JP3925694B2 - コリオリ質量流量計 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、両端が固定されている測定チューブ内に被測定流体を流し励振装置により測定チューブを所定モードで振動させ測定チューブの上下流で得られる一対のコリオリ信号を用いて質量流量を測定するコリオリ質量流量計に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は周知のコリオリ質量流量計のセンサ部の構成を示す構成図である。図4は図3に示すコリオリ質量流量計のセンサ部の動作を説明する波形図である。
図5は、図3に示すセンサ部と組合せて質量流量を演算する変換部の構成を示す構成図であり、出願人が特開平7−181069号公報で開示したものである。
【0003】
以下、図3〜図5を用いて従来のコリオリ質量流量計について説明する。この場合の測定チューブは、例えばU字管方式など他の方式でも良いが、簡単のため直管方式のもので以下に説明する。
【0004】
1は被測定流体を流す測定チューブであり、この測定チューブ1の両端は支持部材2、3に固定されている。この測定チューブ1の中央部近傍には、この測定チューブ1を上下に機械振動をさせる加振器4が設置されている。
【0005】
そして、測定チューブ1の支持部材2、3に固定されている近傍には、この測定チューブ1の振動を検出する上流センサ5A、下流センサ5Bが固定されている。また、支持部材3の近傍には温度補償に使用する温度センサ6が設けられている。以上によりセンサ部SNSが構成されている。
【0006】
加振器4から測定チューブ1に図4のM1、M2に示すような1次モードの形状で振動が与えられている状態で、測定チューブ1に被測定流体が流れると、M3、M4に示すような2次モードの形状で測定チューブ1が振動する。
【0007】
実際には、この2種類の振動パターンが重畳された形で測定チューブ1が振動する。測定チューブ1のこの変形をセンサ5A、5Bで検出して変位信号SA、SBとして図5に示す変換部TR1に送出する。
【0008】
次に、このセンサ部SNSから出力される信号を処理する変換部TRについて説明する。クロック信号発振器17は測定チューブ1の振動とは関係なしに、所定のサンプリング周期を持つタイミング信号TCを生成する。
【0009】
一方、変位信号SAは、例えばA・sin(ωt0)なる形でトラック・アンド・ホールド(T&H)回路18に出力され、ここでサンプリングの時点を決めるタイミング信号TCにより変位信号SAは順次サンプル/ホールドされる。ここで、Aは振幅、ωは角周波数、t0は任意の時点を示す。
【0010】
ホールドされた変位信号SAはアナログ/ディジタル変換器19に出力され、ここで順次ディジタル信号DA2に変換されて、ディジタル形式で処理されるローパスフィルタ(LPF)20に出力される。
【0011】
ローパスフィルタ(LPF)20は、測定チューブの振動周波数付近よりも高い周波数成分を除去して、ディジタルフィルタの一種であるFIR(Finite Impulse Response有限インパルス応答)フィルタ21Aにディジタル信号DA3として出力する。
【0012】
FIRフィルタ21Aは、入力信号と同位相の出力信号に変換する同相ディジタルフィルタであり、その出力端には基本的にA・sin(ωt0)なる形のディジタル信号DA4を出力する。
【0013】
また、ディジタル信号DAは同様にディジタルフィルタの一種であるFIRフィルタ21Bに出力される。このFIRフィルタ21Bは入力信号と90°異なる位相の出力信号に変換する異相ディジタルフィルタであり、基本的にA・cos(ωt0)なる形のディジタル信号DA5を出力する。そして、これ等のFIRフィルタ21AとFIRフィルタ21Bでヒルベルト変換器21を構成する。
【0014】
位相演算器23は、ディジタル信号DA4とディジタル信号DA5との[A・sin(ωt0)/A・cos(ωt0)=tan(ωt0)]演算し、そのtan-1演算して位相信号θA2(=ωt0)を算定する。
【0015】
また、変位信号SBは、例えばB・sin(ωt0+ΔΦ)なる形でトラック・アンド・ホールド(T&H)回路24に出力され、ここでサンプリングの時点を決めるタイミング信号TCにより変位信号SBは順次サンプル/ホールドされる。ここで、Bは振幅、ΔΦは時点t0における変位信号SAに対する位相差を示す。
【0016】
ホールドされた変位信号SBはアナログ/ディジタル変換器25に出力され、ここで順次ディジタル信号DB2に変換されて、ディジタル形式で処理されるローパスフィルタ(LPF)26に出力される。このローパスフィルタ26はローパスフィルタ20と同一の構成であり、ゲイン特性および群遅延特性なども共通に選定しておく。
【0017】
ローパスフィルタ26は、ローパスフィルタ20と同様に、測定チューブの振動周波数付近よりも高い周波数成分を除去して、ディジタルフィルタの1種であるFIRフィルタ27にディジタル信号DB3として出力する。
【0018】
FIRフィルタ27Aは、FIRフィルタ21Aと同様に、入力信号と同位相の出力信号に変換する同相ディジタルフィルタであり、その出力端には基本的にB・sin(ωt0+ΔΦ)なる形のディジタル信号DB4を出力する。
【0019】
また、ディジタル信号DB3はディジタルフィルタの1種であるFIRフィルタ27Bに出力される。このFIRフィルタ27Bは、入力信号と90°異なる位相の出力信号に変換する異相ディジタルフィルタであり、基本的にB・cos(ωt0+ΔΦ)なる形のディジタル信号DB5を出力する。そして、これ等のFIRフィルタ27AとFIRフィルタ27Bとでヒルベルト変換器27を構成している。
【0020】
位相演算器29は、ディジタル信号DB4とディジタル信号DB5との[B・sin(ωt0+ΔΦ)/B・cos(ωt0+ΔΦ)=tan(ωt0+ΔΦ)]演算し、そのtan-1演算して位相信号θA2=(ωt0+ΔΦ)を算定する。
【0021】
位相差演算回路30は位相演算器23から順次出力される位相信号θA2と、位相演算器29から順次出力される位相信号θB2との差(=ΔΦ)演算して位相差信号θ2として順次出力する。この位相差信号θ2は被測定流体の質量流量に比例することとなる。
【0022】
時間遅れ要素32は位相演算器23から出力される位相信号θA2(=ωt0)をサンプル周期TCだけ遅らされて出力する。したがって、時刻t0においては、1サンプル点手前の位相信号θA2’(=ωt-1、t-1は1つ前のサンプリング時点)が周波数演算器33に出力される。
【0023】
周波数演算器33はこれらの位相信号θA2とθA2’との差を2πTで割算する演算[(ωt0−ωt-1)/2πT=fC]を行い、時点t0におけるセンサ周波数fCを求める。これを平均化回路34で多数のサンプリング点で求めたセンサ周波数fCの平均の加振周波数fC’として出力する。
【0024】
また、励振回路35には変位信号SAが入力され、この変位信号SAに対応する加振電圧を加振器4に出力し、加振器4を例えば正弦波状に駆動する。一方、温度センサ6からは、温度信号ST1がトラック・アンド・ホールド回路37に出力され、サンプリングの時点を決めるタイミング信号TCによりホールドされた多数の温度信号は、アナログ/ディジタル変換器38でディジタル信号に変換されて平均化回路39に出力され、ここで平均されて温度信号ST2として出力される。
【0025】
密度演算器40は、加振周波数fC’と温度信号ST2とが入力されて被測定流体の密度の演算が次式に基づいて演算される。基準温度において、被測定流体が測定チューブ1に充満している状態の共振周波数をfV、測定チューブ1が空の状態の共振周波数をf0、K1、K2を定数とすると、密度信号Dは
fV=fC’+K1・ST2 (1)
D=K2(f02−fV2)/fV2 (2)
として求められる
【0026】
質量流量演算器41は、密度信号D、センサ周波数fC’、位相差信号θ2(=ΔΦ)、温度信号ST2とが入力されて、次式に基づき質量流量QMが演算される。
QM=f(ST2)・f(D)・tanθ2/fC’ (3)
ただし、f(ST2)は温度の補正項、f(D)は密度の補正項である。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
ヒルベルト変換器21、27を形成するFIRフィルタの構成については、前記特開平7−181069号公報に詳述されているので、説明を省略する。FIRフィルタ21Aと21Bは、測定チューブ1の振動周波数の付近のみを通過させるような周波数帯域を有するバンドパスフィルタ特性にするが、通過周波数帯域における群遅延特性はFIRフィルタ21AよりもFIRフィルタ21Bの方が90度位相が進むように各FIRフィルタの係数が設定される。この関係は、FIRフィルタ27AとFIRフィルタ27Bの関係においても同様である。
【0028】
FIRフィルタの周波数帯域を、測定チューブ1の振動周波数の付近のみを通過させるようなバンドパス特性に固定した場合には、測定流体の急激な変化によるセンサ信号の周波数の急変、チューブの交換による周波数の変化などで、予め設定した周波数帯域を逸脱したセンサ信号が入力された時に、FIRフィルタの周波数帯域が不適切となり、精度の高い測定が困難となる。即ち、変換部TRの汎用性が低いという問題点がある。
【0029】
本発明の目的の第1は、センサ信号の周波数が急激に変化した場合にも前記センサ信号の周波数に合致した周波数帯域の同相および相ディジタルフィルタを選択してディジタルフィルタリングを行うことができるコリオリ質量流量計を実現することにある。
【0030】
本発明の目的の第2は、センサ信号の周波数に合致した周波数帯域の同相および相ディジタルフィルタを選択してディジタルフィルタリングを行う場合、センサ信号などにノイズが混入した場合においても、誤りなく上流センサ信号と下流センサ信号の周波数に合致した周波数帯域の同相および相ディジタルフィルタを選択する手段を具備したコリオリ質量流量計を実現することにある。
【0031】
【課題を解決するための手段】
このような課題を達成する本発明は、次の通りである。
(クレーム1)被測定流体を流す測定チューブの振動を検出する上流センサ(5A)及び下流センサ(5B)と、前記上流センサ(5A)からの第1の変位信号(SA)に基づく出力を第1のディジタル信号(DA2)に変換する第1のアナログ/ディジタル変換器(19)と、前記第1のディジタル信号(DA2)における前記測定チューブの振動周波数よりも高い周波数成分を除去し第2のディジタル信号(DA3)を出力する第1のローパスフィルタ(20)と、前記第2のディジタル信号(DA3)と同位相の第3のディジタル信号(DA4)を出力する第1の同相ディジタルフィルタ(21A)と、前記第2のディジタル信号(DA3)と90°異なる位相の第4のディジタル信号(DA5)を出力する第1の異相ディジタルフィルタ(21B)と、前記第3のディジタル信号(DA4)と前記第4のディジタル信号(DA5)との比に対する逆正接の演算をして第1の位相信号(θA2)を算定する第1の位相演算器(23)と、前記下流センサ(5B)からの第2の変位信号(SB)に基づく出力を第5のディジタル信号(DB2)に変換する第2のアナログ/ディジタル変換器(25)と、前記第5のディジタル信号(DB2)における前記測定チューブの振動周波数よりも高い周波数成分を除去し第6のディジタル信号(DB3)を出力する第2のローパスフィルタ(26)と、前記第6のディジタル信号(DB3)と同位相の第7のディジタル信号(DB4)を出力する第2の同相ディジタルフィルタ(27A)と、前記第6のディジタル信号(DB3)と90°異なる位相の第8のディジタル信号(DB5)を出力する第2の異相ディジタルフィルタ(27B)と、前記第7のディジタル信号(DB4)と前記第8のディジタル信号(DB5)との比に対する逆正接の演算をして第2の位相信号(θB2)を算定する第2の位相演算器(29)とを具備し、前記第1の位相信号(θA2)と前記第2の位相信号(θB2)との差に基づいて前記被測定流体の質量流量を測定するコリオリ質量流量計において、前記第1の位相信号(θA2)を遅らせる時間遅れ要素(32)と、前記第1の位相信号(θA2)と前記時間遅れ要素(32)の出力との差から第1の周波数(fC)を求める周波数演算器(33)と、複数のサンプリング点で求めた前記第1の周波数(fC)の平均である第の周波数(fC’)を出力する平均化回路(34)と、前記第の周波数(fC’)に対応する第1の操作信号(S1)を出力する第1のフィルタ変更手段(46)と、前記第1の変位信号(SA)の周波数または前記第2の変位信号(SB)の周波数である第の周波数(fa)を出力する周波数測定手段(47)と、前記第の周波数(fa)に対応する第2の操作信号(S2)を出力する第2のフィルタ変更手段(48)と、前記第1の操作信号(S1)と前記第2の操作信号(S2)とを切り替え、前記第1の操作信号(S1)または前記第2の操作信号(S2)の何れかを出力する操作信号切り替えスイッチ(49)と、前記第1の同相ディジタルフィルタ(21A)の出力の振幅または前記第1の前記異相ディジタルフィルタ(21B)の出力の振幅の減衰に基づき、前記操作信号切り替えスイッチ(49)の出力を前記第1の操作信号(S1)より前記第2の操作信号(S2)に切り替えるための第3の操作信号(S3)を出力する振幅測定手段(50)とを具備し、前記第1の同相ディジタルフィルタ(21A)は、夫々周波数帯域が異なる少なくとも2個のフィルタからなる第1の同相ディジタルフィルタ群と、前記第1の同相ディジタルフィルタ群の中から前記操作信号切り替えスイッチ(49)の出力の周波数に合致する1個のフィルタを選択する第1の切り替えスイッチとを備え、前記第1の異相ディジタルフィルタ(21B)は、夫々周波数帯域が異なる少なくとも2個のフィルタからなる第1の異相ディジタルフィルタ群と、前記第1の異相ディジタルフィルタ群の中から前記操作信号切り替えスイッチ(49)の出力の周波数に合致する1個のフィルタを選択する第2の入力側の切り替えスイッチとを備え、前記第2の同相ディジタルフィルタ(27A)は、夫々周波数帯域が異なる少なくとも2個のフィルタからなる第2の同相ディジタルフィルタ群と、前記第2の同相ディジタルフィルタ群の中から前記操作信号切り替えスイッチ(49)の出力の周波数に合致する1個のフィルタを選択する第3の入力側の切り替えスイッチとを備え、前記第2の異相ディジタルフィルタ(27B)は、夫々周波数帯域が異なる少なくとも2個のフィルタからなる第2の異相ディジタルフィルタ群と、前記第2の異相ディジタルフィルタ群の中から前記操作信号切り替えスイッチ(49)の出力の周波数に合致する1個のフィルタを選択する第4の入力側の切り替えスイッチとを備えることを特徴とするコリオリ質量流量計。
(クレーム2)前記振幅測定手段(50)は、前記第1の同相ディジタルフィルタ(21A)の出力の振幅の自乗と前記第1の異相ディジタルフィルタ(21B)の出力の振幅の自乗との和に基づき、前記第3の操作信号(S3)を出力することを特徴とする(クレーム1)記載のコリオリ質量流量計。
(クレーム3)前記第1の同相ディジタルフィルタ(21A)と前記第1の異相ディジタルフィルタ(21B)と前記第2の同相ディジタルフィルタ(27A)と前記第2の異相ディジタルフィルタ(27B)とは、それぞれ、有限インパルス応答(FIR)フィルタで形成され、前記第1の入力側の切り替えスイッチ、前記第2の入力側の切り替えスイッチ、前記第3の入力側の切り替えスイッチ及び前記第4の入力側の切り替えスイッチは、前記有限インパルス応答(FIR)フィルタの特性を決定する係数パラメータがテーブル化されたテーブルと、マイクロプロセッサ及びメモリを用いたソフトウェア演算処理により前記テーブルから前記操作信号切り替えスイッチ(49)の出力の周波数に合致する1個のフィルタを選択するパラメータを選択する構成とを備えることを特徴とする(クレーム2)記載のコリオリ質量流量計。
また、本発明の実施例の特徴は、次の通りである。
(1)測定チューブの上下流に設置された上流センサ並びに下流センサで得られる一対のコリオリ信号を用いて質量流量を測定するコリオリ質量流量計において、前記各コリオリ信号を各ディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル変換器と、この各ディジタル信号を同一位相でフィルタリングして各々第1・第2フィルタ信号として出力する一対の同相ディジタルフィルタ手段と、前記各ディジタル信号を異なる位相に変換して第3・第4フィルタ信号として出力する一対の異相ディジタルフィルタ手段と、これ等の第1・第3フィルタ信号の比率と第2・第4フィルタ信号の比率とを演算して各比率から第1・第2位相を演算する一対の位相演算手段と、前記第1位相と前記第2位相との差分を演算して前記質量流量に対応する位相差信号を出力する位相差演算手段と、前記コリオリ信号の周波数に応じて前記同相ディジタルフィルタ手段並びに前記異相ディジタルフィルタ手段の周波数帯域を変更するフィルタ変更手段と、を具備することを特徴とするコリオリ質量流量計。
(2)前記同相ディジタルフィルタ手段並びに前記異相ディジタルフィルタ手段は、夫々周波数帯域の異なる複数組で構成され、前記フィルタ変更手段は、前記コリオリ信号の周波数に応じて最適な1組を選択することを特徴とする、(1)記載のコリオリ質量流量計。
(3)前記位相演算手段の出力より導かれる前記コリオリ信号の周波数により、前記フィルタ変更手段が制御されることを特徴とする、(1)又は(2)記載のコリオリ質量流量計。
(4)前記上流センサ又は下流センサで得られるコリオリ信号の周波数により、前記フィルタ変更手段が制御されることを特徴とする、(1)又は(2)記載のコリオリ質量流量計。
(5)前記同相ディジタルフィルタ手段又は前記異相ディジタルフィルタ手段の出力振幅を監視する振幅測定手段を具備し、前記振幅測定手段の出力に基づき、前記位相演算手段の出力より導かれる前記前記コリオリ信号の周波数、前記上流センサ、下流センサで得られるコリオリ信号の周波数のいずれかを選択して前記フィルタ変更手段を制御することを特徴とする、(1)又は(2)記載のコリオリ質量流量計。
(6)前記同相ディジタルフィルタ手段又は前記異相ディジタルフィルタ手段として有限インパルス応答フィルタを用いたことを特徴とする、(1)乃至(5)のいずれかに記載のコリオリ質量流量計。
(7)前記有限インパルス応答フィルタにバンドパス特性を持たせることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載のコリオリ質量流量計。
(8)前記アナログ/ディジタル変換器の後段に、各々一対のローパスフィルタを設け、この各出力を前記各ディジタル信号として用いることを特徴とする(1)(5)のいずれかに記載のコリオリ質量流量計。
(9)前記第1または第2位相において、所定の時間差で測定された位相差をこの時間差で割ることにより求められた前記測定チューブの振動周波数と、前記被測定流体の温度に関連して測定された温度信号とを用いて、前記位相差信号に対して前記周波数補正と温度補正とを行うことを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載のコリオリ質量流量計。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下本発明実施態様を、図面を用いて説明する。図1はコリオリ質量流量計の変換部TRの主要部を示す機能ブロック図である。図5で説明した要素と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。尚、図1のブロック図は本発明にかかるコリオリ質量流量計の主要部であり、この主要部以外のブロックは、図5で説明した従来のコリオリ質量流量計と全く同様であるので、その詳しい説明は重複するので省略する。
【0033】
ヒルベルト変換器21及び27において、FIRフィルタ1,2(21A)及びFIRフィルタ1,2(27A)は周波数帯域の異なる複数の同相ディジタルフィルタ群(最小構成ではFIRフィルタ1及びFIRフィルタ2の2個)である。
【0034】
同様に、ヒルベルト変換器21及び27において、FIRフィルタ(21B)及びFIRフィルタ(27B)は周波数帯域の異なる複数の90°相ディジタルフィルタ群(最小構成ではFIRフィルタ1及びFIRフィルタ2の2個)である。
【0035】
42及び42´は、複数の同相ディジタルフィルタ群21A(最小構成ではFIRフィルタ1及びFIRフィルタ2)の1個を選択する入力側及び出力側の切り替えスイッチ、同様に、43及び43´は、複数の同相ディジタルフィルタ群27A(最小構成ではFIRフィルタ1及びFIRフィルタ2)の1個を選択する入力側及び出力側の切り替えスイッチである。
【0036】
44及び44´は、複数の90°相ディジタルフィルタ群21B(最小構成ではFIRフィルタ1及びFIRフィルタ2)の1個を選択する入力側及び出力側の切り替えスイッチ、同様に、45及び45´は、複数の90°相ディジタルフィルタ群27B(最小構成ではFIRフィルタ1及びFIRフィルタ2)の1個を選択する入力側及び出力側の切り替えスイッチである。
【0037】
これら切り替えスイッチは、操作信号S1により連動して作動し、同相ディジタルフィルタ群21A,27A及び90°相ディジタルフィルタ群21B,27Bの中のうち上流センサ信号の周波数に合致したディジタルフィルタ1組が選択される。
【0038】
46はフィルタ変更手段であり、平均化回路34より求められる周波数fC’とディジタルフィルタの周波数帯域の周波数値をソフトウェアで比較して周波数fc’が帯域内となるディジタルフィルタを選択するための操作信号S1を出力する。
【0039】
ハードウエア構成とする場合では、周波数fC’をこれに比例した電圧に変換して、その電圧を同様にディジタルフィルタの周波数帯域の周波数に比例した電圧と比較器により比較してディジタルフィルタを選択する操作信号S1を出力してもよい。
【0040】
その一方で、図1に示す本発明を適用した場合は、上流センサや下流センサの信号などにノイズ成分が重畳されて周波数fc’がノイズ成分の周波数を出力してしまうと、フィルタ変更手段46はノイズ成分の周波数に対応したディジタルフィルタを選択してしまう虞がある。そしてノイズ成分が消滅してもこのとき選択されたディジタルフィルタでは上流センサなどの信号が減衰されて正常な測定ができなくなる。
【0041】
流体種類の変化など(空状態を含む)により上流センサおよび下流センサの信号の周波数が急激に変化した場合、選択されているディジタルフィルタは変化前の周波数に対するものなので、周波数変化後の信号は減衰されて正常な測定ができない。
【0042】
図2の実施例は、ノイズの混入や信号周波数が急変した場合でも、正常な測定ができるように上流側信号などの周波数に合致したディジタルフィルタを選択できる機能を追加した構成を特徴とする。
【0043】
47は上流センサの信号SAを直接入力する周波数測定手段であり、ノイズを除去できる手段(例えばアナログフィルタによるノイズ除去やヒステリシス特性を有する比較器)を含んでおり、これにより上流センサの信号の周波数を求めて、フィルタ変更手段48に出力する。
【0044】
フィルタ変更手段48は、図1で説明したフィルタ変更手段46と同一機能を有しており、上流センサの信号SAの周波数faとディジタルフィルタの周波数帯域の周波数値を比較して周波数faが帯域内となるディジタルフィルタを選択するための操作信号S2を出力する。
【0045】
49は操作信号S1と操作信号S2を切り替える操作信号切り替えスイッチであり、振幅測定手段50の操作出力S3で切り替え操作が実行される。
【0046】
振幅測定手段50は、ディジタルフィルタ(例えば21A、21B)出力の振幅を監視する機能を有しており、振幅の減衰が所定のレベル以下となったとき、操作信号S3を出力し、ディジタルフィルタの切り替え操作信号をS1よりS2に切り替える。
【0047】
ここでディジタルフィルタがノイズ成分の周波数に合致した帯域のものを選択してしまうとノイズ成分が消滅したあとに上流センサの信号の周波数成分は減衰されてその振幅は小さくなるため、振幅測定手段50によりディジタルフィルタの出力の振幅が一定のしきい値以下か否かを判断することで、上流センサの信号の周波数faに合致したディジタルフィルタの選択が行える。
【0048】
振幅測定手段50としては、ディジタルフィルタ21Aの出力はAsinωt、21Bの出力はAcosωtなので、各々の自乗の和により求められる振幅Aの自乗(=振幅に対応する)値を用いることもできる。
【0049】
流体種類の変化など(空状態を含む)により上流センサおよび下流センサの信号の周波数が急激に変化した場合でも、上記と同様に周波数変化後の上流センサの信号の振幅は一定のしきい値以下になるため、フィルタ変更手段48の操作信号S2によりディジタルフィルタが選択されて、周波数変化後の上流センサの信号faに合致したディジタルフィルタを選択することができる。
【0050】
以上説明した実施例では、簡単のため選択対象ディジタルフィルタの数は2個で示したが、具体的な設計では多数個の異なる周波数帯域を持つディジタルフィルタを用意して、それらの選択が可能となる。またフィルタの変更は、FIRフィルタの特性を決定する係数パラメータをテーブル化してソフトウェアによりテーブルから所定のパラメータを選択する構成が可能である。
【0051】
図1において、周波数fC’を下流センサ側から出力してフィルタ選択を実現することもできる。又図2において、周波数fC’を下流センサ側から出力して、下流センサ側に周波数測定手段47、フィルタ変更手段46,48、振幅測定手段50を具備しても同様にフィルタ選択を実現することができる。
【0052】
なお、図1及び図2に示す実施例では、デスクリートな回路素子を用いて実現する形として説明したが、アナログ/ディジタル変換器19、25、38以降の信号処理については、マイクロプロセッサ、メモリなどを用いたソフトウエア演算処理により各ブロックでの機能を順次実行させ、質量流量信号を得ることができる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明の請求項1、2、3に記載の発明によれば、ノイズの混入や信号周波数が急変した場合でも、正常な測定ができる。
また、本発明によればセンサの口径や流体密度により広範な周波数帯域をもつセンサ群に対して、センサ信号の周波数に合致した(=最適な)周波数帯域の同相および相ディジタルフィルタを選択してディジタルフィルタリングを行うことが可能となり、変換部に汎用性を持たせたコリオリ質量流量を実現することができる。
【0054】
また、センサ信号などにノイズが混入した場合にも、ノイズ消滅後速やかにセンサ信号周波数に合致したディジタルフィルタを選択して正常な出力を得ることが可能なコリオリ質量流量を実現することができる。
【0055】
さらに、気泡の混入や満水から空状態になる等によりセンサ信号の周波数が急激に変化した場合にも、速やかにセンサ信号周波数に合致したディジタルフィルタを選択して正常な出力に得ることが可能なコリオリ質量流量を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 コリオリ質量流量計の変換部TRの主要部を示す機能ブロック図である。
【図2】 本発明実施例を示す変換部TRの主要部の機能ブロック図である。
【図3】 周知のコリオリ質量流量計のセンサ部の構成を示す構成図である。
【図4】 図3に示すコリオリ質量流量計のセンサ部の動作を説明する波形図である。
【図5】 図3に示すセンサ部と組合せて質量流量を演算する変換部の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
18、24 トラッンアンドホールド回路
19、25 アナログ/ディジタル変換器
20、26 ローパスフィルタ
21、27 ヒルベルト変換器
21A、27A 同相ディジタルフィルタ
21B、27B 異相ディジタルフィルタ
23、29 位相演算器
34 平均化回路
42、42´、43、43´、44、44´、45、45´ 切り替えスイッチ
46 フィルタ変更手段
48 周波数測定手段
49 操作信号切り替えスイッチ
50 振幅測定手段

Claims (3)

  1. 被測定流体を流す測定チューブの振動を検出する上流センサ(5A)及び下流センサ(5B)と、
    前記上流センサ(5A)からの第1の変位信号(SA)に基づく出力を第1のディジタル信号(DA2)に変換する第1のアナログ/ディジタル変換器(19)と、
    前記第1のディジタル信号(DA2)における前記測定チューブの振動周波数よりも高い周波数成分を除去し第2のディジタル信号(DA3)を出力する第1のローパスフィルタ(20)と、
    前記第2のディジタル信号(DA3)と同位相の第3のディジタル信号(DA4)を出力する第1の同相ディジタルフィルタ(21A)と、
    前記第2のディジタル信号(DA3)と90°異なる位相の第4のディジタル信号(DA5)を出力する第1の異相ディジタルフィルタ(21B)と、
    前記第3のディジタル信号(DA4)と前記第4のディジタル信号(DA5)との比に対する逆正接の演算をして第1の位相信号(θA2)を算定する第1の位相演算器(23)と、
    前記下流センサ(5B)からの第2の変位信号(SB)に基づく出力を第5のディジタル信号(DB2)に変換する第2のアナログ/ディジタル変換器(25)と、
    前記第5のディジタル信号(DB2)における前記測定チューブの振動周波数よりも高い周波数成分を除去し第6のディジタル信号(DB3)を出力する第2のローパスフィルタ(26)と、
    前記第6のディジタル信号(DB3)と同位相の第7のディジタル信号(DB4)を出力する第2の同相ディジタルフィルタ(27A)と、
    前記第6のディジタル信号(DB3)と90°異なる位相の第8のディジタル信号(DB5)を出力する第2の異相ディジタルフィルタ(27B)と、
    前記第7のディジタル信号(DB4)と前記第8のディジタル信号(DB5)との比に対する逆正接の演算をして第2の位相信号(θB2)を算定する第2の位相演算器(29)とを具備し、
    前記第1の位相信号(θA2)と前記第2の位相信号(θB2)との差に基づいて前記被測定流体の質量流量を測定するコリオリ質量流量計において、
    前記第1の位相信号(θA2)を遅らせる時間遅れ要素(32)と、
    前記第1の位相信号(θA2)と前記時間遅れ要素(32)の出力との差から第1の周波数(fC)を求める周波数演算器(33)と、
    複数のサンプリング点で求めた前記第1の周波数(fC)の平均である第の周波数(fC’)を出力する平均化回路(34)と、
    前記第の周波数(fC’)に対応する第1の操作信号(S1)を出力する第1のフィルタ変更手段(46)と、
    前記第1の変位信号(SA)の周波数または前記第2の変位信号(SB)の周波数である第の周波数(fa)を出力する周波数測定手段(47)と、
    前記第の周波数(fa)に対応する第2の操作信号(S2)を出力する第2のフィルタ変更手段(48)と、
    前記第1の操作信号(S1)と前記第2の操作信号(S2)とを切り替え、前記第1の操作信号(S1)または前記第2の操作信号(S2)の何れかを出力する操作信号切り替えスイッチ(49)と、
    前記第1の同相ディジタルフィルタ(21A)の出力の振幅または前記第1の前記異相ディジタルフィルタ(21B)の出力の振幅の減衰に基づき、前記操作信号切り替えスイッチ(49)の出力を前記第1の操作信号(S1)より前記第2の操作信号(S2)に切り替えるための第3の操作信号(S3)を出力する振幅測定手段(50)とを具備し、
    前記第1の同相ディジタルフィルタ(21A)は、夫々周波数帯域が異なる少なくとも2個のフィルタからなる第1の同相ディジタルフィルタ群と、前記第1の同相ディジタルフィルタ群の中から前記操作信号切り替えスイッチ(49)の出力の周波数に合致する1個のフィルタを選択する第1の切り替えスイッチとを備え、
    前記第1の異相ディジタルフィルタ(21B)は、夫々周波数帯域が異なる少なくとも2個のフィルタからなる第1の異相ディジタルフィルタ群と、前記第1の異相ディジタルフィルタ群の中から前記操作信号切り替えスイッチ(49)の出力の周波数に合致する1個のフィルタを選択する第2の入力側の切り替えスイッチとを備え、
    前記第2の同相ディジタルフィルタ(27A)は、夫々周波数帯域が異なる少なくとも2個のフィルタからなる第2の同相ディジタルフィルタ群と、前記第2の同相ディジタルフィルタ群の中から前記操作信号切り替えスイッチ(49)の出力の周波数に合致する1個のフィルタを選択する第3の入力側の切り替えスイッチとを備え、
    前記第2の異相ディジタルフィルタ(27B)は、夫々周波数帯域が異なる少なくとも2個のフィルタからなる第2の異相ディジタルフィルタ群と、前記第2の異相ディジタルフィルタ群の中から前記操作信号切り替えスイッチ(49)の出力の周波数に合致する1個のフィルタを選択する第4の入力側の切り替えスイッチとを備える
    ことを特徴とするコリオリ質量流量計。
  2. 前記振幅測定手段(50)は、前記第1の同相ディジタルフィルタ(21A)の出力の振幅の自乗と前記第1の異相ディジタルフィルタ(21B)の出力の振幅の自乗との和に基づき、前記第3の操作信号(S3)を出力する
    ことを特徴とする請求項1記載のコリオリ質量流量計。
  3. 前記第1の同相ディジタルフィルタ(21A)と前記第1の異相ディジタルフィルタ(21B)と前記第2の同相ディジタルフィルタ(27A)と前記第2の異相ディジタルフィルタ(27B)とは、それぞれ、有限インパルス応答(FIR)フィルタで形成され、
    前記第1の入力側の切り替えスイッチ、前記第2の入力側の切り替えスイッチ、前記第3の入力側の切り替えスイッチ及び前記第4の入力側の切り替えスイッチは、
    前記有限インパルス応答(FIR)フィルタの特性を決定する係数パラメータがテーブル化されたテーブルと、
    マイクロプロセッサ及びメモリを用いたソフトウェア演算処理により前記テーブルから前記操作信号切り替えスイッチ(49)の出力の周波数に合致する1個のフィルタを選択するパラメータを選択する構成とを備える
    ことを特徴とする請求項記載のコリオリ質量流量計。
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