JP2000290102A - 植物の低温ストレス抵抗性を増強する方法 - Google Patents

植物の低温ストレス抵抗性を増強する方法

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JP2000290102A
JP2000290102A JP11092450A JP9245099A JP2000290102A JP 2000290102 A JP2000290102 A JP 2000290102A JP 11092450 A JP11092450 A JP 11092450A JP 9245099 A JP9245099 A JP 9245099A JP 2000290102 A JP2000290102 A JP 2000290102A
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polyamine
low
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temperature stress
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Yoshihisa Kasukabe
芳久 春日部
Susumu Nishiguchi
進 西口
Masashi Tachibana
昌司 橘
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Toyobo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】低温ストレス抵抗性を増強した植物を作出し、
栽培の安定化と生産性の向上を可能にする植物の育成方
法を提供する。 【解決手段】種子形態において、もしくは生育過程にお
いて、ポリアミンで処理することにより植物の低温スト
レス抵抗性を増強することを特徴とする植物の育成方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は植物に対して、低温
ストレス抵抗性を増強する作用を有することを特徴とす
るポリアミンにより種子形態または生育過程において処
理せしめることにより、低温ストレス抵抗性を増強した
植物を作出し、栽培の安定化と生産性の向上を可能とす
る植物の育成方法や、苗の貯蔵や輸送における生育の向
上を可能とする植物の育成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】植物はそれぞれの生息地の温度に適応し
て、その地域の温度を最適温度域として生活している。
しかし、植物は生育適温の上限または下限を越えるよう
な環境に遭遇すると高温ストレスや低温ストレスを受
け、徐々にあるいは急激に細胞の生理機能が損なわれて
障害を引き起こす。
【0003】これまでに、種々の温度環境に適応した野
生の植物を食料作物や工芸作物などに利用するために、
選抜や交雑育種など育種的手段によって作物の温度適応
性の拡大が試みられてきた。また、野菜や花卉、果樹等
の園芸作物においては育種的手段に加えて、施設園芸で
栽培可能な期間の拡大を図られてきた。しかしながら、
特に我が国は南北に長く、地域によっては気候が著しく
異なるとともに、四季の変化が著しいので、地域や季節
によっては作物は生育に不適な温度環境にさらされる危
険性が大きい。
【0004】例えば、熱帯を起源とするイネは、明治以
来の品種改良によって東北地方や北海道などの冷涼地で
も栽培できるようになり、現在ではこれらの地域の基幹
作物として栽培されているが、これらの地域では初夏に
異常低温があると冷害を受け、著しい減収になることが
現在でも問題になっている。特に、近年、地球温暖化や
エルニーニョ現象が原因と考えられる異常気象によって
作物が重大な被害を受け、1993年のひどい冷害によ
る米不足は記憶に新しい。また、野菜類についてみる
と、トマト、キュウリ、メロン、スイカなど果菜類の中
には熱帯起源の作物が多い。これらの作物は需要が大き
く農業経営上も重要性の大きい作物で早くから施設栽培
に取り入れられてきた。しかし、昭和49年のオイルシ
ョック以来、施設園芸における省資源や暖房コストの低
減が問題となっている。施設園芸における省資源につい
ては温室の構造的なものから栽培技術まで各方面から検
討されているが、最も基本的なことは作物の低温ストレ
ス抵抗性を高めることである。
【0005】これまで、低温ストレス抵抗性を高めるた
めに交雑育種や遺伝子工学を利用した育種、植物ホルモ
ンや植物調節剤の作用を利用した研究が行われている。
低温ストレス抵抗性を増強する作用を持つ植物ホルホン
や植物生長調節剤としてはアブシジン酸、ブラシノステ
ロイド、ビタミンB1、ビオチン、糖類等が知られてい
るが実際には効果の点で十分とはいえず実用化には至っ
ていない。
【0006】ポリアミンは第1級アミノ基を2つ以上有
する脂肪族炭化水素の総称であって、生体内に普遍的に
存在する天然物であり、20種類以上のポリアミンが見
出されている。代表的なポリアミンとしてはプトレシ
ン、スペルミジン、スペルミンがある。ポリアミンの主
な生理作用としては、核酸との相互作用による核酸の
安定化と構造変化、種々の核酸合成系への促進作用、
タンパク質合成系の活性化、細胞膜の安定化や物質
の膜透過性の強化などが知られている。植物におけるポ
リアミンの役割としては細胞増殖や分裂時に核酸、タン
パク質生合成の促進効果や細胞保護が報告されており、
環境ストレスに対しては塩ストレス、酸ストレスとの関
わりが主に報告されている(Plant cell physiol., 38
(10), 156-1166, 1997)。
【0007】ポリアミンと低温ストレスに関する報告と
しては、イネ植物でのみ報告がある。例えば、Leeら
は、分離根培養において低温処理期間中のポリアミン濃
度の変化と外生ポリアミンの効果としてポリアミンを分
離根培養の培地中に添加し低温処理後、25℃で3日間
インキュベートした後分離根長の再生長率を測定し(Pl
ant Science, 122, 111-117, 1997)、データには示さ
れていないが、プトレシン0.1mM以上の濃度で部分
的な回復作用が見られらと報告している。また、Lee
らはイネ幼植物の根と地上部での低温処理期間中のポリ
アミン濃度の変化とアルギニン脱炭酸酵素(ADC)、
オルニチン脱炭酸酵素(ODC)とS−アデノシルメチ
オニン脱炭酸酵素(SAMDC)の酵素活性の変化につ
いても報告している(Plant Science, 126, 1-10, 199
7)。
【0008】いずれの文献においても低温処理期間中で
のポリアミン濃度とポリアミン代謝関連酵素活性の変化
が中心に示さており、分離根培養系での外生ポリアミン
の効果については、低温処理後3日間、常温で生育した
ときの回復性を検討したものであり、低温処理期間中や
直後の萎凋やネクロシス等の低温ストレス障害に対する
効果については明らかにされていない。また、低温処理
後の再生長率は分離根培養系での効果の確認であり、イ
ンタクトな植物を用いたものではなく実用的レベルでの
効果が十分確認されたとはいえない。
【0009】田島らはイネの幼植物の低温ストレス障害
である葉身の萎凋程度と低温処理終了後27℃に移して
から2〜3日後の生存率を検討した(Japan Jour. Crop
Sci., 50(3), 411-412, 1981)。20ppmと100
ppmのスペルミジンとスペルミンの培地かん注の効果
を調べたところ、生存率についてはスペルミンでは効果
がなく、スペルミジンでは効果が認められたが、萎凋は
いずれのポリアミンも軽減しなかったと報告している。
しかし、スペルミジンの効果は再現性に乏しく、実験に
よっては全く効果が認められていない。このようなこと
から、田島らは、スペルミジンは単独では低温障害軽減
効果を示さないと報告している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、低温
ストレス抵抗性の高い品種と低い品種での生化学的解析
を行い低温ストレス抵抗性に密接に関与するメカニズム
を明らかし、そのメカニズムに対して重要な役割をして
いる化合物、酵素や遺伝子を取得し、そして取得した化
合物、酵素や遺伝子を実際に植物に応用し、実用レベル
での効果を確認するとともに、低温ストレス抵抗性を増
強した植物を作出し、栽培の安定化と生産性の向上を可
能とする植物の育成方法をや苗の貯蔵や輸送における生
育の向上を可能とする植物の育成方法を提供することに
ある。これまでポリアミンについては種々の観点から研
究されているが、低温ストレス抵抗性に関する研究は少
なく、ポリアミンが低温ストレス抵抗性を増強する作用
を有することを明らかにすることは重要な課題である。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記のよ
うな事情に鑑み、植物の低温ストレス抵抗性を向上させ
るために鋭意研究した結果、ポリアミンで処理すること
によって解決されることを見出し、本発明を完成するに
至った。すなわち、本発明は以下のような構成から成
る。 (1)種子形態において、もしくは生育過程において、
ポリアミンで処理することを特徴とする植物の低温スト
レス抵抗性を増強する方法。 (2)植物の種子をポリアミンで処理する(1)の植物
の低温ストレス抵抗性を増強する方法。 (3)生育過程にある植物をポリアミンで処理する
(1)の植物の低温ストレス抵抗性を増強する方法。 (4)生育過程にある植物を部分的にポリアミンで処理
する(3)の植物の低温ストレス抵抗性を増強する方
法。 (5)処理される植物の部分が蕾、花、子房、果実、
葉、茎、根から選択される(4)の植物の低温ストレス
抵抗性を増強する方法。 (6)植物が双子葉植物である(1)〜(5)のいずれ
かの植物の低温ストレス抵抗性を増強する方法。 (7)植物がウリ科植物である(1)〜(5)のいずれ
かの植物の低温ストレス抵抗性を増強する方法。 (8)植物がキュウリ植物である(1)〜(5)のいず
れかの植物の低温ストレス抵抗性を増強する方法。 (9)ポリアミンが第一級アミノ基を2つ以上有する脂
肪族炭化水素からなる群から選ばれた化合物である
(1)〜(8)のいずれかの植物の低温ストレス抵抗性
を増強する方法。 (10)ポリアミンが1,3−ジアミノプロパン、プト
レシン、カダベリン、カルジン、スペルミジン、ホモス
ペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン、ス
ペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペ
ンチルノルスペルミジン、N,N−ビス(アミノプロピ
ル)カダベリン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、
ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミン、ホモカルド
ヘキサミンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化
合物である(9)の植物の育成方法。 (11)ポリアミンがプトレシン、スペルミジン、スペ
ルミンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物
である(9)の植物の低温ストレス抵抗性を増強する方
法。 (12)液状、ペースト状、紛状、あるいは粒状である
ポリアミンを含んで成るポリアミン組成物を用いて処理
する(1)〜(11)のいずれかの植物の低温ストレス
抵抗性を増強する方法。 (13)ポリアミンを0.01〜10mMの濃度で含ん
で成るポリアミン組成物を用いる(12)の植物の低温
ストレス抵抗性を増強する方法。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明における植物の低温ストレ
ス抵抗性を増強する方法は、植物をポリアミンによっ
て、低温ストレス抵抗性が向上するとの新規な知見に基
づくものである。本発明の植物の育成方法は、種々の植
物、例えば、ウリ科、ナス科、イネ科、アブラナ科、マ
メ科、アオイ科、キク科などに適用される。なかでも、
ウリ科、ナス科、イネ科、アブラナ科などにおいて、特
に効果的に適用されうる。
【0013】本発明の方法によってポリアミン処理され
る植物は、種子形態または生育過程にあるものである。
生育過程にある植物は、全体にあるいは部分的に直接あ
るいは間接的にポリアミンにより処理される。ポリアミ
ンにより処理することのできる部位としては、特に限定
されないが、好ましくは植物の全樹、蕾、花、子房、果
実、葉、茎、根等である。処理することのできる生育過
程としては、特に限定されないが、好ましくは発芽後か
ら成熟した果実や種子がとれるまでが挙げられる。
【0014】本発明の方法において使用するポリアミン
は、生物体内に普遍的に存在するきわめて一般的な天然
物であり、第一級アミノ基を2つ以上有する脂肪族炭化
水素化合物が挙げられる。例えば、1,3−ジアミノプ
ロパン、プトレシン、カダベリン、カルジン、スペルミ
ジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、
テルミン、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミ
ン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N−ビス
(アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カル
ドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミ
ン、ホモカルドヘキサミンなどが挙げられる。
【0015】上記ポリアミンによる処理は、ポリアミン
とともに、界面活性剤、展着剤等を含んで成るポリアミ
ン組成物を用いて行うのが好ましい。該組成物の形態
は、特に限定されないが、好ましくは液状、粒状、粉末
状、ペースト状において用いることができる。また、該
組成物中のポリアミンの含有率は、特に限定されない
が、通常0.01〜10mM、好ましくは0.1〜5m
Mである。さらに、該ポリアミン含有組成物に、低温ス
トレス抵抗性に対する効果が報告されているアブシジン
酸(ABA)やブラシノステロイドなどの植物ホルモン
や糖類等を添加してもよい。また必要に応じて希釈剤、
賦形剤等を添加してもよい。
【0016】該組成物がペースト状品の場合、上記の液
状品にラノリン、ワセリン等のペースト剤を混合するこ
とにより調製できる。該組成物が粉末状品の場合は、ポ
リアミンを適当量のクレー、カオリン、タルク、珪藻
土、シリカ、炭酸カルシウム、モンモリナイト、ベント
ナイト、長石、石英、アルミナ、おがくず等の個体担体
を混合することにより調製することができる。また、該
組成物が顆粒状品の場合は、上述の粉末状品を常法に従
い造粒し、調製することができる。
【0017】本発明においては、植物の種子形態および
生育過程において、ポリアミンの処理を施すに際して
は、上記のようなポリアミンを含有する組成物を直接的
に植物の全樹、蕾、花、子房、果実、葉、茎、根への散
布、塗布、浸漬、更には、間接的に育成土壌や培地、養
液栽培の培養液に添加等の手段により実施するのが好ま
しい。このように処理された植物は、生育過程において
ポリアミンを取り込み、取り込まれたポリアミンの作用
によって、低温遭遇時の低温ストレス抵抗性を増強する
ことができる。
【0018】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明す
る。なお、これらは本発明の範囲を限定するものではな
い。
【0019】実施例1:キュウリ品種間によるスペルミ
ジン含量とS−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素(SA
MDC)活性の測定 <供試材料の調製>低温ストレス抵抗性の高いキュウリ
‘津春三号’(中国品種)と低温ストレス抵抗性の低い
キュウリ‘四葉’(日本品種)をガラス室で播種し、子
葉展開時に市販の床土(サンサン床土;タキイ種苗社
製)を詰めた鉢に移植し、人工気象室(昼夜の気温28
/22℃、250μmolm-2-1PPFD、12時間
日長)で育成した。第1本葉展開時に実験に供した。
【0020】<低温処理>人工気象室の明期の最後に鉢
を低温(3℃)、暗黒、相対湿度〜100%のインキュ
ベーターに移し24時間、低温処理を行った。
【0021】<サンプリング>サンプリングは低温処理
開始直前と処理6時間後、12時間後、18時間後、2
4時間後にそれぞれ第1本葉をサンプリングした。
【0022】<スペルミジン含量の測定>スペルミジン
を5%過塩素酸水溶液(試料生体重量1.0g当たり4
ml)で葉から抽出した。希釈内部標準液を添加後、2
℃、40,000×gで20分間遠心分離した。上清液
をカチオン交換樹脂(50W−4X、200−400メ
ッシュ、H+型:バイオラッド社製)カラムに通した。
0.7N NaCl/0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液
(pH8.0)、水、1N塩酸を順次流してカラムを洗
浄し、ポリアミン以外のアミノ酸や有機物を除去した。
そして、6N塩酸をカラムに加え、液が出なくなるまで
流出し、スペルミジンを回収した。溶出液を40℃で減
圧乾固し、これに5%過塩素酸を加えスペルミジンを溶
解した。スペルミジン量の定量はベンゾイル化した後、
UV検出器を接続した高速液体クロマトグラフィー(H
PLC)で分析した。HPLCカラムはInertsi
l ODS−2(4.6×250mm;GLサイエンス
社製)を使用し、58%メタノールに1%酢酸を含んだ
溶離液を用いた。
【0023】<SAMDC活性の測定>葉に抽出用25
mMリン酸カリウム緩衝液(0.1mM EDTA、
0.1mMフェニルメチルスルフォニルフルオリド、2
5mMアスコルビン酸、pH8.0)を加え、冷却下で
ホモジナイズした。30,000×gで15分間遠心分
離した後、上清液に14C−S−アデノシルメチオニンを
含む200mM リン酸カリウム(pH7.5)を加え
た。40℃で30分間反応し、10%(W/V)トリク
ロロ酢酸を加え反応を停止した。90分間放置し、脱炭
酸反応によって放出した14CO2を2N水酸化ナトリウ
ム液を含むバイアルに定量的に回収した。水酸化ナトリ
ウム液中の放射能活性を液体シンチレーションカウンタ
ー(Model LCS−5100;アロカ社製)を用
いて測定した。
【0024】上記の方法に従って低温処理後のキュウリ
2品種の葉のポリアミンであるスペルミジンとスペルミ
ジン合成の律速酵素であるS−アデノシルメチオニン脱
炭酸酵素(SAMDC)活性を測定した。その結果を図
1と図2に示した。
【0025】図1および図2の結果から、低温ストレス
抵抗性品種である‘津春3号’においては3℃の低温処
理開始直後からスペルミジン含量が増大し、処理12時
間後にピークに達した。一方、低温ストレス抵抗性の低
い品種である‘四葉’においては低温処理期間中スペル
ミジン含量は変化しなかった。スペルミジン合成の律速
酵素であるSAMDCの酵素活性はスペルミジン含量の
変化と同様に‘津春3号’では低温処理直後から酵素活
性が増大し、処理12時間後にピークに達した。一方
‘四葉’ではSAMDCの酵素活性は変化しなかった。
【0026】以上の結果から、低温抵抗性の高い品種
‘津春3号’では低温処理期間中にSAMDCの酵素活
性が増大し、その結果、スペルミジン含量が増大が観察
された。一方、低温ストレス抵抗性の低い品種‘四葉’
ではSAMDCの酵素活性もスペルミジン含量も低温処
理期間中に変化しなかった。このことは低温ストレス抵
抗性にポリアミンであるスペルミジンが密接に関わって
おり、その量的変化が重要であることを示唆している。
【0027】実施例2:ポリアミン葉・茎散布による低
温ストレス抵抗性への影響1 <供試材料の調製>低温ストレス抵抗性の低いキュウリ
‘四葉’(日本品種)をガラス室で播種し、子葉展開時
に市販の床土(サンサン床土;タキイ種苗社製)を詰め
た鉢に移植し、人工気象室(昼夜の気温28℃/22
℃、180μmolm-2-1PPFD、12時間日長)
で育成した。第1本葉展開時に実験に供した。
【0028】<ポリアミン散布処理>ポリアミン水溶液
はプトレシンは1mM、スペルミジンは0.3mM、1
mM、スペルミンは0.3mM、1mMの濃度になるよ
うに0.01% Tween20を含む水にそれぞれ溶
解した。作製したポリアミン水溶液と水(0.01%T
ween20を含む)を低温処理6時間前の明期に葉・
茎全体に散布した。
【0029】<低温処理>ポリアミン散布処理6時間
後、低温(3℃)、暗黒、相対湿度〜100%のインキ
ュベーターに移し24時間、低温処理を行った。
【0030】<低温ストレス抵抗性の評価>低温処理終
了後、鉢を20℃の水に10分間つけて地温を高めた
後、元の人工気象室に戻した。24時間後に葉のネクロ
シス斑点の面積を測定し、全葉面積に対する%で低温ス
トレス障害率を求めた。上記の方法に従って、低温スト
レス抵抗性の低い‘四葉’に対するポリアミン散布処理
の影響を調べた。その結果を表1に示した。
【0031】
【表1】
【0032】表1の結果より、ポリアミンであるプトレ
シン、スペルミジン、スペルミンを葉・茎散布処理する
ことによってキュウリ葉の障害面積率が有意に低下し、
低温ストレス障害に対する軽減効果が明らかとなった。
全てのポリアミンで軽減効果を示したが、特にスペルミ
ジン1mMで大きな軽減効果を示した。以上の結果から
ポリアミンは低温ストレス障害を軽減する作用があり、
低温ストレス抵抗性の低いキュウリ‘四葉’の低温スト
レス抵抗性を増強させることが明らかとなった。
【0033】実施例3:ポリアミン葉面散布による低温
ストレス抵抗性への影響2 <供試材料の調製>低温ストレス抵抗性の低いキュウリ
‘四葉’(日本品種)をガラス室で播種し、子葉展開時
に市販の床土(サンサン床土:タキイ種苗社製)を詰め
た鉢に移植し、人工気象室(昼夜の気温28℃/22
℃、250μmolm-2-1PPFD、12時間日長)
で育成した。第1本葉展開時に実験に供した。
【0034】<ポリアミン散布処理>ポリアミン水溶液
はプトレシンは1mM、スペルミジンは1mM、スペル
ミンは1mMの濃度になるように、0.01% Twe
en20を含む水にそれぞれ溶解した。作製したポリア
ミン水溶液を低温処理12時間前の明期に葉に散布し
た。
【0035】<低温処理>ポリアミン散布処理12時間
後、低温(3℃)、暗黒、相対湿度〜100%のインキ
ュベーターに移し24時間、低温処理を行った。また、
低温処理後の再生長率を求めるために、低温(3℃)処
理の対照として15℃、暗黒、24時間処理も並行して
行った。
【0036】<低温ストレス抵抗性の評価>低温(3
℃)処理と15℃処理後、鉢を加温し地温を高め、元の
人工気象室に戻した。 (1)低温(3℃)処理と15℃処理後、24時間後に
ネクロシス斑点の面積を測定し、全葉面積に対する%で
低温ストレス障害率を求めた。 (2)7日間後に低温(3℃)処理した葉と15℃処理
した葉の生体重をそれぞれ測定し、15℃処理した葉の
生体重に対する%で低温ストレス後の再生長抑制率を求
めた。下記に計算式を示す。 上記の方法に従って、低温ストレス抵抗性の低い‘四
葉’に対するポリアミン散布処理の影響を調べた。その
結果を表2に示した。
【0037】
【数1】
【0038】
【表2】
【0039】表2の結果より、ポリアミンであるプトレ
シン、スペルミジン、スペルミンを散布処理することに
よってキュウリ葉の障害面積率が有意に低下し、低温ス
トレス障害に対する軽減効果が明らかとなった。全ての
ポリアミンで軽減効果を示したが、特にスペルミジンに
より大きな軽減効果を示した。さらに、低温処理後の再
生長抑制率はプトレシン、スペルミジン、スペルミンを
散布処理によって有意に低下し、低温処理後の低温スト
レス障害に対しても軽減効果を示した。全てのポリアミ
ンで軽減効果を示したが、特にスペルミジンで大きな軽
減効果を示した。以上の結果から、ポリアミンは低温処
理期間中や低温処理後のいずれの低温ストレス障害に対
しても軽減する作用があり、低温ストレス抵抗性の低い
キュウリ‘四葉’の低温ストレス抵抗性を増強させるこ
とが明らかとなった。
【0040】
【発明の効果】上述したように、本発明の植物の低温ス
トレス抵抗性を増強する方法により、植物の低温ストレ
ス抵抗性を効果的に増強することができ、植物の生育過
程において遭遇する低温ストレスによる障害等を回避す
ることが可能とならしめる。したがって、植物栽培の安
定化と生産性の向上が期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】キュウリ‘津春3号’と‘四葉’の低温処理期
間中のスペルミジン含量の変化を示す図である。
【図2】キュウリ‘津春3号’と‘四葉’の低温処理期
間中のS−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素(SAMD
C)活性の変化を示す図である。

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 種子形態において、もしくは生育過程に
    おいて、ポリアミンで処理することを特徴とする植物の
    低温ストレス抵抗性を増強する方法。
  2. 【請求項2】 植物の種子をポリアミンで処理する請求
    項1記載の植物の低温ストレス抵抗性を増強する方法。
  3. 【請求項3】 生育過程にある植物をポリアミンで処理
    する請求項1記載の植物の低温ストレス抵抗性を増強す
    る方法。
  4. 【請求項4】 生育過程にある植物を部分的にポリアミ
    ンで処理する請求項3記載の植物の低温ストレス抵抗性
    を増強する方法。
  5. 【請求項5】 処理される植物の部分が蕾、花、子房、
    果実、葉、茎、根から選択される請求項4記載の植物の
    低温ストレス抵抗性を増強する方法。
  6. 【請求項6】 植物が双子葉植物である請求項1〜5の
    いずれかに記載の植物の低温ストレス抵抗性を増強する
    方法。
  7. 【請求項7】 植物がウリ科植物である請求項1〜5の
    いずれかに記載の植物の低温ストレス抵抗性を増強する
    方法。
  8. 【請求項8】 植物がキュウリ植物である請求項1〜5
    のいずれかに記載の植物の低温ストレス抵抗性を増強す
    る方法。
  9. 【請求項9】 ポリアミンが第一級アミノ基を2つ以上
    有する脂肪族炭化水素からなる群から選ばれた化合物で
    ある請求項1〜8のいずれかに記載の植物の低温ストレ
    ス抵抗性を増強する方法。
  10. 【請求項10】 ポリアミンが1,3−ジアミノプロパ
    ン、プトレシン、カダベリン、カルジン、スペルミジ
    ン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テ
    ルミン、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミ
    ン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N−ビス
    (アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カル
    ドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミ
    ン、ホモカルドヘキサミンよりなる群から選ばれた少な
    くとも1種の化合物である請求項9記載の植物の低温ス
    トレス抵抗性を増強する方法。
  11. 【請求項11】 ポリアミンがプトレシン、スペルミジ
    ン、スペルミンからなる群から選ばれた少なくとも1種
    の化合物である請求項9記載の植物の低温ストレス抵抗
    性を増強する方法。
  12. 【請求項12】 液状、ペースト状、紛状、あるいは粒
    状であるポリアミンを含んで成るポリアミン組成物を用
    いて処理する請求項1〜11のいずれかに記載の植物の
    低温ストレス抵抗性を増強する方法。
  13. 【請求項13】 ポリアミンを0.01〜10mMの濃
    度で含んで成るポリアミン組成物を用いる請求項12記
    載の植物の低温ストレス抵抗性を増強する方法。
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