JP3924748B2 - 種々の環境ストレス耐性を改良した植物、その作出方法、並びにポリアミン代謝関連酵素遺伝子 - Google Patents

種々の環境ストレス耐性を改良した植物、その作出方法、並びにポリアミン代謝関連酵素遺伝子 Download PDF

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    • C12N15/8271Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology with agronomic (input) traits, e.g. crop yield for stress resistance, e.g. heavy metal resistance

Description

技術分野
本発明は、改良された環境ストレス耐性を有する植物、詳細には改良された低温ストレス耐性、塩ストレス耐性、除草剤ストレス耐性、乾燥ストレス耐性、浸透圧ストレス耐性を有する植物に関する。また、本発明は該植物の作出方法に関する。
背景技術
植物はそれぞれの生息地の温度や塩などの様々な環境ストレスに適応して生活している。しかし、例えば温度ストレスにおいては、植物が生育適温の上限または下限を越えるような環境に遭遇すると高温ストレスや低温ストレスを受け、徐々にあるいは急激に細胞の生理機能が損なわれて障害をひきおこす。これまで、種々の温度環境に適応した野生の植物を食料作物や工芸作物などに利用するために、選抜や交雑育種など育種的手段によって作物の温度適応性の拡大に努めてきた。また、野菜や花弁、果樹等の園芸作物においては育種的手段に加えて、施設園芸で栽培可能な期間の拡大を図ってきた。しかし、特に日本は南北に長く、地域によっては気候が著しく異なるとともに、四季の変化が著しいので地域や季節によっては作物は生育に不適な温度環境にさらされる危険性が大きい。例えば、熱帯を起源とするイネは、明治以来の品種改良によって東北地方や北海道などの冷涼地でも栽培できるようになり、現在ではこれらの地域の基幹作物として栽培されているが、これらの地域では初夏に異常低温があると冷害を受け、著しい減収になることが現在でも問題になっている。近年、地球温暖化やエルニーニョ現象が原因と考えられる異常気象によって作物が重大な被害を受け、1993年のひどい冷害による米不足は記憶に新しい。また、野菜類についてみると、トマト、キュウリ、メロン、スイカなど果菜類の中には熱帯起源の作物が多い。これらの作物は需要が大きく農業経営上も重要性の大きい作物で早くから施設栽培に取り入れられてきた。しかし、昭和49年のオイルショック以来、施設園芸における省資源や暖房コストの低減が問題となっている。施設園芸における省資源については温室の構造的なものから栽培技術まで各方面から検討されているが、最も基本的なことは作物の低温ストレス耐性を高めることである。
塩ストレスについては全陸地面積の約10%が塩害地域といわれ、近年東南アジアやアフリカなどの乾燥地を中心に塩類土壌の拡大が農業上深刻な問題となっている。
水ストレスは植物にとって重要なストレスで、温度が制限要因とならないときには降雨量とその分布によって大きな影響を受ける。特に、主要な作物栽培地域である半乾燥地帯などでは、作物の生育や収量は水ストレスによって著しく左右される。
種々の環境ストレス耐性を高めるために交雑育種、最近の遺伝子工学技術を利用した育種、植物ホルモンや植物調節剤の作用を利用した方法等が行われている。
これまでに遺伝子工学技術を利用した、環境ストレス耐性植物の作出が行われている。低温ストレス耐性の改良に用いられたに遺伝子としては、生体膜脂質の脂肪酸の不飽和化酵素遺伝子(ω−3デサチュラーゼ遺伝子、グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼ遺伝子、ステアロイル−ACP−不飽和化酵素遺伝子)や光合成に関与するピルビン酸リン酸ジキナーゼ遺伝子、凍結保護・防止活性を持つタンパク質をコードする遺伝子(COR15、COR85、kin1)等が報告されている。
塩ストレスや水ストレス耐性の改良に用いられた遺伝子としては、浸透圧調節物質のグリシンベタイン合成酵素遺伝子(コリンモノオキシゲナーゼ遺伝子、ベタインアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子)、プロリン合成酵素遺伝子(1−ピロリン−5−カルボン酸シンテターゼ)等が報告されている。
除草剤ストレス耐性の改良に用いられた遺伝子としては、芳香族アミノ酸の生合成酵素遺伝子(5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸シンダーゼ遺伝子)、無毒化酵素遺伝子(ニトリラーゼ遺伝子、ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)等が報告されている。しかし、これらの遺伝子を形質転換した植物は、除草剤ストレス耐性植物では一部実用化されているが、多くは、実際には産業上利用可能な程度に十分な効果は得られておらず、実用化に至っていないのが現状である。
ポリアミンとは第1級アミノ基を2つ以上もつ脂肪族炭化水素の総称で生体内に普遍的に存在する天然物であり、20種類以上のポリアミンが見いだされている。代表的なポリアミンとしてはプトレシン、スペルミジン、スペルミンがある。ポリアミンの主な生理作用としては▲1▼核酸との相互作用による核酸の安定化と構造変化▲2▼種々の核酸合成系への促進作用▲3▼タンパク質合成系の活性化▲4▼細胞膜の安定化や物質の膜透過性の強化などが知られている。植物におけるポリアミンの役割としては細胞増殖や分裂時に核酸、タンパク質生合成の促進効果や細胞保護が報告されている。
近年、ポリアミンの種々の環境ストレスに対する関わりが報告されている。低温ストレス(J.Japan Soc.Hortic.Sci.,68,780−787,1999、J.Japan Soc.Hortic.Sci.,68,967−973,1999、Plant Physiol.124,431−439,2000)、塩ストレス(Plant Physiol.,91,500−504,1984)、酸ストレス(Plant cell physiol.,38(10),156−1166,1997)、浸透ストレス(Plant Physiol.75,102−109,1984)、病原菌感染ストレス(New Phytol.,135,467−473,1997)、除草剤ストレス(Plant Cell Physiol.,39(9),987−992,1998)などとの関わりが報告されているが、いずれの報告も生長発育反応やストレス抵抗性とポリアミン濃度の変化の関連性からポリアミンの関与を推定したものであり、ポリアミン代謝関連酵素をコードするポリアミン代謝関連酵素遺伝子と環境ストレス耐性との遺伝子レベルでの関与については報告されていない。
植物のポリアミン生合成に関わるポリアミン代謝関連酵素としてはアルギニン脱炭酸酵素(ADC)、オルニチン脱炭酸酵素(ODC)、S−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素(SAMDC)、スペルミジン合成酵素(SPDS)、スペルミン合成酵素(SPMS)等が知られている。これらのポリアミン代謝関連酵素をコードするポリアミン代謝関連遺伝子については植物から既に幾つか単離されている。ADC遺伝子はエンバク(Mol.Gen.Genet.,224,431−436,1990)、トマト(Plant Physiol.,103,829−834,1993)、シロイヌナズナ(plant physiol.,111,1077−1083,1996)、エンドウ(Plant Mol.Biol.,28,997−1009,1995)、ODC遺伝子はチョウセンアサガオ(Datura)(Biocem.J.,314,241−248,1996)、SAMDC遺伝子はジャガイモ(Plant Mol.Biol.,26,327−338,1994)、ホウレンソウ(Plant Physiol.,107,1461−1462,1995)、タバコ、SPDS遺伝子はシロイヌナズナ(Plant cell Physiol.,39(1),73−79,1998)等から単離されている。
従って、本発明の目的は、環境ストレス耐性の高い品種と低い品種での生化学的解析を行い、環境ストレス耐性に密接に関与するメカニズムを明らかにする。そして、そのメカニズムに対して重要な役割をしている遺伝子をスクリーニングし、該遺伝子の発現を人為的に制御して、ポリアミンレベルを変化させることによって、環境ストレス耐性が改良された組換え植物を作出することである。
より具体的には、低温ストレス抵抗性の高い品種(低温耐性)と低い品種(低温感受性)での生化学的解析を行い、低温ストレス抵抗性に密接に関与するメカニズムを明らかにする。そして、そのメカニズムに対して重要な役割をしている遺伝子を取得する。そして取得した遺伝子を実際に植物に応用し、実用レベルでの効果を確認することである。これまでポリアミン代謝関連遺伝子は種々の植物から単離されているが、ポリアミン代謝関連遺伝子と低温ストレス抵抗性との関わりに関する研究は少なく、低温ストレス遭遇時に発現量が変化するポリアミン代謝関連遺伝は見つかっていない。低温ストレス抵抗性に深く関与するポリアミン代謝関連遺伝子を提供し、該遺伝子を利用して低温ストレス抵抗性などの種々の環境ストレス抵抗性を増強した植物を作出することである。
発明の開示
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意努力した結果、低温ストレス遭遇時に特異的に発現量が変化するポリアミン生合成に関わるポリアミン代謝関連酵素遺伝子を単離して、該遺伝子を植物に導入して過剰発現することによって、ポリアミン代謝を活性化してポリアミン濃度を変化させることによって、種々の環境ストレス耐性のパラメーターが改良されることを見出した。
ポリアミンは分子中にアミンを多く含む塩基性物質であり、代表的なポリアミンとしては二分子のアミンを含むプトレシン、三分子のアミンを含むスペルミジン、四分子のアミンを含むスペルミン等がある。植物において、これらのポリアミン生合成に関わるポリアミン代謝関連酵素としてはプトレシンについてはADC、ODC、スペルミジンについてはSAMDC、SPDS、スペルミンについてはSAMDC、SPMS等が見つかっている。これらのポリアミン代謝関連酵素をコードしているポリアミン代謝関連酵素遺伝子についても既に幾つかの植物で単離されている。しかしながら、低温ストレス耐性を示す植物組織で低温ストレス遭遇時に発現誘導を受け、その発現量が増加する植物由来のポリアミン代謝関連遺伝子については報告されていない。
このような状況下に、本発明者らは植物の低温ストレス耐性を改良するために鋭意、検討した結果、低温ストレス耐性を示す植物組織では低温ストレス遭遇時に特にポリアミンであるスペルミジンやスペルミン含量が増大することを見いだし、実際に低温ストレス抵抗性を示す植物組織からスペルミジンやスペルミン生合成に関わるポリアミン代謝関連遺伝子(SPDS、SAMDC、ADC)を単離、同定し、さらにそのうちの3種のポリアミン代謝関連遺伝子が低温ストレス遭遇時に発現誘導され、その発現量が増加することを見いだし、該遺伝子が低温ストレス耐性に深く関与していることを明らかにした。さらに、該遺伝子を植物に導入して過剰発現することによって、ポリアミン代謝を活性化してポリアミン濃度を変化させることによって、種々の環境ストレス耐性のパラメーターが改良されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の発明を提供するものである。
1.植物中で機能し得るプロモーターの制御下にある外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を安定に保持し、且つ該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有していない植物に比べて環境ストレス耐性が改良された植物及びその子孫。
2.該環境ストレス耐性が改良された植物が、植物中で機能し得るプロモーターの制御下にあるポリアミン代謝関連酵素遺伝子を含む発現ベクターで、該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有していない植物を形質転換して得られる形質転換植物である、項1記載の植物及びその子孫。
3.該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が、アルギニン脱炭酸酵素(ADC)をコードする遺伝子、オルニチン脱炭酸酵素(ODC)をコードする遺伝子、S−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素(SAMDC)をコードする遺伝子、スペルミジン合成酵素(SPDS)をコードする遺伝子、スペルミン合成酵素(SPMS)をコードする遺伝子からなる群から選択される少なくとも1種である項1に記載の植物及びその子孫。
4.該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が、スペルミジン合成酵素をコードする遺伝子である項3記載の植物及びその子孫。
5.該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が、以下の(a)または(b)または(c)の塩基配列を有するスペルミジン合成酵素遺伝子である、項1記載の植物及びその子孫。
(a)配列表配列番号1(SPDS、1328)に示される塩基配列中塩基番号77〜1060で示される塩基配列、
(b)上記(a)の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つスペルミジン合成酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(c)(a)または(b)の塩基配列において、1又は複数の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列からなり、且つスペルミジン合成酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
6.該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が、以下の(a)または(b)または(c)の塩基配列を有するS−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素遺伝子である、項1記載の植物及びその子孫。
(a)配列表配列番号3(SAMDC、1814)に示される塩基配列中塩基番号456〜1547で示される塩基配列、
(b)上記(a)の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つS−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(c)(a)または(b)の塩基配列において、1又は複数の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列からなり、且つS−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
7.該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が、以下の(a)または(b)または(c)の塩基配列を有するアルギニン脱炭酸酵素遺伝子である、項1記載の植物及びその子孫。
(a)配列表配列番号5(ADC、3037)に示される塩基配列中塩基番号541〜2661で示される塩基配列、
(b)上記(a)の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つアルギニン脱炭酸酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(c)(a)または(b)の塩基配列において、1又は複数の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列からなり、且つアルギニン脱炭酸酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
8.低温ストレス耐性が改良された植物である、項1に記載の植物及びその子孫。
9.塩ストレス耐性が改良された植物である、項1に記載の植物及びその子孫。
10.除草剤ストレス耐性が改良された植物である、項1に記載の植物及びその子孫。
11.乾燥ストレス耐性が改良された植物である、項1に記載の植物及びその子孫。
12.浸透圧ストレス耐性が改良された植物である、項1に記載の植物及びその子孫。
13.双子葉植物である、項1に記載の植物及びその子孫。
14.花、果実、種子、繊維又はカルスの形態である項1に記載の植物及びその子孫。
15.項1〜6のいずれかに記載の植物及びその子孫から得られる葉、茎、花、子房、果実、種子、繊維又はカルス。
16.項1〜6にいずれかに記載の植物及びその子孫から得られる有用物質。
17.植物中で機能し得るプロモーターの制御下にある外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を安定に保持し、且つ該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有していない植物の細胞を形質転換する工程を含む、該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有していない植物に比べて改良された環境ストレス耐性を有する植物の作出方法。
18.植物中で機能し得るプロモーターの制御下にある外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を含む発現ベクターで、該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有していない植物の細胞を形質転換する工程を含む、該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有していない植物に比べて改良された環境ストレス耐性を有する植物の作出方法。
19.該形質転換細胞から植物体を再生する工程をさらに含む、項18記載の方法。
20.該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が、アルギニン脱炭酸酵素(ADC)をコードする遺伝子、オルニチン脱炭酸酵素(ODC)をコードする遺伝子、S−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素(SAMDC)をコードする遺伝子、スペルミジン合成酵素(SPDS)をコードする遺伝子、スペルミン合成酵素(SPMS)をコードする遺伝子からなる群から選択される少なくとも1種である項18に記載の方法。
21.該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が、以下の(a)または(b)または(c)の塩基を有するスペルミジン合成酵素遺伝子である、項18記載の方法。
(a)配列表配列番号1に示される塩基配列中塩基番号77〜1060で示される塩基配列、
(b)上記(a)の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つスペルミジン合成酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(c)(a)または(b)の塩基配列において、1又は複数の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列からなり、且つスペルミジン合成酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
22.該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が、以下の(a)または(b)または(c)の塩基を有するS−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素遺伝子である、項18記載の方法。
(a)配列表配列番号1に示される塩基配列中塩基番号456〜1547で示される塩基配列、
(b)上記(a)の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つS−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(c)(a)または(b)の塩基配列において、1又は複数の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列からなり、且つS−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
23.該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が、以下の(a)または(b)または(c)の塩基を有するアルギニン脱炭酸酵素遺伝子である、項18記載の方法。
(a)配列表配列番号1に示される塩基配列中塩基番号541〜2661で示される塩基配列、
(b)上記(a)の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つアルギニン脱炭酸酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(c)(a)または(b)の塩基配列において、1又は複数の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列からなり、且つアルギニン脱炭酸酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
24.改良された環境ストレス耐性を有する植物が、低温ストレス耐性が改良された植物である、項18に記載の方法。
25.改良された環境ストレス耐性を有する植物が、塩ストレス耐性が改良された植物である、項18に記載の方法。
26.改良された環境ストレス耐性を有する植物が、除草剤ストレス耐性が改良された植物である、項18に記載の方法。
27.改良された環境ストレス耐性を有する植物が、乾燥ストレス耐性が改良された植物である、項18に記載の方法。
28.改良された環境ストレス耐性を有する植物が、浸透圧ストレス耐性が改良された植物である、項18に記載の方法。
29.改良された環境ストレス耐性を有する植物が、双子葉植物である、項18に記載の方法。
30.以下の工程:
(1)植物中で機能し得るプロモーターの制御下にある外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を含む発現ベクターで、該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有していない植物の細胞を形質転換し、
(2)該形質転換細胞から、該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有していない植物に比べて改良された環境ストレス耐性を有する植物体を再生し、
(3)該植物体から受粉により種子を採取し、および
(4)該種子を栽培して得られる植物体から受粉により得られる種子における該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を検定する
を含む、該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子についてホモ接合体である、該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有していない植物に比べて改良された環境ストレス耐性を有する形質が固定された植物の作出方法。
31.以下の工程:
(1)植物中で機能し得るプロモーターの制御下にある外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を含む発現ベクターで、該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有していない植物の細胞を形質転換し、
(2)該形質転換細胞からカルスを誘導する
を含む、該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子についてホモ接合体である、該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有していない植物に比べて改良された環境ストレス耐性を有する形質が固定されたカルスの作出方法。
32.外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を植物中で機能し得るプロモーターの制御下で植物に形質転換して、形質転換後に環境ストレス条件下で生育させることにより、該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有しない植物に比べて優れた生育を示す形質転換植物の選抜方法。
33.外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子と他の外因性遺伝子を植物中で機能し得るプロモーターの制御下で植物に形質転換して、形質転換後に環境ストレス条件下で生育させることにより、薬剤耐性マーカーを用いない形質転換植物を選抜する方法。
34.植物のポリアミン代謝において、環境ストレス遭遇時に発現量が変化することを特徴とする単離された植物由来のポリアミン代謝関連酵素遺伝子。
35.該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が、アルギニン脱炭酸酵素(ADC)をコードする遺伝子、オルニチン脱炭酸酵素(ODC)をコードする遺伝子、S−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素(SAMDC)をコードする遺伝子、スペルミジン合成酵素(SPDS)をコードする遺伝子またはスペルミン合成酵素(SPMS)をコードする遺伝子である項34に記載の遺伝子。
36.該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が、以下の(a)または(b)または(c)の塩基配列を有するスペルミジン合成酵素遺伝子である、項34記載の遺伝子。
(a)配列表配列番号1(SPDS、1328)に示される塩基配列中塩基番号77〜1060で示される塩基配列、
(b)上記(a)の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つスペルミジン合成酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(c)(a)または(b)の塩基配列において、1又は複数の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列からなり、且つスペルミジン合成酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
37.該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が、以下の(a)または(b)または(c)の塩基配列を有するS−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素遺伝子である、項34記載の遺伝子。
(a)配列表配列番号3(SAMDC、1814)に示される塩基配列中塩基番号456〜1547で示される塩基配列、
(b)上記(a)の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つS−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(c)(a)または(b)の塩基配列において、1又は複数の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列からなり、且つS−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
38.該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が、以下の(a)または(b)または(c)の塩基配列を有するアルギニン脱炭酸酵素遺伝子である、項34記載の遺伝子。
(a)配列表配列番号5(ADC、3037)に示される塩基配列中塩基番号541〜2661で示される塩基配列、
(b)上記(a)の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つアルギニン脱炭酸酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(c)(a)または(b)の塩基配列において、1又は複数の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列からなり、且つアルギニン脱炭酸酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
39.植物が双子葉植物である項34に記載の遺伝子。
40.植物が単子葉植物である項34に記載の遺伝子。
41.植物がウリ科植物である項34に記載の遺伝子。
42.植物がクロダネカボチャである項34に記載の遺伝子。
43.項34〜42のいずれかに記載の遺伝子に対するアンチセンスDNAまたはアンチセンスRNA。
44.項34〜42のいずれかに記載の遺伝子を含むことを特徴とする組換えプラスミド。
45.項44に記載のプラスミドを含む形質転換体。
46.低温ストレス遭遇時に発現量が変化する植物由来のポリアミン代謝関連酵素遺伝子を含むプラスミドで形質転換されたことを特徴とする微生物。
47.形質転換された微生物が大腸菌もしくはアグロバクテリウム(Agrobacterium)属細菌である項41記載の形質転換された微生物。
48.低温ストレス遭遇時に発現量が変化する植物由来のポリアミン代謝関連酵素遺伝子を含むプラスミドで形質転換されたことを特徴とする植物。
49.形質転換された植物がシロイヌナズナである項48記載の形質転換された植物。
50.項45記載の形質転換体、植物及びその子孫から得られる葉、茎、花、子房、果実、種子、繊維又はカルス。
51.項45記載の形質転換体、植物及びその子孫から得られる有用物質。
本発明において「環境ストレス」とは、高温、低温、低pH、低酸素、酸化、浸透圧、乾燥、カドミウム、オゾン、大気汚染、紫外線、病原体、塩、除草剤、強光、冠水、害虫などの環境からうけるストレスをいう。
本発明において「該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有していない植物」とは外因性のポリアミン代謝関連酵素遺伝子をゲノム上に有しないあらゆる植物を意味する。従って、いわゆる野生種のほか、通常の交配によって樹立された栽培品種、それらの自然または人工変異体、並びにポリアミン代謝関連酵素遺伝子以外の外因性遺伝子を導入されたトランスジェニック植物などをすべて包含する。
本発明で言うところの「ポリアミン」は生物体内に普遍的に存在する一般的な天然物であり、第一級アミノ基を2つ以上もつ脂肪族炭化水素化合物である。例えば、1,3−ジアミノプロパン、プトレシン、カダベリン、カルジン、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N−ビス(アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミン、ホモカルドヘキサミンなどが挙げられる。
ポリアミン代謝関連酵素遺伝子
本発明において「ポリアミン代謝関連酵素遺伝子」とは、植物におけるポリアミンの生合成に関与する酵素のアミノ酸をコードする遺伝子であり、例えば代表的なポリアミンであるプトレシンについてはアルギニン脱炭酸酵素(ADC)遺伝子とオルニチン脱炭酸酵素(ODC)遺伝子、スペルミジンについてはS−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素(SAMDC)遺伝子とスペルミジン合成酵素(SPDS)遺伝子、スペルミンについてはS−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素(SAMDC)遺伝子とスペルミン合成酵素(SPMS)遺伝子が関与し、律速になっていると考えられている。
アルギニン脱炭酸酵素(ADC:arginine decarboxylase EC4.1.1.19.)はL−アルギニンからアグマチンと二酸化炭素を生成する反応を触媒する酵素である。オルニチン脱炭酸酵素(ODC:omithine decarboxylase EC4.1.1.17.)はL−オルニチンからプトレシンと二酸化炭素を生成する反応を触媒する酵素である。S−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素(SAMDC:S−adenosylmethionine decarboxylase EC4.1.1.50.)はS−アデノシルメチオニンからアデノシルメチルチオプロピルアミンと二酸化炭素を生成する反応を触媒する酵素である。スペルミジン合成酵素(SPDS:spermidine synthase EC2.5.1.16.)はプトレシンとアデノシルメチルチオプロピルアミンからスペルミジンとメチルチオアデノシンを生成する反応を触媒する酵素である。
これらの遺伝子は、いずれの由来であってもいいが、例えば、種々の植物から単離することができる。具体的には、双子葉植物、例えばウリ科;ナス科;シロイヌナズナ等のアブラナ科;アルファルファ、カウピー(Vigna unguiculata)等のマメ科;アオイ科;キク科;アカザ科からなる群から選ばれたもの、又は単子葉植物、例えば小麦、大麦、トウモロコシ等のイネ科などが含まれる。乾燥に強いサボテンやアイスプラント(Mesembryanthemum crystallinum)でもよい。好ましくは、ウリ科植物、より好ましくはクロダネカボチャがよい。
本発明の植物由来のポリアミン代謝関連酵素遺伝子を単離する植物組織としては種子形態、または生育過程にあるものである。生育中の植物は全体、あるいは部分的な組織から単離することができる。単離することができる部位としては、特に限定はされないが、好ましくは植物の全樹、蕾、花、子房、果実、葉、茎、根などである。さらに好ましくは環境ストレス抵抗性を示す部位である。
本発明において使用されるポリアミン代謝関連酵素遺伝子の好ましい例として、スペルミジン合成酵素遺伝子、S−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素遺伝子、アルギニン脱炭酸酵素遺伝子を挙げることができる。具体的には、
・配列番号1に示される塩基配列中塩基番号77〜1060で示される塩基配列を有するDNA
・配列番号3に示される塩基配列中塩基番号456〜1547で示される塩基配列を有するDNA
・配列番号5に示される塩基配列中塩基番号541〜2661で示される塩基配列を有するDNA、
が挙げられる。さらに、
・該上記いずれかの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る塩基配列を有し、且つ該配列と同等のポリアミン代謝関連酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAが挙げられる。更に、
・該上記いずれかの配列において、1又は複数の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列からなり且つ該配列と同等のポリアミン代謝関連酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAが挙げられる。
ここでいう「ストリンジェント条件」とは、特定ポリアミン代謝関連酵素遺伝子配列にコードされるポリアミン代謝関連酵素と同等のポリアミン代謝関連酵素活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列のみが該特定配列とハイブリット(いわゆる特異的ハイブリット)を形成し、同等の活性を有しないポリペプチドをコードする塩基配列は該特定配列とハイブリット(いわゆる非特異的ハイブリット)を形成しない条件を意味する。当業者は、ハイブリダイゼーション反応および洗浄時の温度や、ハイブリダイゼーション反応液および洗浄液の塩濃度等を変化させることによって、このような条件を容易に選択することができる。具体的には、6×SSC(0.9M NaCl,0.09M クエン酸三ナトリウム)または6×SSPE(3M NaCl,0,2M NaHPO,20mM EDTA・2Na,pH7.4)中42℃でハイブリダイズさせ、さらに42℃で0.5×SSCにより洗浄する条件が、本発明のストリンジェントな条件の1例として挙げられるが、これに限定されるものではない。
ここでいう「1又は複数の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加された塩基配列」とは、一般的に生理活性を有するタンパク質のアミノ酸配列において1個もしくは複数のアミノ酸が置換、削除、挿入または付加された場合であっても、その生理活性が維持される場合があることは当業者において広く認識されている。本発明にはこのような修飾が加えられ、かつポリアミン代謝関連酵素をコードする遺伝子も本発明の範囲に含まれる。例えば、polyAテールや5‘、3’末端の非翻訳領域が「欠失」されてもよいし、アミノ酸を欠失するような範囲で塩基が「欠失」されてもよい。また、フレームシフトが起こらない範囲で塩基が「置換」されてもよい。また、アミノ酸が付加されるような範囲で塩基が「付加」されてもよい。但し、そのような修飾があっても、ポリアミン代謝関連酵素活性を有することが必要である。好ましくは、「1又は数個の塩基が欠失、置換又は付加された遺伝子」がよい。
このような改変されたDNAは例えば、部位特異的変異法(Nucleic Acid Research,Vol.10,No.20,6487−6500,1982)等によって、特定の部位のアミノ酸が置換、削除、挿入、付加されるように本発明のDNAの塩基配列を改変することによって得られる。
本発明における「アンチセンス遺伝子」とは低温ストレス遭遇時に発現量が変化する植物由来のポリアミン代謝関連酵素遺伝子の塩基配列に相補的な配列を有する遺伝子を意味する。アンチセンスDNAは、例えば配列番号1、3、5の塩基配列に相補的なものであり、アンチセンスRNAはそれらから産生されるものである。
環境ストレス耐性が改良された植物及びその子孫
本発明において、「環境ストレス」としては、上述のごとく、高温、低温、低pH、低酸素、酸化、浸透圧、乾燥、カドミウム、オゾン、大気汚染、紫外線、病原体、塩、除草剤、強光、冠水、害虫などの環境から受けるストレスが例示される。この中で「低温ストレス」とは、植物の生育適温度の下限を越えるような環境に植物が遭遇することによって植物が受けるストレスであり、低温ストレスを受けた植物は徐々にあるいは急激に細胞の生理機能が損なわれて傷害が引き起こされる。「塩ストレス」とは、植物の生育適塩濃度の上限を越えるような環境に植物が遭遇することによって植物が受けるストレスであり、塩ストレスを受けた植物は過剰な塩が細胞内に流入して徐々にあるいは急激に細胞の生理機能が損なわれて傷害が引き起こされる。「除草剤ストレス」とは、植物の生育適除草剤濃度の上限を越えるような環境に植物が遭遇することによって植物が受けるストレスであり、除草剤ストレスを受けた植物は徐々にあるいは急激に細胞の生理機能が損なわれて傷害が引き起こされる。「乾燥ストレス」とは、植物の生育適水分濃度の下限を越えるような環境に植物が遭遇することによって植物が受けるストレスであり、乾燥ストレスを受けた植物は徐々にあるいは急激に細胞の生理機能が損なわれて傷害が引き起こされる。「浸透圧ストレス」とは、植物の生育適浸透圧の上限を越えるような環境に植物が遭遇することによって植物が受けるストレスであり、浸透圧ストレスを受けた植物は徐々にあるいは急激に細胞の生理機能が損なわれて傷害が引き起こされる。
本発明において、「環境ストレス耐性が改良された植物」および「改良された環境ストレス耐性を有する植物」とは、外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入することによって、導入前に比して環境ストレス抵抗性が付与若しくは向上した植物をいう。ポリアミンは種々の環境ストレス(高温、低pH、低酸素、酸化、浸透圧、乾燥、カドミウム、オゾン、大気汚染、紫外線、病原体、害虫など)耐性に関わっていることから、これらの様々な環境ストレス抵抗性が改良される。例えば、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を植物に導入することにより、低温ストレス抵抗性(耐性)、塩ストレス抵抗性(耐性)、除草剤ストレス抵抗性(耐性)、乾燥ストレスに対する抵抗性(耐性)、若しくは浸透圧ストレスに対する抵抗性(耐性)が、該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有していない植物に比べて向上した植物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
具体的には、「低温ストレス耐性が改良された植物」とは、植物の生育過程において遭遇する低温ストレスによる生長抑制や傷害を回避若しくは低減することができた植物である。「塩ストレス耐性が改良された植物」とは、植物の生育過程において遭遇する塩ストレスによる生長抑制や傷害を回避若しくは低減することができた植物である。「除草剤ストレス耐性が改良された植物」とは、植物の生育過程において遭遇する除草剤ストレスによる生長抑制や傷害を回避若しくは低減することができた植物である。「乾燥ストレス耐性が改良された植物」とは、植物の生育過程において遭遇する乾燥ストレスによる生長抑制や傷害を回避若しくは低減することができた植物である。「浸透圧ストレス耐性が改良された植物」とは、植物の生育過程において遭遇する浸透圧ストレスによる生長抑制や傷害を回避若しくは低減することができた植物である。これによって、栽培の安定化、生産性、収量の向上、栽培地域、面積の拡大がなどが期待できる。更に、「除草剤ストレス耐性が改良された植物」においては、除草剤の使用量の低下や安定な除草剤の広範な使用などが期待できる。
本発明の植物には、植物体全体(全樹)に限らず、そのカルス、種子、あらゆる植物組織、葉、茎、根、花、果実、繊維などが含まれる。更にその子孫も本発明の植物に含まれる。
本発明において「植物及びその子孫から得られる有用物質」とは、外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入することによって、導入前に比して環境ストレス抵抗性が付与若しくは向上した植物およびその子孫で生産された有用物質をさし、有用物質としては例えば、アミノ酸、油脂、デンプン、タンパク質、フェノール、炭化水素、セルロース、天然ゴム、色素、酵素、抗体、ワクチン、医薬品、生分解性プラスチックなどが含まれる。
本発明の植物は、該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有していない植物に、遺伝子工学的手法により外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が導入され、且つ安定に保持されたものである。ここで「安定に保持される」とは、少なくともポリアミン代謝関連酵素遺伝子が導入された当代の植物体で該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が発現し、それによって環境ストレス耐性が改良するのに十分な期間、該植物細胞内に保持されることをいう。従って、現実的には、該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子は宿主植物の染色体上に組み込まれるのが好ましい。該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子は次世代に安定に遺伝することがより好ましい。
また、ここで「外因性」とは、植物が生来有しておらず、外部より導入されたものを意味する。従って、本発明の「外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子」は、遺伝子操作により外部より導入される、宿主植物と同種の(すなわち、該宿主植物由来の)ポリアミン代謝関連酵素遺伝子であってもよい。コドン使用(codonusage)の同一性を考慮すれば、宿主由来のポリアミン代謝関連酵素遺伝子の使用もまた好ましい。
外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子はいかなる遺伝子工学的手法によって植物に導入されてもよく、例えば、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有する異種植物細胞とのプロトプラスト融合、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を発現するように遺伝子操作されたウイルスゲノムを有する植物ウイルスによる感染、あるいはポリアミン代謝関連酵素遺伝子を含有する発現ベクターによる宿主植物細胞の形質転換が挙げられる。
好ましくは、本発明の植物は、植物中で機能し得るプロモーターの制御下にある外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を含む発現ベクターで、該外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を有していない植物の細胞を形質転換することにより得られる、トランスジェニック植物である。
植物中で機能し得るプロモーターとしては、例えば、植物細胞で構成的に発現するカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子(NOS)プロモーター、オクトピン合成酵素遺伝子(OCS)プロモーター、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)遺伝子プロモーター、カルコンシンターゼ(CHS)遺伝子プロモーター等を挙げることができる。さらにこれらに限定されない公知の植物プロモーターも挙げられる。
35Sプロモーターのような器官全体に恒常的に発現させるプロモーターだけでなく、低温、高温、塩、乾燥、光、熱、ホルモンあるいは傷害等の調節性のプロモーターを用いれば、生活環境に応じて目的遺伝子を発現させることができる。例えば、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子と植物が低温に遭遇した時だけ転写を起こさせ得るプロモーター(例えば、BN115プロモーター:Plant physiol.,106,917−928,1999)を用いることによって、低温時のみ植物体のポリアミン代謝を制御し低温ストレス抵抗性を改良することができる。さらに、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子と植物が乾燥に遭遇した時だけ転写を起こさせ得るプロモーター(例えば、Atmyb2プロモーター:The Plant Cell,5,1529−1539,1993)を用いることによって、乾燥時のみ植物体のポリアミン代謝を制御し乾燥ストレス抵抗性を改良することができる。
また、器官、または組織特異的なプロモーターを用いれば、特定の器官、又は組織だけに目的遺伝子を発現させることができる。
本発明の発現ベクターにおいて、外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子は、植物中で機能し得るプロモーターによりその転写が制御されるように、該プロモーターの下流に配置される。該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の下流には、植物で機能し得る転写終結シグナル(ターミネーター領域)がさらに付加されていることが好ましい。例えば、ターミネーターNOS(ノパリン合成酵素)遺伝子等が挙げられる。
本発明の発現ベクターは、エンハンサー配列等のシス調節エレメントをさらに含んでもよい。また、該発現ベクターは、薬剤耐性遺伝子マーカーなどの形質転換体選抜のためのマーカー遺伝子、例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NPTII)遺伝子、ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ(PAT)遺伝子、グリフォセート耐性遺伝子等をさらに含んでもよい。選択圧をかけない条件では、組み込まれた遺伝子が脱落する現象が起こる場合があるので、除草剤耐性遺伝子をベクター上で共存させておけば、栽培中該除草剤を使用することにより、常に選択圧がかかった条件を実現できるという利点もある。
さらに、大量調製および精製を容易にするために、該発現ベクターは、大腸菌での自律複製を可能にする複製起点および大腸菌での選択マーカー遺伝子(例えばアンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子等)を含むことが望ましい。本発明の発現ベクターは、簡便には、pUC系またはpBR系の大腸菌ベクターのクローニング部位に上記ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の発現カセットと必要に応じて選択マーカー遺伝子を挿入することにより構築することができる。
アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)やアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacteriumu rhizogenes)による感染を利用して外因性ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入する場合には、該細菌が保持するTiまたはRiプラスミド上のT−DNA領域(植物染色体に転移する領域)内に該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子発現カセットを挿入して用いることができる。現在、アグロバクテリウム法による形質転換の標準的な方法ではバイナリーベクター系が使用される。T−DNA転移に必要な機能は、T−DNA自身とTi(またはRi)プラスミドの両者から独立に供給され、それぞれの構成要素は別々のベクター上に分割できる。バイナリープラスミドはT−DNAの切り出しと組込みに必要な両端の25bpボーダー配列を有し、クラウンゴール(または毛状根)を引き起こす植物ホルモン遺伝子が除去されており、同時に外来遺伝子の挿入余地を与えている。このようなバイナリーベクターとして、例えばpBI101やpBI121(ともにCLONTECH社)などが市販されている。なお、T−DNAの組込みに作用するVir領域は、ヘルパープラスミドと呼ばれる別のTi(またはRi)プラスミド上にあってトランスに作用する。
植物の形質転換には、従来公知の種々の方法を使用することができる。例えば、セルラーゼやヘミセルラーゼなどの細胞壁分解酵素処理により、植物の細胞からプロトプラストを単離し、該プロトプラストと上記ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の発現カセットを含む発現ベクターとの懸濁液にポリエチレングリコールを加えてエンドサイトーシス様の課程で該発現ベクターをプロトプラスト内に取り込ませる方法(PEG法)、ホスファチジルコリン等の脂質膜小胞内に超音波処理等により発現ベクターを入れ、該小胞とプロトプラストをPEG存在下に融合させる方法(リポソーム法)、ミニセルを用いて同様の課程で融合させる方法、プロトプラストと発現ベクターの懸濁液に電気パルスを印加して外液中のベクターをプロトプラスト内に取り込ませる方法(エレクトロポレーション法)が挙げられる。しかしながら、これらの方法は、プロトプラストから植物体へ再分化させる培養技術を必要とする点で煩雑である。細胞壁を有するインタクトな細胞への遺伝子導入手段としては、マイクロピペットを細胞に刺し込み、油圧やガス圧でピペット内のベクターDNAを細胞内に注入するマイクロインジェクション法、およびDNAをコーティングした微小金粒子を火薬の爆発やガス圧を利用して加速し、細胞内に導入するパーティクルガン法等の直接導入法と、アグロバクテリウムによる感染を利用した方法とがある。マイクロインジェクションは操作に熟練を要し、また、扱える細胞数が少ないという欠点がある。従って、操作の簡便性を考慮すれば、アグロバクテリウム法および、パーティクルガン法により植物を形質転換することが好ましい。パーティクルガン法は、栽培中の植物の頂端分裂組織に直接遺伝子を導入することが可能である点さらに有用である。また、アグロバクテリウム法において、バイナリーベクターに植物ウイルス、例えばトマトゴールデンモザイクウイルス(TGMV)等のジェミニウイルスのゲノムDNAをボーダー配列の間に同時に挿入することにより、栽培中の植物の任意の部位の細胞に注射筒などを用いて菌懸濁液を接種するだけで、植物体全体にウイルス感染が拡がり、同時に目的遺伝子も植物体全体に導入される。
以下に、具体例として、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の取得方法とアグロバクテリウムによる目的遺伝子の導入および形質転換植物の作出方法を例示する。1.ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の取得
(1)低温ストレス誘導PCR用cDNAライブラリーの作製
昼18℃/夜14℃・3日間の低温処理を行ったクロダネカボチャ(Cucurbitaficifolia Bouche)の根組織から常法に従い、poly(A)RNAを抽出する。単離したpoly(A)RNAから市販のMarathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH社製)等を用いてPCR用に使用するcDNAライブラリーを作製することができる。単離したpoly(A)RNAを鋳型として、3’末端に2つのdegenerate nucleotide positionを持つ修飾lock−docking oligo(dT)プライマーと逆転写酵素を用いてfirst−strand cDNAを合成し、ポリメラーゼ反応によって2本鎖化したcDNAを得る。該2本鎖cDNAをT4 DNA ポリメラーゼにより末端を平滑化し、Marathon cDNAアダプターをライゲーション反応により結合させ、アダプター結合二本鎖cDNAライブラリーを作製する。
(2)PCRプライマーの設計
ポリアミン代謝関連酵素遺伝子としてSPDS遺伝子、SAMDC遺伝子、ADC遺伝子、ODC遺伝子を単離することができる。SPDS遺伝子はシロイヌナズナやヒヨス、SAMDC遺伝子はジャガイモ、ホウレンソウ、タバコ、ADC遺伝子はダイズ、エンドウ、トマト、ODC遺伝子はチョウセンアサガオ(Datura)等から単離されており、既に塩基配列が決定している。従って、決定している既知の塩基配列を比較し、非常に保存されている領域を選抜し、DNAオリゴマーを合成しPCR用プライマーを設計することができる。
(3)PCRによるSPDS遺伝子、SAMDC遺伝子、ADC遺伝子断片の取得
上記(1)の方法で作製したPCR用cDNAライブラリーをテンプレートとして、上記(2)の方法で設計したプライマーを使用して、それぞれPCRを行う。PCR産物をゲル電気泳動で分離し、グラスミルク法などで精製する。精製したPCR産物はTAベクターなどのクローニングベクターに連結させる。
クローン化されたcDNAの塩基配列の決定は、Maxam−Gilbert法あるいはダイデオキシ法等により決定できる。いずれの方法も市販されているキットを用いて行うことができ、配列決定を自動的に行うオートシーケンサーを使用してもよい。
(4)完全長遺伝子の単離
完全長の遺伝子を得るためには、常法に従って、プラークハイブリダイゼーション、RACE(rapid amplification of cDNA ends)法やMarathon RACE法等により完全長の遺伝子を得ることができる。
(5)ノーザン解析
上記の方法で得られた植物由来のポリアミン代謝関連酵素遺伝子が低温ストレス抵抗性を示す組織で特異的に低温ストレス遭遇時にその発現量が変化することを確認するために、クロダネカボチャの低温ストレス抵抗性を示す根と低温ストレス抵抗性を示さない葉や茎に14℃の低温処理と23℃の適温処理した組織からそれぞれRNAを単離し、上記の方法で得られた遺伝子をプローブとしてノーザンハイブリダイゼーションを行い、低温ストレス遭遇時に低温ストレス抵抗性を示す根で特異的に発現量が変化する遺伝子であることを確認する。
このようにして取得した遺伝子は、ポリアミン生合成に関与する遺伝子であり、低温ストレス遭遇時に低温ストレス抵抗性を示す組織で特異的に発現が高まり、低温ストレス抵抗性に深く関与する遺伝子である。この遺伝子を利用して巧妙に、即ち、遺伝子発現を分子生物学的に制御することにより、低温ストレス抵抗性を増強した植物の作出に利用することが可能になる。同時に、ポリアミンレベルが制御されることにより、低温だけでなく種々の環境ストレス抵抗性を増強した植物の作出も可能になる。
2.シロイヌナズナにおけるアグロバクテリウムによる目的遺伝子の導入、および形質転換植物の作出。
上記1.で取得した遺伝子を植物宿主に導入することにより、種々の環境ストレス、特に低温ストレス(凍結ストレスも含む)だけでなく、塩ストレス、除草剤ストレス、乾燥ストレス、浸透圧ストレスなどに対して抵抗性を有するトランスジェニック植物を作出することができる。
(1)発現コンストラクトの作製および、アグロバクテリウムの形質転換
発現コンストラクトの作製は前記1.で得られたポリアミン代謝関連酵素遺伝子をオープンリーディングフレームをすべて含むような適当な制限酵素で切断後、必要に応じて適当なリンカーを連結し、植物形質転換用ベクターに挿入して作製することができる。植物形質転換用ベクターとしては、pBI101、pBI121などを用いることができる。
作製した発現コンストラクトを大腸菌中で増幅後、発現コンストラクトをアグロバクテリウム・ツメファシエンスC58、LBA4404、EHA101等に、三者接合法(Nucleic Acid Research,12,8711,1984)、凍結融解法、エレクトロポレーション法等により形質転換することができる。例えば、三者接合法は目的遺伝子を含んだ発現コンストラクトを保有する大腸菌、ヘルパープラスミド(例えばpRK2013等)を保有する大腸菌、およびアグロバクテリウムを混合培養して、抗生物質(例えばリファピシリン、カナマイシン、ハイグロマイシン等)を含んだ培地上で培養することによって形質転換アグロバクテリウムを得ることができる。
(2)トランスジェニック植物の作出
本発明において、遺伝子導入を行う植物としては、植物体全体、植物器官(例えば葉、茎、根、花器、生長点、種子等)、植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束等)、植物培養細胞などを挙げることができる。
(1)で作製した形質転換アグロバクテリウムを例えばカルス再生法(Plant Cell Reports,12,7−11,1992)で植物に感染させて目的遺伝子を導入することができる。すなわち、シロイヌナズナの種子を常法に従って、MSOプレート(ムラシゲ・スクーグ無機塩類4.6g、ショ糖10g、1000×ビタミンストック液1ml/リットル、pH6.2)に播種し、無菌的に栽培する。発根した根の切片を用いてCIMプレート(MSOプレートに2,4−ジクロロフェノキシ酢酸を終濃度0.5μg/ml、カイネチンを0.05μg/mlとなるように加えたもの)上でカルス培養を行う。プロモーターに目的遺伝子を接続し、カナマイシン及びハイグロマイシン耐性遺伝子を有するプラスミドにより形質転換したアグロバクテリウムを培養し、希釈したものをチューブに分注し、カルス化した根の切片を浸し、数日間CIMプレート上で共存培養する。菌株が肉眼で観察できるまで十分に増殖したら、除菌操作を行い、SIMCプレート(MSOプレートに、N6−[2−イソペンテニル]アデニンを終濃度5μg/ml、インドール酢酸(IAA)を終濃度0.15μg/ml、クラフォランを終濃度500μg/mlとなるように加えたもの)上で数日間培養を行う。これらの切片を最終的にSIMCSプレート(カナマイシンおよびハイグロマイシンBを含有するプレート)上で培養し、1週間ごとに新しいプレートに移植を繰り返す。形質転換した切片は増殖を続け、カルスが現れてくる。抗生物質で選択しているため、非形質転換切片は褐変する。形質転換体が5mm程度の大きさになり、ロゼット葉を形成するまで培養する。完全なロゼットの形状を示すようになったら、形質転換体の根元をカルス部分を含まないようにメスで切り取り、RIMプレート(MSOプレートにIAAを終濃度0.5μg/mlとなるように加えたもの)に移植する。大きなカルスが付いていると、発根してもカルスを介して根が出ていて、ロゼットとは維管束がつながっていることが多い。約8〜10日後、無機塩類培地〔5mM KNO、2.5mM K−リン酸緩衝液(pH5.5)、2mM MgSO、2mM Ca(NO、50μM Fe−EDTA、1000×微量要素(70mM HBO、14mM MnCl、0.5mM CuSO、1mM ZnSO、0.2mM NaMoO、10mM NaCl、0.01mM CoCl)1ml/リットル〕に浸したロックウール上に定植する。開花し、莢を形成した植物体は無機塩類培地に浸した土に移植し、種子を得ることができる。この種子を滅菌処理し、MSH(MSOプレートのハイグロマイシンBを終濃度5U/mlとなるように加えたもの)に播種して発芽させることにより形質転換体を得ることができる。
さらに、(1)で作製した形質転換アグロバクテリウムを例えば減圧浸潤法(The Plant Journal,19(3),249−257,1999)で植物に感染させて目的遺伝子を導入することができる。すなわち、シロイヌナズナの種子を常法に従って培養土(例えばメトロミックス等)に播種して、22℃、長日条件下(例えば16時間日長・8時間暗黒等)で栽培する。約3〜4週間後に伸長した主軸(花茎)を切除して、側枝の誘導を開始させる。摘心約1週間をに培養した形質転換アグロバクテリウム懸濁液にシロイヌナズナを浸し、これをデシケーターに入れてバキュームポンプで約−0.053Mpa(400mmHg)になるまで吸引後、10分間、室温放置する。感染後の鉢を深底トレーに移して、横倒しに置き、トレイの底に少量の水を滴下して透明な覆いを被せ多湿条件下で約1日放置する。感染後の鉢を起こして、22℃・長日条件下で栽培を開始して、種子の収穫を行う。
約2〜4週間の間、種子の収穫を行い、収穫した種子は茶こしなどで莢やゴミを取り除き、デシケーター内で乾燥保存する。
トランスジェニック植物体の選択は、収穫した種子を常法に従って殺菌処理して、約9mlの0.1%寒天水溶液に懸濁して、選択培地(例えば、1×MS塩、1×GamborgB5ビタミン、1% Sucrose、0.5g/l MES、0.8% 寒天、100mg/l カルベニシリン、50mg/l カナマイシン、40mg/l ハイグロマイシンなど)に広げ、22℃で無菌栽培する。抗生物質に対して抵抗性を示すトランスジェニック植物体は順調に生長して、約1〜2週間で同定することができる。本葉が約4〜6枚展開したトランスジェニック植物体を培養土を含んだ鉢に移植して22℃で長日栽培を開始する。
得られたトランスジェニック植物より、常法に従ってDNAを抽出し、このDNAを適当な制限酵素で切断し、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子をプローブとして用いてサザンハイブリダイゼーションを行い、遺伝子導入の有無を確認することができる。
また、トランスジェニック植物や、非トランスジェニック植物より、常法に従ってRNAを抽出し、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子のセンス配列、もしくはアンチセンス配列を有するプローブを作製し、これらのプローブを用いてノーザンハイブリダイゼーションを行い、目的遺伝子の発現の状態を調べることができる。
本発明のポリアミン代謝関連酵素遺伝子は低温ストレス遭遇時に発現量が変化し、低温ストレス抵抗性に関与するため、この塩基配列を低温ストレス時のマーカーとして利用して、低温ストレス抵抗性のメカニズムの解明及び低温ストレス時に機能発現する調節遺伝子(プロモーター配列)の単離を可能にするものである。従って、もし、この遺伝子の塩基配列を低温ストレス時のマーカーとして使用すれば、低温ストレス抵抗性や低温耐性のメカニズムの解明及びそれを調節する遺伝子の単離が達成されるであろう。
また、得られたトランスジェニック植物からカルス誘導を行い、カルスを作出することができる。
減圧浸潤法で得られたトランスジェニック植物(T1)の、自家受粉により得られるT2種子の形質転換出現比率は、通常メンデルの法則に従う。例えば、該ポリアミン代謝関連酵素遺伝子が一遺伝子座にヘテロ(heterozygous)に組み込まれた場合、T2種子では形質転換体は3:1の割合で分離する。T2種子を栽培して、自家受粉させて得られるT3種子において、形質転換体がすべての種子で出現すれば、該T2形質転換植物はホモ接合体(homozygote)であり、該形質転換植物が3:1に分離すれば、該T2形質転換植物は導入されたポリアミン代謝関連酵素遺伝子についてヘテロ(heterozygote)であると決定できる。
このようにして選抜された、導入されたポリアミン代謝関連酵素遺伝子についてホモ接合体である植物は、改良された環境ストレス耐性が固定された系統として、種子産業の分野において極めて有用である。
上記に示した、サザン解析やノーザン解析でポリアミン代謝関連酵素遺伝子の遺伝子発現解析を行ったトランスジェニック植物はポリアミン含量や種々の環境ストレス耐性の評価を行うことができる。
例えば、ポリアミンの定量は、0.05〜1gの試料をサンプリングして、5%過塩素酸水溶液を加えて、ポリアミンを抽出する。抽出したポリアミンの定量はダンシル化またはベンゾイル化等で蛍光標識したの後、UV検出器を接続した高速液体クロンマトグラフィー(HPLC)を用いて内部標準法で分析することができる。
例えば、低温ストレス耐性は、−10〜15℃に1〜5日間低温処理後、20〜25℃で生育させて生育状況や低温傷害等を調べることにより評価することができる。塩ストレス耐性は、10〜300mM NaClを含んだ培地上で、20〜25℃で生育させて生育状況や塩ストレス障害等を調べることにより評価できる。除草剤ストレス耐性は、0.2〜3μM パラコートを含んだ培地上で、20〜25℃で生育させて生育状況(発芽率、生存率など)等を調べることにより評価することができる。乾燥ストレス耐性は、水の供給を停止させて停止後の生育状況や障害程度を調べることにより評価することができる。浸透圧ストレス耐性は、50〜500mM ソルビトールを含んだ培地上で、20〜25℃で生育させて生育状況や浸透圧ストレス障害等を調べることにより評価することができる。
本発明の形質転換される植物は、特に限定されるものではないが、双子葉植物、単子葉植物、草本性植物、木本性植物などが挙げられる。例えば、サツマイモ、トマト、キュウリ、カボチャ、メロン、スイカ、タバコ、シロイヌナズナ、ピーマン、ナス、マメ、サトイモ、ホウレンソウ、ニンジン、イチゴ、ジャガイモ、イネ、トウモロコシ、アルファルファ、コムギ、オオムギ、ダイズ、ナタネ、ソルガム、ユーカリ、ポプラ、ケナフ、杜仲、サトウキビ、アカザ、ユリ、ラン、カーネーション、バラ、ペチュニア、トレニア、ヒマワリ、シバ、ワタ、マツタケ、シイタケ、キノコ、チョウセンニンジン、柑橘類、バナナ、キウイ等が挙げられる。好ましくは、サツマイモ、トマト、キュウリ、イネ、トウモロコシ、ダイズ、コムギ、ユーカリ、ワタである。
本発明の環境ストレス耐性が改良された植物は、環境ストレスを受ける地域のみならず、環境ストレスを受けない地域であっても予想できない環境ストレスに対処するため使用(生育)されるものであるが、環境ストレスを受ける地域にのみ、専ら使用されるものであってもよい。
本発明により、植物の種々の環境ストレス耐性を改良することができ、植物の生育過程において遭遇する様々な環境ストレスによる障害の回避や生長抑制を軽減することができ栽培の安定化、生産性の向上、栽培地域の拡大などが期待できる。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
実施例1:キュウリとクロダネカボチャの根のポリアミン含量の測定
(1)供試材料の調製
根において低温ストレス抵抗性の高いクロダネカボチャ(Cucurbita ficifolia Bouche)と低温ストレス抵抗性の低いキュウリ‘四葉’をガラス室で播種し、子葉展開時に市販の床土(サンサン床土;タキイ種苗社製)を詰めた鉢に移植した。第1本葉展開時に人工気象室(気温 昼26℃/夜20℃、相対湿度 昼70%/夜85%、光強度 480μM/ms、15時間日長)内に置いた。2台の栽培槽(1/2倍ホーグランド液 120l、液温23℃)に9株ずつ定植した。
(2)低温処理
定植4日後に、株ごとに生体重を測定して植え戻したのち、1台の栽培槽の液温を14℃に下げた。
(3)サンプリング
サンプリングは低温処理後、3日ごとに3株ずつ採取し、茎葉と根の生体重を測定した。同時にポリアミン定量のために根5gを調製し、分析まで−80℃に凍結保存した。
(4)ポリアミン含量の測定
ポリアミンを5%過塩素酸水溶液(試料生体重1.0g当たり4ml)で葉から抽出した。プトレシン、スペルミジン、スペルミンの希釈内部標準液を添加後、2℃・40,000×gで20分間遠心分離した。上清液をカチオン交換樹脂(50W−4X、200−400メッシュ、H+型:バイオラッド社製)カラムに通した。0.7N NaCl/0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)、水、1N塩酸を順次流してカラムを洗浄し、ポリアミン以外のアミノ酸や有機物を除去した。6N塩酸をカラムに加え、液が出なくなるまで流出し、ポリアミンを回収した。溶出液を40℃で減圧乾固し、これに5%過塩素酸を加えポリアミンを溶解した。プトレシン、スペルミジン、スペルミンのポリアミン量の定量はベンゾイル化した後、UV検出器を接続した高速液体クロマトグラフィーを用いて内部標準法で分析した。HPLCカラムはInertsil ODS−2(4.6×250mm:GLサイエンス社製)を使用し、58%メタノールに1%酢酸を含んだ溶離液を用いた。
上記の方法に従ってクロダネカボチャとキュウリの低温ストレス遭遇中の根の生長とポリアミン含量を測定した。その結果を図1〜図4に示した。
図1の結果から、低温ストレス抵抗性が低いキュウリの根の生長は14℃の低温処理で顕著に阻害されたが、低温ストレス抵抗性の高いクロダネカボチャの根の生長は23℃区よりやや劣る程度であった。
図2の結果から、プトレシン濃度は2作物とも低温14℃区で23℃区より高い値を示した。
図3の結果から、スペルミジン濃度は2作物とも低温14℃区で23℃区より高い値を示したが、23℃区との違いは低温ストレス抵抗性の高いクロダネカボチャの方が大きかった。
図4の結果から、スペルミン濃度はキュウリでは23℃区の方が高い値を示したのに対して、低温ストレス抵抗性の高いクロダネカボチャでは低温処理6日目、9日目には14℃区で23℃区より高い値を示した。
本実験の結果からポリアミン特にスペルミジン、スペルミンが低温ストレス抵抗性の高いクロダネカボチャの根で低温14℃区で23℃区より高い値を示すことが確認された。このことは、クロダネカボチャの根の低温ストレス抵抗性にポリアミンが密接に関係し、ポリアミンの量的変化が重要であることを示唆している。低温ストレス抵抗性の高いクロダネカボチャの根において低温14℃区でポリアミン量が増加したのは、低温ストレス遭遇後、根のポリアミン生合成に関与するポリアミン代謝関連遺伝子の発現が誘導され、その結果としてポリアミン代謝が活性化しポリアミン量が増加したと推察される。
実施例2:植物由来のポリアミン代謝関連酵素遺伝子のクローニング
(1)ポリ(A)RNAの調製
クロダネカボチャ(Cucurbita ficifolia Bouche)をバーミキュライトに播種し、子葉展開時に市販の床土(サンサン床土;タキイ種苗社製)を詰めた鉢に移植した。鉢上げしたクロダネカボチャを植物栽培用のインキュベーター(気温 昼26℃/夜22℃、13時間日長)内に置いた。第2本葉展開時にインキュベーター内の温度を昼18℃/夜14℃まで下げ低温処理を開始した。低温処理3日後に、根、茎、葉に分けてサンプリングした。RNA抽出まで−80℃のフリーザーに保存した。
約4gのクロダネカボチャの根組織を直ちに液体窒素中で凍結し、液体窒素存在下乳鉢で細かく粉砕した。その後、10mlの抽出用0.2Mトリス酢酸緩衝液〔5M guanidine thiocyanate、0.7% β−mercaptoethanol、1%polyvinylpyrrolidone(M.W.360,000)、0.62%N−Lauroylsarcosine Sodium Salt、pH8.5)を加えポリトロンホモジナイザー(KINEMATICA社製)を用い氷冷下2分間粉砕した。ただし、β−メルカプトエタノールとポリビニルピロリドンは使用する直前に添加した。その後、粉砕液を17,000×gで20分間遠心分離し、上清を回収した。
この上清をミラクロスに濾渦し、その濾液を超遠心分離管に入れた5.7M塩化セシウム溶液1.5mlに静かに重層し、155,000×g、20℃で20時間遠心した後、上清を捨てRNAの沈殿を回収した。この沈殿を3mlの10mM Tris−HCl、1mM EDTA・2Na、pH8.0(TE緩衝液と呼ぶ)に溶解し、さらに等量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(容積比、25:24:1)を加え良く混合した後、遠心分離を行って上層の水層を回収した。得られた水層に、1/10倍量の3M酢酸ナトリウム(氷酢酸でpH6.2に調製)と、2.5倍量のエタノールを添加して良く混合し、−20℃で一晩静置した。その後、17,000×gで20分間遠心分離し、得られた沈殿を70%エタノールで洗浄して減圧乾燥した。
この乾燥標品を500μlの前述のTE緩衝液に溶解し、全RNA溶液を得た。このRNA溶液を65℃で5分間インキュベートした後、氷上で急冷した。これに2×結合緩衝液(10mM Tris−HCl、5mM EDTA・2Na、1M NaCl、0.5% SDS、pH7.5)を等量になるようにRNA溶液に加え、平衡化緩衝液(10mM Tris−HCl、5mM EDTA・2Na、0.5M NaCl、0.5% SDS、pH7.5)で予め平衡化したオリゴdTセルロースカラム(Clontech社製)に重層した。次いで、カラムを約10倍量の前述の平衡化緩衝液で洗浄した後、溶出緩衝液(10mM Tris−HCl、5mM EDTA・2Na、pH7.5)でpoly(A)RNAを溶出した。
得られた溶出液に1/10倍量の前述の3M酢酸ナトリウム水溶液と、2.5倍量のエタノールを加え混合し、−70℃で静置した。その後、10,000×gで遠心分離を行ない、得られた沈殿を70%エタノールで洗浄して減圧乾燥した。この乾燥標品を再度500μlのTE緩衝液に溶解し、オリゴdTセルロースカラム精製を繰り返し行った。得られた低温処理したクロダネカボチャの根由来のpoly(A)RNAはPCR用のcDNAライブラリーと完全長遺伝子単離用のcDNAライブラリーの作製に用いた。
(2)低温処理PCR用cDNAライブラリーの作製
cDNAライブラリーの作製はMarathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH社製)を使用した。(1)で得られたクロダネカボチャの根由来のpoly(A)RNAを鋳型として3’末端に2つのdegenerate nucleotide positionを持つ修飾lock−dockingオリゴ(dT)プライマーと逆転写酵素を用い、GublerとHoffmanらの方法(Gene,25,263−269(1983))に従い2本鎖cDNAを合成した。
得られたcDNAの両末端にMarathon cDNAアダプター(T4 DNA ligaseによりds cDNAの両末端へ結合しやすくなるように5’末端をリン酸化したもの)を連結した。得られたアダプター結合のcDNAをクロダネカボチャ根由来のPCR用cDNAライブラリーとした。
(3)PCR用プライマーの設計
既に植物や哺乳類から単離されているアルギンニン脱炭酸酵素遺伝子、S−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素遺伝子、スペルミジン合成酵素遺伝子の決定されている塩基配列を比較した。そして、非常に相同性が高く保存されている領域を選び出し、DNAオリゴマーを合成した(配列プライマーI〜VI)。
SPDSプライマーI(配列番号7):5’−GTTTTGGATGGAGTGATTCA−3’
SPDSプライマーII(配列番号8):5’−GTGAATCTCAGCGTTGTA−3’
SAMDCプライマーIII(配列番号9):5’−TATGTGCTGTCTGAGTCGAGC−3’
SAMDCプライマーIV(配列番号10):5’−GCTAAACCCATCTTCAGGGGT−3’
ADCプライマーV(配列番号11):5’−GGGCT(T/G)GGA(G/A)T(G/C)GACTA(C/T)−3’
ADCプライマーVI(配列番号12):5’−(T/C)CC(A/G)TC(A/G)CTGTC(G/A)CA(G/C)GT−3’
(4)PCRによる増幅
(2)で得られたPCR用cDNAライブラリーをテンプレートとして、(3)で設計した配列プライマーを用いてPCRを行った。PCRのステップは最初、94℃、30秒、45℃、1分間、72℃、2分間で5サイクル、続いて94℃、30秒、55℃、1分間、72℃、2分間で30サイクル行った。
(5)アガロースゲル電気泳動
PCR増幅産物を1.5%アガロース電気泳動を行い、泳動後のゲルをエチジウムブロマイド染色し、UVトランスイルミネーター上で増幅バンドを検出した。
(6)PCR産物の確認と回収
検出された増幅バンドを確認し、カミソリの刃を用いてアガロースゲルから切り出した。切り出したゲルを1.5mlのマイクロチューブに移し、QIAEXII Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いてゲルからDNA断片を単離精製を行った。回収したDNA断片をpGEMTクローニングベクター(Promega社製)にサブクローニングし、大腸菌に形質転換後、常法に従ってプラスミドDNAを調製した。
(7)塩基配列決定
得られたプラスミドの挿入配列の塩基配列決定をダイデオキシ法(Messing,Methods in Enzymol.,101,20−78,1983)により行った。SPDS遺伝子については3種類の遺伝子、SAMDC遺伝子については1種類の遺伝子、ADC遺伝子については2種類の遺伝子が単離された。
(8)ホモロジー検索
これらの遺伝子の塩基配列を既知遺伝子塩基配列のデータベースとホモロジーサーチを行うとSPDS遺伝子は既知の植物由来のSPDS遺伝子と70%の相同性を示した。SAMDC遺伝子については既知の植物由来のSAMDC遺伝子と70%以上の相同性を示した。ADC遺伝子については既知の植物由来のADC遺伝子と67%以上の相同性を示した。
(9)ノーザンブロット解析
これらの遺伝子が低温ストレス抵抗性を示す根組織で低温ストレス遭遇時に発現量が変化していることを確かめるために、ノーザンブロッティングを下記に示す様に行った。
14℃で6日間の低温ストレス処理を行ったクロダネカボチャの根、茎、葉と23℃で6日間の適温処理を行ったクロダネカボチャの根、茎、葉からRNAを抽出した。RNA抽出方法は実験例2のように行った。得られたRNA10μgを1.5%ホルムアルデヒドアガロースゲルで電気泳動した後、ハイボンドNナイロンメンブランに一晩ブロッティングした。UVクロスリンカーでRNAを固定した後、プレハイブリダイゼーションバッファー(50% Formamide、5X SSPE、5X Denhardt’s、0.1% SDS、80μg/ml Salmon sperm DNA、pH7.0)で、42℃、2時間プレハイブリダイゼーションを行った。PCRで得られた6種類のcDNAを32P−dCTPとランダムラベルキット(アマシャム社製)を用いて、プローブを作製した。このプローブをプレハイブリダイゼーションに加え、42℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後、メンブランを2×SSC、0.1%SDSを含む洗浄液からスタートし、最終的には0.1×SSC、0.1%SDSを含む洗浄液で50℃30分2回まで洗浄した。メンブランをX線フィルム(Kodak社製)を用いて、オートラジオグラフィーをとった。
ノーザンブロッティングの結果を図5、図6、図7に示した。
図5の結果から、取得したSPDS遺伝子が低温ストレス抵抗性の高い根組織において14℃の低温ストレス処理によってその発現量が増加し、低温ストレス抵抗性が低い茎、葉組織では14℃の低温ストレス処理によってSPDS遺伝子の発現量は有意に増加しなかった。
図6の結果から、取得したSAMDC遺伝子が低温ストレス抵抗性の高い根組織において14℃の低温ストレス処理によってその発現量が増加し、低温ストレス抵抗性が低い茎、葉組織では14℃の低温ストレス処理によってSAMDC遺伝子の発現量は有意に増加しなかった。
図7の結果から、取得したADC遺伝子が低温ストレス抵抗性の高い根組織において14℃の低温ストレス処理によってその発現量が増加し、低温ストレス抵抗性が低い茎、葉組織では14℃の低温ストレス処理によってADC遺伝子の発現量は有意に増加しなかった。
以上の結果から、上記の3つのポリアミン代謝関連酵素遺伝子は低温ストレス抵抗性が高いクロダネカボチャの根組織で低温ストレス時に特異的に発現量が高まる遺伝子であり、低温ストレス抵抗性に密接に関与する遺伝子であると考えられる。本結果と実施例1の結果からクロダネカボチャの根では低温ストレス遭遇によって特異的なSPDS遺伝子やSAMDC遺伝子、ADC遺伝子などのポリアミン代謝関連酵素遺伝子の発現量が高まりポリアミン代謝が活性化し、スペルミジンやスペルミン等のポリアミンの含量が増加した。低温ストレス遭遇時にポリアミン量が増加したことによって根の低温ストレスに対する抵抗性が増強したと考えることができる。上記の3種類のポリアミン代謝関連酵素遺伝子は低温ストレス抵抗性に関与する遺伝子である。
(10)完全長遺伝子の取得
完全長遺伝子はプラークハイブリダイゼーション法で取得した。cDNAライブラリーの作製はZAP−cDNA Synthesis Kit(stratagene社製)を使用した。(1)で得られたクロダネカボチャ根由来のpoly(A)RNAを鋳型としてオリゴ(dT)プライマーと逆転写酵素を用い、GublerとHoffmanらの方法(Gene,25,263−269(1983))に従い2本鎖cDNAを合成した。
得られたcDNAの両末端にEcoRIアダプター(内部にXhoIとSpeIサイトを持つ)を連結し、XhoIで消化した後、それをλファージベクター、λZAPIIアームのEcoRIとXhoI部位に連結後、インビトロパッケージングキット(Stratagene社製、GIGAPACK Gold)を用い、パッケージングを行ない、大腸菌SURE株(OD660=0.5)に感染させることにより多数の組換えλファージを得た。これをクロダネカボチャ根由来なcDNAライブラリーとした。このライブラリーのサイズは8.0×10であった。
プローブの作製は(6)で調製したSPDS、SAMDC、ADC遺伝子のプラスミドDNAからインサートcDNAを単離・調製し、得られたcDNAを鋳型として、Random Primed DNA Labeling Kit(USB社製)を用いて、32P標識プローブを作製した。得られた32P標識cDNAをプローブに用いた。
前記、クロダネカボチャ根由来のcDNAライブラリーを構成するファージを大腸菌に感染させてLB寒天培地上で増殖させ、約50,000個のファージDNAをナイロンメンブレン(ハイボンド−N、アマシャム社製)に写し取った。
ファージDNAを写し取ったナイロンメンブレンをアルカリ変性液(0.5M NaOH、1.5M NaCl)を含んだ濾紙上に移し、4分間放置し、次に中和液(0.5M Tris−HCl、1.5M NaCl、pH8.0)を含んだ濾紙上に移し5分間放置した。2×SSC(0.3M NaCl、0.03M クエン酸三ナトリウム)で洗浄した後、メンブレンをストラタリンカー(stratagene社製)を用いDNAの固定を行なった。固定処理を行なったナイロンメンブレンをハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、0.5%SDS、6×SSPE(3M NaCl、0.2M NaHPO、20mM EDTA・2Na、pH7.4)、5×デンハルト溶液(0.1% Ficoll、0.1% Polyvinylpyrrolidone、0.1% bovine serum albumin)、50μg/ml変性サケ精子DNAを含有中において、42℃で3時間プレハイブリさせ、作製したcDNAプローブを加え42℃で18時間ハイブリダイズさせた。その後、メンブレンを取り出し、2×SSC、1×SSC、0.5×SSCおよび0.1×SSCを含有する溶液を用いて、42℃で1時間〜2時間洗浄した。このメンブレンを乾燥した後、X線フィルムを密着させて一晩感光させた。
その結果、SPDS、SAMDC、ADC遺伝子断片から得たプローブでハイブリダイズした陽性クローンを選抜することができた。
陽性クローンのファージDNAそれぞれから、インビボ・エクシジョン法によりcDNAインサートを持つプラスミドクローンを調製した。インビボ・エクシジョン法は、ZAP−cDNA Synthesis Kit(stratagene社製)の方法に従った。
SPDS遺伝子、SAMDC遺伝子、ADC遺伝子を含む各ファージ液200μl、大腸菌XL1−Blue懸濁液200μl、ヘルパーファージR408懸濁液1μlを混ぜ37℃で15分間インキュベートした後、3mlの2×YT培地を加え37℃で2時間振蘯培養し、70℃で20分間処理し、遠心分離(4,000×g、10分間)して上清を回収した。得られた上清30μlと大腸菌SURE懸濁液30μlを混ぜ、37℃で15分間インキュベートした後、アンピシリンを50ppm含むLB寒天培地に数μl植菌し、37℃で一晩培養した。コロニーを形成した大腸菌は、cDNAインサートを持つプラスミドクローンを含んでいた。これらのプラスミドの挿入配列の塩基配列決定を、ダイデオキシ法(Messing,Methods in Enzymol.,101,20−78,1983)により行った。その結果、開始コドンを含むプラスミドであることが明らかとなった。
得られた完全長のクロダネカボチャ由来のスペルミジン合成酵素遺伝子をFSPD1(配列番号1,2)、S−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素遺伝子をFSAM24(配列番号3,4)、アルギニン脱炭酸酵素遺伝子をFADC76(配列番号5,6)と命名した。
得られたFSPD1と既知の植物由来のスペルミジン合成酵素遺伝子とアミノ酸比較を行った(表1)。表1の結果からクロダネカボチャ根由来のFSPD1は他の植物由来のSPDS遺伝子とアミノ酸レベルで高い相同性を示した。
Figure 0003924748
得られたFSAM24と既知の植物由来のS−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素遺伝子とアミノ酸比較を行った(表2)。表2の結果からクロダネカボチャ根由来のFSAM24は他の植物由来のSAMDC遺伝子とアミノ酸レベルで高い相同性を示した。
Figure 0003924748
得られたFADC76と既知の植物由来のアルギニン脱炭酸酵素遺伝子とアミノ酸比較を行った(表3)。表3の結果からクロダネカボチャ根由来のFADC76は他の植物由来のADC遺伝子とアミノ酸レベルで高い相同性を示した。
Figure 0003924748
実施例3:トランスジェニックシロイヌナズナの作製
(1)発現コンストラクトの作製
配列番号1に示したポリアミン代謝関連遺伝子FSPD1の塩基配列よりオープンリーディングフレームをすべて含むように、XhoIで切断し、グラスミルク法で精製した。次にpGEM−7Zf(Promega社製)をXhoI切断して、FSPD1断片をセンスとアンチセンス方向にサブクローニングした。pGEM−7Zfのマルチクローニングサイトの制限酵素XbaIとKpnIで再度FSPD1断片を切り出して、35Sプロモーターが連結しているバイナリーベクターpBI101−Hm2にセンス方向とアンチセンス方向にサブクローニングした。これらのプラスミドをpBI35S−FSPD1と命名した。その発現コンストラクトの構造を図8に示した。なお、形質転換された大腸菌JM109を、Escherichia coli JM109/pBI35S−FSPD1と命名した。
配列番号3に示したポリアミン代謝関連遺伝子FSAM24の塩基配列よりオープンリーディングフレームをすべて含むように、NotIで切断し、それぞれ平滑末端化した。これらの断片を平滑末端化した35Sプロモーターが連結しているバイナリーベクターpBI101−Hm2にサブクローニングした。これらのプラスミドをpBI35S−FSAM24と命名した。なお、形質転換された大腸菌JM109を、Escherichia coli JM109/pBI35S−FSAM24と命名した。
配列番号5に示したポリアミン代謝関連遺伝子FADC76の塩基配列よりオープンリーディングフレームをすべて含むように、NotIで切断し、それぞれ平滑末端化した。これらの断片を平滑末端化した35Sプロモーターが連結しているバイナリーベクターpBI101−Hm2にサブクローニングした。これらのプラスミドをpBI35S−FADC76と命名した。なお、形質転換された大腸菌JM109を、Escherichia coli JM109/pBI35S−FADC76と命名した。
(2)プラスミドのアグロバクテリウムへの導入
(1)で得られた大腸菌pBI35S−FSPD1、大腸菌pBI35S−FSAM24、大腸菌pBI35S−FADC76とヘルパープラスミドpRK2013を持つ大腸菌HB101株を、それぞれ50mg/lのカナマイシンを含むLB培地で37℃で1晩、アグロバクテリウムC58株を50mg/lのカナマイシンを含むLB培地で37℃で2晩培養した。各培養液1.5mlをエッペンドルフチューブに取り集菌したのち、LB培地で洗浄した。これらの菌体を1mlのLB培地に懸濁後、3種の菌を100μlずつ混合し、LB培地寒天培地にまき、28℃で培養してプラスミドをアグロバクテリウムに接合伝達(三者接合法)させた。1から2日後に一部を白金耳でかきとり、50mg/lカナマイシン、20mg/lハイグロマイシン、25mg/lクロラムフェニコールを含むLB寒天培地上に塗布した。28℃で2日間培養した後、単一コロニーを選択した。得られた形質転換体をC58/pBI35S−FSPD1、C58/pBI35S−FSAM24、C58/pBI35S−FADC76と命名した。トランスジェニックシロイヌナズナの作製は減圧浸潤法〔以下(3)〜(6)〕または、カルス再生法〔以下(7)〜(12)〕で行った。
(3)シロイヌナズナの栽培
培養土メトロミックス(ハイポネックスジャパン社製)をプラスチック鉢に入れ、表面を網戸用のメッシュで覆い、メッシュの間にシロイヌナズナコロンビア株(以下「コロンビア株」又は「野生株」という。)の種子(奈良先端科学技術大学院大学、河内孝之博士より提供)を2〜5粒づつ播種した。2日間・4℃の低温室にいれ発芽処理後、22℃・長日条件下(16時間日長・8時間暗黒)に移して栽培を行った。約4〜6週間後に主軸花茎が5〜10cm伸長した植物体について、摘心して側枝の誘導を行った。摘心約1〜2週間後にアグロバクテリウム感染処理を行った。
(4)アグロバクテリウム懸濁液の調製
前記(2)で作製したアグロバクテリウムを感染2日前に、抗生物質(50ug/ml カナマイシン、20ug/ml ハイグロマイシン)を含んだ10mlLB培地に植菌して28℃で24時間振とう培養した。さらに、この培養液を分取して抗生物質(50ug/ml カナマイシン、20ug/ml ハイグロマイシン)を含んだ1000ml LB培地に移して、さらに、28℃、約24時間振とう培養した(OD600が1.2〜1.5になるまで)。培養液を室温下で集菌して、OD600が0.8〜1になるように浸潤用懸濁培地(0.5×MS塩、0.5×GamborgB5ビタミン、1% Sucrose、0.5g/l MES、0.44μM ベンジルアミノプリン、0.02% Silwet−77)に再懸濁した。
(5)アグロバクテリウムの感染
前記(3)で作製したシロイヌナズナの鉢に前記(4)で調製したアグロバクテリウム懸濁液が培養土中に吸収されるのを抑えるために、鉢の培養土中に水を与えた。1000mlのビーカーに約200〜300mlのアグロバクテリウム懸濁液を分取し、シロイヌナズナの鉢を逆さにして、植物体を懸濁液に浸けた。鉢を入れたビーカーをデシケーター内に入れ、バキュームポンプで約−0.053MPa(400mmHg)になるまで吸引後、約10分間放置した。徐々に陰圧を解除した後、植物をアグロバクテリウム懸濁液から取り出して、キムタオルで余分なアグロバクテリウム懸濁液を取り除き、深底トレイに横倒しした。少量の水を入れて、サランラップを被せた。この状態で約1日放置した。サランラップを外して、鉢を起こして約1週間給水を停止した。その後、徐々に培養土に水を与え、約3〜5週間の間、成熟した莢から種子の収穫を行った。収穫した種子は、茶こしを用いて、莢やゴミを取り除きデシケーター内に入れ十分に乾燥させた。
(6)形質転換植物の取得
前記(5)で取得した種子を100μl(約2000粒)を1.5mlのエッペンドルフチューブに移して、70%エタノール中で2分間、5%次亜塩素酸ナトリウム溶液中に15分間それぞれ浸して、最後に滅菌水で5回洗浄して種子の殺菌を行った。殺菌後の種子を15mlのファルコンチューブに移して、約9mlの0.1%無菌寒天溶液を加えて、激しく混合した。種子0.1%寒天混合液をファージをプレートする要領で選択培地(1×MS塩、1×GamborgB5ビタミン、1% Sucrose、0.5g/l MES、0.8% 寒天、100mg/l カルベニシリン、50mg/l カナマイシン、40mg/lハイグロマイシン、8g/l Phytagar、pH5.7)に均一になるように広げた。クリーンベンチ内で約30分乾燥後、4℃、2日間の低温処理後、22℃のグロースチャンバーに移して、抗生物質に対して抵抗性を示す形質転換体を選抜した。本葉が3〜5枚した植物体を再度新しい選択培地に移して本葉が4〜6枚になるまで栽培した。抗生物質に対して抵抗性を示した形質転換植物(T1)を培養土を含んだ鉢に定植して、約5〜7日間多湿条件下で順化させた。順化後、23℃、長日条件下(16時間日長・8時間暗黒)で栽培させた。得られた形質転換植物(T1)、および該形質転換植物から得られた種子(T2)から生育させたT2植物体についてPCRまたはサザンハイブリダイゼーションによる導入遺伝子の解析とノーザンハイブリダイゼーションによる発現レベルの解析を行い、目的のポリアミン代謝関連酵素遺伝子が安定に組み込まれ、且つ発現している形質転換体を確認した。さらに、T2植物体からT3種子を収穫し、抗生物質に対する抵抗性試験(分離比検定)を行って形質転換出現比率からホモ接合体(T2)を取得した。T2種子とホモ接合体から取得したT3種子(T3ホモセルライン)を以下の実験に用いた。
(7)無菌シロイヌナズナの栽培
シロイヌナズナWassilewskija株(以下WS株と称す)の種子(奈良先端科学技術大学院大学、新名惇彦博士より提供)数10粒を1.5mlチューブに入れ、70%エタノール1mlを加え3分間放置した。続いて滅菌液(5%次亜塩素酸ナトリウム、0.02%TritonX−100)に3分間浸し、滅菌水で5回洗浄した後に、MSOプレート(ムラシゲ−スクーグ無機塩類4.6g、ショ糖10g、1000×ビタミンストック液1ml/リットル、pH6.2)に置床した。このプレートを4℃に2日間放置して低温処理を行い、続いて植物インキュベーター(サンヨー製、MLR−350HT)中に22℃、光強度6000ルクス、長日条件下(明期16時間、暗期8時間)にて、21日間培養した。感染効率を上げるために再度植物を無菌的に引き抜いて、新たなMSOプレートの表面に根を広げ、さらに2日間培養を続けた。
(8)アグロバクテリウムの感染
前記で21日間培養したWS株の根を数株ずつそろえて、メスで1.5〜2.0cm程度に切りそろえ、CIMプレート(MSOプレートに2,4−ジクロロフェノキシ酢酸を終濃度0.5μg/ml、カイネチンを0.05μg/mlとなるように加えたもの)に置き並べた。光強度3000ルクス、16時間明期、8時間暗期で2日間培養し、MS希釈液(ムラシゲ−スクーグ無機塩類6.4g/l、pH6.3)で3倍に希釈したものをそれぞれ1mlずつチューブに分注し、この中にカルス化した根の切片を10分間浸した。2枚重ねた滅菌ろ紙上に並べ、余分な水分を除き、新しいCIMプレートに各々置き並べた。同条件にて2日間共存培養した。
(9)除菌
各々の菌株が肉眼で観察できるまで十分に増殖した切片を除菌液(MS希釈液にクラフォランを終濃度200μg/mlになるように加えたもの)に移し、ゆっくり振蘯させて60分間洗浄した。この操作を5回繰り返した後、滅菌ろ紙上で水分を取り除き、SIMCプレート(MSOプレートに、2−ipを終濃度5μg/ml、IAAを終濃度0.15μg/ml、クラフォランを終濃度500μg/mlとなるように加えたもの)に置き並べ、光強度6000ルクス、16時間明期、8時間暗期で2日間培養した。
(10)形質転換植物の選択
前記で2日間培養した切片をSIMCSプレート(SIMCプレートにハイグロマイシンBを終濃度4.6U/mlとなるように加えたもの)に移植し、光強度6000ルクス、16時間明期、8時間暗期で培養した。以後、1週間毎に新しいSIMCSプレートに移植した。形質転換した切片は増殖を続け、ドーム状に盛り上がったカルスとなるが、非形質転換体は褐変した。形質転換体は約2週間後、カルスが緑色を呈し、約1カ月後、葉が形成され、その後ロゼット葉となった。
(11)形質転換植物の再生
ロゼット葉となった植物体の根本を、カルス部分を含まないように剃刃もしくはメスで切り取り、RIMプレートに軽く乗せるように挿した。8〜10日後、1〜2cm程度の根が数本形成したものをピンセットで無機塩類培地〔5mM KNO、2.5mM K−リン酸緩衝液(pH5.5)、2mM MgSO、2mM Ca(NO、50μM Fe−EDTA、1000×微量要素(70mM HBO、14mM MnCl、0.5mM CuSO、1mM ZnSO、0.2mM NaMoO、10mM NaCl、0.01mM CoCl)1ml/リットル〕に浸したロックウールミニポット(日東紡績社製)に定植し、培養した。開花し、莢形成後は、パーライトとバーミキュライト(TES社製)を1:1に混合し無機塩類混合培地に浸した土に植え換えた。約1カ月後、1株につき数百粒の種子が得られた。これを以後、T2種子と称す。
(12)抗生物質耐性株の取得
T2種子約100粒を(7)と同様の方法で滅菌し、MSHプレートに播種した。ほぼ3:1の割合でハイグロマイシンB耐性株が発芽した。
(13)DNA抽出とサザンハイブリダイゼーション
前記で発芽したT2種子を無機塩類培地に浸したロックウールミニポットにピンセットで移植し、光強度6000ルクス、16時間明期、8時間暗期、22℃の条件下で培養した。2週間後、ロックウールの表面をナイフで撫でるようにメスで地上部を切り取り、直ちに液体窒素で凍結した。これを液体窒素存在下乳鉢で細かく粉砕し、1g当たり、3mlのDNA抽出用緩衝液〔200mM Tris−HCl(pH8.0)、100mM EDTA−2Na、1% N−ラウロイルサルコシンナトリウム、100μg/ml proteinaseK〕を加え十分撹拌した。60℃1時間インキュベート後、遠心(10,000×g、10分間)し上清をミラクロスで濾渦し新しいチューブに移した。フェノール:クロロフォルム:イソアミルアルコール(25:24:1)抽出を3回行なった後、エタノール沈殿を行った。沈殿をTE緩衝液に溶解した。それぞれ植物体約2.0gから、20μgずつのゲノムDNAが得られた。このうち1μgのDNAを用いて、それぞれを制限酵素EcoRI、HindIIIで切断し、1%アガロース電気泳動及びサザンハイブリダイゼーションに供した。
また、形質転換を行っていないWS株の種子を発芽、生育させ、植物体より、同様にDNAを抽出し、制限酵素EcoRI、HindIIIによる消化を行ない、1%アガロースゲル電気泳動及びサザンハイブリダイゼーションに供した。ハイブリダイゼーション用プローブは各FSPD1、FSAM24、FADC76遺伝子断片を用いた。
サザンハイブリダイゼーションは、モレキュラー クローニング,ア ラボラトリー マニュアル(Molecular Cloning,a Laboratory Manual)、第9章、第31〜58頁〔コールド スプリング ハーバー(Cold Spring Harber)社、1989年刊〕に記載の方法に従って行った。すなわち、それぞれのDNA試料について1%アガロースゲル電気泳動を行ない、泳動後、アルカリ変性を行ないナイロンメンブレン(ハイボンド−N、アマシャム社製)に一晩サザンブロットした。紫外線トランスイルミネーター(254nm)に3分間照射させ、DNAを固定した。このメンブレンをプレハイブリダイゼーション緩衝液(5×デンハルト液、6×SSC、0.1%SDS、10μg/mlサケ精子DNA)5ml中で50℃、2時間プレハイブリダイゼーションを行なった。プローブを加え、50℃で一晩ハイブリダイゼーションを行なった。ハイブリダイゼーションの後、メンブレンを2×SSC、0.1%SDSを含む洗浄液で室温10分間2回洗浄し、続いて同じ洗浄液で50℃、30分間で2回洗浄した。メンブレンは乾燥させた後、X線フィルム(コダック社製)を入れたカセット内で−80℃一晩感光させ、オートラジオグラフィーをとった。形質転換を行っていない株(1)、FSPD1、FSAM24、FADC76を導入した形質転換体(2)、ベクターのみを導入した形質転換体(3)について、サザンハイブリダイゼーションにより検出されたシグナルのパターンを比較した。
(2)には、(1)、(2)、(3)共通の内在性のシグナルのほかに、EcoRIで切断したサンプルと、HindIIIで切断したサンプルでは特異的なシグナルが観察され、目的遺伝子が(2)に組み込まれていることが観察された。
実施例4:ノーザンブロット解析
実施例3で得られたT2形質転換体で目的の遺伝子が実際に遺伝子発現しているかを確かめるために、ノーザンブロッティングを下記に示す様に行った。
形質転換を行っていない野生株(WT)とT2形質転換体(セルライン:TSP−14、15、16、17、19)のロゼット葉から全RNAを抽出した。RNA抽出方法は実験例2のように行った。得られた全RNA10μgを1.5%ホルムアルデヒドアガロースゲルで電気泳動した後、ハイボンドNナイロンメンブランに一晩ブロッティングした。UVクロスリンカーでRNAを固定した後、プレハイブリダイゼーションバッファー(50% Formamide、5X SSPE、5X Denhardt’s、0.1% SDS、80μg/ml Salmon sperm DNA、pH7.0)で、42℃、2時間プレハイブリダイゼーションを行った。形質転換を行ったクロダネカボチャSPDS遺伝子断片のcDNAを32P−dCTPとランダムラベルキット(アマシャム社製)を用いて、プローブを作製した。このプローブをプレハイブリダイゼーションに加え、42℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後、メンブランを2×SSC、0.1% SDSを含む洗浄液からスタートし、最終的には0.1×SSC、0.1% SDSを含む洗浄液で55℃30分2回まで洗浄した。メンブランをX線フィルム(Kodak社製)を用いて、オートラジオグラフィーをとった。
ノーザンブロッティングの結果を図9に示した。図9の結果から、野生株(WT)では外因性クロダネカボチャSPDS遺伝子の発現は検出されなかったが、形質転換を行った全てのT2形質転換体では非常に高いレベルでクロダネカボチャSPDS遺伝子(FSPD1)が発現していることが確認された。
実施例5:ポリアミン含量の評価
(1)目的遺伝子が導入されている系統(セルライン)の選抜
実施例3で作製した形質転換体について、PCR(またはサザン解析)とノーザン解析による目的遺伝子の導入確認でセルラインの選抜を行った。その結果、確実にポリアミン代謝関連酵素遺伝子が導入され、且つ該遺伝子を発現しているセルライン、TSP−14、15、16、17、19を選抜した。
(2)ポリアミン含量の分析
同時に栽培を行っている野生株(コロンビア)と形質転換体(TSP)から約0.05〜0.2gのロゼット葉(または本葉)をサンプリングして密閉可能なポリ製のバイアル瓶に移して凍結保存させた。サンプリングした試料にプトレシン、スペルミジン、スペルミンの希釈内部標準液(内部標準量=2.5nmol)と5%過塩素酸水溶液(試料生体重1.0g当たり4ml)を加え、オムニミキサーを用いて室温下で十分に磨砕抽出した。磨砕液を、4℃、36,000×gで20分間遠心分離して上清液を採取した。上清液から正確に1.0mlを遠心管に入れて、さらに正確に12N HClを1.0mlを遠心管に加えて、密栓後、110℃の乾燥機に入れて18時間加水分解した。分解後、濃縮乾固した後、正確に1.0mlの5%過塩素酸水を加えて十分に溶解させた。得られた溶液をカチオン交換樹脂(50W−4X、200−400メッシュ、H+型:バイオラッド社製)カラムに通した。0.7N NaCl/0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)、水、1N塩酸を順次流してカラムを洗浄し、ポリアミン以外のアミノ酸や有機物を除去した。6N塩酸をカラムに加え、液が出なくなるまで流出し、ポリアミンを回収した。溶出液を70℃で減圧乾固し、これに5%過塩素酸を加えポリアミンを溶解した。プトレシン、スペルミジン、スペルミンのポリアミン量の定量はダンシル化した後、UV検出器を接続した高速液体クロマトグラフィーを用いて内部標準法で分析した。HPLCカラムはμBondapak C18(Waters社製:027324、3.9×300mm、粒子径10μm)を使用した。試料中のポリアミン含量は標準液と試料のHPLCチャートから、それぞれ各ポリアミンと内部標準のピーク面積を求めて算出した。その結果を表4に示す。
Figure 0003924748
表4より、明らかなようにポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入したセルラインTSP−14、15、16、17、19は、特にスペルミジン含量、スペルミン含量が野生株(WT)より有意に増大し、総ポリアミン含量も野生株(WT)より有意に増大していることが明らかとなった。
以上の結果から、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を植物に遺伝子導入することによってポリアミン代謝を活性化してポリアミン含量を制御できることが認められた。
実施例6:環境ストレス耐性の評価
(1)浸透圧ストレス耐性の評価
実施例3で得られた形質転換体(TSP−15、16、17)と野生株(WT:コロンビア株)種子を実施例3の(6)と同じ方法で表面殺菌した。殺菌処理した種子を100mMと200mMのソルビトールを含んだ発芽生育培地(1×MS塩、10g/l Sucrose、0.1g/l myo−inositol、5% MES、8g/l Phytagar、pH5.7)に一粒づつ播種した。播種後、約2日間、4℃で低温処理後、22℃、長日条件下(16時間日長・8時間暗黒)で栽培を開始した。播種後、生育程度の観察を開始して、特に6週間目と10週間目に発芽生育培地上の植物体の生育程度を観察し、その結果を図10に示した。
播種数日後から100mM、200mMのソルビトールを含んだ生育培地ではTSP−15、16、17は野生株(WT)より発芽勢が高く、優れた生育が見られた。播種6週間目では、100mM、200mMのソルビトールを含んだ培地でTSP−15、16、17の植物体はWTより大きく、生育阻害の程度が有意に小さかった。特にTSP−17の結果を図10に示した。播種7週間目を越えると、特に200mMのソルビトールを含んだ培地では、TSP−15、16、17の植物体は特に根の発達が明らかにWTと比べて優れ。播種10週間目では地上部、根ともに顕著な差が観察された。特にTSP−16の結果を図10に示した。また、WTでは生育阻害による黄化した枯死個体が一部観察された。
(2)乾燥ストレス耐性の評価
実施例3で形質転換体(TSP−16など)から、選抜した2つのT3ホモセルラインを用いた。得られた2つのT3ホモ形質転換体と野生株(WT:コロンビア株)種子を培養土メトロミックス(ハイポネックスジャパン社製)を含んだプラスチック鉢に播種した。播種後、約2日間、4℃で低温処理後、鉢をプラスチックバットに入れ、23℃、長日条件下(16時間日長・8時間暗黒)で栽培を開始した。播種後、約4週間目までロゼット葉が完全展開するまで育成した。ロゼット葉が完全展開した時点で、生育が揃った個体を選抜後、土壌水分量を揃えるためにバット内に水を補給し、プラスチック鉢の中位まで水で満たした。5日後、土壌水分量が一定であることを確認して、乾燥ストレス処理を開始(水の補給停止)した。開始直後から生育状況の観察を行った。
乾燥処理開始13日目に野生株(WT)では乾燥ストレス障害である萎えが観察された。乾燥処理14日目にはWTは50%の植物体が枯死した。一方、2つのT3ホモセルラインでは20%の植物体が枯死して、WTより高い生存率を示した。処理開始15日目にはWTは100%全て枯死したのに対して、T3ホモセルラインでは30%が生存していた。その結果を図11に示した。図11の結果から明らかにWT(左)は枯死して、T3ホモセルライン(右)は生存していることが確認された。処理開始17日目にはT3ホモセルラインでも全て枯死した。以上の結果から、明らかにT3ホモセルラインはWTに比べて乾燥処理開始後の生存率が高まり、乾燥ストレス耐性が増大していることが確認された。
(3)低温ストレス耐性(凍結ストレス耐性)の評価
実施例3で得られた形質転換体(TSP−16)と野生株(WT:コロンビア株)種子を実施例3の(6)と同じ方法で表面殺菌した。殺菌処理した種子を発芽生育培地(1×MS塩、10g/l Sucrose、0.1g/l myo−inositol、5% MES、5g/l Gellan gum、pH5.7)に一粒づつ播種した。播種後、約2日間、4℃で低温処理後、22℃、長日条件下(16時間日長・8時間暗黒)で栽培を開始した。播種後、4週間目に発芽生育培地を低温インキュベーター(日立社製:CR−14)に移して凍結ストレス処理を開始した。凍結ストレス処理は9℃で9時間、続いて−6℃で24時間処理、再度、9℃で9時間処理後、22℃のグロースチャンバーに移して低温ストレス障害の発生を調べた。その結果を図12に示す。
図12の結果からコントロールであるWTは低温ストレス障害である水浸状が観察され、22℃のインキュベーターに移して2日後には顕著に葉の白化現象(後に枯死)が観察された。一方、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入した形質転換体では水浸状も観察されず、低温ストレス障害の白化現象は全く観察されなかった。ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入した他のセルラインでも同様な結果を得た。
以上の結果から、植物にポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入することによって、植物の低温ストレス抵抗性が有意に増大する植物が得られることが明らかとなった。
(4)塩ストレス耐性の評価
実施例3で得られた形質転換体(TSP−16)と野生株(WT:コロンビア株)種子を実施例3の(6)と同じ方法で表面殺菌した。殺菌処理した種子を50mMのNaClを含んだ発芽生育培地(50mM NaCl、1×MS塩、10g/l Sucrose、0.1g/l myo−inositol、5% MES、5g/l Gellan gum、pH5.7)に一粒づつ播種した。播種後、約2日間、4℃で低温処理後、22℃、長日条件下(16時間日長・8時間暗黒)で栽培を開始した。播種後、4週間目に発芽生育培地上の植物体の生育程度を観察した。その結果を図13に示す。
図13の結果からコントロールであるWTは50mM NaClを含んだ培地上では著しく生育阻害が観察され、播種3〜4週間後には植物体全体が白色化して枯死した。一方、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入した形質転換体では生育阻害は受けるが本葉の展開もみられ播種3〜4週間後にも枯死個体は観察されなかった。ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入した他のセルラインでも同様な結果を得た。
以上の結果から、植物にポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入することによって、植物の塩ストレス抵抗性が有意に増大する植物が得られることが明らかとなった。
(5)除草剤ストレス耐性の評価
実施例3で得られた形質転換体(セルライン:pBI121(35S−GUS)、TSP−15、TSP−16、ポリアミン代謝関連酵素遺伝をアンチセンス方向で導入したセルライン:TSP−21、TSP−22)と野生株(WT:コロンビア株)種子を実施例3の(6)と同じ方法で表面殺菌した。殺菌処理した種子を2uMのパラコート(PQ)を含んだ発芽生育培地(2uM PQ、1×MS塩、10g/l Sucrose、0.1g/l myo−inositol、5% MES、5g/l Gellan gum、pH5.7)に一粒づつ播種した。播種後、約2日間、4℃で低温処理後、22℃、長日条件下(16時間日長・8時間暗黒)で栽培を開始した。播種後、10日目に発芽個体数(発芽率)、さらに20日目に生存個体数(生存率)を観察した。その結果を表5に示す。
Figure 0003924748
表5の結果から野生株とベクターコントロールのライン(pBI121)は、明らかにパラコートによる毒性効果で発芽率と生存率が著しく低下しているのに対して、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入したセルラインTSP−15と16の発芽率、生存率は高い値で維持された。
以上の結果から、植物にポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入することによって、植物の除草剤ストレス抵抗性が有意に増大する植物が得られることが明らかとなった。
【配列表】
Figure 0003924748
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【図面の簡単な説明】
図1は、キュウリ‘四葉’とクロダネカボチャの根の生長に及ぼす温度の影響を示す図である。
図2は、キュウリ‘四葉’とクロダネカボチャの根のプトレシン濃度に及ぼす温度の影響を示す図である。
図3は、キュウリ‘四葉’とクロダネカボチャの根のスペルミジン濃度に及ぼす温度の影響を示す図である。
図4は、キュウリ‘四葉’とクロダネカボチャの根のスペルミン濃度に及ぼす温度の影響を示す図である。
図5は、クロダネカボチャの各組織におけるSPDS遺伝子の発現結果を示す図である。
図6は、クロダネカボチャの各組織におけるSAMDC遺伝子の発現結果を示す図である。
図7は、クロダネカボチャの各組織におけるADC遺伝子の発現結果を示す図である。
図8は、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を含む発現コンストラクトの構造を示す図である。
図9は、形質転換体におけるクロダネカボチャSPDS遺伝子の発現結果を示す図である。
図10は、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入した植物と野生株との浸透圧ストレス障害の比較を示す図である。
図11は、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入した植物と野生株との乾燥ストレス障害の比較を示す図である。
図12は、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入した植物と野生株との低温ストレス障害の比較を示す図である。
図13は、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を導入した植物と野生株との塩ストレス障害の比較を示す図である。

Claims (5)

  1. 植物中で機能し得るプロモーターの制御下にある外因性スペルミジン合成酵素(SPDS)遺伝子により該外因性SPDS遺伝子を有していない植物の細胞を形質転換する工程、該形質転換細胞から植物体を再生する工程、再生された植物体を以下の(a)〜(e)からなる群から選ばれる環境ストレス条件下で生育させて前記外因性SPDS遺伝子を有しない植物に比べて優れた生育を示す形質転換植物を選抜する工程を含む、該外因性SPDS遺伝子を有していない植物に比べて以下の(a)〜(e)からなる群から選ばれる少なくとも2種の環境ストレスに対する耐性が改良された植物の作出方法:
    (a) 乾燥ストレス;
    (b) 凍結ストレス;
    (c) 酸化ストレス又は除草剤ストレス;
    (d) 浸透圧ストレス;
    (e) 塩ストレス。
  2. 植物中で機能し得るプロモーターの制御下にある外因性スペルミジン合成酵素(SPDS)遺伝子により該外因性SPDS遺伝子を有していない植物の細胞を形質転換する工程、該形質転換細胞から植物体を再生する工程、再生された植物体を以下の(a)〜(e)からなる群から選ばれる環境ストレス条件下で生育させて前記外因性SPDS遺伝子を有しない植物に比べて優れた生育を示す形質転換植物を選抜する工程を含む、以下の(a)〜(e)からなる群から選ばれる少なくとも2種の環境ストレスに対する耐性を改良する方法:
    (a) 乾燥ストレス;
    (b) 凍結ストレス;
    (c) 酸化ストレス又は除草剤ストレス;
    (d) 浸透圧ストレス;
    (e) 塩ストレス。
  3. 植物中で機能し得るプロモーターの制御下にある外因性スペルミジン合成酵素(SPDS)遺伝子で植物を形質転換して、形質転換後に以下の(a)〜(e)からなる群から選ばれる環境ストレス条件下で生育させることにより、該外因性SPDS遺伝子を有しない植物に比べて以下の(a)〜(e)からなる群から選ばれる少なくとも2種の環境ストレスに対する耐性が改良された形質転換植物を選抜する方法;
    (a) 乾燥ストレス;
    (b) 凍結ストレス;
    (c) 酸化ストレス又は除草剤ストレス;
    (d) 浸透圧ストレス;
    (e) 塩ストレス。
  4. 植物中で機能し得るプロモーターの制御下にある外因性スペルミジン合成酵素(SPDS)遺伝子により該外因性SPDS遺伝子を有していない植物の細胞を形質転換する工程、該形質転換細胞から植物体を再生する工程、再生された植物体を以下の(a)〜(e)からなる群から選ばれる環境ストレス条件下で生育させて前記外因性SPDS遺伝子を有しない植物に比べて以下の(a)〜(e)からなる群から選ばれる環境ストレスに対する耐性を評価する工程を含む、該外因性SPDS遺伝子を有していない植物に比べて以下の(a)〜(e)からなる群から選ばれる少なくとも2種の環境ストレスに対する耐性が改良された植物の作出方法:
    (a) 乾燥ストレス;
    (b) 凍結ストレス;
    (c) 酸化ストレス又は除草剤ストレス;
    (d) 浸透圧ストレス;
    (e) 塩ストレス。
  5. 植物中で機能し得るプロモーターの制御下にある外因性スペルミジン合成酵素(SPDS)遺伝子により該外因性SPDS遺伝子を有していない植物の細胞を形質転換する工程、該形質転換細胞から植物体を再生する工程、再生された植物体を以下の(a)〜(e)からなる群から選ばれる環境ストレス条件下で生育させて該外因性SPDS遺伝子を有していない植物に比べて以下の(a)〜(e)からなる群から選ばれる環境ストレスに対する耐性を評価する工程を含む、以下の(a)〜(e)からなる群から選ばれる少なくとも2種の環境ストレスに対する耐性を改良する方法:
    (a) 乾燥ストレス;
    (b) 凍結ストレス;
    (c) 酸化ストレス又は除草剤ストレス;
    (d) 浸透圧ストレス;
    (e) 塩ストレス。
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