JPH11181557A - 鉄損の極めて低い方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

鉄損の極めて低い方向性電磁鋼板およびその製造方法

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JPH11181557A
JPH11181557A JP36553597A JP36553597A JPH11181557A JP H11181557 A JPH11181557 A JP H11181557A JP 36553597 A JP36553597 A JP 36553597A JP 36553597 A JP36553597 A JP 36553597A JP H11181557 A JPH11181557 A JP H11181557A
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grain
oriented electrical
electrical steel
plating layer
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JP36553597A
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Hiroshi Yamaguchi
山口  広
Kenichiro Akao
謙一郎 赤尾
Minoru Takashima
高島  稔
Michiro Komatsubara
道郎 小松原
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フォルステライト被膜等の無機質の被膜の存
在しない地鉄上に直接張力被膜を形成し、磁気的に平滑
化する手段と張力付加型被膜付与の相乗効果によって極
めて鉄損の低い電磁鋼板およびその製造方法を提案す
る。 【解決手段】 方向性電磁鋼板をその金属素地表面上に
0.05μm以上の厚さを有し、かつ、0.15kgf
/mm2以上の圧縮残留応力を有する金属めっき層を被
成してなるものとする。また、上記方向性電磁鋼板の製
造方法として、方向性電磁鋼板用の素材を処理して金属
素地の露出した仕上げ焼鈍済みの方向性電磁鋼板を製造
する段階と、上記金属素地の露出した仕上げ焼鈍済みの
方向性電磁鋼板の表面に厚さが0.05μm以上であ
り、かつ該めっき層内部に0.15kgf/mm2以上
の圧縮応力が残留するように電気めっきを施す段階とを
有してなるものとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は方向性電磁鋼板、特
に張力を付加して鉄損を低下せしめた方向性電磁鋼板お
よびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】方向性電磁鋼板は主として変圧器その他
の電気機器の鉄心材料として使用され、磁気特性の良好
なこと、すなわち、磁束密度が高く鉄損値が低いことが
求められる。中でも電気機器の使用中のエネルギーロス
を少なくするため鉄損の低いことが重要である。かかる
鉄損の低減のためには電磁鋼板の板厚の低減、Si含有
量の増加、結晶方位の配向性の向上等の方法がとられて
いるが、これらに加えて鋼板に張力を付加することが有
効である。そのため、鋼板より熱膨張係数の小さい物質
からなる被膜を鋼板上に被成することが行われており、
その手段は一般には電磁鋼板の最終仕上げ焼鈍焼鈍過程
で鋼板表面上にフォルステライトを主成分とする被膜を
形成させ、さらにその上に低熱膨張性のコーティングを
施すことからなっている。
【0003】従来の一般的な電磁鋼板においては上述の
方法により電磁鋼板に対して高いレベルの張力を付加す
ることができ、鉄損値もかなり低下し現在の主流技術と
なっているが、もはやこれ以上格段の鉄損値の改善は望
めない状況になっている。かかる状況の下で、近年電磁
鋼板の鉄損値をさらに低下させる手段として鋼板表面を
磁気的に平滑化して磁化過程における鋼板の表面近傍の
ピニングサイトを減少させることによって鉄損を大幅に
改善させる技術が注目されている。
【0004】例えば特公昭52−24499号公報には
仕上げ焼鈍後、酸洗により表面生成物を除去し、ついで
化学研磨または電解研磨により鏡面に仕上げる方法が開
示されており、また特開平5−43943号公報にはフ
ォルステライト被膜を除去後、1000〜1200℃の
温度下、水素気流中でサーマルエッチングする方法が開
示されており、これれの方法により著しい鉄損の減少が
達成できることが理論的に認められている。
【0005】しかしながら、上記磁気的に平滑化する手
法を用いる場合にも鉄損を低下させるためには鋼板に強
い張力を付与することが不可欠であり、そのためには鋼
板表面に張力を付与する機能を持った被膜を存在させな
ければならない。かかる張力被膜(張力付加型被膜とも
いう)は多く知られているが、例えば特公昭53−28
375号公報あるいは特公昭56−52117号公報に
よって開示されている方法はいずれもフォルステライト
被膜を有する方向性電磁鋼板上において地鉄と密着し鋼
板に高い張力を与える付与するものであって、磁気的に
平滑化されフォルステライト被膜の存在しない場合には
被膜自体の高い張力により鋼板から剥落してしまい、目
的を達することができない。
【0006】磁気的に平滑化された表面上に張力付加型
の被膜を被成する手段も多く提案されている。例えば特
公昭52−24499号公報には金属めっき後、張力付
与コーティング液を塗布焼き付ける方法が方法が開示さ
れ、特開平6−18762号公報にはSiO2薄膜を形
成させた後、被膜を張力付与コーティング液を塗布焼き
付ける方法が方法が開示されている。また特公昭56−
4150号公報にはセラミックス被膜を蒸着、スパッタ
リングあるいは溶射などによって形成させる方法が開示
され、さらに特公昭63−54767号公報にはセラミ
ックス被膜をイオンインプランテーションによって形成
する方法が開示されている。そのほか特公平2−243
770号公報にはいわゆるゾル−ゲル法によってセラミ
ックス被膜を形成する方法が開示されている。
【0007】しかしながら上記提案は被膜自体の地鉄に
対する密着性が低かったり、被膜と地鉄との熱膨張係数
の差が大きすぎたりするために十分な密着性が得られな
かったり、あるいは生産性やコスト高であるなどの理由
により未だ工業的に実現されるに至っていない。また、
特開平7−17361号公報には鋼板表面に熱処理によ
って熱膨張係数が3×10-6-1以上に低下する合金被
覆層を具備させる方法が提案されているが、鋼板地鉄表
面と被覆層との界面との粗度が大きい場合には鉄損の低
減効果は小さく、界面が平滑である場合には熱処理の
際、金属被覆層が剥落してしまうので所期の目的を達成
できない。かかる理由により、上記従来の提案によって
は磁気的に平滑化する手段と張力付加型被膜による鉄損
低減手段を併用することはできていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来技術
の有する問題点を解決しフォルステライト被膜等の無機
質の被膜の存在しない地鉄上に直接張力被膜を形成し、
磁気的に平滑化する手段と張力被膜付与の相乗効果によ
って極めて鉄損の低い電磁鋼板およびその製造方法を提
案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題の
解決のために種々の手段について検討を行い、その中で
金属めっき層が地鉄に対する密着性が優れていることお
よび電気めっき層の中には電気メッキされた状態で、あ
るいはその後の熱処理の結果めっき層内に圧縮応力(地
鉄に対しては引張応力)を残留応力として生ずることを
知り、この現象を利用して本発明を完成したものであ
り、方向性電磁鋼板の素地表面上に0.05μm以上の
厚さを有し、かつ、0.15kgf/mm2以上の圧縮
残留応力を有する金属めっき層を被成してなるものとす
るものであり、さらに必要に応じて上記金属めっき層の
上に絶縁被膜を有せしめ、また、該方向性電磁鋼板はそ
の表面が平滑化処理あるいは結晶方位強調処理を施され
ものであることを好適とするものである。
【0010】本発明はまた、上記方向性電磁鋼板の製造
方法として、方向性電磁鋼板用の素材を処理して金属素
地の露出した仕上げ焼鈍済みの方向性電磁鋼板を製造す
る段階と、上記金属素地の露出した仕上げ焼鈍済みの方
向性電磁鋼板の表面に厚さが0.05μm以上であり、
かつ該めっき層内部に0.15kgf/mm2以上の圧
縮応力が残留するように電気めっきを施す段階とを有し
てなるものとするものであり、その際、金属素地の露出
した仕上げ焼鈍済みの方向性電磁鋼板は平滑化処理ある
いは結晶方位強調処理を施してなるものとすることを好
適とするものである。
【0011】本発明はさらに、方向性電磁鋼板用の素材
を処理して平滑化処理あるいは結晶方位強調処理を施し
て金属素地の露出した仕上げ焼鈍済みの方向性電磁鋼板
を製造する段階と、上記金属素地の露出した仕上げ焼鈍
済みの方向性電磁鋼板の表面に厚さが0.05μm以上
の電気めっきを施す段階と、上記により得られためっき
層を有する方向性電磁鋼板に対してめっき層内部に0.
15kgf/mm2以上の圧縮応力が残留するよう熱処
理を施す段階とを有してなるものとするものであり、そ
の際、金属素地の露出した仕上げ焼鈍済みの方向性電磁
鋼板は平滑化処理あるいは結晶方位強調処理を施してな
るものとすることを好適とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明に係る金属めっきは方向性
電磁鋼板の金属素地上に適用される。従って本発明の実
施にあたっては、まず方向性電磁鋼板が製造されなけれ
ばならない。そのための方法は特に限定されず公知の手
段を利用しうるが、(110)[001]方位への集積
度が高く磁気特性の優れたものを得る方法を採用するの
が望ましい。そのため本発明適用の出発素材たる方向性
電磁鋼板は以下のように製造するのがよい。
【0013】まず、方向性電磁鋼板を製造するための素
材スラブの組成は、重量比でSiを1.5〜7.0%、
Mnを0.03〜7.0%の範囲で含有させるのが望ま
しい。SiやMnは製品の電気抵抗を高め鉄損を低減す
るのに有効な成分であるが、Siは7.0%を超えると
硬度が高くなり製造や加工が困難になり、Mnは2.5
%を超えると熱処理時γ変態を誘起して磁気特性を劣化
させるからである。また、上記の元素のほかにインヒビ
ター成分としてS、Se、Al、B、Bi、Sb、M
o、Te、Sn、P、Ge、As、Nb、Cr、Ti、
Cu、Pb、ZnおよびInなどを必要に応じ、単独、
または複合して含有させることができる。なお、C、
S、Nは、電磁鋼板の製造過程においては良好な二次再
結晶組織を生成するのに寄与するが、製品の磁気特性
上、特に鉄損を劣化させるので、上記機能を果たし、か
つ最終製品中の残存量がそれぞれ0.003%以下、
0.002%以下、0.002%以下となるように添加
するのが好ましい。
【0014】上記組成を有する方向性電磁鋼板の素材ス
ラブは公知の方法によりスラブ加熱、熱間圧延、熱延板
焼鈍、冷間圧延、脱炭を伴う一次再結晶焼鈍、および二
次再結晶と純化のための最終焼鈍に付される。本発明
は、この一連の工程の如何は問うものではないが、(1
10)[001]方位への集積度が十分高くなるする方
法を採択するのがよい。しかしながら本発明に係るめっ
きの効果は必ずしも高磁束密度を有する方向性電磁鋼板
のみに現れるものではなく、通常の工程によって製造さ
れた方向性電磁鋼板にも現れるものであり、従って本発
明の適用対象はこれら通常の方向性電磁鋼板にも及ぶも
のである。なお、二次再結晶焼鈍に際し、マグネシヤを
主成分とする焼鈍分離剤を用いていわゆるガラス質被膜
(フォルステライト被膜)を生成させること、あるい
は、アルミナ等を焼鈍分離剤として用い、被膜のない電
磁鋼板とすることはいずれも可能である。
【0015】二次再結晶を完了した方向性電磁鋼板の表
面に酸化被膜が存在し鋼板表面の平滑性が損なわれてい
る場合には酸化物を除去し、さらに必要に応じて平滑化
処理を施す。本発明は通常の方向性電磁鋼板の製造過程
において生ずるフォルステライト系の無機質被膜を除去
した金属素地表面上に本発明に係るめっき層を施した場
合にも効果を生ずるが、鉄損値の有効な低減のためには
さらに磁気的平滑化処理を行うのがよい。
【0016】磁気的平滑化処理には、サーマルエッチン
グあるいは化学研磨による鏡面処理のほか、ハロゲン化
物水溶液中における電解による結晶方位強調処理も含ま
れる。このうち、鏡面処理においては0.20μm以上
の粗度が残存する場合には逆に磁気特性、特に鉄損の劣
化を招くおそれもので鋼板表面の平均粗度を0.20μ
m未満に低減することが好ましい。また、コスト削減の
ため、鏡面処理と鋼板表面の酸化被膜の除去と兼ねて行
ってもよいことは当然である。
【0017】結晶方位強調処理はNaCl、KClやN
4ClなどのClイオンが存在する塩化物水溶液中で
鋼板表面を電気分解することによってなされ、(11
0)面など磁気的に好ましい結晶方位を有する結晶粒を
残存させ、(111)面など磁気的に好ましくない方位
を有する結晶粒を電解腐食させることによって磁気特性
を向上させるものである。この処理によって得られるグ
レイニング様面はSi−Fe(110)面のテラスとス
テップが交互に配列する面であり、その粗度が鏡面に比
して高く、電析速度が個々の二次再結晶面の面方位に依
存しないため、本発明を適用する際、めっき層の厚さや
密着性にばらつきがなく、優れた効果を得ることができ
る。
【0018】上記により得られた磁気的平滑化処理のな
された金属素地表面上に金属めっきが施される。本発明
においては金属めっき層の厚さが0.05μm以上であ
り、かつその内部に0.15kgf/mm2以上の圧縮
応力が残留するようにすることが必要である。
【0019】図1はめっき層内の圧縮残留応力と鉄損値
の関係を示したものであるが、めっき層内の圧縮残留応
力が0.15kgf/mm2未満では磁気特性の改善は
顕著でないがこの値以上では磁気特性が急激に改善され
ることが明らかである。従って本発明においてはめっき
層内の圧縮残留応力を0.15kgf/mm2以上とす
る。
【0020】なお、上記結果は、Siを3%含有する板
厚0.23mmの仕上焼鈍済み方向性電磁鋼板を硫酸酸
洗して表面のフォルステライト被膜を除去した後、ふっ
酸−過酸化水素水溶液中で化学研磨し、表面を平滑化
し、得られた鋼板に対し硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムに
デキストリンを添加した浴温20℃の電解浴中で亜鉛を
電析させ、その際、デキストリンの濃度を変化させてめ
っき層中の残留応力を変化させて得た結果である。ま
た、めっき層内の残留応力はストーニー(Stone
y)法により試料の片側にだけめっき層を施し、その際
生ずる試料の反りから測定したものである。
【0021】めっき層の厚さは0.05μm以上としな
ければならない。0.05μm未満ではめっき層が不連
続となりめっき層が金属素地に十分密着せず、そのた
め、張力付与の効果が現れない。したがって、金属めっ
き層の厚さは0.05μm以上とすることが必要であ
る。なお、金属めっき層の厚さの上限は電磁鋼板の占積
率を損なわない範囲であれば特に設ける必要がない。
【0022】上記のように鋼板素地上に直接電着させる
ことによりめっき層内に残留応力を発生させることので
きる金属としては、亜鉛のほかに鉛、カドミウムや錫が
あり、またロッシェル塩を添加した硫酸銅浴から析出さ
せた銅も残留応力を発生させる。本発明においてはめっ
き層内に圧縮残留応力が発生していればよく、金属の種
類やめっき層の形成方法は問わない。さらに上記金属め
っき層中にセラミックスなどの第二相が分散して存在す
るようにすることも可能である
【0023】鋼板素地上に被成された金属めっき層内に
圧縮残留応力を付与する方法として、めっき層の電着後
熱処理を行う方法をとることも可能である。図2には、
ふっ酸−過酸化水素水溶液中で化学研磨を行い、表面を
平滑化した電磁鋼板にサージェント浴を用いてクロムめ
っきを行い、温度を変えて1分間焼鈍した場合の焼鈍温
度とめっき層内の残留応力との関係を示す。
【0024】めっきを行ったままの状態(めっきまま)
では、めっき層内に強い引張残留応力が存在するが、焼
鈍後はめっき層内の残留応力が圧縮応力に反転してい
る。その結果、図3に示すようにめっきままでは鏡面仕
上げ状態に比べ劣化していた鉄損値が改善された。すな
わち、焼鈍温度を約500℃以上とした場合には圧縮応
力が0.15kgf/mm2以上となり、鉄損値が鏡面
仕上げされた場合に比して改善される。なお、上記実験
の範囲内では、図2、図3から明らかなように上記効果
はめっき層の厚さが大きくなるほど顕著であった。
【0025】かかる焼鈍後残留応力が圧縮応力に反転す
るめっき条件は特に限定されず、上述のクロムほか種々
の金属に対して適用することができ、めっき浴に有機物
を添加し、あるいは金属塩の形態を変え、さらにはめっ
き浴のpHを変える等によって電着力を高める手段が利
用可能である。
【0026】電着めっき層自体、あるいはその焼鈍後め
っき層内部に圧縮残留応力が発生する機構については不
明な点が多く明らかではない。また、一般的には、めっ
き層内の残留応力はめっき層に亀裂を発生させる原因に
なるので歓迎されないが、本発明においてはかかる残留
圧縮応力によって鉄損値の改善が図られるのであり、こ
の点が本発明の最も特徴的な点である。
【0027】上記により得た電着めっき層上に絶縁被膜
を付与する。本発明においてはすでに電着めっきにより
電磁鋼板に対し引張応力が付与されているので絶縁被膜
自体に張力付与効果を具備させることは必要としない。
しかしながら絶縁被膜に張力被膜を用いる場合には、よ
り大きな引張応力を鋼板に与えることができ鉄損値のさ
らなる改善を図ることができる。この張力被膜としては
公知の、たとえば特開平6−65754号公報、特開平
6−65755号公報あるいは特開平6−299366
号公報によって開示されているもののほか硼酸−アルミ
ナ系の酸化物被膜も利用できる。
【0028】さらに張力絶縁被膜をめっき面上に被成す
る場合にはめっき面が適度に荒れていること、たとえば
粗度が一定限度以上に大きく、あるいは微細な亀裂や細
孔が表面に存在することが好ましい。めっき条件を調整
することによりこのようなめっき面を得ることができる
が、残留応力の発生条件と両立させることが肝要であ
る。たとえば亜鉛めっきにおいては硫酸亜鉛などの酸性
浴を用いると圧縮残留応力と粗面を有するめっき面が同
時に得られる。焼鈍により引張応力を圧縮応力に反転さ
せる場合には、焼鈍によりめっき層表面が若干酸化され
その粗度が大きくなるので、被膜密着性の面から好まし
い。
【0029】本発明の電磁鋼板には公知の磁区細分化処
理を施すことも可能である。その手段としてレーザーあ
るいはプラズマ炎を照射しても本発明の効果は損なわれ
ない。また、電磁鋼板の製造工程の任意の時期にエッチ
ングあるいは歯形による溝を形成することも可能であ
り、これらの手段を適宜併用することにより、一層の鉄
損の低下を図ることができる。
【0030】
【実施例】
【実施例1】Siを3%含有し、板厚0.23mmに圧
延された冷延板を脱炭、一次再結晶焼鈍した後、MgO
を主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、二次再結晶過程と
純化過程を含む最終焼鈍に付した。得られた仕上げ焼鈍
板を硫酸酸洗してフォルステライト被膜を除去し、さら
に磁気的平滑化処理を行った。磁気的平滑化処理は、
(1)ふっ酸−過酸化水素水浴中での化学研磨をを行う
鏡面化処理、(2)NaCl水溶液中において電解を行
う結晶方位強調処理の2種類とした。上記各磁気的平滑
化処理を行った鋼板にZnSO4:240g/l、Al2
(SO43:70g/lとデキストリンを含む硫酸亜鉛
浴を使用して残留圧縮応力がめっき層内に内在するよう
に亜鉛めっきを施した。めっき鋼板に対し燐酸マグネシ
ウム、コロイダルシリカおよび無水クロム酸を主成分と
して含有する水溶性処理液を塗布、800℃で焼き付
け、厚さ約3.0μmの張力被膜を形成させた。
【0031】かくして得られた鋼板の特性値を表1に示
す。表1から明らかなように、本発明に規定する条件を
満たす試料1〜4は非常に低い鉄損値を示した。特に結
晶方位強調処理を行った試料3、4は鉄損値が格段に低
かった。また、上記例ではめっきに際し硫酸亜鉛浴を使
用したためめっき面は粗面を呈しており、そのため絶縁
被膜の密着性は優れていた。これに対し、めっき厚さが
0.02mmと薄い場合(試料6)およびめっき層内部
の残留応力が0.15kgf/mm2に達していない場
合(試料6)はめっき処理の行われていない場合に比較
して鉄損値の改善が十分行われなかった。
【0032】
【表1】
【0033】
【実施例2】Siを3%含有し、板厚0.23mmに圧
延された冷延板を脱炭、一次再結晶焼鈍した後、Al2
3を主成分とし、CaOとSiO2を含有する焼鈍分離
剤を塗布し、二次再結晶過程と純化過程を含む最終焼鈍
に付した。得られた仕上げ焼鈍板を塩酸酸洗してフォル
ステライト被膜を除去し、さらに燐酸−クロム酸系の電
解浴中で電解研磨を行い、表面を磁気的に平滑化した。
得られた鋼板に対しCrO3:250g/l、H2
4:2.5g/lを含有するサージェント浴を用いク
ロムめっきを行ない、さらに焼鈍処理を施してめっき層
内に圧縮残留応力を発生させた。得られためっき鋼板に
対し燐酸マグネシウム、コロイダルシリカおよび無水ク
ロム酸を主成分として含有する水溶性処理液を塗布、8
00℃で焼き付け、厚さ約4.0μmの張力被膜を形成
させ、さらに一部の鋼板についてはレーザーにより1
2.5mmの間隔の磁区細分化処理を行った。
【0034】かくして得られた鋼板の特性値を主な処理
条件とともに表2に示す。表2から明らかなように、本
発明に規定する条件を満たす試料11〜14は非常に低
い鉄損値を示した。特にレーザー照射による磁区細分化
処理を施した試料12、14は鉄損値が格段に低かっ
た。これに対し、めっき後焼鈍処理が行われていない試
料5では残留応力が引張応力として残り、鉄損値は非常
に高く、また焼鈍処理が不十分で残留応力が引張応力と
して存在した試料16もやはり高い鉄損値を示した。ま
た、試料17、18は焼鈍処理の結果、残留応力は圧縮
側となっているがその程度が十分でないため鉄損値の改
善は不十分であった。
【0035】
【表2】
【0036】
【発明の効果】本発明は上記のように方向性電磁鋼板を
その素地表面上に圧縮残留応力を有する金属めっき層を
被成してなることとしたので、酸化被膜等ピニングサイ
トの減少した状態において張力を鋼板に与えることがで
きるので、磁気的に平滑化の効果張力付与の効果を相乗
的に得ることができ、鉄損の極めて低い方向性電磁鋼板
を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】方向性電磁鋼板の金属素地上に亜鉛を電析させ
た場合のめっき層内の内部圧縮残留応力に対する鉄損値
との関係図である。
【図2】方向性電磁鋼板の金属素地表面にクロムをめっ
きし、熱処理を施した場合の焼鈍温度と内部残留応力と
の関係図である。
【図3】方向性電磁鋼板の金属素地表面にクロムをめっ
きし、熱処理を施した場合の焼鈍温度と鉄損値との関係
図である。
フロントページの続き (72)発明者 高島 稔 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 小松原 道郎 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 方向性電磁鋼板の素地表面上に0.05
    μm以上の厚さを有し、かつ、0.15kgf/mm2
    以上の圧縮残留応力を有する金属めっき層を被成してな
    ることを特徴とする鉄損の極めて低い方向性電磁鋼板。
  2. 【請求項2】 方向性電磁鋼板の素地は平滑化処理ある
    いは結晶方位強調処理を施されたものであることを特徴
    とする請求項1記載の鉄損の極めて低い方向性電磁鋼
    板。
  3. 【請求項3】 金属めっき層の上に絶縁被膜を有する請
    求項1または2記載の鉄損の極めて低い方向性電磁鋼
    板。
  4. 【請求項4】 方向性電磁鋼板用の素材を処理して金属
    素地の露出した仕上げ焼鈍済みの方向性電磁鋼板を製造
    する段階と、 上記金属素地の露出した仕上げ焼鈍済みの方向性電磁鋼
    板の表面に厚さが0.05μm以上であり、かつ該めっ
    き層内部に0.15kgf/mm2以上の圧縮応力が残
    留するように電気めっきを施す段階と、を有してなるこ
    とを特徴とする鉄損の極めて低い方向性電磁鋼板の製造
    方法。
  5. 【請求項5】 方向性電磁鋼板用の素材を処理して金属
    素地の露出した仕上げ焼鈍済みの方向性電磁鋼板を製造
    する段階と、 上記金属素地の露出した仕上げ焼鈍済みの方向性電磁鋼
    板の表面に厚さが0.05μm以上の電気めっきを施す
    段階と、 上記により得られためっき層を有する方向性電磁鋼板に
    対してめっき層内部に0.15kgf/mm2以上の圧
    縮応力が残留するよう熱処理を施す段階とを有してなる
    ことを特徴とする鉄損の極めて低い方向性電磁鋼板の製
    造方法。
  6. 【請求項6】 金属素地の露出した仕上げ焼鈍済みの方
    向性電磁鋼板は平滑化処理あるいは結晶方位強調処理が
    施されたものであることを特徴とする請求項4または5
    記載の鉄損の極めて低い方向性電磁鋼板の製造方法。
  7. 【請求項7】 めっき層の上に絶縁被膜を付与する段階
    を有してなることを特徴とする請求項4、5または6の
    いずれかに記載の鉄損の極めて低い方向性電磁鋼板の製
    造方法。
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