JP3931350B2 - 均一かつ密着性の優れたフォルステライト被膜を有する方向性珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

均一かつ密着性の優れたフォルステライト被膜を有する方向性珪素鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、均一かつ密着性の優れたフォルステライト被膜を有する方向性珪素鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性珪素鋼板は主として変圧器、発電器の鉄心材料として使用されるが、磁気特性、絶縁被膜特性が優れていることが重要である。
一般に方向性珪素鋼板はSiを約3%含有する珪素鋼材を熱間圧延し、必要に応じて熱延焼鈍し、中間焼鈍をはさむ2回の冷間圧延で仕上げ厚みの冷延板を得、次に脱炭焼鈍を施した後に、 MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍を施してゴス方位を有する2次再結晶を発現させ、さらにS、Se、Nなどの不純物を除去するとともにフォルステライト被膜を生成させ、さらに平坦化焼鈍および絶縁コーティングを施して製造される。
【0003】
このとき、均一性と密着性のよいフォルステライト被膜を形成する方法としては、特開昭50−71526 号公報に脱炭焼鈍前に最終冷延板の表面層を3g/m2 以上除去するように酸洗し、表面付着物と地鉄表層部を除去し、脱炭反応およびSiO2を主体とした酸化物形成反応をむらなく進行させる方法が開示されている。また特開昭61−96062 号公報では脱炭焼鈍前に鋼板表面をアランダム砥粒等を含む軟材質からなる研削材で、滑らかになるよう研削し、同時に付着物酸化物、汚れを除去し、平滑なSiO2等の酸化膜を形成する方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの方法によれば、脱炭焼鈍前の表面清浄化あるいは平滑化により、それなりの被膜改善効果が奏されるであろうが、一方、過度の表面平滑化により、脱炭焼鈍時に形成されるサブスケール量が、過少となる場合には仕上焼鈍時のフォルステライト形成が不十分となり、エッジ部で黒模様を生じたり密着性を損なう場合がある。通常、仕上焼鈍はバッチ焼鈍(箱焼鈍)されるが、コイル中巻下部では温度上昇が遅れ、ガス流通性も悪いため、脱炭焼鈍時に形成されるサブスケール量が過少となる場合にはこのような現象が起こりやすい。
【0005】
本発明では、まず必要量のサブスケールを仕上焼鈍前の鋼板に形成せしめ、鋼板全面にわたり外観の均一かつ密着性の良好なるフォルステライト被膜を有する方向性珪素鋼板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、方向性珪素鋼板を製造する際に、その脱炭焼鈍前の鋼板をアルカリ脱脂を行う鋼板洗浄後に、珪酸塩を含む溶液中で少なくとも2極以上からなる交番電解で、かつ最終極での鋼板の極性を負極として電解し、次いで脱炭焼鈍後に MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍に供することを特徴とする方向性珪素鋼板の製造方法である。
【0007】
【作用】
本発明によれば、脱炭焼鈍前の鋼板をアルカリ脱脂を行う鋼板洗浄後に珪酸塩を含む溶液中で、少なくとも2極以上からなる交番電解で、かつ最終極での鋼板の極性を負極で電解することにより、
(1)鋼板表面の珪素化合物電着量を電気量密度の変更により容易に制御せしめ、脱炭焼鈍時に生成するサブスケール量を雰囲気の酸化性一定のもとでも変化させ得る。
(2)図2に示すように最終極での鋼板の極性を正極とするよりも最表面のSi量が多い。図2はオージェ分光分析の結果である。この表層Si富化効果により脱炭焼鈍時のサブスケール形成および仕上焼鈍時のフォルステライト被膜形成を促進、安定化させるものと考えられる。
(3)また、図3に示すように交番電界とすることにより、効率よく鋼板表面の珪素化合物電着量を増加させ得る。この図で電極数0は板を負極とし直接通電した場合を示している。
【0008】
そして、 MgOを主体とする焼鈍分離剤塗布後、仕上箱焼鈍を行い、コイル下部の黒模様長さ発生率とコイル下部 100mmの位置での被膜密着性を比較すると、鋼板の最終極性を負極とし、脱炭焼鈍後酸化物量の多い方が被膜均一性・密着性が改善される結果となった。
【0009】
【実施例】
重量%で、C:0.045 %、Si:3.30%、Mn:0.075 %、Se:0.018 %、Sb:0.025 %を含有し、残部がFeと不可避的不純物からなる珪素鋼スラブより公知の方法で最終冷延まで行い、アルカリ脱脂と軽酸洗の後、界面活性剤を微量添加した3%オルソケイ酸ナトリウム液中で4対の電極で2秒間、電気量密度を0〜6C/dm2 で電解し、次いで水蒸気分圧と水素分圧の比(PH2O/ PH2)が0.54の雰囲気で脱炭焼鈍を行った。
【0010】
図1には、鋼板の極性が+−+−と最終極性が負極の場合と、−+−+と最終電極が正極の場合を示すが、負極の場合の方が電気量密度の増加により電着Si量が増加して、脱炭焼鈍後の酸化物量が増加していることが分かる。電着Si量は蛍光X線分析により、脱炭焼鈍後の酸化物量は化学分析により求めた。
図1より分かるように、本発明の実施例の場合、仕上焼鈍後のコイル下部の黒模様発生率が減少しており、また剥離を生じない限界曲げ径も向上している。黒模様はフォルステライト被膜がポーラスな結果であり、鉄損劣化につながる。また、フォルステライト被膜が剥離すると導通しやすくなり、渦電流が生じ、これまた鉄損劣化の原因となる。
【0011】
【発明の効果】
本発明は、脱炭焼鈍前の鋼板をアルカリ脱脂を行う鋼板洗浄後に珪酸塩を含む溶液中で最終極での鋼板の極性を負極とすることにより、鋼板表面の珪素化合物電着量を容易に増加せしめ、電気量密度の制御により脱炭焼鈍時に生成するサブスケール量を必要量確保し、仕上焼鈍時のフォルステライト形成を安定させ、均一性、密着性の優れた方向性珪素鋼板の製造が可能となった。また本発明では、交番電解することにより効率よく鋼板表面の珪素化合物電着量を制御でき生産性の向上にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電気量密度の増加により、鋼板の最終極性を負極とすることにより鋼板表面の電着Si量が増加し、脱炭焼鈍時の酸化物量が増加し、仕上焼鈍後の被膜均一性、密着性が向上することを示すグラフ。
【図2】同一電気量密度において鋼板最終極性の負極の方が最表面のSi強度が大きいことを示すグラフ。
【図3】交番回数の多い方が電着Si量は増加しやすいことを示すグラフ。

Claims (1)

  1. 方向性珪素鋼板を製造する際に、その脱炭焼鈍前の鋼板をアルカリ脱脂を行う鋼板洗浄後に、珪酸塩を含む溶液中で少なくとも2極以上からなる交番電解で、かつ最終極での鋼板の極性を負極として電解し、次いで脱炭焼鈍後に MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍に供することを特徴とする方向性珪素鋼板の製造方法。
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