JP3927318B2 - 複合水素吸蔵体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素吸蔵体の製造方法、特に、水素ガス分離、その他水素吸蔵利用分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、水素化反応によって金属格子間隔中に水素を単原子状で配位させた金属と水素からなる組成物は、一般に水素化物と総称される。なかでも緩やかな圧力・温度条件下で可逆的に水素化/脱水素化反応を容易に繰り返すことができる合金類を水素吸蔵合金と呼んでいる。また、水素吸蔵合金の表面の改質により、水素吸蔵能力等の向上を目的として様々な発明が提案されている。
【0003】
水素吸蔵合金の活性発現には活性化処理が必要である。この活性化処理は、表面科学的には清浄な金属(あるいは合金)表面を形成させた操作である。活性化処理の方法には、例えば、水素吸蔵により脆化(細分化)させて清浄面を形成する方法や加熱処理による表面酸素等の内部への拡散を利用した表面清浄化等がある。この活性維持能力が水素吸蔵合金の実用性を左右する。即ち、酸素などの不純物元素を含むN2、CO2等との反応により吸蔵合金表面には安定な酸化物層(あるいは炭化物層、窒化物層など)が形成され、水素吸蔵・脱離の性能も低下する。活性低下(以下「失活」と略記)に対する抜本的な解決策が望まれているが、一般的には、失活をある程度避け難いものとして本来必要な量と比較して過剰に用いることで対応している。
【0004】
水素吸蔵合金の量を必要以上に増やすことは小型で軽量の取り扱い装置の開発にとって大きな障害となるばかりではなく問題の本質的解決とはならない。不純物ガスに対して耐久性を持つ水素透過膜乾面を被覆することが出来れば、水素吸蔵合金そのものの性能を変化させることなく活性を維持できる可能性がある。
【0005】
例えば、工業技術院大阪工業技術試験所でなされた、水素吸蔵合金を用いるあらゆる用途に応用できるマイクロカプセル膜一体成形体に関する発明(Ishikawa,H.,Oguro,K.,Kato,H.,Suzuki,H.andIshii,E.,J.LessCommonMetals,107,105(1985)、M&E1987年10月号第39,39頁)は、予め粉砕した合金粉末に多孔性の銅皮膜を湿式無電解メッキした後に冷間圧縮成形するものであり、合金微粒子は厚さ1μ程度の銅に包まれている。メッキ法自体はプラスチックメッキに用いられる自己触媒形湿式無電解メッキと同じであり,アルカリ性(NaOH)浴中で酒石酸塩の共存下に銅イオンからホルムアルデヒドで金属銅が還元析出される。メッキ反応には水素発生を伴うため、形成される銅皮膜は多孔性となり,水素ガスが円滑に透過し得る膜になると考えられる。このように銅でカプセル膜化した合金粉末は銅皮膜が展延性に富むため容易に冷間圧縮成形できる。マイクロカプセル膜化合金の成形体では粉体が高密度に押し固められているとともに銅皮膜によって粒子間の接触面積が増大することで、高い熱伝導率が得られている。この一体成形体を用いれば、熱伝導性の向上により、ヒートポンプ、コンプレッサ、あるいは水素ガス分離において吸蔵、放出のサイクルが短縮できるため合金使用量当たりの装置出力が向上するとともに,合金を高密度に充項できるため容器内のデッドスペースが減少して作動効率も上がると期待される。
【0006】
他の例として、工学院大学工学部化学工学科、応用化学科の「傾斜型複合機能を表面にもつ水素吸蔵合金の開発とエネルギー変換技術への応用」に関する発明(Journal of Alloys and Compounds 231(1995)411-416)がある。これは表面相にフッ化物層をもつフッ化物処理水素吸蔵合金は、耐被毒性および選択的水素透過性などに優れた表面特性をもつことが知られ、これらの特性に加え、化学的および電気化学的に活性な表面特性を併せもつ傾斜型複合横機能性フッ化物層の形成法を目指すものである。水素分子捕集サイトとなる表面相の構造変化による比表面積の増大と水素単原子化サイトとなる富ニッケル層の分散量の増大を図る、並びに、フッ化物層への金属ニッケルの分散によって集電および導電サイトの増大を図ることを目的とする。つまり、水素吸蔵合金の表面特性の改質をニッケル分散とフッ化物の形成を同時に行なう傾斜型機能の付与を目的とする。
【0007】
ところが、上述の水素吸蔵合金に関する先行技術は、水素吸蔵合金の失活、特に水による失活の防止を考慮していないため、水素吸蔵合金の失活防止という点で未だ不充分なものである。
例えば、銅による無電解メッキでは、電解液中での水素吸蔵合金の失活、重量あたりの水素吸蔵量の低下が生じるおそれがある。なお、フッ化物処理も同様であり、さらに再現性に難があり、技術的に未確立であると考えられる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、請求項記載の発明は、水による水素吸蔵体の失活を防止することを課題とするものである。一般的に水素吸蔵体の失活は、酸素、水、異種ガス(例えば、CO2,CO等)により水素吸蔵能力が低下することであるが、水による失活を防止できれば、顕著な成果となることから、本発明では水による失活を有効に防止することとした。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、水素は透過させるが水は透過させない物質を水素吸蔵体の表面に設けることができれば、水に起因する水素吸蔵体の失活を有効に防止できることを見出し本発明に至ったものである。すなわち、請求項1記載の発明は、ゾルゲル法により複合水素吸蔵体を製造する複合水素吸蔵体の製造方法であって、疎水性の金属−酸素−金属ネットワークの形成を液状組成物の調液のときに進行させておく液状組成物調整ステップと、前記液状組成物調整ステップにて調整された液状組成物で水素吸蔵体の表面を覆うセラミック皮膜形成ステップと、を備えたことを特徴とし、
前記液状組成物調整ステップの液状組成物が、下記の一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物を含み、
A m Si ( OR ) 4 − m ( 1)
式中、Aは有機官能基を表わし、
Rは水素、アルキル基、又は有機酸残基を表わし、
mは正の整数で1≦m≦3を表わし、
前記有機ケイ素化合物を液中で加水分解及び重縮合させて得られる無機高分子を含む前記液状組成物を、前記水素吸蔵体の皮膜とすることを特徴とする複合水素吸蔵体の製造方法である。疎水性ネットワークの例としては、ケイ素―酸素―ケイ素結合を基本骨格とし、これに有機官能基が結合し、さらに外縁部にOR基が結合したものが例示できる。
【0010】
ここにいう疎水性のセラミックス皮膜は、水は透過しないで、水素を透過できるものを意味する。この皮膜の孔径は数Åから数nmまでの範囲が例示できる。
ここで請求項1記載の発明である前記水素吸蔵体は粉体が挙げられ、前記皮膜で前記粉体をカプセルとしたことを特徴とすることも好適である。これにより請求項1記載の発明と同様の課題が達成される上、カプセル化により、加工性等に優れるという利点がある。
例えば溶剤および/またはバインダ−類と混合してペ−スト状となし、これを塗布し乾燥させることによって、複合水素吸蔵体の集合体を容易に形成することができる。同様の方法で布に分散させたり、樹脂板の中に混練することもできる。また、管状物に充填して使用することもできる。
請求項1記載の発明である複合水素吸蔵体は、内側に多孔質の支持体を設け、該支持体の外面に前記水素吸蔵体からなる層を設け、該層の外面に前記セラミックス皮膜からなる層を設け、さらに全体形状が管状に形成されてなることを特徴とすることも可能である。これにより請求項1記載の発明と同様の課題が達成される上、水/水素系からの水素の回収が効率化する利点がある。例えば、太陽光による水の分解プロセスによって生成することができる、水素と水の混合物から水素を選択的に分離する技術分野に適用される。
【0012】
請求項2記載の発明は、
前記液状組成物調整ステップが、
前記一般式(1)の有機官能基Aを有する有機金属化合物と、
該有機官能基Aを有さない下記式(2)の有機金属化合物と、
M(OR)n (2)
式中、Mは、希土類金属、Ti、Zr、Al、Siの何れでもよく、Rは式(1)と同じ意味を有し、nは正の整数でn=3または4、
を混合するステップを備え、前記一般式(1)及び(2)において、ORの一部もしくは全部が加水分解及び重縮合反応を起して、分子中に金属―酸素―金属の結合を有するに至る請求項1に記載の複合水素吸蔵体の製造方法である。それの具体的な好適例として、有機官能基と、加水分解に続いて重縮合反応する基とを有する有機金属化合物を液中で加水分解及び重縮合させて得られる無機高分子を含む液状組成物を、水素吸蔵体の表面に塗設などを行い、これを乾燥させたものが挙げられる。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記セラミックス皮膜の水に対する接触角が60°以上であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の複合水素吸蔵体の製造方法である。これにより請求項1記載の発明と同様の課題が達成される上、皮膜に孔径50nm以上のマクロ孔が存在するような場合にでも、水が孔内に拡張したり、水が孔を浸漬するのを事実上防ぐことができる。つまり、セラミックス自身の性質が疎水的でも、皮膜にした時にできる可能性のあるマクロ孔のような開口構造を通して、水が内部に浸入するおそれがあるが、接触角を60°以上としておくと、こうした欠陥を伝わって水が浸入することが無いという利点がある。接触角の求め方については、測角器で接触角を直接的に測定する方法と、表面自由エネルギーを測定しこれを基にして計算により求める方法がある。
【0014】
前記皮膜は、ゾルゲル法で形成することが可能である。
【0015】
ここでいうゾルゲル法とは、溶液法の1種であり、液相から皮膜を形成するものである。皮膜原料(例えば、セラミックス等)、溶媒、水を添加して調整したゾルを、いくつかの方法、例えば、滴下法、スプレー法、スピンコート法、ディップコーティング法、ドクタ−ブレ−ド法、はけ塗り法、超音波スプレ−法等によって、水素吸蔵体に付けて皮膜とし、ゲル化させ、その後、乾燥、熱処理によって複合水素吸蔵体とする。
例えば、Si(OEt)4のみを原料とする通常のゾルゲル法では、接触角が60°以下になることが多く好ましくないが、加水分解基を大きくしてやる、つまりSi(OiPr)4やSi(OnBu)などを原料として用いると、接触角を大きくすることができる。また、Si(OEt)4が原料のときでも、ゾルゲル反応時の触媒の添加を無しにしたり水の添加量を少なくしたりして、加水分解反応の程度を下げてやると、接触角が大きくなる場合がある。ただし、これらの加水分解基は、皮膜中でも徐々に加水分解して接触角を下げるおそれがあると考えられる。
【0016】
官能化ゾルゲル法で皮膜をつくると、Si―C結合をもつ有機官能基が皮膜上に固定され、これが疎水性の原因となるが、化学的に極めて安定で、どんな湿潤環境下でも、つまり、酸塩基が共存したり溶剤が混在したりしても、加水分解をうけることがないので、性能が持続する利点がある。他のゾルゲル法で加水分解基をバルキ−なものにしても、疎水性はだせるが、酸塩基共存下では加水分解をうけるため、徐々に親水化していくおそれがあると考えられる。
【0017】
ここでいう、官能化ゾルゲル法とは、有機官能基と、加水分解につづいて重縮合する基とを有する有機ケイ素化合物を液中で加水分解及び重縮合させて得られる無機高分子を含む液状組成物を、前記水素吸蔵体の皮膜とするものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本実施形態でいう水素吸蔵体は、水素吸蔵金属単体(例えば、Mg,Ti,Zr,La等)、水素吸蔵合金(例えば、Mg2Ni,TiFe,ZrMn2,LaNi5等)、或いはこれら水素吸蔵合金の一部置換合金(三元系、四元系、五元系等)をいう。
【0019】
水素吸蔵合金のうちでもZrMn2は、もっとも有望な水素吸蔵体の1つと考えられ、この電子化合物を基礎とした多くの合金が研究されている。例えば、ZrMn2については、下記の通りの研究がなされている。
(1)Fujii,H.,Pourarian,F.,Sinha,V.K.and Wallace,W.E.,J.Phys.Chem.,85,3112(1981)
(2)Sinha,V.K.,Pourarian,F.and Warrace,W.E.,J.Less-Common Metals,87,283(1982)
(3)Suzuki,A.,Nishimiya,N.,Ono,S.,Higano,S,and Kamino,K.,Chem.Lett.,75(1982)
(4)Suzuki,A.,Nishimiya,N.and Ono,S.,J.Less-Common Metals,89.263(1983)
(5)Nishimiya,N.,Mat.Res.Bull.,19,1559(1984)
(6)Sinha,V.K.,Yu,G.Y.and Warrace,W.E.J.Less-Common Metals,106,67(1985)
【0020】
特に、Zr系合金は、大気と接触すると水素化能力を容易に失い易く、また発火しやすいにもかかわらず、Ti,FeまたはNiで、ZrとMnの一部を置換することにより、平衡解離圧を幅広い範囲内で制御することが可能である(上述の文献(3)-(5)参照されたい)。
【0021】
また、本実施形態でいうセラミックス皮膜には、酸化物(SiO2,Al2O3,TiO2,ZnO,) が例示できる。その他、金属−酸素−金属を骨格とする無機高分子に有機官能基が結合したプリカーサー(前駆体)、或いは、混合酸化物、さらには、酸化物のヒドロキシル体或いは―OR体なども含まれる。
【0022】
本実施形態におけるセラミックス皮膜の接触角の測定方法は、主に、2つある。1つは、基板(ガラス板等)上にゾル状態におけるセラミックス皮膜となるゾル液を厚く塗るとそのもの自身の性質が発現することを利用したものである。セラミックス皮膜となるゾル液を平板状基板に拡げて乾燥させてゲルとなし、これを水平に置いたものをサンプルとなして一定量の水を滴下し計測するものである。詳しくは、日本化学会編「新実験化学講座18「界面とコロイド」丸善(株)1977,97〜99頁を参照されたい。
他の1つは、分散成分表面自由エネルギーと極性成分表面自由エネルギーを計測し、その計測値から接触角を計算する方法である。そのうちの一例は、Kaelble’s methodである。詳しくは、堤 和男、材料科学Vol.22 No.4、無機材料とポリマーの接着、第22〜27頁を参照されたい。
【0023】
上述の2つの測定方法による接触角の値は、測定対象物が同じでも測定結果が厳密には一致しない場合もあるが、それほどの誤差は生じないと考えられるので、いずれを採用しても良いと考えられる。水素化ができるかどうかの閾値は、60°以上である。上限値については実験していないが、180°であると考えられる。
【0024】
セラミックス膜形成については、従来からのゾルゲル法でも良いし、新しいタイプのゾルゲル法、即ち、官能化ゾルゲル法の使用により行われるものでも良い。
【0025】
次に官能化ゾルゲル法について説明する。この官能化ゾルゲル法は、下記の要件▲1▼水素吸蔵体表面に官能基を付与して化学反応性をもたせた皮膜であること。▲2▼このとき、官能基の種類と官能基の密度を制御できること。▲3▼ウエットプロセスであること。つまり、真空、プラズマ、気相イオンなどを用いないこと。▲4▼再現性のよい表面処理が行なえること。▲5▼水素吸蔵体表面の疎水性も制御できることを同時に満足する表面処理方法である。
【0026】
この官能化ゾルゲル法は、所望の有機官能基と、加水分解と同時に重縮合する基とを有する有機ケイ素化合物を、液中で、必要により触媒の存在下で、所望の有機官能基では反応をおこさずに加水分解させるとともに重縮合反応を行なわせて、その有機ケイ素化合物のケイ素部分がケイ素―酸素―金属とつながった無機高分子を含む液状組成物を水素吸蔵体表面に塗布し、乾燥させるものである。ここでいう金属は、すべての金属を指すのではなく、ケイ素またはアルミニウム、チタンもしくはジルコニウムを指すものとする。即ち、加水分解とともに重結合して得られた金属―酸素―金属の結合を含む無機高分子が水素吸蔵体と密着し、しかも所望の官能基がそのまま残って水素吸蔵体表面上に存在するので、所望の機能が得られるのである。
【0027】
水素吸蔵体に適用される官能化ゾルゲル法に使用することのできる有機ケイ素化合物の具体例は、下記の一般式(1)で表わされる。
AmSi(OR)4 − m (1)
式中、Aは有機官能基を表わし、
Rは水素、アルキル基、又は液中、好ましくは有機溶媒中でアルキル基と置換し得る官能基を表わし、
mは正の整数で1≦m≦3を表わし、そしてmが2以上の場合は、Aは同種のものとすることも、異種のものが交ったものとすることもできる。
【0028】
一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物は1種類のみで使用してもよく、また数種類のものを混合して用いてもよい。また、有機官能基Aを有さない下記式(2)の有機金属化合物と混合するのが好ましい。
M(OR)n (2)
式中、Mは、Ti、Zr、Al、Siの何れでもよく、Al、Si、Tiが原料入手性の点で好ましい。Rは式(1)と同じ意味を有し、nは正の整数でn=3または4である。
ここで、m=1または2のときは(1)のみで官能化ゾルゲル法を行うことが可能である。しかし、好ましくは(2)と混ぜて使用することができる。
一般式(1)及び(2)において、ORの一部もしくは全部がハロゲン原子に置きかわったものも、水素吸蔵体を調製するための有機金属化合物として好適に使用することができる。更に、水、アルコール類などの作用によって、一般式(1)及び(2)で示される化合物を生成し得る、前駆体有機金属化合物も全て使用できる。ハロゲン原子の代表例はF、Cl、Br及びIである。
また、一般式(1)及び(2)において、ORの一部もしくは全部が加水分解及び重縮合反応を起して、分子中に金属―酸素―金属結合を有するに至った有機金属化合物も使用することができる。
【0029】
一般式(1)及び(2)の有機金属化合物を混合して、加水分解及び重縮合反応を行なわせて、金属―酸素―金属の結合を含む高分子又はコロイド状重合体を形成させ、この液状組成物を用いて水素吸蔵体表面を処理した場合には、化合物(1)由来の官能基Aのほかに、液状組成物と水素吸蔵体表面の結合に使用された残りの化合物(2)由来のOH基、又は場合により化合物(1)由来のOH基と化合物(2)由来のOH基とが、水素吸蔵体表面に植えつけられる。このOH基は、一般式(2)中又は一般式(1)と一般式(2)中のOR基が加水分解してOH基になったものに他ならない。
【0030】
処理済の水素吸蔵体表面上にある有機官能基Aの密度は、上記液状組成物の濃度を変化させるほか、化合物(1)及び(2)の相対量を変化させることよっても制御し得る。
【0031】
また、式(1)のAは吸蔵体表面に共有結合的に固定される官能基であり、式(1)の形で安定に存在するものであればいかなるものでもよい。処理済表面の化学反応性はAの種類と量によって制御することができる。
Aの代表例としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、プロパルギル基、エポキシアルキル基、シリル基、シロキシ基が挙げられる。これらのものは、目的に応じて例えば以下に示す様な1個もしくは複数の官能基により、置換されていてもよい。
ハロゲン基、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基、アルケニル基、プロパルギル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、カルバメート基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホニル基、スルホ基、シアノ基、イソシアナト基、チオイソシアナト基、スルファモイル基、ニトロ基、シリル基、シロキシ基。
【0032】
以下にAのより具体的な例を示す。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【0033】
一般式(1)及び(2)に現れるRは、水素、アルキル基又は有機溶媒中でアルキル基と置換し得る官能基を表し、単一のものでもいくつかのものが併存するものでも良い。アルキル基は直鎖状、分枝状、環状等いずれのものとすることもでき、その代表例は、CH3−,C2H5−、n−C3H7−、i−C3H7、n−C4H9、sec−C4H9、t−C4H9
【化6】
である。有機溶媒中でアルキル基と置換し得る官能基Rの例は、Cl、Brなどのハロゲン原子、有機酸残基などである。有機酸残基としては
【化7】
が用い易いが、炭素数の多いものも使用できる。官能基Rとアルキル基との置換には、Rとアルキル基とがそのままで置換するものの他、−ORが−O−アルキル基と置換するものも含まれる。
また、−ORは一座配位型のものに限定されず、ジオール、トリオールなどの多座アルコキシド、シュウ酸、コハク酸などの多座有機酸残基とすることもできる。
【0034】
一般式(1)で表わされる化合物の具体例としては以下のようなものがある。
H2N(CH2)2NH(CH2)3−Si(OCH3)3
CH2=CH−Si(OCOCH3)3
CH2=CH−Si(OC2H5)3
H2N(CH2)3−Si(OC2H5)3
OCNCH2CH2CH2−Si(OCH3)3
CH2ClSi(OCH3)3
CH3Si(OCH3)3
HSCH2Si(OCH3)3
【化8】
CH2=CHSi(OCH3)3
CH2=CHCH2Si(OC2H5)3
HSCH2CH2CH2Si(OCH3)3
【化9】
【化10】
(CH2=CH)2Si(OC2H5)2
【化11】
NC(CH2)2Si(OC2H5)3
【化12】
CH2=CHCH2NH(CH2)3Si(OCH3)3
【化13】
CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OCH3)3
【化14】
CH2=CHCOO(CH2)3Si(OCH3)3
【化15】
【化16】
CH≡CSi(OC2H5)3
CH=CHSi(OCOCH3)3
一般式(2)で表わされる化合物の例は以下のものが挙げられる。
【化17】
Si(OCH3)4
Si(OC2H5)4
Si(OCOCH3)4
Si(OC3C7)4
【化18】
Si(OC4C9)4
【化19】
Ti(OC3C7)4
Ti(OC4C9)4
Zr(OC3C7)4
【0035】
一般式(1)及び(2)で表わされる有機金属化合物を加水分解とともに重縮合させるための有機溶媒の例は以下のものである。
メタノール、エタノール、n−及びi−プロパノール、1−及び2−ブタノール、イソブチルアルコール、アミルアルコール、ペンタノール、フーゼル油、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油べンジン、リグロイン、ガソリン、燈油、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、O−、m−及びp−キシレン、スチレン、クレゾール、テトラリン、デカリン、テレビン油、クロロホルム、四塩化炭素、塩化メチレン、塩化エチレン、塩化エチリデン、トリクロルエタン、テトラクロルエタン、トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン、トリクロルプロパン、塩化イソプロピル、ジクロルプロパン、塩化ブチル、塩化アミル、塩化ヘキシル、臭化エチレン、テトラブロムエタン、クロルベンゼン、O−ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、ブロムベンゼン、クロルトルエン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、へキシルエーテル、メチルフエニルエーテル、エチルフエニルエーテル、ブチルフエニルエーテル、エチルベンジルエーテル、1,4−ジオキサン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2−エトキシテトラヒドロピラン、シネオール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、ホロン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフエノン、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸メチルイソアミル、酢酸メトキシブチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸ヘキシル、酢酸シクロへキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸アミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸アミル、酪酸イソアミル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸アミル、安息香酸メチル、シュウ酸ジエチル、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチグリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフエニルエーテル、エチレングリコールモノフエニルエーテルアセテート、エチレングリコールベンジルエーテル、メトキシメトキシエタノール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコール酪酸モノエステル、エチレングリコールプロピオン酸ジエステル、エチレングリコール酢酸ジエステル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエテール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリメチレングリコール、トリメチレングリコールジメチルエーテル、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、3−メトキシ−3−メトキシブタノール、ギ酸、酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、無水プロピオン酸、酪酸、吉草酸、乳酸、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、ジメチルスルホキシド、リン酸トリエチル、ジメチルホルムアミド、γブチロラクトン、γ−バレロラクトン、6−へキサノラクトン、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸ブチル、アジピン酸ジエチル、炭酸エチル、硫化ブチル、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、モノ−、ジ−およびトリエタノールアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、グリセリン。
特に好ましいものは、メタノール、エタノール、i−プロパノール、へキサン、シクロへキサン、ベンゼン、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アセチルアセトン、N,N−ジメチルホルムアミドおよびモノエタノールアミンである。
有機溶媒は単独で使用してもよく、或いは2種以上のものを混合して使用してもよい。
【0036】
一般式(1)及び(2)で表わされる有機金属化合物を有機溶媒中で加水分解する場合、有機溶媒中に残留して含有されている水をそのまま加水分解剤として用いることも可能であるが、液状組成物の調整をある時間内で終了させるように制御するためには、一般に有機金属化合物1モル当り、0.5乃至1,000モルの水を加えるのが好ましい。水の量がこの範囲より少ないときは、加水分解とそれに続く重縮合反応の進行が非常に遅くなり、水素吸蔵体表面処理が可能となるまでに数日を要することがある。一方、水の量がこの範囲より多すぎる場合は、生成組成物を水素吸蔵体表面に塗設しても密着不良を起す他、組成物の経時安定性が悪く、すぐゲル化してしまうことが多いため、カプセル膜化作業を安定して行ないにくくなる。
【0037】
水は、加水分解のための反応物質として作用する他に、本実施形態の処理液の溶媒としての役割をも併せ有することができる。一般式(1)及び(2)で表わされる化合物の加水分解速度が十分遅くて容易にゲル化しない条件下では、液状組成物を水系媒質中で調製することができる。
反応温度は室温〜100℃程度が常用されるが、還流冷却器を付設することによって、溶媒の沸点よりも高い温度で反応させることもできる。
反応温度は、加水分解及び重縮合反応に要す時間を決定する。常温で数日かかる反応であれば、80℃では数時間で終了するので、目的に応じて適当に設定する。
【0038】
必要に応じて使用される触媒としては、塩酸、リン酸、酢酸などの酸、又はアンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの塩基が使用できる。触媒の添加量は、一般式(1)及び(2)で表わされる有機金属化合物1モル当り0.01モルないし0.1モル程度である。ただし、0.1モル以上の方が好適な場合もある。触媒添加量は多くても1モルが適当であり、添加しすぎて無駄になるのを避けることができる。
触媒の添加は、触媒そのものを単体で加える方法のほか、触媒溶液を加える方法によっても行なうことができる。例えば、塩酸をそのまま加える代わりに、塩酸の無水メタノール溶液を加えてもよい。また、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドも、例えば水溶液やエタノール液として使用することができる。
【0039】
一般式(1)及び(2)で表わされる1種もしくはそれ以上の有機金属化合物、有機溶媒、水、及び場合により触媒からなる組成物を、適当な反応温度、反応時間、及び場合により適当な攪拌条件を選んで反応させると、加水分解とともに重縮合反応がおこり、金属−酸素−金属の結合を含む高分子又はコロイド状高分子が生成し、液状組成物の粘度が上昇し、ゾル化する。
【0040】
なお、こうして得られたゾルを重合させてゲルとし、これを400−1000℃に加熱するとガラスができるが、この方法はゾルゲル法としてよく知られている。ガラス生成反応を別の基板上で行わせると、酸化物皮膜が塗設できることは公知である。
【0041】
本実施形態では、上記ゾルの中に存在している金属―酸素―金属結合からなる無機高分子を被処理対象である水素吸蔵体表面と結合させて、該無機高分子に共有結合的に固定している有機反応性基が水素吸蔵体表面上に植え付けられる。
【0042】
本実施形態において用いられるゾル液もしくは液状組成物は、水素吸蔵体表面に塗設後、風乾ないし加熱乾燥させると、金属―酸素―金属結合からなる無機高分子がゲル化すると同時に水素吸蔵体表面と密着する。乾燥は溶媒、残留水及び場合により触媒を揮散させるために行なうものであるが、必要により工程を省くこともある。本実施形態に従う液状組成物中の無機高分子部分と水素吸蔵体表面との間の密着性を高めるため、積極的に温度をかけることもできる。この場合の乾燥工程は、溶媒、水等の揮散後も、継続して実施し得る。最高乾燥温度は、水素吸蔵体表面に植えつけられた有機官能基((1)式A)の分解温度より低くしなければならない。通常、室温〜200℃、好ましくは室温〜150℃までの温度が使用される。
【0043】
なお、本実施形態の方法によって処理することのできる表面を有する水素吸蔵体の種類、形状、表面前処理状態等は任意である。
【0044】
水素吸蔵体は基板、板状、パイプ状、線状、粉体、いずれでも良い。また、液状組成物(ゾル液)の施工方法は、ハケ塗り、浸水塗布、アトマイジング、スピンコーティング、ドクターブレード塗布等、何れのものも使用することができ、水素吸蔵体表面の形状や必要処理膜厚等を勘案して決められる。
【0045】
水素吸蔵体表面は、油状物などが付着していない清浄な面であることが好ましいが、油状物などの付着により汚染されている場合を除き、そのままの状態で用いることができる。
【0046】
水素吸蔵体表面に自然酸化皮膜の生成したものも好適に使用し得る。酸化物皮膜を溶射、塗布、CVD法等によって表面に設けたものも使用し得る。例えば表面シリケート処理、表面窒化処理等によって、水素吸蔵体表面にセラミック表面層が設けられたものも本実施形態の方法に包含される。
【0047】
本実施形態の液状組成物は、一般式(1)及び(2)で表わされる1種もしくはそれ以上の有機金属化合物、有機溶媒、水、及び必要により使用される触媒からなる組成物を、適当な反応温度、反応時間、及び場合により適当な攪拌条件を選んで反応させた結果得られるものであるが、水素吸蔵体表面上に施工して無機高分子がその水素吸蔵体表面と密着し、有機官能基が固定されるという効果をあげられる状態まで加水分解及び重縮合反応が進行していれば、どの液状組成物でもよい。
実際に液状組成物を金属表面上に塗設して赤外吸収スペクトル、ラマンスペクトル等を測定して、表面官能基の存在を確認できる。
【0048】
また、加水分解反応と重縮合反応とを分光学的に確認して反応の進行度を知ることもできる。加水分解の進行については、例えば赤外吸収スペクトル法を使用すると、一般式(1)中の−ORに基づく振動吸収スペクトルが減少し、−OH基に基づく振動吸収スペクトルが強くなって行くことで判断できる。それに続く重縮合反応は、例えば、赤外吸収スペクトルに金属―酸素―金属結合に由来する振動吸収ピークが出現し、だんだん強くなることから確認できる。また、1H−NMRスペクトルを測定すれば、一般式(1)中のAのスペクトル幅が重縮合の進行によって広がるのが観測され、このことからも反応の確認が可能である。
29Si−NMRスペクトルを測定するとSiから出る4本の結合手のうちの幾つがSi−O−Si結合を形成しているのかを定量することができる。重縮合反応の進行を確認し、適当な反応進行度の時に終了させるための指標として利用できる。
液状組成物は、こうしたスペクトル情報のどれか一つが確認されると、本実施形態の目的を達成するのに好適に使用し得る。
とくに29Si−NMRスペクトルから得られる情報をもとにして、加水分解し得るSiOR基の総数の50〜85%がSi−O−Si結合形成に参加している状態のゾルとするのが密着の観点から好ましい。
更に簡便には、液状組成物の調液時の粘度をモニタしておき、反応開始前の粘度に比べて有意な粘度上昇が観測されたら、その時点で液状組成物ができたと判断できる。
【0049】
組成や反応条件によっても異なるが、調液時の粘度は0.2センチポイズから10ポイズ程度までが好ましい。粘度が低すぎると重合の進行のモニタリングが困難となり、粘度が高すぎると水素吸蔵体上に塗布しにくいばかりでなく、乾燥後に膜が剥離することがあり、好ましくない。液状組成物を水素吸蔵体表面に塗布する際は、適当な溶媒、水等の液体で希釈して使用することができる。或いは、調液時に使用した溶媒の一部を揮散させて濃縮してすることもできる。塗布方法、目的とする塗布膜厚等によっても異なるが、塗布時の液粘度は0.2センチポイズから10ポイズ程度までが用いやすい。
【0050】
液状組成物中の無機高分子の分子量で判断するとすれば、トリメチルシリル化処理で反応を止めた液状組成物をべンゼン溶液とし、その凝固点降下から数平均分子量を求める方法があり、結果が1,000から数万のオーダーになることを確認すればよい。
官能化ゾルゲル法によって処理された水素吸蔵体表面は、意図された官能基を意図された量だけ有しており、種々の化学的機能を発現する。
【0051】
ところで、一般に、物質の表面自由エネルギーγは、分散力成分γdと、極性成分γpとに分離できるが、セラミックス皮膜を疎水性とするためには、γpを低減する必要があると考えられる。本実施形態に従う方法で処理された水素吸蔵合金についてのγd及びγpは、一般式(1)で表わされる有機金属化合物のAの種類とその相対量とで決定できるので、表面に塗設しようとする相手方のγd及びγpに合わせることも可能で、良好な密着性が得られる。
【0052】
ここで、水素吸蔵体への水の浸入を防ぐには、水素吸蔵体の表面上に設けられたセラミック皮膜の官能基Aの他にOH基を少なく固定して疎水性を強くするか、官能基A自身の反応性を利用して、これを有機共重合体に変換するか、何れかの方法がある。
前者の場合、水素吸蔵体表面のOH基は一般式(2)の有機金属化合物を少なく用いることによって、水の浸入を減少させることができる。一般式(2)の有機金属化合物は、そのOR基が加水分解によってOH基に変わり、その大部分は金属―酸素属結合に使われてしまうが、一部残ったものが、表面OH基として存在することになる。
後者の場合、一般式(1)の官能基Aが二重結合を有するのが好ましく、表面にこれと重合することのできる有機モノマ−を塗布した後に、ラジカル発生剤を熱または光で刺激して、疎水性有機物質をSiに直接結合させることとする。
つまり、一般式(2)で表される有機金属化合物の量の制御、或は、官能基Aの選び方などによって疎水性を高めることができる。
【0053】
以下、一般式(1)の有機金属化合物が3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(3-methacryloxypropyltrimethoxysilane)、
【化20】
(以下、γ−MPSと略す)、一般式(2)がSi(OC2H5)4である液状組成物で水素吸蔵体の表面を処理した例について、更に具体的に記載する。
本実施形態でいう官能化ゾルゲル方法は、好適例としては、Si(OC2H5)4および、バルクな有機官能基を有するシランカップリング剤であるγ-MPSの加水分解から始まり、Si(OC2H5)4の加水分解によって形成されるシロキサンネットワークに加水分解されたγ−MPSが結合されるものである。Si(OC2H5)4とγ-MPSとのモル比は概ね18:1である。このモル比が高くなるほど、即ち、γ-MPSの比率が高くなるほど、接触角も高くなる。現在のところ、18:9までは実験で効果があることを確認している。
ビーカーにSi(OC2H5)4及びγ−MPSをとり、溶媒としてエタノ−ルを加え、さらに加水分解剤として水を加える。この混合液に触媒としてリン酸を加え、室温でそのまま攪拌して一様な溶液とする。
次にこの溶液を、攪拌機構と還流冷却機構とを備えた三口フラスコに移し、室温のオイルバスに浸す。攪拌しながら浴温を80℃乃至90℃に上昇させる。反応の進行とともに溶液が粘稠性を増してくるが、このとき、溶液中では以下に示す反応が入り乱れておこっているものと考えられる。
【化21】
ここではSiに結合している4つの官能基のうち、1つの方向に重縮合が伸びていくように記載したが、実際に幾つかの方向へ同時に縮合鎖が伸びていくと考えられ、また同種同士の重縮合の他に、異種間のヘテロ重縮合反応も統計的頻度でおこっていると考えられているので、反応式として完全に書き表わすことは不可能である。
こうして加水分解及び重縮合反応がある程度進行すると溶液中には次式で表わされるような高分子が存在するものと考えられる。
【化22】
実際にはSi―O―Si鎖の長さや官能基含有率の異なる多種多様の化学種が存在することになるが、その平均組成を化学式として表現すると、
【化23】
ただし、b+1/2(a+c)=2と近似される。反応途中の−OC2H5基や−OCOCH3基もゼロはないと考えられるが省略した。この式におけるa、b、cの値は、原料として用いる有機ケイ素化合物の相対比をはじめ、水の量、溶媒の種類と量、触媒の種類と量、反応温度、反応時間など、多くの実験パラメータに依存するが、逆にこれらの条件を揃えることによって任意に設計されたa、b、cの値をもつ最終生成物を得ることができる。
こうして得られた液状組成物を水素貯蔵合金粉末に被覆してカプセル化するか、或いは、板状の水素貯蔵体表面上に塗布する等、表面処理が行われることとする。
【0054】
ところで、超高真空中での清浄表面でない限り、水素吸蔵体表面上には幾らかの酸化皮膜が存在し、その表面には一部OH基の含有されていることが知られている。液状組成物を水素吸蔵体表面に塗布すると、Siのまわりの単結合で回転の自由度の残っている部分は回転し、全体として無機性の高い部分を水素吸蔵体表面側に向けて、上記液中化学種が水素吸蔵体表面に付着する。この時の駆動力は、水素吸蔵体表面上の酸化物ないし表面OH基と液状組成物中のSi―O―Siネットワークないしシラノール基との間の相互作用と考えられる。
【0055】
液状組成物を表面に塗布した後、熱を加えると、塗布溶媒や触媒残留物などを早く揮散させることができる。水素吸蔵体表面と液状組成物中の無機高分子体部分との間の化学結合の形成も、加熱によって促進されると考えられる。結合の様式の詳細は不明であるが、水素吸蔵体表面のOH基と無機高分子のOH基との間の脱水縮合が支配的であろう。
【0056】
なお、こうして得られた水素吸蔵体のセラミックス皮膜には、ビニル基とヒドロキシル基が存在し、その多くは水素吸蔵体から外に向かってとび出していると考えられる。
【0057】
つぎに本実施形態の複合水素吸蔵体のカプセルについては、大阪工業試験所と同様の利用分野がある。即ち、具体的利用態様としては、マイクロカプセルをそのまま用いることもできるし、或いは、CIP(冷間等方プレス)等により圧縮成形して高密度に押し固め、粒子間の接触面積を増大させることもある。ヒートポンプ、コンプレッサ、水素ガス分離等に利用できる。
【0058】
水素ガス分離の具体的態様である水素捕集装置1について、図1(a)(b)を参照して説明する。この水素捕集装置1は、図1(a)に示す通り、容器2にTiO2粉末3を分散させた水4を満たし、複合水素吸蔵体5を水4に浸し、複合水素吸蔵体5から水素6をパイプ7から回収できるようにしたものである。
この複合水素吸蔵体5は、パイプ状の支持体10の外表面に、大径の水素吸蔵合金11(例えば、ZrMn2)を装着し、この水素吸蔵合金11の外表面にゾル液を塗布しセラミック皮膜12を形成したものである。水素捕集効率を高めるため支持体10に貫設孔15が半径方向に複数個設けられている。
支持体10は、金属の圧粉成形体、AD−Al(陽極酸化処理されたアルミニウム板)、有機物ではOPP(オリエンテッドポリプロピレン)等が挙げられる。陽極酸化の例として、厚さ0.3mmのアルミニウム板をアルカリで脱脂した後、7%硫酸水溶液中で厚さが2.0g/m2となるよう陽極酸化処理を行ない基板を作成した。
水4に光を当てると、TiO2粉末3の触媒作用により水素が発生し、水素/水系が形成される。水素はTiO2粉末3の表面でまた水に戻る問題があるので、水中での拡散距離をできる限り少なくして捕集するようになっている。水素はセラミック皮膜12を透過して水素吸蔵合金11に吸蔵される。セラミック皮膜12は疎水性であり、水素は透過させるが水は入ってこないように作用する。したがって、水4による水素吸蔵合金11の失活を防止するとともに、水素を効率的に捕集できる。水素吸蔵合金11に吸蔵された水素は、支持体10を通過し、パイプ7の中空部16を通って回収される。
【0059】
本実施形態の複合水素吸蔵体によれば、水素ガスと速やかに反応し、多量の水素を可逆的に吸蔵、放出できることから、水素吸蔵や水素輸送用の素材として活用できる。さらに水素化反応の際の反応熱を利用した蓄熱やケミカルヒートポンプヘの応用,吸蔵水素の電気化学反応を用いた二次電池などの水素吸蔵電極としての応用、水素の選択吸収性を用いた水素ガスの分離・精製への応用、水素放出圧力を利用した水素コンプレッサーやアクチュエータなどの動力変換への応用など、広くエネルギー吸蔵及びエネルギー変換の用途への開発が期待できる。
【0060】
【実施例1】
純度99.5%のジルコニウム粒と純度99.95%のマンガン板を砕いたものを、ZrMn2の組成比となるように混合し(全量を約50gとする)、高純度アルゴン中で高周波誘導加熱炉で融解させた後、1000℃で3時間、アニ−ルする。室温まで放冷した後、超硬乳鉢中で粗砕して1cm角程度の塊を得る。乾燥窒素雰囲気中で表面を機械的に研磨して光沢面を出した後、さらに粉砕して5〜10メッシュの粉末とする。
水素化実験はこのままでもできるが、表3、図2、図3の場合はこれにさらに次の操作を加えている。5〜10メッシュの粉をステンレス製容器に入れ、350℃で1時間排気した後、室温に戻し3MPaの水素を1時間吸蔵させる。これを再び350℃で1時間排気して水素を脱蔵させた後、室温に戻し3MPaの水素を吸蔵させる。この操作をくり返して、室温での水素吸蔵速度が一定の値に収束したら、これを最後に350℃で1時間排気した後、室温に戻して得られるZrMn2を出発試料とする。
100mlビーカーにSi(OC2H5)49.55g、水3.68g、γ−MPS0.64g、メタノ−ル25.5gを加えた後、リン酸3.05gをさらに添加し、室温で5分間攪拌し、加水分解及び重縮合を開始させた。反応の開始により液温が上昇するが、そのまま1時間攪拌をつづけることにより、所望の液状物(ゾル液)を作成した。
テトラエトキシシランに対するγ-MPSのモル比は、1/18に調整され、ゾル液が作成される。水素吸蔵合金は、この混合物に浸され、温度333Kで乾燥させられ、セラミックス皮膜により水素吸蔵合金粉末のカプセル膜化が行われる。ZrMn2に対するセラミックス皮膜の重量比は、0.73である。反応時間の短縮が望ましい時は、上記の如く室温で5分間攪拌した。
溶液全体を三口フラスコに移し、還流冷却器をとりつけ、三ロフラスコを室温のオイルバスに浸した。三口フラスコの内容物をマグネチックスターラで攪拌しながら20分程の間に浴温を70℃まで上昇させた。三口フラスコを引きあげて空冷した後、内容物をとり出すと、ほぼ上記と同様のゾル液が得られる。
【0061】
【比較例1】
また、 ゾル液を塗布していないこと以外は全く上記と同様にして水素吸蔵体を得た。
【0062】
【実施例1の効果】
次に水素化能力つまり水素吸蔵能力、或いは処理依存性の試験結果を表1および表2を参照して説明する。
【表1】
表1においては、接触角については板状物でなる複合水素吸蔵体、水素化データについては粉体被覆品でなる複合水素吸蔵体について行ったものである。官能化ゾルゲル法処理液を調整した後、これを分けて、アルミ板に塗って接触角を測る操作と、粉体を被覆して水素化する操作と同時並行させて試験するのが通例である。
表1に示す通り、Si(OC2H5)4にγ-MPSを添加しなかった場合には、最初から接触角が60°を超えないか、或は、最初は接触角が60°を超えることがあるにしても、後述の所定の水素化条件を課した後に改めて接触角を確認してみるといずれも、60°を下回ることが確認されている。膜厚については、セラミックス皮膜重量/水素吸蔵合金重量という比率が膜厚の目安となるが、表1では、この値がほぼ0.2としたものを用いた。
ここで表1最右欄に示す水素化条件は、水に24時間、試料を浸漬しダメージをモデル的に与えた後、100℃で1時間真空排気して3MPaの水素を導入することである。水に対してどれくらい耐久性があるのか試験をするためである。
Si(OC2H5)4にγ-MPSを添加した場合には、接触角は60°以上となり、水素化条件を課した後でも接触角が顕著に変化することがなく、水素化能力が低下しないことが確認されている。Si(OC2H5)4とトリアセトキシビニルシランの組み合わせでも同様に良好な結果が得られることが確認されている。
なお、通常は、液状組成物を酸性触媒で調製するものである。ただし、例えば、Mg等では溶解してしまい皮膜ができないので、ゾルゲル処理液を作った後でアルカリ(例えばアンモニア)で中和したり、最初からアルカリ性触媒(例えばアンモニア)でゾルゲル処理液を作ることもある。無機高分子以外の不要なオリゴマー類を除去する目的で、アルカリ洗浄(PH10)される例がある。また、様々なシランカップリング剤が適用できる。あまりにシランカップリング剤が少な過ぎると水素吸蔵能力が発現しないし、シランカップリング剤が多くなると膜を作りにくくなることがある。
さらに、表1に示すゾルゲル原料、Si(OEt)4に代えて、Si(OiPr) 4 、触媒としてH3PO4を用いると、加水分解率70%(NMR測定による)のときに成膜に使用すると、接触角60°で水素化は達成されるが、水に浸漬して経時させると、24時間で接触角40°に低下し、水素化が適切にできないこととなる。
また、Si(OnBu)4 、触媒としてH3PO4を用いる場合も同様に、はじめは接触角70°で水素化は達成されるが、水に浸漬して経時させると、24時間で接触角50°に低下し、水素化が適切にできないこととなる。
比較例として接触角が低いもの、膜厚の薄いもの、膜にムラがあるものでは水素吸蔵力が劣化するものがある。
【表2】
製造条件は同じであるが、膜厚を変化させたものについて、水素化条件を課した結果を表2に示す。例えば、膜厚の薄いものは水素吸蔵力が劣化するものがある。ここでは、Si(OEt)4とγ-MPSとに触媒としてH3PO4を添加した場合について示す。ほとんどの膜厚につき良好な結果が得られた。ただし重量比が0.002と0.0004では、膜厚が薄すぎて水素化能力に悪影響を及ぼすことが確認された。表2には示していないが、重量比が0.005付近では、水素化能力が良かったり良くなかったりする。SEM(倍率1000〜倍率5000)で観察して一様にみえるものは水素化能力が良く、むらがある不均一なものは水素化能力が良くなかった。
【0063】
ここで、上述の接触角の求め方を説明する。
液体が固体と接触する時、付着力Waは、デュプレ(Dupre)に従って接触角θと関連付けられ、さらに、下記の第3公式に変形される。
(1)Wa=γL(1+cosθ)=2(γs d γL d)1 / 2+2(γs p γL p)1 / 2
ここにいうγLは液体の表面張力、γL dとγL pは、それぞれ、γLの分散成分及び極性成分である。また添字sは固体表面に対応している。この等式を使うことによって、カプセル膜化を行う過程で用いたセラミックス表面上での水の接触角を求めることができる。
水のγL dとγL pは、それぞれ、温度298Kで21.6mJ/m2と51.0mJ/m2であり、実施例1のセラミックスのγs dとγs pは、それぞれ19mJ/m2と13mJ/m2と測定できるので、接触角θは、74.5°となる。セラミックス皮膜表面は、かなりの疎水性と考えることができる。
上記等式から容易に予測できる通り、極性表面自由エネルギーγs pを小さくすることによって、より疎水的な表面を効果的に作ることができる。官能化ゾルゲル法ではなくγ-MPSを単独で塗布する処理方法においては32mJ/m2、Si(OC2H5) 4を単独で処理する方法においては41mJ/m2の結果となり(基板はAD−Alを使用した)、それらの場合におけるγs pは、官能化ゾルゲル法によって得られたものよりも相対的に高い値となる。したがって、γs p値を低くするためには、γ-MPSが本実施形態に従う式(1)の化合物として使用されることが好適であり、官能化ゾルゲル法による疎水性シロキサンネットワ−クの生成と表面にあるシラノール基のブロッキングを必要とする。官能化ゾルゲル法は、これらの要求に沿うものである。
【0064】
(1)式に基づく接触角の計算に際しては、粉状複合材の親水性-疎水性特性を決定することに代えて、水素吸蔵体を被覆するために用いられた同じゾルゲル法前駆体(precursor)溶液から準備したセラミックス皮膜の表面自由エネルギーを測定した。表面張力の異なる、いくつかの水溶液を用いて測定された接触角の値を基にして計算すると、温度298Kで、分散表面自由エネルギーγs dが19mJ/m2、極性表面自由エネルギーγs pが13mJ/m2となった。これにより、接触角が60°以上(74.5°)となる。詳細な手順は、Salou,M.Yamazaki,S.,Nishimiya,N.and Tsutsumi,K.,K.,Coll.Surf.A,in press.に示すので、参照されたい。
ZrMn2合金の官能化ゾルゲル法被覆において、水の接触角は60°以上にしている。
【0065】
こうして水の接触角が60°以上にされた現在のカプセル体により、吸蔵水素量の総和をかなり低減させることなく、水から水素吸蔵合金を保護するという実質的な効果をもたせた理由は、次の通りである。官能化ゾルゲル法による疎水性皮膜は、一般のゾルゲル法(Hench,L.L.and Ulrich,D.R.,"Science of Ceramic Chemical Processing,"Chap,4,Wiley-Interscience,New York(1986)による皮膜特性の孔サイズと比較して孔サイズが小さくも大きくも形成されるが、水素のサイズが小さいことから、孔サイズの大小によらず水素は疎水性皮膜に対して自由に出入りするので、水を疎水性皮膜に接触させてもその表面ではじかれて、疎水性皮膜内部の水素化物にダメージを与えるようなことがないからである。
サルカーブ)が違っていることである。ここでは点線で示す通り概ねリニアな関係が成立し、1:2の直線は、1:1.5の直線と比較して、勾配が急になっている。したがって、格子サイズを設定することで、ある程度、平衡圧を自由にできるので、水素吸蔵合金の設計が容易となる。
【0066】
つぎに水素吸蔵の能力と動的機能の検査結果について説明する。
こうしたカプセル膜化を行った試料の耐水性の程度を評価するため、一晩、試料が水の中に浸けられ、攪拌される、いわゆる加速経時処理を受ける。
試料は、乾燥窒素の雰囲気中で温度333Kで乾燥させる。
水素化の動的パラメータ、即ち、初期吸蔵速度や30秒間に吸蔵される水素の量は、100ミリ秒間隔の圧力データから得られる。
100kPaの水素圧をかけて水素の吸蔵が進行するか否かを調べたところ、カプセル膜化なしで水の加速経時処理を受けたZrMn2合金は全く水素を吸蔵せず、カプセル膜化後に水の加速経時処理を受けたZrMn2合金は水素をよく吸収した。実施例1の効果が顕著にあらわれている。カプセル膜化なしで水の加速経時処理を受けたZrMn2合金に再び水素を吸蔵させるには、350℃で1時間真空排気処理して、室温で3MPaの水素圧を付加するという強い水素化条件が必要であった。この条件で水素吸蔵能力を比較した結果を表3に示す。初速は100ミリ秒間隔で計測した圧力デ−タの微分により求め、30秒間の吸蔵能力は、時刻ゼロと30秒との間の圧力差から求めた。
【表3】
表3に示す通り、カプセル体は、そのような環境のもとで良好な結果をもたらす。カプセル膜化を行った試料の水素吸蔵能力は、明らかに水の浸水後の原型試料のそれよりも高い結果が得られた。
即ち、ZrMn2をカプセル化していないものでは、相対的水素化初期速度が1から0.38まで下がる。ZrMn2をカプセル化すると、0.53から0.47に低下が止まる。1に比べて0.53と値が低くなるが、浸水ダメ−ジ後の最終的な値が0.38から0.47に増加している。つまり、初速は24%程度向上している。
セラミックス皮膜で被覆された粉末合金は、初速度を半減させるが、30秒の間、吸蔵水素量の総和が低減されることはない。カプセル体は、この場合、動的な面から観察すると、不都合な結果をもたらす。しかし、平衡状態の観点から望ましくない影響は受けないと考えられる。
30秒経過後では、ZrMn2をカプセル化していないものでは、浸水ダメ−ジによって1から0.49まで低下するが、ZrMn2をカプセル化すると、0.97から0.68までしか低下しない。したがって、水素吸蔵能力が39%程度向上したといえる。
ここで、表3のNo.1の原型試料について補足する。段落[0061]に記したように、水素吸蔵の速度は、その合金の水素吸蔵履歴によって大きく異なり、水素の吸蔵−脱蔵をくり返すとともに、微粉化が進んで反応に関与する表面積が大きくなる結果、反応速度がだんだん大きくなる。従って表3のような比較をするためには、水素の吸蔵−脱蔵をくり返して、水素の吸蔵速度が常に一定となるまで微粉化された試料を用いる必要がある。
水素吸蔵の速度は、最初の3サイクルの間、水素化と脱水素化の進行に伴い増大し、4サイクル目以降は常に同一の速度を示した。これを8サイクルまで実施し、最後に脱水素化したものを表3のNo.1の試料とした。このサイクルの間、ZrMn2試料の比表面積もまた増加し、Krガスを使用するBET法によって求めた比表面積は、はじめの0.63m2/gから1.89m2/gという極大値に至り一定となった。ZrMn2の比重を知ることによって、0.64μmの微粉状合金の平均直径を計算することができる。こうして一定の振舞をするようになった合金を比較実験に用いたのである。
【0067】
図2に示す通り、通常の容量法測定により求められた平衡解離圧は、X線構造解析によって求められた化学式あたりの合金体積の増大とともに減少する。ここでいう容量法測定とは、PVT法とも呼ばれるものであり、気体の圧力、容積、温度からモル数を求めるものであり、モル数変化と圧力の関係をT=一定で調べる総称である。
AB2タイプとAB1.5タイプの合金の相互関係は、それぞれの傾斜をもつ直線で表される。目的とする用途に応じて、所望の合金組成を設計することができる利点がある。即ち、合金結晶の格子の大きさを制御すると、水素化の程度、水素化物の安定性を制御することができることを示している。格子を小さくしてやると、平衡解離圧力を増大させることができる。つまり、格子のサイズを変えることで所望の合金を製造することができる。ここで、AmBnについて、水素を吸うものAと、水素を吸わないものBとの組み合わせになっている。ここでは、m=1,n=2の組み合わせと、m=1,n=1.5の組み合わせの2例を開示する。水素を吸うものAと水素を吸わないものBの比率が1:2のものと、水素を吸うものAと水素を吸わないものBの比率が1:1.5のものとでは、前述の通り、傾斜(ユニバーサルカーブ)が違っていることである。ここでは点線で示す通り概ねリニアな関係が成立し、1:2の直線は、1:1.5の直線と比較して、勾配が急になっている。したがって、格子サイズを設定することで、ある程度、平衡圧を自由にできるので、水素吸蔵合金の設計が容易となる。
【0068】
図3は、調製されたZrMn2とそれらの合金について、カプセル膜化されたものと、カプセル膜化されないものについての、水素化等温線の対比図である。図3の「ZrMn2−H系」であるが、装置のようなものが特別にあるわけではなくて、物理化学的な系をさすだけのものであり、「ZrMn2とHとの平衡を調べている」というほどの意味である。
水素化反応は、3時間、温度623Kで、耐圧反応容器の排気後に行われる。数回の水素化-脱水素化サイクル後でも同一で再現性ある水素化挙動を示す、微細に砕かれた試料を用いて等温線を測定した。この水素化挙動の再現性を確かめる目的で、水素圧力は100ミリ秒毎に連続して記録される。図3の圧力−組成等温線は通常の容量法によって測定されたもので、6時間にわたって圧力が少しも変化しない状態を平衡と見なし、圧力を記録して、さらに水素を加えて次の点を測定する。この操作は圧力計の能力範囲内で繰り返される。
合金試料を収容する耐圧反応容器および圧力センサーつきの水素供給部がストップ弁によって接続されている。全体を真空に排気した後、ストップ弁を閉じ、水素供給部にある圧力の水素を導入し、圧力を計測した後に、ストップ弁を開く。水素は耐圧反応容器へ拡散し膨張するので圧力は下がる。水素吸蔵合金が水素を吸蔵する分だけ気相の圧力はさらに下がり、6時間〜数日で平衡に達し圧力は一定になる。この時の圧力が平衡圧力である。合金中の水素濃度は吸蔵した水素のモル数と用いた合金のモル数から求めることができる。前者は、ストップ弁を介して接続されている二つの部分の容積を事前に測定しておけば、平衡測定時の温度、圧力をモニタリングすることで計算することができる。最初の平衡測定が終わったらストップ弁を閉じ、水素供給部に新たに水素を導入し、ストップ弁を開いて吸蔵を行わせ次の平衡圧を測定する。以下こうした処理を繰り返す。
図3において、水素濃度はモル比であり、水素吸蔵能力を示すものである。圧力を増大させて行くと、水素濃度がどのように変化するのかを示すものである。
失活していない水素吸蔵合金(○で示す)は、平衡圧力が0からわずかに増加しただけの非常に小さい圧力下で、水素濃度が急激にH/ZrMn2=1.1に達し、以後も平衡圧力の増大に伴い徐々に増大する。従って、水素は、H/ZrMn2=1.1の濃度で容易に吸蔵され、吸蔵した水素の量は、徐々に平衡圧力とともに増加する。
一方、この合金が水により失活したもの(□で示す)は、平衡圧力を上昇させても、水素濃度はほとんど0のままである。一旦、水のダメージを受けると、ZrMn2合金は、圧力100kPaの水素のもとでも、水素を吸蔵する能力を働かせることができなくなった。
ところが、カプセル膜を付与した合金の場合で水により活性を失わせないように処理したもの(■で示す)は、平衡圧力が0からわずかに増加しただけで、水素濃度が0.2に達し、以後も平衡圧力の増大に伴い徐々に増大する。官能化ゾルゲル法によりセラミック皮膜でZrMn2を覆うと、ZrMn2は、水への浸水後でさえ、その能力の半分を維持した。そうしたカプセル膜化は、水から水素吸蔵体を保護する実質的な効果をもつ。従って、カプセル膜化により、水による失活が防止できることが確認された。
なお、上述のカプセル化未処理の比較例では水素吸蔵力が劣化し、場合により発火するおそれがある。
【0069】
【実施例2】
試薬純度のマグネシウムおよびニッケルの粉末を重量比でニッケルが全体の10%となるように混合し、全量約20gをアルミナ製容器に入れ、高純度アルゴン雰囲気内で抵抗加熱により650℃まで加熱する。全体が融解したらいったん温度を下げ、アルミナ製容器に融解フラックスを適当量加え、金属を被覆する。この状態で再び高純度アルゴン雰囲気内で650℃まで加熱し3時間保持する。室温まで放冷した後、表面をヤスリでこすって酸化物を削り取り、金属光沢が出るようにする。さらに、その表面をヤスリで削ったり、糸ノコギリで切断したりして、削り屑および2mm角以下の小片を集めて、これを水素化反応に供する。合金試料約10gをステンレス製容器に入れ、350℃で1時間排気した後、200℃に戻し、3MPaの水素と1時間反応させる。これを再び真空で排気し、350℃で1時間真空排気、200℃で1時間水素化反応というサイクルを繰り返す。200℃での水素吸蔵速度が一定の値に収束したら、これを最後に350℃で1時間排気した後、室温に戻して得られるMg-10wt%Niを出発試料とする。官能化ゾルゲル法に従うゾル液の調整、ゾルゲルカプセル皮膜形成は、実施例1と同様に行った。
【0070】
【実施例2の効果】
本実施形態のカプセル皮膜を形成する方法は、Mg-10wt%Ni合金にも適用された。図4は、カプセル皮膜化を行った、Mgをベースとした合金の温度473Kにおける等温線を示し、2分毎に水素圧を測定することに特徴がある準平衡法によって測定したものである。
この準平衡法は、水素の供給も水素圧測定も自動で行う装置を使用し、合金中の水素濃度は、通常の容量法で測定し、水素導入後2分間隔で水素圧を読みとり、前回の測定値と事実上一致すれば平衡になったと見なし、その測定値を平衡値として記録した後、水素を導入して次の平衡点を求めていく方法である。2分間は一定でも24時間そのままにしておくと反応がもう少し進んで圧力が低下する。そして、真の平衡に到達するが、このようにして等温線を測定すると、1本の測定に何ヶ月もかかる。「2分間は圧力一定」という条件で等温線を測定すると、1日で測定できる。真の平衡に比べると水素濃度が90%〜95%程度の時に、次の平衡点測定に移るため、濃度が5〜10%低く圧力が、数%高い「準平衡」ということになる。
ここで、前記合金に対するセラミック皮膜の重量比は、カプセル皮膜化を行ったZrMn2で経験された反応速度上の不利益を避けるために、0.042程度位に小さいものである。
【0071】
図4に示す通り、第1実施例と同様、容量法により平衡圧力を測定し、測定は2分間隔という点だけか゛ZrMn2の時と異なる。水素吸蔵合金と水素濃度は水素吸蔵能力を示すものである。○で示す通り、カプセル膜化されていない場合で失活していないものでは、平衡圧力が0から増加してゆくと、水素濃度が徐々に増大して行く。□で示す通り、これが水により失活すると、カーブが左側にシフトし、水素吸蔵能力が少し低下する。
一方、●で示す通り、カプセル膜の場合で失活していないものでは、○と対比して、全体としてカーブが右側に大きくシフトし、水素吸蔵能力が向上している。水による失活処理後も■で示す通り、□のカーブよりは右側にあり、水素吸蔵能力の低下を半分くらいに止めているで、水素吸蔵能力が高められる。従って、カプセル膜化により、水素吸蔵能力が高まるとともに、水による失活が防止できることが確認された。水素吸蔵合金は失活防止効果を狙ったものであるが、水素吸蔵能力の活性化促進効果が明確に見られることは予想外の良い効果である。
■で示したデータポイントと□で示したデータポイントを比較することで、耐水性の改善が行われたことがいえる。水に浸された複合試料の水素吸蔵能力は、準備された試料より幾分かは低いが、減少の程度は少しだけである。一方、カプセル膜化を行った試料の水素吸蔵能力は、水への浸水後の比較によると、カプセル膜化を行っていない試料よりかなり高い。耐水性のみならず水素との反応性の増加は、疎水性セラミックス皮膜によってもたらされると考えられる。官能化ゾルゲル法は、水から水素吸蔵体を保護するために広く使用されることが可能である。
【0072】
なお、上述実施例1及び2のゾル液に限らず、様々な範囲のゾル液を適用できることは無論である。ゾル液1〜33を以下に列挙する。
(ゾル液1)
100mlビーカーにトリアセトキシビニルシラン23.4g、酢酸1g、イオン交換水3.6gを加え、更にエタノール50gを加えた後、室温で5分間攪拌した。
溶液全体を三口フラスコに移し、還流冷却器をとりつけ、三口フラスコを室温のオイルバスに浸した。三口フラスコの内容物をマグネチックスターラで攪拌しながら30分程の間に浴温を80℃まで上昇させた。
更に80℃の浴につけておいた所、12時間後には液状組成物全体がゲル化した。本実施例における液状組成物の使用時間は、80℃ではぼ11時間であった。
(ゾル液2)
100mlビーカーにトリアセトキシビニルシラン23.4g、イオン交換水3.6g及びエタノール50gを加えた後、室温で5分間攪拌した。
溶液全体を三口フラスコに移し、ゾル液1と同じ条件で、加水分解及び重縮合を行わせた。
浴温80℃達成後22時間経過しても液状組成物のゲル化は起こらず、ローラ塗布ならば合金表面を一様に処理することができた。
この段階でさらにエタノールを50ml追加して攪拌すると粘性が低下した一様な液状組成物に戻る。
液状組成物を浴から出してその保存寿命を観察したが、室温で1年間経時させてもゲル化は起こらず、析出物も出てこなかった。
(ゾル液3)
ビーカーにCH2=CHSi(OCOCH3)350g、酢酸1.1g、蒸留水7.7g及びエタノール100gを取り、室温で攪拌して均一な溶液とした。次にこの溶液を、攪拌機と還流冷却機を取り付けた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って7時間反応させ、液状物(ゾル液)を作成した。
(ゾル液4)
ビ−カーにSi(OC2H5)457.4g、CH2=CHSi(OCOCH3)34.6g、水7.2g、エタノール100g及び酢酸2gを取り、室温で攪拌して均一な溶液とした。次にこの溶液を、攪拌機と還流冷却機を取りつけた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って7時間反応させ、液状組成物(ゾル液)を作成した。
(ゾル液5)
ビーカーにSi(OC2H5)457.4g、
【化24】
2.3g、水14.4g、エタノール100g及び酢酸2gを取り、室温で攪拌して均一な溶液とした。次にこの溶液を、攪拌機と還流冷却機を取付けた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って7時間反応させ、液状組成物(ゾル液)を作成した
(ゾル液6)
ビーカーにSi(OC2H5)457.4g、CH2=CHCH2Si(OC2H5)4.1g、水14.4g、エタノール100g及び酢酸2gをとり、室温で攪拌し均一な溶液とした。次のこの溶液を、攪拌機と還流冷却機を取りつけた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って7時間反応させ、液状組成物(ゾル液)を作成した。
(ゾル液7)
ビーカーにSi(OC2H5)457.4g、
【化25】
3.8g、水14.4g、エタノール100g及び酢酸2gをとり、室温で攪拌して均一な溶液とした。次にこの溶液を、攪拌機と還流冷却機を取付けた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って7時間反応させ、液状組成物(ゾル液)を作成した。
(ゾル液8)
ビーカーにSi(OC2H5)457.4g、CH2=CHCH2NH(CH2)(OCH3)34.4g、水14.4g、エタノール100g及び酢酸2gをとり、室温で撹拝して均一な溶液とした。次にこの溶液を、撹拌機と還流冷却機を取付けた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って7時間反応させ、液状組成物(ゾル液)を作成した。
(ゾル液9)
ビーカーにSi(OC2H5)457.4g、
【化26】
4.6g、水14.4g、エタノール100g及び酢酸2gをとり、室温で攪拌して均一な溶液とした。次にこの溶液を攪拌機と還流冷却機を取付けた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って反応させ、液状組成物(ゾル液)を作成した。
(ゾル液10)
ビーカーにSi(OC2H5)457.4g、CH2=CHCOO(CH2)3SCH3)34.6g、水14.4g、エタノール100g及び酢酸2gをとり、室温で攪拌して均一な溶液とした。次にこの溶液を、攪拌機と還流冷却機を取付けた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って7時間反応させ、液状組成物(ゾル液)を作成した。
(ゾル液11)
ビーカーにSi(OC2H5)457.4g、
【化27】
9.4g、水14.4g、エタノール100g及び酢酸2gをとり、室温で攪拌して均一な溶液とした。次にこの溶液を、攪拌機と還流冷却機を取付けた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って7時間させ、液状組成物(ゾル液)を作成した。
(ゾル液12)
ビーカーにSi(OC2H5)457.4g、CH≡CSi(OC2H5)33.8g、水14.4g、エタノール100g及び酢酸2gをとり、室温で攪拌して均一な溶液とした。次にこの溶液を、攪拌機と還流冷却機を取付けた三口フラスコに移し、オイルバスで浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って7時間反応させ、液状組成物(ゾル液)を作成した。
(ゾル液13)
ビーカーにSi(OC2H5)457.4g、CH2=CHSi(OCH3)33.0g、水14.4g、エタノール100g及び酢酸2gを室温で攪拌して均一な溶液とした。次にこの溶液を攪拌機と還流冷却機を取付けた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って反応させ、液状組成物(ゾル液)を作成した。
(ゾル液14)
ビーカーにSi(OC2H5)457.4g、
【化28】
3.2g、水14.4g、エタノール100g及び酢酸2gをとり、室温で攪拌して均一な溶液とした。次にこの溶液を、攪拌機と還流冷却機を取付けた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って7時間反応させ、液状組成物(ゾル液)を作成した。
(ゾル液15)
ビーカーにSi(OC2H5)457.4g、(CH2=CH)2Si(OC2H5)23.4g、水14.4g、エタノール100g及び酢酸2gをとり、室温で攪拌して均一な溶液とした。次にこの溶液を、攪拌機と還流冷却機を取付けた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って7時間反応させ、液状組成物(ゾル液)を作成した。
(ゾル液16)
ビーカーにSi(OC2H5)457.4g、CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OCH3)35.0g、水14.4g、エタノール100g及び酢酸2gをとり、室温で攪拌して均一な溶液とした。次にこの溶液を、攪拌機と還却冷却機を取付けた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って7時間反応させ、液状組成物(ゾル液)を作成した。
(ゾル液17)
ビーカーにSi(OC2H5)457.4g、
【化29】
4.4g、水14.4g、エタノール100g及び酢酸2gをとり、室温で攪拌して均一な溶液とした。次にこの溶液を、攪拌機と還流冷却機を取付けた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って7時間反応させ、液状組成物(ゾル液)を作成した
(ゾル液18)
ビーカーにSi(OC2H5)457.4g、
【化30】
6.0g、水14.4g、エタノール100g及び酢酸2gをとり、室温で攪拌して均一な溶液とした。次にこの溶液を、攪拌機と還流冷却機を取付けた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って7時間反応させ、液状組成物(ゾル液)を作成した
(ゾル液19)
ビーカーにSi(OCOCH3)439.6g、HSCH2Si(OCOCH3)312.6g、酢酸0.6g、蒸留水7.2g及びエタノール100gを取り、室温で攪拌して均一な溶液とした。次にこの溶液を、攪拌機と還流冷却機を取り付けた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って7時間反応させ、液状物(ゾル液)を作成した。
(ゾル液20〜26)
下記の表4に示す組成の混合液からゾル液3と同様にしてゾル液20〜26を調製した。
【表4】
(ゾル液27)
ビーカーにCH2=CH−Si(OCOCH3)311.6g、Si(OCOCH3)439.6g、酢酸0.6g、蒸留水7.2g及びエタノール100gを取り、室温で攪拌して均一な溶液とした。次にこの溶液を、攪拌機と還流冷却機を取り付けた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を80℃に保って7時間反応させ、液状物(ゾル液)を作成した。
(ゾル液28〜32)
下記の表5に示す組成の混合液からゾル液3と同様にしてゾル液28〜32を調製した。
【表5】
(ゾル液33)
ビーカーにCH2=CH−Si(OCOCH3)37.0g、HSCH2Si(OCOCH3)37.6g、Si(OCOCH3)437.0g、酢酸0.6g、蒸留水7.2g及びエタノール100gを取り、室温で攪拌して均一な溶液とした。次にこの溶液を、攪拌機と還流冷却機を取り付けた三口フラスコに移し、オイルバスに浸して、攪拌しながら浴温を70℃に保って8時間反応させ、液状物(ゾル液)を作成した。
【0073】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲に於て、改変等を加えることが出来るものであり、それらの改変等も本発明の技術的範囲に含まれることとなる。
【0074】
【発明の効果】
請求項1乃至6記載の発明によれば、水による水素吸蔵体の失活を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本実施形態の複合水素吸蔵体を適用した水素捕集装置の概略図、(b)は同水素捕集装置に適用された複合水素吸蔵体の断面図、(c)は同平面図である。
【図2】本実施形態のカプセル化されたZrMn2の複合水素吸蔵体について、合金体積と平衡圧力との関係を示す等温度線図である。
【図3】本実施形態のカプセル化されたZrMn2の複合水素吸蔵体について、水素濃度と平衡圧力との関係を示す等温度線図である。
【図4】本実施形態のカプセル化されたMg−10wt%Niの複合水素吸蔵体について、水素濃度と平衡圧力との関係を示す等温度線図である。
Claims (3)
- ゾルゲル法により複合水素吸蔵体を製造する複合水素吸蔵体の製造方法であって、
疎水性の金属−酸素−金属ネットワークの形成を液状組成物の調液のときに進行させておく液状組成物調整ステップと、
前記液状組成物調整ステップにて調整された液状組成物で水素吸蔵体の表面を覆うセラミック皮膜形成ステップと、
を備えたことを特徴とし、
前記液状組成物調整ステップの液状組成物が、下記の一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物を含み、
A m Si ( OR ) 4 − m ( 1)
式中、Aは有機官能基を表わし、
Rは水素、アルキル基、又は、有機酸残基を表わし、
mは正の整数で1≦m≦3を表わし、
前記有機ケイ素化合物を液中で加水分解及び重縮合させて得られる無機高分子を含む前記液状組成物を、前記水素吸蔵体の皮膜とすることを特徴とする複合水素吸蔵体の製造方法。 - 前記液状組成物調整ステップが、
前記一般式(1)の有機官能基Aを有する有機金属化合物と、
該有機官能基Aを有さない下記式(2)の有機金属化合物と、
M ( OR ) n (2)
式中、Mは、希土類金属、Ti、Zr、Al、Siの何れでもよく、Rは式(1)と同じ意味を有し、nは正の整数でn=3または4、
を混合するステップを備え、前記一般式(1)及び(2)において、ORの一部もしくは全部が加水分解及び重縮合反応を起して、分子中に金属―酸素―金属の結合を有するに至る請求項1に記載の複合水素吸蔵体の製造方法。 - 前記セラミックス皮膜の水に対する接触角が60°以上であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の複合水素吸蔵体の製造方法。
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