JP3924192B2 - 橋梁の上部工と下部工の連結構造及びその施工方法 - Google Patents

橋梁の上部工と下部工の連結構造及びその施工方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は橋梁の上部工と下部工の連結構造及びその施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、高架型高速道路のような橋梁を施工する場合、地盤から下部工たる橋脚を立設し、この橋脚上に道路となる上部工を載せるような構成が採られている。
【0003】
この場合、下部工はコンクリート製、上部工はH鋼などの鋼材が使用されることがあるが、このような構造では下部工の強度を確保するため、下部工に鉄骨/鉄筋コンクリート(SRC)あるいは鉄骨コンクリート(SC)が採用される場合がある。
【0004】
このような構造の橋梁を施工するに際しては、図9に示すように下部工50と上部工51との間に支承52を介在させ、いわゆる連続桁方式という柔軟性のある構造が採用されてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このように支承52を有する連続桁方式では下部工50と上部工51との結合が弱くなることは避けられず、地震などの際に落橋する恐れがある他、定常的に支承52の維持管理が必要であるなどの問題があった。
【0006】
そこで、下部工50と上部工51とを剛結一体化し、いわゆるラーメン構造とすることで強度の向上を図ることが考えられる。
【0007】
ところが剛結構造では施工上様々な問題があり、実際の採用は困難である。その理由は、橋梁全体をコンクリートで構成する場合には一体的な施工が可能であるが、近年は下部工50をコンクリート構成する一方、上部工51をH鋼などの鋼材やSRC構造体で構成することが多いため、材質の異なる両者を簡単には剛結できないためである。
【0008】
例えば図10に示す工法では、下部工50の内部にH鋼などの鉄骨53を設け、この鉄骨53の上端部54を下部工50の上面から延出させておき、一方、上部工51の下フランジ57には鉄骨53を挿通させるための開口部55を予め設けておく。このとき、図示のように、上部工51内に鉄骨53の上部54を位置させる。そして、上部工51内に適宜コンクリートを打設することにより、上部工51と鉄骨53を一体化する。
【0009】
このような方法では、断面積の大きな鉄骨53を上部工51内に導入するために、大面積の開口部55を設けなければならず下フランジ57の強度が低くなってしまうという問題がある。
【0010】
このような問題を解決するものとして、図11に示す工法が考えられる。この工法では、下フランジ57の下面にH鋼などの柱部56を溶接し、この柱部56を下部工50に埋め込むものである。これにより、下フランジ57の強度を低下させることなく、下部工50と上部工51とを接続することが可能となる。
【0011】
ところが、この工法では、下部工50内の鉄骨53と柱部56とが干渉してしまうこととなるため、実施できないケースが多発してしまう。
【0012】
また、いずれの工法でもH鋼などの鋼材とコンクリートとの付着力で橋梁を一体化するものであるが、もともと鋼材とコンクリートとの付着力には多くを期待できないため、本来は両者に相当の定着長が必要である。
【0013】
しかし、前記した工法では長い定着長を得ることはできないため、理想的な強度を得ることは困難である。すなわち、図10に示す例では原理的に上部工51の高さ以上の定着長は得られないため付着力不足が生じるのである。
【0014】
本発明はかかる従来の問題点を解決するためになされたもので、上部工の強度をほとんど低下させることなく下部工と上部工とを確実に締結できるようにした橋梁の上部工と下部工の連結構造及びその施工方法を提供することを技術的課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、橋梁の上部工と下部工の連結構造は前述した技術的課題を解決するために以下のように構成されている。
【0016】
すなわち、下部工1と、この下部工1の上面に載置され、部分的に箱状部2を形成した鋼製の上部工3とからなる橋梁において、下部工1側に鉄骨4を鉛直方向に埋設し、この鉄骨4に高張力鋼からなるPC鋼材5の一端を固定するとともに、このPC鋼材5の他端を下部工1上面から露出させて、箱状部2に設けた挿通孔6から箱状部2内部に挿通せしめる。その後、PC鋼材5の他端を箱状部2内に固定したアンカー7に締着するようにして構成されている。
【0017】
なお、PC鋼材5にこれを覆うようスリーブ8を設け、PC鋼材5表面にコンクリートが接触しないようにするのが望ましい。その理由は、この発明ではPC鋼材5を緊張させることで下部工と上部工とを一体化するものであるため、PC鋼材5がコンクリートに接して埋め込まれてしまうと、PC鋼材5を緊張させる余地が減少し、結果として十分な強度が得られなくなるためである。
【0018】
次に、本発明の施工方法として、下部工1と、この下部工1の上面に載置され部分的に箱状部2を形成した鋼製の上部工3とからなる橋梁において、下部工1側に鉄骨4を鉛直方向に埋設しこの鉄骨4に高張力鋼からなるPC鋼材5の一端を固定するとともに前記鉄骨周囲にコンクリート11を打設して下部工とする。なお、鉄骨に高張力鋼からなるPC鋼材5の一端を固定する工程において、PC鋼材5にこれを覆うようスリーブ8を設け、PC鋼材5の表面にコンクリートが接触しないようにすることが望ましい。
【0019】
そして、この下部工の上面からPC鋼材5の他端を突出せしめる一方、前記PC鋼材5を挿通させる挿通孔6とこの挿通孔6の延長線上に位置する窓9とを夫々形成した箱状部2を用意し、この箱状部2を下部工1上に載置してPC鋼材5を箱状部2内に導入せしめる。
【0020】
次に、PC鋼材5の他端にアンカー7を仮固定した状態で、前記窓からアンカー7上面を覆う箱抜き型枠10を装着し、その後、箱状部2内にコンクリート12を打設しアンカー7を箱状部2内に固定し、前記窓9から箱抜き型枠10を取り外してPC鋼材5の他端を窓9内部に露出せしめる。
【0021】
最後に、PC鋼材5の他端にナット13を締着してPC鋼材5に緊張力を生じせしめることで下部工1と上部工3とを一体化する。
【0022】
以下、この発明の重要な構成要素について更に説明する。
〔下部工1〕
橋梁の橋脚部分であり、鉄骨/鉄筋コンクリート(SRC)あるいは鉄骨コンクリート(SC)で構成することができる。
【0023】
〔箱状部2〕
上部工3と一体化しており、上部工3において下部工1と連結する部分に設けられるもので、鉄板を溶接することで横桁やダイヤフラムとして作用するとともに、内部にコンクリート12を打設することで強固な構造体となる。
【0024】
〔上部工3〕
下部工1によって支持され完成後には道路となる部分で、鉄板をI形、H形、箱型、または、それらを組み合わせた形状の鋼製材で構成することができる。
【0025】
〔鉄骨4〕
下部工1内部において埋設されるもので、例えばH鋼を使用できる。なお、PC鋼材5の一端を固定するための固定板を溶接し、この固定板にPC鋼材5の一端を挿通する穴を穿設するよう構成してもよい。この穴に挿通したPC鋼材5の一端をナット締め等することで、PC鋼材5と鉄骨4とが互いに固定される。
〔PC鋼材5〕
高強度鋼材の総称であり、両端に固定のためのネジ等の固定手段を設ける。なお、形態としては棒の他、ワイヤーやケーブルを用いることも可能であるがPC鋼棒が望ましい。
【0026】
〔挿通孔6〕
箱状部2の底面に形成されており、PC鋼材5が挿通できる最低限の直径となっている。このように最低限の直径とする理由は、箱状部2、すなわち箱状部2と一体である上部工3の強度を低下させないためである。
【0027】
〔アンカー7〕
PC鋼材5の締着力をコンクリートに与えるもので、定着板とナット等で構成される。
【0028】
〔スリーブ8〕
比較的肉薄の鉄パイプ、いわゆるシース管が使用できる。このスリーブ8を用いる目的はPC鋼材5を内部に収納することでコンクリート11を打設した際に、PC鋼材5に直接コンクリート11が接触しないようにするためのものである。したがって高い強度は必要なく肉薄のパイプでよい。このスリーブ8を用いることで、PC鋼材5をナット締めする際にPC鋼材5全体がストレスなく引かれPC鋼材5の弾力性を生かした定着が可能となる。
【0029】
〔窓9〕
箱状部2の上面、すなわち上部工3に位置するもので、挿通孔6の位置と同軸上にある。この窓9は箱抜き型枠10の出し入れとPC鋼材5の締結のためのジャッキスペースに使用するもので、作業後はコンクリートで埋めるのが望ましい。
【0030】
〔箱抜き型枠10〕
アンカー7をコンクリート12で埋設してしまわないよう、アンカー7の上方に空間をつくるためのもので、円錐または角錐の上部を切ったような形状に形成し、これを逆にしてアンカー7の上面に密着させるようにする。コンクリートの養生後、これを外すとアンカー7の上方にすりばち状の空間ができる。この材質は、離型性のよい合成樹脂が好適である。
【0031】
以上述べたように、上部工3の箱状部2には、PC鋼材5が挿通できる程度の挿通孔6が設けられるに過ぎないため、上部工3の強度低下はほとんど無視できる程度で済む。
【0032】
また、PC鋼材5を緊張させることで下部工1と上部工3とを確実に締結でき、従来単純に鉄骨を埋設したものに比較してより強力な一体化を図ることができた。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の橋梁の上部工と下部工の連結構造及びその施工方法を図1から図8に示される実施形態について更に詳細に説明する。
【0034】
図1は下部工1と、この下部工1の上面に載置された上部工3とを側面から見たものであり、一部断面としてある。
【0035】
下部工1は、コンクリート製橋脚で次のように構築される。
【0036】
図4に示すように、まずH鋼からなる縦4本横2本計8本の鉄骨4を鉛直方向に立設する。この鉄骨4には図2に示すように固定板4aが溶接により固着されており、この固定板4aにはロッド穴が設けられる。このロッド穴にはPC鋼材5からなるPC鋼棒5cが挿通されるようになっている。PC鋼棒5cはその両端にネジ5a5bが形成してあり、PC鋼棒5cの一端を、ロッド穴に挿入してナット20で締めすることで、PC鋼棒5cと鉄骨4とが一体的に固定されている。
【0037】
このような状態で、図4に示すように、PC鋼棒5cにこれを覆うようスリーブ8を被せる。次に、鉄骨4の周囲に所定の型枠を設置して、その内部にコンクリート11を打設する。このときPC鋼棒5cはスリーブ8とともにコンクリート11の上面から突出させるようにする。
【0038】
このようにして施工した下部工1の上面に、図5に示すように上部工3を載置する。上部工3は、図8に示すように、道路となる主桁3aの下面に2本の鋼桁3bを設けた形状となっている。そして、下部工1に対応する部位には箱状部2が形成されている。この箱状部2は2枚の横桁2bを鋼桁3b、3bの間に溶接するとともに、横桁2bと鋼桁3bに囲まれる底の部分に底板2bを溶接して箱状に形成したものである。底板2bには前記PC鋼棒5の位置に対応して挿通孔6が穿設されている。また、箱状部2の上面、実質的に上部工3の上面には挿通孔6の延長線上に位置する窓9が形成されている。
【0039】
前記した構成である上部工3をクレーンで吊り下げつつ、挿通孔6とスリーブ8との位置を合わせながら下部工1上に載置する。なお、底板2bの下面には、予めずれ止め鋲21を溶接しておき、両者間にずれが生じないようにしてある。
【0040】
続いて図6に示すように、箱状部2内にコンクリート12を打設するが、これに先立って、PC鋼棒5cのネジ5b部分に有孔の円盤状に形成したアンカー7を挿通する。そしてこのアンカー7の上面を隠すように箱抜き型枠10を装着する。なお、このアンカー7の形状は円盤状に限られず、他の形状でも良いものである。
【0041】
また、この箱抜き型枠10はアンカー7をコンクリート12で埋設してしまわないよう、アンカー7の上方に空間をつくるためのもので、例えば円錐の上部を切ったような形状に形成する。そして、これを逆にしてアンカー7の上面に密着させるようにしてある。なお、箱状部2の内壁部には、ずれ止め鋲21が多数設けられている。
【0042】
次に、図7に示すように箱状部2内にコンクリート12を打設し、養生後に窓9から箱抜き型枠1を除去する。この状態で窓9の内部にはPC鋼棒5cのネジ5b部分がアンカー7上に露出しており、このネジ5b部分にナット13を締め込む。この締め込みによって下部工1と箱状部2、すなわち上部工3は強固に一体化する。ナットの締め込み後は、箱抜き型枠1によって形成されたすり鉢状の穴をコンクリート12により充填する。
【0043】
次に各部に作用する応力の相互関係について、図1により簡単に説明する。
【0044】
図1において、上部工3からの曲げモーメントMは、PC鋼材5の引張力Tを介して下部工1に伝達される。また、PC鋼材5間の距離をLとすると、M=T*Lの関係が成立する。
【0045】
さらに、上部工3における水平力Sは、底板2bの下面に設けられたずれ止め鋲21を介して、下部工1に伝達される(SR)。したがって、ここではS=SRとなる。そして、上部工3からの軸力Nは、底板2bの圧縮力を介して下部工1に伝達される。箱状部2とコンクリート12との一体化は箱状部2内面に設けられたずれ止め鋲21によって確保される。
【0046】
PC鋼材の材質をより高強度のものに選定することで、PC鋼棒5cの本数を削減しても同程度の締結力が得られる。そのようにすることで、挿通孔6の数も削減できるため、挿通孔6を設けることによって生ずる若干の強度低下を最小限に抑えることが可能となる。また、施工量も削減できるため全体として工期の短縮を図ることができる。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、PC鋼材を緊張させることで下部工と上部工とを確実に締結できるように構成したので、従来のように単純に鉄骨を埋設したものに比較して下部工と上部工とのより強力な一体化を図ることができる。
【0048】
さらに、このPC鋼材の緊張は窓からPC鋼材の他端にナットを入れることで容易に行うことができるため作業性に優れている。
【0049】
また、上部工の箱状部にはPC鋼材が挿通できる程度の挿通孔が設けられるに過ぎないため、上部工の強度低下はほとんど無視できる程度で済むという特長がある。
【0050】
さらに、PC鋼材にこれを覆うようスリーブを設け、PC鋼材表面にコンクリートが接しないように構成したものでは、PC鋼材をナット締めする際にストレスなく緊張を与えることができ、強度を長年にわたり維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である橋梁の上部工と下部工の連結構造を示す一部断面とした側面図である。
【図2】上部工と下部工の連結構造のPC鋼材の下端部周辺を示す部分的な断面図である。
【図3】上部工と下部工の連結構造のPC鋼材の上端部周辺を示す部分的な断面図である。
【図4】上部工と下部工の連結施工方法の施工初期段階を示す一部断面とした側面図である。
【図5】上部工と下部工の連結施工方法の施工中前期を示す一部断面とした側面図である。
【図6】上部工と下部工の連結施工方法の施工中後期を示す一部断面とした側面図である。
【図7】上部工と下部工の連結施工方法の施工後期を示す一部断面とした側面図である。
【図8】上部工と下部工の連結構造を示す全体の斜視図である。
【図9】従来の橋梁の上部工と下部工の連結構造を示す側面図である。
【図10】従来の橋梁の上部工と下部工の連結構造を示す一部断面とした側面図である。
【図11】従来の橋梁の上部工と下部工の連結構造のその他の例を示す一部断面とした側面図である。
【符号の説明】
1 下部工
2 箱状部
3 上部工
4 鉄骨
5 PC鋼材
6 挿通孔
7 アンカー
8 スリーブ
9 窓
10 箱抜き型枠
11、12 コンクリート
13 ナット

Claims (6)

  1. 基礎たる下部工と、この下部工の上面に載置され、部分的に箱状部を形成した鋼製の上部工とからなる橋梁において、下部工側に鉄骨を鉛直方向に埋設し、この鉄骨にPC鋼材の一端を固定するとともに、このPC鋼材の他端を下部工上面から露出させて予め箱状部に穿設した挿通孔から上部工内部に挿通せしめ、PC鋼材の他端を箱状部内に固定したアンカーに締着してなることを特徴とする橋梁の上部工と下部工の連結構造。
  2. 前記PC鋼材を覆うようにスリーブを設け、前記PC鋼材の表面にコンクリートが接触しないようにしたことを特徴とする請求項1に記載の橋梁の上部工と下部工の連結構造。
  3. 前記PC鋼材は、PC鋼棒である請求項1または2に記載の橋梁の上部工と下部工の連結構造。
  4. 前記基礎たる下部工と、この下部工の上面に載置され部分的に箱状部を形成した鋼製の上部工とからなる橋梁において、下部工側に鉄骨を鉛直方向に埋設し、この鉄骨にPC鋼材の一端を固定するとともに、前記鉄骨周囲にコンクリートを打設して下部工とし、この下部工の上面から前記PC鋼材の他端を突出せしめる一方、前記PC鋼材を挿通させる挿通孔とこの挿通孔の延長線上に位置する窓とを夫々形成した箱状部を用意し、この箱状部を下部工上に載置してPC鋼材を箱状部内に導入せしめ、PC鋼材の他端にアンカーを仮固定した状態で、前記窓からアンカー上面を覆う箱抜き型枠を装着し、その後箱状部内にコンクリートを打設しアンカーを箱状部内に固定し、前記窓から箱抜き型枠を取り外してPC鋼材の他端を窓内部に露出せしめ、PC鋼材の他端にナットを締着してPC鋼材に緊張を生じせしめることで下部工と上部工とを一体化することを特徴とする橋梁の上部工と下部工の連結施工方法。
  5. 鉄骨にPC鋼材の一端を固定する工程において、PC鋼材にこれを覆うようスリーブを設け、PC鋼材表面にコンクリートが接触しないようにしたことを特徴とする請求項に記載の橋梁の上部工と下部工の連結施工方法。
  6. 前記PC鋼材は、PC鋼棒である請求項4または5に記載の橋梁の上部工と下部工の連結施工方法。
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