JP3932322B2 - 回転継手 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、宇宙空間で使用するロボットの関節機構等に利用される回転継手に関する。
【0002】
【従来の技術】
ロボットアームに動作の柔軟性を持たせることは、接触把持作業を伴うアームの動作制御において重要である。特に、宇宙空間で利用されるロボットの場合、遠隔操作の通信時間遅延による不測事態の検知遅れや、搭載計算機負荷の軽減、軽量化要求のため、シンプルな受動的機構を関節に配置することが望まれる。
【0003】
従来、ロボットの関節機構に利用される回転継手として、一次側の回転部材と二次側の回転部材を直結すると共に、連結部分等に電気的なトルクセンサを設けて、負荷トルクが過大の場合にはそれを電気的に検出して、動作を止めるようにしたものが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、一次側と二次側を直結した上で電気的なトルクセンサを設けるものでは、構造が複雑化する上、操作対象に対する遊びを持った追従性(コンプライアンス性)をほとんど確保できないため、前述の宇宙空間用ロボットの関節機構としての要求を十分に満足させることができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、負荷トルクが過大のときの回避動作を確実に取ることができて、関節機構の破損等の重大事故を未然に防ぐことが可能であると共に、操作対象への追従性の向上による制御の簡略化を可能にし、人間の行けない特殊環境下でのロボット等の信頼性の向上を図ることのできる、シンプルな構造の回転継手を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、一次側から二次側へ回転力を伝達する回転継手において、一次側の回転部材と二次側の回転部材の回転力伝達用係合部間に、両係合部を回転位相差ゼロの位置に所定の予圧を持って付勢し、且つ、両係合部間に前記所定の予圧を超える回転力が作用した際に弾性変形して両係合部間の回転位相差を許容する緩衝材が配設されていることを基本とする。
【0007】
この回転継手では、負荷トルクが緩衝材の予圧以下のときは、緩衝材の力で一次側の回転部材と二次側の回転部材の位相差がゼロに保持されるので、一次側と二次側が剛結合と同様の状態となる。従って、二次側の位置制御動作の信頼性が高まる。一方、二次側が操作対象等に接触してロック状態となり、負荷トルクが緩衝材の予圧を超えた場合には、緩衝材が弾性変形して一次側と二次側の回転位相差を許容するので、それ以上の負荷トルクの急激な増大を防止して、一次側を過大負荷から保護することができる。また、緩衝材が弾性変形している間、負荷トルクの増大を遅らせることができるので、回避動作等を取るまでの時間的な余裕を確保することができる。また、緩衝材が弾性変形している間も一次側から二次側へ回転力を伝えることができるので、操作対象に対する追従性(コンプライアンス性)を高めることができ、制御動作の柔軟性の向上による制御の簡略化が可能になる。
【0008】
上記の基本的な構成に加え、請求項1の発明においては、前記係合部として、一次側の回転部材及び二次側の回転部材の回転中心から外れた位置に互いに対向する係合凸部(第1および第2の係合凸部)が設けられ、これら互いに対向する二つの係合凸部が、前記緩衝材として設けられたC型バネの開口端間に前記予圧を持って挟まれていることを特徴とする。
【0009】
これにより、この回転継手では、負荷トルクが発生すると、係合凸部同士がずれた位置に移動しようとする。しかし、負荷トルクがC型バネの予圧以下のときは、C型バネが弾性変形せずに、二つの係合凸部を位相差ゼロの位置(ずれ無しの位置)に保持する。一方、負荷トルクがC型バネの予圧を超えるときは、C型バネが弾性変形することで、二つの係合凸部の位相差を許容する。
【0010】
加えて、請求項1の発明では、前記緩衝材を第1の緩衝材とした場合に第1の緩衝材とは別の第2の緩衝材が第2の予圧を付与された状態で配設されており、該第2の緩衝材が、前記両係合部間の回転位相差が所定値に達したとき、前記第2の予圧に応じて回転位相差の拡大を止める力を両係合部間に及ぼし、前記回転位相差が前記所定値を超えたとき、弾性変形して両係合部間の回転位相差を許容することを特徴とする。
【0011】
これにより、この回転継手では、回転位相差が所定値以内のときには、第1の緩衝材の作用により上記と同様に作用をなす。また、負荷トルクが第1の緩衝材の弾性反力に抗して増大し、回転位相差が所定値に達すると、第2の緩衝材の予圧に応じた反力が発生し始める。そして、更に負荷トルクが増大し、回転位相差が所定値を超えると、第2の緩衝材が弾性変形し始め、第2の緩衝材の弾性反力と第1の緩衝材の弾性反力の合力が、回転位相差を小さくする方向に働く。従って、このような経過を辿る間だけ、負荷トルクの急激な増大を遅らせることができ、時間的な余裕を多くとることができる。
【0012】
さらに、前記二つの係合凸部(第1および第2の係合凸部)とは別の第3の係合凸部が一次側の回転部材及び二次側の回転部材のうちの一方の回転部材の回転中心から外れた位置に設けられると共に、該第3の係合部が前記第2の緩衝材として設けられた第2のC型バネの開口端間に前記第2の予圧を持って挟まれており、該第2のC型バネの開口端が、前記回転位相差が所定値以上のときに他方の回転部材側の係合凸部を受け止める位置に配されていることを特徴とする。
【0013】
これにより、この回転継手では、回転位相差が所定値以内のときには、第1の緩衝材である第1のC型バネの作用により上記と同様の作用をなす。負荷トルクが増大し、回転位相差が所定値に達すると、一方の回転部材側の第3の係合凸部に係合している第2のC型バネの開口端に、他方の回転部材側の係合凸部が受け止められるので、回転部材間に第2のC型バネの力が加わり出す。最初は第2の予圧の範囲で力が加味され、次いで第2のC型バネが弾性変形し出すと、その弾性変形に見合った反力が加味される。従って、このような経過を辿る間だけ、負荷トルクの急激な増大を遅らせることができ、時間的な余裕を多くとることができる。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1において、前記第1の緩衝材のバネ定数が、第2の緩衝材のバネ定数より小さく設定されていることを特徴とする。
【0015】
この回転継手では、回転位相差が生じようとすると、最初は小さな抵抗力が発生し、ある段階を過ぎると大きな抵抗力が発生し出す。従って、最初の抵抗力の小さな段階で回転位相差の許容度を大きく保つことができ、操作対象に対する追従性(コンプライアンス)を高めることができる。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1〜2のいずれかにおいて、前記一次側の回転部材と二次側の回転部材の回転位相差を検出する位相差検出手段が設けられていることを特徴とする。
【0017】
この回転継手では、位相差検出手段によって一次側と二次側の回転位相差を検出しているので、回転位相差が所定以上になったときに、位相差を修正するように回避動作をとることができ、最終的には動作を止めて、装置の安全を図ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明するが、それに先立ち、まず参考例として図1〜図3を参照して本発明の基本構成を説明する。なお、便宜的に、以下の説明ではその参考例を第1実施形態といい、図4〜図9に示す本来の実施形態を第2実施形態という。
図1は本発明の第1実施形態(参考例)の回転継手を適用したロボットの関節機構の要部構成を示す分解斜視図、図2は同関節機構の全体構成を示す側断面図である。
図2に示すように、この関節機構は、円筒状の外装ケーシング1の内部に駆動源としての減速機2a付きモータ2を有する。モータ2の前部には、回転継手を構成する一次側の回転部材3と二次側の回転部材4とが配されており、両者は直結されておらず、緩衝材としてのC型バネ8を介して連結されている。
【0019】
その連結部(緩衝部)の詳細について図1を参照しながら述べる。
円盤状の回転部材3、4は、中心部で相対回転可能に互いに嵌合されており、各回転部材3、4の対向面上の回転中心から外れた位置には、相対向する係合凸部5、6が突設されている。二つの係合凸部5、6は円周方向長さが等しく設定されたもので、円周方向の両端面5a、6aが、突当壁として回転中心を通る面上に設定されている。また、係合凸部5、6は、一次側の回転部材3に突設した円筒嵌合部3aの外周に位置するように配置されている。
【0020】
一方、C型バネ8は、円周の一箇所に開口部8bを形成し、その両側の開口端8a、8aを、前記係合凸部5、6の両端面5a、6aに対する突当面として形成したもので、突当面を広い面にするため、開口端8a、8a側が肉厚になっている。このC型バネ8は、一次側及び二次側の両回転部材3、4の係合凸部5、6を、その開口端8a、8a間に所定の予圧(セット圧)を持って挟み込んでおり、これにより両係合凸部5、6は回転位相差ゼロの位置に保持されている。図3(a)がその状態を示す。この場合の予圧は、当然、本関節機構の最大能力(トルク)よりも小さく設定されている。
【0021】
なお、二次側の回転部材4は、駆動対象である二次側の部品に連結されるものであり、外装ケーシング1の前端内周に嵌合したベアリング7によって回転自在に安定支持されている。
【0022】
また、モータ2の後側には、モータ2ないしは一次側の回転部材3の回転角度を検出する一次側回転角度検出機構10が配置され、その後側には一次側の回転を止めるブレーキ11が配置され、そのさらに後側には、前端部より後端部まで貫通した軸12を介して二次側の回転部材4の回転角度を検出する二次側回転角度検出機構13が配置されている。これら二つの検出機構10、13の出力は図示しない演算手段に入力され、演算手段が、一次側と二次側の回転部材3、4の回転位相差を演算する。
【0023】
次に動作を説明する。
二次側に作用する負荷トルクがC型バネ8の予圧以下の通常時においては、図3(a)に示すように、C型バネ8の予圧で一次側の回転部材3と二次側の回転部材4の位相差がゼロに保持されるので、一次側と二次側が剛結合と同様の状態となり、一次側と二次側が一体に動作して、モータ2からの回転力が直接二次側に伝わる。従って、二次側の位置制御動作の信頼性が高まる。
【0024】
一方、二次側が操作対象等に接触してロック状態となり、負荷トルクがC型バネ8の予圧を超えた場合には、図3(b)または(c)に示すように、C型バネ8が弾性変形して、一次側と二次側の回転位相差を許容する。従って、それ以上の負荷トルクの急激な増大を防止することができて、一次側の機器(特にモータ3)を過大負荷から保護することができる。また、C型バネ8が弾性変形している間だけ、負荷トルクの急激な増大を遅らせることができるので、その間に余裕をもって回転位相差を検出し回避動作等を取ることができる。
【0025】
また、C型バネ8が弾性変形している間も、一次側と二次側は断絶されているわけではなく、回転力を伝えられる状況にあるため、二次側のツールを操作対象に倣わせることができ、操作対象に対する追従性(コンプライアンス性)を高めることができる。また、回転位相差を検出しているときには、コンプライアンス制御中と判断することもでき、この間に位相差を修正するように一次側を制御することで、ロボットの位置、姿勢を操作対象と一致させることができる。
【0026】
次に本発明の第2実施形態(本来の実施形態)の回転継手を適用した関節機構について図4〜図7を参照して説明する。
この関節機構では、図4に示すように一次側の回転部材23と二次側の回転部材24との間に、第1、第2の二つのC型バネ(緩衝材)28、29が配設されている。一次側の回転部材23には、第1の係合凸部25と第3の係合凸部27が形成され、二次側の回転部材24には第2の係合凸部26が形成されている。第1の係合凸部25と第3の係合凸部27は階段状に2段に形成され、第1の係合凸部25は第3の係合凸部27の先端面に突設されている。第1の係合凸部25は、図5(a)に示すように、第3の係合凸部27を縮小した形のもので、円周方向長さ及び半径方向高さは共に、第3の係合凸部27より小さく(約半分程度に)設定されている。第3の係合凸部27の円周方向両端の第1の係合凸部25からの突出量は、正面から見て左右対称となっている。なお、各係合凸部25、26、27の円周方向の両端面25a、26a、27aは、突当壁として回転中心を通る面上に設定されている。
【0027】
図4に示す二次側の回転部材24に設けられた第2の係合凸部26は、円周方向長さが第1の係合凸部25と等しく設定されると共に、半径方向高さが第3の係合凸部27と等しく設定されている。また、第2の係合凸部26は、外周部が庇状に出っ張った側面視逆L字形をなしており、上半部が第3の係合凸部27に向かって対向し、下半部が第1の係合凸部25に向かって対向するようになっている。
【0028】
一方、二つのC型バネ28、29は、図5(b)、(c)に示すように、円周の一箇所に開口部28b、29bを形成し、その両側の開口端28a、28a、29a、29aを、第1〜第3の係合凸部25、26、27の両端面25a、26a、27aに対する突当面として形成したもので、特に第2のC型バネ29は突当面を広い面にするため、開口端29a側が肉厚になっている。第1のC型バネ28は、バネ定数が弱く設定されており、第1の係合凸部25と第2の係合凸部26を共に、その開口端28a、28a間に所定の予圧(セット圧)を持って挟み込んでいる。これにより、両係合凸部25、26は回転位相差ゼロの位置に保持されている。図6(a)がその状態を示す。この場合の予圧は、当然、本関節機構の最大能力(トルク)よりも小さく設定されている。
【0029】
また、第2のC型バネ29はバネ定数が第1のC型バネ28よりも強く設定されており、第3の係合凸部27を、その開口端29a、29a間に所定の第2の予圧(セット圧)を持って挟み込んでいる。また、このセット状態において、第2のC型バネ29の開口端29aは、第2の係合凸部26の庇部分を受け止められるようになっている。これにより、第2のC型バネ29は、一次側と二次側の回転位相差が所定値に達して第2の係合凸部26が第2のC型バネ29の開口端29aに当たったときに、第2の予圧に応じて回転位相差の拡大を止める力を第2の係合凸部26に及ぼし、それより更に回転位相差が拡大したとき、弾性変形して位相差を許容するようになっている。
【0030】
次に動作を説明する。
二次側に作用する負荷トルクが第1のC型バネ28の予圧以下の通常時においては、図6(a)あるいは図7(a)に示すように、第1のC型バネ28の予圧で一次側の回転部材23と二次側の回転部材24の位相差がゼロに保持されるので、一次側と二次側が剛結合と同様の状態となり、一次側と二次側が一体に動作して、モータ2からの回転力が直接二次側に伝わる。従って、二次側の位置制御動作の信頼性が高まる。
【0031】
一方、二次側が操作対象等に接触してロック状態となり、負荷トルクが第1のC型バネ28の予圧を超えた場合には、図6(b)または(c)に示すように、第1のC型バネ28が弾性変形して、一次側と二次側の回転位相差を許容する。また、負荷トルクが第1のC型バネ28の弾性反力に抗して増大し、回転位相差が所定値(ここでは、第2の係合凸部26が第2のC型バネ29の開口端29aに当たる位相差を所定値と定義する)に達して、第2の係合凸部26が第2のC型バネ29の開口端29aに当たると、第2のC型バネ29の予圧に応じた反力が発生し始める。
【0032】
そして、更に負荷トルクが増大し、回転位相差が所定値を超えると、図7(b)、(c)に示すように、第2のC型バネ29が弾性変形し始め、第2のC型バネ29の弾性反力と第1のC型バネ28の弾性反力の合力が、一次側と二次側の回転位相差を小さくする方向に働く。従って、このような経過を辿る間だけ、負荷トルクの急激な増大を遅らせることができ、時間的な余裕を多くとることができる。
【0033】
このように、第1、第2のC型バネ28、29の緩衝作用によって、負荷トルクの急激な増大を防止することができるので、一次側の機器(特にモータ3)を過大負荷から保護することができる。また、第1、第2のC型バネ28、29が弾性変形している間だけ、負荷トルクの増大を遅らせることができるので、その間に余裕をもって回転位相差を検出し回避動作等を取ることができる。
【0034】
また、C型バネ8が弾性変形している間も、一次側と二次側は断絶されているわけではなく、回転力を伝えられる状況にあるため、二次側のツールを操作対象に倣わせることができ、操作対象に対する追従性(コンプライアンス性)を高めることができる。特に、回転位相差が生じようとすると、最初は小さな抵抗力が発生し、ある段階を過ぎると大きな抵抗力が発生し出すので、最初の抵抗力の小さな段階で回転位相差の許容度を大きく保つことができ、操作対象に対する追従性(コンプライアンス)を高めることができる。また、負荷トルクの変化の割りに回転位相差の大きい段階で位相差検出を行うことにより、コンプライアンス制御中と判断することができるので、この間に位相差を修正するように一次側を制御することで、ロボットの位置、姿勢を操作対象と一致させることができる。
【0035】
次に第1、第2実施形態の関節機構の特性について説明する。
図8は緩衝部(緩衝材で連結した部分を指す)の有無による特性の履歴を予測した例を示す。縦軸は出力トルク、横軸は出力軸動作量としての回転角度を示している。
【0036】
A点まで無負荷で動作し、関節機構の二次側がロックしたとする。そうしたとき、緩衝部なしの場合は、急激にトルクが最大能力(MAX)まで増大してC点に至るが、緩衝部ありの場合は、出力の最大能力に達する前にB点で、緩衝部により外部負荷を吸収しながら、関節機構が動作することになるため、関節機構が最大能力(D点)に達するまでに時間がかかる。従って、この間に非常停止を含めた回避動作を余裕を持って取ることができる。なお、A点〜B点間は緩衝材の予圧により剛性連結と同様の挙動を示す。
【0037】
また、第2実施形態のように2段階の緩衝部を持つ場合は、更に時間的な余裕を多く取ることができる。この場合、A〜E間は第1の緩衝材による予圧で受け止めている区間、E〜F間はバネ定数の小さな第1の緩衝材が弾性変形している区間、F〜G間は第2の緩衝材による予圧により受け止めている区間、G以降は第2の緩衝材と第1の緩衝材の弾性反力で受け止めている区間である。
【0038】
上記の特性をコンプライアンスの観点から表わしたのが図9の特性図である。
緩衝部がない場合、ロボット先端部の位置・姿勢が操作対象の位置・姿勢と一致していないときには、関節機構に過大な負荷が加わる可能性があり、関節機構が出せる最大能力(C点)まで瞬時に出力が増加してしまうことが想定される。しかし、緩衝部ありの場合は、関節機構が無負荷状態で動作中、A点でロボットが操作対象を把持した際に、ロボット先端部の位置・姿勢が操作対象の位置・姿勢と一致していなくても、機械的コンプライアンスが作動し、出力軸の最大能力に達する前にE点で、緩衝部により外部負荷を吸収しながら関節機構が操作対象に倣って動作するため、ロボット関節機構及び操作対象に無理な力が加わらなくなる(F点)。
【0039】
しかも、機械的コンプライアンスが作動した場合には、回転位相差が発生するので、この位相差をロボット関節機構の動作にフィードバックすることにより、正常な把持状態(機械的なコンプライアンスが解除された状態)であるG点に修正することができる。
【0040】
なお、ロボット関節機構を複数結合して多自由度のマニピュレータを構成した場合、上記の緩衝部を各関節に設けることにより、多自由度マニピュレータ自体に、ある程度の柔軟構造を含められることになるため、制御方法を工夫することにより、人間の腕のような柔軟な部分と剛部分の二面性を機械的に実現することも可能である。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、通常時は一次側と二次側を直結したように振る舞わせることができると共に、二次側に過大な外力が作用した場合には緩衝材によって外力から一次側を保護することができる。従って、ロボットの関節機構に適用した場合、関節機構の破損等の重大事故を未然に防ぐことが可能であり、特に宇宙空間等、人の行けない特殊な環境下でのロボット等の信頼性を向上させることができる。また、緩衝材が弾性変形している間だけ、負荷トルクの増大を遅らせることができるので、回避動作等を取るまでの時間的な余裕を確保することができ、安全性の向上が図れる。さらに、緩衝材が弾性変形することで一次側と二次側の回転位相差を許容するので、操作対象に対する追従性(コンプライアンス性)を高めることができ、制御動作の柔軟性の向上による制御の簡略化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の基本構成を説明するための第1実施形態(参考例)の回転継手を適用したロボットの関節機構の要部構成を示す分解斜視図である。
【図2】 同関節機構の側断面図である。
【図3】 同関節機構の緩衝部の作用を説明するための正面図で、(a)は一次側と二次側の回転位相差がゼロの状態を示す図、(b)は左回りの回転位相差を許容している状態を示す図、(c)は右回りの回転位相差を許容している状態を示す図である。
【図4】 本発明の本来の実施形態である第2実施形態の回転継手を適用したロボットの関節機構の要部構成を示す分解斜視図である。
【図5】 同関節機構の緩衝部の要素を示す正面図で、(a)は一次側の回転部材、(b)は第1のC型バネ、(c)は第2のC型バネの図である。
【図6】 同関節機構の緩衝部の作用のうち特に第1のC型バネの作用を説明するための正面図で、(a)は一次側と二次側の回転位相差がゼロの状態を示す図、(b)は左回りの回転位相差を許容している状態を示す図、(c)は右回りの回転位相差を許容している状態を示す図である。
【図7】 同関節機構の緩衝部の作用のうち特に第2のC型バネの作用を説明するための正面図で、(a)は一次側と二次側の回転位相差がゼロの状態を示す図、(b)は左回りの回転位相差を許容している状態を示す図、(c)は右回りの回転位相差を許容している状態を示す図である。
【図8】 本発明の実施形態の特性図である。
【図9】 本発明の実施形態の別の面から見た特性図である。
【符号の説明】
3 一次側の回転部材
4 二次側の回転部材
5,6 係合凸部
8 C型バネ(緩衝材)
8a 開口端
23 一次側の回転部材
24 二次側の回転部材
25 第1の係合凸部
26 第2の係合凸部
27 第3の係合凸部
28 第1のC型バネ(第1の緩衝材)
28a 開口端
29 第2のC型バネ(第2の緩衝材)
29a 開口端

Claims (3)

  1. 一次側から二次側へ回転力を伝達する回転継手において、一次側の回転部材と二次側の回転部材の回転力伝達用係合部間に、両係合部を回転位相差ゼロの位置に所定の予圧を持って付勢し、且つ、両係合部間に前記所定の予圧を超える回転力が作用した際に弾性変形して両係合部間の回転位相差を許容する緩衝材が配設され、
    前記係合部として、一次側の回転部材及び二次側の回転部材の回転中心から外れた位置に互いに対向する係合凸部が設けられ、これら互いに対向する二つの係合凸部が、前記緩衝材として設けられたC型バネの開口端間に前記予圧を持って挟まれ、
    前記緩衝材を第1の緩衝材とした場合に第1の緩衝材とは別の第2の緩衝材が第2の予圧を付与された状態で配設されており、該第2の緩衝材が、前記両係合部間の回転位相差が所定値に達したとき、前記第2の予圧に応じて回転位相差の拡大を止める力を両係合部間に及ぼし、前記回転位相差が前記所定値を超えたとき、弾性変形して両係合部間の回転位相差を許容し、
    前記二つの係合凸部とは別の第3の係合凸部が一次側の回転部材及び二次側の回転部材のうちの一方の回転部材の回転中心から外れた位置に設けられると共に、該第3の係合凸部が前記第2の緩衝材として設けられた第2のC型バネの開口端間に前記第2の予圧を持って挟まれており、該第2のC型バネの開口端が、前記回転位相差が所定値以上のときに他方の回転部材側の係合凸部を受け止める位置に配されていることを特徴とする回転継手。
  2. 前記第1の緩衝材のバネ定数が、第2の緩衝材のバネ定数より小さく設定されていることを特徴とする請求項1記載の回転継手。
  3. 前記一次側の回転部材と二次側の回転部材の回転位相差を検出する位相差検出手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の回転継手。
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