JP3931232B2 - 布帛の漂白方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化剤と紫外光又は可視光源からの光エネルギーを用いて布帛の強度低下をすることなく漂白を漂白する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
布帛の漂白は、布帛に付着している着色物質を酸化剤、還元剤で処理し発色に関与する共役π電子系を切断する事により行っている。これらの工程は、工業的には上記酸化剤、還元剤による0.5ないし2時間程度の煮沸とその後の洗浄を行うか、これらの薬剤の適当濃度の溶液をパディングにより布重量の80〜110%量を布帛に付着させた後、これを95℃前後の蒸気雰囲気中で0.5〜1時間前後蒸熱することにより行っているが、一般的には木綿や麻などの植物性繊維織物の場合には酸化剤が多く用いられ、絹や毛織物の場合には還元剤が多く用いられている。また、家庭的には洗濯液等に漂白剤を加えることにより行われている。
【0003】
このような従来の漂白方法では、酸化剤、還元剤と繊維内着色物質との反応は溶媒である水の加熱を通した熱エネルギーにより行っている。この方法は熱容量の大きい水を沸点まで加熱し、かつその温度を反応に要する時間保持する必要がある為に大きな熱量を要するものである為に反応塔全体が大型化されてしまう等の不具合があった。
【0004】
また、これらの工業的漂白過程は高温で行われるので、大量のエネルギーを要する多消費型プロセスであり、その為に多量の二酸化炭素の放出を伴うという問題も有している。
【0005】
現在では酸化剤として多くの場合、亜塩素酸塩や次亜塩素酸塩等のハロゲン系薬剤を用いた方法が用いられているが、これらのハロゲン原子を含む薬剤は環境に対する負荷が大きいという問題を有している。
【0006】
また、これらのハロゲン原子を含む薬剤は人体に対する危険性も大きいので、操業安全性にも問題を有している。
【0007】
その為に非ハロゲン系酸化剤として過酸化水素が用いられているが、過酸化水素は急激な反応により繊維を脆化する恐れがあるので、分解抑止剤を添加して分解を遅延させながら長時間掛けて徐々に反応させなければならないことから、蒸気熱を長時間に亘って使用しなければならず、その上繊維の仕上りが硬くなるという問題点がある。
【0008】
また還元剤としては、ハイドロサルファイトやSO2が使われるが、これらは漂白カが弱く漂白に対して十分な漂白効果が得られないという問題点もあった。
【0009】
以上述べた問題点を解決するために、酸化還元剤と光照射(レーザーを含む)を利用した方法(特許文献1、特許文献2等)が報告されているが、用いる酸化、還元剤の光分解により発生した活性種が布帛の脆化や硬化が起こりその強度が低下するといった問題点があった。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−43861号公報
【特許文献2】
特開平11−43862号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、薬液と紫外及び/又は可視光源からの光エネルギーを用いて行う布帛の漂白において、従来法と少なく同程度の漂白効果を得ると共に、布帛の脆化や硬化を抑制し、その強度を低下することなく、風合いを保持することができ、更には環境負荷が小さく操業安全性の高い、省資源かつ省エネルギー的環境調和型漂白方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこのような、布帛の漂白に際しての難点を克服するため鋭意研究を重ねた結果、有機光化学的知見、及び紫外可視光反応の特徴を組み合わせることにより、その目的が達成しうることを見い出し、この知見に基づき本発明をなすに至った。
【0013】
すなわち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
(1)酸化剤の存在下、紫外光及び/又は可視光を照射することによる布帛の漂白方法において、照射する紫外光及び/又は可視光の波長を、200nm〜800nmにおける酸化剤と布帛本来の吸収の最大吸光度の内、大きい方の最大吸光度の0〜10%の吸光度である波長領域としたことを特徴とする布帛の漂白方法。
(2)照射光がレーザー光であることを特徴とする(1)に記載の布帛の漂白方法。
(3)照射光の発生に低圧水銀灯及び/又はブラックライトを用いることを特徴とする(1)又は(2)に記載の布帛の漂白方法。
(4)照射光の発生にエキシマランプを用いることを特徴とする(1)から(3)の何れかに記載の布帛の漂白方法。
(5)照射光が、用いる光源の発する波長の一部からなることを特徴とする(1)から(4)の何れかに記載の布帛の漂白方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
従来の酸化剤を用いた漂白では、熱的方法と光化学的方法のいずれの場合も、酸化剤の分解により発生する反応性の高い活性種による布帛の脆化が問題になる場合が多かったので、布帛の脆化を抑制する為に各種の薬剤が用いられてきた。
本発明方法では、光による酸化剤の分解により反応性の高い活性種の発生が起こらない処理条件下で、着色物質を紫外光又は可視光照射により活性な状態にし、用いる酸化剤と効率良く反応させることにより、着色物質を分解又は無色化すると共に布帛の脆化や硬化を抑制し布帛の強度を低下することなく布帛を漂白することを特徴とする。
【0015】
本発明に用いられる酸化剤は、用いる溶媒中で或る程度安定で有れば有機化合物、無機化合物、有機−無機複合体、等の化合物のいずれでも良いが、過酸化水素、ペルオクソ炭酸塩、ペルオクソホウ酸塩、過酸化ナトリウムのような過酸化物塩、超過酸化カリウムのような超過酸化物塩、過酸化ベンゾイルや過酸化水素のような過酸化物等が例示される。
【0016】
本発明で最も好ましく使用される酸化剤はペルオクソ炭酸ナトリウム、及びペルオクソホウ酸ナトリウムである。
【0017】
酸化剤の濃度にも特に制限は無く、溶媒に対する酸化剤の飽和濃度以下であればよいが、好ましくは0.01〜40%、より好ましくは0.1〜20%である。
【0018】
本発明の方法を好ましく実施するには、酸化剤を水、アルコール類、鎖状または環状のアルカン類、エーテル類、等の紫外光及び/又は可視光を透過する溶媒、或いはそれらの混合溶媒に溶解し、この酸化剤の溶液をパディングやスプレー等により布帛に含ませ、この布帛が静止した状態、又は移動している状態で光照射を行えばよい。本発明で好ましく使用される溶媒は水及び水を含む混合溶媒である。
【0019】
光照射温度には特に制限は無く、用いた溶媒の凝固点以上、沸点以下であればよいが、好ましくは−80℃〜100℃、より好ましくは0〜50℃である。
【0020】
本発明においては、着色物質を紫外光及び/又は可視光照射により活性な状態にし、用いる酸化剤と効率良く反応させることにより、着色物質を分解又は無色化すると共に布帛の脆化や硬化を抑制し布帛の強度を低下することなく布帛を漂白するためには、用いる紫外光及び/又は可視光の波長を酸化剤が実質的に吸収しない波長領域、及び/又は布帛本来の吸収が実質的に存在しない波長領域とすることが肝要である。
具体的には、用いる紫外光及び/又は可視光の波長を、酸化剤又は布帛本来の吸収の最大吸光度の10%以下、好ましくは0〜5%、更に好ましくは0〜2%とすることが必要である。
ここで、酸化剤又は布帛本来の吸収の最大吸光度とは、200〜800nmの波長領域における最大吸光度を意味する。
【0021】
本発明方法は、このような波長領域の光照射を行うことにより、酸化剤の光分解を抑制し、該光分解で発生する高反応性の化学種と布帛との反応による布帛の強度低下を防止すること、及び/又は直接光反応による布帛の強度低下を防止すること、といった作用効果を呈する。
照射する紫外光及び/又は可視光の波長が、酸化剤又は布帛本来の吸収の最大吸光波長の10%超えると、酸化剤の光分解により高い濃度の高反応性の化学種が発生し、この化学種と布帛との反応により布帛の強度低下をもたらすこと、及び/又は直接光反応による布帛の強度低下をもたらすこととなるので好ましくない。
【0022】
本発明において、照射する紫外光及び/又は可視光の波長を上記のような波長領域に設定するには、たとえば紫外分光光度計を用いて200〜800nmにおける酸化剤と布帛本来の吸収の最大吸光度をそれぞれ測定し、より大きな方の最大吸光度値の0〜10%の吸光度を有する波長領域とすればよい。但し、布帛を直接積分球等を用いて紫外分光光度計により吸光度を測定する場合には、布帛の散乱による影響を除いた吸光度の値を用いる必要がある。また、布帛本来の吸収は布帛の化学構造より或る程度予測することが出来るので、この予想値を用いることも可能である。
【0023】
紫外光及び/又は可視光源としては特に制限はなく、0.1mW〜10kWの光源が適しており、具体的には低圧水銀灯、ブラックライト、高圧水銀灯、キセノン灯等の通常の光源や、各種エキシマランプや、等を用いることができるが、電気から光への変換効率の点からみて低圧水銀灯、ブラックライトやエキシマランプを用いることが好ましい。
【0024】
紫外光及び/又は可視光としてまた、光源としてレーザー光を用いることができ、レーザー光源としては特に制限はなく、またレーザー光はパルス光でも連続照射光でもよいが、エキシマレーザー(ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、XeClエキシマレーザー、XeFエキシマレーザー等)、アルゴンイオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、YAGレーザー(第2、第3、及び第3高調波等)等が好ましく使用される。レーザー光照射強度に特に制限は無いが、パルスレーザーでは0.1mJ/パルス・cm2〜1kJ/パルス・cm2、連続光レーザーでは0.1mW〜10kW/cm2が適している。又は、複数のこれらの光源の組み合わせが適している。光照射時間は、布帛の着色度、溶媒の種類、溶液の濃度、更には、照射紫外光及び/又は可視光の種類や光強度等を考慮することにより適宜定められるが、通常、1〜60分もあれば充分である。
【0025】
本発明の漂白対象となる布帛は、未漂白でも漂白済みの何れであってもよい。このような布帛としては、たとえば、生機、糊抜済布帛、精錬済布帛、糊抜精錬済布帛、漂白後の使用により着色した布帛、染色された布帛等の着色布帛等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0026】
【実施例】
次に実施例に基づき、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例1
糊抜精錬済み綿布(JIS L 1096Aにより測定される綿布強度32.7kg)を6%ペルオクソ炭酸ナトリウム水溶液にてパディングした後、40mJ/cm2・パルス、5HzのXeFエキシマレーザー(351nm、6%ペルオクソ炭酸ナトリウム水溶液の200〜800nmにおける最大吸光度の0.07%の波長)を2分間照射した後洗浄し、乾燥後に漂白した綿布の強度をラベルドストリップ法(JIS L 1096A)により測定したところ33.7kgであった。
【0029】
比較例1
実施例1において、XeFエキシマレーザーの代わりにKrFエキシマレーザー(248nm;6%ペルオクソ炭酸ナトリウム水溶液の200〜800nmにおける最大吸光度の12%の波長)を用いて同様の漂白を行ったところ、漂白した綿布の強度は13.7kgであった。
【0030】
比較例2
実施例1において、糊抜精錬済み綿布の代わりにポリエステル布を用い、XeFエキシマレーザーの代わりにKrFエキシマレーザー(248nm;ポリエステル布本来の吸収の200〜800nmにおける最大吸光度の約85%の波長)を用いて同様の漂白を行ったところ、レーザーを照射した部分に損傷が見られた。
【0031】
【発明の効果】
本発明の布帛の漂白方法は、布帛の脆化や硬化を抑制し、その強度を低下することなく、風合いを保持することができ、更には環境負荷が小さく操業安全性の高い、省資源かつ省エネルギー的環境調和型漂白方法ということができる。
Claims (5)
- 酸化剤の存在下、紫外光及び/又は可視光を照射することによる布帛の漂白方法において、照射する紫外光及び/又は可視光の波長を、200nm〜800nmにおける酸化剤と布帛本来の吸収の最大吸光度の内、大きい方の最大吸光度の0〜10%の吸光度である波長領域としたことを特徴とする布帛の漂白方法。
- 照射光がレーザー光であることを特徴とする請求項1に記載の布帛の漂白方法。
- 照射光の発生に低圧水銀灯及び/又はブラックライトを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の布帛の漂白方法。
- 照射光の発生にエキシマランプを用いることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の布帛の漂白方法。
- 照射光が、用いる光源の発する波長の一部からなることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の布帛の漂白方法。
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