JP2018204115A - 耐熱性に優れた銅合金 - Google Patents

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Abstract

【課題】高強度、高導電性で、更に耐熱性にも優れたCu−Fe−P系の銅合金を提供する。【解決手段】質量%で、Fe:1.8〜2.7%、P:0.01〜0.20%、Zn:0.01〜0.30%、Sn:0.01〜0.2%を含有し、残部が銅および不可避不純物からなる耐熱性に優れた銅合金。【選択図】なし

Description

本発明は、銅合金に関し、詳細には、高強度、高導電性で、耐熱性に優れた銅合金に関する。
半導体リードフレームの素材には、銅合金が用いられる。銅合金としては、従来からFeとPとを含有するCu−Fe−P系の銅合金が一般に用いられる。Cu−Fe−P系の銅合金としては、CDA194合金が例示でき、具体的には、Fe:2.1〜2.6質量%、P:0.015〜0.15質量%、Zn:0.05〜0.20質量%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる銅合金である。Cu−Fe−P系の銅合金は、母相中にFeまたはFe−P等の金属間化合物を析出させることにより、高強度で、良好な導電性を有し、熱伝導性に優れたものとなる。そのため、国際標準合金として汎用されている。
近年、電子機器に用いられる半導体装置の大容量化、小型化、薄肉軽量化、高機能化に伴い、半導体装置に使用されるリードフレームの小断面積化が進み、より一層の強度、導電性、熱伝導性が要求されている。これに伴い、これら半導体装置に使用されるリードフレームに用いられる銅合金板にも、より一層の高強度化、高導電率化、良好な熱伝導性が求められる。
電気電子部品用銅合金板の強度、導電性、曲げ加工性、および耐応力緩和特性を高める技術が、例えば、特許文献1に開示されている。この技術によれば、Feを比較的多く、2.5〜3.5質量%含有すると共に、Cu母相中に第二相粒子が析出した二相組織とすることにより、銅合金板の強度および導電性を高めている。
ところが、Feの含有量が多くなり過ぎると、導電性が却って劣化することがある。導電性を改善するには、例えば、FeまたはFe−P等の析出粒子の析出量を増加させればよい。しかし、析出粒子の析出量を増加させると、析出粒子の成長、粗大化を招き、強度や耐熱性が低下することが知られている。
上記Cu−Fe−P系銅合金板を、リードフレーム等へ加工する際は、スタンピング加工(プレス打ち抜き加工と呼ばれることもある)により多ピン形状にするのが一般的である。最近では、前述したように電子機器に用いられる半導体装置の小型化、薄肉軽量化に対応するため、原材料として用いる銅合金板の薄肉化や、リードフレーム等の多ピン化が進んでいる。これに伴って、上記スタンピング加工後の加工品に歪み応力が残留し易く、ピンが不揃いになる傾向がある。そこでスタンピング加工して得られる多ピン形状の銅合金板には、通常、歪取り焼鈍等の熱処理を施して歪を除去する。しかしこうした熱処理を行なうと材料が軟化し易く、熱処理前の強度を維持できない。また、生産性を向上させるために、上記熱処理はより高温、短時間で行なうことが求められており、高温での熱処理後も高強度を維持できる耐熱性が強く求められている。
また、銅合金の強度、導電性、および耐熱性を向上させる技術が、特許文献2〜4に開示されている。
特許文献2には、Cu母相中に分散したFe析出物の中で、面積が20nm以上200nm未満である析出物の合計の面積がCu母相全体に占める割合である面積率Sが0.4%以上であり、面積が200nm以上である析出物の合計の面積がCu母相全体に占める割合である面積率Sが、0.4≦S/S≦1.4の関係を満たすことによって、強度、導電性、および耐熱性を高める技術が開示されている。
特許文献3には、抽出残渣法により目開きサイズ0.1μmのフィルターによって分離された0.1μm以上の粗大なFe系化合物を抑制して、強度の向上に有効に寄与する微細なFe系化合物の割合を多くすることにより、強度、導電性、および耐熱性を高める技術が開示されている。
特許文献4には、粒径1μm以上のFe−P粒子の密度を30個/mm以下とすることにより、γFe粒子およびαFe粒子の密度を増大させて強度、導電性、および耐熱性を高める技術が開示されている。
なお、銅合金の強度、導電性、および耐熱性を向上させる技術ではないが、特許文献5には、連続鋳造を経た後の鋳造方向に垂直な断面において、結晶粒内および結晶粒界に存在する初晶鉄粒子の長径の平均値を5μm以下とすることにより、製品となった銅合金板における表面欠陥数や内部割れ等を低減する技術が開示されている。
特開2012−207261号公報 特許第5555154号公報 特許第4950584号公報 特開2014−55341号公報 特開2013−71155号公報
上記特許文献1の技術では、銅合金板の強度および導電性を高めているが、耐熱性については考慮されていない。
また、上記特許文献2の技術では、直径が数nm〜数十nmの非常に微細な析出物を析出させており、上記特許文献3〜5の技術では、0.1μm以上のFe系化合物に着目してその存在割合や大きさを制御している。しかし、本発明者が検討したところ、上記特許文献2〜5では、円相当直径で100〜200nmの化合物の個数密度と、強度、導電性、および耐熱性の関係については検討されていなかった。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、高強度、高導電性で、更に耐熱性にも優れたCu−Fe−P系の銅合金を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る耐熱性に優れた銅合金は、質量%で、Fe:1.8〜2.7%、P:0.01〜0.20%、Zn:0.01〜0.30%、Sn:0.01〜0.2%を含有し、残部が銅および不可避不純物からなる銅合金である。
そして、上記銅合金は、円相当直径で1μm超の化合物が観察視野面積1mmあたり0個以上5.0×10個以下であってもよい。また、円相当直径で100〜200nmの化合物が観察視野面積1mmあたり1.0×10〜1.0×10個であってもよい。なお、以下、化学成分について、%は質量%を意味する。
上記銅合金は、更に、質量%で、Si、Ni、およびCoよりなる群から選ばれる一種または二種以上:合計で0.01〜0.1%を含有してもよい。
本発明によれば、成分組成を適切に制御しているため、高強度、高導電性で、更に耐熱性にも優れたCu−Fe−P系の銅合金を提供できる。
本発明者は、高強度、高導電性で、耐熱性にも優れたCu−Fe−P系の銅合金を提供するために、鋭意検討を重ねてきた。その結果、銅合金の成分組成を適切に制御すると共に、銅合金に含まれる化合物のうち、(A)円相当直径で1μm超の化合物を、観察視野面積1mmあたり0個以上5.0×10個以下とし、(B)円相当直径で100〜200nmの化合物を、観察視野面積1mmあたり1.0×10〜1.0×10個とすれば、強度、導電性、および耐熱性の全てに優れた銅合金を実現できることを見出し、本発明を完成した。
また、本発明に係る銅合金は、成分組成を調整した銅合金を溶解、鋳造し、得られた鋳塊を均熱処理した後、熱間圧延でき、特に、化合物の個数密度を上記範囲に制御するには、均熱処理条件および熱間圧延条件を適切に調整すれば良いことが明らかになった。
以下、本発明について詳細に説明する。
(A)円相当直径で1μm超の化合物の個数密度
本発明の銅合金は、円相当直径で1μm超の化合物が、観察視野面積1mmあたり0個以上5.0×10個以下である。円相当直径で1μm超の化合物の個数密度が5.0×10個/mmを超えると、後述する円相当直径で100〜200nmの化合物、および一次焼鈍または二次焼鈍で生成する円相当直径で数nm〜数十nmの化合物の生成量が低減する。その結果、強度、導電性、耐熱性が劣化する。また、プレス打ち抜き加工時に割れが発生する原因となる。従って本発明では、円相当直径で1μm超の化合物の個数密度を5.0×10個/mm以下とする。円相当直径で1μm超の化合物の個数密度は、好ましくは4.5×10個/mm以下、より好ましくは4.0×10個/mm以下とする。円相当直径で1μm超の化合物の個数密度は、できるだけ少ない方が良く、最も好ましくは0個/mmである。
(B)円相当直径で100〜200nmの化合物の個数密度
本発明の銅合金は、円相当直径で100〜200nmの化合物が、観察視野面積1mmあたり1.0×10個以上1.0×10個以下である。即ち、円相当直径で100〜200nmの化合物を0.10×10個以上10×10個以下とする。円相当直径で100〜200nmの化合物は、従来では特段注目されていなかったが、本発明者が検討したところ、銅合金の導電性および耐熱性向上に寄与することが初めて明らかになった。こうした作用を発揮させるには、円相当直径で100〜200nmの化合物の個数密度を1.0×10個以上とする。円相当直径で100〜200nmの化合物の個数密度は、好ましくは5.0×10個/mm以上である。しかし、円相当直径で100〜200nmの化合物の個数密度が大きくなり過ぎると、一次焼鈍および二次焼鈍で生成する数nm〜数十nmの化合物量が低減し、銅合金の強度が低下し、耐熱性も却って劣化する。従って円相当直径で100〜200nmの化合物の個数密度は1.0×10個以下とする必要がある。円相当直径で100〜200nmの化合物の個数密度は、好ましくは8.0×10個/mm以下、より好ましくは5.0×10個/mm以下である。
円相当直径で1μm超の化合物、および100〜200nmの化合物の個数密度は、次の手順で測定すればよい。即ち、円相当直径で1μm超の化合物の個数密度は、試験片の幅方向における横断面において、例えば、板厚中心部の厚み方向90μm×断面方向125μmの領域を走査型電子顕微鏡で、倍率1000倍で観察し、各化合物の円相当直径を、画像解析ソフトを用いて算出し、円相当直径が1μm超の化合物の個数を求め、観察視野面積で除することにより算出すればよい。
円相当直径で100〜200nmの化合物の個数密度は、上記横断面において、例えば、板厚中心部の厚み方向9.0μm×断面方向12.5μmの領域を走査型電子顕微鏡で、倍率10000倍で観察し、各化合物の円相当直径を、上記と同様、画像解析ソフトを用いて算出し、円相当直径が100〜200nm化合物の個数を求め、観察視野面積で除することにより算出すればよい。なお、分析対象とする化合物の種類は特に限定されない。
上記画像解析ソフトとしては、例えば、Macromedia社製のImage−Pro Plusを用いることができる。
なお、上記特許文献3に開示されている技術では、上述したように、抽出残渣法により目開きサイズ0.1μmのフィルターによって分離された0.1μm以上の粗大なFe系化合物を抑制している。しかし、この技術では、本発明のように、円相当直径で1μm超の化合物と100〜200nmの化合物の個数密度を別々に算出できない。また、上記特許文献5には、初晶鉄粒子の長径の平均値を5μm以下に抑えることが記載されており、上記特許文献4には、粒径1μm以上のFe−P粒子の密度を30個/mm以下とすることが記載されている。しかし、特許文献4、5においては、円相当直径で100〜200nmの化合物の個数密度は全く考慮されていない。
本発明に係る銅合金は、円相当直径で1μm超の化合物の個数密度と、100〜200nmの化合物の個数密度が、上記範囲を満足することが重要であり、更に、成分組成は、質量%で、Fe:1.8〜2.7%、P:0.01〜0.20%、Zn:0.01〜0.30%、Sn:0.01〜0.2%を満足する必要がある。
Feは、銅合金の母相中に固溶させるか、Fe系の化合物を生成させることによって、強度と耐熱性を向上させるために必要な元素である。Fe量が1.8%未満では、Feの固溶量または析出量が不足し、強度および耐熱性が得られない。従って本発明では、Fe量は1.8%以上とする。Fe量は、好ましくは2.1%以上である。しかし、Fe量が過剰になると、粗大なFe化合物が生成し、打ち抜き加工時に割れが発生する原因になる。従って本発明では、Fe量は2.7%以下とする。Fe量は、好ましくは2.6%以下、より好ましくは2.4%以下である。
Pは、溶湯に混入する酸素を脱酸する作用を有する元素であり、またFeとの化合物を形成して銅合金の強度および耐熱性を向上させる元素である。こうした作用を発揮させるには、P量は0.01%以上とする必要がある。P量は、好ましくは0.02%以上である。しかし、P量が過剰になると導電率が低下する。また、熱間加工性が低下する。従って本発明では、P量は0.20%以下とする。P量は、好ましくは0.15%以下である。
Znは、銅合金に対するはんだの耐熱剥離性を改善したり、銅合金に対するSnめっきの耐熱剥離性を改善するために必要な元素である。こうした耐熱剥離性は、例えば、銅合金をリードフレームなどに用いるときに要求される特性である。こうした作用を発揮させるには、Zn量は0.01%以上とする必要がある。Zn量は、好ましくは0.05%以上である。しかしZn量が過剰になると、導電率が低下する。また、銅合金に対するはんだの濡れ性が低下する。従って本発明では、Zn量は0.30%以下とする。Zn量は、好ましくは0.20%以下である。
Snは、銅合金の強度および耐熱性を向上させるために必要な元素である。こうした作用を発揮させるために、Sn量は0.01%以上とする。Sn量は、好ましくは0.02%以上である。しかしSn量が過剰になると、導電率が低下する。また、熱間加工性も低下する。従って本発明では、Sn量は0.2%以下とする。Sn量は、好ましくは0.10%以下であり、より好ましくは0.05%以下である。
本発明に係る銅合金の残部は、銅および不可避不純物である。
本発明の銅合金は、更に、質量%で、Si、Ni、およびCoよりなる群から選ばれる一種または二種以上を、合計で0.01〜0.1%含有してもよい。
Si、Ni、およびCoは、FeまたはPと化合物を形成し、銅合金の強度および耐熱性を向上させる元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、Si、Ni、およびCoを一種または任意に選ばれる二種以上を合計で0.01%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.03%以上である。しかし、Si等の元素を過剰に含有すると、化合物が粗大化し、プレス打ち抜き加工時に割れを発生させる原因となる。従って本発明では、Si、Ni、およびCoを一種または任意に選ばれる二種以上を合計で0.1%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.08%以下である。
本発明に係る銅合金は、引張強度が530MPa以上、導電率が60%IACS以上となり、ビッカース硬さは155Hv以上となる。また、475℃で1分間焼鈍した後におけるビッカース硬さは140Hv以上となり、耐熱性に優れた銅合金となる。
次に、本発明に係る銅合金の好ましい製造条件について説明する。
まず、成分組成を調整した銅合金を溶解、鋳造し、得られた鋳塊を均熱処理した後、熱間圧延する。化合物の個数密度を上記範囲に制御するには、均熱処理条件および熱間圧延条件を適切に調整すればよい。銅合金の溶解、鋳造は常法に従って行なえばよい。
均熱処理は、上記鋳塊を800℃以上950℃未満に加熱し、必要に応じて一定時間保持すればよい。保持時間は、例えば、10〜120分間である。均熱処理の温度が800℃を下回ると、円相当直径で100〜200nmの化合物が多く生成し、個数密度が高くなりやすい。従って本発明では、均熱処理の温度は、800℃以上とすることが好ましい。均熱処理の温度は、より好ましくは830℃以上、更に好ましくは850℃以上である。しかし均熱処理の温度が950℃以上になると、円相当直径で1μm超の化合物が多く生成し、個数密度が高くなりやすい。従って本発明では、均熱処理の温度は、950℃未満とすることが好ましい。均熱処理の温度は、より好ましくは940℃以下、更に好ましくは920℃以下である。例えば、上記特許文献4では、鋳塊を1020〜1080℃まで加熱して2時間以上保持しているため、円相当直径で1μm超の化合物が多く生成し過ぎていると考えられる。従って上記特許文献4では、強度が低くなっていると考えられる。
均熱処理した後は、熱間圧延を行なう。熱間圧延の圧下率は特に限定されず、目的とする板厚および後工程の冷間圧延における冷延率との関係で決定すればよい。なお、熱間圧延は、1回、或いは複数回行なうことができる。
本発明の銅合金を製造する際には、熱間圧延の終了温度を700℃以上850℃未満とすることが特に推奨される。熱間圧延の終了温度が700℃を下回ると、円相当直径で100〜200nmの化合物が多く生成し、個数密度が高くなりやすい。従って本発明では、熱間圧延の終了温度は、700℃以上とすることが好ましい。熱間圧延の終了温度は、より好ましくは730℃以上、更に好ましくは750℃以上である。しかし熱間圧延の終了温度が850℃以上になると、円相当直径で1μm超の化合物が多く生成し、個数密度が高くなりやすい。従って本発明では、熱間圧延の終了温度は850℃未満とすることが好ましい。熱間圧延の終了温度は、より好ましくは840℃以下、更に好ましくは830℃以下である。
熱間圧延後は、室温まで急冷すればよい。熱間圧延後の冷却速度が小さいと、冷却過程で円相当直径が1μm超の粗大な化合物が多く析出し、円相当直径で100〜200nmの微細な化合物を所定量生成させにくくなる。本発明で急冷とは、空冷を超える平均冷却速度での冷却であり、好ましくは20℃/秒以上である。平均冷却速度の上限は特に限定されないが、実操業などを考慮すると、おおむね500℃/秒以下が好ましい。
急冷手段は特に限定されず、例えば、水冷など公知の冷却手段を採用できる。
急冷した後は、1回目の冷間圧延(以下、1次冷間圧延という)を施した板材に1次焼鈍による熱処理を施した後、2回目の冷間圧延(以下、2次冷間圧延という)により、所定形状に成形し、その後、2次焼鈍による熱処理を施すことにより、銅合金組織内の歪みを除去すればよい。
1次冷間圧延における圧延加工率は任意であるが、最終的な板材の板厚および後述する2次冷間圧延における圧延加工率に合わせて調節すればよい。
1次冷間圧延後は、例えば、450〜650℃で30分間〜24時間の1次焼鈍を施すことにより、円相当直径で100〜200nmの化合物の個数密度を適正な範囲に制御できる。1次焼鈍温度が450℃未満または1次焼鈍時間が30分間未満では、加熱処理不足により、円相当直径で100〜200nmの化合物の個数密度が低くなりやすく、導電率が低くなりやすい。一方、1次焼鈍温度が650℃を超えると、円相当直径で100〜200nmの化合物の個数密度が高くなりやすく、強度が低くなりやすい。また、1次焼鈍時間が24時間を超えると、エネルギーロスとなり、経済的に非効率である。
次に、1次焼鈍後は、2次冷間圧延を施す。2次冷間圧延により、金属組織内に加工歪みを導入し、銅合金板の強度を向上できる。2次冷間圧延における圧延加工率は、例えば25〜70%とすればよい。2次冷間圧延における圧延加工率が25%未満では、圧延により金属組織内に蓄積される歪み量が低下し、充分な強度が得にくくなる。一方、2次冷間圧延における圧延加工率が70%を超えると、金属組織内に蓄積される歪み量は飽和して、強度の向上が得にくくなる。
次に、2次冷間圧延後は、250〜450℃で、20〜1000秒間の2次焼鈍を行なうことが好ましい。2次焼鈍は、2次冷間圧延で導入された歪を取るための焼鈍であり、250〜450℃の低温域で可動する歪の除去を行なえば良い。2次焼鈍温度が250℃未満または2次焼鈍時間が20秒間未満では、可動歪の除去が不充分となり、導電率が低下しやすくなる。一方、2次焼鈍温度が450℃を超えるか、2次焼鈍時間が1000秒間を超えると、歪の除去が過剰となり強度が低下しやすくなる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1に示す成分組成を有し、残部が銅および不可避不純物からなる銅合金をコアレス炉にて溶製した後、半連続鋳造法で造塊して、厚さ70mm×幅200mm×長さ500mmの鋳塊を製造した。なお、下記表1には、Si、Ni、およびCoの合計量を算出した結果も併せて示した。
得られた鋳塊の表面を面削した後、750〜1050℃の温度で1時間保持する均熱処理を行ってから熱間圧延を行ない、厚さ15mmの熱延板を得た。下記表2に均熱処理の温度を示す。熱間圧延開始温度は、熱間圧延終了温度が600〜800℃となるように調整し、熱間圧延終了後は、直ちに水冷により急冷した。下記表2に熱間圧延終了温度を示す。
次に、酸化スケールを除去した後、1次冷間圧延、1次焼鈍、2次冷間圧延、および2次焼鈍を行ない、厚さ0.25mmの冷延板を得た。1次焼鈍は、550℃に加熱し、この温度で4時間保持して行なった。2次焼鈍は、350℃に加熱し、この温度で60秒間保持して行なった。
得られた冷延板について、化合物の個数密度、引張強度、導電率、硬さ、および耐熱性を測定した。
化合物の個数密度は、円相当直径が1μm超の化合物と、円相当直径が100〜200nmの化合物について測定した。
円相当直径が1μm超の化合物の個数密度は、上記冷延板の幅方向の横断面において、板厚中心部の厚み方向90μm×断面方向125μmの領域を走査型電子顕微鏡で、観察倍率1000倍で観察し、観察視野内の化合物の円相当直径を画像解析ソフト(Macromedica社製のImage−Pro Plus)を用いて測定した。測定結果を下記表2に示す。
円相当直径が100〜200nmの化合物の個数密度は、上記冷延板の幅方向の横断面において、板厚中心部の厚み方向9.0μm×断面方向12.5μmの領域を走査型電子顕微鏡で、観察倍率10000倍で観察し、観察視野内の化合物の円相当直径を上記画像解析ソフトを用いて測定した。測定結果を下記表2に示す。
引張強度は、上記冷延板から切り出したJIS 13号B試験片を用い、5882型インストロン社製万能試験機で測定した。引張強度は室温、試験速度を10.0mm/分、標線間距離GLを50mmとして測定した。測定結果を下記表2に示す。本実施例では、引張強度が530MPa以上を合格とした。
導電率は、上記冷延板をミーリングにより幅10mm×長さ300mmの短冊状に加工した試験片を用い、ダブルブリッジ式抵抗測定装置により電気抵抗を測定し、平均断面積法により算出した。算出結果を下記表2に示す。本発明では、60%IACS以上を合格とし、導電性が良好と評価した。
硬さは、松沢精機製作所製のマイクロビッカース硬度計(商品名「微小硬度計」)を用い、0.5kgの荷重を加えて3箇所で測定し、平均値を求めた。算出結果を下記表2に示す。本実施例では、硬さが155Hvを合格とした。
引張強度が530MPa以上で、且つ硬さが155Hv以上の場合を高強度と評価し、発明例とした。一方、引張強度または硬さの少なくとも一方が合格基準に達しない場合を比較例とした。
耐熱性は、上記冷延板を、焼鈍を模擬して475℃で1分間加熱保持した後に、松沢精機製作所製のマイクロビッカース硬度計(商品名「微小硬度計」)を用い、0.5kgの荷重を加えて硬さを測定した。測定結果を下記表2に示す。本発明では、140Hv以上を合格とし、耐熱性に優れると評価した。
下記表2から次のように考察できる。
No.1〜8は、本発明で規定する要件を満足する例であり、成分組成が適切に制御されていると共に、円相当直径が1μm超の化合物および円相当直径が100〜200nmの化合物の個数密度が所定の条件を満足しているため、高強度で、しかも導電性が良好で、耐熱性にも優れた銅合金が得られた。
No.11〜18は、本発明で規定するいずれかの要件を満足しない例である。
詳細には、No.11は、Fe量が過剰で、円相当直径が1μm超の化合物の個数密度が高くなり過ぎた例である。その結果、導電率が低下した。
No.12は、Fe量が少なすぎる例であり、引張強度および硬さが低く、耐熱性も改善できなかった。
No.13は、P量が過剰な例であり、円相当直径が1μm超の化合物の個数密度が高くなり過ぎた。その結果、引張強度、硬さ、導電率が低く、耐熱性も改善できなかった。
No.14は、Sn量が過剰な例であり、導電率が低下した。
No.15は、本発明で推奨する温度域より高い980℃で均熱処理した。その結果、円相当直径が1μm超の化合物の個数密度が高くなり過ぎ、耐熱性を改善できなかった。
No.16は、本発明で推奨する温度域より高い1050℃で均熱処理し、本発明で推奨する温度域より低い600℃で熱間圧延を終了した。その結果、円相当直径が100〜200nmの個数密度が高くなり過ぎ、引張強度および硬さが低くなった。
No.17は、本発明で推奨する温度域より低い670℃で熱間圧延を終了した。その結果、円相当直径が100〜200nmの個数密度が高くなり過ぎ、引張強度および硬さが低くなった。
No.18は、本発明で推奨する温度域より低い750℃で均熱処理を行ない、本発明で推奨する温度域より低い650℃で熱間圧延を終了した。その結果、円相当直径が100〜200nmの個数密度が高くなり過ぎ、引張強度および硬さが低くなり、耐熱性も改善できなかった。
Figure 2018204115
Figure 2018204115

Claims (4)

  1. 質量%で、
    Fe:1.8〜2.7%、
    P :0.01〜0.20%、
    Zn:0.01〜0.30%、
    Sn:0.01〜0.2%を含有し、
    残部が銅および不可避不純物からなることを特徴とする耐熱性に優れた銅合金。
  2. 円相当直径で1μm超の化合物が観察視野面積1mmあたり0個以上5.0×10個以下である請求項1に記載の銅合金。
  3. 円相当直径で100〜200nmの化合物が観察視野面積1mmあたり1.0×10〜1.0×10個である請求項1又は2に記載の銅合金。
  4. 更に、質量%で、
    Si、Ni、およびCoよりなる群から選ばれる一種または二種以上:合計で0.01〜0.1%を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅合金。
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