JP3931227B2 - Ni−V合金相を有するNi基材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願の発明はNi - V合金相を有するNi基材の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、水素分離精製用部材として有用な、Ni - V合金相を有するNi基材を任意の形状のものとして製造可能とし、大流量の水素の分離精製をも可能とすることのできる、Ni - V合金相を有するNi基材の新しい製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】
Ni、あるいはAlを含有するV基合金は高い水素透過能を有し、現在、水素透過膜として実用化レベルにあるPd合金と比較して安価であるという特徴をもっている。このような特徴のあるV基合金について、水素の分離精製膜としての実用化に向けて、この出願の発明者らによってこれまでにも詳細な検討が進められてきている(たとえば、Materials Transactions, JIM, Vol.32,No.5(1991),pp.501−507;Journal of Alloys and Compounds 330-332(2002)902−906)。
【0003】
しかしながら、これらの合金は酸化されやすく、酸化物の融点が低いことから熱間圧延が難しく、インゴットを直接冷間圧延することもわれが生じやすいことから実際的に困難であるという問題があった。
【0004】
このため、従来では、薄板状のものを得るにはインゴットを切断した後に研磨によって薄くするという汎用性の低い方法による外になく、任意の形状に、しかも大面積のものにすることができないという問題があった。
【0005】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの従来の問題点を解消し、水素の分離精製膜として、任意の形状に、しかも大流量の水素を対象とすることができるように大面積のものとすることが可能な、V基合金材の新しい製造方法を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、Ni基材に、金属V、塩化白金、塩化アンモニウムを加熱させて製造した、ガス状の金属ハロゲン化物を、基材と接触させてVを気相拡散浸透させて合金相を形成することを特徴とするNi - V合金相を有するNi基材の製造方法を提供し、第2には、基材は薄板またはパイプ状体であることを特徴とする上記のNi - V合金相を有するNi基材の製造方法を提供する。
【0008】
以上のとおりのこの出願の発明においては、気相拡散浸透法を利用して合金材を製造するため、加工の難しい合金材に比べて加工が容易なNiあるいはVの純金属を冷間圧延等によって予め所定の形状に加工しておいたものを合金化することができる。このため、複雑な形状のものをはじめとして任意の形状のものの、さらには大面積のものの製造が容易とされる。
【0009】
そして拡散浸透法であることから、温度や圧力、気体濃度等の条件の選択、変更によって合金の組成を精密に制御することが可能であり、さらには傾斜組成のものを得ることも可能である。
【0010】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0011】
この出願の発明においては、水素の分離精製用の膜体をその主な用途とするV基合金材を製造する。その組成としては、Ni−V合金がある。
【0012】
これらの合金材を製造するための手段として、気体(ガス)と基材との接触による拡散浸透法が採用される。基材としては、NiもしくはVの純金属が使用され、これらの基体は、あらかじめ所定の形状、たとえば薄板、円筒体、さらには他の複雑形状のものに成形加工されていてよい。
【0013】
拡散浸透のためにこれらの基材に接触される気体(ガス)は、Ni基材の場合には、VまたはVとAlとの化合物であり、V基材の場合には、Ni、Alの化合物の1種以上である。これらの化合物は、所定の温度レベルにおいてガス状で存在し得るものであれば各種のものであってよく、たとえば塩化物、沃化物等のハロゲン化物や、カルボニル化合物等が考慮される。これらのガス状の金属化合物の使用に際しては、その生成と、温度勾配上での化学輸送、並びに基材との接触を連続的プロセスとして行うことも考慮される。
【0014】
実際、この出願の発明者は、金属V、Ni、Alを塩化水素、ヨウ素などの存在下で加熱することにより形成した気体の塩化物またはヨウ化物が温度勾配に沿って輸送された後分解し、もとの金属として析出する化学輸送反応に着目し、温度傾斜炉上の1ヶ所に金属V、Ni、Alと塩化水素の発生源を設置し、これより離れたところにVまたはNi基材を設置し、それぞれを異なる温度に加熱することにより、金属と塩化水素との反応により生成した塩化物が温度勾配上を化学輸送され、基材上で分解し拡散浸透することで、合金層が形成されることを知見している。形成された合金の組成は輸送原料と基材との温度差によって異なっており、反応条件を変えてやることにより、合金組成を精密に制御することが可能であることが確認されている。さらに傾斜組成のものを得ることも可能である。加工がきわめて容易な純V、Niを冷間圧延等によって予め任意の形状とした後に上記の処理を施すことにより、従来法では製造するのが困難であった複雑な形状のV基合金膜を製造することが可能となる。
【0015】
水素分離合金の原料となりうる金属は金属単独での蒸気圧が非常に低いものばかりであり、気相中を経由して析出させるには蒸着、スパッタリングなどの物理的な方法か化学輸送反応のいずれかを用いる必要がある。しかしながら、前者の方法は装置がきわめて高価であり、水素分離合金膜の大量生産に向かない上に、パイプ状などの複雑な形状の基材上へ均一に析出させるのが難しい。これに対し、化学輸送反応を用いる場合には、原料の入手が容易であり、塩化物、ヨウ化物等は1000℃以下の比較的低温でも高い蒸気圧をもつことから、たとえば塩化水素、ヨウ素を輸送剤とすることが実際的に有効である。
【0016】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
【0017】
【実施例】
図1に例示した構成の装置を用いた。図中の符号は次のものを示している。1:温度傾斜炉、2:石英管、3:Ni基材、4:アルミナボート、5:化学輸送原料(金属V、塩化白金、塩化アンモニウム)
まず、10mm×10mm×0.2mmのNi板の両面を機械研磨により鏡面に仕上げた。HCl発生源として塩化白金0.0733gと塩化アンモニウム0.0098gを混合したものをNi箔で包み、輸送原料である塊状のV金属とともに石英管(2)の封じた一端に化学輸送原料(5)として置いた。そこから6cmほど離れたところにNi板(3)を置いた。石英管(2)を真空ラインに接続し、10-6Torr台まで引いた状態でもう一端を封じた。独立した複数の加熱部をもち温度勾配が設定可能な電気炉内に最低温度が900℃、最高温度が924℃となる温度勾配を図1のように設定した。石英管(2)の原料部(5)が900℃に、Ni板(3)が924℃となるように石英管(2)を電気炉内に配置した。8日後、石英管(2)を取り出し冷却した。Ni板(3)の試料重量は0.158gから0.200gへ0.032gの増加が見られた。また、試料の厚さは0.20mmから0.31mmへ0.11mm増加した。図2はこの拡散浸透実験前後のNi基材のX線回折パターンである。実験前の基材はNiに基づくピーク以外ほとんど観察されないのに対し、実験後の基材ではNiのピークは消え、fcc相とσ相に基づくピークが現れた。fcc相はNiと同じ構造であるが、ピーク全体が低角度側へシフトしており、計算された格子定数は3.638とNiの格子定数3.5238に比べて大きいことからNiに比べて原子半径の大きいVが固溶することで格子が膨張したものと判断される。Ni−V二元系状態図から基材温度の924℃でfcc相とσ相の二相領域をとるのはVが39〜55at%の場合であり、X線回折の結果は8日間の実験でこれに相当する量のVがNi基材中に拡散浸透したことを示している。
【0018】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、任意の形状、任意の組成のV−Ni合金膜体の作製が可能となる。これによりV−Ni合金を用いた水素分離装置を作製することが可能となり、低温で大量の水素を効率的に純化することが可能になる。
【0019】
水素分離膜材料として知られているPdの価格はこの1年で金の2〜4倍に高騰し、膜材料として使用するのはコスト的に苦しい状況にある。これに対してNi、Alは極めて安価であり、また、Vは1g当たりの価格がPdの1/10以下であるため、Vを主成分とする透過膜を分離装置に利用することができれば大幅な低価格化が可能となる。そしてこの出願の発明の合金材は燃料電池自動車用の水素製造装置としても応用可能なものであり、燃料電池自動車の普及に貢献するものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】拡散浸透のための実験的装置の構成を例示した図である。
【図2】Ni基材のX線回折パターンであって、(a)実験前、(b)924℃で192時間の拡散浸透実験後のものを示す。
【符号の説明】
1 温度傾斜炉
2 石英管
3 Ni基材
4 アルミナボート
5 輸送原料(金属V、塩化白金、塩化アンモニウム)
Claims (2)
- Ni基材に、金属V、塩化白金、塩化アンモニウムを加熱させて製造した、ガス状の金属ハロゲン化物を、基材と接触させてVを気相拡散浸透させて合金相を形成することを特徴とするNi - V合金相を有するNi基材の製造方法。
- 基材は薄板またはパイプ状体であることを特徴とする請求項1に記載のNi - V合金相を有するNi基材の製造方法。
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JP2002089467A JP3931227B2 (ja) | 2002-03-27 | 2002-03-27 | Ni−V合金相を有するNi基材の製造方法 |
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