JP3923459B2 - 金属の微小領域の応力測定方法および応力測定装置 - Google Patents

金属の微小領域の応力測定方法および応力測定装置 Download PDF

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Description

本発明は、金属に電子線を照射し、その金属からの発光現象を利用して、同金属の微小領域の応力を測定する方法、ならびにその方法を実施するのに用いる装置に関する。
物質の微小領域の応力を定量的に把握する技術は、新たな高機能性物質および材料の開発等における貴重な手段である。従来、微小領域の応力測定技術としては、レーザー光照射によるラマン分光散乱やフォトルミネッセンスを用いた測定方法および応力測定装置が知られている。これらの応力測定技術は、セラミックス複合材、生体材料等における応力分布の解明に用いられている。なお、これら技術に関する測定方法および測定装置の発明は、下記の特許文献1、2および3に開示されている。
特開平7−19969号公報
特開平6−347343号公報 特開平8−5471号公報
前記のレーザー光を用いる測定方法では、レーザー光のスポット径を小さくするのに限界があって、直径がおよそ1μm程度までが測定単位である。即ち、空間分解能が不十分である。
本発明者らの一人は、1μm以下の分解能の測定方法として、電子線を試料に照射して試料からの発光現象を用いる方法およびその方法を実施する装置の発明を行った。それが特願2002−070932号の発明である。その発明は、測定試料の発光スペクトルのピークが試料中に存在する応力によってシフトする現象を利用するものである。しかし、従来、測定対象が金属である場合は、応力を測定するのに十分な発光を得ることができないと考えられていて、上記の発明の応力測定方法でも金属は対象外としていた。
本発明の目的は、金属、即ち、純金属および合金、とりわけ鉄基合金、ニッケル系合金およびチタン合金において、微小領域の応力を測定する方法およびその方法に用いる装置を提供することにある。以下の説明では、純金属および合金をまとめて「金属」と記す。
前記のように、試料に電子線を照射し、発光スペクトルのピークシフトから応力を求める技術は既に提案されている。しかし、この方法では、金属の微小領域の応力測定は対象外とされていた。
本発明者らは、金属そのものの発光は不十分であっても、金属に伴う不純物(例えば非金属介在物)あるいは酸化被膜等の発光スペクトルを利用すれば、電子線照射による金属の微小領域の応力測定が可能になるのではないかと推測して研究を行い、本発明を完成した。電子線照射では、ビームスポット径を最小0.13nm(ナノメーター)まで絞ることが可能であるから、金属のnm単位までの微小領域の応力測定が可能になる。
本発明は、下記の(1)および(2)の応力測定方法、ならびに(3)および(4)の応力測定装置を要旨とする。
(1) 下記の工程1から工程4までを備えることを特徴とする非金属介在物および酸化皮膜の少なくとも一方を有する金属の微小領域の応力測定方法。
工程1:試料の金属に電子線を照射する照射工程、
工程2:上記の照射により、試料からの発光を集光する集光工程、
工程3:上記集光工程で集光された光を分光してスペクトルを得る分光工程、
工程4:ゼロ応力状態の試料のスペクトルと残留応力が存在している試料のスペクトルとを比較し、両スペクトルのピークシフトから残留応力を算出する応力算出工程。
(2) 下記の工程Aから工程Eまでを備えることを特徴とする非金属介在物および酸化皮膜の少なくとも一方を有する金属の微小領域の応力測定方法。
工程A:試料の金属に外力をかける外力印加工程、
工程B:試料の金属に電子線を照射する照射工程、
工程C:上記の照射により、試料からの発光を集光する集光工程、
工程D:上記集光工程で集光された光を分光してスペクトルを得る分光工程、
工程E:ゼロ応力状態の試料のスペクトルと上記の外力によって生じた内部応力が存在している試料のスペクトルとを比較し、両スペクトルのピークシフトから内部応力を算出する応力算出工程。
(3) 試料の金属に電子線を照射する電子線照射手段、電子線の照射によって試料から発生する光を集光する集光手段、集光した光を分光してスペクトルを得る分光手段、およびゼロ応力状態の試料のスペクトルと残留応力が存在している状態の試料のスペクトルとを比較し、両スペクトルのピークシフトから残留応力を求める応力算出手段を備えることを特徴とする非金属介在物および酸化皮膜の少なくとも一方を有する金属の微小領域の応力測定装置。
(4) 試料となる金属に外力を印加する外力印加手段、試料に電子線を照射する電子線照射手段、電子線の照射によって試料から発生する光を集光する集光手段、集光した光を分光してスペクトルを得る分光手段、およびゼロ応力状態の試料のスペクトルと内部応力が存在している状態の試料のスペクトルとを比較し、両スペクトルのピークシフトから内部応力を求める応力算出手段を備えることを特徴とする非金属介在物および酸化皮膜の少なくとも一方を有する金属の微小領域の応力測定装置。
上記(3)および(4)の装置は、更に下記の (a)または/および(b)の手段を備えるのが望ましい。
(a)スペクトルのピーク位置が既知の外部光を照射する外部光照射手段
(b)試料の測定個所を可視化する可視化手段。
本発明の応力測定方法は、特に鉄基合金、ニッケル基合金またはチタン基合金の微小領域の応力測定に好適である。
1.応力測定方法について
物質に電子線を照射して発光スペクトルが得られた場合、その物質に応力が存在するときのスペクトルと、応力がゼロの状態(実質的にゼロとみなせる状態を含む)のスペクトルとではピーク位置が異なる。これをスペクトルのピークシフトという。例えば、物質に外力を印加すると、その物質を構成している原子間距離あるいはイオン間距離が変化して、電子のエネルギー状態が変化する。従って、応力がゼロの状態の物質の発光スペクトルと外力がかかった状態の物質の発光スペクトルとではピーク位置が異なるのである。着目するピークにもよるが、例えば、物質に圧縮力が働くとピークは低波数側にシフトし、引張応力が働くとピークは高波数側にシフトする。
物質中に残留応力が存在する場合は、応力がゼロの状態と残留応力が存在する状態とで発光スペクトルのピーク位置が異なるから、そのピークシフト(ピーク位置の差)から残留応力の値を求めることができる。
また、物質に力がかけられたり加熱されたりして、その結果、外力が印加され、物質に内部応力が発生した場合にも、応力がゼロの状態での発光スペクトルと外力印加状態での発光スペクトルとのピークシフトから物質の内部応力を求めることができる。ただし、この場合は、物質に外力が印加されていないときと、印加されているときとで、物質の残留応力は同じであることが必要である。
前記の工程を含む本発明の応力測定方法では、試料に電子線を照射することにより発生する光を用いて金属の微小領域の応力を測定するのであるが、具体的には、次のとおりである。
1-1.残留応力の測定
金属に応力が存在していない状態の発光スペクトルと、金属に応力が存在している状態、即ち、内部応力が存在する状態、の発光スペクトルのピークシフトから残留応力を算出する。
1-2.外力を印加した場合の応力測定
前記の外力印加工程(前記の工程A)において印加された外部応力により、物質に内部応力が発生している状態のスペクトルと、残留応力が存在する状態のスペクトルまたはゼロ応力状態のスペクトルとのピークシフトから応力を算出する。
電子線は、可視光より波長が短いため、ビームスポットの直径を小さくすることができる。従って、空間分解能に優れている。具体的には、電子線を用いた場合、ビームスポット径を100nm以下、例えば0.13nm程度まで、小さくすることができるので、空間分解能が著しく高い応力測定を行うことができる。即ち、数nm単位の高空間分解能の応力測定が可能となるので、従来の応力測定方法では応力の測定ができなかった極微小領域の応力を測定することができる。
本発明の応力測定方法では、上記電子照射工程においてスペクトルのピークが既知である外部光を照射し、上記分光工程では外部光と試料からの発光とのスペクトルを得て、上記応力算工程ではそれぞれのスペクトルのピークの位置を、外部光のスペクトルのピークを基に補正するのがより好ましい。
上記の「外部光」とは、試料からの発光とは無関係の光であり、かつ、スペクトルのピークが既知である光を意味する。その光としては、例えば、Ne(ネオン)ランプの光がある。
上記の補正は、次のようにして行う。即ち、それぞれのスペクトルを得る際に、外部光を併せて分光する。そして、それぞれのピーク位置を算出する際に、外部光のスペクトルのピークに基づいて補正する。こうすることによって、測定環境に起因する誤差を最小限にとどめることができ、より正確にスペクトルのピークシフトを算出することができる。また、異なる測定機器を用いて測定されたスペクトル同士を比較することもできる。
本発明の応力測定方法は、前記の工程4または工程Eの中に試料への外力の印加量と上記スペクトルのピークシフトの量との相関を算出する相関算出工程を含むのがより好ましい。ここで、外力の大きさとピークシフト量との相関について説明する。
外力により試料に発生する応力とスペクトルのピークシフト(具体的には、スペクトルのピークのシフト量)との関係は、直線近似することができる。具体的には、外力の大きさとスペクトルシフトとの相関は、下記の(1)式で示される。
νσ=ν0+(δν/δσ)δσ ・・・ (1)
ここで、ν0はゼロ応力状態でのスペクトルのピーク中心波数、νσは外力を印加したときのスペクトルピーク中心波数、σは外力によって生じる内部応力の大きさである。また、(δν/δσ)は、通常PS(Piezo-Spectroscopic )係数と呼ばれる応力依存係数で、Πで表される。従って、スペクトルのピークの外力によるシフト量Δν、即ち、νσ−ν0は、下記の(2)式で表される。
Δν=νσ−ν0=Π・σ ・・・ (2)
上記のようにして物質の外力とピークシフトの相関が未知である場合にも、係数算出工程を経ることによって試料の内部応力を算出することができる。
上記のように、試料への外力の印加量と上記スペクトルピークシフトの量との相関を算出する相関算出工程を含めることにより、試料の外力の印加量と上記スペクトルのピークシフトの量との相関が分かっていない場合でも、試料中に存在する応力(内部応力、残留応力)を算出することができる。
本発明の方法によれば、試料に電子線を照射して、試料からの発光に基づいて応力を測定することができる。電子線は、従来のレーザー光に比べて、ビームスポット径を小さくすることができる。従って、試料に電子線を照射することにより発生した光を用いて応力を測定して応力を測定する本発明の方法では、従来のレーザー光を照射することにより発生した光を用いる方法と比べて、空間分解能の優れた応力測定を行うことができるのである。
本発明方法で測定する応力とは、試料となる金属の内部応力および残留応力である。この「内部応力」とは、試料に外部からの力や熱(外力)をかけている状態で試料に発生する応力である。金属などの場合、試料にかけられた外力と、外力によって試料に発生する内部応力とは必ずしも一致しない。また、所定の外力をかけた場合でも、試料には一様に外力がかからないため、試料の場所によって内部応力の値は異なっている。従って、試料の所定の微小領域の応力を測定することが重要なのである。
上記の残留応力とは、試料に外部から力や熱をかけていない状態でも、試料の内部に存在している応力である。試料の加工工程などで試料中に残留する応力もその一つである。
次に測定対象物(試料)について説明する。
本発明の応力測定方法では、試料に電子線を照射することにより、試料からの発光を用いて応力を測定する。従って、本発明の応力測定方法を用いて応力を測定する場合には、電子線を照射することにより試料からの発光が得られる必要がある。
測定する試料としては、電子線を照射することによって自ら発光する物質が好ましい。ところが、金属、特に鉄やニッケルそれ自体は、電子線を照射しても応力測定に十分な発光はしない。しかし、これらの金属に伴う非金属介在物や酸化被膜は、電子線を照射することにより発光する。実用される金属材料には、上記のような介在物は必然的に含まれており、また、その表面には酸化被膜が存在する。従って、金属材料に電子線を照射することによって、発光スペクトルが得られ、そのピークシフトから応力測定ができるのである。
鉄基合金では、320〜350nm、530〜560nm、670〜700nmに中心波長を持つピークが顕著である。このうち530〜560nmに中心を持つピークは、鉄の酸化物に電子線を照射した際に得られる発光とピークがほぼ一致し、合金の表層に生成した酸化被膜からの発光と考えられる。この酸化被膜は機械的または化学的な研磨などで除去することができるが、一方、合金を大気にさらすだけで容易に生成させることができる。即ち、合金を研磨し、次いで大気暴露することによって、新たな酸化被膜を必要な段階で意図的に生成させることができ、それ以降の応力変化を本発明方法で応力測定することができる。
新たに生成した酸化被膜は、材料の応力に関するそれまでの履歴を反映しないと考えられる。従って、酸化被膜を新たに生成させた段階を基点として、それ以降の応力変化を把握することができるのであり、この方法は、特に外力を印加して内部応力を測定するのに適している。なお、高温で形成された酸化被膜は、厚すぎるため、金属材料の表面の応力を測定するのには不向きである。ESCAなどにより測定される酸化被膜の厚さから、約100Å以下、好ましくは30Å以下の酸化被膜厚さがよい。
670〜700nmに中心波長を持つピークは、アルミナの発光ピークとほぼ波長が一致する。従って、合金の製造工程で不可避的に生成したアルミナか、または添加されたアルミニウムが酸化して生成し合金中に内在するアルミナからの発光のピークであると考えられる。320〜350nmに中心波長を持つピークの由来は明確ではないが、鉄の酸化物のピークとは大きく異なるので、これも合金中に内在する物質からの発光のピークと考えられる。これらの発光を利用すれば、前記の新たに生成した酸化被膜からの発光とは異なり、合金の応力に関する履歴を反映しているので、合金に固有の応力情報を得ることができる。従って、残留応力の測定に適している。
非金属介在物や酸化被膜は、通常の金属に不可避的に含有され、または生成する量で十分であるから、特別にこれらを含有させたり生成させたりする特別の操作は必ずしも要しない。
上記のとおり、従来の予想に反して、電子線照射法による金属の応力測定が可能になった。金属のほぼすべてが測定対象物となり得るが、特に、鉄基合金、ニッケル基合金およびチタン基合金には、通常、酸化物等が含まれており、本発明方法の測定対象物として好適である。
2.応力測定装置装置について
前記のとおり、本発明の応力測定装置装置は、(1)試料となる金属に電子線を照射する電子線照射手段、(2)電子線の照射によって試料から発生する光を集光する集光手段、(3)集光した光を分光してスペクトルを得る分光手段、および(4)分光したスペクトルのピークシフトから応力を算出する算出手段、を備えることを特徴とする。
この装置は、さらに(5)試料に外力を印加する外力印加手段、を備えていることが好ましい。この「外力印加手段」とは、試料に外力をかけるものである。その外力印加手段としては、具体的には、試料に圧縮や引張り、曲げ等の外力をかけることができる治具である。そのような治具によって、外力の大きさを連続的に変化させることができる。
上記の外力印加手段を備えていることにより、試料に外力をかけた状態で発生する内部応力を測定することができる。また、外力の大きさを連続的に変化させることができるので、試料にかかった内部応力の変化を測定することが可能となる。
本発明の応力測定装置は、さらに、(6)スペクトルが既知である外部光を照射する外部光照射手段を備えていることがより好ましい。また、さらに、(7)試料の測定個所を可視化する手段を備えていることがより好ましい。
上記の可視化手段とは、測定個所の位置を特定して、かつ、応力を測定する測定個所を、例えば、CRT等に表示させることができるものである。具体例としては、光学顕微鏡や電子顕微鏡等が挙げられる。このような可視化手段を備えていれば、試料の測定したい個所を精度よく示すことができる。これにより、例えば、同じ場所の応力を測定する際に効率よく応力測定を行うことができる。
前述のように、本発明の応力測定装置を用いれば、上記電子線照射手段から照射する電子線のビームスポット径を0.13nm程度までに絞ることもできる。それによって、従来のレーザー光を用いて応力測定する構成に比べて、極めて優れた空間分解能で高い精度の応力測定を行うことができるのである。
以下、本発明の応力測定装置の具体例を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の応力測定装置の一例の構成を示す図である。この装置は、電子線照射手段1を有する。その手段の例として電子銃1-1を示してある。集光手段2は、楕円ミラー2-1、光ファイバー2-2を備える。分光手段3は、モノクロメーター3-1、CCD検出器3-2を含む。応力算出手段4は、制御部4-1を有し、さらにスペクトルフィッティング手段4-2、および応力マップ(応力分布図)作製手段4-3を有する。これらの他に試料台5、冷却装置6および温度制御装置7がある。
内部応力を測定する場合には、図2に示すような外力印加手段が必要である。この外力印加手段とは、試料に外力を印加するものであって、具体的には、試料に外力を与えることにより、試料に内部応力を発生させるものである。
図2は、外力印加手段の一例を示す図で、図示のように、マイクロメーターヘッド8、ロードセル9、試料台10、ストレインアンプ11等で構成されている。
ここで、試料に外力を印加する方法について説明する。試料12を試料台10に載置してマイクロメーターヘッド8を回転させると、試料12に外力が印加される。このとき、試料への外力の印加量は、ロードセル9によって電気信号に変換される。そして、この電気信号は、ストレインアンプ11に数値として出力される。このようにして試料に外力を印加すると同時に印加した外力の大きさを知ることができる。
図1の電子線照射手段1とは、試料に電子線を照射するものであり、ここでは電子銃1-1である。電子線照射手段としては、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いることもできる。
電子銃は、発光における励起の安定度が良く、電流を安定して供給することができるLaB6やタングステン等の熱電子放電型のものが適当である。また、より高い空間分解能を得るためには、熱電界放出型電子銃を用いることが好ましい。
集光手段2は、試料に電子線を照射することにより発生した光を集光するものである。上記集光手段2は、楕円ミラー2-1、光ファイバー2-2、等により構成されている。
楕円ミラー2-1は、試料に電子線を照射することにより発生した光を集光するために用いられる。上記楕円ミラー2-1は、電子線照射手段1と試料台5との間に設けられており、かつ、電子線の照射をさまたげないように配置されている。光ファイバー2-2は、上記楕円ミラー2-1によって集光された光を損失させることなく、分光手段3に導くために用いられる。これらの装置を利用することにより、分光器を電子顕微鏡と分離できるため、中型および大型の分光器の使用が可能となり、数種類の検出器を接続することができる。
分光手段3は、集光手段2により集光された光を検出器により検出して、検出された光を分光器により単色光に分離し、検出器3-2により検出するものである。分光器としては、具体的には、モノクロメーター3-1等が挙げられる。また、検出器としては、光電子倍増管(PMT)やCCD検出器が挙げられる。光の検出には、従来はPMTを用いていたが、最近ではCCD検出器が一般的になってきた。CCD検出器はPMTに較べてダイナミックレンジが広く、S/Nが良く、短時間でスペクトルデータが一括して取得できるという特徴があるので、微弱光の測定には非常に有効である。
応力算出手段4とは、試料の応力ゼロ状態でのスペクトルと、応力が存在している状態でのスペクトルとを比較して、ピーク位置の差(ピークシフト)から応力を算出するものである。この応力算出手段は、得られたスペクトルから所定の関数を用いてピーク位置を抽出し、ピークシフトに基づいて応力を算出するプログラムを含む。
スペクトルフィッティング手段4-2は、具体的にはスペクトルの波形から分布関数を用いてピーク抽出するものである。その過程においてスペクトルのピーク位置を正確に算出し、得られた値と前述のPS係数から応力を算出するのである。
応力分布図作製手段4-3は、得られた応力値を測定位置ごとに視認できる図にする手段である。具体的には、応力の値を等高線で表示したり、あるいは、例えば、圧縮応力は寒色で表示し、引張応力は暖色で表示するといった手法が採用できる。
応力算出手段4では、所定の外力に対するピークシフト量の相関を求めることもできる。この係数は、試料を構成する物質によって異なり、測定を行おうとする試料の係数が未知の場合、予め係数を調べておく必要がある。例えば、外力の大きさを変化させ、それぞれの外力のピーク位置と外力をプロットすることによって係数を求めることができる。
つまり、測定する試料が異なると、試料にかけた外力とこの外力によるピークシフトとの相関は異なる。従って、試料にかけた外力とこの外力によるピークシフトとの相関が分かっていない場合には、外力の大きさとスペクトルのピークシフトとの相関を調べる必要がある。上記応力算出手段4によって上記の相関を求める方法としては、外力印加手段により一定の外力をかけて、そのときに得られたスペクトルシフトを記録して、外力の大きさを変化させて上記操作を繰り返すことにより、外力の大きさとスペクトルシフトとの相関を得る方法がある。
試料台5は、試料を載置するために用いられる。外力を印加した状態で測定を行う場合は、外力印加手段となる治具が試料台となる。この試料台に載置された試料は、温度制御装置7によってその温度を一定に保つことができる。
また、試料の応力測定を面分析、即ち、応力分布測定を二次元的に行う場合には、試料台を可変X−Yステージとするか、電子線照射手段1から照射される電子線の照射角を変動させることによって測定を行う。本発明装置の場合、制御部4-1において電子線照射角を制御することが可能であるから、応力分布分析を容易に行うことができる。
表1に示す組成の合金を測定試料とした。まず、表1の合金Aを対象として、外力に対するピークシフトを求めた。具体的には、最初に試料に外力を印加していない状態で、加速電圧15kVに設定して、電子をビームスポット径が30nmとなるように上記試料に照射して、試料からの発光を分光器で分光することにより図3に示すスペクトルを得た。
Figure 0003923459
図3に示すように692nmと694nmの位置にスペクトルのピークがあるが、測定効率上、よりピーク強度の大きい694nmのピークを選び、このピークを用いて応力測定を行った。
次に、外力印加手段によって外力を変化させながらスペクトル測定を行い、外力に対するピークシフトの相関係数を求めた。その結果を図4に示す。図示のとおり、外力とピークシフトとは直線関係にあって、相関係数(Π)は−3.83×10-4nm/GPaであることが確認できた。
表1の合金B(極低炭素鋼)、C(炭素鋼)、D(SUS304L相当鋼)およびE(SUS316L相当鋼)についても同じようにして外力に対するピークシフトの勾配を求めた。その結果を図5から図8までに示す。どの合金でもスペクトルのピークとしては540nmの位置のピークを採用した。なお、図4〜図8の横軸では、マイナスが圧縮応力、プラスが引張応力である。
図4から図8までの図中に示すそれぞれのΠの値が、前記の(2)式、即ち、Δν=Π・σのΠの値である。そして、Δν=νσ−ν0であるから、Δν=νσ−ν0=Π・σである。従って、外力によるピークシフト量ΔνとΠの値が分かれば、測定位置の内部応力σが算出できる。
本発明方法は、金属の試料に電子線を照射することにより発光する光のスペクトルを利用して金属の微小領域の応力測定を行うものである。この方法によれば、ビームスポット径を例えば0.13nmまで小さくすることができるので、従来の応力測定方法ではできなかった金属のnm単位の極微小領域での応力解析が可能になる。
本発明の応力測定装置の一例の構成を示す図である。 外力印加装置の一例を示す図である。 電子線照射により得られた合金のスペクトル図の一例である。 合金Aの印加応力とスペクトルピークシフトとの関係を示す図である。 合金Bの印加応力とスペクトルピークシフトとの関係を示す図である。 合金Cの印加応力とスペクトルピークシフトとの関係を示す図である。 合金Dの印加応力とスペクトルピークシフトとの関係を示す図である。 合金Eの印加応力とスペクトルピークシフトとの関係を示す図である。

Claims (6)

  1. 下記の工程1から工程4までを備えることを特徴とする非金属介在物および酸化皮膜の少なくとも一方を有する金属の微小領域の応力測定方法。
    工程1:試料の金属に電子線を照射する照射工程、
    工程2:上記の照射により、試料からの発光を集光する集光工程、
    工程3:上記集光工程で集光された光を分光してスペクトルを得る分光工程、
    工程4:ゼロ応力状態の試料のスペクトルと残留応力が存在している試料のスペクトルとを比較し、両スペクトルのピークシフトから残留応力を算出する応力算出工程。
  2. (1) 下記の工程Aから工程Eまでを備えることを特徴とする非金属介在物および酸化皮膜の少なくとも一方を有する金属の微小領域の応力測定方法。
    工程A:試料の金属に外力をかける外力印加工程、
    工程B:試料の金属に電子線を照射する照射工程、
    工程C:上記の照射により、試料からの発光を集光する集光工程、
    工程D:上記集光工程で集光された光を分光してスペクトルを得る分光工程、
    工程E:ゼロ応力状態の試料のスペクトルと上記の外力によって生じた内部応力が存在している試料のスペクトルとを比較し、両スペクトルのピークシフトから内部応力を算出する応力算出工程。
  3. 試料の金属が非金属介在物および酸化皮膜の少なくとも一方を有する鉄基合金、ニッケル基合金またはチタン基合金である請求項1または2に記載の応力測定方法。
  4. 試料の金属に電子線を照射する電子線照射手段、電子線の照射によって試料から発生する光を集光する集光手段、集光した光を分光してスペクトルを得る分光手段、およびゼロ応力状態の試料のスペクトルと残留応力が存在している状態の試料のスペクトルとを比較し、両スペクトルのピークシフトから残留応力を求める応力算出手段を備えることを特徴とする非金属介在物および酸化皮膜の少なくとも一方を有する金属の微小領域の応力測定装置。
  5. 試料の金属に外力を印加する外力印加手段、試料に電子線を照射する電子線照射手段、電子線の照射によって試料から発生する光を集光する集光手段、集光した光を分光してスペクトルを得る分光手段、およびゼロ応力状態の試料のスペクトルと内部応力が存在する
    状態の試料のスペクトルとを比較し、両スペクトルのピークシフトから内部応力を求める応力算出手段を備えることを特徴とする非金属介在物および酸化皮膜の少なくとも一方を有する金属の微小領域の応力測定装置。
  6. さらに、下記(a)または/および(b)の手段を備える請求項4または5に記載の非金属介在物および酸化皮膜の少なくとも一方を有する金属の応力測定装置。
    (a)スペクトルのピーク位置が既知の外部光を照射する外部光照射手段
    (b)試料の測定個所を可視化する可視化手段。
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