JP3925077B2 - ガラス質セラミックスおよびその製造方法ならびにガラス質セラミックス用組成物 - Google Patents

ガラス質セラミックスおよびその製造方法ならびにガラス質セラミックス用組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、快削性を有するガラス質セラミックスおよびその製造方法ならびにその製造に使用される組成物に関し、特に、熱膨張係数が小さくかつ切削加工性が良好なガラス質セラミックスおよびその製造方法ならびにその製造に使用される組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気機器や真空装置の部品に使用されるセラミックス材料として、高精度な切削加工性を有する結晶化ガラス質セラミックスを使用することがある。このようなガラス質セラミックスは、溶融法または焼結法により製造されることが知られている。ここで「溶融法」とは、原料配合物を加熱により溶融した後、ガラス体を得、得られたガラス体に熱処理を施して結晶を生じさせる方法をいう。また「焼結法」とは、結晶材料に結合材としてのガラス成分を加え、得られた混合物を加圧成形した後、焼結させる方法をいう。
【0003】
特公昭54−34775号公報は、溶融法により製造されるガラス質セラミックス物品を開示する。同公報に開示される物品のガラス質マトリックスに分散されているフッ素金雲母固溶体の結晶は、全体の少なくとも50容量%を構成する。同公報は、溶融法において、SiO2−B23−Al23−MgO−K2O−F系組成のガラス物品を得、得られたガラス物品を750〜1100℃の温度に十分な時間曝し、結晶化により所望のフッ素金雲母固溶体を得ることを開示する。
【0004】
特公平4−32783号公報も溶融法によるガラス質セラミックスの製造方法を開示する。この製造方法において溶融のため使用される配合物は、陶石、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウムを生成し得る化合物、酸化カリウムを生成し得る化合物、および酸化ホウ素を生成し得る化合物に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および鉛から選ばれた少なくとも1種の金属の酸化物と二酸化ジルコニウムとの複合酸化物を配合したものである。この配合物について、強熱減量分を除いた合計重量100部中に含まれる元素の含量は、ケイ素16〜25部、アルミニウム6〜9部、カリウム5.5〜12部、マグネシウム4.7〜15部、ジルコニウム0.7〜5.0部、ホウ素0.7〜3.2部、フッ素3.0〜9.3部、これらの元素以外の金属元素7.0部以下、および酸素バランス量である。この配合物から、溶融法により、フッ素金雲母とジルコニアの微細結晶がガラスマトリックス中に分散したガラス質セラミックスが得られる。
【0005】
特開平9−227223号公報は、熱膨張係数が小さく機械加工性に優れた複合セラミックスを焼結法により製造する方法を開示する。この方法では、焼成粉(A)と焼成粉(B)とをバインダーを添加して混合したあと造粒して顆粒物を得、得られた顆粒物をプレス成形、脱脂及び本焼成してセラミックス焼結体を得る。ここで、焼成粉(A)は、マイカ分散ガラス質セラミックス粉末30〜50重量部、フッ化マグネシウム1〜10重量部、炭酸リチウム0.5〜5重量部を含むリチウム化合物を混合し、得られた混合粉末を焼成したあと粉砕して得られるものである。焼成粉(B)は、酸化亜鉛20〜35重量部、二酸化ケイ素4.5〜18.0重量部、コーディエライト1〜10重量部を混合し、焼成したあと粉砕して得られるものである。また、マイカ分散ガラス質セラミックスとして、陶石50〜70重量部、ジルコン1.5〜10重量部、フッ化マグネシウム5〜15重量部、酸化マグネシウム5〜15重量部、酸化カリウム4〜10重量部を含むカリウム化合物および酸化ホウ素2.5〜10重量部を含むホウ素化合物からなる配合物を溶融、結晶化したものが使用される。
【0006】
さらに、特開平6−48774号公報は、アルコキシド化合物を用いたガラスセラミックスおよびその製造方法を開示する。この製造方法では、酸化物とした時点での重量比でSiO2成分30〜70%、Al23成分10〜25%、MgO成分7〜25%、K2O成分2〜12%、Li2O成分1〜7%およびF成分1〜15%となるような割合で各種金属成分のアルコキシド化合物及びフッ素化合物が混合溶解され、それにB23成分1〜10%が添加される。そして、加水分解反応の後、脱水乾燥および熱処理を経て、フッ素金雲母微結晶およびLi2O−Al23−SiO2系の微結晶を含有する、熱膨張係数が4.0×10-6〜6.0×10-6/℃(25〜800℃)であるガラスセラミックスが得られる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の溶融法は、微細な結晶を無秩序に含み、気密性が高く、切削等の機械加工が容易であり、かつ大型または肉厚であるガラス質セラミックス製品の製造に適している。たとえば、従来技術によれば、精密加工が可能であり、適当な機械的強度を有し、大型(たとえば、25cm×25cm×3cmのサイズまたはそれより大きなサイズ)であるフッ素金雲母含有ガラス質セラミックス製品を得ることができる。しかし、従来の溶融法により得られるガラス質セラミックスは、室温〜400℃において8.5〜10×10-6/℃と金属に近い大きな熱膨張係数を有するため、低熱膨張性および寸法安定性が要求される機械部品や半導体治具(たとえば半導体検査治具)の材料として使用することは困難であった。
【0008】
一方、上述した従来の焼結法またはアルコキシド化合物を使用する方法により製造されるガラス質セラミックス製品は、低熱膨張性という要求を満足する。しかし、いずれの方法でも、大型品や肉厚品を成形機によりプレスしようとすると、表面と内部との間で加圧ムラが生じるため、材料強度の不均質や吸水性の発現などの問題が発生し、満足のいく製品が得られなかった。SiO2、Al23のような加熱により材料内部からガス等が揮発しないセラミックスの大型品を製造する場合は、これらの粉末または顆粒を用い、冷間静水圧プレス、熱間静水圧プレス等において成形し、高温で焼結することにより、均質で吸水性のない製品を得ることが可能である。しかし、フッ素を含む快削性セラミックスを製造する場合、冷間静水圧プレス、熱間静水圧プレス等を使用して高温で焼結しようとすれば、材料内部からフッ素等が揮発し、発泡が生じる。このように、焼結工程を経る方法で均質な大型品や肉厚品を製造することは困難であった。
【0009】
かくして、本発明は、上述した従来技術の問題点を克服し、良好な切削加工性と低熱膨張性を兼ね備えるガラス質セラミックスを溶融法により得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によるガラス質セラミックスは、25〜40質量%の陶石、2〜10質量%のフッ化マグネシウム、酸化カリウム換算で2〜5.5質量%のカリウム化合物、酸化ホウ素換算で3〜11質量%のホウ素化合物、3〜10質量%の酸化マグネシウム、1〜6質量%のケイ酸ジルコニウム、5〜15質量%の二酸化ケイ素および20〜40質量%の酸化亜鉛からなる配合物から溶融法によって得られるガラス質セラミックスであって、その内部にフッ素金雲母結晶およびケイ酸亜鉛結晶が析出していることを特徴とする。
【0011】
本発明によるガラス質セラミックスは、たとえば、室温〜400℃において5×10-6〜7×10-6/℃の熱膨張係数を有するものである。
【0012】
本発明によるガラス質セラミックスの製造方法は、25〜40質量%の陶石、2〜10質量%のフッ化マグネシウム、酸化カリウム換算で2〜5.5質量%のカリウム化合物、酸化ホウ素換算で3〜11質量%のホウ素化合物、3〜10質量%の酸化マグネシウム、1〜6質量%のケイ酸ジルコニウム、5〜15質量%の二酸化ケイ素および20〜40質量%の酸化亜鉛からなる配合物を加熱して溶融する工程と、該溶融工程で得られた溶融液を冷却してガラス体を得る工程と、蓋付き容器中で該ガラス体を850℃より高くかつ1050℃以下である温度で熱処理する工程とを含む。
【0013】
また、本発明による製造方法の熱処理工程において、蓋付き容器内にガラス体とともにアルミナ粉末または黒鉛粉末を主成分とする粉末を充填することが好ましい。
【0014】
さらに、本発明によりガラス質セラミックス用組成物が提供され、該組成物は、25〜40質量%の陶石、2〜10質量%のフッ化マグネシウム、酸化カリウム換算で2〜5.5質量%のカリウム化合物、酸化ホウ素換算で3〜11質量%のホウ素化合物、3〜10質量%の酸化マグネシウム、1〜6質量%のケイ酸ジルコニウム、5〜15質量%の二酸化ケイ素および20〜40質量%の酸化亜鉛からなる。該組成物は、上述したガラス質セラミックスを製造するための原料として提供されるものである。該組成物は、上記各成分が配合された混合物であり、通常、粉体あるいは顆粒の状態で提供されるものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者は、25〜40質量%の陶石、2〜10質量%のフッ化マグネシウム、酸化カリウム換算で2〜5.5質量%のカリウム化合物、酸化ホウ素換算で3〜11質量%のホウ素化合物、3〜10質量%の酸化マグネシウム、1〜6質量%のケイ酸ジルコニウム、5〜15質量%の二酸化ケイ素および20〜40質量%の酸化亜鉛からなる配合物(本発明によるガラス質セラミックス用組成物)を原料として使用することにより、溶融法でも、良好な切削加工性と低熱膨張性を兼ね備えるガラス質セラミックスを調製できることを見出した。
【0016】
陶石は、シリカ、アルミナおよび酸化カリウムからなる複合酸化物を主成分とする鉱物である。かかる成分を含んだ複合構造の陶石を使用することにより、原料配合物の溶融を促進させることができる。また、陶石を使用することにより、原料費を低く抑えることができる。陶石の使用量は、原料配合物100質量%に対して25〜40質量%である。この使用量が40質量%を超えると、最終的に得られるガラス質セラミックスの熱膨張係数が大きくなり、低熱膨張性の製品を得ることが困難になる。一方、この使用量が25質量%未満になると、原料配合物の溶解性が悪くなるとともに、ガラス質セラミックス中のフッ素金雲母(KMg3(AlSi3102)の含量が減少し、快削性が得られなくなる。原料配合物中の陶石の好ましい含量は、たとえば26.7〜39.5質量%である。
【0017】
フッ化マグネシウムの使用量は、原料配合物100質量%に対して2〜10質量%である。この使用量が10質量%を超えると、フッ素金雲母の生成量が増加し、得られるガラス質セラミックスの熱膨張係数が大きくなる。一方、この使用量が2質量%未満になると、フッ素金雲母の生成量が減少し、快削性が得られなくなる。原料配合物中のフッ化マグネシウムの好ましい含量は、たとえば4.9〜6.6質量%である。
【0018】
酸化マグネシウムの使用量は、原料配合物100質量%に対して3〜10質量%である。この使用量が10質量%を超えると、フッ素金雲母の生成量が増加し、さらに余ったMgOによりフォルステライトMg2SiO4等の副産物が生成し、得られるガラス質セラミックスの熱膨張係数が大きくなる。一方、この使用量が3質量%未満になると、フッ素金雲母の生成量が減少し、快削性が得られなくなる。原料配合物中の酸化マグネシウムの好ましい含量は、たとえば4.1〜6.2質量%である。
【0019】
本発明において、カリウム化合物には、酸化雰囲気下において加熱により酸化カリウムに変換できる化合物が好ましく使用される。具体的に、カリウム化合物として、炭酸カリウムを好ましく用いることができる。しかし、配合物の組成に大きな影響を及ぼさない限り、ホウ酸カリウム等の他のカリウム化合物を使用してもよい。本発明において、カリウム化合物の配合量(質量%)は、酸化カリウム(K2O)に換算して決定する。この換算では、所定量のカリウム化合物中のカリウムがすべて酸化カリウムとなった時に得られる酸化カリウムの量を計算する。そして、原料配合物100質量%に対する上記計算量の割合(質量%)を酸化カリウム換算でのカリウム化合物の含量とする。本発明において、この酸化カリウム換算でのカリウム化合物の使用量は、原料配合物100質量%に対して2〜5.5質量%である。この使用量が5.5質量%を超えると、フッ素金雲母の生成量が増加し、さらに余ったK2Oはガラス体自体の熱膨張を大きくし、得られるガラス質セラミックスの熱膨張係数が大きくなる。一方、この使用量が2質量%未満になると、フッ素金雲母の生成量が減少し、快削性が得られなくなる。原料配合物中の酸化カリウム換算でのカリウム化合物の好ましい含量は、たとえば2.4〜3.7質量%である。
【0020】
本発明において、ホウ素化合物には、酸化雰囲気下において加熱により酸化ホウ素に変換できる化合物が好ましく使用される。具体的に、ホウ素化合物として、ホウ酸を好ましく用いることができる。しかし、配合物の組成に大きな影響を及ぼさない限り、ホウ酸カリウム等の他のホウ素化合物を使用してもよい。本発明において、ホウ素化合物の配合量(質量%)は、酸化ホウ素(B23)に換算して決定する。この換算では、所定量のホウ素化合物中のホウ素がすべて酸化ホウ素となった時に得られる酸化ホウ素の量を計算する。そして、原料配合物100質量%に対する上記計算量の割合(質量%)を酸化ホウ素換算でのホウ素化合物の含量とする。本発明において、この酸化ホウ素換算でのホウ素化合物の使用量は、原料配合物100質量%に対して3〜11質量%である。この使用量が11質量%を超えると、原料バッチの溶融性は向上するが、得られるガラス質セラミックスの耐熱性が低下し好ましくない。一方、この使用量が3質量%未満になると、融液中に未溶融物が残存するようになり、得られるガラス体が均質にならない。原料配合物中の酸化ホウ素換算でのホウ素化合物の好ましい含量は、たとえば3.6〜10.1質量%である。
【0021】
ケイ酸ジルコニウムの使用量は、原料配合物100質量%に対して1〜6質量%である。ケイ酸ジルコニウムは、均一で微細なフッ素金雲母の結晶を容易に生成できるようにし、ガラス質セラミックスの切削性を高めるのに有効である。この使用量が6質量%を超えると、融液中に溶融しきれなくなる。一方、この使用量が1質量%未満になると、ケイ酸ジルコニウムの上述した添加効果が得られなくなる。原料配合物中のケイ酸ジルコニウムの好ましい含量は、たとえば3.4〜5.4質量%である。
【0022】
酸化亜鉛の使用量は、原料配合物100質量%に対して20〜40質量%である。この使用量が40質量%を超えると、融液中に未溶融の酸化亜鉛が残存し、均質なガラス体を得ることができない。一方、この使用量が20質量%未満になると、ガラス質セラミックスにおけるケイ酸亜鉛結晶の生成が不十分となり、ガラス質セラミックスの熱膨張係数を十分に下げることができない。原料配合物中の酸化亜鉛の好ましい含量は、たとえば23.7〜31.2質量%である。
【0023】
二酸化ケイ素の使用量は、原料配合物100質量%に対して5〜15質量%である。この使用量が15質量%を超えると、融液の粘性が高くなり、融液からの脱泡が困難となる。一方、この使用量が5質量%未満になると、ガラス質セラミックスにおけるケイ酸亜鉛結晶の生成が不十分となり、ガラス質セラミックスの熱膨張係数を十分に下げることができない。原料配合物中の二酸化ケイ素の好ましい含量は、たとえば6.5〜9.9質量%である。
【0024】
なお、上述した原料配合物に使用される各成分は、当業者が容易に入手できるものであり、たとえば、すべて市販品として入手できるものである。
【0025】
本発明による製造方法おいて、上述した各成分を含む原料配合物は、十分に混合することが好ましい。そのような混合工程の後、原料配合物は、造粒、仮焼され、たとえば、溶融炉中で溶融され、ガラス転移温度が約420℃〜500℃の範囲内にあるガラス溶融液とされる。典型的に、この溶融液は鋳型に注入され、たとえば、600℃すなわち上述した範囲の転移温度より少なくとも100℃高い温度から、340℃すなわち上述した範囲の転移温度より少なくとも80℃低い温度まで、たとえば1時間あたり100℃以下の冷却速度で徐々に冷却する。このような徐冷により、溶融液は固化し、ガラス体となる。この際の冷却速度が大きすぎると、得られるガラス体の内部歪が増大したり、大型のガラス体ではクラックや割れが生じやすくなり、収率の低下が起こり得る。一方、冷却速度が小さすぎると、ガラスの生産性が低下する。これらのことを考慮して適当な冷却速度を選ぶことが望ましい。
【0026】
このようにして得られたガラス体は、アルミナ等の容器中で850℃を超え1050℃までの温度で熱処理される。この際、ガラス体を容器で解放系にて熱処理すると、フッ素やフッ素化合物の蒸気が散逸する。したがって、蓋付き容器中でガラス体を熱処理することが必要である。また、蓋付き容器を使用し、さらにガラス体と容器との間の空間をアルミナ粉末または黒鉛粉末を主成分とする粉末で埋めることにより、より確実にフッ素やフッ素化合物の散逸を抑制することができる。アルミナ粉末または黒鉛粉末は、ガラス体の熱処理温度において焼結せず、ガラス体との反応や融着を起こさず、さらに良好な熱伝導性を有するため短時間での均一な熱処理に寄与し得る。また、これらの粉末は、熱処理中にガラス体表面の一部が軟化してガラス形状が変化することを効果的に抑制し得る。なお、これらの粉末による効果がもたらされる範囲で、アルミナ粉末または黒鉛粉末に、他の粉末、たとえばジルコニア粉末、マグネシア粉末等を添加してもよい。こうして蓋付き容器内でガラス体を熱処理することにより、ガラス体中にフッ素金雲母の結晶およびケイ酸亜鉛の微結晶が析出、生成する。かくして、たとえば室温〜400℃における熱膨張係数が5×10-6〜7×10-6/℃であり、その内部にフッ素金雲母結晶およびケイ酸亜鉛結晶が析出しているガラス質セラミックスが得られる。
【0027】
【実施例】
実施例1
表1に示す化学組成を有する精製陶石を使用した。この陶石に、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カリウム、ホウ酸、ケイ酸ジルコニウム、酸化亜鉛および二酸化ケイ素を添加し、それぞれ表2の実施例1に示す配合割合の原料配合物を得た。
【0028】
原料成分をボールミルを用いて1時間十分に混合し、原料配合物とした。この原料配合物を成形機(ブリケッティングマシン)により直径約15mmの球状に造粒した。造粒物を850℃にて5時間仮焼し、溶融用原料を得た。この溶融用原料を溶融炉に入れ、1350℃で溶融させた。溶融物を25cm×25cm×4cmのサイズの角形黒鉛鋳型に注入し、600℃から300℃に至るまで、冷却速度50℃/hrにて6時間かけて徐冷し、次いで室温まで自然冷却しガラス体を得た。得られたガラス体をアルミナ製容器に収容し、該容器の空間部分をアルミナ粉末で埋め、容器をアルミナ製蓋で閉じた。蓋をしたアルミナ容器を、電気炉中で9.5時間かけて950℃まで昇温し、その温度で5時間熱処理してから室温まで徐冷し、ガラス質セラミックスを得た。
【0029】
得られたガラス質セラミックスの熱膨張を毎分5℃の昇温速度で室温から650℃まで測定し、ガラス転移点を求めて、室温〜400℃の熱膨張係数を求めた。さらに、X線回折装置を用いてガラス質セラミックス中の主要結晶相を調べた。また、ガラス質セラミックスの切削加工性につき汎用旋盤を用いて試験した。切削加工性の評価では、円柱状に加工したガラス質セラミックス製品を、超硬工具(K−10種)を用い、切削速度18m/min、送り0.031mm/rev、切り込み0.1mmにて5分間旋盤切削し、切削後の表面粗さの程度により、3段階評価を行った。評価は以下のとおりである。
【0030】
Rmaxが10μm未満:○
Rmaxが10μm以上15μm未満:△
Rmaxが15μm以上:×
評価の結果も合わせて表2に示す。また表3に、炭酸カリウムおよびホウ酸をそれぞれ酸化カリウムおよび酸化ホウ素に換算した配合割合を示す。
【0031】
【表1】
Figure 0003925077
【0032】
【表2】
Figure 0003925077
【0033】
【表3】
Figure 0003925077
【0034】
実施例2〜6
各成分の配合割合を表2の実施例2〜6のように変え、実施例1と同様の工程によりガラス体を得た。得られたガラス体の熱処理温度(結晶化温度)を表2の実施例2〜6に示すように変更したほかは、実施例1と同様の条件にてガラス質セラミックスを製造した。得られたガラス質セラミックスのガラス転移点、熱膨張係数、主要結晶相および切削加工性を上記と同様に測定した。それらの結果も表2に示す。また表3に、炭酸カリウムおよびホウ酸をそれぞれ酸化カリウムおよび酸化ホウ素に換算した配合割合を示す。
【0035】
比較例1
表4に示す組成の配合物を使用して、実施例1と同様の工程により混合、成形および仮焼を行い、溶融用原料を得た。この溶融用原料を溶融炉に入れ、1450℃で溶融させて、実施例1と同様の鋳型に注入した。次いで、ガラス融液を750℃から400℃まで、冷却速度50℃/hrで7時間かけて徐冷し、次いで室温まで自然冷却しガラス体を得た。得られたガラス体をアルミナ製容器に入れ、空間を黒鉛粉末で埋め、アルミナ製蓋を容器にのせた。蓋をした容器を、電気炉中で昇温速度100℃/hrにて1125℃まで昇温し、その温度で10時間熱処理(結晶化)し、ガラス質セラミックスを得た。得られたガラス質セラミックスを実施例1と同様に評価した。成分の配合割合、ガラス転移温度、熱膨張係数、主要な結晶相および切削加工性を表4に示す。なお、室温〜400℃の熱膨張係数およびガラス転移点を求めるにあたり、熱膨張は室温から800℃まで測定した。
【0036】
【表4】
Figure 0003925077
【0037】
比較例2〜4
各成分の配合割合を表4の比較例2〜4に示すようにそれぞれ変えたほかは、比較例1と同様にしてガラス質セラミックスの製造および評価を行った。その結果を表4に示す。
【0038】
表2と表4との比較により、本発明によるガラス質セラミックスは、比較例のガラス質セラミックスに比べて熱膨張係数が小さいことがわかる。また、本発明によるガラス質セラミックスは、比較例のガラス質セラミックスと同等の切削加工性を有している。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、熱膨張係数が小さくかつ切削加工性に優れたガラス質セラミックスを提供することができる。また、本発明は、溶融法によるため、大型または肉厚のものでも、均質で、熱膨張係数が小さくかつ切削加工性に優れたガラス質セラミックスを提供することができる。本発明によれば、低熱膨張性が要求される機械部品や半導体治具等に大型のガラス質セラミックスを提供できる。このように、本発明は、ガラス質セラミックスの用途を広げることができ、産業上きわめて有用である。

Claims (4)

  1. 25〜40質量%の陶石、2〜10質量%のフッ化マグネシウム、酸化カリウム換算で2〜5.5質量%のカリウム化合物、酸化ホウ素換算で3〜11質量%のホウ素化合物、3〜10質量%の酸化マグネシウム、1〜6質量%のケイ酸ジルコニウム、5〜15質量%の二酸化ケイ素および20〜40質量%の酸化亜鉛からなる配合物から溶融法によって得られるガラス質セラミックスであって、
    その内部にフッ素金雲母結晶およびケイ酸亜鉛結晶が析出していることを特徴とするガラス質セラミックス。
  2. 25〜40質量%の陶石、2〜10質量%のフッ化マグネシウム、酸化カリウム換算で2〜5.5質量%のカリウム化合物、酸化ホウ素換算で3〜11質量%のホウ素化合物、3〜10質量%の酸化マグネシウム、1〜6質量%のケイ酸ジルコニウム、5〜15質量%の二酸化ケイ素および20〜40質量%の酸化亜鉛からなる配合物を加熱して溶融する工程と、
    前記溶融工程で得られた溶融液を冷却してガラス体を得る工程と、
    蓋付き容器中で前記ガラス体を850℃より高くかつ1050℃以下である温度で熱処理する工程と
    を含むガラス質セラミックスの製造方法。
  3. 前記熱処理工程において、前記蓋付き容器内に前記ガラス体とともにアルミナ粉末または黒鉛粉末を主成分とする粉末を充填することを特徴とする、請求項2に記載のガラス質セラミックスの製造方法。
  4. 25〜40質量%の陶石、2〜10質量%のフッ化マグネシウム、酸化カリウム換算で2〜5.5質量%のカリウム化合物、酸化ホウ素換算で3〜11質量%のホウ素化合物、3〜10質量%の酸化マグネシウム、1〜6質量%のケイ酸ジルコニウム、5〜15質量%の二酸化ケイ素および20〜40質量%の酸化亜鉛からなるガラス質セラミックス用組成物。
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