JP3932686B2 - 四輪駆動車のトランスファ装置 - Google Patents

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  • Gear-Shifting Mechanisms (AREA)
  • Arrangement And Driving Of Transmission Devices (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、四輪駆動車のトランスファ装置に係り、特に複数の切換機構を備えて車両の走行状態を変更する四輪駆動車のトランスファ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
4輪駆動車(4WD車)の車両においては、2輪駆動(2WD)と4輪駆動(4WD)とに切換える2輪4輪切換機構や、高速(H)と低速(L)とに切換える高速低速切換機構等の複数の切換機構を備えたトランスファがトランスミッションと一体的に設けられているものがある。これら切換機構は、例えば、レバーの操作による各シフト軸の動作に伴って作動されるものである。
【0003】
即ち、トランスファにあっては、図11に示す如く、高速低速フォーク302を固定した高速低速シフト軸304と2輪4輪フォーク306を固定した2輪4輪シフト軸308とが近接して並設され、高速低速シフト軸304の外周面に高速低速シフト溝310が形成され、2輪4輪シフト軸308の外周面には高速低速シフト溝310に対応する2輪4輪シフト溝312が形成され、この高速低速シフト溝310と2輪4輪シフト溝312とにはシフトレバー314がシフト動作・セレクト動作によって選択的に係合し、これにより、2輪駆動(2WD)・4輪駆動(4WD)や高速(H)・低速(L)の切換えが行われている。
【0004】
また、レバーのセレクト動作をしないで、アクチュエータを利用して各切換えを行う場合には、図12に示す如く、高速低速フォーク402を固定した高速低速シフト軸404と2輪4輪フォーク406を固定した2輪4輪シフト軸408とにシフトヨーク410を設け、また、高速低速シフト軸404の外周面に高速低速側半円形溝412を形成するとともに、2輪4輪シフト軸408の外周面には高速低速シフト溝412に対応する2輪4輪側半円形溝414を形成し、この高速低速半円形溝412と2輪4輪半円形溝414とに、シフトヨーク410内に設けたボール416を選択的に係合させている。ここで、図示しないが、アクチュエータを利用して高速低速シフト軸404及び2輪4輪シフト軸408を動作させ、高速2輪駆動(2H)と高速4輪駆動(4H)と低速4輪駆動(4L)とに切換える場合に、シフト操作させるシフト用アクチュエータとセレクト操作させるセレクト用アクチュエータとの2種類のアクチュエータを使用したり、あるいは、3ストップポジションアクチュエータを使用している。
【0005】
また、このようなトランスファ装置としては、例えば、特開平10−53045号公報、特開平8−156625号公報、実開平6−80053号公報に開示されている。特開平10−53045号公報に記載のものは、2輪4輪切換軸状体と高速低速切換軸状体とを同軸的に配置し、2輪4輪切換軸状体は高速低速切換軸状体に対して独立して軸長方向に作動して2輪駆動と4輪駆動との間における切換えを行わせて、小型化を図るものである。特開平8−156625号公報に記載のものは、4輪高速ポジション(4H)と4輪高速直結ポジション(4HLc)と4輪低速直結ポジション(4LLc)との3つのシフトポジションを、1本の切換レールで切換えさせ、オンロードの安全性とオフロードの走破性とを両立させるものである。実開平6−80053号公報に記載のものは、レバーと連動してスイッチを切換えさせることにより、構成を簡単にするものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来、トランスファ装置にあっては、図11に示す如く、シフトレバーによって2輪駆動(2WD)・4輪駆動(4WD)や高速(H)・低速(L)に切換える場合に、シフトレバーのセレクト動作が必要になり、その操作が煩わしくなるという不都合があった。
【0007】
また、図12に示す如く、アクチュエータによって高速2輪駆動(2H)と高速4輪駆動(4H)と低速2輪駆動(4L)とに切換える場合には、2種類のアクチュエータが必要であったり、また、3ストップポジションアクチュエータのストップポジション(4H)を高精度、特に3つのストップポジションの中で真中のストップポジションの精度を高くして制御する必要があり、その制御が煩わしくなるという不都合があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、この発明は、上述の不都合を除去するために、第1シフト軸に固定した高速低速シフトフォークを高速側ストッパと低速側ストッパとの間で前記第1シフト軸の軸方向に移動して高速と低速とを切換える高速低速切換機構と、第2シフト軸に固定した2輪4輪シフトフォークを2輪側ストッパと4輪側ストッパとの間で前記第2シフト軸の軸方向に移動して2輪駆動と4輪駆動とを切換える2輪4輪切換機構とを備え、前記第1シフト軸及び前記第2シフト軸の移動によって高速2輪駆動から高速4輪駆動を経て低速4輪駆動に切換えを行う四輪駆動車のトランスファ装置において、前記第1シフト軸と前記第2シフト軸とを近接して並設し、前記第1シフト軸には前記第2シフト軸に対向する外周面第1長円形溝と第1半円形溝とを軸方向に離間して設け、前記第2シフト軸には前記第1シフト軸に対向する外周面に第2半円形溝と第2長円形溝とを軸方向に離間して設け、前記第1、第2シフト軸には前記第1、前記第2長円形溝及び前記第1、前記第2半円形溝の部位を抱持して軸方向移動可能なシフトヨークを遊嵌して設け、このシフトヨークには前記第1シフト軸と前記第2シフト軸との間に延びる区画壁を設け、この区画壁に第1ボール及び第2ボールを前記第1、第2シフト軸の両シフト軸の径方向に移動可能に保持し、前記第1シフト軸が高速側且つ前記第2シフト軸が2輪駆動側にある高速2輪駆動の場合、前記第1ボールを前記第2半円形溝と係合し且つ前記第2ボールを前記第2長円形溝の軸方向一側に位置する状態として前記シフトヨークによって前記第2シフト軸を2輪駆動側から4輪駆動側に移動可能とし、前記第2シフト軸を4輪駆動側に移動して高速4輪駆動とした場合、前記第1ボールを前記第2半円形溝から前記第1長円形溝の軸方向一側に移動して前記シフトヨークのみを軸方向に移動可能とする一方、前記シフトヨークが高速4輪駆動位置を超えて所定距離移動した場合、前記第1ボールを前記1長円形溝の軸方向他端に係合させるとともに前記第2ボールを前記第2長円形溝の軸方向他側によって前記第1半円形溝に移動させて前記第1シフト軸を高速側から低速側に移動可能としたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
この発明は、シフトヨークの軸方向移動によって第1、第2シフト軸を軸方向移動して各切換えを行うことができるので、シフトレバーによるセレクト動作を不要にするとともに、シフトヨークを軸方向移動させるために一のアクチュエータを設ければよいだけなので、構成を簡単にし、また、アクチュエータがオーバーストロークしても、シフト位置に影響を与えることがなく、アクチュエータのストップポジションを高精度に制御する必要がなく、また、既存の部品の共通化を図ることができる。
【0010】
【実施例】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細且つ具体的に説明する。図1〜8は、この発明の第1実施例を示すものである。図2〜4において、2は四輪駆動車(4WD車)の走行状態を変更するトランスファ、4はトランスファケースである。このトランスファ2は、トランスミッション(図示せず)に一体的に連結されるものである。
【0011】
このトランスファケース4は、フロントケース6とセンタケース8とリアケース10とから構成される。
【0012】
フロントケース6のフロント壁部12には、フロント軸受14によってトランスファ入力軸16が回転自在に設けられている。
【0013】
センタケース8のセンタ壁部18とリアケース10のリア壁部20とには、トランスファ入力軸16と同一軸心上にセンタ軸受22とリア軸受24とによってトランスファリア出力軸26が回転自在に設けられている。
【0014】
また、フロントケース6のフロント壁部12とセンタケース8のセンタ壁部18とには、トランスファ入力軸16及びトランスファリア出力軸26と平行にトランスファカウンタ軸28が回転自在に設けられている。このトランスファカウンタ軸28は、センタ壁部18に連設して室形成壁部30で形成されたギヤ室32内に配設されている。センタケース8の室形成壁部30に連設した軸支持部34とリアケース10のリア壁部20とには、トランスファリア出力軸26と平行にトランスファフロント出力軸36が第1、第2従動側軸受38−1、38−2によって回転自在に設けられている。
【0015】
トランスファリア出力軸26には、リアケース10内でトランスファドライブスプロケット40が回転自在に設けられている。トランスファフロント出力軸36には、トランスファドライブスプロケット40に対応してトランスファドリブンスプロケット42が固定して設けられている。トランスファドライブスプロケット40とトランスファドリブンスプロケット42とには、トランスファチェーン44が巻掛けて設けられる。
【0016】
トランスファ入力軸16には、トランスファドライブギヤ46が設けられている。トランスファカウンタ軸28には、トランスファドライブギヤ46に噛合するトランスファドリブンギヤ48が設けられている。
【0017】
また、トランスファカウンタ軸28には、減速ドライブギヤ50が設けられている。また、トランスファリア出力軸26には、減速ドライブギヤ50に噛合する減速ドリブンギヤ52が設けられている。
【0018】
更に、トランスファドライブギヤ46と減速ドリブンギヤ52間には、高速低速ハブ54及び高速低速スリーブ56を有する第1の切換機構である高速低速機構58が設けられる。この高速低速スリーブ56には、第1シフト軸である高速低速シフト軸60に固定した高速低速フォーク62が係合して設けられている。高速低速シフト軸60は、図5に示す如く、高速低速フォーク62が当接する高速側ストッパ64と低速側ストッパ66とにより、その軸方向移動が制限されている。この高速側ストップ64と低速側ストッパ66とは、トランスファケース4に設けられ、高速低速フォーク62を挟むように所定の距離A1で離間している。
【0019】
また、センタ軸受22よりもトランスファドライブスプロケット40側のトランスファリア出力軸26には、トランスファリア出力軸26の駆動力をトランスファドライブスプロケット40に断続して2輪駆動と4輪駆動とに切換える第2の切換機構である2輪4輪切換機構68が設けられる。この2輪4輪切換機構68は、シンクロ部品からなり、トランスファリア出力軸26に固設した2輪4輪ハブ70及び2輪4輪スリーブ72を有している。この2輪4輪スリーブ72には、第2シフト軸である2輪4輪シフト軸74に固定した2輪4輪フォーク76が係合して設けられている。2輪4輪シフト軸74は、図5に示す如く、2輪4輪フォーク76が当接する2輪側ストッパ78と4輪側ストッパ80とにより、その軸方向移動が制限されている。この2輪側ストッパ78と4輪側ストッパ80とは、トランスファケース4に設けられ、2輪4輪フォーク76を挟むように所定の距離A2で離間している。
【0020】
高速低速シフト軸60と2輪4輪シフト軸74とは、図5に示す如く、比較的小さな軸間距離Bで近接して並設される。
【0021】
高速低速シフト軸60の2輪4輪シフト軸74側の外周面60cには、図6に示す如く、第1長円形溝82と第1半円形溝84とが軸方向に距離Cで離間して並んで形成される。第1長円形溝82は、2輪4輪シフト軸74のオーバーストロークS2に相当する所定の長さLで、第1一側段差球面82aと第1他側段差球面82bと第1中央側平坦面82cとによって形成されている。この第1中央側平坦面82cの外周面60cからの深さD1は、後述する第1ボール102の半円よりも少し小さく設定されている。第1半円形溝84は、上述の深さD1で且つ後述する第2ボール104の半円よりも少し小さな長さE1の第1球面84aによって形成されている。
【0022】
2輪4輪シフト軸74の高速低速シフト軸60側の外周面74cには、図7に示す如く、第1長円形溝82に対応する第2半円形溝86と第1半円形溝84に対応する第2長円形溝88とが軸方向に距離Cで離間して並んで形成される。第2半円形溝86は、上述の深さD1で且つ第1ボール102の半円よりも少し小さなE1の第2球面86aによって形成されている。第2長円形溝88は、上述の長さLで、第2一側段差球面88aと第2他側段差球面88bと第2中央側平坦面88cとによって形成されている。この第2中央側平坦面88cの外周面74cからの深さD1は、第2ボール104の半円よりも少し小さく設定されている。
【0023】
高速低速シフト軸60と2輪4輪シフト軸74とは、高速4輪駆動(4H)時に、第1長円形溝82と第2半円形溝86とが重合するとともに第1半円形溝84と第2長円形溝88とが重合するように、トランスファケース4に軸方向移動可能に設けられるものである。これにより、高速2輪駆動(2H)時に、第1ボール102が第2半円形溝86に係合し且つ第1長円形溝82から外れるとともに、第2ボール104が第2長円形溝88の第2一側段差球面88aに係合し且つ第1半円形溝84から外れている。また、高速4輪駆動(4H)時に、第1ボール102が第2半円形溝86に係合し且つ第1長円形溝82の第1一側段差球面82aに位置するとともに、第2ボール104が第2長円形溝88の第2一側段差球面88aに位置し且つ第1半円形溝84から外れており、また、2輪4輪シフト軸74がオーバーストロークした時に、第1ボール102が第2半円形溝86から外れて第1長円形溝82の第1他側段差球面82bに係合するとともに、第2ボール104が第2長円形溝88の第2他側段差球面88bに位置し且つ第1半円形溝84に位置している。更に、低速4輪駆動(4L)時に、第1ボール102が第2半円形溝86から外れて第1長円形溝82の第1他側段差球面82bに係合するとともに、第2ボール104が第2長円形溝88から外れて第1半円形溝84に係合している。
【0024】
また、高速低速シフト軸60及び2輪4輪シフト軸74には、第1、第2長円形溝82、88及び第1、第2半円形溝84、86の部位を抱持して軸方向移動されるシフトヨーク90が遊嵌して設けられる。
【0025】
このシフトヨーク90には、図8に示す如く、高速低速シフト軸60を挿通する第1軸孔92と2輪4輪シフト軸74を挿通する第2軸孔94とが区画壁96を介して並んで軸方向に指向して形成されている。この区画壁96には、第1軸孔92と第2軸孔94とを連通するように径方向に指向し且つ第1ボール102と第2ボール104を往復動させるように形成された第1ボール用孔98と第2ボール用孔100とが所定の距離Fで離間して形成されている。第1ボール用孔98には、第1ボール102が径方向に往復動可能に設けられている。第2ボール用孔100には、第2ボール104が径方向に往復動可能に設けられている。第1ボール102は、上述の如く、シフトヨーク90の軸方向移動によって第1長円形溝82と第2半円形溝86とに係合・抜脱するものである。第2ボール104は、上述の如く、シフトヨーク90の軸方向移動によって第1半円形溝86と第2長円形溝88とに係合・抜脱するものである。また、シフトヨーク90の軸方向の両外側面には、アーム係合溝106、106が夫々形成されている。
【0026】
このシフトヨーク90のアーム係合溝106、106には、回動アーム108、108の夫々一端側が係合し且つ摺動可能に設けられる。
【0027】
この回動アーム108、108の夫々他端側は、図3、4に示す如く、高速低速シフト軸60及び2輪4輪シフト軸74と直交方向に指向してトランスファケース4に回動可能に取付けた回動軸110に固設されている。この回動軸110のトランスファケース4から突出した端部位には、連絡レバー112の一端側が固設されている。この連絡レバー112の他端側には、ケーブル114の一端側が接続されている。このケーブル114の他端側は、3ストップポジションアクチュエータ116に接続されている。
【0028】
この3ストップポジションアクチュエータ116は、図2に示す如く、高速2輪駆動(2H)と高速4輪駆動(4H)と低速4輪駆動(4L)との3つのストップポジションを有し、ケーブル114を往復動することによって連絡レバー112を回動させ、この連絡レバー112の回動によって回動軸110を回動させ、そして、この回動軸110の回動によって回動アーム108を回動させ、そして、終には、高速低速シフト軸60及び4輪2輪シフト軸74を軸方向に往復動させるものである。つまり、3ストップポジションアクチュエータ46の直線運動が連絡レバー112と回動軸110とによって回転運動に変換され、そして、この回転運動が回動アーム108の一端側がシフトヨーク90のアーム係合溝106内で摺動することによって直線運動に変換され、シフトヨーク90を高速低速シフト軸60及び2輪4輪シフト軸74上で軸方向に往復動させるものである。
【0029】
次に、この第1実施例の作用を説明する。
【0030】
図1に示す如く、高速2輪駆動(2H)時にあっては、高速低速フォーク62が高速側ストッパ64に当接するとともに、2輪4輪フォーク76が2輪側ストッパ78に当接し、高速低速シフト軸60及び2輪4輪シフト軸74の軸方向移動が制限されている。
【0031】
またこのとき、第1ボール102が高速低速シフト軸60の外周面60cに接しつつ2輪4輪シフト軸74の第2半円形溝86に入って係合しているとともに、第2ボール104が高速低速シフト軸60の外周面60cに接しつつ2輪4輪シフト軸74の第2長円形溝88の第2一側段差球面88aに接して係合している。
【0032】
そして、3ストップポジションアクチュエータ116の作動によってシフトヨーク90を高速2輪駆動(2H)から高速4輪駆動(4H)に軸方向移動すると、第1ボール102が第2半円形溝86に入って係合しているままであることにより、2輪4輪シフト軸74が軸方向移動し始める。この2輪4輪シフト軸74は、2輪4輪フォーク76が4輪側ストッパ80に当接することにより、距離S1だけ移動して停止され、これにより、高速4輪駆動(4H)へのシフトが完了する。このとき、シフトヨーク90も、2輪4輪シフト軸74と一体的に距離S1だけ軸方向移動する。
【0033】
また、このとき、第1ボール102が第1長円形溝82の位置まで移動するが、第2ボール104が第2長円形溝88の第2一側段差球面88a内に入って係合しているので、シフト操作が行われない。
【0034】
そして、この高速4輪駆動(4H)時には、3ストップポジションアクチュエータ116がストップポジションを高精度に制御していないので、シフトヨーク90だけが第1、第2長円形溝82、88の長さL分だけオーバストロークする(距離S2で示す)。
【0035】
このシフトヨーク90のオーバストロークにより、第1ボール102が第2半円形溝86から抜脱して2輪4輪シフト軸74の外周面74cに接するとともに第1長円形溝82に入って第1他側段差球面82bに係合するが、シフトの働きをせず、また、2輪4輪シフト軸74が4輪側ストッパ80の働きで4輪駆動(4WD)の位置から移動することがなく、更に、第2ボール104が第2長円形溝88内で第2他側段差球面88bまでスライドするので、シフトの働きがしない。従って、シフトヨーク90及び3ストップポジションアクチュエータ116がオーバストローク分(S2)のどこで停止しても、高速低速シフト軸60が高速(H)の位置に保持されるとともに、4輪2輪シフト軸74が4輪駆動(4WD)の位置に保持される。またこのとき、第1ボール102は、第1長円形溝82の第1他側段差球面2bに係合している。
【0036】
ここで、各シフトシャフト60、74の各長円形溝82、86の長さLが設計上見込んだオーバストローク分(S2)であるので、この長さLを大きくすれば、オーバストローク分(S2)も大きく見込むことができる。
【0037】
3ストップポジションアクチュエータ116によってシフトヨーク90を高速4輪駆動(4H)から低速4輪駆動(4L)へ移動させると、見込んだオーバストローク分(S2)がシフトヨーク90のみ動作し、オーバストロークの終点の位置から第1ボール102及び第2ボール104が第1半円形溝84に係合することにより、高速低速シフト軸60は、高速低速フォーク62が低速側ストッパ66に当接するまでの距離S3だけ軸方向に移動される。これにより、低速4輪駆動(4L)へのシフトが完了する。またこのとき、シフトヨーク90も、高速低速シフト軸60の移動に伴って距離S3だけ軸方向移動される。
【0038】
一方、この低速4輪駆動(4L)から高速4輪駆動(4H)又は高速2輪駆動(2H)へのシフトは、上述の動作の逆の動作となるので、ここでは、その説明を省略する。
【0039】
この結果、高速低速シフト軸60の高速側ストッパ64、低速側ストッパ66を設けるとともに、2輪4輪シフト軸74の2輪側ストッパ78、4輪側ストッパ80を設けることにより、高速4輪駆動(4H)時には、3ストップポジションアクチュエータ116のオーバストローク分(S2)を見込むことにより、アクチュエータ116の時に、高速4輪駆動(4H)時のストップポジションを高精度に制御する必要がなくなり、3ストップポジションアクチュエータ116がオーバストロークしてもシフト位置に影響がない。
【0040】
また、アクチュエータ116を1個設けるだけでセレクト動作を不要にし、構成を簡単にするとともに、トランスファ2の内部の大部分の部品をそのまま使用することができ、部品の共通率を大きくし、しかも、アクチュエータ116の設計の自由度を大きくすることができる。
【0041】
図9は、この発明の第2実施例を示すものである。
【0042】
以下の実施例にあっては、上述の第1実施例と同一機能を果す箇所には同一符号を付して説明する。
【0043】
この第2実施例の特徴とするところは、以下の点にある。即ち、4輪駆動車202において、前輪204が備えられた前車軸206にトランスミッション(図示せず)からの動力を受け入れる前側差動機208が設けられ、この前側差動機208には2輪4輪スリーブ210を備えた2輪4輪切換機構212が設けられ、この2輪4輪切換機構212にカップリングスリーブ214を備えたビスカスカップリング216が設けられ、このビスカスカップリング216にプロペラシャフト218が連結され、このプロペラシャフト218に後側差動機220が設けられ、この後側差動機220に後側車軸222が設けられている。
【0044】
また、2輪4輪スリーブ210には、第1シフト軸である2輪4輪シフト軸224に固定された2輪4輪フォーク226が係合して設けられている。また、カップリングスリーブ216には、第2シフト軸であるフルタイムリジットシフト軸228に固定したフルタイムリジットフォーク230が係合して設けられている。
【0045】
これらシフト軸224、228には、シフトヨーク232が抱持して軸方向移動可能に設けられている。このシフトヨーク232は、ヨーク溝234に係合した連絡レバー236がレバー軸238を中心にして回転することによって軸方向移動される。この連絡レバー236は、ケーブル240を介して3ストップポジションアクチュエータ242によって動作される。
【0046】
この第2実施例の構成によれば、第1実施例の構成を利用しつつ、2WDと4WDフルタイムと4WDリジットとの3段階に容易に切換えることができる。
【0047】
図10は、この発明の第3実施例を示すものである。
【0048】
この第3実施例の特徴とするところは、以下の点にある(SG1)。即ち、第1、第2長円形溝82、88の第1、第2中央側平坦面82c、88cには、従来の高速4輪駆動(4H)時におけるストップポジションの位置で、第1、第2ストップポジション節度用溝82d、88dを形成した。
【0049】
この第3実施例の構成によれば、高速4輪駆動(4H)時において、シフトヨーク90がオーバーストロークする際に、第1、第2ボール102、104が第1、第2ストップポジション節度用溝82d、88dに係合することにより、従来の高速4輪駆動(4H)時におけるシフトヨーク90の最適位置を節度させるので、その操作性を確認させ且つ向上させることができる。
【0050】
【発明の効果】
以上詳細な説明から明らかなようにこの発明によればレバーによるセレクト動作を不要にするとともに、シフトヨークを軸方向移動させるために一のアクチュエータを設ければよいだけなので、構成を簡単にし、また、アクチュエータがオーバーストロークしても、シフト位置に影響を与えることがなく、アクチュエータのストップポジションを高精度に制御する必要がなく、また、既存の部品の共通化を図り得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】各シフト軸の動作を説明する図である。
【図2】トランスファ装置の一部側面図である。
【図3】図2の矢印〓によるトランスファ装置の断面図である。
【図4】図3の〓−〓線による断面図である。
【図5】各シフト軸の配置状態を示す図である。
【図6】高速低速シフト軸の一部側面図である。
【図7】2輪4輪シフト軸の一部側面図である。
【図8】シフトヨークの断面図である。
【図9】第2実施例における車両の概略図である。
【図10】第3実施例における各シフト軸の一部拡大図である。
【図11】従来においてセレクト動作を必要とする各シフト軸の動作を説明する図である。
【図12】従来においてセレクト動作を不要とするアクチュエータによる各シフト軸の動作を説明する図である。
【符号の説明】
2 トランスファ
4 トランスミッションケース
58 高速低速切換機構
60 高速低速シフト軸
62 高速低速フォーク
68 2輪4輪切換機構
74 2輪4輪シフト軸
76 2輪4輪フォーク
82 第1長円形溝
84 第1半円形溝
86 第2半円形溝
88 第2長円形溝
90 シフトヨーク
102 第1ボール
104 第2ボール
116 3ストップポジションアクチュエータ

Claims (3)

  1. 第1シフト軸に固定した高速低速シフトフォークを高速側ストッパと低速側ストッパとの間で前記第1シフト軸の軸方向に移動して高速と低速とを切換える高速低速切換機構と、第2シフト軸に固定した2輪4輪シフトフォークを2輪側ストッパと4輪側ストッパとの間で前記第2シフト軸の軸方向に移動して2輪駆動と4輪駆動とを切換える2輪4輪切換機構とを備え、前記第1シフト軸及び前記第2シフト軸の移動によって高速2輪駆動から高速4輪駆動を経て低速4輪駆動に切換えを行う四輪駆動車のトランスファ装置において、前記第1シフト軸と前記第2シフト軸とを近接して並設し、前記第1シフト軸には前記第2シフト軸に対向する外周面第1長円形溝と第1半円形溝とを軸方向に離間して設け、前記第2シフト軸には前記第1シフト軸に対向する外周面に第2半円形溝と第2長円形溝とを軸方向に離間して設け、前記第1、第2シフト軸には前記第1、前記第2長円形溝及び前記第1、前記第2半円形溝の部位を抱持して軸方向移動可能なシフトヨークを遊嵌して設け、このシフトヨークには前記第1シフト軸と前記第2シフト軸との間に延びる区画壁を設け、この区画壁に第1ボール及び第2ボールを前記第1、第2シフト軸の両シフト軸の径方向に移動可能に保持し、前記第1シフト軸が高速側且つ前記第2シフト軸が2輪駆動側にある高速2輪駆動の場合、前記第1ボールを前記第2半円形溝と係合し且つ前記第2ボールを前記第2長円形溝の軸方向一側に位置する状態として前記シフトヨークによって前記第2シフト軸を2輪駆動側から4輪駆動側に移動可能とし、前記第2シフト軸を4輪駆動側に移動して高速4輪駆動とした場合、前記第1ボールを前記第2半円形溝から前記第1長円形溝の軸方向一側に移動して前記シフトヨークのみを軸方向に移動可能とする一方、前記シフトヨークが高速4輪駆動位置を超えて所定距離移動した場合、前記第1ボールを前記1長円形溝の軸方向他端に係合させるとともに前記第2ボールを前記第2長円形溝の軸方向他側によって前記第1半円形溝に移動させて前記第1シフト軸を高速側から低速側に移動可能としたことを特徴とする四輪駆動車のトランスファ装置。
  2. 前記シフトヨークは、3ストップポジションアクチュエータの作動によって軸方向移動されることを特徴とする請求項1に記載の四輪駆動車のトランスファ装置。
  3. 前記シフトヨークは、このシフトヨークに連絡した回動アームとこの回動アームを固定した回動軸とこの回動軸に固定した連絡レバーとこの連絡レバーに接続したケーブルとを介して3ストップポジションアクチュエータに連絡されたことを特徴とする請求項1に記載の四輪駆動車のトランスファ装置。
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