JP3924848B2 - 室温硬化性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は湿分存在下で硬化する硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
末端に加水分解性ケイ素基を有する各種の重合体を硬化させてシーラント、接着剤等に使用する方法はよく知られており、工業的に有用な方法である。このような重合体のうち、特に主鎖がポリオキシアルキレンである重合体は、室温で液状であり、かつ硬化物が比較的低温でも柔軟性を保持し、シーラント、接着剤等に利用する場合好ましい特性を備えている。
【0003】
そのような湿分硬化性の重合体としては、特開平3−72527および特開平3−47825等に記載されている末端に加水分解性ケイ素基を有する重合体が挙げられる。このような末端に加水分解性ケイ素基を有する重合体は、伸びや柔軟性を保持するためにケイ素原子1つ当たり2つの加水分解性基が結合してなる加水分解性ケイ素基を通常有する。
【0004】
このような重合体に室温硬化性を付与するためにいわゆる硬化触媒を使用することが通常行われる。そのような硬化触媒としては、カルボン酸の金属塩等有機金属化合物、酸性または塩基性化合物等が知られており、なかでもスズのカルボン酸塩やその他の有機スズ化合物が一般的である。
【0005】
しかし、公知例として知られているジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート等の4価の有機スズ化合物を触媒として使用して硬化させた場合、硬化速度が充分に満足できるものではなく、特に硬化体の表面から遠い部分いわゆる深部の硬化速度が不充分であり、また基材との接着性にも問題があった。
【0006】
そのような欠点を解消する試みとして、特公平1−58219には含酸素スズ化合物とエステル化合物との反応物を硬化触媒として用いる方法も提案されているが、低温での硬化性が充分ではなかった。
【0007】
また特開昭61−141761にはジアルキルスズビスアセチルアセトナート化合物を硬化触媒として用いる方法も提案されており、室温および低温での硬化性も改善されている。しかし従来知られている特公昭45−36319、特公昭46−17553、特公昭61−18582等に提案されている有機重合体との組み合わせでは表面層の硬化の速さに比べて内部の硬化性は充分ではなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、加水分解性ケイ素基を有する重合体に対して、その柔軟性や作業性を大きく悪化させることなく深部硬化性や基材との接着性を改良できる組成について検討した結果本発明に至った。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
下記一般式(1)で表される加水分解性ケイ素基を有する重合体を含有する室温硬化性組成物であって、
一般式(1)中のaが1または2である加水分解性ケイ素基および一般式(1)中のaが3である加水分解性ケイ素基を併有し、主鎖がポリオキシアルキレンである重合体(A’)を含有し、
硬化触媒として、下記の(B−1)または(B−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種のスズ化合物(B)を含有し、
一般式(1)で表される全加水分解性ケイ素基中の、aが3である加水分解性ケイ素基の割合が5〜80%である室温硬化性組成物を提供する。
本発明はまた、
下記一般式(1)で表される加水分解性ケイ素基を有する重合体を含有する室温硬化性組成物であって、
一般式(1)中のaが1または2である加水分解性ケイ素基を有し、主鎖がポリオキシアルキレンである重合体(A”)、および、一般式(1)中のaが3である加水分解性ケイ素基を有し、主鎖がポリオキシアルキレンである重合体(A”’)、を含有し、
硬化触媒として、下記の(B−1)または(B−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種のスズ化合物(B)を含有し、
一般式(1)で表される全加水分解性ケイ素基中の、aが3である加水分解性ケイ素基の割合が5〜80%である室温硬化性組成物を提供する。
【0010】
−SiXa R1 3-a ・・・(1)
(一般式(1)中、R1 は炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、Xは水酸基または加水分解性基であり、aは1、2または3である。ただし、R1 が複数個存在するときは同じでも異なってもよく、Xが複数個存在するときは同じでも異なってもよい。)
【0011】
スズ化合物(B):
(B−1):下記一般式(4)または(5)で表されるスズ化合物。
(B−3):(B−1)と加水分解性ケイ素基を有する低分子化合物(C)との混合物ないし反応物。
【化2】
(一般式(4)、(5)中、R 3 は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、Yはアミノ基、炭素数1〜8の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、シアノアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基およびシアノアルコキシ基よりなる群から選ばれた基である。複数個のR 3 は同じでも異なってもよく、複数個のYは同じでも異なってもよい。)
【0012】
本発明で使用する重合体は、分子鎖末端または側鎖に上記一般式(1)で表される加水分解性ケイ素基を有する。
重合体の主鎖はポリオキシアルキレンである。
【0013】
このような重合体は、たとえば特開平3−47825、特開平3−72527、特開平3−79627、特公昭46−30711、特公昭45−36319、特公昭46−17553等に提案されている。
【0014】
以下、主鎖がポリオキシアルキレンである重合体について説明する。このような重合体は、下記に述べるように官能基を有するポリオキシアルキレン化合物を原料とし、末端に適宜有機基を介して加水分解性ケイ素基を導入して製造されることが好ましい。
【0015】
原料ポリオキシアルキレン化合物としては、触媒の存在下1つ以上の水酸基を有するヒドロキシ化合物などの開始剤にモノエポキシドなどを反応させて製造する水酸基末端のものが好ましい。
【0016】
モノエポキシドとしてはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ヘキシレンオキシド等が挙げられる。テトラヒドロフラン等も使用できる。触媒としては、カリウム系化合物やセシウム系化合物等のアルカリ金属触媒、複合金属シアン化物錯体触媒、金属ポルフィリン触媒などが挙げられる。
【0017】
原料ポリオキシアルキレン化合物として高分子量のポリオキシアルキレン化合物を使用する場合には、アルカリ触媒等にて製造した比較的低分子量のポリオキシアルキレン化合物に塩化メチレン等の多ハロゲン化合物を反応させることにより多量化して得られるポリオキシアルキレン化合物を使用できる。
【0018】
複合金属シアン化物錯体触媒を用いて製造したポリオキシアルキレン化合物は、アルカリ触媒を用いた場合に比べ分子量分布が狭く、良好な硬化性が得られるため、このポリオキシアルキレン化合物を用いることが好ましい。
【0019】
複合金属シアン化物錯体としては亜鉛ヘキサシアノコバルテートを主成分とする錯体が好ましく、そのエーテルおよび/またはアルコール錯体が特に好ましい。その組成は本質的に特公昭46−27250に記載されているものが使用できる。エーテルとしてはエチレングリコールジメチルエーテル(グライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)等が好ましく、錯体の製造時の取り扱い点からグライムが特に好ましい。アルコールとしては特開平4−145123に記載されているt−ブタノールが好ましい。
【0020】
原料ポリオキシアルキレン化合物の官能基数は2以上が好ましく、硬化物特性として柔軟性を強調したい場合には2または3が特に好ましく、接着性や硬化性を強調したい場合には3〜8が特に好ましい。
【0021】
原料ポリオキシアルキレン化合物としては、具体的にはポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシヘキシレン、ポリオキシテトラメチレンおよびこれらの共重合物が挙げられる。
【0022】
特に好ましい原料ポリオキシアルキレン化合物はポリオキシプロピレンジオールとポリオキシプロピレントリオールである。また、下記(イ)や(ニ)の方法に用いる場合、アリル末端ポリオキシプロピレンモノオールなどのオレフィン末端のポリオキシアルキレン化合物も使用できる。
【0023】
一般式(1)で表される加水分解性ケイ素基について説明する。
一般式(1)中R1 は炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、好ましくは炭素数8以下のアルキル基、フェニル基またはフルオロアルキル基である。特に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等である。R1 が複数個存在するときは同じでも異なってもよい。
【0024】
Xにおける加水分解性基としては、たとえばハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミド基、アミノ基、アミノオキシ基、ケトキシメート基、ヒドリド基などがある。
【0025】
これらのうち炭素原子を有する加水分解性基の炭素数は6以下が好ましく、4以下が特に好ましい。好ましいXは炭素数4以下の低級アルコキシ基、特にメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基またはプロペニルオキシ基が例示できる。またXが複数個存在するときは同じでも異なってもよい。
【0026】
aは1、2または3である。
重合体中の加水分解性ケイ素基の数は1〜8が好ましく、2〜6が特に好ましい。
加水分解性ケイ素基の原料ポリオキシアルキレン化合物への導入の方法は特には限定されないが、たとえば以下の(イ)〜(ニ)の方法で導入できる。
【0027】
(イ)水酸基を有するポリオキシアルキレン化合物の末端にオレフィン基を導入したものと、一般式(6)で表されるヒドロシリル化合物を反応させる方法。
HSiXa R1 3-a ・・・(6)
(一般式(6)中、R1 、X、aは前記に同じ。)
【0028】
ここでオレフィン基を導入する方法としては、不飽和基および官能基を有する化合物をポリオキシアルキレン化合物の末端水酸基に反応させて、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合またはカーボネート結合などにより結合させる方法、またはアルキレンオキシドを重合する際に、アリルグリシジルエーテルなどのオレフィン基含有エポキシ化合物を添加して共重合させることにより原料ポリオキシアルキレン化合物の側鎖にオレフィン基を導入する方法などが挙げられる。
【0029】
(ロ)水酸基を有するポリオキシアルキレン化合物の末端に一般式(7)で表される化合物を反応させる方法。
R1 3-a−SiXa −R4 NCO ・・・(7)
(一般式(7)中、R1 、X、aは前記に同じ。R4 は炭素数1〜17の2価炭化水素基。)
【0030】
(ハ)水酸基を有するポリオキシアルキレン化合物の末端にトリレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物を反応させてイソシアネート基末端とした後、該イソシアネート基に一般式(8)で表されるケイ素化合物のW基を反応させる方法。
R1 3-a−SiXa −R4 W・・・(8)
(一般式(8)中、R1 、R4 、X、aは前記に同じ。Wは水酸基、カルボキシル基、メルカプト基およびアミノ基(1級または2級)から選ばれる活性水素含有基。)
【0031】
(ニ)水酸基を有するポリオキシアルキレン化合物の末端にオレフィン基を導入し、そのオレフィン基と、Wがメルカプト基である一般式(8)で表されるケイ素化合物のメルカプト基を反応させる方法。
【0032】
本発明の組成物は、「一般式(1)中のaが3である加水分解性ケイ素基」(以下、「加水分解性ケイ素基(E)」という)を有する重合体を含有することを要する。本発明の組成物において、一般式(1)で表される加水分解性ケイ素基中における加水分解性ケイ素基(E)の数は、用途、必要とする特性などに応じて変えうる。
【0033】
一般式(1)で表される加水分解性ケイ素基を有する重合体が、該加水分解性ケイ素基として加水分解性ケイ素基(E)のみを有する重合体である場合、すなわち、組成物中における一般式(1)で表される加水分解性ケイ素基のほぼ100%、すなわち80〜100%が加水分解性ケイ素基(E)である場合、硬化速度が大きいという効果があり、深部硬化性が特に優れた硬化性組成物が得られる。この場合、特に一般式(1)で表される加水分解性ケイ素基の90〜100%、さらに好ましくは95〜100%が、加水分解性ケイ素基(E)であることが好ましい。
【0034】
また、一般式(1)中のaが1または2である加水分解性ケイ素基と加水分解性ケイ素基(E)が混在している場合には、良好な伸び特性と速硬化性を両立しうる硬化性組成物が得られる。
【0035】
この場合、一般式(1)で表される全加水分解性ケイ素基中の加水分解性ケイ素基(E)の割合が5〜80%であることが好ましい。この割合を任意に変えることにより要求に応じた特性を自由に制御できる。すなわち加水分解性ケイ素基(E)の割合が5〜50%のときは、硬化性を向上させると同時にシーラントなどで必要とされる良好な伸び特性や柔軟性を提供でき、また加水分解性ケイ素基(E)の割合が50〜80%のときは、弾性接着剤などに必要とされる伸び特性を充分に確保しながら飛躍的に硬化性を改善できる。
【0036】
また、一般式(1)で表される加水分解性ケイ素基中において加水分解性ケイ素基(E)以外の加水分解性ケイ素基は一般式(1)中のaが2の加水分解性ケイ素基であることが特に好ましい。
【0037】
一般式(1)中のaが1または2である加水分解性ケイ素基と加水分解性ケイ素基(E)が混在した組成物を得るためには、たとえば、下記の方法(ホ)、(ヘ)がある。(ホ)、(ヘ)の方法を併用してもよい。
【0038】
(ホ)一般式(1)中のaが1または2である加水分解性ケイ素基および加水分解性ケイ素基(E)を併有する重合体を使用する。
(ヘ)一般式(1)中のaが1または2である加水分解性ケイ素基を有する重合体および加水分解性ケイ素基(E)を有する重合体の両方を使用する。
【0039】
本発明における重合体の分子量は、その使用される用途に応じて適当な値を選択できる。すなわち柔軟性が重視されるシーラントなどの用途には原料である水酸基を有するポリオキシアルキレン化合物の水酸基価から換算した分子量(以下水酸基価換算分子量という)で4000〜50000の重合体が適する。6000〜50000であることがより好ましく、8000〜25000であることが特に好ましい。また強度が要求される接着剤などの用途には水酸基価換算分子量1000〜30000の重合体が適する。1000より低い場合は硬化物が脆いものとなり50000を超える場合は高粘度のため作業性が著しく悪くなる。3000〜20000であることがより好ましく、6000〜20000であることが特に好ましい。
【0040】
本発明の効果を発現するために硬化触媒として特定の化合物が必須である。そのような硬化触媒を使用しない場合、加水分解性ケイ素基の架橋反応の反応速度は充分なものにならない。
【0041】
本発明において、硬化触媒として下記の(B−1)または(B−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種のスズ化合物(B)を使用する。
スズ化合物(B):
(B−1):下記一般式(4)または(5)で表されるスズ化合物。
(B−3):(B−1)と加水分解性ケイ素基を有する低分子化合物(C)との混合物ないし反応物。
【化3】
(一般式(4)、(5)中、R 3 は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、Yはアミノ基、炭素数1〜8の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、シアノアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基およびシアノアルコキシ基よりなる群から選ばれた基である。複数個のR 3 は同じでも異なってもよく、複数個のYは同じでも異なってもよい。)
【0042】
本発明のスズ化合物(B−1)は、スズ化合物(D−1)を製造する方法で得られるスズ化合物であることが好ましい。
スズ化合物(D):
(D−1):水酸基を有する化合物、アセチルアセトンおよびアセト酢酸エチルからなる群から選ばれる少なくとも1種とR2 2SnOで表される含酸素スズ化合物(ただしR2 は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、複数個のR2 は同じでも異なってもよい。)とを反応させて得られる反応物。
【0043】
含酸素スズ化合物におけるR2 は前述の基と同じ基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基、i−アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、フェニル基等が挙げられる。
含酸素スズ化合物の具体例としては、たとえば(CH3 )2 SnO、(C2 H5 )2 SnO、(C4 H9 )2 SnO、(C8 H17)2 SnO、(C6 H5 )2 SnO等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
含酸素スズ化合物と反応させる水酸基を有する化合物等としては、たとえば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール等のアルコール;ノニルフェノール等のフェノール類;プロパノールアミン、エタノールアミン、ジメチルプロパノールアミン、ジエタノールアミン等のアミノアルコール;メルカプトプロパノール等のメルカプトアルコール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
スズ化合物(B−1)は、下記一般式(4)または下記一般式(5)で表される化合物である。
【0046】
【化4】
【0047】
(一般式(4)、(5)中、R3 は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、Yはアミノ基、炭化水素基(炭素数1〜8)、ハロゲン化炭化水素基(炭素数1〜8)、シアノアルキル基(シアノ基以外の炭素数1〜8)、アルコキシ基(炭素数1〜8)、ハロゲン化アルコキシ基(炭素数1〜8)およびシアノアルコキシ基(シアノ基以外の炭素数1〜8)よりなる群から選ばれた基である。複数個のR3 は同じでも異なってもよく、複数個のYは同じでも異なってもよい。)
【0048】
本発明で使用する加水分解性ケイ素基を有する低分子化合物(C)としては水酸基および/または加水分解性基の結合したケイ素原子を含む加水分解性ケイ素基を有する低分子化合物を使用でき、分子量1000以下であることが好ましい。特に、下記一般式(9)で表されるケイ素化合物が好ましい。
R5 bSiX1 4-b ・・・(9)
式中、R5 は炭素数1〜20の置換または非置換の1価の炭化水素基であり、X1 は水酸基または加水分解性基であり、bは0〜3の整数である。R5 が複数個存在するときは同じでも異なってもよく、X1 が複数個存在するときは同じでも異なっていてもよい。
【0049】
R5 は炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の炭化水素基であり、好ましくは炭素数8以下のアルキル基、フェニル基またはフルオロアルキル基である。特に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、プロペニル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等である。
【0050】
X1 は水酸基または加水分解性基であり、加水分解性基としては、たとえばハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミド基、アミノ基、アミノオキシ基、ケトキシメート基、ヒドリド基がある。これらのうち炭素原子を有する加水分解性基の炭素数は6以下、特には4以下が好ましい。好ましいXとしては炭素数4以下の低級アルコキシ基、特にメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが例示できる。
【0051】
具体的にはテトラエチルシリケート、テトラメチルシリケート等のテトラアルコキシシラン類;トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシビニルシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン等のジアルコキシシラン類;メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン等のモノアルコキシシラン類、またはそれらの加水分解物あるいは部分加水分解物が挙げられる。
【0052】
また、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン等のクロロシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のアセトキシシラン、N−トリメチルシリルアセトアミド等、またはそれらの加水分解物もしくは部分加水分解物も挙げられる。
【0053】
取り扱いの容易さや、硬化体の物性への影響を考えるとアルコキシシラン、特にジアルコキシシランが好ましい。また、これらのケイ素化合物の部分縮合物も使用できる。
【0054】
スズ化合物(B−3)は、加水分解性ケイ素基を有する低分子化合物(C)とスズ化合物(B−1)とから得られる。加水分解性ケイ素基を有する低分子化合物(C)とスズ化合物(B−1)とを単に混合して得られる混合物であってもよく、反応して反応物となっていてもよく、それらが共存していてもよい。
【0055】
スズ化合物(B−3)は、加水分解性ケイ素基を有する低分子化合物(C)とスズ化合物(B−1)とを窒素置換したフラスコ中で、常温〜180℃で1〜10時間撹拌することによって得ることが好ましい。
【0056】
また、加水分解性ケイ素基を有する低分子化合物(C)とスズ化合物(B−1)の使用割合は任意に選択でき、低温硬化性を顕著に改善するためには(C)/(B−1)=1/0.1〜1/10の範囲が好ましく、(C)/(B−1)=1/0.5〜1/5が特に好ましい。
【0057】
上記硬化触媒としてのスズ化合物(B)の使用にあたっては単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよく、上記以外の他の触媒と併用してもよい。
これら硬化触媒としてのスズ化合物(B)の使用量は、重合体(重合体(A’)、または重合体(A”)および(A”’))100重量部に対し、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。0.01重量部未満になるとポットライフは長いが、硬化速度が不充分となり、10重量部を超えると耐熱性等の物性に悪影響が出るので好ましくない。
【0058】
その他の硬化触媒を併用して硬化速度を制御できる。そのような硬化触媒としては、下記の化合物が挙げられる。
アルキルチタン酸塩、有機ケイ素チタン酸塩、およびジブチルスズジラウレート等のような各種金属のカルボン酸の塩、各種の酸および塩基物質が使用できる。具体的には、2−エチルヘキサン酸スズ、2−エチルヘキサン酸鉛やジアルキルスズジカルボン酸塩、有機アミン、ジブチルアミン−2−エチルヘキソエート等のようなアミン塩、等が挙げられる。
【0059】
本発明の組成物にはさらに必要であれば、充填剤、可塑剤、顔料、チキソ性付与剤、各種の老化防止剤、紫外線吸収剤等が使用できる。
【0060】
充填剤としては、炭酸カルシウム、フュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラック、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン、木粉、パルプ、木綿チップ、マイカ、くるみ穀粉、もみ穀粉、グラファイト、アルミニウム微粉末、フリント粉末等の粉体状充填剤、石綿、ガラス繊維、ガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバー等の繊維状充填剤が使用できる。充填剤の使用量は重合体(重合体(A’)、または重合体(A”)および(A”’))100重量部に対して50〜800重量部が好ましい。特に50〜250重量部が好ましい。
【0061】
可塑剤としては、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル;ペンタエリスリトールエステルなどのアルコールエステル類;リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類;エポキシ化大豆油、4,5−エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤;塩素化パラフィン;2塩基酸と2価アルコールとのポリエステル類などのポリエステル系可塑剤、ポリオキシプロピレングリコールやその誘導体等のポリオキシアルキレン類、ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン等のポリスチレンのオリゴマー類、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリブテン、水添ポリブテン、エポキシ化ポリブタジエン等のオリゴマー類等の高分子可塑剤が使用できる。可塑剤の使用量は重合体(重合体(A’)、または重合体(A”)および(A”’))100重量部に対して0〜100重量部が好ましい。
【0062】
顔料には酸化鉄、酸化クロム、酸化チタン等の無機顔料およびフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料が、チキソ性付与剤として有機酸処理炭酸カルシウム、水添ひまし油、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、微粉末シリカ等が挙げられる。
【0063】
本発明の硬化性組成物は、シーラント、防水材、接着剤、コーティング剤などに使用でき、特に硬化物自体の充分な凝集力と被着体への動的追従性が要求される用途に好適である。
【0064】
【実施例】
製造例1〜6で製造した重合体(P1〜P6)を用いて、硬化物を作製した参考例、実施例および比較例を以下に示す。なお、部は重量部を示し、分子量は水酸基価換算分子量を示す。
【0065】
[製造例1]
グリセリンを開始剤として亜鉛ヘキサシアノコバルテート触媒を用いてプロピレンオキシドの重合を行い、ポリオキシプロピレントリオールを得た。これにイソシアネートプロピルトリメトキシシランを加え、ウレタン化反応を行い末端をトリメトキシシリル基に変換して、分子量18000の重合体P1を得た。
【0066】
[製造例2]
水酸化カリウム触媒を用いて得られた平均分子量3000のポリオキシプロピレンジオールを金属ナトリウムの存在下、クロロブロモメタンと反応させて高分子量化を行った。得られたポリオキシプロピレンジオールをナトリウムアルコキシドに変換した後、塩化アリルを反応させて末端にアリルオキシ基を有するポリオキシプロピレンを得た。ヒドロシリル化合物としてトリメトキシシランを白金触媒の存在下に反応させて末端にトリメトキシシリル基を有する分子量9000の重合体を得た。
【0067】
水酸化カリウム触媒を用いて開始剤としてグリセリンにプロピレンオキシドを反応して得られたポリオキシプロピレントリオールの末端水酸基を上記と同様の方法で末端アリルオキシ化した後、ヒドロシリル化合物としてメチルジメトキシシランを白金触媒の存在下に反応させて末端にメチルジメトキシシリル基を有する分子量6000の重合体を得た。
【0068】
この分子量9000の重合体と分子量6000の重合体を重量比にして60対40の割合で混合し、重合体混合物P2を得た。
【0069】
[製造例3]
プロピレングリコールを開始剤として亜鉛ヘキサシアノコバルテート触媒を用いてプロピレンオキシドの重合を行い、ポリオキシプロピレンジオールを得た。得られたポリオキシプロピレンジオールの末端水酸基を製造例2と同様の方法で末端アリルオキシ化した後、ヒドロシリル化合物としてトリメトキシシランとメチルジメトキシシランの70対30重量比の混合物を白金触媒の存在下に反応させて末端にトリメトキシシリル基とメチルジメトキシシリルプロピル基の両方を有する分子量12000の重合体P3を得た。
【0070】
[製造例4]
グリセリンを開始剤として亜鉛ヘキサシアノコバルテート触媒を用いてプロピレンオキシドの重合を行い、ポリオキシプロピレントリオールを得た。これにイソシアネートプロピルメチルジメトキシシランを加え、ウレタン化反応を行い両末端をメチルジメトキシシリルプロピル基に変換して、分子量18000の重合体P4を得た。
【0071】
[製造例5]
水酸化カリウム触媒を用いて得られた平均分子量3000のポリオキシプロピレンジオールを金属ナトリウムの存在下、クロロブロモメタンと反応させて高分子量化を行った。得られたポリオキシプロピレンジオールの末端水酸基を製造例2と同様の方法で末端アリルオキシ化した後、ヒドロシリル化合物としてメチルジメトキシシランを白金触媒の存在下に反応させて末端にメチルジメトキシシリル基を有する分子量9000の重合体を得た。
【0072】
水酸化カリウム触媒を用いて開始剤としてグリセリンにプロピレンオキシドを反応して得られたポリオキシプロピレントリオールの末端水酸基を製造例2と同様の方法で末端アリルオキシ化した後、ヒドロシリル化合物としてメチルジメトキシシランを白金触媒の存在下に反応させて末端にメチルジメトキシシリル基を有する分子量6000の重合体を得た。
【0073】
この分子量9000の重合体と分子量6000の重合体を重量比にして60対40の割合で混合し、末端にメチルジメトキシシリルプロピル基のみを有する重合体混合物P5を得た。
【0074】
[製造例6]
プロピレングリコールを開始剤として亜鉛ヘキサシアノコバルテート触媒を用いてプロピレンオキシドの重合を行い、ポリオキシプロピレンジオールを得た。得られたポリオキシプロピレンジオールの末端水酸基を製造例2と同様の方法で末端アリルオキシ化した後、ヒドロシリル化合物としてメチルジメトキシシランのみを白金触媒の存在下に反応させて末端にメチルジメトキシシリル基を有する分子量12000の重合体P6を得た。
【0075】
[製造例7]
ガラス製反応器中でトルエン150cm3 にジブチルスズオキシド49.8g(0.2モル)を加え、2−エチルヘキサノール13.0g(0.1モル)を添加して、加熱撹拌下トルエンと共沸してくる水を除去しながら、理論量の水が留去し終わるまで反応させた。その後アセチルアセトン10.0g(0.1モル)を加え、さらにトルエンと共沸してくる水を除去しながら、理論量の水が留去し終わるまで反応させた。微量の沈殿物を除去するために濾過を行い、さらにトルエンを減圧下で留去し淡黄色の液体[化合物(Q)]が得られた。化5で表される化合物が生成していることを確認した。
【0076】
【化5】
【0077】
[参考例1、実施例1、2、および比較例1、2、3、4]
製造例1〜6で得られた重合体P1〜P6の100部に対し、炭酸カルシウムを150部、DOPを50部、チキソ性付与剤を3部、フェノール系酸化防止剤を1部を加え窒素雰囲気下で混練した後、スズ化合物として製造例7で得られた化合物(Q)を2部加えてさらに混練して、硬化性組成物を得た。ただし比較例4はスズ化合物(Q)の代わりにジブチルスズジラウレート2部を用いた。
【0078】
<50%引張応力および接着破壊状態>
JIS−A5758に準拠して、被着体としてアルミニウム板を用いH型引張試験サンプルを作製した。標準状態で14日間、さらに30℃で14日間養生した後、引張試験を行い50%引張応力と破壊時の基材との破壊状態を測定した。破壊状態としては、凝集破壊(CF)が最も好ましく、ついで薄層凝集破壊(TCF)であり、界面破壊(AF)は接着性が不充分であることを示す。
【0079】
<針入度>
直径4cmの円筒形のカップ中に3cmの厚みになるように硬化性組成物を流し込み、20℃で65%湿度の雰囲気下に6時間放置した。その後にJIS−K2530に準拠した針入度計を用い、アスファルト用1.25gの針を使用して表面から深さ方向への硬化の様子をみた。すなわち鉛直方向上方から下方への5秒間の針の進入度(針入度、単位:cm)を測定した。針入度が大きい方が表面からの硬化が進んでいないことを表している。結果を表1、表2に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【発明の効果】
本発明における硬化性組成物は深部の硬化性が改善され、基材との接着性が良好であるという効果を有する。
Claims (5)
- 下記一般式(1)で表される加水分解性ケイ素基を有する重合体を含有する室温硬化性組成物であって、
一般式(1)中のaが1または2である加水分解性ケイ素基および一般式(1)中のaが3である加水分解性ケイ素基を併有し、主鎖がポリオキシアルキレンである重合体(A’)を含有し、
硬化触媒として、下記の(B−1)または(B−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種のスズ化合物(B)を含有し、
一般式(1)で表される全加水分解性ケイ素基中の、aが3である加水分解性ケイ素基の割合が5〜80%である室温硬化性組成物。
−SiXaR1 3−a ・・・(1)
(一般式(1)中、R1は炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、Xは水酸基または加水分解性基であり、aは1、2または3である。ただし、R1が複数個存在するときは同じでも異なってもよく、Xが複数個存在するときは同じでも異なってもよい。)
スズ化合物(B):
(B−1):下記一般式(4)または(5)で表されるスズ化合物。
(B−3):(B−1)と加水分解性ケイ素基を有する低分子化合物(C)との混合物ないし反応物。
- 下記一般式(1)で表される加水分解性ケイ素基を有する重合体を含有する室温硬化性組成物であって、
一般式(1)中のaが1または2である加水分解性ケイ素基を有し、主鎖がポリオキシアルキレンである重合体(A”)、および、一般式(1)中のaが3である加水分解性ケイ素基を有し、主鎖がポリオキシアルキレンである重合体(A”’)、を含有し、
硬化触媒として、下記の(B−1)または(B−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種のスズ化合物(B)を含有し、
一般式(1)で表される全加水分解性ケイ素基中の、aが3である加水分解性ケイ素基の割合が5〜80%である室温硬化性組成物。
−SiX a R 1 3−a ・・・(1)
(一般式(1)中、R 1 は炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、 Xは水酸基または加水分解性基であり、aは1、2または3である。ただし、R 1 が複数個存在するときは同じでも異なってもよく、Xが複数個存在するときは同じでも異なってもよい。)
スズ化合物(B):
(B−1):下記一般式(4)または(5)で表されるスズ化合物。
(B−3):(B−1)と加水分解性ケイ素基を有する低分子化合物(C)との混合物ないし反応物。
- 重合体(A’)の主鎖が、複合金属シアン化物錯体を触媒として開始剤にアルキレンオキシドを重合させて得られるポリオキシアルキレンである、請求項1記載の室温硬化性組成物。
- 重合体(A”)および(A”’)の主鎖が、複合金属シアン化物錯体を触媒として開始剤にアルキレンオキシドを重合させて得られるポリオキシアルキレンである、請求項2記載の室温硬化性組成物。
- 複合金属シアン化物錯体が亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体である、請求項3または4記載の室温硬化性組成物。
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