JP3926652B2 - 電動車両 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は作業者が後から連れ歩く歩行型の電動車両の改良技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、特開昭57−17650号公報「電動車椅子」に示される電動車椅子は、同公報の第5図に示され通りに、左のモータ(ML)と右のモータ(MR)と左右のブレーキコイル(BCL),(BCR)と左右のリレー(RyL),(RyR)と左右のコンデンサ(CL),(CR)とを備え、左右の駆動輪を各々制御できるようにしたことを特徴とし、同公報の第3頁左上欄第8行〜第17行に「操作子(4)を人為的に或いは操作力を解いて自動的にニュートラル位置▲3▼に戻すと、コンデンサ(CL)(CR)の放電によってしばらくリレー(RyL)(RyR)は作動し、この間各モータ(ML)(MR)は抵抗(RL)(RR)を利用して発電制動される。そして、例えば1秒後にリレー(RyL)(RyR)の作動が終了すると、発電制動に加えてブレーキコイル(BCL)(BCR)による機械ブレーキが働いて駆動軸(2L)(2R)が停止する。」と説明されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報の電動椅子には次の▲1▼,▲2▼の課題がある。
▲1▼、左の駆動軸(2L)は、コンデンサ(CL)、リレー(RyL)、抵抗(RL)及びブレーキコイル(BCL)の要素を経て停止させ、右の駆動軸(2R)は、コンデンサ(CR)、リレー(RyR)、抵抗(RR)及びブレーキコイル(BCR)の要素を経て停止させる。左右のコンデンサ(CL)(CR)間や左右のリレー(RyL)(RyR)間や左右のブレーキコイル(BCL)(BCR)間には、電気的並びに機械的作動に不可避的な作動時間差が存在し、これらの累積により左の駆動軸(2L)と右の駆動軸(2R)とでは停止タイミングに差が発生し、結果として電動椅子が右又は左に曲り、乗り心地が悪くなる。
【0004】
▲2▼、特に旋回途中に操作子をニュートラルにした場合には、左右のモータ(ML),(MR)間に速度差があるため、左右の停止タイミングが増々ずれ、乗り心地が著しく悪化する。
これでは、快適な走行は望めなく、その対策が必要となる。
【0005】
そこで、本発明の目的は左右の駆動輪を左右の電動モータで各々駆動する電動車両において、ニュートラル操作等に伴なって実施する左右の制動タイミングを合致させることができる技術を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、オンで走行可能でオフで停止命令を発する走行準備部材と、前進、中立、後進を指定することのできる方向速度制御部材と、この方向速度制御部材の操作に基づいて正転若しくは逆転して車両を走行させる左右一対の電動モータと、中立時に制動を掛けることのできる左右一対のブレーキ手段とを備え、直進が主体で、これに穏やかな方向修正が加わる車両であって、この車両を運転する作業者が後から連れ歩く歩行型の電動車両において、この電動車両は、車両の走行中に、走行準備部材がオフになるか又は方向速度制御部材が中立になったときから左右の電動モータを各々減速させ、何れか一方の回転速度が回転速度しきい値まで下がったら、左右のブレーキ手段を同時に作動させる制動制御を実行する制御部を備えていることを特徴とする。
【0007】
回転速度しきい値は、急制動してもショックを受けない程度の速度で且つブレーキ手段の容量を考慮して決める十分に小さな回転速度とする。
この様な回転速度しきい値を下回った時点で、左右のブレーキ手段を同時に作動させる。そうすれば、左右のブレーキタイミングが合致し、車両が右又は左へ曲る心配はない。左右の駆動輪とも十分に小さな回転速度まで、回生ブレーキ回路等で減速させるので、急制動によるショックは殆ど発生しない。
【0008】
旋回中で、左右の駆動輪の回転速度に著しい差があるときに、本発明を実施しても左右のブレーキを同時に作動させるために、車両が右又は左へ曲る心配はない。
本発明の電動車両は直進作業が主体であり、これに方向修正のための穏やかな旋回が加わることを基本とする。従って、旋回中に発生する左右の走行モータの回転数差はそれほど大きくない。この結果、一方の回転速度がしきい値以下になったときに左右のブレーキ手段を同時に作動させてもショックが発生する虞れはない。
【0009】
請求項2は、オンで走行可能でオフで停止命令を発する走行準備部材と、前進、中立、後進を指定することのできる方向速度制御部材と、この方向速度制御部材の操作に基づいて正転若しくは逆転して車両を走行させる左右一対の電動モータと、中立時に制動を掛けることのできる左右一対のブレーキ手段とを備え、直進が主体で、これに穏やかな方向修正が加わる車両であって、この車両を運転する作業者が後から連れ歩く歩行型の電動車両において、この電動車両は、車両の走行中に、走行準備部材がオフになるか又は方向速度制御部材が中立になったときから左右の電動モータを制御する左右の制御信号出力を低減させ、何れか一方の制御信号出力が信号出力しきい値まで下がったら、左右のブレーキ手段を同時に作動させる制動制御を実行する制御部を備えていることを特徴とする。
【0010】
信号出力しきい値は、急制動してもショックを受けない程度の信号出力で且つブレーキ手段の容量を考慮して決める十分に小さな信号出力とする。
この様な信号出力しきい値を下回った時点で、左右のブレーキ手段を同時に作動させる。そうすれば、左右のブレーキタイミングが合致し、車両が右又は左へ曲る心配はない。左右の駆動輪とも十分に小さな回転速度まで、回生ブレーキ回路等で減速させるので、急制動によるショックは殆ど発生しない。
【0011】
旋回中で、左右の駆動輪の回転速度に著しい差があるときに、本発明を実施しても左右のブレーキを同時に作動させるために、車両が右又は左へ曲る心配はない。
本発明の電動車両は直進作業が主体であり、これに方向修正のための穏やかな旋回が加わることを基本とする。従って、旋回中に発生する左右の走行モータの回転数差はそれほど大きくない。この結果、一方の回転速度がしきい値以下になったときに左右のブレーキ手段を同時に作動させてもショックが発生する虞れはない。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は作業者から見た方向に従い、Lは左側、Rは右側を示す。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【0013】
図1は本発明に係る除雪機の平面図であり、電動車両としての除雪機10は、機体11にエンジン12を搭載し、機体11の前部に作業部としてのオーガ13及びブロア14を装備し、機体11の左右にクローラ15L,15Rを配置し、機体11の後部に操作盤16を配置した車両であり、作業者が操作盤16の後から連れ歩く歩行型作業機である。以下、要部を詳細に説明する。なお、操作盤16は図2で詳しく説明する。
【0014】
エンジン12の出力の一部で、発電機17を回し、得た電力を操作盤16の下方に配置したバッテリ(図4の符号43参照)に供給すると共に、後述する左右の走行モータに供給する。
エンジン12の出力の残部は、電磁クラッチ18及びベルト19を介して作業部としてのブロア14及びオーガ13の回転に充てる。オーガ13は地面に積もった雪を中央に集める作用をなし、この雪を受け取ったブロア14はシュータ21を介して雪を機体11の周囲の所望の位置へ投射する。22はオーガハウジングであり、オーガ13を囲うカバー部材である。
【0015】
左のクローラ15Lは、駆動輪23Lと遊動輪24Lとに巻き掛けたものであり、本発明では駆動輪23Lは左の走行モータ25Lで正逆転させる。右のクローラ15Rも、駆動輪23Rと遊動輪24Rとに巻き掛けたものであり、本発明では駆動輪23Rは右の走行モータ25Rで正逆転させる。
【0016】
従来の除雪機では1個のエンジン(ガソリンエンジン又はジーゼルエンジン)で作業部系(オーガ回転系)と走行系(クローラ駆動系)とを賄っていたが、本発明ではエンジン12で作業部系(オーガ回転系)を駆動し、電動モータ(走行モータ25L,25R)で走行系(クローラ駆動系)を駆動するようにしたことを特徴とする。
細かな走行速度の制御、旋回制御及び前後進切替制御は電動モータが適当であり、一方、急激な負荷変動を受ける作業部系はパワーのある内燃機関が適当であるとの考えに基づいて、そのようにした。
【0017】
図2は図1の2矢視図であり、操作盤16には、操作箱27の手前の側面にメインスイッチ28、エンジンチョーク29、クラッチ操作ボタン31などを備え、操作箱27の上面に、投雪方向調節レバー32、オーガハウジング姿勢調節レバー33、走行系に係る方向速度制御部材としての方向速度レバー34、作業部系に係るエンジンスロットルレバー35を備え、操作箱27の右にグリップ36R及び右旋回操作レバー37Rを備え、操作箱27の左にグリップ36L、左旋回操作レバー37L及び走行準備部材としての走行準備レバー38を備える。
【0018】
左右旋回操作レバー37L,37Rはブレーキレバーに近似するが、後述するとおりに完全な制動効果は得られない。操作することで走行モータ25L,25Rの回転を落として機体をターンさせることに使用するため、ブレーキレバーと言わずに旋回操作レバーと呼ぶことにした。
【0019】
メインスイッチ28はメインキーを差込み、回すことでエンジンを始動することのできる周知のスイッチである。エンジンチョーク29は引くことで混合気の濃度を高めることができる。投雪方向調節レバー32は、シュータ(図1の符号21)方向を変更するときに操作するレバーであり、オーガハウジング姿勢調節レバー33はオーガハウジング(図1の符号22)の姿勢を変更するときに操作するレバーである。
その他の部材の作用は、図4で説明する。
【0020】
図3は図2の3矢視図であり、左旋回操作レバー37Lを握ることにより、ポテンショメータ39Lのアーム39aの角度を想像線の位置まで回転することができる。ポテンショメータ39Lはアーム39aの回転位置に応じた電気情報を発する機器である。
【0021】
また、走行準備レバー38はスイッチ手段42に作用する部材であり、スプリング41の引き作用により、図の状態(フリー状態)になればスイッチ手段42はオンになる。作業者の左手で走行準備レバー38を図時計回りに下げれば、スイッチ手段42はオフとなる。このように、走行準備レバー38が握られているか否かはスイッチ手段42で検出することができる。
【0022】
図4は本発明に係る除雪機の制御系統図であり、操作盤に内蔵若しくは付設した制御部44内の機器及びそこから延びる情報伝達経路を示すが、概ね四角は機器、丸はドライバーを示す。そして、想像線枠で囲ったエンジン12、電磁クラッチ18、ブロア14及びオーガ13が作業部系45であり、その他は走行系となる。43はバッテリである。
なお、制御部44内に破線で指令の流れを便宜上示したが、これはあくまでも参考的記載に過ぎない。
【0023】
先ず、作業部系の作動を説明する。
メインスイッチ28にキーを差込み、回してスタートポジションにすることにより、図示せぬセルモータの回転によりエンジン12を始動させる。
エンジンスロットルレバー35は図示せぬスロットルワイヤでスロットルバルブ48に繋がっているので、エンジンスロットルレバー35を操作することでスロットルバルブ48の開度を制御することができる。これにより、エンジン12の回転数を制御することができる。
【0024】
走行準備レバー38を握ると共に、クラッチ操作ボタン31を操作することにより、作業者の意志で電磁クラッチ18を接続し、ブロア14及びオーガ13を回すことができる。
なお、走行準備レバー38を離すかクラッチ操作ボタン31を操作するかの何れかにより、電磁クラッチ18を断状態にすることができる。
【0025】
次に走行系の作動を説明をする。本発明の除雪機は、普通車両のパーキングブレーキに相当するブレーキとして、左右の電磁ブレーキ51L,51Rを備えており、これらの電磁ブレーキ51L,51Rは、駐車中は制御部44の制御により、ブレーキ状態にある。そこで、次の手順で電磁ブレーキ51L,51Rを開放する。
【0026】
メインスイッチ28がスタートポジションにあること及び走行準備レバー38が握られていることの2つの条件が満たされ、方向速度レバー34を前進又は後進(図5で説明する。)に切換えると、電磁ブレーキ51L,51Rは開放(非ブレーキ)状態になる。
【0027】
図5は本発明で採用した方向速度レバーの作用説明図であり、方向速度レバー34は、作業者の手で、矢印▲1▼,▲2▼の如く往復させることができ、「中立範囲」より「前進」側へ倒せば車両を前進させることができ、且つ「前進」領域においては、Lfが低速前進、Hfが高速前進となるように、速度制御も行える。同様に、「中立範囲」より「後進」側へ倒せば車両を後進させることができ、且つ「後進」領域においては、Lrが低速後進、Hrが高速後進となるように、速度制御も行える。この例では、図の左端に付記した通りに、後進の最高速が0V(ボルト)、前進の最高速が5V、中立範囲が2.3V〜2.7Vになるようにポテンショメータでポジションに応じた電圧を発生させる。
1つのレバーで前後の方向と高低速の速度制御とを設定できるので、方向速度レバー34と名付けた。
【0028】
図4に戻って、方向速度レバー34の位置情報をポテンショメータ49から得た制御部44は、左右のモータドライバー52L,52Rを介して左右の走行モータ25L,25Rを回し、走行モータ25L,25Rの回転速度を回転センサ53L,53Rで検出して、その信号に基づいて回転速度を所定値になるようにフィードバック制御を実行する。この結果、左右の駆動輪23L,23Rが所望の方向に、所定の速度で回り、走行状態となる。
【0029】
走行中の制動は次の手順で行う。本発明ではモータドライバー52L,52Rに回生ブレーキ回路54L,54R及びブレーキ手段としての短絡ブレーキ回路55L,5Rを含む。
【0030】
バッテリから電動モータへ電気エネルギーを供給することで、電動モータは回転する。一方、発電機は回転を電気エネルギーに変換する手段である。そこで、本発明では電気的切換えにより、走行モータ25L,25Rを発電機に変え、発電させるようにした。発電電圧がバッテリ電圧より高ければ、電気エネルギーはバッテリ43へ蓄えることができる。これが回生ブレーキの作動原理である。
【0031】
左旋回操作レバー37Lの握りの程度をポテンショメータ39Lで検出し、この検出信号に応じて制御部44は左の回生ブレーキ回路54Lを作動させて、左の走行モータ25Lの速度を下げる。
右旋回操作レバー37Rの握りの程度をポテンショメータ39Rで検出し、この検出信号に応じて制御部44は右の回生ブレーキ回路54Rを作動させて、右の走行モータ25Rの速度を下げる。
すなわち、左旋回操作レバー37Lを握ることで左旋回させることができ、右旋回操作レバー37Rを握ることで右旋回させることができる。
【0032】
そして、次の何れかにより走行を停止することができる。
方向速度レバー34を中立位置に戻す。
走行準備レバー38を離す。
メインスイッチ28をオフ位置に戻す。
【0033】
この停止は後述の電気的減速制御を施したのちに、短絡ブレーキ回路55L,55Rを用いて実行する。
短絡ブレーキ回路55Lは、文字通り走行モータ25Lの両極を短絡させる回路であり、この短絡により走行モータは急制動状態になる。短絡ブレーキ回路55Rも同様であるから説明を省略する。
【0034】
停止後にメインスイッチ28をオフ位置に戻せば、電磁ブレーキ51L,51Rがブレーキ状態となり、パーキングブレーキを掛けたことと同じになる。
【0035】
次に、走行中の除雪機を停止させるときの制御方法を説明する。
図6は本発明に係る停止制御フロー図であり、ST××はステップ番号を示す。
ST01:除雪機が走行中であるか否かを調べる。例えば、図4の回転センサ53L,53Rの出力によって判断することができる。NOであれば、リターンさせることで制御は行わない。YESであれば、ST02に進む。
ST02:走行準備レバー(図4の符号38)がオフ(離すことでオフ)であるか否かを調べる。NOであればST03に進み、YESであればST04に進む。
【0036】
ST03:方向速度レバー(図4の符号34)が中立であるか否かを調べる。NOであれば、リターンさせることで制御は行わない。YESであれば、ST04に進む。
ST04:以上の条件が満たされれば、制御部は左右の走行モータを制御信号出力Dml,Dmrで各々制御する。ただし、この制御信号出力Dml,Dmrの初回値は直前の制御信号出力をそのまま使用する。なお、信号出力Dml,DmrはPI制御ならPI出力、PID制御ならPID出力に相当する。
【0037】
ST05:左の走行モータ速度Mnlが回転速度しきい値Nstdを超えているか否かを調べる。走行モータ速度Mnlは図4の回転センサ53Lで調べることができる。
【0038】
また、回転速度しきい値Nstdはブレーキ手段の作動可能回転速度を考慮して決める。本実施例ではブレーキ手段として図4の短絡ブレーキ回路55Lを当てる。短絡ブレーキ回路55Lには図示せぬスイッチング素子を使用するが、これらのスイッチング素子に短絡時に電気的に負担が掛るため、ブレーキ容量に対応した容量の素子を使用しなければならない。
逆に、短絡ブレーキ回路55Lに配置したスイッチング素子によって、ブレーキ手段の作動可能回転速度が決まることになり、これを基に回転速度しきい値Nstdを決める。
【0039】
このしきい値は走行モータ25Lの使用最高回転数の5%程度に定めると良い。そうすれば、スイッチング素子の小容量化が可能であり、短絡ブレーキ回路55Lの小型化及びコストダウンが図れる。
【0040】
ST06:ST05でYESであれば、制御信号出力Dmlからα(例えば1.0%)を減じた値を新たな制御信号出力Dmlとする。以上のST04、ST05、ST06を繰り返すことで、制御信号出力Dmlは徐々に小さくなり、これに対応して走行モータの回転速度が低下する。
【0041】
ST07:右の走行モータ速度Mnrが回転速度しきい値Nstdを超えているか否かを調べる。走行モータ速度Mnrは図4の回転センサ53Rで調べることができる。
【0042】
ST08:ST07でYESであれば、制御信号出力Dmrからα(例えば1.0%)を減じた値を新たな制御信号出力Dmrとする。以上のST04、ST07、ST08を繰り返すことで、制御信号出力Dmrは徐々に小さくなり、これに対応して走行モータの回転速度が低下する。
【0043】
ST09:ST05がNO、すなわち左の走行モータの回転速度がしきい値以下又はST07がNO、すなわち右の走行モータの回転速度がしきい値以下になったら、左右のブレーキ手段(図4の符号55L,55R)を同時に作動させて、制動を掛ける。これで、電動車両は停止する。
【0044】
常識的には両方のモータの回転速度がしきい値以下になったときに左右のブレーキ手段を同時に作動させるべきであるが、本発明では、一方のモータの回転速度がしきい値以下になったときに左右のブレーキ手段を同時に作動させる。その理由は次の通りである。
本発明の電動車両は直進作業が主体であり、これに方向修正のための穏やかな旋回が加わることを基本とする。従って、旋回中に発生する左右の走行モータの回転数差はそれほど大きくない。この結果、一方の回転速度がしきい値以下になったときに左右のブレーキ手段を同時に作動させてもショックが発生する虞れはない。
【0045】
以上をまとめると、オンで走行可能でオフで停止命令を発する走行準備部材(図4の符号38)と、前進、中立、後進を指定することのできる方向速度制御部材(図4の符号34)と、この方向速度制御部材の操作に基づいて正転若しくは逆転して車両を走行させる左右一対の電動モータ(図4の符号25L,25R)と、中立時に制動を掛けることのできる左右一対のブレーキ手段(図4の符号55L,55R)とを備える電動車両において、この電動車両は、車両の走行中(図6のST01)に、走行準備部材がオフ(図6のST02)になるか又は方向速度制御部材(図6のST03)が中立になったときから左右の電動モータを各々減速(図6のST06,ST08)させ、何れか一方の回転速度が回転速度しきい値まで下がったら、左右のブレーキ手段を同時に作動(図6のST09)させる制動制御を実行する制御部を備えていることを特徴とする。
【0046】
回転速度しきい値は、急制動してもショックを受けない程度の速度で且つブレーキ手段の容量を考慮して決める十分に小さな回転速度とする。
この様な回転速度しきい値を下回った時点で、左右のブレーキ手段を同時に作動させる。そうすれば、左右のブレーキタイミングが合致し、車両が右又は左へ曲る心配はない。左右の駆動輪とも十分に小さな回転速度まで、回生ブレーキ回路等で減速させるので、急制動によるショックは殆ど発生しない。
【0047】
旋回中で、左右の駆動輪の回転速度に著しい差があるときに、本発明を実施しても左右のブレーキを同時に作動させるために、車両が右又は左へ曲る心配はない。
【0048】
図7は図6の別実施例に係る停止制御フロー図である。このフローは図6のST05及びST07を変更し、その他は変更ないが全ステップを説明する。
ST11:除雪機が走行中であるか否かを調べる。例えば、図4の回転センサ53L,53Rの出力によって判断することができる。NOであれば、リターンさせることで制御は行わない。YESであれば、ST12に進む。
ST12:走行準備レバー(図4の符号38)がオフ(離すことでオフ)であるか否かを調べる。NOであればST13に進み、YESであればST14に進む。
【0049】
ST13:方向速度レバー(図4の符号34)が中立であるか否かを調べる。NOであれば、リターンさせることで制御は行わない。YESであれば、ST14に進む。
ST14:以上の条件が満たされれば、制御部は左右の走行モータを制御信号出力Dml,Dmrで各々制御する。ただし、この制御信号出力Dml,Dmrの初回値は直前の制御信号出力をそのまま使用する。なお、信号出力Dml,DmrはPI制御ならPI出力、PID制御ならPID出力に相当する。
【0050】
ST15:左モータ用制御信号出力Dmlが信号出力しきい値Dstdを超えているか否かを調べる。
【0051】
このしきい値はモータ用制御信号出力フルスパーンの5%程度に定めると良い。そうすれば、スイッチング素子の小容量化が可能であり、短絡ブレーキ回路55Lの小型化及びコストダウンが図れる。
【0052】
ST16:ST15でYESであれば、制御信号出力Dmlからα(例えば1.0%)を減じた値を新たな制御信号出力Dmlとする。以上のST14、ST15、ST16を繰り返すことで、制御信号出力Dmlは徐々に小さくなり、これに対応して走行モータの回転速度が低下する。
【0053】
ST17:右モータ用制御信号出力Dmrが信号出力しきい値Dstdを超えているか否かを調べる。
【0054】
ST18:ST17でYESであれば、制御信号出力Dmrからα(例えば1.0%)を減じた値を新たな制御信号出力Dmrとする。以上のST14、ST17、ST18を繰り返すことで、制御信号出力Dmrは徐々に小さくなり、これに対応して走行モータの回転速度が低下する。
【0055】
ST19:ST15がNO、すなわち左モータ用制御信号出力Dmlがしきい値以下又はST17がNO、すなわち右モータ用制御信号出力Dmrがしきい値以下になったら、左右のブレーキ手段(図4の符号55L,55R)を同時に作動させて、制動を掛ける。これで、電動車両は停止する。
【0056】
常識的には左右両方のモータ用制御信号出力がしきい値以下になったときに左右のブレーキ手段を同時に作動させるべきであるが、本発明では、一方のモータ用制御信号出力がしきい値以下になったときに左右のブレーキ手段を同時に作動させる。その理由は次の通りである。
本発明の電動車両は直進作業が主体であり、これに方向修正のための穏やかな旋回が加わることを基本とする。従って、旋回中に制御部が発する左右モータ用制御信号出力の差はそれほど大きくない。この結果、一方のモータ用制御信号出力がしきい値以下になったときに左右のブレーキ手段を同時に作動させてもショックが発生する虞れはない。
【0057】
以上をまとめると、オンで走行可能でオフで停止命令を発する走行準備部材(図4の符号38)と、前進、中立、後進を指定することのできる方向速度制御部材(図4の符号34)と、この方向速度制御部材の操作に基づいて正転若しくは逆転して車両を走行させる左右一対の電動モータ(図4の符号25L,25R)と、中立時に制動を掛けることのできる左右一対のブレーキ手段(図4の符号55L,55R)とを備える電動車両において、この電動車両は、車両の走行中(図7のST11)に、走行準備部材がオフ(図7のST12)になるか又は方向速度制御部材(図7のST13)が中立になったときから左右の電動モータを制御する左右の制御信号出力を低減(図7のST16,ST18)させ、何れか一方の制御信号出力が信号出力しきい値まで下がったら、左右のブレーキ手段を同時に作動(図7のST19)させる制動制御を実行する制御部を備えていることを特徴とする。
【0058】
尚、本発明を適用する電動車両は除雪機に限るものではなく、電動運搬車、電動ゴルフカートなどの電動車であれば種類は任意である。
【0059】
また、実施例の除雪機は左右の走行モータを備えるが、1個の走行モータで左右の駆動輪を駆動する形式の電動車両に本発明を適用することは差支えない。
さらには、方向速度レバーは、実施例では1本であったが、複数本でその役割を分担させてもよい。そして、方向速度制御部材はレバー、ダイヤル、スイッチ又は同等品であればよい。同様に、走行準備部材はレバー、ダイヤル、スイッチ又は同等品であればよい。
【0060】
また、ブレーキ手段は短絡ブレーキに限らず、電磁ブレーキ、ディスクブレーキの何れであったもよい。
【0061】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1では、車両の走行中に、走行準備部材がオフになるか又は方向速度制御部材が中立になったときから左右の電動モータを各々減速させ、回転速度しきい値を下回った時点で、左右のブレーキ手段を同時に作動させる。そうすれば、左右のブレーキタイミングが合致し、車両が右又は左へ曲る心配はない。左右の駆動輪とも十分に小さな回転速度まで、回生ブレーキ回路等で減速させるので、急制動によるショックは殆ど発生しない。
【0062】
旋回中で、左右の駆動輪の回転速度に著しい差があるときに、本発明を実施しても左右のブレーキを同時に作動させるために、車両が右又は左へ曲る心配はない。
常識的には両方のモータの回転速度がしきい値以下になったときに左右のブレーキ手段を同時に作動させるべきであるが、本発明では、一方のモータの回転速度がしきい値以下になったときに左右のブレーキ手段を同時に作動させる。その理由は次の通りである。
本発明の電動車両は直進作業が主体であり、これに方向修正のための穏やかな旋回が加わることを基本とする。従って、旋回中に発生する左右の走行モータの回転数差はそれほど大きくない。この結果、一方の回転速度がしきい値以下になったときに左右のブレーキ手段を同時に作動させてもショックが発生する虞れはない。
【0063】
請求項2では、車両の走行中に、走行準備部材がオフになるか又は方向速度制御部材が中立になったときから左右の電動モータを各々減速させ、信号出力しきい値を下回った時点で、左右のブレーキ手段を同時に作動させる。そうすれば、左右のブレーキタイミングが合致し、車両が右又は左へ曲る心配はない。左右の駆動輪とも十分に小さな回転速度まで、回生ブレーキ回路等で減速させるので、急制動によるショックは殆ど発生しない。
【0064】
旋回中で、左右の駆動輪の回転速度に著しい差があるときに、本発明を実施しても左右のブレーキを同時に作動させるために、車両が右又は左へ曲る心配はない。
常識的には両方のモータの回転速度がしきい値以下になったときに左右のブレーキ手段を同時に作動させるべきであるが、本発明では、一方のモータの回転速度がしきい値以下になったときに左右のブレーキ手段を同時に作動させる。その理由は次の通りである。
本発明の電動車両は直進作業が主体であり、これに方向修正のための穏やかな旋回が加わることを基本とする。従って、旋回中に発生する左右の走行モータの回転数差はそれほど大きくない。この結果、一方の回転速度がしきい値以下になったときに左右のブレーキ手段を同時に作動させてもショックが発生する虞れはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る除雪機の平面図
【図2】図1の2矢視図
【図3】図2の3矢視図
【図4】本発明に係る除雪機の制御系統図
【図5】本発明で採用した方向速度レバーの作用説明図
【図6】本発明に係る停止制御フロー図
【図7】図6の別実施例に係る停止制御フロー図
【符号の説明】
10…電動車両(除雪機)、25L,25R…電動モータ(走行モータ)、34…方向速度制御部材(方向速度レバー)、38…走行準備部材(走行準備レバー)、44…制御部、53L,53R…回転センサ、55L,55R…ブレーキ部材(短絡ブレーキ回路)。
Claims (2)
- オンで走行可能でオフで停止命令を発する走行準備部材と、前進、中立、後進を指定することのできる方向速度制御部材と、この方向速度制御部材の操作に基づいて正転若しくは逆転して車両を走行させる左右一対の電動モータと、中立時に制動を掛けることのできる左右一対のブレーキ手段とを備え、
直進が主体で、これに穏やかな方向修正が加わる車両であって、この車両を運転する作業者が後から連れ歩く歩行型の電動車両において、
この電動車両は、車両の走行中に、前記走行準備部材がオフになるか又は前記方向速度制御部材が中立になったときから前記左右の電動モータを各々減速させ、何れか一方の回転速度が回転速度しきい値まで下がったら、左右のブレーキ手段を同時に作動させる制動制御を実行する制御部を備えていることを特徴とする電動車両。 - オンで走行可能でオフで停止命令を発する走行準備部材と、前進、中立、後進を指定することのできる方向速度制御部材と、この方向速度制御部材の操作に基づいて正転若しくは逆転して車両を走行させる左右一対の電動モータと、中立時に制動を掛けることのできる左右一対のブレーキ手段とを備え、
直進が主体で、これに穏やかな方向修正が加わる車両であって、この車両を運転する作業者が後から連れ歩く歩行型の電動車両において、
この電動車両は、車両の走行中に、前記走行準備部材がオフになるか又は前記方向速度制御部材が中立になったときから前記左右の電動モータを制御する左右の制御信号出力を低減させ、何れか一方の制御信号出力が信号出力しきい値まで下がったら、左右のブレーキ手段を同時に作動させる制動制御を実行する制御部を備えていることを特徴とする電動車両。
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