや熱間圧延割れを発生させることがなく、さらに、耐熱性および機械的強度にも優れたCu−Fe系合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体装置のリードフレーム、あるいは端子コネクター等に使用される銅合金として、1.5〜3重量%のFe、0.01〜0.1重量%のP、および0.03〜1重量%のZnを含有し、残りがCuおよび不可避的不純物から成る優れた強度と導電性を有した銅合金が知られている。
【0003】
このCu−Fe系合金においては、Feの含有量が3重量%まで優れた強度と導電性が得られるとされているが、実際には、2.3重量%を超えてFeが存在すると、Fe系晶出物が巨大化しやすくなる性質を有しており、従って、一般には、Feの上限値を2.3重量%に設定するのが普通であり、また、下限値も1.8重量%に設定するのが普通である。
【0004】
通常、この銅合金よりリードフレーム等を製造するには、次の手順を経る。
まず、銅合金を加熱して溶湯とし、これを連続あるいは半連続的に鋳造して鋳塊を製造し、次いで、この鋳塊を800〜1050℃の高温で熱間圧延することによって熱延板を製作する。
【0005】
次に、製作された熱延板を面削加工した後、冷間圧延、時効熱処理および表面研磨加工を繰り返し行い、引き続き、最終圧延加工と歪み取りのための焼鈍処理を施すことによって所定の厚さの銅合金条とした後、この銅合金条にプレス加工、打ち抜き加工、曲げ加工等の金属加工を施し、メッキ処理をすることによって所定のリードフレームあるいは端子コネクタとする。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のCu−Fe系合金によると、鋳造時の割れ、あるいは熱間圧延時においてエッジ部に生成する耳割れ等の割れ発生の問題を有している。耳割れを発生させた熱延材は、合金条に加工した後にその耳割れ部を除去したとしても、熱間加工中の粒界割れを原因とした欠陥部を内蔵させていることが多く、従って、このような合金条によりリードフレームを製造すると、打ち抜き加工や曲げ加工時におけるリードの折損、あるいは熱処理段階での割れやメッキ膨れなどを多発させることになる。
【0007】
また、従来のCu−Fe系合金によると、耐熱性が充分ではなく、このため、この合金より構成されたリードフレームは、半導体素子を搭載する際の加熱接着あるいは加熱拡散圧着時に熱軟化を起こしやすい性質を有している。
【0008】
従って、本発明の目的は、鋳造割れや熱間圧延割れ等の割れの発生を防ぐことができるとともに、優れた耐熱性を有し、さらに、機械的強度においても優れた特性を有する熱間加工性に優れた銅合金を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するため、Feを1.8〜2.3重量%、Pを0.01〜0.1重量%、Znを0.05〜1.0重量%、Moを0.01〜0.1重量%、およびCを4〜100重量ppm含有し、残りがCuおよび不可避的不純物から成る組成を有することを特徴とする熱間加工性に優れた銅合金を提供するものである。
【0010】
一般に、銅合金等の連続あるいは半連続鋳造においては、鋳塊表層の数mmを除いた内部は、徐々に冷却される形で凝固する。このため、凝固後の冷却過程において、限界を超えて固溶した合金元素が、結晶粒界および結晶粒内に析出するようになる。
【0011】
一方、常温のCu−Fe系合金において、Cu中へ固溶できるFeの上限量は、0.3重量%であり、従って、たとえば、Cu−2.3%Fe−0.03%P−0.12%Znの組成の銅合金の場合には、最大2重量%のFeが結晶粒界および結晶粒内に析出することになるが、結晶粒界にこのように多量のFeが析出すると、高温下での粒界のすべりが起きにくくなり、このため、粒界の高温強度が悪化して熱間加工時に割れが発生するようになる。
【0012】
本発明は、特定の合金元素を特定の量のもとに添加することによって鋳造組織の結晶粒を微細化するとともに、結晶粒界へのFeの析出を抑制し、これによって粒界の中高温強度と中高温脆性を改善して熱間加工性を向上させ、さらに、耐熱性および機械的強度においても特性の向上を図るもので、以下、各元素の添加理由と、その添加量設定の根拠を述べる。
【0013】
Feには、Cu中に固溶および析出して強度および耐熱性を向上させる作用があり、この作用を充分なものとするためには、少なくとも1.8重量%が必要となる。また、添加量が2.3重量%を超過すると、鋳造中に晶出あるいは析出するFeの粒子が巨大化し、プレス加工等の金属加工性の悪化、得られるリードフレーム等の半田付け性の悪化、あるいはメッキ膨れ等の不具合を招くようになる。 従って、Feの添加量は、1.8〜2.3重量%に限定することが必要となる。 より好ましいFeの添加量としては、1.9〜2.2重量%に設定することができる。
【0014】
Pは、銅合金を溶解して鋳造するときの脱酸のために混入される。その添加量は、下限においては充分な脱酸作用を得るため、そして、上限においては脱酸効果が飽和するようになるために0.01〜0.1重量%の範囲内に設定される。
この範囲における最大値は、良好な導電率および加工性を得るための上限値ともなる。より好ましいPの添加量は、0.02〜0.05重量%である。
【0015】
Znには、脱酸および脱ガス作用と、Cuのマイグレーション形成を抑えて漏洩電流を抑制する作用があり、これらの作用を得るためには、少なくとも0.05重量%が必要となる。また、その上限値としては、1.0重量%に設定する必要があり、これを超えると、導電性が低下するので避ける必要がある。より好ましい範囲としては、0.08〜0.2重量%に設定することができる。
【0016】
Moは、Cu中に固溶しての機械的強度および耐熱性の向上と、鋳造中におけるFe粒子晶出の分散化を目的として混入される。これらの目的のためには、少なくとも0.003重量%が必要であり、一方、添加量が0.2重量%を超過すると、混入効果が飽和するとともに、導電率を低下させるようになる。より好ましいMoの含有量は、0.01〜0.1重量%である。
【0017】
Cには、Moとともに溶湯中のFeと反応して結晶核を形成し、これにより鋳造組織を微細化させる作用があり、この作用を問題なく確保するためには、含有量を4〜100重量ppmに設定する必要がある。C量が4重量ppmを下廻る場合には、上記の作用に充分なものが得られず、逆に、100重量ppmを超過すると、0.01mm以上の粗大なFe−C粒子を形成するようになる。より好ましいC量としては、5〜50重量ppmに設定することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による熱間加工性に優れた銅合金の実施の形態を説明する。
電気銅をカーボン粉末で被覆することにより大気から遮断し、低周波誘導溶解炉で溶解した後、表1に示されるC以外の元素を添加することによって各実施例、参考例および比較例の成分調整を行い、次いで、カーボン粉末で被覆された合金溶湯中に低周波誘導撹拌を利用してそれぞれ表1の量のCを含有させた。
【0019】
【表1】
【0020】
次に、これらの溶湯を、カーボン粉末で被覆した鋳造樋を介して鋳型に鋳造することにより、厚さが180mm、幅が450mm、および長さが3500mmの銅合金鋳塊を製造した後、これらを950℃の温度下で熱間圧延することにより、厚さが11mmの熱延板を製造した。熱間圧延は、1パス毎の圧下率を約18%に設定し、さらに、圧延最終温度が650℃以下となる条件のもとで行った。
【0021】
次に、このようにして得られた熱延板の上下面を面削することによって厚さが10mmの板を製作し、さらに、これを冷間圧延することによって2mmの厚さまで圧延した後、600℃で1時間の時効熱処理を施した。次いで、熱処理が済んだ板に2次冷間圧延を行うことによって厚さが0.8mmまで圧延し、引き続き、これに450℃×4時間の時効熱処理を施した後、圧下率75%のもとに最終圧延を行うことにより厚さが0.2mmのCu−Fe系合金条を製造した。
【0022】
表1に、熱間圧延時における割れの発生状況、および結晶組織と、完成合金条の引張強さ、伸び、導電率および軟化温度を示す。なお、割れの観察は、圧延パス毎に行い、何回目のパスのときに割れが発生したかを表示した。表中の平均結晶粒径と最大Fe晶出寸法は、鋳塊の横断面における表面近傍の3点と中央部の3点での測定結果であり、1点当たり20mm×20mmの観察面積を設定することによって測定した。また、耐熱性を示す軟化温度は、サンプルを所定の試験温度で5分間加熱したとき、加熱後のビッカース硬さが加熱前のビッカース硬さの90%になる試験温度を表示した。
【0023】
表1によれば、実施例1〜3、参考例1がいずれも熱間圧延時に割れを発生させていないのに比べ、MoとCを含有しない比較例1の場合には、3回目のパスで熱延板のエッジに割れが発生しており、また、Moを含有しない比較例2の場合にも2回目のパスで割れが発生している。さらに、Cの含有量が本発明の範囲よりも少ない比較例3の場合には、1回目のパスでエッジ割れして3回目のパスで表面割れが発生し、5回目のパスで崩壊に至っている。
【0024】
これらの熱間加工性の差は、結晶組織によるものであり、熱間加工性に優れる実施例1〜3、参考例1が、いずれも3mm以下の小さな平均結晶粒径と0.01mm以下の微細なFe粒子の晶出寸法を有しているのに比べ、比較例1〜3のこれらは、格段に大きな数値であり、この違いが加工性の差となって現れているものである。また、実施例1〜3、参考例1と比較例1、2の間には、引張強さにおいて大きな差が認められ、さらに、耐熱性を示す軟化温度においても顕著な差が認められる。
なお、Fe粒子の晶出寸法は、0.02mmあるいはこれより小さければ充分に微細であり、従って、本発明における好ましい晶出寸法としては、0.02mm以下に設定することができる。
【0025】
MoとCを、それぞれ本発明に限定する量を超えて含有する比較例4の場合には、良好な熱間加工性を有しているけれども、これと実施例1〜3、参考例1を対比すると、引張強さおよび導電率において顕著な差が認められ、両者の差は明白である。
【0026】
Fe、P、Zn、MoおよびCを同時に含み、それぞれの含有量を特定の範囲に設定することによって成立する本発明の銅合金は、表1に示されるように、3mm以下の平均結晶粒径と0.02mm以下のFe晶出寸法による微細な鋳造組織を形成することによって熱間加工時における熱延板の割れを防止するとともに、熱間加工および冷間加工を経て得られる合金条に、520N/mm 2 以上の高い引張強さ、67%IACS以上の良好な導電率、および430℃以上の高い軟化温度特性を与えるものであり、リードフレーム等の原材料として最適な特質を有している。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による銅合金によれば、1.8〜2.3重量%のFeと、0.01〜0.1重量%のPと、0.05〜1.0重量%のZnと、0.01〜0.1重量%のMoと、4〜100重量ppmのCと、残部Cuおよび不可避的不純物から成る合金組成とすることによって、熱間加工性、耐熱性および機械的強度に優れた銅合金を提供するものであり、その有用性は大である。
Claims (3)
- Feを1.8〜2.3重量%、Pを0.01〜0.1重量%、Znを0.05〜1.0重量%、Moを0.01〜0.1重量% 、およびCを4〜100重量ppm含有し、残りがCuおよび不可避的不純物から成る組成を有することを特徴とする熱間加工性に優れた銅合金。
- 前記組成を有する鋳造物は、3mm以下の平均結晶粒径を有し、0.02mm以下のFe粒子の晶出寸法を有することを特徴とする請求項1項記載の熱間加工性に優れた銅合金。
- 前記組成を有する銅合金より加工された銅合金条は、520N/mm 2 以上の引張強さ、67%IACS以上の導電率、および430℃以上の軟化温度を有することを特徴とする請求項1項記載の熱間加工性に優れた銅合金。
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