JP3928077B2 - 多層プリント配線板のビルドアップ法 - Google Patents

多層プリント配線板のビルドアップ法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、多層プリント配線板のビルドアップ法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
多層プリント配線板のビルドアップ法において、多層化の方法として種々の手順が考えられるが、例えば、6層プリント配線板を例にすると、次の▲1▼〜▲8▼の手順で6層化することもできる。
▲1▼ 両面銅張り積層板1を準備する。
▲2▼ この両面銅張り積層板1の所定箇所に貫通穴2aを明け、この貫通穴2aの壁面に金属めっきを施して両面銅箔1a−1a間を導通させた金属めっきスルーホール2bを形成し、更に両面銅箔1a,1aにそれぞれ所望の回路パターン2c,2cをプリント形成して、両面に回路層2d,2dを設けた両面プリント回路板2を得る。
▲3▼ この両面プリント回路板2の外表面に絶縁樹脂を塗工して、両面に絶縁層3a,3aを設けた内層回路入り絶縁板3を得る。
▲4▼ この内層回路入り絶縁板3の所定箇所に内層回路パターンに至る穴(インタスティシャルバイアホール)4aを明け、所定箇所に貫通穴4bを明け、インタスティシャルバイアホール4aの壁面、貫通穴4bの壁面、内層回路入り絶縁板3の表面および裏面に金属めっき膜4cを形成して内層回路入り両面金属めっき板4を得る。
▲5▼ この内層回路入り両面金属めっき板4の表面および裏面の金属めっき膜4cにそれぞれ所望の回路パターン5a,5aをプリント形成して、両面に回路層5b,5bを設けた内層回路入り両面プリント回路板5を得る。
▲6▼ この内層回路入り両面プリント回路板5の外表面に絶縁樹脂を塗工して両面にそれぞれ絶縁層6a,6aを形成した内層回路入り絶縁板6を得る。
▲7▼ この内層回路入り絶縁板6の所定箇所に貫通穴7aを明け、貫通穴7aの壁面、内層回路入り絶縁板6の表面および裏面に金属めっき膜7bを形成して内層回路入り両面金属めっき板7を得る。
▲8▼ この内層回路入り両面金属めっき板7の表面および裏面の金属めっき膜7bにそれぞれ所望の回路パターン8a,8aをプリント形成して、両面に回路層8b,8bを設けた6層プリント回路板8を得ることができる。
【0003】
ところで、近年、電子機器の小型化、軽量化に伴い、電子機器に用いられるプリント配線板はプリント配線密度の高密度化、プリント配線層の高多層化の要求が大になっている。係る要求に対し、一般的に、プリント配線パターンを微細化させると共に多層化して、各導体層間をめっきインタスティシャルバーイヤホールやめっきスルーホール等の手段を用いて電気的に接続することが行われている。
このような高密度・高多層化される多層プリント配線板において、内層回路用のプリント回路板表面には、微細なプリント回路パターンによる複雑な凹凸面や層間接続としてのめっきインタスティシャルバイヤホールやめっきスルーホールなどの穴壁面、等々が多数存在し、このような凹凸面や穴壁面は微細空間を形成するので、前述のビルドアップ法における絶縁層を形成する際に、微細空間に隈無く絶縁樹脂を充填できず、充填できなかった箇所に微細な空気溜りを生じる。このような微細な空気溜りが発生すると、後の加熱を伴う工程例えば半田付け工程において、半田溶融温度(約240℃)に加熱する際に微細な空気溜りの空気であっても熱膨張による内圧力が高くなり絶縁層が破られて、局所的に導体層のプリント回路パターンを剥離させるいった問題があった。
【0004】
特開平9−141159号公報には、プリント配線板の貫通穴或は導通穴内に高率良く樹脂溶液を充填し、且つ樹脂液内に気泡を巻き込む等の板表面の塗布欠陥を生じないようにするものとして、塗布液を循環送流しつつ、塗布液中で噴射ノズルより噴出させて吹き付ける含浸塗布装置の提案がある。
この提案は、内層回路用プリント回路板の導通孔や表面と塗布樹脂との界面に生じ易い空気溜りを塗布樹脂液の環流と共に、噴射ノズルより塗布樹脂液を噴出させて、塗布樹脂液の環流の力および塗布樹脂液の噴射流の力により取り除こうとするものである。
しかし、被塗布体の微細空間部においては空気溜りを十分に少なくできていない状況にある。
【0005】
【発明が解決しようとしている課題】
発明者等は、係る状況に鑑み、塗布樹脂液を浸漬塗布する際における空気の抱き込みを極力少なくすることを課題にして、塗布樹脂液の濡れ性に着目し、鋭意検討を重ねてこの発明を成した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記課題を解決するために、内層回路となるプリント回路板を熱硬化性樹脂ワニス中に浸漬する前に、内層回路となるプリント回路板に有機溶剤を用いて濡れ性を付与する手段を設けてある。
先ず、請求項1においては、内層回路となるプリント回路板に、順次、絶縁層、回路層を積み上げて多層化する多層プリント配線板のビルドアップ法において、絶縁層が内層回路となるプリント回路板を有機溶剤の飽和蒸気に暴露させ、同一有機溶剤で噴霧し、同一有機溶剤に浸漬させて内層回路となるプリント回路板表面に濡れ性を付与した後、この濡れ性が付与されたプリント回路板を熱硬化性樹脂ワニス中に浸漬して表面に熱硬化性樹脂浸漬塗布膜を形成し、この熱硬化性樹脂浸漬塗布膜を加熱硬化させてなる熱硬化性樹脂製絶縁層に形成するようにしたのでである。
また、請求項2においては、内層回路となるプリント回路板として、導電層間接続用のスルーホールめっきを設けたものを用いることができるようにしたものである。
また、請求項3においては、有機溶剤として、水に対する溶解性を有し、表面張力が水の表面張力より小であり、且つ沸点が30乃至90℃であるものを用いることができるようにしたものである。
【0007】
内層回路となるプリント回路板に濡れ性を付与させるために用いる有機溶剤としては、水溶性であり、水の表面張力(72.6dyn/cm)より小さい表面張力を有し、且つ沸点が熱硬化性樹脂ワニスに用いる有機溶剤の沸点より低いものを用いる。
このような要件を満たす有機溶剤として、例えば塩化メチレン(表面張力28.1dyn/cm、沸点39.75℃)、アセトン(表面張力23.7dyn/cm、沸点56.12℃)、メタノール(表面張力22.6dyn/cm、沸点64.51℃)、エタノール(表面張力22.3dyn/cm、沸点78.32℃)、メチルエチルケトン(表面張力24.0dyn/cm、沸点79.67℃)、イソプロピルアルコール(表面張力21.7dyn/cm、沸点82.40℃)などを好適に用いることができる。
このような有機溶剤は蒸気、霧、液の状態で用いる。蒸気とは溶剤の気体分子状態にあるものを云う。霧とは溶剤の粒子状態にあり、概ね空気中に浮く程度の粒子径のものを云う。
【0008】
この発明に用いる熱硬化性樹脂としては、プリント配線板用として使用できるものであれば、特に限定することなく使用することができる。
熱硬化性樹脂ワニスは、その粘度が低いほど空気の抱き込みが少なくなり、作業性も良いが、浸漬塗布膜の厚みが薄くなり、一回の浸漬では所望の絶縁特性が得られなくなる。好ましい粘度は300乃至3000mPa・sの範囲である。
また、熱硬化性樹脂ワニスは環流させてもよいが環流速度が速いと乱流を生じて含浸塗布膜の厚みが不均一になり易いので、好ましい環流速度は10乃至83mm/分の範囲である。
また、内層回路となるプリント回路板を熱硬化性樹脂ワニス中に浸漬する速度は速いほど空気を抱き込み易くなり、遅いほど空気を抱き込むことは少なくなるが時間を要すので、好ましい浸漬速度は500mm/分以下である。
【0009】
【作用・効果】
(1)内層回路となるプリント回路板を有機溶剤の飽和蒸気に曝露させると、有機溶剤が気体分子状態になっているため、プリント配線板表面の平坦部に拡散するは勿論のこと、凹凸面やスルーホール金属めっきの穴壁面等から形成される微細空間部にも拡散でき、それぞれの表面に有機溶剤を気体分子状態にて付着させることができる。
(2)有機溶剤を気体分子状態にて付着させた内層回路となるプリント回路板に有機溶剤を噴霧すると、平坦部に霧滴の状態で付着するは勿論のこと、微細空間部の凹凸面やスルーホール金属めっきの穴壁面に既に有機溶剤が気体分子状態で付着しているため、その上に霧滴の状態で容易に付着させることができる。
(3)プリント配線板の平坦部や凹凸面、スルーホール金属めっきの穴壁面等に付着した有機溶剤からなる霧滴は、付着した場所の水分を溶解させて湿潤し、水分子が単独で存在する割合を少なくすることができる。
尚、有機溶剤はその表面張力が水の表面張力(=72.6dyn/cm、20℃)より小さいものほど水分を容易に溶解させるので、より湿潤させることになる。
(4)プリント配線板の平坦部や凹凸面、スルーホール金属めっきの穴壁面等を有機溶剤の霧滴により湿潤させたプリント配線板を液状の同一有機溶剤中に浸漬すると、有機溶剤液が平坦部は勿論のこと、微細空間を構成する凹凸面やスルーホールめっき穴部の壁面にも容易に濡れ、表面に付着した水分をほぼ完全に有機溶剤に溶解させることができると共に、濡れ性を付与できる。
(5)有機溶剤により濡れ性が付与された内層回路となるプリント回路板を、熱硬化性樹脂ワニス中に浸漬すると、濡れ性を付与した有機溶剤により、熱硬化性樹脂ワニスが平担面は勿論のこと微細空間を構成する凹凸面やスルーホールめっき穴部の壁面にも容易に濡れて隈なく浸入させることができる。
(6)内層回路となるプリント回路板の表面に浸漬塗布した熱硬化性樹脂ワニスを乾燥させて、熱硬化性樹脂の浸漬塗膜を形成する。この浸漬塗膜は乾燥により形成できるものであるが、乾燥のみを単独で行うのでなく、熱硬化性樹脂を加熱して反応硬化させる工程における昇温の過程において実質的な乾燥工程を経ることにより実現させてもよい。尚、この乾燥の際には有機溶剤が系外に蒸発する。
(7)浸漬塗布膜を加熱すると、熱硬化性樹脂が一旦溶融軟化して反応硬化するので、溶融軟化の際に流動し微細空間にまで熱硬化性樹脂が流入するので、内層回路となるプリント回路板の凹凸面や穴壁面によって構成される微細空間部における空気溜りをより少なくできる。
以下この発明を実施例・比較例を用いて具体的に説明する。
【0010】
【実施例1】
銅箔厚み18μm、板厚0.8mmのガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張り積層板の両面にプリント回路パターンを形成すると共に、0.3mmドリル穴を明け、18μm無電解めっき及び電気めっきによるスルーホールめっきを形成し、銅箔導体回路面を黒化処理した内層回路となるプリント回路板を準備する。
また、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂(1.2エポキシ当量)、及び無機充填剤(ケイ酸アルミニウム)に、有機溶剤(メチルエチルケトン表面張力24.0dyn/cm、沸点79.64℃)を加え攪拌し、樹脂固形分80%、液温20℃における粘度1500mPa・sに調整した熱硬化性樹脂ワニスを準備する。
予め準備した内層回路となるプリント回路板を塩化メチレン(表面張力28.1dyn/cm、沸点39.75℃)飽和蒸気に2分間曝露させ、塩化メチレンを1分間噴霧し、塩化メチレン溶液に1分間浸漬して、表面に濡れ性を付与した。
尚、この塩化メチレンは表面張力(=28.1dyn/cm)が熱硬化性樹脂ワニスに用いたメチルエチルケトンの表面張力(=24.0dyn/cm)と共に水の表面張力(=72.6dyn/cm)の半分以下と小さく、沸点(=39.75℃)が熱硬化性樹脂ワニスに用いたメチルエチルケトンの沸点(=79.64℃)の約半分と低いものを用いている。
予め準備した熱硬化性樹脂ワニスを浸漬塗布装置の浸漬槽内に投入し、浸漬槽内の熱硬化性樹脂ワニス中に上記濡れ性を付与した内層回路となるプリント回路板を昇降機を用いて300mm/分の速度で浸漬する。浸漬槽内の熱硬化性樹脂ワニスを50mm/分の流度で環流させ、100mm/分の速度で引き上げ、これを温度150〜180℃に昇温し1時間加熱して熱硬化性樹脂を反応硬化させて表面に熱硬化樹脂絶縁層を形成した厚み1.0mmの内層回路入り絶縁板を得た。
この内層回路入り絶縁板の回路パターンと絶縁層との間の接着力及びはんだ耐熱性をJIS−C6481に準拠して測定し、内層回路となるプリント回路板の微細空間を形成する部位における絶縁層との接着界面における空気溜りの有無を電子顕微鏡で観察し、それ等の結果を表1に示した。
【0011】
【比較例1】
内層となるプリント回路板を塩化メチレン飽和蒸気に曝露させる工程を省略した以外は実施例1と同様に行った。
【0012】
【比較例2】
内層となるプリント回路板の表面に塩化メチレンを噴霧する工程を省略した以外は実施例1と同様に行った。
【0013】
【比較例3】
内層となるプリント回路板を塩化メチレン溶液に浸漬する工程を省略した以外は実施例1と同様に行った。
【0014】
【比較例4】
内層となるプリント回路板を塩化メチレン飽和蒸気に曝露させる工程、塩化メチレンを噴霧する工程、塩化メチレン溶液に浸漬する工程を省略した以外は実施例1と同様に行った。
【0015】
【表1】
Figure 0003928077
【0016】
実施例は、比較例に較べて、絶縁層と導電層との界面に空気溜りが少なく、接着強度が大であり、はんだ耐熱性に優れたものであると云うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ピルドアップ法による6層プリント配線板の説明図である。
【符号の説明】
1 :両面銅張り積層板
1a,1a:それぞれ銅箔
2 :両面プリント回路板
2a :貫通穴
2b :金属めっきスルーホール
2c,2c:それぞれ回路パターン
2d,2d:それぞれ導体層
3 :内層回路入り絶縁板
3a,3a:それぞれ絶縁層
4 :内層回路入り両面めっき板
4a :インタスティシャルバスアホール
4b :貫通穴
4c :金属めっき膜
5 :内層回路入り両面プリント回路板
5a,5a:それぞれ回路パターン
5b,5b:それぞれ導体層
6 :内層回路入り絶縁板
6a,6a:それぞれ絶縁層
7 :内層回路入り両面めっき板
7a :貫通穴
7b :金属めっき膜
8 :6層プリント回路板
8a,8a:それぞれ回路パターン
8b,8b:それぞれ導体層

Claims (3)

  1. 内層回路となるプリント回路板に、順次、絶縁層、回路層を積み上げて多層化する多層プリント配線板のビルドアップ法において、前記絶縁層が内層回路となるプリント回路板を有機溶剤の飽和蒸気に曝露させ、同一有機溶剤で噴霧し、同一有機溶剤に浸漬させて内層回路となるプリント回路板に濡れ性を付与した後、該濡れ性が付与されたプリント回路板を熱硬化性樹脂ワニス中に浸漬して表面に熱硬化性樹脂浸漬塗布膜を形成し、該表面の熱硬化性樹脂浸漬塗布膜を加熱硬化させてなる熱硬化樹脂絶縁層であることを特徴とする多層プリント配線板のビルドアップ法。
  2. 層回路となるプリント回路板として、導電層間接続用スルーホールめっきを設けたものを用いることをことを特徴とする請求項1記載の多層プリント配線板のビルドアップ法。
  3. 有機溶剤として、水に対する溶解性を有し、表面張力が水の表面張力より小であり、且つ沸点が30乃至90℃であるものを用いることを特徴とする請求項1または請求項2記載の多層プリント配線板のビルドアップ法。
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