JP3927331B2 - ロータリコンプレッサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば冷凍機や空気調和機等に用いられるロータリコンプレッサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術を図4乃至図8を参照して説明する。図4は一部断面で示す要部の正面図であり、図5はベーンスプリングの第1従来例を示す側面図であり、図6はベーンスプリングの第2従来例を示す側面図であり、図7はベーンスプリングの第3従来例を示す側面図であり、図8は第3従来例のベーンスプリングの斜め装着状態を説明するための図である。
【0003】
図4乃至図8において、1は縦形ロータリコンプレッサであり、2は密閉容器で、その内部には上部に電動機部3を配し、下部に圧縮機部4を配するようにして両部がクランク軸5により直結されている。そして圧縮機部4は、クランク軸5を主軸受6と副軸受7とで回転支持し、またクランク軸5に形成された偏心部に挿嵌した回転ピストン8をシリンダ9内で偏心回転させると共に、回転ピストン8の外周面に取付孔10に挿入されたベーンスプリング11により付勢されたベーン12の先端が摺接するよう構成した回転圧縮機構13を備えている。
【0004】
また、ベーンスプリング11は、図5に第1従来例として示すストレート形状のコイル状に形成されたもので、ベーン12の先端が回転ピストン8の外周面に圧接するようベーン12の後端を回転中心方向に常時付勢している。さらにベーンスプリング11は、巻外径が取付孔10の内径より小さく形成されており、取付孔10の内壁面に接触しないようになっている。なお、14は密閉容器2内の下部に貯溜された冷凍機油で、この冷凍機油14は、クランク軸5内に形成された図示しないオイルポンプによって回転圧縮機構13の各摺動部に給油される。
【0005】
そして、このように構成されたロータリコンプレッサ1は、例えば冷凍サイクルに挿入して用いられ、回転圧縮機構13で圧縮された冷媒が、密閉容器2の頂部に設けられた図示しない吐出パイプから冷凍サイクルの管路に吐出され、凝縮器や蒸発器等を通流した後に、再び図示しないアキュムレータから密閉容器2内の下部に吸い込まれるようになっている。また、このように回転圧縮機構13が作動する際、ベーンスプリング11は、取付孔10の内壁面と接触しないように回転ピストン8の偏心回転に伴って伸縮する。
【0006】
しかしながら上記の第1従来例のベーンスプリング11を用いたものでは、ベーンスプリング11の巻外径が取付孔10の内径より小さく形成されているので、取付孔10の内壁面と接触しないように装着するには、図示しないが別部品のストッパを用いる必要がある。すなわち、ベーンスプリング11が伸縮時に取付孔10の内壁面と接触するような状態であると、長期の運転を行っているとベーンスプリング11が取付孔10の内壁面に摺接し摩耗、疲労して折損する虞があった。
【0007】
このため、図6に示す第2従来例、図7に示す第3従来例のベーンスプリング15,16のように構成するようにしている。第2従来例のベーンスプリング15ではコイル状に形成し、そのベーン12の後端を押圧する側に有効ばね部15aを有し、他側に有効ばね部15aより終端に向けて漸次径大化するように形成された可動テーパ部分でなる大径部15bを有するものとなっている。このように形成されたベーンスプリング15は、大径部15bと有効ばね部15aの巻径の差を大きくすると、大径部15bのばね定数が有効ばね部15aの値に対して小さくなりすぎ、圧縮時に大径部15bが密着してしまったり、もしくは潜り込んでしまったりしてしまう。
【0008】
従って、こうした状態を避けようと大径部15bと有効ばね部15aのばね定数の差を少なくすると、両部15a,15bの巻径の差が小さくなり、ベーンスプリング15が取付孔10の内壁面に接触し易くなって、長期の運転を行っていると、同様にベーンスプリング15が取付孔10の内壁面に摺接し摩耗、疲労して折損する虞があった。
【0009】
また、第3従来例のベーンスプリング16ではコイル状に形成し、そのベーン12の後端を押圧する側に有効ばね部16aを有し、他側に有効ばね部16aより終端に向けて漸次径大化するように形成された密巻テーパ部分でなる大径部16bを有するものとなっており、このように形成されたベーンスプリング16は、密巻テーパ部分の長さが比較的長くなっている。
【0010】
そして、こうしたベーンスプリング16を取付孔10に装着しようとした場合に、例えば図8に示すように大径部16bが孔端面に対し角度ηを有する傾いた状態で挿入される虞があり、このように挿入された場合に密巻テーパ部分が比較的長いために、有効ばね部16aが取付孔10の内壁面に接触し易くなって、長期の運転を行っていると、同様にベーンスプリング16が、取付孔10の内壁面と接触しているP点で壁面に摺接し摩耗、疲労して折損する虞があった。このため、ベーンスプリング16が取付孔10に傾いた状態で挿入されないよう、組み込み作業に注意を要するものとなっていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような状況に鑑みて本発明はなされたもので、その目的とするところはベーンを付勢するベーンスプリングが取付孔に容易に装着することができ、またベーンスプリングが取付孔の内壁面に摺接し摩耗、疲労して折損するのを防止することができて、製造性及び信頼性が向上したロータリコンプレッサを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のロータリコンプレッサは、密閉容器内の一端側に電動機部、他端側に圧縮機部を配置し、かつこれら電動機部と圧縮機部とをクランク軸で回転可能に直結すると共に、クランク軸の偏心部に挿嵌され圧縮機部のシリンダ内で偏心回転する回転ピストンの外周面に、取付孔に装着したコイル状ベーンスプリングに付勢されたベーンを摺接するように設けてなるロータリコンプレッサにおいて、ベーンスプリングは、ベーン側に有効ばね部を有し、かつ他側に有効ばね部より大径に形成された大径部を有すると共に、大径部が有効ばね部側に形成された可動テーパ部と他側に形成された密着巻テーパ部を設けてなるものであることを特徴とするものであり、
さらに、ベーンスプリングの大径部の最大径部分と有効ばね部の直径差が、1.5mm以上であることを特徴とするものであり、
さらに、ベーンスプリングの大径部の他端に、2ターン以上の座巻きを有することを特徴とするものであり、
さらに、ベーンスプリングが、該ベーンスプリングの大径部を取付孔に圧入するようにして装着されていることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施形態を、図1乃至図3参照して説明する。図1は一部断面で示す正面図であり、図2はベーンスプリングの側面図であり、図3はベーンスプリングの斜め装着状態を説明するための図である。
【0014】
図1乃至図3において、21は縦形ロータリコンプレッサで、上下端部が閉塞された円筒状の密閉容器22内に、上部に電動機部23を配し、下部に圧縮機部24を配するようにし、さらに電動機部23と圧縮機部24とがクランク軸25により直結され、電動機部23によって圧縮機部24が回転駆動されるように構成されている。また密閉容器22の頂部には、容器内外を連通するように吐出パイプ26が固定されており、この吐出パイプ26の外部に延出した先端部分には、吐出された冷媒が流れる図示しない冷凍サイクルの管路が接続される。さらに密閉容器22の側壁下部には、アキュムレータ27が接続されていて、このアキュムレータ27を介して冷凍サイクルを通流した冷媒が圧縮機部24に吸い込まれるようになっている。
【0015】
また、電動機部23は、密閉容器22の内上部に固定子28を圧入固定してなり、さらに固定子28の内径部内に位置するようクランク軸25に回転子29が圧入固定され、回転子29が固定子28に対して所定間隙を設けて回転するように構成されている。なお、30は固定子28に設けられた固定子コイルである。そして、電動機部23には密閉容器22の上部に取り付けられた電源端子31を介して図示しない外部電源から電力が供給され、回転子29が回転する。
【0016】
一方、圧縮機部24は、クランク軸25を密閉容器22の中間部の内側壁に固定した主軸受32と、この主軸受32にシリンダ33を間に介して固着した副軸受34とで回転支持している。またクランク軸25の主軸受32と副軸受34との間に形成された偏心部35には、回転ピストン36が挿嵌されており、クランク軸25の回転によって回転ピストン36がシリンダ33内で偏心回転する。さらに、回転ピストン36の外周面には、取付孔37に挿入されたベーンスプリング38により付勢されたベーン39の先端が摺接するようになっていて、シリンダ33と回転ピストン36とベーン39とで圧縮室が構成され、回転ピストン36がシリンダ33内で偏心回転することで回転圧縮機構40が構成される。
【0017】
また、ベーンスプリング38は、図2に示すようにコイル状に形成されていて、回転ピストン36の外周面にベーン39の先端が圧接するように、ベーン39の後端を回転中心方向に常時付勢している。コイル状に形成されたベーンスプリング38は、ベーン39の後端の支持凹部39aに係合して押圧する先端側にストレート形状の有効ばね部38aを有し、他側に有効ばね部38aより終端に向けて漸次径大化するように形成された大径部38bを有するものとなっている。
【0018】
さらに、ベーンスプリング38の大径部38bは、有効ばね部38a側に有効ばね部38aとの接続部分として伸縮可能なテーパ巻によって可動テーパ部41が形成され、他側に密着巻テーパ部42が形成されている。またさらに大径部38bの他端には、2ターン以上密着巻されてなる座巻きを有し、その他側の最大径部分、すなわち終端の巻外径Dbは、有効ばね部38aの巻外径Daとの直径差2δが、1.5mm以上の所定値となるように形成されていて、取付孔37に挿入した際に、取付孔37の内壁面に有効ばね部38aが接触しないようになっている。
【0019】
なお、例えば線径dが約0.5mmで、有効ばね部38aの巻外径Daが約5.5mm、自由長lが約24mm程度の各部寸法を有するベーンスプリング38の場合に、両部38a,38bの巻外径の直径差を1.5mm以上となるように大径部38b終端の巻外径Dbを約7mm以上とすることが、取付孔37の内壁面に有効ばね部38aが接触しないようにするために必要である。
【0020】
そしてベーンスプリング38は、取付孔37に有効ばね部38aが内壁面に接触しないように挿入され、さらに内径Dの取付孔37に、これより若干大径に最大径部分の巻外径Dbが形成されている大径部38bの座巻きを、押し込むように圧入することによって装着される。これによりベーンスプリング38は、ベーン39側の先端がベーン39の後端中央部分に形成された支持凹部39aに係合し、取付孔37の中央に支持される。また、43は密閉容器22内の下部に貯溜された冷凍機油で、この冷凍機油43は、クランク軸25の下部内に形成された図示しないオイルポンプによって回転圧縮機構40の各摺動部に給油される。
【0021】
そして、こうした構成のロータリコンプレッサ21では、外部電源から電源端子31に電力が供給されて電動機部23が回転する。これにより電動機部23によって圧縮機部24が駆動され、回転ピストン36がシリンダ33内で偏心回転する。この回転ピストン36の偏心回転により、ベーンスプリング38によって付勢されたベーン39は進退しながら回転ピストン36の外周面に摺接し、ベーンスプリング38は取付孔37の内壁面に接触しない状態で伸縮を繰り返す。
【0022】
そして、この回転ピストン36の偏心回転により回転圧縮機構40で冷媒が圧縮され、圧縮された冷媒は、密閉容器22の頂部に設けられた吐出パイプ26から冷凍サイクルの管路に吐出される。そして、高温高圧の冷媒は、冷凍サイクルのそれぞれ図示しない凝縮器で放熱して液化され、減圧機構で減圧されて蒸発器に入り、蒸発器で熱を奪って蒸発した後に、再びアキュムレータ27から密閉容器22内の下部に吸い込まれる。
【0023】
以上のような構成であるので、ベーンスプリング38は、取付孔37に圧入した大径部38bの座巻きによって有効ばね部38aが、内壁面との間に0.75mm以上の所定の空隙δを設けて孔中央に接触しないように支持され、この状態で伸縮することになる。このため、ベーンスプリング38は接触しないように支持するストッパ等の別部品を要することなく簡単かつ容易に装着することができる。
【0024】
また、図3に示すようにベーンスプリング38を取付孔37に装着する際、大径部38bが孔端面に対し角度θを有する傾いた状態で挿入され、万一装着されてしまった場合には、先端がベーン39の支持凹部39aに係合して孔中央に位置するので、有効ばね部36aと、この有効ばね部36aとの接続部分である大径部38bの可動テーパ部41が曲折することになる。そして、このような状態では取付孔37に圧入された大径部38以外の部位で取付孔37の内壁面に接触することがない。
【0025】
このため、このようにベーンスプリング38が万一傾いた状態で装着されたまま運転が行われたとしても、取付孔37の内壁面と接触していないので、長期の運転を行っても壁面に摺接し摩耗、疲労して折損するようなことがない。また、ベーンスプリング38の装着等の組み込み作業についても、特段の注意を要する必要もない。
【0026】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ベーンを付勢するベーンスプリングが取付孔に容易に装着でき、またベーンスプリングが取付孔の内壁面に摺接し摩耗、疲労して折損するのが防止でき、製造性及び信頼性が向上する等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の一部断面で示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るベーンスプリングの側面図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるベーンスプリングの斜め装着状態を説明するための図である。
【図4】従来例の一部断面で示す要部の正面図である。
【図5】従来例におけるベーンスプリングの第1従来例を示す側面図である。
【図6】従来例におけるベーンスプリングの第2従来例を示す側面図である。
【図7】従来例におけるベーンスプリングの第3従来例を示す側面図である。
【図8】図7に示す第3従来例のベーンスプリングの斜め装着状態を説明するための図である。
【符号の説明】
22…密閉容器
23…電動機部
24…圧縮機部
25…クランク軸
33…シリンダ
35…偏心部
36…回転ピストン
37…取付孔
38…ベーンスプリング
38a…有効ばね部
38b…大径部
39…ベーン
41…可動テーパ部
42…密着巻テーパ部

Claims (4)

  1. 密閉容器内の一端側に電動機部、他端側に圧縮機部を配置し、かつこれら電動機部と圧縮機部とをクランク軸で回転可能に直結すると共に、前記クランク軸の偏心部に挿嵌され前記圧縮機部のシリンダ内で偏心回転する回転ピストンの外周面に、取付孔に装着したコイル状ベーンスプリングに付勢されたベーンを摺接するように設けてなるロータリコンプレッサにおいて、前記ベーンスプリングは、前記ベーン側に有効ばね部を有し、かつ他側に前記有効ばね部より大径に形成された大径部を有すると共に、前記大径部が前記有効ばね部側に形成された可動テーパ部と他側に形成された密着巻テーパ部を設けてなるものであることを特徴とするロータリコンプレッサ。
  2. ベーンスプリングの大径部の最大径部分と有効ばね部の直径差が、1.5mm以上であることを特徴とする請求項1記載のロータリコンプレッサ。
  3. ベーンスプリングの大径部の他端に、2ターン以上の座巻きを有することを特徴とする請求項1記載のロータリコンプレッサ。
  4. ベーンスプリングが、該ベーンスプリングの大径部を取付孔に圧入するようにして装着されていることを特徴とする請求項1記載のロータリコンプレッサ。
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