JP3927685B2 - 新規な炭化水素アルコール、炭化水素エポキシ樹脂およびその製造法 - Google Patents

新規な炭化水素アルコール、炭化水素エポキシ樹脂およびその製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種樹脂原料や添加剤として最適な新規な炭化水素アルコール、該炭化水素アルコールより誘導される炭化水素エポキシ樹脂および各樹脂の製法に関する。さらに詳しくは、本発明は、飽和炭化水素基を結節基とし水酸基含有飽和環状炭化水素基を繰り返し単位とする炭化水素アルコールおよび該炭化水素アルコールから誘導されるエポキシ樹脂に関する。また、本発明は、特定のフェノール類と炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和炭化水素とのアルキレーション反応で得られる特定の炭化水素・フェノール樹脂のヒドロキシフェニル基を核水素化することを特徴とする該炭化水素アルコールの製造方法および該炭化水素アルコールをグリシジル化することを特徴とする炭化水素エポキシ樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
分子内に複数の水酸基を有する脂環式多価アルコールは樹脂原料および樹脂改質成分として種々の分野で活用されてきた。
例えば、ビスフェノール類の水素化生成物である水素化ビスフェノール類は、脂環式二価アルコールの一種であるが、ビスフェノール−Aを水素化して得られる水素化ビスフェノール−Aは、これをフタル酸、マレイン酸、アジピン酸等との二塩基酸と重縮合させると耐熱性、耐湿性を有するポリエステル樹脂となり、各種材料として実用化されている。
【0003】
水素化ビスフェノール−Aをエピクロルヒドリンと反応させた化合物は末端にエポキシ基を有する脂環式エポキシ樹脂として商品化されており、耐候性が良い点から屋外用耐候性粉末塗料用原料として重要視されている。また、同エポキシ樹脂は、電気特性に優れた低粘度エポキシ樹脂として電子産業でも用いられている。
他の水素化ビスフェノール類や水素化トリスフェノール類についても同様の用途に使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
電子産業を中心とした科学技術の進歩はめざましく、各製品とその原料に対する要求性状は益々厳しくなってきており、上述した水素化ビスフェノール類、水素化トリスフェノール類、これら脂環式アルコール類を原料とするポリエステル樹脂、エポキシ樹脂では、耐湿性、耐候性、耐熱性、電気特性を満足できないという問題が出てきており、これらの問題を解決しうる新規な脂環式多官能アルコール類および脂環式多官能エポキシ樹脂の開発が待望されている。
例えば、これら脂環式多価アルコール類から誘導されるエポキシ樹脂は粉体塗料用等に用いられてきたが、耐候性、耐水性、分散性等が悪く実用上問題が多いことが指摘されていた。
【0005】
本発明者らは、特開平4−300916号公報や特開平7−17887号公報においてフェノール類と炭素−炭素二重結合を2個以上含む不飽和炭化水素化合物を反応させて得られる炭化水素・フェノール樹脂類を開発し、電子材料用途での使用を提案してきた。該フェノール樹脂は原料の不飽和炭化水素としてブタジエンやイソプレンなどの鎖状の不飽和炭化水素を用いると溶解性、反応性、熱安定性に優れ、ジシクロペンタジエンやテトラヒドロインデンなどの環状の不飽和炭化水素を用いると、ヒドロキシフェニル基をかさの高い疎水性の脂環式飽和炭化水素基で結節した構造の炭化水素・フェノール樹脂となるため、これを用いた硬化物は耐湿性、耐熱性および電気特性に優れている。
【0006】
本発明の第1の目的は、フォトレジストをはじめとする各種工業用品の原料、各種高分子材料の添加剤としても有用であるエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂などの各種樹脂原料や添加剤として最適な新規な炭化水素アルコールを提供することであり、本発明の第2の目的は、該炭化水素アルコールより誘導される、電気特性、耐熱性、耐湿性に優れ、プリント配線板、電子部品封止材、塗料、各種シーリング材の原料として有用である炭化水素エポキシ樹脂を提供することであり、本発明の第3の目的は、これらの樹脂を容易に製造できる製法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上述した従来の脂環式多価アルコールが持つ欠点を解消した炭化水素アルコールを開発すべく鋭意検討した結果、該炭化水素・フェノール樹脂を金属触媒存在下で接触水素化すると、耐湿性、耐熱性、耐候性を改善できるエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂の原料として有望な新規の炭化水素アルコールとなることを見出し本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明の請求項1の発明は、一般式(1)
【化9】
hc−(R1 −hc)n−R1 −hc
(式中、hcは炭素数6〜16の水酸基含有飽和環状炭化水素基を示す。なお、hc中の水酸基は1〜3個であり、飽和環状炭化水素基に直接結合する。R1 は炭素数4〜25の飽和炭化水素基である。なお、R1 に結節する2個のhcはR1 中の同一の炭素には結合しない。nは0または1〜30の整数である。)
で表される炭化水素アルコールに関する。
【0009】
本発明の請求項2の発明は、一般式(2)
【化10】
hc−(R2 −hc)n−R2 −hc
(式中、hcは炭素数6〜16の水酸基含有飽和環状炭化水素基を示す。なおhc中の水酸基は1〜3個であり、環状飽和炭化水素基に直接結合する。R2 は炭素数5〜25の飽和多環炭化水素基である。なお、R2 に結節する2個のhcはR2 中の同一の炭素には結合しない。nは0または1〜30の整数である。)
で表される炭化水素アルコールに関する。
【0010】
本発明の請求項3の発明は、一般式(3)
【化11】
hp−(R1 −hp)n−R1 −hp
(式中、hpは炭素数6〜16のポリヒドロキシフェニル基を示す。なお、hp中の水酸基はフェノール性水酸基であり、hpに1〜3個結合する。フェノール性水酸基は1〜3個である。R1 は炭素数4〜25の炭化水素基である。なお、R1 に結節する2個のhpはR1 中の同一の炭素には結合しない。nは0または1〜30の整数である。)
で表される炭化水素・フェノール樹脂を、金属触媒存在下、水素化することを特徴とする請求項1記載の炭化水素アルコールの製造方法に関する。
【0011】
本発明の請求項4の発明は、一般式(4)
【化12】
hp−(R2 −hp)n−R2 −hp
(式中、hpは炭素数6〜16のポリヒドロキシフェニル基を示す。なお、hp中のフェノール性水酸基は1〜3個である。R2 は炭素数5〜25の多環炭化水素基である。なお、R2 に結節する2個のhpはR2 中の同一の炭素には結合しない。nは0または1〜30の整数である。)
で表される炭化水素・フェノール樹脂を、金属触媒存在下、水素化することを特徴とする請求項2記載の炭化水素アルコールの製造方法に関する。
【0012】
本発明の請求項5の発明は、一般式(5)
【化13】
gc−(R1 −gc)n−R1 −gc
(式中、gcは炭素数6〜16のX−O−基含有飽和環状炭化水素基を示す。なお、Xはグリシジル基を示し、gc中のX−O−基は1〜3個であり、飽和環状炭化水素基に直接結合する。R1 は炭素数4〜25の飽和炭化水素基である。なお、R1 に結節する2個のgcはR1 中の同一の炭素には結合しない。nは0または1〜30の整数である。)で表される炭化水素エポキシ樹脂に関する。
【0013】
本発明の請求項6の発明は、一般式(6)
【化14】
gc−(R2 −gc)n−R2 −gc
(式中、gcは炭素数6〜16のX−O−基含有飽和環状炭化水素基を示す。なお、Xはグリシジル基を示し、gc中のX−O−基は1〜3個であり、飽和環状炭化水素基に直接結合する。R2 は、炭素数5〜25の飽和多環炭化水素基である。なお、R2 に結節する2個のgcはR2 中の同一の炭素には結合しない。nは0または1〜30の整数である。)
で表される炭化水素エポキシ樹脂に関する。
【0014】
本発明の請求項7の発明は、前記一般式(1)
【化15】
hc−(R1 −hc)n−R1 −hc
(式中、hcは炭素数6〜16の水酸基含有飽和環状炭化水素基を示す。なお、hc中の水酸基は1〜3個であり、飽和環状炭化水素基に直接結合する。R1 は炭素数4〜25の飽和炭化水素基である。なお、R1 に結節する2個のhcはR1 中の同一の炭素には結合しない。nは0または1〜30の整数である。)
で表される炭化水素アルコールとエピハロヒドリンを塩基存在下で反応させることを特徴とする請求項5記載の炭化水素エポキシ樹脂の製造方法に関する。
【0015】
本発明の請求項8の発明は、前記一般式(2)
【化16】
hc−(R2−hc)n−R2−hc
(式中、hcは炭素数6〜16の水酸基含有飽和環状炭化水素基を示す。なおhc中の水酸基は1〜3個であり、飽和環状炭化水素基に直接結合する。R2 は炭素数5〜25の飽和多環炭化水素基である。なお、R2 に結節する2個のgcはR2 中の同一の炭素には結合しない。nは0または1〜30の整数である。)
で表される炭化水素アルコールとエピハロヒドリンを塩基存在下で反応させることを特徴とする請求項6記載の炭化水素エポキシ樹脂の製造方法に関する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を更に説明する。
本発明で得られる炭化水素アルコールは、水酸基含有飽和環状炭化水素基を飽和炭化水素基で結節した構造を有する脂環式多価アルコールであり、従来の水素化ビスフェノールに比べ、耐候性、耐湿性、耐熱性、電気特性等の特性に優れ、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂原料として有用である。
この理由は、従来の脂環式多価アルコールは原料のフェノール樹脂がいずれもケトン類、アルデヒド類を結合剤として製造されているため、これを水素化して得られる脂環式多価アルコールは、ヒドロキシアルカン骨格が同一の炭素に結合した1、1―ビスヒドロキシアルカン構造であるのに対して、本発明の炭化水素アルコールは、ヒドロキシアルカン骨格が異なる炭素に結合しているため、熱安定性、耐酸化性に優れているためである。
本発明の炭化水素アルコールは結節基が鎖状の炭化水素基の場合、従来の脂環式多価アルコール以上に低粘度、低吸湿性という特徴を有する。一方、結節基が多環飽和炭化水素の場合、これを原料とする硬化物はガラス転移温度が高く、耐熱性、耐湿性、電気特性に優れるという特徴を有している。該炭化水素アルコールから誘導される炭化水素エポキシ樹脂も従来の脂環式エポキシ樹脂にない同様の特徴を有している。
これらの炭化水素アルコールおよびこれから誘導されるエポキシ樹脂の具体例としては次の式(7)〜式(9)で表される化合物が挙げられる。なお各式中Aが水素の場合が炭化水素アルコールで、Aがグリシジル基の場合が炭化水素エポキシ樹脂である。
【0017】
【化17】
Figure 0003927685
【0018】
【化18】
Figure 0003927685
【0019】
【化19】
Figure 0003927685
【0020】
本発明の炭化水素アルコールは、炭化水素・フェノール樹脂を核水素化反応することにより製造する。
原料の炭化水素・フェノール樹脂は以下の方法で製造できる。
すなわち、酸触媒の存在下にて、フェノール性水酸基を1〜3個有する炭素数6〜16のフェノール類と炭素−炭素二重結合を2個以上有する炭素数4〜25の不飽和炭化水素を反応させることで製造する。
【0021】
該不飽和炭化水素としては、イソプレン、ブタジエン、ピペリレン、ヘキサジエン、オクタトリエンなどの炭素数4〜25の非環状ポリエン類、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、リモネン、ピネン、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエンなどの炭素数5〜25の脂環式不飽和炭化水素、ジビニルベンゼンなどの芳香族ジエン類およびこれらの不飽和炭化水素のディールス・アルダー反応生成物を挙げることができる。使用に際しては単独若しくは混合物として用いることができる。
【0022】
これらの化合物の多くは、いずれもEPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・メチレンゴム)の第三成分である5−エチリデンノルボルネンの製造プラントにおける原料、中間原料または副生物で、工業的に安価に入手することができる。
【0023】
炭化水素・フェノール樹脂として、結節基として環状炭化水素基を希望する場合は、通常、原料の不飽和炭化水素は通常、環状の炭化水素を用いるが、オクタトリエンなどの非環状の不飽和炭化水素を用いてもアルキル化反応とともに環化反応が起こり所望の環状炭化水素・フェノール樹脂を製造することができる。
【0024】
該フェノール類としては、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−イソプロピルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−sec−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、α−ナフトール、β−ナフトール等の一価フェノール類;レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1’−ビス(ジヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(ジヒドロキシナフチル)メタン、テトラメチルビフェノール、ビフェノール等の二価フェノール類;トリスヒドロキシフェニルメタン等の三価フェノール類及びこれらの混合物等を好ましく挙げることができる。特にフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、α−ナフトール、β−ナフトール及び2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン等は経済性及び製造の容易さの点から望ましい。
【0025】
該フェノール類と該炭化水素との仕込み割合は、該フェノール類を該炭化水素に対して通常0.8〜12倍モル当量、好ましくは1〜8倍モル当量用いることが望ましい。該フェノール類の仕込み割合が0.8倍モル当量未満の場合には、該炭化水素の単独重合が併発し、12倍モル当量を超える場合には、未反応のフェノール類の回収が困難となるので好ましくない。
【0026】
該フェノール類と該炭化水素とを反応させる際に用いる酸触媒としては、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素のエーテル錯体、水錯体、アミン錯体、フェノール錯体またはアルコール錯体等の三フッ化ホウ素錯体;三塩化アルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド等のアルミニウム化合物;塩化鉄;四塩化チタン;硫酸;フッ化水素;トリフルオロメタンスルホン酸等を好ましく使用することができ、特に活性と触媒の除去の容易さの点から三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素錯体が好ましく、さらには三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素・フェノール錯体が最も好ましい。
【0027】
該酸触媒の使用量は特に限定されるものではなく、使用する触媒により適宜選択することができるが、例えば三フッ化ホウ素・フェノール錯体の場合は、炭化水素100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部とするのが好ましい。
【0028】
該フェノール類と該炭化水素との反応は、溶剤を使用しても使用しなくても実施することができ、溶剤を使用しない場合は該フェノール類を該炭化水素に対して等モル当量以上用いるのが好ましく、特に3〜12倍モル当量用いるのが好ましい。溶剤を使用する場合、該溶剤としては、反応を阻害しない溶剤であれば特に制限されないが、特に好ましい溶剤としてはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物等が挙げられる。
【0029】
前記反応の反応温度は、使用する酸触媒の種類により異なるが、例えば三フッ化ホウ素・フェノール錯体を使用した場合は、通常20〜170℃、好ましくは50〜150℃である。反応温度が170℃を超える場合には、触媒の分解又は副反応が生じ、また20℃未満の場合には、反応に長時間を要し、経済的に不利であるので好ましくない。
【0030】
また前記反応において、反応を円滑に進行させるためには、系内の水分をできるだけ少なくするのが好ましく、特に100重量ppm以下に保つことが好ましい。更に前記反応においては、前記炭化水素を逐次的に添加しながら重合を行うのが、前記炭化水素の単独重合の防止、並びに反応熱制御の点で好ましい。
【0031】
本製造方法においては、前記反応終了後、触媒の失活を行う。
失活の手段は特に制限されないが、最終的に得られる樹脂中のホウ素、フッ素等のイオン性不純物の残存量が100ppm以下となるような手段を用いるのが合成上好ましい。
この目的のために用いる試薬としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはそれらの酸化物、水酸化物、炭酸塩、水酸化アンモン、アンモニアガス等無機塩基類等を用いることもできるが、処理が簡潔で速く、かつ処理後のイオン性不純物の残存量も少ないハイドロタルサイト類を用いるのが好ましい。
本製法においては、ハイドロタルサイト類等で酸触媒を失活および吸着した後、酸触媒を吸着したハイドロタルサイト類等をろ過除去して、触媒残差を全く含まない反応液を回収し、次いで反応液を蒸留濃縮することにより高純度の炭化水素・フェノール樹脂を得ることができる。
【0032】
次に、本発明の炭化水素アルコールの製造方法について詳細に説明する。
前述の炭化水素・フェノール樹脂を溶媒に希釈し、金属触媒を用いて接触水素化することにより炭化水素アルコールを製造することができる。
まず前述のフェノール樹脂類を溶媒に希釈する。希釈に用いる溶媒は特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール等の低級アルコールが適しており、中でもイソプロパノール、イソブタノールを用いた場合、活性が高く好ましい。
溶媒の使用量にも特に限定はないが、通常原料の該フェノール樹脂に対して1〜2重量倍の範囲で選択される。
水素化反応は、希釈溶液中で金属触媒と炭化水素・フェノール樹脂を接触させて行う。
【0033】
用いる金属触媒は特に制限されるものではなく、反応時間や条件に応じて適宜選択でき、例えば、ニッケル系触媒、パラジウム系触媒、ルテニウム系触媒、ロジウム系触媒などを好ましく挙げることができる。中でも比較的安価で入手しやすく、反応活性の高いラネーニッケル系触媒を用いるのが特に好ましい。また、ラネーニッケルは単独で用いてもよいが、活性を高めるためにアルカリ土類金属水酸化物等の共触媒化合物を適宜添加してもよい。
【0034】
本発明におけるラネーニッケルの使用量は原料のフェノール樹脂に対して0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の範囲で用いるのが良いが、これに限定されるものではなく、反応時間をより短縮しようとする場合には、これよりも多量のラネーニッケルを用いることもできる。
反応条件は活性に応じて変更が可能だが、反応温度としては、80〜220℃、好ましくは100℃〜200℃の範囲が採用され、水素圧は2〜3kg/cm2 以上であれば、どのような圧でも構わないが、好ましくは5〜150kg/cm2 、より好ましくは40〜60kg/cm2 の範囲で行う。
反応は高圧用オートクレーブ中で、適宜希釈した原料フェノール樹脂に、所定量のラネーニッケル触媒あるいはパラジウム触媒と必要に応じてアルカリ土類金属水酸化物を供給し、オートクレーブ内を水素で置換後加熱撹拌して行う。反応の進行にしたがって水素圧が低下するので、補給を繰り返しつつ水素圧が下がらなくなることを確認した後、加熱撹拌を止めてオートクレーブを冷却する。
反応終了後、反応混合物をろ過して、触媒および触媒残残さのまったくない反応液を回収し、溶媒を蒸留濃縮して留去することにより、蒸留残の形で目的とする新規な炭化水素アルコールを得る。
【0035】
濃縮は常圧、減圧、加圧下もしくはこれらの併用のいずれで行っても良い。濃縮温度は80℃〜300℃の範囲で行うのが好ましく、より好ましくは10℃〜270℃、さらに好ましくは130℃〜250℃の範囲で行うのが良い。濃縮温度が300℃を超えると樹脂の分解、脱水反応等を併発する恐れがあるのでこの温度以下で行うのが好ましい。また、濃縮を円滑にかつ迅速にすませるため、濃縮系内に窒素もしくは水蒸気を吹き込んでも良い。
【0036】
本発明の炭化水素アルコールは、ポリエステル樹脂の原料として使用することができるが、後述のようにエポキシ樹脂原料として最適である。また、本発明の炭化水素アルコールにα、β−酸無水物で半エステル化しカルボン酸基を導入した樹脂は、短波長領域に吸収がないため、半導体レジスト原料として好ましく使用できる。特に結節基が飽和多環炭化水素骨格である炭化水素アルコールまたはこのt−ブチルエステル類は、190〜300nmで光吸収が無く、しかもドライエッチング耐性が高いため、半導体用レジスト特にArFエキシマレーザー用レジスト原料として最適である。
【0037】
本発明の炭化水素エポキシ樹脂は、該炭化水素アルコールをグリシジル化することにより得ることができ、該グリシジル化反応は脂環式アルコールの場合と同様な方法を採用することができる。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基の存在下、通常10〜150℃、好ましくは30〜80℃の温度で、該炭化水素アルコールを、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン等のグリシジル化剤と反応させたのち、水洗、乾燥することにより得ることができる。この際グリシジル化剤の使用量は、炭化水素アルコールに対して好ましくは2〜20倍モル当量、特に好ましくは3〜7倍モル当量である。
また反応の際、減圧下にて、グリシジル化剤との共沸蒸留により水を留去することによって反応をより速く進行させることができる。また本発明の炭化水素エポキシ樹脂を電子分野で使用する場合、前記エポキシ樹脂において、副生する塩化ナトリウムは、水洗工程で完全に除去しておかなければならない。この際グリシジル化剤を蒸留により回収して反応溶液を濃縮した後、該濃縮物を溶剤に溶解し、水洗してもよい。該溶剤としては、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、ブチルセロソルブ等を好ましく挙げることができる。該水洗した濃縮物は、水洗後、加熱濃縮することにより、炭化水素エポキシ樹脂とすることができる。
【0038】
前記エポキシ樹脂中のエポキシ基の含量は、通常200〜500g/グラム当量、好ましくは250〜450g/グラム当量であるのが望ましい。エポキシ基の含量が500g/グラム当量未満の場合には、架橋密度が低くなりすぎるため好ましくない。
【0039】
本発明の炭化水素エポキシ樹脂を用いてエポキシ樹脂組成物として使用する場合の条件について、以下に詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(a)前記エポキシ樹脂を含めた硬化性エポキシ樹脂(以下(a)成分と称す)、(b)フェノール樹脂(以下(b)成分と称す)、(c)硬化促進剤(以下(c)成分と称す)を必須成分として含有することを特徴とする。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂組成物において(a)成分として用いる硬化性エポキシ樹脂は前記の新規炭化水素エポキシに加えて、さらに分子中にエポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する樹脂であって、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールAやノボラック樹脂から合成されるエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン等のモノまたはジエポキシド等の脂環式エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等の特殊エポキシ樹脂及びこれらのエポキシ樹脂に塩素原子や臭素原子等のハロゲン原子を導入したエポキシ樹脂等を挙げることができ、使用に際しては単独もしくはこれらのエポキシ樹脂の2種以上の混合物として用いることができる。
また前記(a)成分としては、市販品を用いることもでき、例えばノボラックエポキシ樹脂としては、商品名「エピクロンN−660」(大日本インキ化学工業(株)製)、「スミエポキシESCN−195X」(住友化学工業(株)製)、「QUATREX2410」(ダウケミカル(株)製)、「EOCN−100」(日本化薬(株)製)、「YDCN−702P」(東都化成(株)製)、特殊エポキシ樹脂としては、「YX−4000」(油化シェルエポキシ(株)製)、「EPICLON EXA−1514」、「EPICLONHP−4032」、「EPICLON EXA−1857」(大日本インキ化学工業(株)製)、「エピコート157S65」、「エピコートYL933」(油化シェルエポキシ(株)製)、「VG−3101」(三井石油化学(株)製)等が挙げられる。
【0041】
本発明のエポキシ樹脂組成物において(b)成分として用いるフェノール樹脂は特に限定されるものではないが、好ましくは前記一般式化1で示される分子量268〜2000のフェノール樹脂等を挙げることができる。また前記フェノール樹脂は、フェノール樹脂を単離していない、未反応物やフェノール樹脂以外の反応物を含むものをそのまま使用することもできる。
【0042】
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用する(c)成分の硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基との反応を促進するものであればよく、一般に半導体封止用に使用される、例えば第三級ホスフィン類、イミダゾール類、第三級アミン類等を用いることができる。具体的には、前記第三級ホスフィン類としては、例えばトリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等を好ましく挙げることができる。また前記第三級アミンとしては、例えばジメチルエタノールアミン、ジメチルベンジルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノ)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン等を好ましく挙げることができる。前記イミダゾール類としては、例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾール、1−プロピル−2−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等を挙げることができる。前記(c)成分として、特に好ましくは2−メチルイミダゾール、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、トリフェニルホスフィン、ジメチルベンジルアミン又はこれらの混合物等を挙げることができる。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用する(a)〜(c)各成分の配合割合は、(a)成分100重量部に対し、(b)成分が好ましくは20〜180重量部、さらに好ましくは30〜120重量部、(c)成分が好ましくは0.01〜7.0重量部、さらに好ましくは0.5〜5.0重量部である。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記(a)〜(c)成分に加えて、さらに(d)無機充填材(以下(d)成分と称す)を必須成分として含有することを特徴とする。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物において、必須成分として用いる(a)、(b)および(c)成分としては、前記エポキシ樹脂組成物に挙げた樹脂および化合物等をいずれも好ましく使用することができる。また(d)成分として用いる無機充填材としては、一般にシリカ粉末充填剤等を好ましく用いることができる。尚、このシリカ粉末充填剤は溶融させて用いても良い。
【0044】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用する(a)〜(d)各成分の配合割合は、(a)成分100重量部に対し、(b)成分が好ましくは20〜180重量部、さらに好ましくは30〜120重量部、(c)成分が好ましくは0.01〜7.0重量部、さらに好ましくは0.5〜5.0重量部であり、更に(d)成分の配合割合は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物全体に対して、好ましくは50〜90重量%、さらに好ましくは65〜85重量%の範囲である。
【0045】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記(a)〜(d)の各成分を必須成分として含有するが、必要に応じて前記(b)成分以外のフェノール樹脂等を含有させることもできる。前記(b)成分以外のフェノール樹脂としては、例えば商品名「タマノール−758」、「タマノール−759」(荒川化学工業(株)製)、「ECN−1280」(チバガイギー(株)社製)等のノボラック型フェノール樹脂、臭素化ノボラック型フェノール樹脂、ポリビニルフェノール、臭素化ポリビニルフェノール、テトラブロモビスフェノールA等の多価フェノール化合物等を挙げることができる。前記(b)成分以外のフェノール樹脂の使用量は、前記(b)成分100重量部に対し100重量部以下、特に50重量部以下とするのが好ましい。前記使用量が100重量部を超えると耐湿性が悪くなるので好ましくない。
【0046】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、シランカップリング剤、ブロム化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン、ヘキサブロモベンゼン等の難燃剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、天然ワックス、合成ワックス等の離型剤、シリコンオイル、ゴム等の低応力添加剤等の種々の添加剤を適宜配合することもできる。
【0047】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて成型材料を調製するには、必須成分と、また必要に応じてその他の添加剤とをミキサー等によって十分に均一に混合した後、更に熱ロールまたはニーダー等で溶融混練し、射出あるいは冷却後粉砕するなどして得ることができる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[合成例1]
炭化水素・フェノール樹脂(P−1)の合成
フェノール2000gとトルエン400gとを、還流冷却器及びリービッヒコンデンサーを備えた容量5リットルの反応器に仕込み、170℃に加熱して、トルエン350gを留出し、反応系内の水分含有量を70ppmとした。次いで、反応系を70℃まで冷却し、三フッ化ホウ素・フェノール錯体10gを添加した後、反応温度を70℃に制御しながら、水分含有量が20ppmのジシクロペンタジエン400gを1.5時間かけて徐々に滴下し、滴下終了後、100℃で5時間反応を行った。反応終了後、得られた反応物にMg0.7 Al0.3 (OH)2 (CO30.15・mH2 O(但し、0.46≦m≦0.54)で表されるハイドロタルサイト化合物(協和化学工業社製合成ハイドロタルサイト・商品名「KW−1000」)30g添加し、30分間攪拌して触媒を失活させた後、セライトを敷き詰めたろ紙を用いて反応液をろ過した。得られた反応液を210℃で減圧蒸留を行い880gのフェノール樹脂を得た。この樹脂中のフェノール残量を測定したところ10ppmであった。
【0049】
得られたフェノール樹脂(P−1)は軟化点が96℃、ガードナー色相13、残存ホウ素5ppm、フッ素は1ppm以下であった。
炭水素分析法による炭素、水素の含有量はそれぞれ、83.0%、7.6%、酸素定量法による酸素の含有量は9.5%であった。
得られた樹脂のFDマススペクトルを測定したところ、分子量320、546、771、997、1223のピークが検出され、式(10)に示した構造の分子で構成されていることが確認された。
フェノール性水酸基の含有量を、無水酢酸でアセチル化した後、逆滴定により求めたところ、フェノール性水酸基当量は170g/eqであった。
【0050】
1H−NMR分析では、δ 6.5〜7.5ppmに芳香環に結合したプロトンが、またδ 0.8〜4.0ppmに脂肪族炭化水素環に由来するプロトンがそれぞれ多重線で観測され、炭素−炭素二重結合に起因するプロトンの吸収は認められなかった。またδ 6.5〜8ppmとδ 0.8〜2.5ppmとのピーク面積比よりフェノール性水酸基の含有量を求めたところ、滴定による結果と同様にフェノール性水酸基当量は170g/eqであった。
【0051】
また、13C−NMR分析では、フェノールが二重結合にエーテル付加した場合に生じる158ppmの炭素のシグナルが観測されないことからフェノールはいずれもアルキレーションで付加していることがわかった。
【0052】
【化20】
Figure 0003927685
【0053】
炭化水素アルコール(A−1)の水素化
上記の炭化水素・フェノール樹脂(P−1)の水素化を以下の方法で行った。
撹拌器を取り付けたSUS304製の1lオートクレーブに、実施例1で得られたフェノール樹脂(P−1)170g、イソプロパノール340g、ラネーニッケル10.0gを仕込み、オートクレーブ内を水素で置換した後、180℃に昇温した。
続いて、反応系内温度を180℃に維持しながら、水素圧を60kg/cm2 に昇圧し、40kg/cm2 まで下がったら再度昇圧する工程を水素吸収が無くなるまで継続したところ、8時間後に吸収が終了した。
オートクレーブを冷却し、反応液をろ過して、触媒および触媒残さを除去した後、残留反応液を蒸留、濃縮したところ167gを得た。
【0054】
淡水素分析法による炭素、水素の含有量はそれぞれ80.2%、10.8%、酸素定量法による酸素の含有量は9.3%であった。
得られた樹脂のFDマススペクトルを測定したところ分子量332、564、795、1027、1259のピークが検出された。
得られた誘導体の、水酸基当量を測定したところ179g/eqであった。
また、 1H−NMR分析では、δ 0.8〜4.0ppmに脂肪族炭化水素環に由来するプロトンが多重線で観測されたが、炭素−炭素二重結合に起因するプロトンの吸収は認められず、δ 6.5〜7.5ppmの芳香環に結合したプロトンが消失しており、水素化が完了したことが確認された。
IRによる分析においてもP−1では3050cm-1付近に見られた芳香族のC−H伸縮に由来するピークが消失しており、得られた樹脂が目的とする淡黄色の式(11)に示した炭化水素アルコール誘導体(A−1)であることを確認した。
【0055】
【化21】
Figure 0003927685
【0056】
炭化水素エポキシ樹脂(E−1)の合成
上記の炭化水素アルコール(A−1)のグリシジル化を以下の方法で行った。
攪拌機、還流冷却器および温度計付きの2リットル4つ口フラスコに炭化水素アルコール(A−1)179gとエピクロルヒドリン700gとを仕込んだ後、溶解、攪拌し、反応系内を150mmHgの圧力に調製し、68℃に昇温した。この系に濃度48重量%の水酸化ナトリウム水溶液100gを連続的に添加しながら3.5時間反応させた。該反応により生成する水および水酸化ナトリウム水溶液の水を、水−エピクロルヒドリン共沸混合物の還流により分解し、反応系外へ連続的に除去した。反応終了後、反応系を常圧に戻し110℃の温度まで昇温して反応系の水を完全に除去した。過剰のエピクロルヒドリンを常圧下で蒸留除去し、さらに15mmHgの減圧下に140℃で蒸留を行なった。
【0057】
生成した樹脂および塩化ナトリウムの混合物に、メチルイソブチルケトン300gおよび10重量%の水酸化ナトリウム水溶液36gを加え、85℃の温度で1.5時間反応を行なった。反応終了後、メチルイソブチルケトン750gおよび水300gを加え、下層の塩化ナトリウム水溶液を分液除去した。次にメチルイソブチルケトン液層に水150gを加えて洗浄し、リン酸で中和し、水層を分離したのちさらに水800gで洗浄し水層を分離した。
次いで、メチルイソブチルケトン液層を常圧下で蒸留したのち、5mmHg、140℃で減圧蒸留を行い、下記式(12)で表される220gの炭化水素エポキシ樹脂(E−1)を得た。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は250g/当量であった。
【0058】
【化22】
Figure 0003927685
【0059】
[合成例2]
フェノール樹脂(P−2)の合成
フェノールの代わりにo−クレゾールを2300g用いた以外は、実施例1と同様に反応、精製を行い、下記式(13)で表わされるフェノール樹脂(P−2)940gを得た。
【0060】
【化23】
Figure 0003927685
【0061】
得られたフェノール樹脂(P−2)は、軟化点が89℃、ガードナー色相は11、残存ホウ素は5ppm、フッ素は1ppm以下であった。
炭水素分析法による炭素、水素の含有量はそれぞれ、83.0%、8.1%、酸素定量法による酸素の含有量は9.1%であった。
得られた樹脂のFDマススペクトルを測定したところ、分子量348、588、828、1068、1308のピークが検出され、式(13)に示した構造の分子で構成されていることが確認された。フェノール性水酸基当量は180g/eqであった。
1H−NMR分析では、δ 6.5〜7.5ppmに芳香環に結合したプロトンが、またδ 0.8〜4.0ppmに脂肪族炭化水素環に由来するプロトンが多重線で観測され、炭素−炭素二重結合に起因するプロトンの吸収は認められなかった。またδ 6.5〜8ppmとδ 0.8〜2.5ppmとのピーク面積比よりフェノール性水酸基の含有量を求めたところ、滴定による結果と同様にフェノール性水酸基当量は180g/eqであった。
【0062】
炭化水素アルコール(A−2)の合成
炭化水素・フェノール樹脂(P−2)180gを用いた以外は、実施例1と同一の方法で反応を行ったところ、下式(14)で表される目的とする淡黄色の炭化水素アルコール(A−2)182gを得た。得られた誘導体の、水酸基当量を測定したところ187g/eqであった。
【0063】
【化24】
Figure 0003927685
【0064】
淡水素分析法による炭素、水素の含有量はそれぞれ80.4%、11.0%、酸素定量法による酸素の含有量は8.6%であった。
得られた樹脂のFDマススペクトルを測定したところ分子量360、606、852、1098、1344のピークが検出された。
得られた誘導体の、水酸基当量を測定したところ186g/eqであった。
また、 1H−NMR分析では、δ 0.8〜4.0ppmに脂肪族炭化水素環に由来するプロトンが多重線で観測されたが、炭素−炭素二重結合に起因するプロトンの吸収は認められず、δ 6.5〜7.5ppmの芳香環に結合したプロトンが消失しており、水素化が完了したことが確認された。
IRによる分析においても(P−1)では3050cm-1付近に見られた芳香族のC−H伸縮に由来するピークが消失しており、得られた樹脂が目的とする淡黄色の炭化水素アルコール誘導体(A−2)であることを確認した。
【0065】
炭化水素エポキシ樹脂(E−2)の合成
上記の炭化水素アルコール(A−2)のグリシジル化を以下の方法で行った。
攪拌機、還流冷却器および温度計付きの2リットル4つ口フラスコに炭化水素アルコール(A−2)186gとエピクロルヒドリン700gとを仕込んだ後、溶解、攪拌し、反応系内を150mmHgの圧力に調製し、68℃に昇温した。この系に濃度48重量%の水酸化ナトリウム水溶液100gを連続的に添加しながら3.5時間反応させた。該反応により生成する水および水酸化ナトリウム水溶液の水を、水−エピクロルヒドリン共沸混合物の還流により分解し、反応系外へ連続的に除去した。反応終了後、反応系を常圧に戻し110℃の温度まで昇温して反応系の水を完全に除去した。過剰のエピクロルヒドリンを常圧下で蒸留除去し、さらに15mmHgの減圧下に140℃で蒸留を行なった。
【0066】
生成した樹脂および塩化ナトリウムの混合物に、メチルイソブチルケトン300gおよび10重量%の水酸化ナトリウム水溶液36gを加え、85℃の温度で1.5時間反応を行なった。反応終了後、メチルイソブチルケトン750gおよび水300gを加え、下層の塩化ナトリウム水溶液を分液除去した。次にメチルイソブチルケトン液層に水150gを加えて洗浄し、リン酸で中和し、水層を分離したのちさらに水800gで洗浄し水層を分離した。次いで、メチルイソブチルケトン液層を常圧下で蒸留したのち、5mmHg、140℃で減圧蒸留を行い、210gの下式(15)で表される炭化水素エポキシ樹脂(E−2)を得た。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は275g/当量であった。
【0067】
【化25】
Figure 0003927685
【0068】
[合成例3]
炭化水素・フェノール樹脂(P−3)の合成
ジシクロペンタジエンの代わりにテトラヒドロインデンを370g用いた以外は、実施例1と同様に反応、精製を行い、下式(16)で表わされるフェノール樹脂(P―3)550gを得た。
【0069】
【化26】
Figure 0003927685
【0070】
得られたフェノール樹脂(P−3)は、軟化点が93℃、ガードナー色相は12、残存ホウ素は5ppm、フッ素は3ppm以下であった。フェノール性水酸基当量は183g/eqであった。
炭水素分析法による炭素、水素の含有量はそれぞれ、82.2%、7.9%、酸素定量法による酸素の含有量は9.9%であった。
得られた樹脂のFDマススペクトルを測定したところ、分子量308、522、734、949のピークが検出され、式(16)に示した構造の分子で構成されていることが確認された。
フェノール性水酸基の含有量を、無水酢酸でアセチル化した後、逆滴定により求めたところ、フェノール性水酸基当量は170g/eqであった。
1H−NMR分析では、δ 6.5〜7.5ppmに芳香環に結合したプロトンが、またδ 0.8〜4.0ppmに脂肪族炭化水素環に由来するプロトンがそれぞれ多重線で観測され、炭素−炭素二重結合に起因するプロトンの吸収は認められなかった。またδ 6.5〜8ppmとδ 0.8〜2.5ppmとのピーク面積比よりフェノール性水酸基の含有量を求めたところ、滴定による結果と同様にフェノール性水酸基当量は183g/eqであった。
また、13C−NMR分析では、フェノールが二重結合にエーテル付加した場合に生じる158ppmの炭素のシグナルが観測され、エーテル化比率は10%であった。
【0071】
炭化水素アルコール(A−3)の合成
フェノール樹脂(P−3)183g、イソプロパノール400g、ラネーニッケル10.0gを仕込んだ以外は実施例1と同様に反応を行い、下式(17)で表される目的とする淡黄色の炭化水素アルコール(A−3)189gを得た。
【0072】
【化27】
Figure 0003927685
【0073】
淡水素分析法による炭素、水素の含有量はそれぞれ79.3%、11.2%、酸素定量法による酸素の含有量は9.6%であった。
得られた樹脂のFDマススペクトルを測定したところ分子量320、540、760、980、のピークが検出された。
得られた誘導体の、水酸基当量を測定したところ188g/eqであった。
また、 1H−NMR分析では、δ 0.8〜4.0ppmに脂肪族炭化水素環に由来するプロトンが多重線で観測されたが、炭素−炭素二重結合に起因するプロトンの吸収は認められず、δ 6.5〜7.5ppmの芳香環に結合したプロトンが消失しており、水素化が完了したことが確認された。
13C−NMR分析では、環状の脂肪族炭化水素にエーテル付加した場合に生じる68ppmの炭素のシグナルが観測され、エーテル化比率は10%であった。
IRによる分析においてもP−1では3050cm-1付近に見られた芳香族のC−H伸縮に由来するピークが消失しており、得られた樹脂が目的とする淡黄色の炭化水素アルコール誘導体(A−3)であることを確認した。
13C−NMR分析では、フェノールが二重結合にエーテル付加した場合に生じる158ppmの炭素のシグナルが観測され、エーテル化比率は10%であった。
【0074】
炭化水素エポキシ樹脂(E−3)の合成
上記の炭化水素アルコール(A−3)のグリシジル化を以下の方法で行った。
攪拌機、還流冷却器および温度計付きの2リットル4つ口フラスコに、炭化水素アルコール(A−3)188gとエピクロルヒドリン700gとを仕込んだ後、実施例1と同様に反応後、後処理を行い、260gの下式(18)で表される炭化水素エポキシ樹脂(E−3)を得た。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は270g/当量であった。
【0075】
【化28】
Figure 0003927685
【0076】
[合成例4]
炭化水素・フェノール樹脂(P−4)の合成
フェノール2000gとトルエン400gとを、還流冷却器及びリービッヒコンデンサーを備えた容量5リットルの反応器に仕込み、170℃に加熱して、トルエン350gを留出し、反応系内の水分含有量を70ppmとした。次いで、反応系を70℃まで冷却し、三フッ化ホウ素・フェノール錯体10gを添加した後、反応温度を70℃に制御しながら、水分含有量が20ppmのイソプレン360gを1.5時間かけて徐々に滴下し、滴下終了後、100℃で5時間反応を行った。反応終了後、得られた反応物にMg0.7 Al0.3 (OH)2 (CO30.15・mH2 O(但し、0.46≦m≦0.54)で表されるハイドロタルサイト化合物(協和化学工業社製合成ハイドロタルサイト・商品名「 KW−1000」)15g添加し、30分間攪拌して触媒を失活させた後、セライトを敷き詰めたろ紙を用いて反応液をろ過した。得られた反応液を200℃で薄膜蒸留を行い、蒸留留分として400gの液状のフェノール樹脂を得た。この樹脂中のフェノール残量を測定したところ10ppmであった。
【0077】
得られたフェノール樹脂(P−4)は、残存ホウ素5ppm、フッ素は3ppm以下であった。150℃のおける溶融粘度は0.15poiseであった。フェノール性水酸基当量は155であった。
炭水素分析法による炭素、水素の含有量はそれぞれ、80.7%、8.9%、酸素定量法による酸素の含有量は10.5%であった。
得られた樹脂のFDマススペクトルを測定したところ、分子量256、326のピークが検出され、下式(19)に示した構造の分子で構成されていることが確認された。
【0078】
【化29】
Figure 0003927685
【0079】
フェノール性水酸基の含有量を、無水酢酸でアセチル化した後、逆滴定により求めたところ、フェノール性水酸基当量は155g/eqであった。
1H−NMR分析では、δ 6.5〜7.5ppmに芳香環に結合したプロトンが、またδ 0.8〜4.0ppmに脂肪族炭化水素環に由来するプロトンがそれぞれ多重線で観測され、炭素−炭素二重結合に起因するプロトンの吸収は認められなかった。またδ 6.5〜8ppmとδ 0.8〜2.5ppmとのピーク面積比よりフェノール性水酸基の含有量を求めたところ、滴定による結果と同様にフェノール性水酸基当量は155g/eqであった。
また、13C−NMR分析では、フェノールが二重結合にエーテル付加した場合に生じる158ppmの炭素のシグナルが観測されないことからフェノールはいずれもアルキレーションで付加していることがわかった。
【0080】
炭化水素アルコール(A−4)の合成
上記のフェノール樹脂(P−4)155gを用いた以外は、実施例1と同一の方法で反応を行ったところ、目的とする淡黄色の炭化水素アルコール(A−4)159gを得た。
【0081】
淡水素分析法による炭素、水素の含有量はそれぞれ、77.7%、12.3%、酸素定量法による酸素の含有量は10.1%であった。
得られた樹脂のFDマススペクトルを測定したところ、分子量268、338のピークが検出された。
得られた誘導体の、水酸基当量を測定したところ161g/eqであった。
また、 1H−NMR分析では、δ 0.8〜4.0ppmに脂肪族炭化水素環に由来するプロトンが多重線で観測されたが、炭素−炭素二重結合に起因するプロトンの吸収は認められず、δ 6.5〜7.5ppmの芳香環に結合したプロトンが消失しており、水素化が完了したことが確認された。
IRによる分析においてもP−1では3050cm-1付近に見られた芳香族のC−H伸縮に由来するピークが消失しており、得られた樹脂が下式(20)で示される目的とする淡黄色の炭化水素アルコール誘導体(A−4)であることを確認した。
【0082】
【化30】
Figure 0003927685
【0083】
炭化水素エポキシ樹脂(E−4)の合成
上記の炭化水素アルコール(A−4)のグリシジル化を以下の方法で行った。
攪拌機、還流冷却器および温度計付きの2リットル4つ口フラスコに、炭化水素アルコール(A−4)161gとエピクロルヒドリン700gとを仕込んだ後、実施例1と同様に反応後、後処理を行い、下式(21)で示される220gの炭化水素エポキシ樹脂(E−4)を得た。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は245g/当量であった。
【0084】
【化31】
Figure 0003927685
【0085】
[合成例5]
炭化水素・フェノール樹脂(P−5)の合成
フェノール2000gとトルエン400gとを、還流冷却器及びリービッヒコンデンサーを備えた容量5リットルの反応器に仕込み、170℃に加熱して、トルエン350gを留出し、反応系内の水分含有量を70ppmとした。次いで、反応系を70℃まで冷却し、三フッ化ホウ素・フェノール錯体10gを添加した後、反応温度を70℃に制御しながら、水分含有量が20ppmのリモネン410gを1.5時間かけて徐々に滴下し、滴下終了後、100℃で5時間反応を行った。反応終了後、得られた反応物にMg0.7 Al0.3 (OH)2 (CO30.15・mH2 O(但し、0.46≦m≦0.54)で表されるハイドロタルサイト化合物(協和化学工業社製合成ハイドロタルサイト・商品名「KW−1000」)15g添加し、30分間攪拌して触媒を失活させた後、セライトを敷き詰めたろ紙を用いて反応液をろ過した。得られた反応液を200℃で薄膜蒸留を行い、蒸留留分として570gのフェノール樹脂(P―5)を得た。この樹脂中のフェノール残量を測定したところ10ppmであった。
【0086】
得られたフェノール樹脂(P−5)は、軟化点が93℃、ガードナー色相は12、残存ホウ素は5ppm、フッ素は3ppm以下であった。
炭水素分析法による炭素、水素の含有量はそれぞれ、81.5%、8.6%、酸素定量法による酸素の含有量は10.0%であった。
得られた樹脂のFDマススペクトルを測定したところ、分子量324のピークが検出され、下式(22)に示した構造の分子(n=0)で構成されていることが確認された。
【0087】
【化32】
Figure 0003927685
【0088】
フェノール性水酸基の含有量を、無水酢酸でアセチル化した後、逆滴定により求めたところ、フェノール性水酸基当量は161g/eqであった。
1H−NMR分析では、δ 6.5〜7.5ppmに芳香環に結合したプロトンが、またδ 0.8〜4.0ppmに脂肪族炭化水素環に由来するプロトンがそれぞれ多重線で観測され、炭素−炭素二重結合に起因するプロトンの吸収は認められなかった。またδ 6.5〜8ppmとδ 0.8〜2.5ppmとのピーク面積比よりフェノール性水酸基の含有量を求めたところ、滴定による結果と同様にフェノール性水酸基当量は161g/eqであった。
また、13C−NMR分析では、フェノールが二重結合にエーテル付加した場合に生じる158ppmの炭素のシグナルが観測されないことからフェノールはいずれもアルキレーションで付加していることがわかった。
【0089】
炭化水素アルコール(A−5)の合成
上記のフェノール樹脂(P−5)161gを用いた以外は、実施例1と同一の方法で反応を行ったところ、下式(23)に示した目的とする淡黄色の炭化水素アルコール(A−5)163gを得た。
【0090】
【化33】
Figure 0003927685
【0091】
また、 1H−NMR分析では、δ 6.5〜7.5ppmの芳香環に結合したプロトンが消失しており、水素化が完了したことが確認された。
淡水素分析法による炭素、水素の含有量はそれぞれ78.6%、11.9%、酸素定量法による酸素の含有量は9.6%であった。
得られた樹脂のFDマススペクトルを測定したところ、分子量336のピークが検出された。
得られた誘導体の、水酸基当量を測定したところ168g/eqであった。
また、 1H−NMR分析では、δ 0.8〜4.0ppmに脂肪族炭化水素環に由来するプロトンが多重線で観測されたが、炭素−炭素二重結合に起因するプロトンの吸収は認められず、δ 6.5〜7.5ppmの芳香環に結合したプロトンが消失しており、水素化が完了したことが確認された。
IRによる分析においてもP−1では3050cm-1付近に見られた芳香族のC−H伸縮に由来するピークが消失しており、得られた樹脂が目的とする淡黄色の炭化水素アルコール誘導体(A−1)であることを確認した。
【0092】
炭化水素エポキシ樹脂(E−5)の合成
上記の炭化水素アルコール(A−5)のグリシジル化を以下の方法で行った。攪拌機、還流冷却器および温度計付きの2リットル4つ口フラスコに、炭化水素アルコール(A−5)168gとエピクロルヒドリン700gとを仕込んだ後、実施例1と同様に反応後、後処理を行い、下式(24)で示される210gの炭化水素エポキシ樹脂(E−5)を得た。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は250g/当量であった。
【0093】
【化34】
Figure 0003927685
【0094】
(実施例1)
合成例1で製造したエポキシ樹脂(E−1)70g、フェノールノボラック樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名「タマノール758」)30g、トリフェニルホスフィン0.2g、溶融シリカ粉末(商品名「ヒュウズレックスRD−8」、龍森(株)社製)353g及び表1に示す添加剤からなる組成物を調製し、該組成物を、ニーダーを用いて85℃にて10分間溶融混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂成型材料を得た。
得られた成型材料をタブレット化し、該タブレット化した成型材料を低圧トランスファー成型機にて175℃、70kg/cm2 、120秒の条件で封止した後、180℃、5時間の条件で後硬化させた。尚、トランスファー成型時の離型性は良好であった。得られた硬化物を用い、半田クラック試験用としては、6×6mmのチップを52pパッケージに封止し、また半田耐湿試験用としては6×6mmのチップを16pSOPパッケージに封止してテスト用素子を作製した。封止したテスト用素子について下記の半田クラック試験及び半田耐湿試験を行った。結果を表1に示す。
【0095】
(半田クラック試験);封止したテスト用素子を85℃、85%RHの環境下で48時間および72時間処理し、その後280℃の半田槽に10秒間浸漬後顕微鏡で外部クラックを観察した。
(半田耐湿性平均寿命(時間));封止したテスト用素子を85℃、85%RHの環境下で48時間および72時間処理し、その後280℃の半田槽に10秒間浸漬後プレッシャークッカー試験(125℃、100%RH)を行い50%の回路のオーブン不良が発生するまでの時間を測定した。
【0096】
(実施例2〜5)
エポキシ樹脂(E−1)の代わりに合成例2〜5で製造したエポキシ樹脂(E−2)、(E−3)、(E−4)、(E−5)を用いた以外は実施例1と同様にして成型材料を得、各試験を行った。その結果を表1に示す。
【0097】
(比較例1)
エポキシ樹脂(E−1)をノボラックエポキシ樹脂(商品名「エピクロンN−660」、大日本インキ化学工業(株)製)68gに代え、表1に示す配合割合とした以外は実施例1と同様にして成型材料を得、試験を行った。結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
Figure 0003927685
【0099】
(実施例6)
合成例1で製造したエポキシ樹脂(E−1)および表2に示す市販のフェノール樹脂に、表2に示す硬化促進剤を配合してエポキシ樹脂組成物を得、ついで表2に示す溶剤を配合して、エポキシ樹脂ワニス(樹脂成分が60重量%)とした後、該エポキシ樹脂ワニス中に、Eガラス布を浸漬した。このワニス含浸布を160℃の乾燥室中で4分間乾燥させ、Bステージ状のプリプレグを得た。
得られたプリプレグを切断して8枚のプリプレグとし、更に8枚のプリプレグを重ね合わせ、その両面に厚さ35μmの電解銅箔2枚を重ねて、40kg/cm2 で加圧しながら175℃で120分加圧加熱して積層板とした。得られた硬化積層板の物性を表2に示す。
【0100】
(実施例7〜10)
エポキシ樹脂(E−1)の代わりに、実施例2〜5で製造したフェノール樹脂(E−2)、(E−3)、(E−4)、(E−5)を用いた以外は実施例6と同様にして積層板を作成した。試験結果を表2に示す。
【0101】
(比較例2)
エポキシ樹脂(E−1)をノボラックエポキシ樹脂(商品名「エピクロンN−660」、大日本インキ化学工業(株)製)68gに代え、表2に示す配合割合とした以外は実施例6と同様にして積層板を作成した。試験結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
Figure 0003927685
【0103】
【発明の効果】
本発明の炭化水素アルコールは炭化水素基を結節基とし、芳香環が水素化された脂環構造を有する飽和炭化水素アルコールであり、結節基が鎖状の炭化水素基の場合、溶解性、反応性、熱安定性に優れ、柔軟性、耐熱性、耐候性に優れたエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂の原料として最適である。これに対して、結節基が剛直でかさ高い環状炭化水素基の場合、耐湿性、耐熱性および電気特性に優れた前記の各樹脂の原料として最適である。また、これらの樹脂は感光剤をはじめとする各種工業用品の原料、各種高分子材料の添加剤としても有用である。
【0104】
本発明のエポキシ樹脂を使用した組成物は、半導体封止材用、積層板用およびソルダーレジスト用エポキシ樹脂組成物として好ましい特性を備えている。
例えば、半導体封止材用として使用する場合、得られる硬化物の耐湿性が非常に良好で、またガラス転移点が高いため耐熱性に優れている。従って硬化物は耐熱性に優れており、リード線の半田付けの際に半導体パッケージが急激な温度変化を受けても、樹脂成形部にクラックが生じたり、リード線と樹脂との間の界面が劣化したりすることがまったくなく、更には機械的物性や電気特性等にも優れている。
【0105】
また本発明のエポキシ樹脂を使用した組成物は、耐熱性、接着性および耐湿性等に優れているので、積層板用エポキシ樹脂組成物として用いる場合、遠赤外線、赤外線、ハンダ付け等による加熱によって生じるミーズリング現象や相間剥離が生じることがなく、更には反りが極めて少なく、寸法安定性、スルーホールの接着信頼性に優れ、ドリル加工性も良好にすることができる。さらに本発明のエポキシ樹脂を使用した組成物を用いると、電気特性に優れた積層板を製造できるという特徴を有する。すなわち高速電子機器用、高周波機器用プリント基板を製造するためには誘電特性を向上させることが必須であり、誘電特性は使用するエポキシ樹脂の構造に依存することが知られているが、本発明によるエポキシ樹脂組成物を使用した積層板は、誘電特性が非常に優れている。
【0106】
本発明のエポキシ樹脂を使用した組成物をソルダーレジストに用いる場合、密着性、電気絶縁性および耐電触性、はんだ耐熱性、レベラー用水溶性フラックスに対する非白化性、塩化メチレン等の溶剤に対する優れた耐性、耐酸および耐アルカリ性、耐メッキ性、PCT性等に優れる。
【0107】
本発明の製造法により、上記炭化水素アルコール、上記炭化水素エポキシ樹脂を容易に製造できる。

Claims (8)

  1. 一般式(1)
    【化1】
    hc−(R1 −hc)n−R1 −hc
    (式中、hcは炭素数6〜16の水酸基含有飽和環状炭化水素基を示す。なお、hc中の水酸基は1〜3個であり、飽和環状炭化水素基に直接結合する。R1 は炭素数4〜25の飽和炭化水素基である。なお、R1 に結節する2個のhcはR1 中の同一の炭素には結合しない。nは0または1〜30の整数である。)
    で表される炭化水素アルコール。
  2. 一般式(2)
    【化2】
    hc−(R2 −hc)n−R2 −hc
    (式中、hcは炭素数6〜16の水酸基含有飽和環状炭化水素基を示す。なおhc中の水酸基は1〜3個であり、環状飽和炭化水素基に直接結合する。R2 は炭素数5〜25の飽和多環炭化水素基である。なお、R2 に結節する2個のhcはR2 中の同一の炭素には結合しない。nは0または1〜30の整数である。)
    で表される炭化水素アルコール。
  3. 一般式(3)
    【化3】
    hp−(R1 −hp)n−R1 −hp
    (式中、hpは炭素数6〜16のポリヒドロキシフェニル基を示す。なお、hp中の水酸基はフェノール性水酸基であり、hpに1〜3個結合する。フェノール性水酸基は1〜3個である。R1 は炭素数4〜25の炭化水素基である。なお、R1 に結節する2個のhpはR1 中の同一の炭素には結合しない。nは0または1〜30の整数である。)
    で表される炭化水素・フェノール樹脂を、金属触媒存在下、水素化することを特徴とする請求項1記載の炭化水素アルコールの製造方法。
  4. 一般式(4)
    【化4】
    hp−(R2 −hp)n−R2 −hp
    (式中、hpは炭素数6〜16のポリヒドロキシフェニル基を示す。なお、hp中のフェノール性水酸基は1〜3個である。R2 は炭素数5〜25の多環炭化水素基である。なお、R2 に結節する2個のhpはR2 中の同一の炭素には結合しない。nは0または1〜30の整数である。)
    で表される炭化水素・フェノール樹脂を、金属触媒存在下、水素化することを特徴とする請求項2記載の炭化水素アルコールの製造方法。
  5. 一般式(5)
    【化5】
    gc−(R1 −gc)n−R1 −gc
    (式中、gcは炭素数6〜16のX−O−基含有飽和環状炭化水素基を示す。なお、Xはグリシジル基を示し、gc中のX−O−基は1〜3個であり、飽和環状炭化水素基に直接結合する。R1 は炭素数4〜25の飽和炭化水素基である。なお、R1 に結節する2個のgcはR1 中の同一の炭素には結合しない。nは0または1〜30の整数である。)で表される炭化水素エポキシ樹脂。
  6. 一般式(6)
    【化6】
    gc−(R2 −gc)n−R2 −gc
    (式中、gcは炭素数6〜16のX−O−基含有飽和環状炭化水素基を示す。なお、Xはグリシジル基を示し、gc中のX−O−基は1〜3個であり、飽和環状炭化水素基に直接結合する。R2 は、炭素数5〜25の飽和多環炭化水素基である。なお、R2 に結節する2個のgcはR2 中の同一の炭素には結合しない。nは0または1〜30の整数である。)
    で表される炭化水素エポキシ樹脂。
  7. 一般式(1)
    【化7】
    hc−(R1 −hc)n−R1 −hc
    (式中、hcは炭素数6〜16の水酸基含有飽和環状炭化水素基を示す。なお、hc中の水酸基は1〜3個であり、飽和環状炭化水素基に直接結合する。R1 は炭素数4〜25の飽和炭化水素基である。なお、R1 に結節する2個のhcはR1 中の同一の炭素には結合しない。nは0または1〜30の整数である。)
    で表される炭化水素アルコールとエピハロヒドリンを塩基存在下で反応させることを特徴とする請求項5記載の炭化水素エポキシ樹脂の製造方法。
  8. 一般式(2)
    【化8】
    hc−(R2−hc)n−R2−hc
    (式中、hcは炭素数6〜16の水酸基含有飽和環状炭化水素基を示す。なおhc中の水酸基は1〜3個であり、飽和環状炭化水素基に直接結合する。R2 は炭素数5〜25の飽和多環炭化水素基である。なお、R2 に結節する2個のgcはR2 中の同一の炭素には結合しない。nは0または1〜30の整数である。)
    で表される炭化水素アルコールとエピハロヒドリンを塩基存在下で反応させることを特徴とする請求項6記載の炭化水素エポキシ樹脂の製造方法。
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