JP3923671B2 - パン用小麦粉組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、腰折れがなく、ボリューム感、しっとり感等の食感に優れるとともに、ソフトな触感を有するパンを、容易に製造できるパン用小麦粉組成物、該小麦粉組成物を含有するパン用ミックス、及び該パン用ミックスを用いたパンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来ほとんどの種類のパンにおいて、小麦粉は、グルテンを比較的多量に含有し、水と混合することにより優れた粘弾性をもったドウを形成する強力粉が主に用いられていた。一方薄力粉、中力粉は、グルテン含有量が少ないため、これらを主体としたパンはねちゃついたりべたつくため、その製品的価値は著しく劣るものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、強力粉を主体としたパンは、焼成によりいわゆる腰折れが生じる場合があり、さらにボリューム感がでにくく、触感(手でさわったときの感触)が硬くなる傾向があるため、熟練者によらなければ優れた品質のパンを安定製造することは困難であった。
【0004】
したがって本発明は、腰折れが生じることがなく、ボリューム感、触感、しっとり感等の食感に優れたパンを容易に製造できるパン用小麦粉組成物、該小麦粉組成物を含有するパン用ミックス、及び該パン用ミックスを用いたパンの製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、これまでほとんど用いられることがなかった薄力粉を特定粒径に分級したものを用いれば、腰折れが生じることがなく、ボリューム感、触感、しっとり感等の食感に優れたパンを容易に製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明は、平均粒径が20μm以下で、かつ蛋白含量が15〜17重量%の分級薄力粉を2〜50重量%含有するパン用小麦粉組成物により上記目的を達成したものである。本発明はまた、かかるパン用小麦粉組成物を含有するパン用ミックスにより上記目的を達成したものである。本発明はまた、かかるパン用ミックスを含有するパン用原料を用いることを特徴とするパンの製造方法により上記目的を達成したものである。なお本発明において平均粒径とは、マイクロトラックFSA測定での50%累積パーセント径である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明におけるパンは、その種類の如何を問わないが、例えばブレッド、ロールパン、ラスクパン、スイートドウ、デーニッシュペストリー、バンズ、菓子パン等が挙げられる。
【0008】
本発明に用いる分級薄力粉は、平均粒径が20μm以下であり、10μm以下が好ましく、8μm以下が特に好ましい。平均粒径が20μm以下であれば、腰折れが生じることなく、触感、食感の優れたパンが得られる。平均粒径が20μm以下の分級薄力粉は、例えば空気分級等の手段により得ることができる。また市販品を用いてもよい。かかる平均粒径が20μm以下の分級薄力粉の蛋白含量は、15〜17重量%程度であり、通常の薄力粉より高い。
【0009】
本発明のパン用小麦粉組成物中の、上記平均粒径20μm以下の分級薄力粉の含有量は、2〜50重量%が好ましく、5〜30重量%が特に好ましい。2〜50重量%であれば、優れた外観、触感、食感のパンが得られる。
【0010】
本発明のパン用小麦粉組成物は、上記平均粒径20μm以下の分級薄力粉及びその他の小麦粉からなる。その他の小麦粉としては、例えば強力粉、準強力粉、中力粉及び薄力粉等が挙げられ、このうち強力粉及び/または準強力粉を30重量%以上、特に50重量%以上含有することが、優れた外観、触感、食感のパンを得る上で好ましい。その他の小麦粉の粒径に特に制限はない。本発明のパン用小麦粉組成物は、上記平均粒径20μm以下の分級薄力粉及びその他の小麦粉を混合、撹拌等することにより得ることができる。
【0011】
本発明のパン用ミックスは、かかるパン用小麦粉組成物を含有したものであり、パン用小麦粉組成物、及びパンの製造に一般に用いられる他の原料、例えば砂糖等の糖類、ショートニング等の油脂、脱脂粉乳等の乳製品、食塩、酵母、香味料、酵素等を配合し、適宜撹拌等することにより得ることができる。あるいは、パン用小麦粉組成物を構成する各小麦粉と他の原料を混合、撹拌してもよい。
【0012】
本発明のパン用ミックスは、特に酵素を含有することが好ましい。酵素を含有すれば、ボリューム感に優れるとともに、触感、食感に優れたパンが得られる。酵素としては、パンの製造に一般に用いられるαアミラーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼ等が挙げられ、このうちαアミラーゼが特に好ましい。酵素のパン用ミックス中の含有量は、0.1〜1重量%が好ましい。本発明のパン用ミックスは、保存性、取り扱い性の観点から粉末状であることが好ましい。
【0013】
本発明の製造方法は、かかるパン用ミックスを用いることを特徴とする。本製造方法は、該パン用ミックスに卵、ドライイースト、水等のその他の原料を加え、混捏、発酵した後焼成する方法(直捏法)、パン用ミックスに水を加えて混捏、発酵した後、他の原料を加えてさらに混捏し、焼成する方法(中種法)のいずれでもよい。
【0014】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0015】
参考例1
薄力粉(日清製粉(株)製「フラワー」)を分級機(日清エンジニアリング社製ターボクラシファイア)を用いて分級し、平均粒径が8μmの分級薄力粉を製造した。
【0016】
実施例1〜6及び比較例1、2
表1に示す配合の原料を均一に混合し、パン用ミックスを得た。次に表2に示す各原料をカントー10コートミキサー(関東混合機(株)製)に入れ、低速2分、中高速2分の条件で混捏した後、ショートニング10重量部を添加し、さらに低速2分、中高速3分、高速3分の条件で混捏した。このとき混捏温度は28℃であった。次いで27℃、湿度75%の条件下で、50分間発酵し、240gの生地2個に分割して15分間保持した後、モルダーに入れて成型し、ワンローフケースに2個詰めた。これを38℃、湿度85%の条件下で35分間ホイロを行い、次いでロータリーオーブン(協同電熱(株)製)を用いて200℃で30分間焼成し、山型パンを得た。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
試験例1
上記で得られた各山型パンについて、体積をナタネ法により測定した。また10名のパネラーを用い、以下の評価基準で外観、しっとり感、ねちゃつき感及び触感を評価し、その平均を算出した。結果を表3に示す。
◎(評価基準)
外観
5:腰折れがなく、形が非常に整っている。
4:腰折れがほとんどなく、形が整っている。
3:腰折れがややあるが、形は概ね整っている。
2:腰折れが少しあり、形がやや悪い。
1:腰折れがあり、形が悪い。
しっとり感
5:非常にしっとりしている。
4:しっとりしている。
3:ややしっとりしている。
2:あまりしっとり感がなくややぱさつく。
1:しっとり感がなくぱさつく。
ねちゃつき感
5:全くねちゃつかない。
4:ほとんどねちゃつかない。
3:ややねちゃつく。
2:ねちゃつく。
1:非常にねちゃつく。
触感
5:非常にソフトな感触である。
4:ソフトな感触である。
3:ややソフトな感触である。
2:やや硬い感触である。
1:硬い感触である。
【0020】
【表3】
【0021】
実施例1〜6は体積、外観、食感、触感のいずれも優れており、実施例1〜4及び6は特に優れており、さらにαアミラーゼを含有する実施例6は最も優れていた。一方比較例1はしっとり感、触感が十分ではなく、また比較例2はボリューム感はあるが、触感が十分でなかった。
【0022】
【発明の効果】
本発明のパン用小麦粉組成物またはパン用ミックスを用いれば、腰折れがなく、ボリューム感、しっとり感等の食感に優れるとともに、ソフトな触感を有するパンを、容易に製造することができる。
Claims (4)
- 平均粒径が20μm以下で、かつ蛋白含量が15〜17重量%の分級薄力粉を2〜50重量%含有するパン用小麦粉組成物。
- 請求項1記載のパン用小麦粉組成物を含有するパン用ミックス。
- 酵素を含有するものである請求項2記載のパン用ミックス。
- 請求項2又は3記載のパン用ミックスを用いることを特徴とするパンの製造方法。
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-
1998
- 1998-11-27 JP JP33720998A patent/JP3923671B2/ja not_active Expired - Lifetime
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