JP3928968B2 - 車両の乗員拘束保護システム - Google Patents

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Description

本発明は、自動車等の車両に装備され、乗員を保護するためのシートベルト装置を用いた乗員拘束保護システムの技術分野に関し、特に、車両のロールオーバ状況を検知して、その車両のロールオーバの状況に応じてシートベルトのベルトテンションを調整することにより、車両のロールオーバ状況においても乗員を確実に拘束保護する乗員拘束保護システムの技術分野に関するものである。
従来から自動車等の車両に装備されているシートベルト装置は、衝突時等の車両に大きな減速度が作用した場合のような緊急時に、シートベルトで乗員を拘束することにより乗員のシートからの飛び出しを阻止して、乗員を保護している。
このようなシートベルト装置においては、シートベルトを巻き取るシートベルトリトラクタが設けられている。このシートベルトリトラクタは、シートベルトを巻き取るリールシャフトを常時巻取り方向に付勢するうず巻きばね等の付勢力付与手段を備えている。この付勢力付与手段の付勢力により、シートベルトは非装着時にはリールシャフトに巻き取られている。また、シートベルトは装着時には付勢力付与手段の付勢力に抗して引き出されて、乗員を拘束するようになっている。その場合、乗員が通常装着時にシートベルトのベルトテンションにより圧迫感を抱かないようにするとともにシートベルトが容易に引き出されることにより乗員が動きやすいようにするために、シートベルトを巻き取る付勢力付与手段の付勢力は小さく設定されている。
またシートベルトリトラクタは、前述のような緊急時に作動してリールシャフトの引出し方向の回動を阻止するロック手段を備えている。したがって、このロック手段が緊急時に作動することにより、シートベルトの伸び出しが阻止される。これにより、緊急時にシートベルトは乗員を確実に拘束し、保護するようになる。
ところで、このような従来からのシートベルト装置においては、シートベルト装着時には付勢力付与手段の付勢力によるほぼ一定のベルトテンションがシートベルトに加えられている。このため、シートベルトリトラクタは自車と自車周囲の物体との間の状況やロールーオーバ、急ブレーキあるいは急旋回等の自車の状況に関係なくほぼ同じ態様で作動するようになっている。したがって、従来のシートベルト装置は前述のように緊急時に乗員を確実に拘束し保護することができるが、前述のような緊急時以外のときに乗員に対してより快適なシートベルト装置が望まれている。
そこで、自車と物体との間の状況および/または自車の状況を加味してシートベルトリトラクタを制御することにより、乗員の拘束保護をより一層効率よくかつ乗員に対してより一層快適に行うようにすることが望ましい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、シートベルトリトラクタを自車のロールオーバ状況を加味して制御することにより、自車のロールオーバ状況においても乗員の拘束保護をより一層効率よくかつ乗員に対してより一層快適に行うことのできる乗員拘束保護システムを提供することである。
前述の課題を解決するために、請求項1の発明は、シートベルトを巻取るリールシャフトと、該リールシャフトの両端を回動自在に支持するフレームと、該フレームおよびリールシャフト間に配設されて通常時リールシャフトの回動を許容し必要時に作動してリールシャフトのシートベルト引出し方向の回動を阻止するロック手段とを備えているシートベルトリトラクタが用いられて、前記必要時に前記シートベルトの引出しを阻止して乗員を拘束保護する車両の乗員拘束保護システムにおいて、更に、前記リールシャフトを回動することでベルトテンションを制御するベルトテンション制御機構と、前記車両のロールオーバを検出する車両ロールオーバ検出手段と、該車両ロールオーバ検出手段からの状況検出信号に基づいて前記車両のロールオーバを判断し、その判断結果に基づいて前記ベルトテンション制御機構を制御することで、前記シートベルトのベルトテンションを前記車両のロールオーバの状況に応じた所定値に制御する中央処理装置とを備え、前記ベルトテンション制御機構は、前記中央処理装置によって制御されるモータと、該モータの駆動力を前記リールシャフトに伝達する歯車伝達機構とから構成されており、前記車両の状況に応じた所定数のモードが設定されており、前記ベルトテンションの前記設定値が各モード毎に設定されていることを特徴としている。
また、請求項2の発明は、前記所定数のモードとして、前記ベルトテンションの前記設定値が0に設定されるコンフォートモードと、前記ベルトテンションの前記設定値が第1の所定値に設定される警戒モードと、前記ベルトテンションの前記設定値が前記第1の所定値よりも大きな第2の所定値に設定される警報モードとの3つのモードが設定されていることを特徴としている。
更に、請求項の発明は、前記所定数のモードとして、前記ベルトテンションの前記設定値が0に設定されるコンフォートモードと、前記ベルトテンションの前記設定値が第1の所定値に設定される警戒モードと、前記ベルトテンションの前記設定値が前記第1の所定値より大きな第2の所定値に設定される警報モードと、前記ベルトテンションの前記設定値が前記第2の所定値より大きな第3の所定値に設定される緊急モードとの4つのモードが設定されていることを特徴としている。
更に、請求項の発明は、前記モータが、前記中央処理装置によって制御され、非通電時には停止して前記リールシャフトに所定値以下の回転力が加えられても前記リールシャフトの回転を阻止するとともに通電時には回動して前記リールシャフトを回転するような、超音波モータ等のモータであることを特徴としている。
このような構成をした本発明の乗員拘束保護システムによれば、車両つまり自車のロールオーバの状況を加味してシートベルトリトラクタを制御しているので、シートベルトのベルトテンションを自車のロールオーバの状況に応じた所定値に制御することができる。したがって、自車のロールオーバにおける緊急時のシートベルトによる乗員の拘束保護をより一層効率よくかつ乗員に対してより一層快適に行うことができるようになる。
特に、自車のロールオーバの状況に応じた所定数のモードを設定しているとともに、ベルトテンションの設定値を各モード毎に設定しているので、自車のロールオーバにおける緊急時の乗員の拘束保護をよりきめ細かくしかもより簡単に行うことができる。
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は本発明に係る乗員拘束保護システムの一実施例に用いられるシートベルトリトラクタの一例を示す断面図、図2はシートベルトロック作動手段が組み込まれる前の図1の右側面図、図3はシートベルトロック作動手段の一部の構成要素が組み込まれた図1の右側面図、図4はシートベルトロック作動手段の更に他の一部の構成要素および減速度感知手段がそれぞれ組み込まれた図1の右側面図、図5は図1の左側面図である。
図1に示すように、このシートベルトリトラクタ1は左右側壁2a,2bを有するコ字形に形成されたフレーム2を備えている。このフレーム2の右、左側壁2a,2b間にシートベルト3を巻き取るリールシャフト4が配設されている。また右側壁2aには、シートベルトロック作動手段5が取り付けられているとともに、車両に所定の減速度が作用したとき、その減速度を感知してシートベルトロック作動手段5を動作させる減速度感知手段6(図4に図示)が設けられている。更に、左側壁2bには、ベルトテンション制御機構7が取り付けられているとともに、リールシャフト4にシートベルト3の巻取り力を付与する付勢力付与手段8が取り付けられている。
図1および図2に示すように、リールシャフト4は従来公知のものであり、その右端側にラチェットホイール9が形成されているとともに、このラチェットホイール9は右側壁2aの外側に位置されている。また、右側壁2aの左下部にはパウル10がピン11によって揺動可能に取り付けられている。このパウル10の先端には係止爪10aが形成されており、この係止爪10aがラチェットホイール9の外歯9aに対して係脱可能とされている。ラチェットホイール9の外歯9aは所定数形成されているとともに、シートベルト3の引出し方向αに対向する面が比較的緩やかな傾斜面にまたシートベルト3の巻取り方向βに対向する面がほぼ垂直面にそれぞれ形成されている。更にパウル10の先端寄りには突起状のカムフォロワ10bが形成されている。そして、ラチェットホイール9とパウル10とにより、本発明のロック手段が構成されている。
図1および図3に示すように、ピン11を支持するタイプレート12が設けられており、このタイプレート12はリールシャフト4のラチェットホイール9より更に右側の右端部4aにも嵌合されている。
シートベルトロック作動手段5も従来公知のものであり、図1、図3および図4に示すようにこのシートベルトロック作動手段5は、リールシャフト4の右端部4aに回動可能に嵌合されているロックリング13、右端部4aに固定されているリテーナ14、このリテーナ14に対して径方向のうち一方向(図3において上下方向)のみ相対移動可能にリテーナ14に組み付けられているキャリヤ15、リテーナ14とキャリヤ15との間に縮設されているコイルスプリング16、リテーナ14の軸部に相対回動可能に支持されているディスク部材17、このディスク部材17の外周にディスク部材17に対して相対回動可能に設けられているリング部材18およびディスク部材17とリング部材18との間に配設されているリング状スプリング19からなっている。
ロックリング13の内周面には所定数の内歯13a,13a,…が形成されている。この内歯13aは、シートベルト3の引出し方向αに対向する面がほぼ垂直面にまたシートベルト3の巻取り方向βに対向する面が比較的緩やかな傾斜面にそれぞれ形成されている。またロックリング13には、カム孔13bが穿設されており、このカム孔13bにパウル10のカムフォロワ10bが嵌入されている。これにより、ロックリング13がシートベルト引出し方向αに回動したとき、カムフォロワ10bがカム孔13bに案内されて図3に示すカム孔13bの一端から他端に向かって移動する。その結果、パウル10は図3に示す係止爪10aがラチェットホイール9の外歯9aと離れた非係止位置から回動して係止爪10aが外歯9aに係止する係止位置に回動するようになる。リテーナ14には、ガイドピン14a,14bおよびコイルスプリング16の一端を支持するスプリング受け14cがそれぞれ立設されている。
キャリヤ15には、径方向に穿設されている孔15a、中央に穿設されている比較的大きな開口15b、この開口15bに同一直径上に位置して径方向に形成されている溝15c、コイルスプリング16の他端を支持するスプリング受け15d、キャリヤ15の外周に形成されロックリング13の内歯13aに係止可能な係止爪15eおよび突起状ピン15fがそれぞれ設けられている。ガイド14aは孔15aに嵌入されているとともに、ガイド14bは溝15cに嵌入されている。キャリヤ15は、これらのガイド14a,14bにより案内されて、前述のように径方向のなかの一方向(図3において上下方向)のみにリテーナ14およびロックリング13に対して相対移動するようになる。そしてキャリヤ15は、通常時にはコイルスプリング16の付勢力により図3に示す係止爪15eが内歯13aから離れた非係止位置に保持されるとともに、ロックリング13に対して相対移動したとき、係止爪15eが内歯13aに係止する係止位置となる。
ディスク部材17には、ガイド14a,14bがそれぞれ嵌入される周方向の長孔17a,17bが穿設されているとともに、ピン15fが嵌入される円孔17cが穿設されている。
リング部材18の外周には、所定数の外歯18a,18a,…が形成されているとともに、これらの外歯18aは、シートベルト3の引出し方向αに対向する面が比較的緩やかな傾斜面にまたシートベルト3の巻取り方向βに対向する面がほぼ垂直面にそれぞれ形成されている。
ディスク部材17とリング部材18とは通常時にはリング状スプリング19により一体に回動し、これらに互いに逆方向の一定以上の大きさのモーメントが加えられたとき互いに相対移動するようになっている。ディスク部材17およびリング部材18により慣性部材が構成されている。そして、シートベルトロック作動手段5を構成する各部材は、右端部4aに嵌入係止されているキャップ20により抜け止めされている。
減速度感知手段6も従来公知のものであり、図4に示すようにこの減速度感知手段6は、右側壁2aに取り付けられるケース本体21、このケース本体21内に収容され車両に一定以上の減速度が作用したとき、前方(図4において左方)傾動する慣性体22およびケース本体21に揺動可能に設けられている係止レバー23からなっている。係止レバー23の先端には、リング部材18の外歯18aに係合可能な係止爪23aが形成されている。そして、通常時には図4に示すように慣性体22は直立状態に保持されかつ係止レバー23は係止爪23aが外歯18aから離れた非係止位置に保持されている。また係止レバー23は、車両に一定以上の減速度が作用すると慣性体22が前方に傾動するので、リング部材18の方へ揺動して、係止爪23aが外歯18aに係止する係止位置にされる。
図1に示すように、駆動軸24がリールシャフト4の左端部4bにスプライン嵌合されていて、リールシャフト4と一体に回動するようになっている。
図1、図5および図6に示すように、ベルトテンション制御機構7は、左側壁2bに取り付けられるケース25、このケース25内で駆動軸24に嵌合固定され外周に所定数の係合歯26a,26a,…を有するギヤホールド26、ケース25に一端側の回動軸27aを中心に回動可能に取り付けられる摩擦レバー27、摩擦レバー27の他端側の支持軸27bに一端が回動可能に取り付けられる摩擦プレート28、ケース25に回動可能に支持された回動軸29、回動軸29に相対回動不能に支持されている駆動側ギヤクラッチ30、回動軸29に相対回動可能に支持されている従動側ギヤクラッチ32、回動軸29に軸方向に相対移動可能にかつ相対回動可能に支持されているクラッチプレート33、従動側ギヤクラッチ32とクラッチプレート33との間に縮設されているクラッチスプリング34、このクラッチプレート33の外周に相対回動可能に支持されているレバー部材35、クラッチプレート33とレバー部材35との間に介設されているリング状のスプリングクラッチ36、レバー部材35と摩擦レバー27との間にU字状スプリング37、後述する電動モータ40と駆動側ギヤクラッチ30とを連結している第1歯車伝達機構38、従動側ギヤクラッチ32とギヤホールド26とを連結している第2歯車伝達機構39、および電動モータ40からなっている。
後述する図9(a)に示すように、摩擦レバー27とケース25との間にリターンスプリング54が縮設されており、したがって摩擦レバー27はこのリターンスプリング54の小さなばね力により図9(a)において反時計方向に常時付勢されている。
図5に示すように、摩擦プレート28は概略扇状に形成され、その先端には円弧状部分28aと径方向突起28bとが形成されている。これら円弧状部分28aおよび径方向突起28bの一面側は、駆動軸24の大径部24aに当接可能になっている。図9(a)に示すように、摩擦プレート28とケース25との間にリターンスプリング55が縮設されている。したがって、摩擦プレート28はこのリターンスプリング55の小さなばね力により図9(a)において反時計方向に常時付勢されている。これにより、通常時は径方向突起28bの一面側が大径部24aに当接した状態に保持されている。そして、駆動軸24の大径部24aと摩擦プレート28とはベルトテンション検知手段を構成している。なお、この摩擦プレート28は摩擦レバー27を介してリターンスプリング54の小さなばね力により図9(a)において下方にも常時付勢されている。
図6に詳細に示すように、駆動側ギヤクラッチ30の外周には所定数の歯30aが形成されており、これらの歯30aは第1歯車動力伝達機構38の最終の歯車の歯と噛み合わされている。したがって、駆動側ギヤクラッチ30には電動モータ40の回転駆動力が伝達されるようになっている。また、従動側ギヤクラッチ32の外周には所定数の歯32aが形成されており、これらの歯32aは第2歯車動力伝達機構39の最初の歯車の歯と噛み合わされている。したがって、従動側ギヤクラッチ32の回転駆動力がギヤホールド26に伝達されるようになっている。
更に、従動側ギヤクラッチ32とクラッチプレート33との互いの対向面にそれぞれクラッチ歯32b,33aが形成されている。これらのクラッチ歯32b,33aはクラッチプレート33が従動側ギヤクラッチ32の方に移動したとき互いに噛み合い、これによりクラッチプレート33の回転駆動力が従動側ギヤクラッチ32の方に伝達するようになっている。
更に、駆動側ギヤクラッチ30のクラッチプレート33との対向端面には、偏心したほぼ円錐状の凹曲面からなるカム面30bが形成されている。一方、クラッチプレート33の駆動側ギヤクラッチ30との対向端面には、円弧状の膨出部33bが形成されている。そして、クラッチプレート33がクラッチスプリング34のばね力によって駆動側ギヤクラッチ30の方へ付勢されることにより、膨出部33bがカム面30bに常時当接されている。カム面30bは、通常時には図6に示すようにクラッチプレート33をクラッチスプリング34のばね力により従動側ギヤクラッチ32から最も離れた状態にして、両クラッチ歯32b,33aが互いに離れた非噛み合い位置に設定するようになっている。またカム面30bは、駆動側ギヤクラッチ30がクラッチプレート33に対してシートベルト3の引出し方向に相対回動したとき、クラッチプレート33を従動側ギヤクラッチ32の方へ移動して両クラッチ歯32b,33aが互いに噛み合う噛み合い位置に設定するようになっている。更にカム面30bは、駆動側ギヤクラッチ30のシートベルト3の引出し方向の回転をクラッチプレート33に伝達して、このクラッチプレート33を同方向に回転するようになっている。
図5に示すようにレバー部材35には腕部35aが形成されている。この腕部35aは、レバー部材35がシートベルト3の引出し方向に回動したとき、摩擦レバー27の支持軸27bに当接するようになっている。また、腕部35aの先端には係止爪35bが形成されており、この係止爪35bはギヤホールド26の歯26aに係止可能となっている。更に、腕部35aの係止爪35b近傍にはスプリング支持突起35cが形成されている。そして、クラッチプレート33とレバー部材35とは、スプリングクラッチ36により通常時は一緒に回転するが、クラッチプレート33とレバー部材35とに互いに逆方向の一定以上の大きさの回転モーメントが加えられたときは互いに相対回動するようになっている。
U字状スプリング37は、その一端がレバー部材35のスプリング支持突起35cに支持されているとともに他端が摩擦レバー27の回動軸27aに支持されている。そして、このU字状スプリング37はレバー部材35の腕部35aのふらつきを防止する。またU字状スプリング37は、後述する図9(a)に示すように腕部35aのスプリング支持突起35cがレバー部材35の回動軸の中心と摩擦レバー27の回動軸27aの中心とを結ぶ線γに関してギヤホールド26と反対側にあるときは腕部35aをギヤホールド26から離れる方向に付勢し、図10(a)および図11(a)に示すようにスプリング支持突起35cが線γに関してギヤホールド26側にあるときは腕部35aをギヤホールド26の方向に付勢するようになっている。
なお、図9(a)に示すように腕部35aはストッパ53によりギヤホールド26から離れる方向の回動が制限されている。したがって、スプリング支持突起35cが線γに関してギヤホールド26と反対側にあって、腕部35aがU字状スプリング37によりギヤホールド26から離れる方向に付勢されても、腕部35aはストッパ53によりギヤホールド26から離れる方向のそれ以上の回動が阻止される。
更にベルトテンション制御機構7の電動モータ40はフレーム2に取り付けられている。この電動モータ40の回転駆動力は第1歯車伝達機構38を介して駆動側ギヤクラッチ30に伝達されるようになっている。更に電動モータ40の回転駆動力は、従動側ギヤクラッチ32の歯32bとクラッチプレート33の歯33aとが噛み合うことにより、クラッチプレート33、従動側ギヤクラッチ32および第2歯車動力伝達機構39を介してギヤホールド26に伝達されるようになっている。
付勢力付与手段8も従来公知のものであり、図1に示すように渦巻きばね41により駆動軸24を介してリールシャフト4をシートベルト3の巻取り方向に常時付勢している。
更に、図1に示すように電動モータ40にはマイクロコンピュータ等からなる中央処理装置(以下、CPUともいう)42が接続されている。このCPU42には、前方物体検出センサ43、ベルトテンション検知センサ67、バックルスイッチ69、車速センサ70がそれぞれ接続されている。
図7に示すように、前方物体検出センサ43は、例えばバックミラー44の近傍、インストルメントパネル45の近傍あるいはワイパの払拭領域に対応する位置等のフロントウィンドシールド46の車室側の所定位置に取り付けられる。本実施例の場合、前方物体検出センサ43は光学系センサで構成されている。図8(a)および(b)に示すように、この前方物体検出センサ43はフロントウィンドシールド46に接着剤47により密着されたセンサケース48に、光を車両前方に発する発光部と、発光部からの光が物体に当たって反射した反射光を受ける受光部とを備えている。発光部は、光を発するランプ(LEDまたはLD)49と、ランプ49の光を集めて車両前方に照射するレンズ50とを備えている。また受光部は、物体からの反射光が入射されるレンズ51と、レンズ51からの反射光を受けて電気信号に変えてCPU42に送給する光学センサ(PSD)52とを備えている。この前方物体検出センサ43は車両前方にある物体を検出して物体検出信号をCPU42に送出する。
また、ベルトテンション検知センサ67はシートベルト装着時にシートベルト3に加えられるベルトテンションを検知してその検知信号をCPU42に送出する。更に、バックルスイッチ69はシートベルトの装着すなわちバックルとタングとの連結を検知してその検知信号をCPU42に送出する。更に、車速センサ70は自車の走行速度を検知してその検知信号をCPU42に送出する。
なお、前方物体検出センサ43はこのような光学系センサに限定されるものではなく、例えばミリ波等の電波、超音波あるいは画像認識等の他の物体検出手段を用いることもできる。また、前方物体検出センサ43は複数個設けるようにしてもよいし、前方物体検出センサ43を左右上下方向にスキャンするように構成してもよい。
次に、このように構成されたシートベルトリトラクタ1の作動について説明する。
I. ベルトテンション制御機構7の作動
前方物体検出センサ43からの物体検出信号により、CPU42がベルトテンション制御機構7の作動条件が成立する状態となったと判断すると、電動モータ40をその作動条件に応じて引出し方向αおよび巻取り方向βのいずれかの方向に回転駆動する。
電動モータ40の引出し方向αの回転駆動時には、第1歯車動力伝達機構38を介して駆動側ギヤクラッチ30およびクラッチプレート33が図9(a)および(b)に示す状態から同方向αに回動する。このクラッチプレート33の回動により、レバー部材35がクラッチプレート33と同方向αに回動する。すると、図10(a)に示すようにレバー部材35の腕部35aが摩擦レバー27の支持軸27bに当接する。このとき、スプリング支持突起35cは線γを超えてギヤホールド26側に移動しているので、腕部35aはU字状スプリング37の付勢力によっても同方向αに付勢されている。
レバー部材35の腕部35aが更に引出し方向αに回動することにより、摩擦レバー27が回動軸27aを中心に引出し方向αにリターンスプリング54のばね力に抗して回動する。摩擦レバー27の引出し方向αの回動により、支持軸27bも同方向αに回動する。これにより、摩擦プレート28が図10(a)において上方へ移動し、摩擦プレート28の円弧状部分28aが駆動軸24の大径部24aに当接する。このため、レバー部材35およびクラッチプレート33の回動がともに停止する。
しかし、クラッチプレート33の回動が停止しても、駆動側ギヤクラッチ30が更に引出し方向αに回動するようになるので、駆動側ギヤクラッチ30のカム面30bがクラッチプレート33の膨出部33bを従動側ギヤクラッチ32の方向へ押圧する。したがって、クラッチプレート33が従動側ギヤクラッチ32の方向へ移動し、クラッチプレート33の歯33aが従動側ギヤクラッチ32の歯32bに噛み合い係合する。これにより、クラッチプレート33と従動側ギヤクラッチ32とが連結する。
電動モータ40の回転駆動力がスプリングクラッチ36によるクラッチプレート33の回動抵抗力より大きくなると、クラッチプレート33と従動側ギヤクラッチ32との連結により、電動モータ40の回転駆動力がクラッチプレート33を介して従動側ギヤクラッチ32に伝達される。更にこの回転駆動力は第2歯車動力伝達機構39を介してギヤホールド26に伝達される。その結果、ギヤホールド26が引出し方向αに回動し、これにより駆動軸24およびリールシャフト4が同方向αに回動する。したがって、シートベルト3が引き出される。
駆動軸24の大径部24aの引出し方向αへの回動により、図11(a)に示すように摩擦プレート28が大径部24aと円弧状部分28aとの間の摩擦で時計方向にリターンスプリング55のばね力に抗して回動する。すると、円弧状部分28aが大径部24aから外れるので、摩擦プレート28は図11(a)において更に上方へ移動可能な状態なる。このため、レバー部材35も更に同方向αに回動し、腕部35aの係止爪35bがギヤホールド26の歯26aに噛み込み、係合する。タイマーあるいはベルトテンション検知センサ67等により、電動モータ40の回転が停止されると、リールシャフト4の引出し方向αの回動も停止する。したがって、シートベルト3の引出しが停止する。
このようにシートベルト3の引出しが停止した状態では、電動モータ40の回転駆動が停止しているので、レバー部材35に電動モータ40の回転駆動力が伝達されない。しかしこの状態では、腕部35aは、係止爪35bがU字状スプリング37の付勢力により歯26aに噛み合う方向に付勢されているので、係止爪35bと歯26aとの噛み合い係合が保持される。
またこの状態では、リールシャフト4の引出し方向αおよび巻取り方向βのいずれの方向の回動も阻止されるので、付勢力付与手段8の付勢力はシートベルト3に伝達されない。したがって、シートベルト3は何らのテンションも加えられないテンションレス状態が保持される。
係止爪35bと歯26aとの噛み合い係合を解除するにあたり、CPU42は電動モータ40を巻取り方向βに回転駆動させる。これにより、駆動側ギヤクラッチ30が巻取り方向βに回動するので、クラッチプレート33の膨出部33bがカム面30bに案内され、クラッチプレート33は軸方向に移動する。その結果、歯33aと歯32bとの噛み合い係合が解除してクラッチプレート33と従動側ギヤクラッチ32との連結が解除される。したがって、駆動側ギヤクラッチ30、従動側ギヤクラッチ32およびクラッチプレート33は、図9(b)に示された状態と同じ状態となる。
更に、電動モータ40の更なる巻取り方向βの回転駆動により、駆動側ギヤクラッチ30が同方向βに回動する。これにより、クラッチプレート33が同方向βに回動するので、レバー部材35はその腕部35aがギヤホールド26から離れる方向に回動する。その結果、係止爪35bが歯26aから外れて、ギヤホールド26は回動自由状態となる。したがって、付勢力付与手段8の付勢力がリールシャフト4を介してシートベルト3に伝達されるようになる。
レバー部材35が更に同方向に回動して、腕部35aがストッパ53に当接すると、電動モータ40の回転駆動が停止する。この状態では、スプリング支持突起35cが線γに関しギヤホールド26と反対側に位置しているので、腕部35aはU字状スプリング37の付勢力によりストッパ53に当接した状態に保持される。こうして、ベルトテンション制御機構7は図9(a)に示す初期状態となる。
一方、図9(a)および(b)に示すシートベルトリトラクタ1の状態から、電動モータ40が巻取り方向βに回転駆動すると、第1歯車動力伝達機構38を介して駆動側ギヤクラッチ30およびクラッチプレート33が図9(a)および(b)に示す状態から同方向βに回動しようとする。しかし、レバー部材35の腕部35aがストッパ53に当接しているため、クラッチプレート33およびレバー部材35は同方向βには回動しない。
クラッチプレート33が同方向βに回動しなくても、駆動側ギヤクラッチ30が更に巻取り方向βに回動するようになるので、駆動側ギヤクラッチ30のカム面30bがクラッチプレート33の膨出部33bを従動側ギヤクラッチ32の方向へ押圧する。したがって、クラッチプレート33が従動側ギヤクラッチ32の方向へ移動し、クラッチプレート33の歯33aが従動側ギヤクラッチ32の歯32bに噛み合い係合する。これにより、クラッチプレート33と従動側ギヤクラッチ32とが連結する。
電動モータ40の回転駆動力がスプリングクラッチ36によるクラッチプレート33の回動抵抗力より大きくなると、クラッチプレート33と従動側ギヤクラッチ32との連結により、電動モータ40の回転駆動力がクラッチプレート33を介して従動側ギヤクラッチ32に伝達される。更に、この回転駆動力は第2歯車動力伝達機構39を介してギヤホールド26に伝達される。その結果、ギヤホールド26が巻取り方向βに回動し、これにより駆動軸24およびリールシャフト4が同方向βに回動する。したがって、シートベルト3が巻き取られる。これにより、電動モータ40の回転駆動力による巻取り力でシートベルト3にはベルトテンションが加えられた状態となる。このベルトテンションが所定の大きさになると、CPU42は電動モータ40の回転駆動を停止する。
電動モータ40が停止すると、電動モータ40からリールシャフト4へ至る動力伝達系に電動モータ40の回転駆動力による巻取り力がなくなるとともに、引出し方向αに対する抵抗がないので、リールシャフト4は付勢力付与手段8の付勢力により徐々に引出し方向αに回動する。このため、シートベルト3に加えられているベルトテンションが所定の大きさから徐々に小さくなる。最終的には、シートベルト3のベルトテンションは付勢力付与手段8の付勢力による大きさとなる。
II. ベルトテンション制御機構7がリールシャフトを引出し方向αに回動させるように作動していないとき
このときは、摩擦レバー27、摩擦プレート28およびレバー部材35は、それぞれ図9(a)に示す位置となっている。したがって、摩擦プレート28の円弧状部分28aが駆動軸24の大径部24aから離れているとともに、摩擦プレート28の径方向突起28bの側面が大径部24aに接触している。更に、レバー部材35の係止爪35bはギヤホールド26の歯26aから離れた非係合位置となっている。これにより、ギヤホールド26は回動自由となっている。更に、腕部35aはストッパ53当接していてギヤホールド26から離れる方向のそれ以上の回動が阻止されている。したがって、このときは従来のシートベルトリトラクタと同様に通常の作動が行われる。
(i) 車両に所定値以上の減速度が作用しない通常状態
この状態では減速度感知手段6が動作しなく、シートベルトリトラクタ1は、図1ないし図4に示す状態にある。この状態では、係止レバー23の係止爪23aはリング部材18の歯18aに係合しない位置に設定されるとともに、パウル10の係止爪10aがラチェットホイール9の歯9aに係合しない位置に設定される。したがって、この状態ではリールシャフト4が自由に回動可能状態となっており、シートベルト3は付勢力付与手段8により駆動軸24を介して巻取り方向βに付勢されている。
(シートベルト3の非装着状態)
この状態では、シートベルト3に取り付けられているタング(不図示)とバックル部材(不図示)とが離れている。したがって、シートベルト3は付勢力付与手段8の付勢力によりリールシャフト4に巻き取られている。
(シートベルト3を引き出すときの状態)
シートベルト3を装着するために乗員がシートベルト3を引き出すと、これにともないリールシャフト4が引出し方向αへ付勢力付与手段8の付勢力に抗して回転する。これにより、シートベルト3が自由に引き出される。
(タングとバックル部材との結合後、シートベルト3から手を離したときの状 態)
乗員がタングとバックル部材とを結合した時点では、シートベルト3は正規の装着状態のときの引出し長さよりも余分に引き出された状態となっている。したがって、乗員が結合操作後にシートベルト3を離すと、付勢力付与手段8の付勢力により、シートベルト3が乗員の体にフィットするまで巻き取られる。このとき、シートベルト3には付勢力付与手段8の付勢力のみによるベルトテンションが加えられる。しかし、後述するように車両が発進して設定速度(10〜20km/h)になると、ベルトテンション制御機構7が作動し、シートベルト3はシートベルト3にベルトテンションが加えられないテンションレス状態が保持される(ただし、後述するコンフォートモードの場合)。
(タングとバックル部材との結合を解除した後のシートベルト3の非装着状態)
シートベルト3を解放するため、乗員がタングとバックル部材との結合を解除すると、バックルスイッチ69からのタングとバックル部材との結合解除検知信号により、ベルトテンション制御機構7の作動が解除する。また、前述のシートベルトの非装着状態の場合と同様に、シートベルト3は付勢力付与手段8の付勢力によりリールシャフト4に巻き取られる。
(ii) 車両に所定値以上の減速度が作用したときの状態
シートベルト3の装着状態での車両走行中に急ブレーキ等により車両に所定値以上の減速度が作用すると、シートベルトロック作動手段5が動作する。まず第1段階として減速度感知手段6の慣性体22がこの減速度により前方に傾動するので、係止レバー23がリング部材の方向に回動する。このため、係止レバー23の係止爪2aがリング部材18の歯18aに係合する位置に設定される。一方、この所定値以上の減速度により乗員が前方へ移動しようとするため、シートベルト3が引き出される。このシートベルト3の引出しにより、リールシャフト4、ラチェットホイール9、リテーナ14、キャリヤ15、ディスク部材17およびリング部材18がともに引出し方向αへ回動する。これにより、リング部材18の歯18aがすぐに係止爪23aに係合するので、ディスク部材17およびリング部材18の引出し方向αへの回動が停止する。
乗員が更に前方へ移動しようとするため、シートベルト3が更に引き出され、リールシャフト4、ラチェットホイール9、ロックリング13およびリテーナ14はともに更に引出し方向αへ回動する。このため、リテーナ14とディスク部材17との間に相対回動が生じ、この相対回動によりキャリヤ15はガイド14a,14bに案内される径方向(図3において上方向)に移動する。このキャリヤ15の移動により、キャリヤ15の係止爪15eがロックリング13の内歯13aに係合する位置に設定される。シートベルト3の更なる引出しにより、ディスク部材17に加えられる引出し方向αのモーメントがリング状スプリング19の付勢力より大きくなると、キャリヤ15およびディスク部材17も同引出し方向αに回動する。
このキャリヤ15の引出し方向αの回動により、係止爪15eが内歯13aに係合するとともに、ロックリング13を引出し方向αへ回動させる。このロックリング13の引出し方向αの回動により、回動するカム孔13bに案内されてパウル10のカムフォロワ10bが移動する。このカムフォロワ10bの移動により、パウル10がラチェットホイール9方向へ回動し、パウル10の係止爪10aがラチェットホイール9の外歯9aに係合する位置に設定される。更に、シートベルト3が引き出されようとすると、リールシャフト4およびラチェットホイール9の引出し方向αの回動により、係止爪10aが外歯9aに係合する。その結果、リールシャフト4およびラチェットホイール9の回動が停止し、シートベルト3の引出しが阻止される。これにより、乗員はシートベルト3により確実に拘束されて保護されるようになる。
iii. シートベルトが急速に引き出されたときの状態
シートベルト3が通常の引出し速度に比べてきわめて急速に引き出されると、リールシャフト4、ラチェットホイール9およびリテーナ14がともに急速に引出し方向αへ回動する。しかし、ディスク部材17とリング部材18とからなる慣性部材はこの急速な回動に追従しなく、作動遅れを生じる。この作動遅れにより、リテーナ14とディスク部材17との間に相対回動が生じる。前述の急減速の場合と同様に、この相対回動によりキャリヤ15が径方向に移動してその係止爪15aがロックリング13の内歯13aに係合する。そして、ロックリング14がリテーナ14とともに引出し方向αに回動し、パウル10の係止爪10aがラチェットホイール9の歯9aに係合する。これにより、リールシャフト4の回動が停止し、シートベルト3の引出しが阻止される。
なお、ベルトテンション制御機構7が作動していないときは、リールシャフト4の引出し方向αおよび巻取り方向βのいずれの方向の回動においても、第2歯車動力伝達機構39の各歯車および従動側ギヤクラッチ32までは、リールシャフト4の回動とともに回動する。しかし、クラッチ歯32bとクラッチ歯33aとが噛み合っていないので、駆動側ギヤクラッチ32、クラッチプレート33、第1歯車動力伝達機構38の各歯車および電動モータ40は、リールシャフト4の回動とともに回動することはない。
III. ベルトテンション制御機構7がリールシャフトを引出し方向αに回動させるように作動しているとき
このときは、図11(a)に示すようにギヤホールド26がホールドされているので、リールシャフト4は引出し方向αおよび巻取り方向βのいずれにも回動しない。このため、減速度感知手段6の作動に関係なく、シートベルト3は引き出されない。したがって、減速度感知手段6が作動するような大きさの減速度が車両に加えられても、乗員はシートベルト3により確実に拘束保護される。
ところで、本実施例の乗員拘束保護システムにおいては、シートベルト3の巻取り・引出し制御に関して4つのモードを設けている。図12に示すように、これらの4つのモードは、コンフォートモード、警戒モード、警報モードおよび緊急モードである。
コンフォートモードではシステムの動作においてシートベルト3の巻取り力を0kgfに設定している。これは、電動モータ40をシートベルト3の引出し方向αに回転駆動させて、付勢力付与手段8の付勢力によるシートベルト3の巻取り力を排除した状態となるようにしている。すなわち、ベルトテンションを除去してシートベルト3をテンションレス状態に設定する。乗員拘束保護システムをこのコンフォートモードに動作させる条件として、本実施例では、1. 検出物体がないとき、2. 検出物体が近づいてこないとき、3. 検出物体が近づきつつあっても乗員の回避動作に充分余裕があるとき、またはすでに減速等の回避動作を行っているとき、の3つの条件が設定されている。
そして、コンフォートモードの条件の一つが成立しているか否かを実際に判断するにあたっては、前方物体検出センサ43からの物体検出信号がないこと、前方物体検出センサ43からの物体検出信号があったとき、自車の速度と物体の速度との差、すなわち自車と物体との相対速度が、相対速度≦0であること、あるいは他のモードが成立されていないことをCPU42が判断することにより、コンフォートモードの条件が成立していると判断する。これらの条件の一つが成立していると判断されてから所定時間(例えば、3〜5sec等)経過後に、コンフォートモードとなるように乗員拘束保護システムを作動するようにしている。
乗員拘束保護システムをコンフォートモードに設定するには、まず始めに乗員が車両のシートに正姿勢で着座してシートベルト3を装着した状態で、自車の車速が設定速度を超えてから所定時間経過後に、CPU42が電動モータ40を一旦ベルト巻取り方向にゆっくりと回動させる。この電動モータ40の回動により、一旦シートベルト3を着座した乗員にフィットした状態となるまで巻き込む。この状態で、CPU42は乗員拘束保護システムが正常であるか否かを判断するとともに、乗員の正姿勢の着座状態をチェックして初期条件を設定する。その後で、電動モータ40をベルト引出し方向にゆっくりと回動させて、付勢力付与手段8による巻取り力を排除してシートベルト3をテンションレス状態にすることにより、コンフォートモードに設定する。
また、コンフォートモード以外の他のモードに設定されている乗員拘束保護システムを、コンフォートモードに設定するには、コンフォートモードの条件の一つが成立されてから所定時間経過後に、前述と同様に一旦シートベルト3を巻き取り、その後にコンフォートモードに設定する。
更にシステムがコンフォートモードに設定されている状態で、乗員が若干動いてシートベルト3を引き出した場合には、シートベルト3にギヤホールド26に内蔵されているメモリスプリングの付勢力が加えられるようにしている。この付勢力は0.5kgf以下に設定されている。そして、乗員が元の正姿勢に戻ったとき、メモリスプリングの付勢力を排除してシートベルト3をテンションレス状態にするようにしている。
警戒モードではシステムの動作においてシートベルト3のベルトテンションを付勢力付与手段8の付勢力による巻取り力(例えば0.50kgf等)のみによるベルトテンションに設定している。これは電動モータ40の回転駆動力による巻取り力がベルトテンションに寄与しないようにしている。システムをこの警戒モードに動作させる条件として、1. シートベルト3を装着、離脱するとき、2. 自車が速度10〜20km/h以上で走行中に、検出物体が近づきつつあって、乗員の回避動作に余裕がないとき、の2つの条件が設定されている。
警戒モードの動作条件の一つが成立しているか否かを実際に判断するにあたっては、まず1の条件はタングとバックルとの連結、分離を検出して判断する。すなわち、タングとバックルとの少なくとも一方に検知センサを設けて、この検知センサからの出力信号によりバックルとの連結、分離を判断する。
また2の条件の成立判断は、まず自車走行速度Vsが10〜20km/h以上(Vs≧10〜20km/h)であるか否かを判断する。そして、自車走行速度Vsが10〜20km/h以上であると判断したとき、前方物体検出センサ43からの物体検出信号により自車と物体との前後方向の相対距離Drおよび相対速度Vrを求める。自車走行速度Vsが相対速度Vrより大きくかつ相対速度Vrが正(Vs>Vr≧0)であるとき、(1) 先にある物体が自車と同方向に走行している先行車でありかつこの先行車との相対距離が縮まる追従走行であると判断する。また自車走行速度Vsが相対速度Vr以下であるとき、(2) 先にある物体が静止物または対向車であると判断する。
(1)の追従走行の場合
まず、自車を同じ設定減速度d(m/sec2)(例.4〜6m/sec2)で減速したときの安全車間距離Ds(m)を次の数式1により求める。
Figure 0003928968
次に、相対距離Drが求めた安全車間距離Ds以下(Dr≦Ds)のとき、2の条件が成立していると判断する。
(2)の静止物または対向車の場合
まず、自車を同じ設定減速度dで減速したときの安全車間距離Dsを数式2により求める。
Figure 0003928968
次に、相対距離Drが求めた安全車間距離Ds以下(Dr≦Ds)のとき、2の条件が成立していると判断する。
警戒モードの条件が成立していると判断されると、この警戒モードとなるように乗員拘束保護システムを作動するようにしている。
乗員拘束保護システムを警戒モードに設定するには、警戒モードの条件が成立していると判断したとき、所定時間経過後に電動モータ40をベルト巻取り方向にゆっくりと回動させる。これにより、シートベルト3に付勢力付与手段8による巻取り力のみが加えられた状態に設定した後、電動モータ40を停止する。こうして、乗員拘束保護システムを警戒モードに設定する。
警報モードでは、システムの動作において電動モータ40の回転駆動力により一旦シートベルト3を巻き込むことにより、シートベルト3に第1設定ベルトテンション(例えば2〜3kgf等)を加えるようにしている。この第1設定ベルトテンションは乗員がシートベルト3を引いたと感じる大きさの荷重であり、乗員の前かがみの姿勢をある程度引き起こすことができる大きさとされている。このように乗員の体を起こすことにより、眠気を防止する作用が行われるようになっている。しかも、乗員がシートベルト3を引いたと感じることにより、乗員は次に述べる警報音や警報ランプ等の通常の警報手段以外に体感でも警報を知ることができるようになっている。
更に警報モードでは、ドライバーの注意を促すために警報音を発するか、警報ランプを点灯するか、あるいはこれらの両方を行うかするようにしている。乗員拘束保護システムをこの警戒モードに動作させる条件として、1. 検出物体が近づきつつあって、ただちに乗員の回避動作が必要なとき、の条件が設定されている。
警報モードの動作条件が成立しているか否かを実際に判断する方法は、前述の警戒モードとほとんど同じであり、安全車間距離Dsを数式1および2で求め、安全車間距離Dsが相対距離Dr以上であるとき、1の条件が成立していると判断する。ただこの警報モードでは、警戒モードにおいて求めた安全車間距離Dsの第1設定余裕距離(例 5m)より短い第2設定余裕距離(例 2m)を数式1および2の第1設定余裕距離に代えて安全車間距離Dsを求める。警報モードの条件が成立されていると判断されると、警報モードとなるように乗員拘束保護システムを作動するようにしている。
乗員拘束保護システムを警報モードに設定するには、警報モードの条件が成立していると判断したとき、警報音をならすかおよび/または警報ランプを点灯するかした後に電動モータ40をベルト巻取り方向に警戒モードの場合と同様にゆっくりと回動させる。これにより、シートベルト3に電動モータ40の回転駆動力による第1設定ベルトテンションを付与した状態に設定した後、電動モータ40を停止する。こうして、乗員拘束保護システムを警報モードに設定する。
緊急モードでは、システムの動作において電動モータ40の回転駆動力により一旦シートベルト3を巻き込むことにより、シートベルト3に前述の第1設定ベルトテンションより大きな第2設定ベルトテンション(例えば5kgf以上等)を加えるようにしている。この第2設定ベルトテンションは乗員がかなりきつく感じる大きさの荷重であり、シートベルト装置のラップベルトもある程度巻き取ることのできる大きさとされている。また、この緊急モードでは警報音を発するか、警報ランプを点灯するか、あるいはこれらの両方を行うかするようにしている。
乗員拘束保護システムをこの緊急モードに動作させる条件として、1. 自車が速度10〜20km/h以上で走行中に、ドライバーの回避動作では検出物体との衝突が回避できないとき、の条件が設定されている。
緊急モードの動作条件が成立しているか否かを実際に判断するにあたっては、まず、自車走行速度Vsが10〜20km/h以上であるか否かを判断する。そして、自車走行速度Vsが10〜20km/h以上(Vs≧10〜20km/h)であると判断したとき、前方物体検出センサ43からの物体検出信号により自車と物体との相対速度Vrおよび相対距離Drを求める。一方、予め設定されているシステムの作動完了時間Ts(例 0.3sec)を相対速度Vrに基づいて換算した距離(Vr・Ts)を求める。また、第3設定余裕距離De′(例えば2m等)を設定しておき、求めたシステムの作動完了時間Tsの換算距離(Vr・Ts)と第3設定余裕距離De′との和(Vr・Ts + De′)を求める。そして、追従走行であるか否かにかかわらず、相対速度Vrがこの和(Vr・Ts + De′)以下(Vr≦ Vr・Ts + De′)であるとき、緊急モードの条件が成立していると判断する。緊急モードの条件が成立していると判断されると、この緊急モードとなるように乗員拘束保護システムを作動するようにしている。
乗員拘束保護システムを緊急モードに設定するには、緊急モードの条件が成立していると判断したとき、警報音をならすかおよび/または警報ランプを点灯するかした後に一旦電動モータ40をベルト巻取り方向に急速に回動させてシートベルト3をすばやく巻き取る。この巻取り速度は、シートベルト装置の一般的なプリテンショナーによるシートベルト引込み速度より小さく設定されている。これにより、シートベルト3に電動モータ40の回転駆動力による第2設定ベルトテンションを付与した状態に設定した後、電動モータ40を停止する。こうして、乗員拘束保護システムを緊急モードに設定する。
図13は、本実施例におけるベルトテンション制御機構7の制御ブロック図である。
図13に示すように、ベルトテンション制御機構7の制御ブロックは、大きく分けて、センサユニット56、入力演算処理部57、制御部58および制御対象およびセンサ59の4つブロックから構成されている。
センサユニット56は、複数個の前方物体検出センサ43のランプ(LEDまたはLD)49および光学センサ(PSD)52、発光側展開ロジック回路60、および受光側プリアンプ61からなっている。そして、入力演算処理部57からの点灯クロックからなる制御信号によりランプ(LEDまたはLD)49が点灯して自車の前方にある物体を照射する。次にランプ49の光が物体に当たって反射した反射光を光学センサ(PSD)52で受光する。光学センサ52は受光した反射光を電気信号に変え、この電気信号がプリアンプ61によって増幅されて入力演算処理部57に送出される。このセンサユニット56により、物体検出が行われる。
そして、センサユニット56は、物体までの測定距離が30〜50mに、検出角度が±30度に、およびランプ49からの発光ビームが複数固定またはスキャン可能にそれぞれ設定されている。なお、これらの値は設定値に限定されるものではなく、種々の設定値が可能である。
入力演算処理部57は、タイミングコントローラ62、オートゲインコントロール手段63、アナログ・デジタル変換器(A/D)64および演算部65からなっている。そして、タイミングコントローラ62は制御部58からの制御信号を受けてセンサユニット56にランプ49の点灯制御信号を送出する。またセンサユニット56から送られてくる反射光の電気信号のゲインがオートゲインコントロール手段63により調整されるとともにA/D64によりデジタル信号に変換される。演算部65は、デジタル信号に変換された反射光の電気信号に基づいて物体の位置および速度のベクトル量を求めるとともに、このベクトル量により相対速度、相対距離、安全車間距離およびシステム作動完了時間の換算距離を求めて制御部58に送出する。
制御部58はCPU制御部66からなっている。CPU制御部66は、格納されている物体検出アルゴリズムにより物体検出を行うための制御信号をタイミングコントローラ62および演算部65に送出する。また物体検出アルゴリズムにより、演算部65から送られてくる物体の各データ値、シートベルト装着信号および自車走行速度信号に基づいて、自車と物体との関係がどのモードにあるのかを判断する。そして、CPU制御部66は、制御対象およびセンサ59からのベルトテンション信号を見ながら、判断したモードとなるように制御対象およびセンサ59に制御信号を送出する。
制御対象およびセンサ59は、ベルトテンション検知センサ67、電動モータ40を含むシートベルトリトラクタ機構部68、バックルスイッチ69および車速センサ70からなっている。ベルトテンション検知センサ67はシートベルト3のベルトテンションを検知して、その検知信号を制御部58に送出する。またシートベルトリトラクタ機構部68は制御部58からの制御信号により作動して、シートベルト3のベルトテンションを制御する。更に、バックルスイッチ69はタングとバックルとが連結されてシートベルト3が装着されたときにシートベルト装着信号を制御部58に送出する。更に車速センサ70は自車の走行速度を検知して自車走行速度信号を制御部58に送出する。
図14は、乗員拘束保護システムの動作タイミングを示す図である。
図14において、まず乗員が車両に乗車しシートに正姿勢で着座した後、タングをバックルに連結してシートベルト3を装着すると、バックルスイッチ69がオンする。この状態では、ベルトテンションは付勢力付与手段8によって決定される大きさの0.5kgfとなる。自車が発進して走行速度が10km/hになると、車速センサ70がオンする。
車速センサ70がオンしてから所定時間経過後に、電動モータ40が一旦巻取り方向βにゆっくり回転駆動する。これにより、シートベルト3が一旦巻き取られる。ベルトテンションが約2〜3kgfになると、電動モータ40が停止する。このため、ベルトテンションは徐々に低下していく。電動モータ40が停止してから若干の時間の経過後、電動モータ40が引出し方向αにゆっくり回転駆動する。これにより、ベルトテンションが比較的速く低下していき、付勢力付与手段8の付勢力が排除されて0kgfとなり、シートベルト3はテンションレス状態となる。シートベルト3がテンションレス状態になると、電動モータ40が停止する。こうして、コンフォートモードが設定される。コンフォートモードでは、ギヤホールド26がホールドされるので、シートベルト3のテンションレス状態が保持される。そして、通常走行での乗車時には、このコンフォートモードが保持される。
コンフォートモード中に、乗員が動いてシートベルト3を引き出したときは、ギヤホールド26に内蔵されているメモリスプリングの付勢力がシートベルト3に加えられる。この付勢力は0.5kgf以下に設定されている。乗員が静止すると、シートベルト3は付勢力付与手段8によりその付勢力が0kgfとなるまで巻き取られ、再びテンションレス状態となる。
警戒モードの動作条件が成立すると、所定時間経過後に電動モータ40が巻取り方向βにゆっくりと回転駆動する。その場合、電動モータ40の若干の回転でギヤホールド26のホールドが解除し、リールシャフト4には付勢力付与手段8の付勢力が加えられる。これにより、コンフォートモードが解除される。ギヤホールド26のホールドが解除すると、電動モータ40が停止する。これにより、シートベルト3には付勢力付与手段8の付勢力のみによるベルトテンションが付与される。こうして、警戒モードが設定される。この警戒モードでは、ベルトテンションは付勢力付与手段8の付勢力のみによるものであるので、電動モータ40が停止してもこの付勢力のみによるベルトテンションに保持される。
警報モードの動作条件が成立すると、所定時間経過後に電動モータ40が巻取り方向βにゆっくりと回転駆動する。これにより、シートベルト3には電動モータ40の回転駆動力によるベルトテンションも加えられるようになる。そして、ベルトテンションが第1設定ベルトテンション(2〜3kgf)になると、電動モータ40が停止する。こうして、警報モードが設定される。この警報モードでは、電動モータ40が停止しているとともに、ギヤホールド26がホールドされていないので、ベルトテンションは徐々に低下していく。そして、最終的にはベルトテンションは付勢力付与手段8の付勢力のみによるベルトテンションとなる。
緊急モードの動作条件が成立すると、所定時間経過後に電動モータ40が巻取り方向βに急速に回転駆動する。これにより、シートベルト3には電動モータ40の回転駆動力によるベルトテンションも加えられるようになる。そして、ベルトテンションが第2設定ベルトテンション(5kgf以上)になると、電動モータ40が停止する。こうして、緊急モードが設定される。この緊急モードでは、前述の警報モードと同様に電動モータ40が停止しているとともに、ギヤホールド26がホールドされていないので、ベルトテンションは徐々に低下していく。そして、最終的にはベルトテンションは付勢力付与手段8の付勢力のみによるベルトテンションとなる。
コンフォートモード以外のモードの状態から、衝突のおそれ等がなくなって再びコンフォートモードの動作条件となると、前述と同様にしてコンフォートモードが設定される。
コンフォートモードから警報モードの動作条件となったとき、コンフォートモードから緊急モードの動作条件となったとき、あるいは警戒モードから緊急モードの動作条件となったときは、電動モータ40が更に巻取り方向βに回転駆動され、前述と同様にそれぞれ警報モードあるいは緊急モードが設定される。
警報モードまたは緊急モードから警戒モードの動作条件となったときは、警報モードまたは緊急モードにおいてモータ停止により、ベルトテンションが警戒モードのときと同様の、付勢力付与手段8の付勢力のみによるベルトテンションとなっているので、電動モータ40が回転駆動することなく、警戒モードが設定される。
また、緊急モードから警報モードの動作条件となったときは、緊急モードにおいてベルトテンションが付勢力付与手段8の付勢力のみによるベルトテンションとなっているので、電動モータ40が巻取り方向βに回転駆動する。そして、前述の警報モード設定の場合と同様に、ベルトテンションが第1設定ベルトテンションになったとき、電動モータ40が停止する。
降車のため自車が停止してバックルとタングとの連結が解除すると、警戒モードの動作条件が成立する。したがって、前述の警戒モードの動作条件成立の場合と同様に、所定時間経過後に電動モータ40が巻取り方向βにゆっくりとわずかの時間だけ回転駆動してギヤホールド26のホールドが解除する。このため、リールシャフト4には付勢力付与手段8の付勢力のみが加えられ、この付勢力によりシートベルト3が巻き取られる。電動モータ40の停止後、所定時間(数秒)経過後に再び電動モータ40が巻取り方向βにゆっくりとわずかの時間だけ回転駆動する。これにより、シートベルト3がリールシャフト4に完全に巻き取られるようになる。
ところで、乗員拘束保護システムがコンフォートモードはもちろん、他の各モードに設定されている最中でも、前述の従来のシートベルトリトラクタと同様の作動、すなわちシートベルトロック作動手段5、減速度感知手段6およびパウル10の各作動が行われる。
なお前述の実施例では、警報モードまたは緊急モードにおいてベルトテンションが一旦第1または第2設定ベルトテンションになった後、徐々に低下するようにしているが、本発明は、警報モードまたは緊急モード中、ベルトテンションを第1または第2設定ベルトテンションにそれぞれ保持するようにすることもできる。この場合には、警報モードまたは緊急モード中、電動モータ40の回転駆動を例えばパルス制御等により適宜制御するようにすればよい。
また前述の実施例では、乗員拘束保護システムに4つのモードを設定しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば警戒モードと警報モードとを一つのモードにまとめて全体として3つのモードに設定することもでき、また、他の所定数のモードに設定することもできる。
図15は、本発明の他の実施例を示し、(a)は自動車の左側部を概略的にかつ部分的に示す図、(b)は(a)におけるXVB-XVB線に沿う断面図である。なお、前述の実施例と同じ構成要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明は省略する。
この実施例の車両の乗員拘束保護システムは、自車と自車の左右側方にある物体との間の状況に応じてシートベルトリトラクタを制御するシステムである。すなわち、図15(a)および(b)に示すように自動車の左右側フロントドア71,72の窓開口部の位置で窓ガラス73,74より車室内側に左右側方物体検知センサ75,76がそれぞれ設けられている。この左側方物体検知センサ75は自動車の左側方にある物体を検知するとともに、右側方物体検知センサ76は自動車の右側方にある物体を検知するようになっている。なお、左右側方物体検知センサ75,76は、自動車の左右側方の物体を検知できるように設けさえすれば、左右側フロントドア71,72の窓開口部以外の自動車の他の任意の部位に設けることができる。
これらの左右側方物体検知センサ75,76は、図7および図8に示す車両前方の物体を検出する前方物体検出センサ43と同じもので構成することができる。したがって、以下光学センサを使用して説明するが、左右側方物体検知センサ75,76として、例えばミリ波等の電波、超音波あるいは画像認識等の他の物体検出手段を用いることもできることは、言うまでもない。
図示しないがそれらの発光部のランプおよび受光部の光学センサは、前方物体検出センサ43の発光部のランプ49および受光部の光学センサ52と同様にCPU42に接続されていて、CPU42からの制御信号によりランプの点灯、消灯が制御されるとともに、光学センサからの物体検知信号がCPU42に供給されるようになっている。
本実施例の乗員拘束保護システムにおいては、シートベルト3の巻取り・引出し制御に関して3つのモード、すなわちコンフォートモード、警報モードおよび緊急モードが設定されている。本実施例のこれらのコンフォートモード、警報モードおよび緊急モードにおける各ベルト巻取り力は、前述の図12に示す前方の物体に対するシートベルトの制御のモードにおけるそれらのベルト巻取り力と同じに設定されている。
乗員拘束保護システムをこれらの各モードに設定するための条件として、本実施例では、次の表1に示すように各モードの設定条件を決めている。
Figure 0003928968
すなわち、自車と自車の側方にある物体との間の状況に応じて決定される衝突余裕時間Ssrの大きさに基づいて、衝突余裕時間Ssrが第1設定値δsec(例、0.2sec)以下のとき、緊急モードが設定され、衝突余裕時間Ssrが第1設定値δより大きく第2設定値εsecより小さいとき、警報モードが設定され、衝突余裕時間Ssrが第2設定値εsec(ε>δ;例、0.5sec)以上のとき、コンフォートモードが設定される。
この衝突余裕時間Ssrを求めるにあたっては、まず自車の側方に物体が検出されたとき、自車と側方の検出物体との間の側方相対距離Dsrと側方相対速度Vsrとを求める。次に、これらの値Dsr,Vsrを用いて、次の数式3により衝突余裕時間Ssrを求める。
Figure 0003928968
また、本実施例においては左右側方物体検知センサ75,76の両方の物体検知信号がCPU42に供給されるようになっているが、左右側方物体検知センサ75,76の各物体検知信号のORの論理でシートベルトの各モードが設定されるようにしている。すなわち、自車の左右の両側方で物体が検知された場合はもちろん、自車の左右のいずれか一側方で物体が検知された場合には、この物体検知信号に基づいて各モードが設定されるようにしている。その場合、自車の左右両側方で物体が検知された場合には、自車と左右側方のいずれか一方の側方の物体との間の状況により決定したモードがコンフォートモードであり、自車と左右側方のいずれか他方の側方の物体との間の状況により決定したモードが警報モードまたは緊急モードである場合には、乗員拘束保護システムは警報モードまたは緊急モードに設定される。また、自車と左右側方のいずれか一方の側方の物体との間の状況により決定したモードが警報モードであり、自車と左右側方のいずれか他方の側方の物体との間の状況により決定したモードが緊急モードである場合には、乗員拘束保護システムは緊急モードに設定される。すなわち、左右側方で決定されたモードが異なるときは、乗員拘束保護システムはシートベルトのベルト力が大きい方のモードに設定されるようになっている。
また、自車の左右のいずれの側方にも物体が検出されない場合には、側方相対距離Dsrおよび側方相対速度Vsrがともに0となる。このため、数式3により衝突余裕時間Ssrを求めることができない。そこで、本実施例においては、左右のいずれの側方にも物体が検出されない場合には、乗員拘束保護システムはコンフォートモードに設定されるようにしている。すなわち、側方相対距離Dsrおよび側方相対速度Vsrがともに0のときは、衝突余裕時間Ssrを第2設定値ε以上の任意に定めた所定値γsec(例、εが0.5secのとき、例えば1.0sec)に予め設定している。
更に、物体が自車に対して斜め側方から接近するような場合には、側方相対距離Dsrおよび側方相対速度Vsrとして自車の左右側方向の成分を用いて、衝突余裕時間Ssrを数式3により求める。そして、求めた衝突余裕時間Ssrを用い、前述の自車の左右側方向の場合と同様に表1に示すモード設定条件に基づいて乗員拘束保護システムのモードが設定されるようにしている。
更に、例えば自車が道路のカーブ部分の外側を旋回走行中に、対向車がこのカーブ部分の内側を旋回走行してくる場合には、前述の物体が自車に斜め側方から接近する場合と同様に、側方相対距離Dsrおよび側方相対速度Vsrとして自車の左右側方向の成分を用いて衝突余裕時間Ssrを求める。そして、このカーブ走行時には他車が自車にきわめて接近してくるとともに、他車の走行速度が高くカーブをまがりきれないでセンターラインをオーバーしてくるおそれが考えられるので、このカーブ旋回走行の場合にはコンフォートモードと緊急モードとの2つのモードが設定されている。すなわち乗員拘束保護システムは、衝突余裕時間Ssrが第2設定値ε以上のときコンフォートモードに、また衝突余裕時間Ssrが第2設定値εより小さいとき緊急モードに設定されるようになっている。その場合、カーブ旋回走行中であることを検知する方法としては、例えばハンドルの操舵角を舵角センサにより検知することによりカーブ旋回走行を検知する方法等がある。
更に、道路直線部の走行中の自車と対向車との単純なすれ違いの場合は、側方相対速度Vsrが0となる。したがって、数式3により、衝突余裕時間Ssrが第2設定値ε以上となるので、乗員拘束保護システムはコンフォートモードに設定されるようになっている。
本実施例における他の構成、ベルトテンション制御方法、制御ブロック、制御タイミングは前述の実施例と同じであるので、それぞれそれらの説明は省略する。
図16は、本発明の更に他の実施例を部分的に示す斜視図である。なお、前述の各実施例と同じ構成要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明は省略する。
この実施例の車両の乗員拘束保護システムは、自車と自車の後方にある物体との間の状況に応じてシートベルトリトラクタを制御するシステムである。すなわち、図16に示すように自動車の後部の例えばリヤパッケージトレイパネル77の上でリヤウィンドシールド78より車室内側に、後方物体検知センサ79が設けられている。この後方物体検知センサ79は自動車の後方にある物体を検知するようになっている。なお、後方物体検知センサ79は、自動車の後方の物体を検知できるように設けさえすれば、このリヤパッケージトレイパネル77以外の自動車の他の任意の部位に設けることができる。
この後方物体検知センサ79は、前述の図7および図8に示す車両前方の物体を検出する前方物体検出センサ43と同じもので構成することができる。したがって、以下光学センサを使用して説明するが、後方物体検知センサ79として、例えばミリ波等の電波、超音波あるいは画像認識等の他の物体検出手段を用いることもできることは、言うまでもない。
図示しないがそれらの発光部のランプおよび受光部の光学センサは、前方物体検出センサ43の発光部のランプ49および受光部の光学センサ52と同様にCPU42に接続されていて、CPU42からの制御信号によりランプの点灯、消灯が制御されるとともに、光学センサからの物体検知信号がCPU42に供給されるようになっている。
本実施例の乗員拘束保護システムにおいては、前述の図12に示す車両の前方の物体に対するシートベルト3の巻取り・引出し制御の場合と同様に、コンフォートモード、警戒モード、警報モードおよび緊急モードの4つのモードが設定されているとともに、各モードにおけるベルト巻取り力も図12に示す実施例と同じに設定されている。
図17に示すように、乗員拘束保護システムをコンフォートモードに動作させる条件として、本実施例では、1. 検出物体がないとき、2. 検出物体が近づいてこないとき、3. 検出物体が近づきつつあっても乗員の回避動作に充分余裕があるとき、またはすでに加速等の回避動作を行っているとき、の3つの条件が設定されている。
そして、コンフォートモードの条件の一つが成立しているか否かを実際に判断するにあたっては、後方物体検出センサ79からの物体検出信号がないこと、後方物体検出センサ79からの物体検出信号があったとき、自車の速度と物体の速度との差、すなわち自車と物体との相対速度が、相対速度≧0であること、あるいは他のモードが成立されていないことをCPU42が判断することにより、コンフォートモードの条件が成立していると判断する。
乗員拘束保護システムを警戒モードに動作させる条件として、1. シートベルト3を装着、離脱するとき、2. 自車が速度10〜20km/h以下で走行中に、検出物体が近づきつつあって、乗員の回避動作に余裕がないとき、の2つの条件が設定されている。
警戒モードの動作条件の一つが成立しているか否かを実際に判断するにあたっては、まず1の条件はタングとバックルとの連結、分離を検出して判断する。すなわち、タングとバックルとの少なくとも一方に検知センサを設けて、この検知センサからの出力信号によりバックルとの連結、分離を判断する。
また2の条件の成立判断は、まず自車走行速度Vsが10〜20km/h以下(Vs≦10〜20km/h)であるか否かを判断する。そして、自車走行速度Vsが10〜20km/h以下であると判断したとき、後方物体検出センサ79からの物体検出信号により自車と物体との前後方向の相対距離Drおよび相対速度Vrを求める。自車走行速度Vsが相対速度Vrより大きくかつ相対速度Vrが正(Vs>Vr≧0)であるとき、(1) 後方にある物体が自車と同方向に走行している後続車でありかつこの後続車との相対距離が縮まる追従走行であると判断する。また自車走行速度Vsが相対速度Vr以下であるとき、(2) 後方にある物体が静止物または対向車であると判断する。
(1)の追従走行の場合
まず、自車を同じ設定加速度a(例.4〜6m/sec2)で加速したときの安全車間距離Dsを次の数式4により求める。
Figure 0003928968
次に、求めた相対距離Drが安全車間距離Ds以下(Dr≦Ds)のとき、2の条件が成立していると判断する。
(2)の静止物または対向車の場合
まず、自車を同じ設定加速度aで加速したときの安全車間距離Dsを数式5により求める。
Figure 0003928968
次に、相対距離Drが求めた安全車間距離Ds以下(Dr≦Ds)のとき、2の条件が成立していると判断する。
更に乗員拘束保護システムを警報モードに動作させる条件として、1. 検出物体が近づきつつあって、ただちに乗員の回避動作が必要なとき、の条件が設定されている。
警報モードの動作条件が成立しているか否かを実際に判断する方法は、前述の警戒モードとほとんど同じであり、安全車間距離Dsを数式4および5で求め、相対距離Drが安全車間距離Ds以下であるとき、1の条件が成立していると判断する。ただこの警報モードでは、警戒モードにおいて求めた安全車間距離Dsの第1設定余裕距離De(例 5m)より短い第2設定余裕距離(例 2m)を数式4および5の第1設定余裕距離Deに代えて安全車間距離Dsを求める。
乗員拘束保護システムを緊急モードに動作させる条件として、1. 自車が速度10〜20km/h以下で走行中に、ドライバーの回避動作では検出物体との衝突が回避できないとき、の条件が設定されている。
緊急モードの動作条件が成立しているか否かを実際に判断するにあたっては、まず、自車走行速度Vsが10〜20km/h以下であるか否かを判断する。そして、自車走行速度Vsが10〜20km/h以下(Vs≦10〜20km/h)であると判断したとき、後方物体検出センサ79からの物体検出信号により自車と物体との相対速度Vrおよび相対距離Drを求める。一方、予め設定されているシステムの作動完了時間Ts(例 0.3sec)を相対速度Vrに基づいて換算した距離(Vr・Ts)を求める。また、第3設定余裕距離De′(例えば2m等)を設定しておき、求めたシステムの作動完了時間Tsの換算距離(Vr・Ts)と第3設定余裕距離De′との和(Vr・Ts + De′)を求める。そして、追従走行であるか否かにかかわらず、相対速度Vrがこの和(Vr・Ts + De′)以下(Vr≦ Vr・Ts + De′)であるとき、緊急モードの条件が成立していると判断する。
なお、本実施例における乗員拘束保護システムを実際に各モードにそれぞれ設定するには、前述の車両前方の物体の場合の各モード設定と同じであり、また本実施例における他の構成、ベルトテンション制御方法、制御ブロック、制御タイミングは前述の各実施例と同じであるので、それぞれそれらの説明は省略する。
図18は、本発明の更に他の実施例を部分的に切り欠いて示す斜視図、図19はこの実施例の作動を説明する図である。なお、前述の各実施例と同じ構成要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明は省略する。
この実施例の車両の乗員拘束保護システムは、車両がロールオーバをしたときにシートベルトリトラクタを制御するシステムである。すなわち、図18に示すようなロールオーバ検知センサ80(本発明の車両ロールオーバ検出手段に相当)が例えばシートベルトリトラクタあるいはCPU42に内蔵されて設けられている。このロールオーバ検知センサ80は自動車のロールオーバ、すなわち転回を検知するようになっている。なお、ロールオーバ検知センサ80は、自動車のロールオーバを検知できるように設けさえすれば、シートベルトリトラクタあるいはCPU42以外の自動車の他の任意の部位に設けることができる。
図18に示すように、このロールオーバ検知センサ80は、ケース81内に、中心に軸方向の貫通孔82を有するスタンディングウェイト83と、このスタンディングウェイト83の正立時に貫通孔82を透過する光(例、赤外光)を発する発光器84と、スタンディングウェイト83の正立時に貫通孔82を透過してくる透過光を受光可能な受光器85とを備えている。
スタンディングウェイト83は、断面円形の大径部83aと断面円形の小径部83bとから構成されており、大径部83aが上にかつ小径部83bが下になるようにしてケース81内に立てられて設けられている。また発光器84および受光器85はともにCPU42に接続されていて、CPU42からの制御信号により発光器84の発光が制御されるとともに、受光器85で受光した光を電気信号に変えてCPU42に供給するようになっている。
スタンディングウェイト83は、自動車がロールオーバしていない通常時は図19(a)に示すように正立した状態にセットされる。スタンディングウェイト83のこの正立状態では、発光器84の光軸、ケース81の孔(符号なし)の中心軸、スタンディングウェイト83の貫通孔82の中心軸、および受光器85の光軸が同一軸線上に位置するようになっている。したがって、この状態では発光器84から発光された光は、ケース81の孔およびスタンディングウェイト83の貫通孔82を透過して受光器85によって受光される。すなわち、受光器85によって発光器84からの光が受光されているときは、自動車がロールオーバしていない状態であり、ロールオーバ検知センサ80は自動車のこの非ロールオーバ状態を検知する。
スタンディングウェイト83は、自動車の車体が所定角以上に傾斜したロールオーバ時は図19(b)に示すようにスタンディングウェイト83の大径部83aがケース81に当接するまで更に大きく傾動する。スタンディングウェイト83のこの傾動状態では、スタンディングウェイト83の貫通孔82の中心軸が、発光器84の光軸、ケース81の孔(符号なし)の中心軸および受光器85の光軸からずれて同一軸線上に位置しないようになっている。したがって、この状態では発光器84から発光された光は、ケース81の孔を透過した後スタンディングウェイト83の貫通孔82に沿って透過するようになるので受光器85の光軸からずれてしまい、受光器85によって受光されなくなる。すなわち、発光器84からの光が受光器85に対して遮蔽されてこの受光器85によって受光されないときは、自動車がロールオーバした状態であり、ロールオーバ検知センサ80は自動車のこのロールオーバ状態を検知する。
また本実施例においては、図20に示すように自動車のロールオーバ以外においても、道路のカーブ部での急旋回時の遠心力が所定値以上であるとき、あるいは走行中の急ブレーキ時の慣性力が所定値以上であるとき、あるいはいずれの方向から自車への衝突時等の衝撃力が所定値以上であるときにも、スタンディングウェイト83が傾動して、発光器84からの光が受光器85により受光されないようにしている。
本実施例の乗員拘束保護システムにおいては、コンフォートモードと緊急モードとの2つのモードが設定されているとともに、各モードにおけるベルト巻取り力が図12に示す実施例の対応するモードと同じ値に設定されている。そして、スタンディングウェイト83が正立状態にあって、発光器84からの光が受光器85によって受光されるときは、乗員拘束保護システムはコンフォートモードに設定され、また発光器84からの光が受光器85によって受光されないときは、乗員拘束保護システムは緊急モードに設定されるようにしている。
本実施例における他の構成、ベルトテンション制御方法、制御ブロック、制御タイミングは前述の各実施例と同じであるので、それぞれそれらの説明は省略する。
なお、本実施例においては、急傾斜の坂道における登坂時や降坂時あるいはカントの大きな曲線路での走行時に車体が大きく傾動しても、スタンディングウェイト83が傾動しないように設定して、乗員拘束保護システムが不要に緊急モードに設定されないようにしている。しかし、このような車体の大傾動時にも、スタンディングウェイト83が傾動するように設定することもできる。この場合には、車体の大傾動時にも乗員拘束保護システムが緊急モードに設定されることになり、シートベルトにより乗員をより一層確実に拘束することができるようになる。
また、本実施例ではスタンディングウェイト83の小径部83bは断面が円形に形成されているが、少なくとも小径部83bを例えば長円形、楕円形、正方形、長方形、多角形等の他の種々の断面形状に形成することもできる。その場合、小径部83bをスタンディングウェイト83が所定の方向に傾動し易いような断面形状にすれば、ロールオーバ検知センサ80の特定の方向の検知感度を高くすることができる。これにより、乗員拘束保護システムのモードを車両の方向によって異ならせることができ、よりきめ細かい制御が可能となる。
更に前述の各実施例では、車両と車両前後方の物体との間の状況、車両と車両左右側方の物体との間の状況あるいは自車の状況のうち1つの状況に応じたベルトテンション制御しか行わないようになっているが、本発明は、これらの各状況のうち任意の複数の状況を組み合わせてベルトテンションの制御を行うようにすることもできる。その場合には、複数の状況に基づいて設定された複数のモードの「OR」の論理でベルトテンション制御を行うようにする。しかも、同じ時期に設定された複数のモードが異なる場合には、ベルトテンションの大きな方のモードを選択し、ベルトテンション制御を行うようにする。
更に、前述の各実施例におけるシートベルトリトラクタに用いられている、従来公知のリールシャフト4、シートベルトロック作動手段5、減速度感知手段6および付勢力付与手段8は、それぞれ従来公知の他のタイプのものを使用することもできる。また電動モータ40、中央処理装置42、物体検出手段等によりリールシャフト4の通常のウェビング巻き取りや自車の減速度を測定してリールシャフト4を制御することにより、シートベルトロック作動手段5、減速度感知手段6および付勢力付与手段8を省略することもできる。
更に、前述の各実施例では、ベルトテンション制御機構7を電動モータ40、第1歯車伝達機構38、駆動側ギヤクラッチ30、従動側ギヤクラッチ32、および第2歯車伝達機構39とから構成するものとしているが、本発明これに限定されるものではなく、CPU42によって制御され、非通電時には停止してリールシャフト4に所定値以下の回転力が加えられてもリールシャフト4の回転を阻止するとともに通電時には回動してリールシャフト4を直接回転するような、例えば特開昭59ー122385号公報に開示されている超音波モータ等のモータから構成することもできる。このようなモータを用いることにより、シートベルトロック作動手段5、減速度感知手段6、付勢力付与手段8および歯車伝達機構を省略することもできる。
本発明の乗員拘束保護システムは、ロールオーバ、急ブレーキあるいは急旋回等の車両の走行状況を検知して、その車両と物体との間の状況あるいは車両の状況に応じてシートベルトのベルトテンションを調整することにより、乗員を確実に拘束保護する乗員拘束保護システムに好適に利用することができる。
本発明に係る乗員拘束保護システムの各実施例に用いられるシートベルトリトラクタの一例を示す断面図である。 シートベルトロック作動手段が組み込まれる前の図1の右側面図である。 シートベルトロック作動手段の一部の構成要素が組み込まれた図1の右側面図である。 シートベルトロック作動手段の更に他の一部の構成要素および減速度感知手段がそれぞれ組み込まれた図1の右側面図である。 図1の左側面図である。 図5のVI-VI線に沿う断面に相当し、従動側ギヤの歯とクラッチプレートの歯とが噛み合っていない状態を示す断面図である。 前方物体検出センサの取付位置を説明する図である。 前方物体検出センサをフロントウィンドシールドに密着した状態を概略的に示し、(a)はその発光部の断面図、(b)はその受光部の断面図である。 ベルトテンション制御機構の非作動状態を概略的に示し、(a)はその平面図、(b)は従動側ギヤの歯とクラッチプレートの歯とが噛み合っていない状態を示す、図6に相当する断面図である。 ベルトテンション制御機構の作動状態の一部を概略的に示し、(a)はその平面図、(b)は従動側ギヤの歯とクラッチプレートの歯とが噛み合った状態を示す、図6に相当する断面図である。 ベルトテンション制御機構の作動状態の更に他の一部を概略的に示し、(a)はその平面図、(b)は従動側ギヤの歯とクラッチプレートの歯とが噛み合った状態を示す、図6に相当する断面図である。 乗員拘束保護システムのモードを説明する図である。 乗員拘束保護システムの制御ブロックを概略的に示す図である。 乗員拘束保護システムの作動タイミングを示す図である。 本発明の他の実施例に用いられる左右側方物体検知センサの取付位置を説明し、(a)は車両の左側面を部分的に示す図、(b)は(a)におけるXVB-XVB線に沿う断面図である。 本発明の更に他の実施例に用いられる後方物体検知センサの取付位置を説明する斜視図である。 後方物体に対する乗員拘束保護システムのモードを説明する図である。 本発明の更に他の実施例に用いられるロールオーバ検知センサを部分的に切り欠いて示す斜視図である。 図18に示すロールオーバ検知センサの作動を説明し、(a)は非作動状態を示す図、(b)は作動状態を示す図である。 ロールオーバ検知センサの他の作動を説明する図である。
符号の説明
1…シートベルトリトラクタ、2…フレーム、2a…右側壁、2b…左側壁、3…シートベルト、4…リールシャフト、5…シートベルトロック作動手段、6…減速度感知手段、7…ベルトテンション制御機構、8…付勢力付与手段、9…ラチェットホイール、10…パウル、24…駆動軸、25…ケース本体、26…ギヤホールド、27…摩擦レバー、28…摩擦プレート、29…回動軸、30…駆動側ギヤクラッチ、30b…カム面、32…従動側ギヤクラッチ、33…クラッチプレート、33b…膨出部、34…クラッチスプリング、35…レバー部材、36…スプリングクラッチ、37…U字状スプリング、38…第1歯車動力伝達機構、39…第2歯車動力伝達機構、40…電動モータ、41…うず巻きばね、42…中央処理装置(CPU)、43…前方物体検出センサ、49…ランプ(LEDまたはLD)、52…光学センサ(PSD)、56…センサユニット、57…入力演算処理部、58…制御部、59…制御対象およびセンサ、60…発光側展開ロジック回路、61…受光側プリアンプ、62…タイミングコントローラ、63…オートゲインコントロール手段、64…アナログ・デジタル変換器(A/D)、65…演算部、66…CPU制御部、67…ベルトテンション検知センサ、68…シートベルトリトラクタ機構部、69…バックルスイッチ、70…車速センサ、75…左側方物体検知センサ、76…右側方物体検知センサ、79…後方物体検知センサ、80…ロールオーバ検知センサ、81…ケース、82…貫通孔、83…スタンディングウェイト、84…発光器、85…受光器

Claims (4)

  1. シートベルトを巻取るリールシャフトと、該リールシャフトの両端を回動自在に支持するフレームと、該フレームおよびリールシャフト間に配設されて通常時リールシャフトの回動を許容し必要時に作動してリールシャフトのシートベルト引出し方向の回動を阻止するロック手段とを備えているシートベルトリトラクタが用いられて、前記必要時に前記シートベルトの引出しを阻止して乗員を拘束保護する車両の乗員拘束保護システムにおいて、
    更に、前記リールシャフトを回動することでベルトテンションを制御するベルトテンション制御機構と、前記車両のロールオーバを検出する車両ロールオーバ検出手段と、該車両ロールオーバ検出手段からの状況検出信号に基づいて前記車両のロールオーバを判断し、その判断結果に基づいて前記ベルトテンション制御機構を制御することで、前記シートベルトのベルトテンションを前記車両のロールオーバの状況に応じた所定値に制御する中央処理装置とを備え、
    前記ベルトテンション制御機構は、前記中央処理装置によって制御されるモータと、該モータの駆動力を前記リールシャフトに伝達する歯車伝達機構とから構成されており、
    前記車両の状況に応じた所定数のモードが設定されており、前記ベルトテンションの前記設定値が各モード毎に設定されていることを特徴とする車両の乗員拘束保護システム。
  2. 前記所定数のモードとして、前記ベルトテンションの前記設定値が0に設定されるコンフォートモードと、前記ベルトテンションの前記設定値が第1の所定値に設定される警戒モードと、前記ベルトテンションの前記設定値が前記第1の所定値よりも大きな第2の所定値に設定される警報モードとの3つのモードが設定されていることを特徴とする請求項記載の車両の乗員拘束保護システム。
  3. 前記所定数のモードとして、前記ベルトテンションの前記設定値が0に設定されるコンフォートモードと、前記ベルトテンションの前記設定値が第1の所定値に設定される警戒モードと、前記ベルトテンションの前記設定値が前記第1の所定値より大きな第2の所定値に設定される警報モードと、前記ベルトテンションの前記設定値が前記第2の所定値より大きな第3の所定値に設定される緊急モードとの4つのモードが設定されていることを特徴とする請求項記載の車両の乗員拘束保護システム。
  4. 前記モータは、前記中央処理装置によって制御され、非通電時には停止して前記リールシャフトに所定値以下の回転力が加えられても前記リールシャフトの回転を阻止するとともに通電時には回動して前記リールシャフトを回転するような、超音波モータ等のモータであることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1記載の車両の乗員拘束保護システム。
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