JP3931836B2 - 動力舵取装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は動力舵取装置に係り、特に、車体前部の前側と後側とにそれぞれ一対の操向車輪を備えた、いわゆる前2軸車用の動力舵取装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、大型トレーラや大型トラック等のような大型車輌では、車体の前部の前側および後側にそれぞれ一対の操向車輪を備えたいわゆる前2軸車が従来から用いられている。このような前2軸車では、一般に、舵取ハンドルの舵取操作により前後2対の操向車輪を転舵制御するために、それぞれの舵取リンク機構に操舵補助力を作用させる動力舵取装置が設けられている。
【0003】
従来の前2軸車用の動力舵取装置は、前側操向車輪を前記舵取リンク機構を介して転舵させるための前側パワーシリンダ(例えば、インテグラルタイプの動力舵取装置に内蔵されているパワーシリンダ)と、後側操向車輪を舵取リンク機構を介して転舵させるための後側パワーシリンダとを備えている。これらのパワーシリンダに対して、舵取ハンドルの舵取操作によって流路の切換を行うコントロールバルブを介して、車輌のエンジンで駆動されるポンプから吐出された流体圧を選択的に供給することにより、それぞれの舵取リンク機構に操舵補助力を作用させ、前側操向車輪および後側操向車輪を所要の状態で転舵させるように構成している。
【0004】
しかしながら、前述した従来の動力舵取装置では、1個のエンジン駆動ポンプからの吐出圧によって、前側および後側操向車輪用パワーシリンダを作動させているため、このエンジン駆動式ポンプが故障したり、または、このポンプからの流体圧配管が損傷する等により、各パワーシリンダへの流体圧の供給ができなくなると、手動による舵取ハンドルの操作だけで前側および後側の操向車輪を転舵させなくてはならず、大型車輌にとっては極めて操舵が困難な状態になってしまう。
【0005】
そこで、従来の前2軸車用の動力舵取装置において、エンジン駆動式ポンプとは別に、車軸の回転を駆動源とするサブポンプを設け、このサブポンプからの流体圧を、後側操向車輪を転舵させるためのパワーシリンダに供給することにより、操舵補助力を作用させて操舵力を軽減するようにしたものがすでに提案されている(特公昭62−22号公報)。
【0006】
このようなサブポンプを有する従来の動力舵取装置では、2系統の流体圧回路を有する等装置全体の構成部品数が多く構造が複雑になり、コスト高であるという問題があった。前記問題点を除くために、本発明の出願人は、車輌のエンジンにより駆動されるポンプが故障等で停止したり、このポンプからの流体圧の配管が損傷した場合に、前2軸車における前側および後側の操向車輪の転舵を可能にする新たな構造の前2軸車用動力舵取装置の発明について出願した(特開2000−247247号公報)。
【0007】
前記発明に係る動力舵取装置は、前2軸車の前側操向車輪および後側操向車輪をそれぞれ転舵制御する前側パワーシリンダと後側パワーシリンダとを備えている。そして、車輌のエンジンで駆動されるメインポンプおよびエンジン以外の駆動手段で駆動されるサブポンプと、舵取ハンドルの操作に応じて各ポンプからの流体圧の流路の切換を行うコントロールバルブと、前記両ポンプとコントロールバルブとの間に設けられたポンプの切換バルブとを備えており、このポンプ切換バルブにより、正常時はメインポンプをコントロールバルブに接続するとともに、サブポンプをタンク側に短絡させて接続するようになっている。
【0008】
さらに、前記コントロールバルブからの流体圧を前側パワーシリンダと後側パワーシリンダへの流路を切り換えて給送するアクチュエータ切換バルブを備えている。前記後側パワーシリンダは、メインポンプからの流体圧によって作動する第1シリンダと、サブポンプからの流体圧によって作動する第2シリンダとを備えており、前記アクチュエータ切換バルブにより、正常時には、メインポンプからの流体圧をメインアクチュエータである前側パワーシリンダおよび後側パワーシリンダの第1シリンダに給送し、エンジン駆動式のメインポンプの故障時等には、これら前側パワーシリンダと後側の第1シリンダの左右室をそれぞれ短絡させるとともに、サブアクチュエータである後側パワーシリンダの第2シリンダをコントロールバルブに接続して、前記サブポンプからの流体圧を供給するようにしている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の動力舵取装置では、後側パワーシリンダが、正常時に作動するメインアクチュエータとしての第1シリンダと、エンジンポンプの故障時等に作動するサブアクチュエータとしての第2シリンダとを備えており、しかも、アクチュエータ切換バルブが、メインアクチュエータとしての前側パワーシリンダおよび後側パワーシリンダの第1シリンダと、サブアクチュエータとしての後側パワーシリンダの第2シリンダとに切換制御するようになっているので、2系統の流体圧回路を有する従来の装置と比較すれば、大幅に改善されているが、なお、構造が複雑で、部品点数が多く、コスト高であるという問題があった。
【0010】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、メインポンプを駆動するエンジンの停止や、配管の損傷等により流体圧力源が失陥した場合でも、サブポンプに切り換えて前2軸車の転舵を可能にし、しかも、構造が簡単で、部品点数が少なく、低コストな前2軸車用の動力舵取装置を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る動力舵取装置は、車輌のエンジンで駆動されるメインポンプと、前記エンジン以外の駆動手段で駆動されるサブポンプと、舵取りハンドルの操作に応じて前記各ポンプからの流体圧の流路を切り換えるコントロールバルブと、このコントロールバルブによって切り換えられた流体圧によって前2軸車の前側操向車輪を転舵する前側パワーシリンダと、コントロールバルブによって切り換えられた流体圧によって前2軸車の後側操向車輪を転舵する後側パワーシリンダと、前記メインポンプおよびサブポンプのいずれか一方を前記コントロールバルブに接続するポンプ切換手段と、このポンプ切換手段によりメインポンプがコントロールバルブに接続されたときに、後側パワーシリンダをコントロールバルブと接続し、サブポンプがコントロールバルブに接続されたときに、後側パワーシリンダをコントロールバルブから遮断するとともに、この後側パワーシリンダの左右室を連通するアクチュエータ切換手段とを備え、前記前側パワーシリンダは、前記コントロールバルブと常時接続されるようにしたものである。
【0012】
この発明に係る動力舵取装置では、メインポンプが失陥してサブポンプがコントロールバルブに接続されたときには、後側パワーシリンダはコントロールバルブから完全に遮断され、左右両圧力室が互いに連通する構成なので、アクチュエータ切換手段や後側パワーシリンダの構造が大幅に簡素化され、コスト低減をはかることができる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明に係る動力舵取装置は、前記ポンプ切換手段が、メインポンプをコントロールバルブに接続しているときには、サブポンプをタンクに短絡させるように構成したことを特徴とするものである。
【0014】
さらに、請求項3に記載の発明に係る動力舵取装置は、前記ポンプ切換手段およびアクチュエータ切換手段が、前記メインポンプからの流体圧をパイロット圧として切換作動されることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項4に記載の発明に係る動力舵取装置は、前記ポンプ切換手段およびアクチュエータ切換手段が、動力舵取装置のハウジングに一体的に設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項5に記載の発明に係る動力舵取装置は、前記ポンプ切換手段に、サブポンプをコントロールバルブに接続した際に、メインポンプ側の入口を直接タンクに連通するドレン通路を設けたことを特徴とするものである。
【0017】
この発明に係る動力舵取装置では、メインポンプ側の失陥によって、ポンプ切換手段がメインポンプからサブポンプに切り換えて、サブポンプをコントロールバルブに接続すると、ポンプ切換手段のメインポンプからの入口がドレン通路を介してタンクに直接接続されるので、メインポンプから吐出されるエアによってパイロット圧が上昇してしまうことが無く、スムーズにしかも確実に切換えが行われる。
【0018】
請求項6に記載の発明に係る動力舵取装置は、請求項5に記載の発明において、前記タンクが、メインタンクと分割されたサブタンクであることを特徴とするものである。
【0019】
請求項7に記載の発明に係る動力舵取装置は、前記ポンプ切換手段が、ハウジング内に形成されたバルブ孔に摺動自在に嵌合されたスプールを備え、このスプールの一端側に、メインポンプからの流体圧をパイロット圧として導入するパイロット圧室を設けるとともに、他端側にスプリングを配置し、パイロット圧の低下によりスプールが作動してサブポンプをコントロールバルブに接続した際に、メインポンプ側の入口をタンクに直接連通するドレン通路を設けたことを特徴とするものである。
【0020】
請求項8に記載の発明に係る動力舵取装置は、請求項7に記載の発明において、前記タンクが、メインタンクと分割されたサブタンクであることを特徴とするものである。
【0021】
請求項9に記載の発明に係る動力舵取装置は、前記ハウジングに、メインポンプからの入口ポートに隣接してタンクへ連通するドレンポートを形成するとともに、前記スプールの外面またはバルブ孔の内面のいずれかに、メインポンプをコントロールバルブに接続したときには前記ドレンポートを閉じ、サブポンプをコントロールバルブに接続したときにドレンポートとメインポンプの入口ポートを連通する連通路を形成したことを特徴とするものである。
【0022】
請求項10に記載の発明に係る動力舵取装置は、前記連通路が、スプールの外面に形成された平面チャンファーであることを特徴とするものである。
【0023】
請求項11に記載の発明に係る動力舵取装置は、前記連通路が、スプールの外面またはバルブ孔の内面に形成された傾斜面のチャンファーであることを特徴とするものである。
【0024】
請求項12に記載の発明に係る動力舵取装置は、前記連通路が、スプールの外周面またはバルブ孔の内周面に形成された円周チャンファーであることを特徴とするものである。
【0025】
請求項13に記載の発明に係る動力舵取装置は、前記連通路が、スプールの外周面に形成された円周溝であることを特徴とするものである。
【0026】
請求項14に記載の発明に係る動力舵取装置は、前記前側パワーシリンダは前記前側操向車輪に1組のみ設けられ、前記後側パワーシリンダは前記後側操向車輪に1組のみ設けられることを特徴とするものである。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示す実施の形態により本発明を説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る動力舵取装置(全体として符号1で示す)の概略構成を示す図である。この動力舵取装置は、大型車輌の車体前部に並んで設けた前側操向車輪(図中では前前輪)および後側操向車輪(図中では前後輪)を、図示しない舵取ハンドルの舵取操作に応じて転舵させる際の操舵補助力を、前後の操舵リンク系にそれぞれ作用させるように構成されている。
【0028】
図において、MPは車輌のエンジン(図示せず)で駆動されるエンジン駆動式のメインポンプ、SPはエンジン以外の駆動源、例えば、車軸の回転や電動モータ等の回転によって駆動されるサブポンプで、これらのポンプMP、SPは、それぞれタンクMT、STから流体(作動油)を吸込み、所要の流体圧力で吐出する。これらのポンプMP、SPからの流体圧は、後に説明するポンプ切換手段としてのポンプ用切換バルブ10を介して、流路切換用コントロールバルブ12に給送される
【0029】
この実施の形態では、コントロールバルブ12とパワーシリンダ18が一体に組み込まれた通常のインテグラルタイプの動力舵取装置2(図3参照)をそのまま使用している。このインテグラルタイプの動力舵取装置2の構成は、従来周知なので詳細な図示は省略するが、コントロールバルブ12は、舵取ハンドルに連動するスタブシャフトと一体に回転するロータ14と、前記スタブシャフトと同軸上にトーションバーを介して連結されたウオームシャフトと一体回転するスリーブ16とを備えている。コントロールバルブ12は、これらロータ14とスリーブ16との相対回転により作動して、流体圧の流路の切換動作を行う。
【0030】
前側操向車輪(前前輪)17の転舵を行う前側パワーシリンダ18は、前記インテグラルタイプの動力舵取装置2のハウジング20(図3参照)内に摺動可能に嵌合されたピストンによって区画された左右の圧力室18L、18Rを有しており、舵取ハンドルの操作に応じた前記コントロールバルブ12の切換動作によって、前記メインポンプMPまたはサブポンプSPからの流体圧が、前記前側パワーシリンダ18の左右圧力室18L、18Rに選択的に供給される。この流体圧によりピストンを操舵方向に移動させて、前記前側操向車輪17に操舵補助力を付与する。
【0031】
後側操向車輪(前後輪)21の転舵を行う後側パワーシリンダ22は、後に説明するアクチュエータ切換手段としてのパワーシリンダ用切換バルブ24を介して、前記コントロールバルブ12に接続されている。
【0032】
前記ポンプ切換手段としてのポンプ用切換バルブ10は、前記メインポンプMPおよびサブポンプSPと前記コントロールバルブ12との間に配置され、エンジン駆動式のメインポンプMPをコントロールバルブ12に接続したときには、サブポンプSPをタンクST側に接続して短絡させ、エンジンの停止や配管の破損等によりメインポンプMPが失陥したときには、サブポンプSPをコントロールバルブ12に接続するように構成されている。
【0033】
前記ポンプ用切換バルブ10の具体的な構成について、図1、図3および図4により説明する。この実施の形態では、ポンプ用切換バルブ10は、インテグラルタイプの動力舵取装置2のハウジング20に一体的に組み付けられている。前記ハウジング20に固定されたポンプ用切換バルブ本体26にバルブ孔28が形成され、このバルブ孔28内にスプール30が摺動自在に嵌合している。このバルブ孔28の開口部はプラグ32(図3参照)により閉塞されている。
【0034】
前記スプール30の一端(図1および図4の右端、図3の下端)側の室34内には、前記メインポンプMPからの流体圧がバルブ本体26の内部に設けたパイロット通路36を介して導入され、一方、他端側には、タンク圧が導かれるとともに、スプール30を前記一端側へ付勢するスプリング38が設けられている。
【0035】
バルブ本体26には、メインポンプMPからの接続ポートPM、タンクMTへの接続ポートTM、サブポンプSPからの接続ポートPS、タンクSTへの接続ポートTSが設けられ、これら各ポートPM、TM、PS、TSのバルブ孔28内面への開口部に、それぞれ環状溝(図4の右から順に28a、28b、28c、28d)が形成されている。また、バルブ本体26のコントロールバルブ12側には、いずれかのポンプMP、SPからの流体圧を前記コントロールバルブ12に給送する給送ポートINおよびコントロールバルブ12からの戻り流体をタンクMT、STに還流させる戻りポートOUTが形成されている。
【0036】
一方、スプール30の外周面には、4本の環状溝30a、30b、30c、30dが形成され、図1の右端の環状溝30aと右から3番目の環状溝30cとが内部通路30eによって連通している。
【0037】
このポンプ用切換バルブ10は、エンジン駆動によるメインポンプMPが正常に作動しているときには、パイロット圧によりスプール30が図1、図4の左方(図3の上方)へ移動している。このときには、メインポンプMPから吐出された流体が接続ポートPM、バルブ孔28の右から2番目の環状溝28b、スプール30の右から2番目の環状溝30bおよび給送ポートINを介してコントロールバルブ12に送られ、コントロールバルブ12からの戻り流体は、戻りポートOUT、スプール30の左端の環状溝30d、バルブ孔28の左端の環状溝28dおよびタンクポートTMを通ってタンクMTに還流する。また、サブポンプSPからの流体は、接続ポートPS、バルブ孔28の右端の環状溝28a、スプール30の右端の環状溝30a、スプール30の内部通路30e、スプール30の右から3番目の環状溝30c、バルブ孔28の右から3番目の環状溝28cおよびタンクポートTSを通ってタンクSTに戻るようになっている。
【0038】
また、メインポンプMPが失陥したときには、パイロット圧室34に導入されるパイロット圧がゼロになるので、図2および図5に示すようにスプール30が右行し、サブポンプSPが、接続ポートPS、バルブ孔28の右端の環状溝28a、スプール30の右から2番目の環状溝30bを介してコントロールバルブ12への給送ポートINに接続され、コントロールバルブ12からの戻りポートOUTがスプール30の左端の環状溝30d、バルブ孔28の右から3番目の環状溝28cおよびタンクポートTSを介してタンクSTに接続される。
【0039】
次に、前記コントロールバルブ12と後側パワーシリンダ22の間に設けられたパワーシリンダ用切換バルブ24について、図1、図3および図6により説明する。このパワーシリンダ用切換バルブ24は、前記インテグラル型動力舵取装置2のハウジング20に固定されたバルブ本体40内に設けられている(図3参照)。このバルブ本体40にバルブ孔42が形成され、スプール44が摺動自在に嵌合している。このバルブ孔42の開口部はプラグ46(図3参照)により閉塞されている。
【0040】
前記スプール44の一端(図1の右端、図3の左端)側の室48内には、前記メインポンプMPからの流体圧が、前記パイロット通路36、ポンプ用切換バルブ10のパイロット圧室34およびパイロット通路50を介して導入され、一方、スプール44の他端側には、タンクMT、STに通じるドレン通路52が設けられるとともに、このスプール44を前記パイロット圧室48側へ付勢するスプリング54が設けられている。
【0041】
前記バルブ本体40には、舵取ハンドルの操作により、一方が、コントロールバルブ12からの導入通路、他方が戻り通路となる一対のポートPA、PBが形成されている。また、バルブ本体40には、前記後側パワーシリンダ22の左右圧力室22L、22Rにそれぞれ接続された一対のシリンダポートCL、CRが形成されている。前記コントロールバルブ12に接続された一対のポートPA、PBおよび後側パワーシリンダ22に接続された一対のシリンダポートCL、CRの、前記バルブ孔42内への開口部に、それぞれ環状溝(図6の右方から順に42a、42b、42c、42d)が形成されている。
【0042】
スプール44の外周面には2個所の環状溝44a、44bが形成されている。このパワーシリンダ用切換バルブ24は、エンジン駆動によるメインポンプ2が正常に作動しているときには、スプール44がパイロット圧により図1、図6の左方(図3の右方)へ移動しており、前記コントロールバルブ12と接続されたポートの一方PA(図1、図6の右方のポート、図3の左方のポート)が、バルブ孔42の右端の環状溝42a、スプール44の右側の環状溝44a、バルブ孔42の右から2番目の環状溝42bおよび右側のシリンダポートCRを介して後側パワーシリンダ22の一方の圧力室22R(図1の右方の圧力室)に連通し、他方のポートPBが、バルブ孔42の左端の環状溝42d、スプール44の左側の環状溝44b、バルブ孔42の右から3番目の環状溝42cおよび左側のシリンダポートCLを介して他方の圧力室22Lに連通している。
【0043】
また、メインポンプMPが失陥したときには、パイロット圧室48に導入されるパイロット圧がゼロになるので、図2および図7に示すようにスプール44が右行し、コントロールバルブ12からの両ポートPA、PBが遮断されるとともに、後側パワーシリンダ22の左右圧力室22L、22RへのシリンダポートCL、CRが、バルブ孔42の右から2番目の環状溝42b、スプール44の左側の環状溝44bおよびバルブ孔42の右から3番目の環状溝42cを介して互いに連通状態になる。
【0044】
以上の構成にかかる動力舵取装置1の作動について説明する。エンジンにより駆動されるメインポンプMPが正常に作動しているときには、このメインポンプMPから吐出された流体圧がポンプ用切換バルブ10のパイロット圧室34に導入されてスプール30を押圧するとともに、パワーシリンダ用切換バルブ24のパイロット圧室48にも導入されてそのスプール44を押圧している(図1および図4、図6の状態)。
【0045】
この正常運転状態では、メインポンプMPから吐出された流体圧が、ポンプ切換用バルブ10を介してコントロールバルブ12に送られ、舵取ハンドルの操作に応じて切換られたコントロールバルブ12から、前側操向車輪17を転舵する前側パワーシリンダ18の左右圧力室18L、18Rのいずれか一方に給送されるとともに、パワーシリンダ用切換バルブ24を介して後側操向車輪21を転舵する後側パワーシリンダ22の左右圧力室22L、22Rの、前記前側パワーシリンダ18と同一側の圧力室内に給送され、前側操向車輪13および後側操向車輪21は所要の方向に転舵制御される。
【0046】
エンジンの停止あるいはメインポンプMPの配管の損傷等によりメインポンプMPからの流体圧の供給がなくなったときには、ポンプ用切換バルブ10のパイロット圧およびパワーシリンダ用切換バルブ24のパイロット圧がゼロになり、いずれもスプール30、44がスプリング38、54に押されてパイロット圧室34、48側に移動する(図2、図5および図7に示す状態)。なお、エンジンの停止や、メインポンプMPからの吐出配管が損傷した場合には、メインポンプMPからの吐出圧が直ちにゼロになり、前述の状態(図2、図5および図7に示す状態)になるが、タンクポートTMからタンクMTへの戻り配管が損傷した場合や、パワーシリンダ用切換バルブ24のシリンダポートCL、CRから後側パワーシリンダ22の左右室22L、22Rへの配管が損傷した場合等には、メインポンプMPのタンクMTが空になった後に、メインポンプMPからの吐出が行われなくなり前記状態となる。
【0047】
この状態では、ポンプ用切換バルブ10を介して、サブポンプSPがコントロールバルブ12に接続され、前側操向車輪17のパワーシリンダ18に流体圧が供給されて、前側操向車輪17を転舵させる。また、パワーシリンダ用切換バルブ24によって、コントロールバルブ12から後側パワーシリンダ22への流路が遮断され、かつ、この後側パワーシリンダ22の左右室22L、22Rはこのパワーシリンダ用切換バルブ24を介して連通されるので、後側走行車輪21が、前側走行車輪17の転舵に従って転舵する際に支障がない。
【0048】
このようにエンジンの停止やメインポンプMPの配管の破損等によりメインポンプMPからの圧力流体の供給がなくなったときには、ポンプ用切換バルブ10の切換により、正常運転時には短絡状態にあったサブポンプSPをコントロールバルブ12に接続するとともに、後側パワーシリンダ22をコントロールバルブ12から切り離して左右両圧力室22L、22Rを連通させるので、前側操向車輪用パワーシリンダ18に通常の作動を行わせて所望の方向に転舵をさせることが出来る。さらに、後側パワーシリンダ22が短絡した状態になっているので、後側走行車輪21も、前記前側走行車輪17に追従して転舵される。
【0049】
また、この実施の形態では、コントロールバルブ12とパワーシリンダ18を一体にした従来のインテグラルタイプの動力舵取装置2をそのまま使用することが出来、しかも、後側パワーシリンダ22およびパワーシリンダ用切換バルブ24の構造が前記従来の装置(特開2000−247247号)よりも簡単であり、部品点数を減らしてコストダウンをはかることが出来る。さらに、ポンプ用切換バルブ10およびパワーシリンダ用切換バルブ24をインテグラルタイプの動力舵取装置2のハウジング20に一体に組み付けてあるので、装置全体の小型化を図ることが出来、配管等も少なくすることが出来る。なお、本発明は、前述の実施の形態で説明した構造には限定されず、各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。例えば、前記実施の形態では、車軸により駆動されるサブポンプSPを用いたが、これに限るものではなく、モータ駆動等、エンジン以外の駆動手段によって駆動されるものであればよい。
【0050】
次に、図8および図9により第2の実施の形態に係る動力舵取装置について説明する。図8は、第2の実施の形態に係る動力舵取装置の概略構成図、図9は、この動力舵取装置に設けられているポンプ切換用バルブ10の縦断面図である。
【0051】
この実施の形態に係る動力舵取装置のポンプ切換バルブ10は、基本的構成は前記第1の実施の形態(図4参照)のものと同一であり、同一の部分には同一の符号を付して説明する。この実施の形態では、ハウジング26の、メインポンプMPからの接続ポート(メインポンプからの入口ポート)PMと、サブポンプSPのタンクSTへの接続ポートTS1の間に、サブポンプSPのタンクSTに接続されたドレンポートTS2が形成されている。なお、このドレンポートTS2からエアだけが還流する場合には、ドレンポートTS2をメインポンプMPのタンクMTに接続することも可能であるが、オイルがエアに混じって戻る状況の場合には、急激にパイロット圧が上昇するおそれがあるので、メインタンクMTに直接還流させることは好ましくないため、サブタンクSTに接続するようにしている。
【0052】
一方、スプール30の外面には、前記メインポンプMPからの入口ポートPMとドレンポートTS2との間を連通可能な連通路30fが形成されている。この連通路30fは、パイロット圧室34に導入されたパイロット圧によりスプール30が図の左方に移動しているとき(図9に示す状態)には、ドレンポートTS2にだけオーバーラップし、パイロット圧が低下して、スプリング38によってスプール30がパイロット圧室34側に移動しているとき(図8および図10参照)には、前記メインポンプMPからの入口ポートPMとドレンポートTS2とを連通するようになっている。これら連通路30fとドレンポートTS2によりドレン通路が構成されている。
【0053】
前記連通路30fの形状は、特に限定されるものではなく、前述のようにスプール30が図の右方へ移動したときに、前記メインポンプMPからの入口ポートPMとドレンポートTS2とを連通できるものであればよく、例えば、図11に示すように、スプールの外面に平面のチャンファー30fを複数個所形成しても良い。なお、この図11では、スプール30の外面に2個所のチャンファー30fを形成しているがチャンファー30fの数は2個所に限らず、1個所または3個所以上であっても良い。
【0054】
また、図12に示すように、スプール30の外面に傾斜面のチャンファー30gを複数個所、あるいは、バルブ孔28の内面側に複数個所の傾斜面のチャンファー28e(破線で示すチャンファー参照)を形成しても良い。さらに、図13に示すように、スプール30の外周面に全周に亘る円周状の傾斜チャンファー30hを設けても良い。逆にバルブ孔28の内周面に円周状の傾斜チャンファーを形成することもできる。また、図14に示すように、スプール30の外周面に全周に亘る円周溝30iを設けても良い。その他、図示の形状に限定されるものではなく、メインポンプMPの失陥等によりサブポンプSPをコントロールバルブ12に接続した際に、メインポンプMPからの入口ポートPMを直接ドレンポートTS2に接続できるものであればよい。
【0055】
前記第1の実施の形態の構成では、メインタンクMT内の作動油が空になるような失陥、例えば、メインポンプMPからの配管やパワーシリンダ18、22への配管等が破損した場合には、メインポンプMPがエアを吐出し続けるようになり、ポンプ切換バルブ10のパイロット圧が低下せず、スプール30の作動が不完全でサブポンプSPへ切り替わらない場合が発生したり、一度パイロット圧が低下してスプール30が完全にパイロット室34側に移動したにもかかわらず、メインポンプMPから吐出されるエア圧によりパイロット圧が再度上昇してスプール30を押し戻してしまい、サブポンプSPに切り替わらない場合等が発生するおそれがある。
【0056】
この実施の形態の構成では、メインポンプMP側の失陥等によりパイロット圧が低下した場合に、スプール30の移動によってメインポンプMPからの入口ポートPMとドレンポートTS2とが連通路(チャンファー30f)を介して連通し、メインポンプMPから流入するエアが連通路30fおよびドレンポートTS2を通って直接タンクSTに戻されるので、パイロット圧が再度上昇することが無く、完全にサブポンプSPに切り換えることができる。
【0057】
さらに、この実施の形態では、パワーシリンダ用切換バルブ24に、後側パワーシリンダ22の左右圧力室22L、22Rが連通状態になったときに(図8の状態)、これら両圧力室22L、22Rを前記サブタンクSTに接続するドレンポートDPが形成されている。このドレンポートDPは、ドレン通路56を介して、前記ポンプ用切換バルブ10のドレンポートTS2に接続されている。このドレンポートDPは、パイロット圧によってスプール44が図の左方へ移動しているときには、スプール44の両環状溝44a、44bの間のランド44cによって閉塞されることは言うまでもない。
【0058】
なお、ポンプ切換用バルブ10以外の部分は、図8の構成に限定されるものではなく、コントロールバルブ、前後のパワーシリンダおよびパワーシリンダ用切換バルブ等は別の構成であっても良い。例えば、前述した従来の構成(特開2000−247247号の図1参照)のポンプ切換弁として、図9の構成を適用することも可能である。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、車輌のエンジンで駆動されるメインポンプと、前記エンジン以外の駆動手段で駆動されるサブポンプと、舵取りハンドルの操作に応じて前記各ポンプからの流体圧の流路を切り換えるコントロールバルブと、このコントロールバルブによって切り換えられた流体圧によって前2軸車の前側操向車輪を転舵する前側パワーシリンダと、コントロールバルブによって切り換えられた流体圧によって前2軸車の後側操向車輪を転舵する後側パワーシリンダと、前記メインポンプおよびサブポンプのいずれか一方を前記コントロールバルブに接続するポンプ切換手段と、このポンプ切換手段によりメインポンプがコントロールバルブに接続されたときに、後側パワーシリンダをコントロールバルブと接続し、サブポンプがコントロールバルブに接続されたときに、後側パワーシリンダをコントロールバルブから遮断するとともに、この後側パワーシリンダの左右室を連通するアクチュエータ切換手段とを備え、前記前側パワーシリンダが、前記コントロールバルブと常時接続されるようにしたことにより、エンジンの停止時や配管の破損等により、エンジン駆動式のメインポンプが失陥したときでも、サブポンプにより前側パワーシリンダを作動させて操舵を行うことができる。しかも、装置全体がコンパクト化できるとともに、構造を簡素化してコスト低減を図ることができる。
【0060】
また、請求項5に記載した発明では、前記ポンプ切換手段に、サブポンプをコントロールバルブに接続した際に、メインポンプ側の入口を直接タンクに連通するドレン通路を設けたことにより、メインポンプからサブポンプへの切換をスムーズに、かつ、完全に行うことができる。しかも、メインポンプからサブポンプへの切換え時のタイムラグが減少する。特に、エンジンの停止による失陥の場合には、切換のタイムラグが一層減少する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係る動力舵取装置を示す概略構成図である。
【図2】 前記動力舵取装置の異なる作動状態(流体圧力源の失陥時)を示す図である。
【図3】 前記動力舵取装置の一部を断面とした側面図である。
【図4】 前記動力舵取装置に設けられたポンプ用切換バルブの正常作動時を示す縦断面図である。
【図5】 前記動力舵取装置に設けられたポンプ用切換バルブの流体圧力源失陥時を示す縦断面図である。
【図6】 前記動力舵取装置に設けられたパワーシリンダ用切換バルブの正常作動時を示す縦断面図である。
【図7】 前記動力舵取装置に設けられたパワーシリンダ用切換バルブの流体圧力源失陥時を示す縦断面図である。
【図8】 本発明の第2の実施の形態に係る動力舵取装置の概略構成図である。
【図9】 本発明の第2の実施の形態に係る動力舵取装置のポンプ切換用バルブの正常作動時を示す縦断面図である。
【図10】 図8のポンプ切換用バルブの流体圧力源失陥時を示す縦断面図である。
【図11】 失陥時にメインポンプの入口側をタンクに連通する連通路の一例を示す断面図である。
【図12】 連通路の他の例を示す図である。
【図13】 連通路のさらに他の例を示す図である。
【図14】 連通路のさらに他の例を示す図である。
【符号の説明】
MP メインポンプ
SP サブポンプ
10 ポンプ切換手段(ポンプ用切換バルブ)
12 コントロールバルブ
18 前側パワーシリンダ
18L 前側パワーシリンダの左室
18R 前側パワーシリンダの右室
22 後側パワーシリンダ
22L 後側パワーシリンダの左室
22R 後側パワーシリンダの右室
24 アクチュエータ切換手段(パワーシリンダ用切換バルブ)

Claims (14)

  1. 車輌のエンジンで駆動されるメインポンプと、前記エンジン以外の駆動手段で駆動されるサブポンプと、舵取りハンドルの操作に応じて前記各ポンプからの流体圧の流路を切り換えるコントロールバルブと、このコントロールバルブによって切り換えられた流体圧によって前2軸車の前側操向車輪を転舵する前側パワーシリンダと、コントロールバルブによって切り換えられた流体圧によって前2軸車の後側操向車輪を転舵する後側パワーシリンダと、前記メインポンプおよびサブポンプのいずれか一方を前記コントロールバルブに接続するポンプ切換手段と、このポンプ切換手段によりメインポンプがコントロールバルブに接続されたときに、後側パワーシリンダをコントロールバルブと接続し、サブポンプがコントロールバルブに接続されたときに、後側パワーシリンダをコントロールバルブから遮断するとともに、この後側パワーシリンダの左右室を連通するアクチュエータ切換手段とを備え、前記前側パワーシリンダは、前記コントロールバルブと常時接続されることを特徴とする動力舵取装置。
  2. 前記ポンプ切換手段は、メインポンプをコントロールバルブに接続しているときには、サブポンプをタンクに短絡させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の動力舵取装置。
  3. 前記ポンプ切換手段およびアクチュエータ切換手段は、前記メインポンプからの流体圧をパイロット圧として切換作動されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の動力舵取装置。
  4. 前記ポンプ切換手段およびアクチュエータ切換手段は、動力舵取装置のハウジングに一体的に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれかに記載の動力舵取装置。
  5. 前記ポンプ切換手段に、サブポンプをコントロールバルブに接続した際に、メインポンプ側の入口を直接タンクに連通するドレン通路を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の動力舵取装置。
  6. 前記タンクは、メインタンクと分割されたサブタンクであることを特徴とする請求項5に記載の動力舵取装置。
  7. 前記ポンプ切換手段は、ハウジング内に形成されたバルブ孔に摺動自在に嵌合されたスプールを備え、このスプールの一端側に、メインポンプからの流体圧をパイロット圧として導入するパイロット圧室を設けるとともに、他端側にスプリングを配置し、パイロット圧の低下によりスプールが作動してサブポンプをコントロールバルブに接続した際に、メインポンプ側の入口をタンクに直接連通するドレン通路を設けたことを特徴とする請求項5に記載の動力舵取装置。
  8. 前記タンクは、メインタンクと分割されたサブタンクであることを特徴とする請求項に記載の動力舵取装置。
  9. 前記ハウジングに、メインポンプからの入口ポートに隣接してタンクへ連通するドレンポートを形成するとともに、前記スプールの外面またはバルブ孔の内面のいずれかに、メインポンプをコントロールバルブに接続したときには前記ドレンポートを閉じ、サブポンプをコントロールバルブに接続したときにドレンポートとメインポンプからの入口ポートを連通する連通路を形成したことを特徴とする請求項に記載の動力舵取装置。
  10. 前記連通路は、スプールの外面に形成された平面チャンファーであることを特徴とする請求項に記載の動力舵取装置。
  11. 前記連通路は、スプールの外面またはバルブ孔の内面に形成された傾斜面のチャンファーであることを特徴とする請求項に記載の動力舵取装置。
  12. 前記連通路は、スプールの外周面またはバルブ孔の内周面に形成された円周チャンファーであることを特徴とする請求項に記載の動力舵取装置。
  13. 前記連通路は、スプールの外周面に形成された円周溝であることを特徴とする請求項に記載の動力舵取装置。
  14. 前記前側パワーシリンダは前記前側操向車輪に1組のみ設けられ、前記後側パワーシリンダは前記後側操向車輪に1組のみ設けられることを特徴とする請求項1に記載の動力舵取装置。
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