JP3930590B2 - コンクリート柱の耐震補強構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート柱の耐震補強構造に関し、更に詳細にはコンクリート柱の周囲に補強部材を取り付ける場合に好適なコンクリート柱の耐震補強構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば既設のコンクリート柱に耐震補強を施す場合、従来はL字状或いはコ字状の鋼板を2個用意し、これをコンクリート柱を囲むように配置してその突き合わせ部を溶接することによって接合するのが一般的であった。
【0003】
また、例えばプレキャスト化されたコンクリート製のセグメントリングを接合する場合は、セグメントリングの接合部にボルトボックスを設け、隣接するセグメントリングのボルトボックスに一枚の当て板を架設し、この当て板をボルト及びナットで各セグメントリングに固定するのが一般的であった。このようにプレキャスト材を接合する場合には、プレキャスト材に内蔵された鉄筋同士を溶接などで接合する方法も行われていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のように既設のコンクリート柱の周囲に配置した鋼板を溶接で接合する場合は、現場作業となるので確実な溶接施工が困難であり、溶接不良が発生し易くなるため信頼性に欠けるという問題があった。
【0005】
また、セグメントリングのボルトボックスに当て板を架設し、この当て板をボルト及びナットで固定して接合する場合は、セグメントリングにかかる荷重をボルトで受けることになるため、大きな荷重がかかるところではボルト本数を相当多くする必要がある。
【0006】
しかしながら、ボルトボックスの大きさなどの関係からボルト本数をそれ程多くすることはできないので、通常は比較小さな荷重がかかる部分の接合に使用するなど、使用範囲を限定して用いなければならなかった。更に、鉄筋を直接接合する場合には、多数の鉄筋を接合しなければならないから、作業が面倒で工期が長くなるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、このような問題点を解決することにあり、溶接不良を減らして信頼性を向上させることが可能であると共に、大きな荷重がかかる部分にも適用可能であり、更に工期を短縮することが可能なコンクリート柱の耐震補強構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明はコンクリート柱の耐震補強構造であり、前述の技術的課題を解決するために以下のように構成されている。すなわち、本発明のコンクリート柱の耐震補強構造は、コンクリート柱の周囲を取り囲むと共に、前記コンクリート柱の内部に鉄筋を配置し、且つ前記鉄筋と共に縦に分割された筒状のプレキャストコンクリート型枠と、前記プレキャストコンクリート型枠の分割された構成部分同士を接合する継手とを備え、前記継手は、前記構成部分に設けられた前記鉄筋の端部に固着可能な一対の固着部と、前記一対の固着部を連結する連結部とを備え、前記一対の固着部のそれぞれに、相手の前記固着部に対向する面、及び少なくとも一端が開放された蟻溝が設けられ、前記連結部には、前記蟻溝にその開放端から挿入されて前記蟻溝に係止される一対の係止部分が設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のコンクリート柱の耐震補強構造は、前記継手の強度が、前記コンクリート柱の内部に配置された前記鉄筋の強度以上である構成とすることができる。
【0010】
本発明の継手においては、接合すべき部材の製造時に各部材の接合部分に固着部を固着し、各部材を接合位置に配置した後、各部材の固着部の蟻溝にその開放端から連結部の係止部分を挿入することにより、係止部分が蟻溝に係止されて両方の固着部が連結部で連結される。これによって、接合すべき部材を簡単に接合することができる。更に、継手の強度は固着部及び連結部の形状及び寸法を変えることによって任意に設定することができるので、大きな荷重がかかるところにも使用することができるなど適用範囲が広くなる。
【0011】
また、本発明のコンクリート柱の耐震補強構造においては、例えば既設のコンクリート柱の周囲を縦に分割された筒状のコンクリート型枠又は鋼板などの補強部材で取り囲み、これらの補強部材の各構成部を上述の継手によって接合するので、従来のように現場において溶接で接合する場合に比べて溶接不良が減少するため信頼性が向上すると共に、接合作業が容易になるので工期を短縮することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るコンクリート柱の耐震補強構造の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係るコンクリート柱の耐震補強構造を適用した第1の実施形態の耐震補強柱1を示す断面図である。この耐震補強柱1は、コンクリート柱11の周囲が補強部材である2個のコンクリート型枠12、13で取り囲まれ、コンクリート柱11とコンクリート型枠12、13との間の隙間にグラウト14が充填されている。
【0014】
コンクリート柱11は断面が例えば四角形で、内部には鉄筋15が配置されている。コンクリート型枠12、13は角筒を縦に2分割したものであり、それぞれの断面がコ字状に形成され、その内部には複数の鉄筋16、17が配置されている。このコンクリート型枠12、13はプレキャスト化されており、次に説明するコッター式継手20によって接合することができる。
【0015】
コッター式継手20は、図2に示すように接合すべき部材である鉄筋16、17に固着可能な金属製の固着部21、22と、これらの固着部21、22を連結する金属製の連結部23とで構成されている。固着部21、22は断面が例えば矩形で、コンクリート型枠12、13と略同じ長さに形成されている。これらの固着部21、22の対向面には、長手方向に延びる蟻溝24、25が設けられている。蟻溝24、25はその断面が例えば矩形に形成され、その少なくとも一端、本例では両端が開放されている。
【0016】
連結部23には、蟻溝24、25と相似形でこれより僅かに小さな係止部分26、27が設けられている。これらの係止部分26、27は、コンクリート型枠12、13が接合位置に配置されたとき、その鉄筋16、17に固着されている固着部21、22の蟻溝24、25にその開放端から挿入することができる。固着部21、22及び連結部23の形状及び寸法は、その強度が鉄筋16、17を含めたコンクリート型枠12、13全体の引っ張り強度と同一かそれより大きくなるように設定されている。
【0017】
連結部23の係止部分26、27が固着部21、22の蟻溝24、25に挿入されると、挿入方向に対して略直角な方向に係止される。これによって、固着部21、22が連結部23で連結され、コンクリート型枠12、13に接合縁に対して略直角な方向の力がかかっても、コンクリート型枠12、13の接合が保持される。
【0018】
この耐震補強柱1を既設のコンクリート柱11に施工する場合は、図1に示すように、まず既設のコンクリート柱11の周囲を取り囲むようにコンクリート型枠12、13を配置する。コンクリート型枠12、13の鉄筋16、17には、その製造時にコッター式継手20の固着部21、22を固着しておく。
【0019】
コンクリート型枠12、13をコンクリート柱11の周囲に配置すると、固着部21、22が整合配置される。次に、各固着部21、22の蟻溝24、25(図2)に連結部23の係止部分26、27を挿入する。これで、コンクリート型枠12、13が接合される。次に、コンクリート柱11とコンクリート型枠12、13との間の隙間にグラウト14を充填する。これによって、コンクリート柱11にグラウト14及びコンクリート型枠12、13が一体化されて耐震補強される。
【0020】
なお、コンクリート柱11が長い場合には、これより短い複数のコンクリート型枠12、13を重ねて配置することができる。また、コンクリート柱11の上部側に天井などがあって、固着部21、22の蟻溝24、25の開放端から連結部23の係止部分26、27を挿入することができない場合は、連結部23を短く分割して挿入することもできる。
【0021】
図3は、上述の耐震補強柱1の耐震強度を測定する水平交番載荷試験設備30を示す。この水平交番載荷試験設備30は、耐震補強柱1と基礎部31とからなり、耐震補強柱1の上端から350mmの部分に水平交番荷重Fを加えるようになっている。
【0022】
水平交番載荷試験の結果を図4に示す。同図(A)は耐震補強柱1の試験結果であり、同図(B)はコンクリート柱11の試験結果である。同図の縦軸は交番荷重F(tf)を示し、横軸は変位(mm)を示す。この試験結果から、コッター式継手20によってコンクリート型枠12、13を接合した場合、コンクリート柱11だけの場合より変位が大きい、すなわち、耐震強度が増大していることが分かる。
【0023】
上述のように、この耐震補強柱1は、コンクリート柱11の周囲を取り囲むように縦に分割された筒状のコンクリート型枠12、13を配置し、コンクリート型枠12、13をコッター式継手20によって接合するので、接合作業が容易になり工期を短縮することができる。
【0024】
また、コンクリート型枠12、13の製造時にその鉄筋16、17に固着部21、22を固着するので、従来のように現場で鉄筋16、17を溶接して接合する場合に比べて溶接不良が減少するため信頼性が向上する。
【0025】
更に、コッター式継手20は、固着部21、22及び連結部23の形状及び寸法を任意に設定することができ、これによって、コンクリート型枠12、13の鉄筋16、17と同一又はそれ以上の強度にすることができるので、大きな荷重がかかる部分の接合などにも広範囲に適用することができる。
【0026】
図5は、本発明に係るコンクリート柱の耐震補強構造を適用した第2の実施形態の耐震補強柱5を示す。この耐震補強柱5は、上述の第1実施形態の耐震補強柱1と同様に、コンクリート柱11の周囲が補強部材である鋼板51、52によって取り囲まれている。この鋼板51、52も角筒を縦に2分割したものであり、それぞれの断面がコ字状でコンクリート柱11と略同一長さに形成されている。鋼板51、52は、次に説明する本発明の継手を適用した嵌合式継手60によって接合されている。コンクリート柱11と鋼板51、52との間の隙間には、グラウト53が充填されている。
【0027】
嵌合式継手60は、図6に示すように接合すべき部材である鋼板51、52に固着可能な金属製の固着部61、62と、これらの固着部61、62を連結する金属製の連結部63とから構成されている。固着部61、62は断面が長方形状で、鋼板51、52と同一長さに形成されている。固着部61、62の同一方向の側面には、片側端が奥広がりで他側端が直角な蟻溝64、65が設けられている。
【0028】
また、連結部63は固着部61、62と同一長さであり、その側面には蟻溝64、65と相似形で僅かに小さな係止部分66、67が所定の間隔をあけて設けられている。そして、固着部61、62が蟻溝64、65を同一方向に向けて当接配置されたときに、蟻溝64、65の開放端からその内部に係止部分66、67を挿入できるようになっている。
【0029】
この耐震補強柱5を既設のコンクリート柱11に適用する場合は、図5に示すように鋼板51、52の製造時にその両端部に固着部61、62を固着しておく。そして、既設のコンクリート柱11の周囲を鋼板51、52で取り囲み、これによって対向配置された固着部61、62の蟻溝64、65(図2)の上側の開放端からその内部に連結部63の係止部分66、67を挿入する。これで鋼板51、52が接合される。この後、鋼板51、52とコンクリート柱11との間の隙間にグラウト53を充填する。なお、連結部63が内側を向くようにすると外観が良好になる。
【0030】
図7は、上述の耐震補強柱5の耐震強度を測定するための水平交番載荷試験設備70を示す。この水平交番載荷試験設備70は、上述の水平交番載荷試験設備30と同様に耐震補強柱5と基礎部71とからなり、耐震補強柱5の上端から350mmの部分に水平交番荷重Fを加えるようになっている。
【0031】
耐震補強柱5の水平交番載荷試験の結果を図8に示す。この試験結果から分かるように、嵌合式継手60によって鋼板51、52を接合することにより、上述の耐震補強柱1と同程度の耐震強度を得ることができ、コンクリート柱11だけの場合より耐震強度が増大している。
【0032】
この耐震補強柱5は、第1実施形態の耐震補強柱1と同様にコンクリート柱11の周囲を縦に分割された筒状の鋼板51、52で取り囲み、この鋼板51、52を嵌合式型枠60で接合するので接合作業が容易になり工期を短縮することができる。また、鋼板51、52の製造時に固着部61、62を固着するので、溶接不良が減少して信頼性が向上する。更に、嵌合式継手60は、各部の形状及び寸法を変えることにより強度を任意に設定することができるので、大きな荷重がかかる部分の接合などにも広範囲に適用することができる。
【0033】
なお、上述の実施の形態ではコンクリート柱11の断面が四角形である場合について説明したが、これに限らず多角形又は円形などの断面のコンクリート柱に適用することができる。また、補強部材であるコンクリート型枠12、13及び鋼板51、52の断面をコ字状にした場合について説明したが、L字状など適宜な形状にすることができる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の継手においては、接合すべき部材を接合位置に配置した後、各部材に固着されている固着部の蟻溝にその開放端から連結部の係止部分を挿入することにより、接合すべき部材を簡単に接合することができる。また、継手の強度はその形状及び寸法を変えることにより任意に設定することができるので、大きな荷重がかかるところにも使用することができるなど適用範囲が広くなる。
【0035】
また、本発明のコンクリート柱の耐震補強構造においては、例えば既設のコンクリート柱の周囲を縦に分割されたコンクリート型枠又は鋼板などの補強部材で取り囲み、これらの補強部材の各構成部を上述の継手によって接合するので、従来のように現場において溶接で接合する場合に比べて溶接不良が減少して信頼性が向上すると共に、接合作業が容易になるので工期を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るコンクリート柱の耐震補強構造を適用した第1実施形態の耐震補強柱の断面図である。
【図2】本発明に係る継手を適用した第1実施形態のコッター式継手を示す断面図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態の耐震補強柱の水平交番載荷試験設備を示す図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態の耐震補強柱及び従来の耐震補強柱の水平交番載荷試験の結果を示す図である。
【図5】本発明に係るコンクリート柱の耐震補強構造を適用した第2実施形態の耐震補強柱の断面図である。
【図6】本発明に係る継手を適用した第2実施形態の嵌合式継手を示す断面図である。
【図7】本発明に係る第2実施形態の耐震補強柱の水平交番載荷試験設備を示す図である。
【図8】本発明に係る第2実施形態の耐震補強柱の水平交番載荷試験の結果を示す図である。
Claims (2)
- コンクリート柱の周囲を取り囲むと共に、前記コンクリート柱の内部に鉄筋を配置し、且つ前記鉄筋と共に縦に分割された筒状のプレキャストコンクリート型枠と、
前記プレキャストコンクリート型枠の分割された構成部分同士を接合する継手とを備え、
前記継手は、前記構成部分に設けられた前記鉄筋の端部に固着可能な一対の固着部と、
前記一対の固着部を連結する連結部とを備え、
前記一対の固着部のそれぞれに、相手の前記固着部に対向する面、及び少なくとも一端が開放された蟻溝が設けられ、
前記連結部には、前記蟻溝にその開放端から挿入されて前記蟻溝に係止される一対の係止部分が設けられていることを特徴とするコンクリート柱の耐震補強構造。 - 前記継手の強度は、前記コンクリート柱の内部に配置された前記鉄筋の強度以上であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート柱の耐震補強構造。
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JP25022096A JP3930590B2 (ja) | 1996-09-20 | 1996-09-20 | コンクリート柱の耐震補強構造 |
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JP25022096A JP3930590B2 (ja) | 1996-09-20 | 1996-09-20 | コンクリート柱の耐震補強構造 |
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JP25022096A Expired - Lifetime JP3930590B2 (ja) | 1996-09-20 | 1996-09-20 | コンクリート柱の耐震補強構造 |
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