JP3923385B2 - 熱可塑性重合体組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱可塑性重合体組成物に関する。本発明の熱可塑性重合体組成物は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体および/またはその水素添加物を特定のポリウレタン成分で主鎖延長してなる重合体を含有し、特に溶融滞留安定性に優れている。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックを有するブロック共重合体(以下「スチレン・共役ジエンブロック共重合体」ということがある)およびその水素添加物は、加熱により可塑化・溶融して成形加工を容易に行うことができ、しかも常温でゴム弾性を有し且つ柔軟性と力学的特性のバランスに優れていることから、いわゆる熱可塑性弾性体(熱可塑性エラストマー)の1種として近年種々の分野で広く用いられている。
【0003】
スチレン・共役ジエンブロック共重合体およびその水素添加物は、極性の低い材料であり、極性の低い同種のプラスチック等との溶融接着や溶融一体成形は可能であるが、極性の高いプラスチックや金属との溶融接着が困難である。
特開昭52−150464号公報には、スチレン・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物に対して特定の物性を有する熱可塑性樹脂をブレンドした組成物が記載されており、この公報にはその組成物が特に導電体およびハンダ付用針金の絶縁体として適すること、および前記熱可塑性樹脂の1種として熱可塑性ポリウレタンを用いることが開示されている。しかしながら、スチレン・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物と熱可塑性ポリウレタンとは相容性に劣るため、両重合体の特性が十分に発揮されておらず、有用な組成物が得られない。
【0004】
また、スチレン・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物の熱融着性の向上を目的とした技術が従来から種々提案されており、そのような従来技術として、スチレン・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物に熱可塑性ポリウレタンを配合した熱融着性組成物が知られている〔特開平6−65467号公報、特開平6−107898号公報および特開平8−72204号公報を参照〕。しかしながら、この熱融着性組成物を用いる場合は、それと積層する材料の種類などによっては充分な接着強度が得られない場合があったり、接着強度の持続性が無いなどの問題がある。しかも、この熱融着性組成物では、スチレン・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物と熱可塑性ポリウレタンとの相容性が十分に良好であるとは言えず、例えば複層射出成形などにより得られる積層成形品では層間剥離や接着力のバラツキなどの問題を生じ易い。
【0005】
スチレン・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物と熱可塑性ポリウレタンとの間の相容性の向上、両重合体を含有する組成物の溶融接着性の向上などの目的で、カルボン酸またはその誘導体基、水酸基などで変性されたスチレン・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物を熱可塑性ポリウレタンにブレンドした組成物が提案されている〔特開昭63−99257号公報および特開平3−234755号公報を参照〕。さらに、上記した組成物において、加工時の熱安定性を改良する目的でリン系化合物やフェノール系化合物を配合した組成物も提案されている(特開平7−126474号公報参照)。しかしながら、未だ十分に満足できる結果は得られておらず、非粘着性、溶融成形性(溶融滞留安定性など)、他の樹脂と積層する際の溶融接着性などの点で不十分である。
【0006】
こうした問題点を解決できるものとして、特開平11−323073号公報において、(1)芳香族ビニル化合物−共役ジエン系ブロック共重合体またはその水素添加物、(2)芳香族ビニル化合物−共役ジエン系ブロック共重合体またはその水素添加物からなる付加重合系ブロック(イ)とポリウレタンブロック(ロ)を有するブロック共重合体、(3)熱可塑性ポリウレタンおよび(4)パラフィン系オイルを含有する組成物が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
近年、スチレン・共役ジエンブロック共重合体を始めとする各種エラストマーの利用範囲は広がってきており、それに伴って、より高性能なものが求められるようになってきている。本発明は、かかる要求を考慮してなされたものであって、非粘着性、溶融成形性(溶融滞留安定性など)、他の樹脂と積層する際の溶融接着性などの点で優れた熱可塑性重合体組成物を新たに提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記した特開平11−323073号公報に記載された組成物について検討を行う過程で、組成物の構成成分の1つ(成分(2))として既に公知であるブロック共重合体が、それ単独であっても、非粘着性、溶融成形性、他の樹脂との溶融接着性などに優れたものになり得ることを見出した。そして、該ブロック共重合体の製造方法について検討を進めた結果、特定の化合物を製造工程において使用することにより、得られるブロック共重合体の物性が改良されることを見出し、さらに検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックを有するブロック共重合体またはその水素添加物からなる付加重合系ブロック(イ)と高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物から形成されるポリウレタンブロック(ロ)を有するブロック共重合体(a)、有機スズ系化合物、有機チタン系化合物および第3級アミンから選ばれる少なくとも1種の化合物(b)〔以下、これを化合物(b)と略称することがある〕並びにリン系化合物および/またはフェノール系化合物(c)〔以下、これを化合物(c)と略称することがある〕を含有し、以下のA〜Eを満足する熱可塑性重合体組成物であって、以下のi)〜 iv )を満足するように、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとからなり、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1つの成分と反応し得る官能基を末端に有するブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体(a )、数平均分子量が500〜10,000の高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物を、化合物(b)の存在下に反応させて得られる生成物に、化合物(c)を添加して得られるか、または、以下のi’)〜 iv ’)を満足するように、数平均分子量が500〜10,000の高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物と、前記ブロック共重合体(a )を、化合物(b)の存在下に反応させて得られる生成物に、化合物(c)を添加して得られる熱可塑性重合体組成物を提供する。
A:高分子ポリオールの数平均分子量が500〜10,000である。
B:ポリウレタンブロック(ロ)において、有機ジイソシアネート化合物に由来する窒素原子含有量が、前記高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に基づいて1〜6.5重量%の範囲内である。
C:化合物(b)の含有量がブロック共重合体(a)の重量に対して0.1ppm〜0.2重量%である。
D:化合物(c)の含有量がブロック共重合体(a)の重量に対して1ppm〜2重量%である。
E:熱可塑性重合体組成物の溶融粘度が下記の式(I)を満足する。
0.9≦ηa/ηa≦1.4 (I)
〔ηa:荷重490.3N(50kgf)、200℃の条件下でウレタン結合が解離平衡に到達した時点の熱可塑性重合体組成物の溶融粘度、
ηa:荷重490.3N(50kgf)、200℃の条件下で60分経過した時点の熱可塑性重合体組成物の溶融粘度〕
i)[ブロック共重合体(a )の重量]:[高分子ポリオールの重量+鎖伸長剤の重量+有機ジイソシアネート化合物の重量]=10:90〜90:10である。
ii )有機ジイソシアネート化合物に由来する窒素原子含有量が、前記高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に基づいて1〜6.5重量%の範囲内である。
iii )化合物(b)の使用量が、前記ブロック共重合体(a )、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に対して0.1ppm〜0.2重量%の範囲内である。
iv )化合物(c)の添加量が、前記ブロック共重合体(a )、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に対して1ppm〜2重量%の範囲内である。
i’)[ブロック共重合体(a )の重量]:[高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物の重量]=10:90〜90:10である。
ii ’)有機ジイソシアネート化合物に由来する窒素原子含有量が、前記高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に基づいて1〜6.5重量%の範囲内である。
iii ’)化合物(b)の使用量が、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネ ート化合物の反応物と前記ブロック共重合体(a )の合計重量に対して0.1ppm〜0.2重量%の範囲内である。
iv ’)化合物(c)の添加量が、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物と前記ブロック共重合体(a )の合計重量に対して1ppm〜2重量%の範囲内である。
【0010】
特開平11−323073号公報の記載によれば、成分(2)として使用されるブロック共重合体は、(1)芳香族ビニル化合物−共役ジエン系ブロック共重合体またはその水素添加物と(3)熱可塑性ポリウレタンの相容化剤として位置付けられている。また、同公報によれば、成分(2)として使用されるブロック共重合体は、<1>熱可塑性ポリウレタンと、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックを有し且つ末端に官能基、好ましくは水酸基を有するブロック共重合体またはその水素添加物を溶融条件下に混練して反応させ、得られた反応生成物から抽出・回収する方法や<2>押出機中などで高分子ジオール、有機ジイソシアネート化合物および鎖伸長剤を反応させて熱可塑性ポリウレタンを製造する際の反応の最初にまたは反応の途中に、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックを有し且つ末端に官能基、好ましくは水酸基を有するブロック共重合体またはその水素添加物を添加して反応させ、得られた反応生成物から抽出・回収する方法によって製造できると説明されている。
本発明者が得た上記の知見は、特開平11−323073号公報の記載からは予想できないものであった。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するブロック共重合体(a)は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックを有するブロック共重合体またはその水素添加物からなる付加重合系ブロック(イ)とポリウレタンブロック(ロ)を有するブロック共重合体である。
【0012】
ブロック共重合体(a)における付加重合系ブロック(イ)とポリウレタンブロック(ロ)の結合形態は特に制限されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはそれらが組合わさった結合形態のいずれであってもよいが、直鎖状の結合形態であることが好ましい。
ブロック共重合体(a)の構造は、上記の付加重合系ブロック(イ)をαで表し、ポリウレタンブロック(ロ)をβで表すと、式;α−β、α−β−α、β−α−β等の様々な形態を取り得るが、α−β型のジブロック型の構造であることが好ましい。ジブロック型のブロック共重合体(a)を使用すると、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性などの物性がより優れた熱可塑性重合体組成物を得ることができる。
【0013】
また、ブロック共重合体(a)が付加重合系ブロック(イ)を2個以上含有する場合、付加重合系ブロック(イ)は互いに同じ内容のブロックであってもよいし、異なる内容のブロックであってもよい。また、ブロック共重合体(a)が2個以上のポリウレタンブロック(ロ)を含有する場合、ポリウレタンブロック(ロ)は互いに同じ内容のブロックであってもよいし、異なる内容のブロックであってもよい。例えば、α−β−αで表されるトリブロック構造における2個のα〔付加重合系ブロック(イ)〕、あるいはβ−α−βで表されるトリブロック構造における2個のβ〔ポリウレタンブロック(ロ)〕は、それらを構成する構造単位の種類、その結合形式、数平均分子量などが同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0014】
ブロック共重合体(a)における、付加重合系ブロック(イ)とポリウレタンブロック(ロ)の重量割合は、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性などの物性がより優れた熱可塑性重合体組成物を得ることができることから、付加重合系ブロック(イ)/ポリウレタンブロック(ロ)=95/5〜10/90の範囲内であることが好ましく、付加重合系ブロック(イ)/ポリウレタンブロック(ロ)=90/10〜10/90の範囲内であることがより好ましく、付加重合系ブロック(イ)/ポリウレタンブロック(ロ)=80/20〜20/80の範囲内であることがさらに好ましく、付加重合系ブロック(イ)/ポリウレタンブロック(ロ)=70/30〜30/70の範囲内であることが特に好ましい。
【0015】
付加重合系ブロック(イ)における芳香族ビニル化合物系重合体ブロックを構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、1−ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、インデン、アセトナフチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、メトキシスチレンなどの芳香族ビニル化合物を挙げることができる。芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、1種類の芳香族ビニル化合物から構成されていてもよいし、2種以上の芳香族ビニル化合物から構成されていてもよい。芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、スチレンおよび/またはα−メチルスチレンから誘導される構造単位より主としてなるものが好ましい。
芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、芳香族ビニル化合物からなる構造単位とともに、必要に応じて他の共重合性単量体からなる構造単位を少量含有していてもよい。他の共重合性単量体からなる構造単位の含有量は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックの重量に基づいて30重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。他の共重合性単量体としては、例えば、1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、メチルビニルエーテルなどを挙げることができる。
【0016】
また、付加重合系ブロック(イ)における共役ジエン系重合体ブロックを構成する共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどを挙げることができる。共役ジエン系重合体ブロックは、1種類の共役ジエン系化合物から構成されていてもよいし、2種以上の共役ジエン系化合物から構成されていてもよい。共役ジエン系重合体ブロックが2種以上の共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有している場合、それらの結合形態はランダム、テーパー、一部ブロック状のいずれであってもよいし、さらにそれらが混在していてもよい。
【0017】
付加重合系ブロック(イ)における共役ジエン系重合体ブロックは水素添加されていなくても、一部が水素添加されていても、または全部が水素添加されていてもよい。共役ジエン系重合体ブロックの水素添加率としては、耐熱性、耐候性および耐光性の観点から、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。
【0018】
溶融成形性に優れた熱可塑性重合体組成物を得る場合には、付加重合系ブロック(イ)における共役ジエン系重合体ブロックが、水素添加されていてもよいイソプレン重合体ブロック、水素添加されていてもよいブタジエン重合体ブロックまたは水素添加されていてもよいイソプレンとブタジエンの共重合体ブロックであることが好ましい。
【0019】
さらに、付加重合系ブロック(イ)における共役ジエン系重合体ブロックが、水素添加されていてもよいイソプレン重合体ブロックまたは水素添加されていてもよいイソプレンとブタジエンの共重合体ブロックであり、かつ、該ブロックに含まれる1,2−結合および3,4−結合の合計の割合が30モル%以上、好ましくは40モル%以上である場合には、常温付近において損失係数の値が大きく、かつ広い温度範囲にわたって大きな損失係数の値を保持する制振性能および溶融成形性に優れた熱可塑性重合体組成物が得られる。
また、付加重合系ブロック(イ)における共役ジエン系重合体ブロックが、水素添加されていてもよいブタジエン重合体ブロックであり、かつ、該ブロックに含まれる1,2−結合の割合が60モル%以上、好ましくは80モル%以上である場合にも、常温付近において損失係数の値が大きく、かつ広い温度範囲にわたって大きな損失係数の値を保持する制振性能および溶融成形性に優れた熱可塑性重合体組成物が得られる。
【0020】
付加重合系ブロック(イ)における芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとの結合形態は特に制限されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはそれらが組合わさった結合形態のいずれであってもよいが、直鎖状の結合形態であることが好ましい。
【0021】
付加重合系ブロック(イ)は、上記の芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(以下、Xで表すことがある)および共役ジエン系重合体ブロック(以下、Yで表すことがある)から構成されるが、その構造としては、式;(X−Y)−X、(X−Y)、Y−(X−Y)(式中、m、nおよびpはそれぞれ1以上の整数を示す)などで表されるブロック共重合体の形態を挙げることができる。これらの中でも、非粘着性、溶融成形性および溶融接着性などの種々の物性に優れた熱可塑性重合体組成物を確実に得る場合には、付加重合系ブロック(イ)が、2個以上の芳香族ビニル化合物系重合体ブロックXと1個以上の共役ジエン系重合体ブロックYが直鎖状に結合したブロック共重合体の形態であることが好ましく、式:X−Y−Xで表されるトリブロック共重合体の形態であることがより好ましい。
【0022】
付加重合系ブロック(イ)が、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックXを2個以上含有する場合、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは互いに同じ内容の重合体ブロックであってもよいし、異なる内容の重合体ブロックであってもよい。また、付加重合系ブロック(イ)が、2個以上の共役ジエン系重合体ブロックYを含有する場合、共役ジエン系重合体ブロックは互いに同じ内容の重合体ブロックであってもよいし、異なる内容の重合体ブロックであってもよい。例えば、X−Y−Xで表されるトリブロック構造における2個の芳香族ビニル化合物系重合体ブロックX、或いはY−X−Yで表されるトリブロック構造における2個の共役ジエン系重合体ブロックYは、それらを構成する芳香族ビニル化合物または共役ジエン化合物の種類、その結合形式、重合体ブロックの数平均分子量などが同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0023】
付加重合系ブロック(イ)における芳香族ビニル化合物から誘導される構造単位の含有量は、付加重合系ブロック(イ)を構成する全構造単位に対して5〜90重量%であることが好ましい。芳香族ビニル化合物から誘導される構造単位の含有量が上記の範囲内にある付加重合系ブロック(イ)を含有するブロック共重合体(a)を使用すると、非粘着性、溶融成形性および溶融接着性などの種々の物性に優れた熱可塑性重合体組成物を得ることができる。付加重合系ブロック(イ)における芳香族ビニル化合物から誘導される構造単位の含有量は、付加重合系ブロック(イ)を構成する全構造単位に対して10〜90重量%であることがより好ましい。
【0024】
なお、オレフィン系重合体に対する接着強度の大きな熱可塑性重合体組成物を得たい場合は、付加重合系ブロック(イ)における芳香族ビニル化合物から誘導される構造単位の含有量が5〜60重量%であることが好ましく、10〜50重量%であることがより好ましい。また、スチレン系重合体に対する接着強度の大きな熱可塑性重合体組成物を得たい場合は、付加重合系ブロック(イ)における芳香族ビニル化合物から誘導される構造単位の含有量が40〜90重量%であることが好ましく、50〜90重量%であることがより好ましい。
【0025】
付加重合系ブロック(イ)における、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックおよび共役ジエン系重合体ブロックの数平均分子量は特に制限されるものではないが、水素添加前の状態で、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックの数平均分子量が2,500〜75,000の範囲内であり、共役ジエン系重合体ブロックの数平均分子量が10,000〜150,000の範囲内であることが好ましい。数平均分子量が上記の範囲内にある芳香族ビニル化合物系重合体ブロックまたは共役ジエン系重合体ブロックから構成される付加重合系ブロック(イ)を含有するブロック共重合体(a)を使用すると、非粘着性、溶融成形性および溶融接着性などの種々の物性がより優れた熱可塑性重合体組成物を得ることができる。
また、付加重合系ブロック(イ)の全体の数平均分子量は、10,000〜300,000の範囲内であることが好ましい。かかる数平均分子量の付加重合系ブロック(イ)を含有するブロック共重合体(a)を使用すると、非粘着性、溶融成形性および溶融接着性などの種々の物性がより優れた熱可塑性重合体組成物を得ることができる。付加重合系ブロック(イ)の数平均分子量は、20,000〜100,000の範囲内であることがより好ましい。
【0026】
ブロック共重合体(a)におけるポリウレタンブロック(ロ)は、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物から構成されるブロックである。
【0027】
ポリウレタンブロック(ロ)を構成する高分子ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、共役ジエン重合体系ポリオール、ひまし油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを挙げることができる。これらの高分子ポリオールは1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。高分子ポリオールとしては、これらのうちでも、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィン系ポリオールから選ばれる1種または2種以上が好ましく、ポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールがより好ましい。
【0028】
上記のポリエステルポリオールは、例えば、ポリオール成分とポリカルボン酸成分を直接エステル化反応またはエステル交換反応に供するか、あるいはポリオール成分を開始剤としてラクトンを開環重合させることによって製造することができる。
【0029】
ポリエステルポリオールの製造に用いるポリオール成分としては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているもの、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の炭素数2〜15の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロオクタンジメタノール等の脂環式ジオール;1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香族ジオール;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の1分子当たりの水酸基数が3以上である多価アルコールなどが挙げられる。ポリエステルポリオールの製造に当たっては、これらのポリオール成分は、1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのうちでも、ポリエステルポリオールの製造に当たっては、2−メチル−1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオールなどのメチル基を側鎖として有する炭素数5〜12の脂肪族ジオールをポリオール成分として使用することが好ましい。特に、これらのメチル基を側鎖として有する炭素数5〜12の脂肪族ジオールをポリエステルポリオールの製造に用いる全ポリオール成分の30モル%以上の割合で使用することが好ましく、全ポリオール成分の50モル%以上の割合で使用することがより好ましい。
【0030】
また、ポリエステルポリオールの製造に用いるポリカルボン酸成分としては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているポリカルボン酸成分、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、メチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、トリメチルアジピン酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸等の炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3官能以上の多価カルボン酸;それらのエステルまたはそれらの酸無水物等のエステル形成性誘導体などを挙げることができる。これらのポリカルボン酸成分は、1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸、特にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸の1種または2種以上がポリカルボン酸成分として好ましい。
【0031】
また、ポリエステルポリオールの製造に用いる前記のラクトンとしては、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンなどを挙げることができる。上記したポリエーテルポリオールとしては、例えば、環状エーテルを開環重合して得られるポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などを挙げることができる。ポリエーテルポリオールとしては1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、ポリ(テトラメチレングリコール)および/またはポリ(メチルテトラメチレン)グリコールが好ましい。
【0032】
上記したポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオール成分とジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート等のカーボネート化合物との反応によって得られるものを挙げることができる。
ポリカーボネートポリオールを構成するポリオール成分としては、ポリエステルポリオールの構成成分として例示したポリオール成分を使用することができる。また、ジアルキルカーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを挙げることができ、アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネートなどを挙げることができ、ジアリールカーボネートとしては、例えば、ジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
【0033】
上記したポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオール成分、ポリカルボン酸成分およびカーボネート化合物を同時に反応させて得られたもの、あるいは予め合成したポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールをカーボネート化合物と反応させて得られたもの、または予め合成したポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールをポリオール成分およびポリカルボン酸成分と反応させて得られたものなどを挙げることができる。
【0034】
上記した共役ジエン重合体系ポリオールまたはポリオレフィン系ポリオールとしては、重合開始剤の存在下に、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン、または共役ジエンと他のモノマーをリビング重合法などにより重合した後に、重合活性末端にエポキシ化合物を反応させて得られる、ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリ(ブタジエン/イソプレン)ポリオール、ポリ(ブタジエン/アクリロニトリル)ポリオール、ポリ(ブタジエン/スチレン)ポリオール、あるいはそれらの水素添加物などを挙げることができる。共役ジエン重合体系ポリオールまたはポリオレフィン系ポリオールは、1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記した高分子ポリオールの数平均分子量は、500〜10,000の範囲内であることが必要である。かかる数平均分子量を有する高分子ポリオールからなるポリウレタンブロック(ロ)を有するブロック共重合体(a)を使用することにより、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性などの物性に優れた熱可塑性重合体組成物を確実に得ることができる。高分子ポリオールの数平均分子量は、700〜8,000の範囲内であることが好ましく、800〜5,000の範囲内であることがより好ましい。なお、本明細書でいう高分子ポリオールの数平均分子量は、JIS K−157に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0036】
ポリウレタンブロック(ロ)を構成する鎖伸長剤としては、ポリウレタンの製造に従来から使用されている鎖伸長剤を使用することができるが、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量400以下の低分子化合物であることが好ましい。
鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4(または5)−シクロオクタンジメタノール、3(または4),8(または9)−ジヒドロキシメチルトリシクロ(5,2,1,02,6)デカン等のジオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコール等のアミノアルコール類などが挙げられる。これらの鎖伸長剤は1種類のものを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。鎖伸長剤としては、これらのうちでも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールが好ましく、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールがより好ましい。
【0037】
また、鎖伸長剤として、分岐を分子内に有する分子量が100〜400の脂肪族ジオールを使用すると、常温付近において損失係数の値が大きく、かつ広い温度範囲にわたって大きな損失係数の値を保持する制振性能に優れた熱可塑性重合体組成物が得られる。このような分岐を分子内に有する脂肪族ジオールとしては、メチル基を側鎖として有する炭素数5〜12の脂肪族ジオールが好ましい。
【0038】
また、ポリウレタンブロック(ロ)を構成する有機ジイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの製造に従来から使用されている有機ジイソシアネート化合物、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。有機ジイソシアネート化合物は1種類のものを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。有機ジイソシアネート化合物としては、これらのうちでも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0039】
ポリウレタンブロック(ロ)を構成する、上記した高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の割合については、有機ジイソシアネート化合物由来の窒素原子含有量が、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に基づいて1〜6.5重量%の範囲内であることが必要である。有機ジイソシアネート化合物由来の窒素原子含有量を上記の範囲とすることにより、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性などの物性が優れた熱可塑性重合体組成物を得ることができる。有機ジイソシアネート化合物由来の窒素原子含有量は、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に基づいて1〜6重量%の範囲内であることが好ましく、1.3〜5.5重量%の範囲内であることがより好ましく、1.6〜5重量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0040】
ポリウレタンブロック(ロ)の数平均分子量は200〜300,000の範囲内であることが好ましい。数平均分子量がかかる範囲内であるポリウレタンブロック(ロ)を有するブロック共重合体(a)を使用することにより、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性などの種々の特性がより優れた熱可塑性重合体組成物を得ることができる。ポリウレタンブロック(ロ)の数平均分子量は、500〜150,000の範囲内であることがより好ましく、1,000〜100,000の範囲内であることがさらに好ましい。
また、ポリウレタンブロック(ロ)の硬度は、同ブロックに対応するポリウレタンのJIS A硬度で表現した場合、30〜99の範囲内であることが好ましく、45〜97の範囲内であることがより好ましく、60〜95の範囲内であることがさらに好ましい。
【0041】
ブロック共重合体(a)は、付加重合系ブロック(イ)に対応する構造を有し、かつ高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1つの成分と反応し得る官能基を末端に有するブロック共重合体、すなわち、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックを含有し、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1つの成分と反応し得る官能基を末端に有するブロック共重合体またはその水素添加物(以下、官能基含有ブロック共重合体と略称することがある)の存在下にポリウレタン形成反応を行い、官能基含有ブロック共重合体の主鎖上にポリウレタンブロック(ロ)を形成することによって製造することができる。また、ブロック共重合体(a)は、官能基含有ブロック共重合体とポリウレタンブロック(ロ)に対応するポリウレタンを反応させることによって製造することもできる。
【0042】
官能基含有ブロック共重合体が有する、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1つの成分と反応し得る官能基としては、例えば、高分子ポリオールおよび/または鎖伸長剤と反応し得る基として、カルボキシル基、酸無水物基、チオカルボキシル基、イソシアネート基などが、また、有機ジイソシアネート化合物と反応し得る基として、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、酸無水物基、チオカルボキシル基、イソシアネート基などが挙げられる。官能基含有ブロック共重合体は、これらの官能基を2種類以上含有していてもよい。
官能基含有ブロック共重合体が有する官能基としては、有機ジイソシアネート化合物と反応し得る官能基が好ましく、ブロック共重合体(a)の製造に際し、均一なポリウレタン形成反応が行えることから、水酸基がより好ましい。
【0043】
また、官能基含有ブロック共重合体において、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1つの成分と反応し得る官能基は、該官能基含有ブロック共重合体の末端に位置している。官能基を末端に有する官能基含有ブロック共重合体を使用すると、ブロック共重合体(a)を製造する際に、ポリウレタン形成反応による主鎖延長に該官能基が関与する。こうして得られたブロック共重合体(a)を使用すると、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性などの物性に優れた熱可塑性重合体組成物を確実に得ることができる。
【0044】
官能基含有ブロック共重合体における、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1つの成分と反応し得る官能基の数は、官能基含有ブロック共重合体1分子当たりの平均で0.6以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましい。
【0045】
官能基含有ブロック共重合体の製造方法は、何ら限定されるものではないが、例えば、アニオン重合やカチオン重合などのイオン重合法、シングルサイト重合法、ラジカル重合法などにより製造することができる。アニオン重合法による場合は、例えば、アルキルリチウム化合物などを重合開始剤として用いて、n−ヘキサンやシクロヘキサンなどの不活性有機溶媒中で、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物を逐次重合させ、所望の分子構造および分子量に達した時点で、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド等のオキシラン骨格を有する化合物;ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン(ピバロラクトン)、メチルバレロラクトン等のラクトン化合物などを付加させ、次いで、アルコール類、カルボン酸類、水などの活性水素含有化合物を添加して重合を停止させることにより製造することができる。そして、得られたブロック共重合体を、好ましくは、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの不活性有機溶媒中でアルキルアルミニウム化合物とコバルト、ニッケル等からなるチーグラー触媒などの水素添加反応触媒の存在下に、反応温度20〜150℃、水素圧力1〜150kg/cmの条件下で水素添加することによって、水素添加物としてもよい。また、所望により、水素添加前または水素添加後のブロック共重合体を、無水マレイン酸等によって変性してもよい。官能基含有ブロック共重合体は、その製造工程にもよるが、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックを有し、上記した官能基を有していないブロック共重合体を包含し得る。
官能基含有ブロック共重合体としては、市販されているものを使用することも可能である。
【0046】
官能基含有ブロック共重合体の数平均分子量は、15,000〜300,000の範囲内であることが好ましく、20,000〜100,000の範囲内であることがより好ましい。なお、官能基含有ブロック共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で測定した値である。
また、官能基含有ブロック共重合体の230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)は、0.01〜100g/10分の範囲内であることが好ましい。かかるメルトフローレート(MFR)を有する官能基含有ブロック共重合体を使用することにより、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性などの物性が優れる熱可塑性重合体組成物を得ることができる。官能基含有ブロック共重合体の230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)は、0.05〜80g/10分の範囲内であることがより好ましい。なお、官能基含有ブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)は、ASTM D−1238に準拠して測定した値である。
【0047】
ポリウレタンブロック(ロ)または該ポリウレタンブロックに対応するポリウレタンを形成するに当たっては、高分子ポリオールおよび鎖伸長剤が有している活性水素原子1モルに対し、有機ジイソシアネート化合物が有しているイソシアネート基が0.9〜1.3モルとなるような割合で各成分を使用することが好ましい。上記の割合で高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物を使用して得られるポリウレタンブロック(ロ)を有するブロック共重合体(a)を使用すると、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性などの物性がより優れた熱可塑性重合体組成物を得ることができる。
【0048】
また、ポリウレタンブロック(ロ)または該ポリウレタンブロックに対応するポリウレタンを形成するに当たっては、有機ジイソシアネート化合物由来の窒素原子含有量が、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に基づいて1〜6.5重量%の範囲内となる割合で各成分を使用する。
上記の割合で高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物を使用して得られるポリウレタンブロック(ロ)を有するブロック共重合体(a)を使用すると、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性などの物性がより優れた熱可塑性重合体組成物を得ることができる。有機ジイソシアネート化合物由来の窒素原子含有量は、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に基づいて1〜6重量%の範囲内であることが好ましく、1.3〜5.5重量%の範囲内であることがより好ましく、1.6〜5重量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0049】
ブロック共重合体(a)の製造方法としては、<1>官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシネート化合物を反応させる方法、または<2>高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシネート化合物の反応物と官能基含有ブロック共重合体を反応させる方法、のいずれかの方法による
【0050】
<2>の方法における反応物は、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応混合物であってもよいし、該反応混合物を常法に従って後処理したものであってもよい。また、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物から形成されるものであれば、市販品として入手可能なポリウレタンを上記の反応物として使用することもできる。高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物は、これらから形成されるポリウレタン以外に、各成分の使用量、反応率、その他の反応条件等に応じて未反応の高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物を含有することがあるが、その場合には、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物から形成されるポリウレタンと官能基含有ブロック共重合体の官能基との反応、および高分子ポリオール、鎖伸長剤、有機ジイソシアネート化合物と官能基含有ブロック共重合体の官能基の反応が進行する。
【0051】
上記<1>の方法によってブロック共重合体(a)を製造する場合、官能基含有ブロック共重合体と、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の割合は、
[官能基含有ブロック共重合体の重量]:[高分子ポリオールの重量+鎖伸長剤の重量+有機ジイソシアネート化合物の重量]=10:90〜90:10の範囲内であ、同重量比が20:80〜80:20の範囲内であることが好ましく、30:70〜70:30の範囲内であることがより好ましい。
また、上記<2>の方法によってブロック共重合体(a)を製造する場合、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物と官能基含有ブロック共重合体の割合は、
[官能基含有ブロック共重合体の重量]:[高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物の重量]=10:90〜90:10の範囲内であ、同重量比が20:80〜80:20の範囲内であることが好ましく、30:70〜70:30の範囲内であることがより好ましい。
【0052】
上記の手法により、官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物、または高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物と官能基含有ブロック共重合体を反応させて得られた重合体組成物(以下、ブロック共重合体組成物と略称する)は、ブロック共重合体(a)以外に、未反応の官能基含有ブロック共重合体、未反応の高分子ポリオール、未反応の鎖伸長剤並びに未反応の有機ジイソシアネート化合物を含有することがある。これらの含有量は、反応に使用した原料の割合、反応温度等の反応条件によって変化する。
【0053】
また、上記したブロック共重合体組成物は、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物から形成されるポリウレタンを含有する場合がある。さらに、上記したブロック共重合体組成物は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックを有し、官能基を有しないブロック共重合体(付加重合系ブロック(イ)に相当する重合体である)を含み得る。
【0054】
ブロック共重合体(a)は、例えば、上記<1><2>の方法で得られたブロック共重合体組成物を、必要に応じてペレット状とし、さらに適当な大きさに粉砕した後、ジメチルホルムアミドなどのポリウレタンの良溶媒で処理して高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネートから形成され、官能基含有ブロック共重合体とは反応しなかったポリウレタン(反応生成物中に存在している場合)を除去し、次いで、シクロヘキサンなどの官能基含有ブロック共重合体の良溶媒で処理して未反応の官能基含有ブロック共重合体および付加重合系ブロック(イ)に相当する重合体(反応生成物中に存在している場合)を抽出・除去し、残った固形物を乾燥することにより、取得することができる。
【0055】
なお、本発明では、発明の趣旨を損なわない限り、上記<1><2>の方法で得られたブロック共重合体組成物をそのまま使用してもよい。従って、本発明の熱可塑性重合体組成物は、ブロック共重合体(a)の他に、上記した重合体あるいはそれと同種の重合体を含有することができる。すなわち、本発明の熱可塑性重合体組成物は、熱可塑性ポリウレタンを含有することができる。熱可塑性ポリウレタンとしては、上記した高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物から形成されるものを使用することができ、ブロック共重合体(a)の製造時に生成するポリウレタンに限定されるものではない。
【0056】
熱可塑性ポリウレタンの含有量は、ブロック共重合体(a)の100重量部に対して1000重量部以下であることが好ましく、500重量部以下であることがより好ましく、300重量部以下であることがさらに好ましい。
【0057】
また、本発明の熱可塑性重合体組成物は、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックを有し、官能基を有しないブロック共重合体を含み得る。かかるブロック共重合体としては、一般に、スチレン系エラストマーとして知られているものを使用することができ、官能基含有ブロック共重合体中に含まれているものに限定されるわけではない。
【0058】
芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックを有し、官能基を有していないブロック共重合体の含有量は、ブロック共重合体(a)の100重量部に対して500重量部以下であることが好ましく、300重量部以下であることがより好ましい。
【0059】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、上記したブロック共重合体(a)に加えて有機スズ系化合物、有機チタン系化合物および第3級アミンから選ばれる少なくとも1種の化合物(b)を含有する。かかる化合物は、一般にウレタン化反応触媒として知られている化合物である。上記した化合物の内、有機スズ系化合物、有機チタン系化合物のうちの1種または2種以上が好ましく用いられ、有機スズ系化合物がより好ましく用いられる。
【0060】
有機スズ系化合物としては、例えば、オクチル酸スズ、モノメチルスズメルカプト酢酸塩、モノブチルスズトリアセテート、モノブチルスズモノオクチレート、モノブチルスズモノアセテート、モノブチルスズマレイン酸塩、モノブチルスズマレイン酸ベンジルエステル塩、モノオクチルスズマレイン酸塩、モノオクチルスズチオジプロピオン酸塩、モノオクチルスズトリス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)、モノフェニルスズトリアセテート、ジメチルスズマレイン酸エステル塩、ジメチルスズビス(エチレングリコールモノチオグリコレート)、ジメチルスズビス(メルカプト酢酸)塩、ジメチルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸)塩、ジメチルスズビス(イソオクチルメルカプトアセテート)、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジステアレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレイン酸塩、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジブチルスズマレイン酸エステル塩、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸)塩、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸アルキルエステル)塩、ジブチルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸アルコキシブチルエステル)塩、ジブチルスズビスオクチルチオグリコールエステル塩、ジブチルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸)塩、ジオクチルスズマレイン酸塩、ジオクチルスズマレイン酸エステル塩、ジオクチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズビス(イソオクチルメルカプトアセテート)、ジオクチルスズビス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)、ジオクチルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸)塩等のカルボン酸塩やメルカプトカルボン酸塩などを挙げることができる。有機スズ系化合物としては、これらのうちでも、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート等のジアルキルスズジアシレート;ジブチルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸エトキシブチルエステル)塩等のジアルキルスズビスメルカプトカルボン酸エステル塩などが好ましい。
【0061】
有機チタン系化合物としては、例えば、チタン酸;テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネート、テトラステアリルチタネート等のテトラアルコキシチタン化合物;ポリヒドロキシチタンステアレート等のチタンアシレート化合物;チタンアセチルアセテート、トリエタノールアミンチタネート、チタンアンモニウムラクテート、チタンエチルラクテート、チタンオクチレングリコール等のチタンキレート化合物などを挙げることができる。
【0062】
また、上記した3級アミン系化合物としては、例えば、トリエチレンジアミン、N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノ)エチルピペラジン、N−メチルモルホリン等の環状アミン;N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン等のトリアミン;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン等のジアミン;トリエチルアミン等のモノアミン;N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−2−プロパノール、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のアルコールアミンなどを挙げることができる。
【0063】
化合物(b)の使用量は、ブロック共重合体(a)の重量に基づいて0.1ppm〜0.2重量%の範囲内である。化合物(b)の使用量がブロック共重合体(a)の重量に基づいて0.1ppm未満の場合には、溶融成形性、溶融接着性などに優れる熱可塑性重合体組成物を得ることが困難になる。また、化合物(b)の含有量が0.2重量%を越える場合には、得られる熱可塑性重合体組成物の溶融成形性(特に溶融滞留安定性)が低下する。
化合物(b)の使用量は、ブロック共重合体(a)の重量に基づいて、0.5ppm〜0.02重量%の範囲内であることが好ましく、1ppm〜0.01重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0064】
また、本発明の熱可塑性重合体組成物は、リン系化合物および/またはフェノール系化合物(c)を含有する。上記した化合物(b)として有機スズ系化合物や有機チタン系化合物を使用する場合、化合物(c)としてはリン系化合物が好ましく、化合物(b)として三級アミン化合物を使用する場合、化合物(c)としてはフェノール系化合物が好ましい。
上記したリン系化合物としては、以下の一般式(1)〜(3)で示される化合物が好ましい。
【0065】
【化1】
Figure 0003923385
【0066】
(式中、aおよびjはそれぞれ0または1を表し、R1〜R3はそれぞれ水素原子または一価の炭化水素基を表す。但し、aが1の場合には、R1〜R3のうち少なくとも1つは脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基である。)
【0067】
【化2】
Figure 0003923385
【0068】
(式中、b、c、kおよびlはそれぞれ0または1を表し、R4および
5はそれぞれ一価の炭化水素基を表す。)
【0069】
【化3】
Figure 0003923385
【0070】
(式中、d、e、mおよびnはそれぞれ0または1を表し、R6〜R9はそれぞれ一価の炭化水素基を表し、R10は二価の炭化水素基を表す。但し、dとeがともに1の場合には、R6〜R10のうち少なくとも1つは脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基である。)
【0071】
ここで、R〜Rが示す一価の炭化水素基としては、炭素数1〜30の炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イソデシル基、オクタデシル基等の脂肪族炭化水素基;シクロヘキシル基等の脂環式炭化水素基;フェニル基、ノニルフェニル基、クレジル基、2,4−ジ−t−ブチルフェニル基、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル基等の芳香族炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基または水酸基などの置換基を芳香族環上に有していてもよい。
また、R10が表す二価の炭化水素基としては、炭素数1〜50の二価の炭化水素基が好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の二価の脂肪族炭化水素基;シクロヘキシレン基等の二価の脂環式炭化水素基;フェニレン基、ビフェニレン基、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)基、4,4’−イソプロピリデンジフェニル基等の二価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。二価の芳香族炭化水素基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基または水酸基などの置換基を芳香族環上に有していてもよい。
【0072】
式(1)で示されるリン化合物としては、例えば、亜リン酸、リン酸;メチルホスファイト、エチルホスファイト、イソプロピルホスファイト、ブチルホスファイト、2−エチルヘキシルホスファイト、ラウリルホスファイト、オレイルホスファイト、ステアリルホスファイト、フェニルホスファイト、ジメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、ジイソプロピルホスファイト、ジブチルホスファイト、ビス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジラウリルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジステアリルホスファイト、ジフェニルホスファイト、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、トリス(デシル)ホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリス(オクタデシル)ホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、フェニルジイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト等の亜リン酸エステル;メチルホスフェート、エチルホスフェート、イソプロピルホスフェート、ブチルホスフェート、2−エチルヘキシルホスフェート、ラウリルホスフェート、オレイルホスフェート、ステアリルホスフェート、フェニルホスフェート、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジラウリルホスフェート、ジオレイルホスフェート、ジステアリルホスフェート、ジフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(デシル)ホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリス(オクタデシル)ホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート等のリン酸エステル;フェニル亜ホスホン酸ジメチル、フェニル亜ホスホン酸ジエチル、フェニル亜ホスホン酸ジブチル、フェニル亜ホスホン酸ジオクチル、フェニル亜ホスホン酸ジドデシル、フェニル亜ホスホン酸ビス(オクタデシル)、フェニル亜ホスホン酸ジシクロヘキシル、フェニル亜ホスホン酸ジフェニル等の亜ホスホン酸誘導体のジエステル;フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジブチル、フェニルホスホン酸ジオクチル、フェニルホスホン酸ジドデシル、フェニルホスホン酸ビス(オクタデシル)、フェニルホスホン酸ジシクロヘキシル、フェニルホスホン酸ジフェニル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸誘導体のジエステルなどが挙げられる。
【0073】
式(2)で示されるリン化合物としては、例えば、ジドデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等の亜リン酸トリエステル;ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスフェート等のリン酸トリエステルなどが挙げられる。
【0074】
また、式(3)で示されるリン化合物としては、例えば、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールテトラキス(トリデシル)ジホスファイト等の亜リン酸トリエステル;テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスホナイト等の亜ホスホン酸誘導体のジエステルなどが挙げられる。
【0075】
リン系化合物としては、上記の化合物のうちの1種または2種以上を用いることができる。
【0076】
リン系化合物としては、上記の化合物の中でも、リン酸エステル、ホスホン酸誘導体のジエステルが好ましく、ラウリルホスフェート、オレイルホスフェート、ステアリルホスフェート、ジラウリルホスフェート、ジオレイルホスフェート、ジステアリルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスフェート、フェニルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルなどが特に好ましい。
【0077】
また、上記のフェノール系化合物としては、例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−ブチル−6−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジペンチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエーテル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデセン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−(t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン等のヒンダードフェノール系化合物;2−ヒドロキシ−4−オクチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン等のヒドロキシベンゾフェノン系化合物;2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス{4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]}等のヒドロキシベンゾトリアゾール系化合物;4−t−ブチルフェニルサリチル酸等のサリチル酸系化合物、4−t−ブチルパラオキシ安息香酸フェニル等のオキシ安息香酸系化合物;3,4−ジヒドロキシ安息香酸オクチル等のカテコール系化合物;3,5−ジヒドロキシ安息香酸オクチル等のレゾルシノール系化合物;4,4’−オクチル−2,2’−ビフェノール等のビフェノール系化合物;2,2’−ビナフトール等のビナフトール系化合物などが挙げられる。フェノール系化合物としては、上記の化合物のうちの1種または2種以上を用いることができる。
【0078】
化合物(c)の使用量は、ブロック共重合体(a)の重量に基づいて1ppm〜2重量%の範囲内である。化合物(c)の使用量がブロック共重合体(a)の重量に基づいて1ppm未満の場合には、得られた熱可塑性重合体組成物の溶融成形性(特に溶融滞留安定性)が低下する。一方、化合物(c)の使用量がブロック共重合体(a)の重量に基づいて2重量%を越える場合には、熱可塑性重合体組成物から得られる成形品の表面状態を損なうのみならず、本発明の熱可塑性重合体組成物を、特に積層構造体などの成形品の製造に使用する場合には溶融接着性の低下を招く傾向がある。
化合物(c)の使用量は、ブロック共重合体(a)の重量に基づいて5ppm〜0.2重量%の範囲内であることが好ましく、10ppm〜0.1重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0079】
化合物(c)と化合物(b)の割合は、化合物(c)としてリン系化合物を使用する場合は、化合物(b)の金属原子1モルまたは窒素原子1モルに対して、リン系化合物中のリン原子が0.1〜500モルとなる範囲内で使用することが好ましく、0.2〜200モルとなる範囲内で使用することがより好ましく、0.5〜100モルとなる範囲内で使用することがさらに好ましい。
【0080】
また、化合物(c)として前記のフェノール系化合物を使用する場合は、化合物(b)の金属原子1モルまたは窒素原子1モルに対して、フェノール系化合物の水酸基が1〜5000モルとなる範囲内で使用することが好ましく、2〜2000モルとなる範囲内で使用することがより好ましく、5〜1000モルとなる範囲内で使用することがさらに好ましい。
【0081】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で必要に応じて、ブロック共重合体(a)とは異なるスチレン系重合体またはオレフィン系重合体よりなる重合体(d)を含有していてもよい。重合体(d)の使用量は、通常、ブロック共重合体(a)の重量に基づいて1〜1000重量%の範囲である。重合体(d)を配合することにより、得られる熱可塑性重合体組成物の非粘着性、溶融成形性および溶融接着性を一層向上させることができる場合がある。
【0082】
上記のスチレン系重合体としては、スチレン系単量体に由来する構造単位を10重量%以上含有する重合体が好ましく用いられ、スチレン系単量体に由来する構造単位を50重量%以上含有する重合体がより好ましく用いられる。スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、3,4−ジメチルスチレンなどが挙げられる。スチレン系重合体は前記したスチレン系単量体の1種または2種以上に由来する構造単位を有している。また、スチレン系重合体は、上記したスチレン系単量体に由来する構造単位と共に、90重量%以下、好ましくは50重量%以下であれば他のビニル系単量体に由来する構造単位を有していてもよい。他のビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体;アクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ドデシル、オクタデシルなどの炭素数1〜18のアルキルエステル;アクリル酸またはメタクリル酸のエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどのジオールエステル;酢酸やプロピオン酸などの炭素数1〜6のカルボン酸のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸;無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸の無水物;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのN置換マレイミド類;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンなどが挙げられる。スチレン系重合体はそれらのビニル系単量体の1種または2種以上に由来する構造単位を有していることができる。
【0083】
また、オレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィンの単独重合体、前記したオレフィンの2種以上からなるオレフィン共重合体、または前記したオレフィンの1種または2種以上と他のビニル系単量体の1種または2種以上との共重合体を挙げることができる。このオレフィン系重合体の具体例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体、プロピレン−アクリル酸共重合体、プロピレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。オレフィン系重合体は前記したオレフィン単独重合体およびオレフィン共重合体の1種または2種以上を用いることができる。
なお、所望により、スチレン系重合体およびオレフィン系重合体を併用することも可能である。
【0084】
また、本発明の熱可塑性重合体組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で必要に応じて、熱硬化性ポリウレタン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物;芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物およびオレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種との共重合体の樹脂を含有していてもよい。さらに、必要に応じ、パラフィン系オイル等の可塑剤、着色剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐加水分解性向上剤、防かび剤、抗菌剤、安定剤等の各種添加剤;ガラス繊維、ポリエステル繊維等の各種繊維;タルク、シリカ、木粉等の充填剤;各種カップリング剤などの任意の成分を含有していてもよい。
【0085】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、荷重490.3N(50kgf)、200℃の条件下でウレタン結合が解離平衡に到達した時点の熱可塑性重合体組成物の溶融粘度(ηa)と、荷重490.3N(50kgf)、200℃の条件下で滞留時間が60分となったときの熱可塑性重合体組成物の溶融粘度(ηa)の比率R(ηa/ηa)が0.9〜1.4の範囲内にあることを要する。比率Rが上記の関係を満足する場合、本発明の熱可塑性重合体組成物は、溶融成形性、特に溶融滞留安定性が良好なものとなる。
上記した比率R(ηa/ηa)は0.95〜1.3の範囲内にあることが好ましく、0.97〜1.2の範囲内にあることがより好ましい。
【0086】
溶融粘度の比率Rは、化合物(b)および(c)の使用割合、熱可塑性重合体組成物の製造時における化合物(b)および(c)の添加方法などを調整することによって、所望の範囲に設定することができる。
【0087】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、上記したブロック共重合体(a)、化合物(b)および(c)、並びに必要に応じて使用される重合体(d)またはその他の成分を使用して調製することができるが、溶融粘度の比率Rを上記した範囲とする必要があることから、ブロック共重合体(a)の製造を化合物(b)の存在下に行い、次いで化合物(c)を添加する以下に示す方法Aまたは方法Bによって調製される
方法A)
前記した官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物を化合物(b)の存在下に反応させて得られる生成物に、化合物(c)を添加する。
(方法B)
高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物と、前記した官能基含有ブロック共重合体を化合物(b)の存在下に反応させて得られる生成物に、化合物(c)を添加する。
【0088】
方法Aにおいては、化合物(b)は、官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応開始時に、その全量が反応系に存在していることが好ましいが、官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応開始後に、反応系中に添加してもよい。また、化合物(b)は、官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応開始時に使用量の一部を反応系に存在させ、反応開始後に残りを反応系に添加してもよい。化合物(b)は、単独で添加してもよいし、官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物などの原料のうち1者または2者以上に含有させておいてもよい。そういった方法の中でも高分子ポリオールに含有させておくことが好ましい。
【0089】
また、化合物(c)は、官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物を反応させて得られる生成物が所望の品質(特に溶融粘度)に到達した後に添加することが好ましい。
さらに、所望により使用される重合体(d)やその他の添加成分は、官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応開始時、または反応進行中、さらには、化合物(c)の添加後のいずれの段階で配合してもよい。
【0090】
また、方法Bにおいては、化合物(b)は、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物と官能基含有ブロック共重合体の反応開始時に、その全量が反応系に存在していることが好ましいが、該反応物と官能基含有ブロック共重合体の反応開始時に、使用量の一部を反応系に存在させ、反応開始後に残りを反応系に添加してもよい。また、化合物(b)は、単独で反応系に添加してもよいし、該反応物や官能基含有ブロック共重合体などに含有させておいてもよい。そういった方法の中でも、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物中に含有させておくことが好ましく、該反応物を形成する高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物などの原料のうち1者または2者以上に含有させておくことがより好ましく、高分子ポリオール中に含有させておくことが特に好ましい。
また、方法Aと同様、化合物(c)は、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物と官能基含有ブロック共重合体を反応させて得られる生成物が所望の品質(特に溶融粘度)に到達した後に添加することが好ましい。
【0091】
さらに、所望により使用される重合体(d)やその他の添加成分は、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物および官能基含有ブロック共重合体の反応開始時、または反応進行中、さらには、化合物(c)の添加後のいずれの段階で配合してもよい。
【0092】
上記した方法AおよびBのいずれの方法による場合でも、化合物(b)の使用量は、官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量、または高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物と官能基含有ブロック共重合体の合計重量に基づいて0.1ppm〜0.2重量%の範囲内であ、0.5ppm〜0.02重量%の範囲内であることが好ましく、1ppm〜0.01重量%の範囲内であることがより好ましい。また、化合物(c)の使用量は、官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量、または高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物と官能基含有ブロック共重合体の合計重量に基づいて1ppm〜2重量%の範囲内であ、5ppm〜0.2重量%の範囲内であることが好ましく、10ppm〜0.1重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0093】
本発明の熱可塑性重合体組成物の製造は、公知のウレタン化技術を採用して行うことができ、プレポリマー法またはワンショット法のいずれの方法で行ってもよい。
採用し得るポリウレタン形成反応の具体例としては、以下の〔1〕〜〔6〕の方法を挙げることができる。
〔1〕官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤および化合物(b)を混合して、例えば、40〜100℃に加熱し、得られた混合物に、該混合物における活性水素原子とイソシアネート基のモル比が好ましくは1:0.9〜1.3となる量で有機ジイソシアネート化合物を添加して短時間撹拌した後、例えば、80〜200℃に加熱してポリウレタン形成反応を実施し、次いで化合物(c)を添加して、さらに、例えば、50〜160℃で短時間撹拌して熱可塑性重合体組成物を製造する方法〔方法A〕。
〔2〕官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤、有機ジイソシアネート化合物および化合物(b)を、活性水素原子とイソシアネート基のモル比が好ましくは1:0.9〜1.3となる量で混合して、例えば、180〜260℃の高温で混練してポリウレタン形成反応を実施し、次いで化合物(c)を添加して熱可塑性重合体組成物を製造する方法〔方法A〕。
〔3〕多軸スクリュー型押出機などの押出機に、高分子ポリオール、鎖伸長剤、有機ジイソシアネート化合物および化合物(b)を連続的に供給して、例えば、90〜260℃に加熱し、反応系における活性水素原子とイソシアネート基のモル比が好ましくは1:0.9〜1.3となる量で官能基含有ブロック共重合体を連続的に供給して、例えば、180〜260℃の高温で連続溶融重合してポリウレタン形成反応を実施し、次いで、化合物(c)を添加して熱可塑性重合体組成物を製造する方法〔方法B〕。
〔4〕多軸スクリュー型押出機などの押出機に、官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤、有機ジイソシアネート化合物および化合物(b)を、活性水素原子とイソシアネート基のモル比が好ましくは1:0.9〜1.3となる量で連続的に供給して、例えば、180〜260℃の高温で連続溶融重合してポリウレタン形成反応を実施し、次いで化合物(c)を添加して熱可塑性重合体組成物を製造する方法〔方法A〕。
〔5〕多軸スクリュー型押出機などの押出機に、官能基含有ブロック共重合体、ポリウレタン(市販品等)および化合物(b)を連続的に供給して、例えば、180〜260℃の高温で反応させ、次いで化合物(c)を添加して熱可塑性重合体組成物を製造する方法〔方法B〕。
〔6〕官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤、有機ジイソシアネート化合物および化合物(b)を、活性水素原子とイソシアネート基のモル比が好ましくは1:0.9〜1.3となる量で、有機溶媒中に加えて有機溶媒中でポリウレタン形成反応を実施し、次いで化合物(c)を添加して熱可塑性重合体組成物を製造する方法〔方法A〕。
これらの方法のうちでも、有機溶媒を使用しない上記〔1〕〜〔5〕の方法が好ましく、特に上記〔3〕〜〔5〕の押出機を用いて連続的に製造する方法が、目的とする熱可塑性重合体組成物を効率よく製造できるので望ましい。
【0094】
本発明の熱可塑性重合体組成物を使用すると、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、カレンダー成形、プレス成形、注型などの任意の成形方法によって種々の成形品を円滑に製造することができる。
【0095】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、非粘着性で、かつ溶融状態における熱安定性に優れている。本発明の熱可塑性重合体組成物を使用すると、例えば、射出成形などにより成形品を製造する際に、溶融滞留時間が長くなってもショートショット(充填不足)、バリ、ヒケ、ヤケ、フローマークなどの不良現象が発生せずに、金型からの成形品の離型が良好であるので、高品質の成形品を生産性良く製造することができる。また、本発明の熱可塑性重合体組成物を使用すると、例えば、押出成形などによるフィルムやシートを製造する際に、溶融滞留時間が長くなっても吐出圧力変動や厚み斑などの不良現象が発生せずに、吐出安定性が確保され、高品質のフィルムやシートを生産性良く製造することができる。
【0096】
その上、本発明の熱可塑性重合体組成物を用いて上記した射出成形、押出成形、その他の成形を行って得られる成形品、シート、フィルムなどの各種成形品は、非粘着性で、耐熱性、引張破断強度や引張破断伸度などで代表される力学的特性、耐油性、耐水性、弾性回復性などの特性に優れ、残留歪みが小さく、且つ適度な柔軟性を有しており、しかも平滑な表面を有し表面状態も良好であるので、それらの特性を活かして、例えば、コンベアベルト、各種キーボード、ラミネート品、各種容器用のフィルムやシート、ホース、チューブ、自動車部品、機械部品、靴底、時計バンド、パッキング材、制振材などの各種用途に使用することができる。
【0097】
さらに、本発明の熱可塑性重合体組成物は、前記した特性と併せて、各種素材に対して高い溶融接着性を有し、極性の低い樹脂および極性の高い樹脂の両方に対して溶融接着性を有する。そのため、本発明の熱可塑性重合体組成物は、各種の複合成形体の製造に有効である。
本発明の熱可塑性重合体組成物を使用してなる複合成形体としては、何ら限定されるものではないが、フィルム、シート等の積層構造体が代表的なものであり、例えば、本発明の熱可塑性重合体組成物よりなる1つの樹脂層と他の材料よりなる1つの層が積層した2層構造体、他の材料よりなる2つの表面層(表裏面層)の間に本発明の熱可塑性重合体組成物よりなる樹脂層が中間層として存在する3層構造体、他の材料よりなる1つの層の表裏面に本発明の熱可塑性重合体組成物よりなる樹脂層が積層した3層構造体、本発明の熱可塑性重合体組成物よりなる樹脂層と他の1種または2種以上の材料よりなる層が交互に4層以上に積層した多層構造体などを挙げることができる。
【0098】
本発明の熱可塑性重合体組成物よりなる樹脂層と積層する上記した他の材料としては、本発明の熱可塑性重合体組成物以外の他の各種熱可塑性樹脂またはその組成物、熱硬化性樹脂、紙、布帛、金属、木材、セラミックスなどを挙げることができる。
【0099】
上記した複合成形体の製法としては、例えば、前記した他の材料を本発明の熱可塑性重合体組成物で溶融被覆して複合成形体を製造する方法、2つ以上の他の材料の間に本発明の熱可塑性重合体組成物を溶融下に導入して接着、一体化させる方法、他の材料を金型内に配置(インサート)した状態で本発明の熱可塑性重合体組成物を溶融下に金型内に充填して接着、一体化させる方法、他の材料が熱可塑性である場合は本発明の熱可塑性重合体組成物と他の材料を共押出成形して接着、一体化させる方法などを採用することができる。
【0100】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、上述のように、極性の低い樹脂および極性の高い樹脂の両方に対して良好な溶融接着性を示し、特に極性の低い樹脂に対する溶融接着性に優れている。本発明の熱可塑性重合体組成物は、例えば、ポリスチレン系樹脂;オレフィン系重合体;ポリウレタン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物;芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物、共役ジエン化合物およびオレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種との共重合体などの樹脂またはそれらを含有する組成物と溶融接着されて各種の複合成形体を形成することができる。
【0101】
本発明の熱可塑性重合体組成物よりなる樹脂層を有する積層構造体の構造を具体的に例示すると、以下の積層構造体(イ)、積層構造体(ロ)および積層構造体(ハ)などを挙げることができる。
積層構造体(イ):
本発明の熱可塑性重合体組成物よりなる樹脂層(A)とスチレン系重合体またはオレフィン系重合体よりなる樹脂層(B)とが、樹脂層(A)/樹脂層(B)の形態で積層した構造を少なくとも一部に有する積層構造体。
積層構造体(ロ):
本発明の熱可塑性重合体組成物よりなる樹脂層(A)と極性樹脂、例えば、ポリウレタン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物;芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物の共重合体などの樹脂またはそれらを含有する組成物よりなる樹脂層(C)が、樹脂層(A)/樹脂層(C)の形態で積層した構造を少なくとも一部に有する積層構造体。
積層構造体(ハ):
本発明の熱可塑性重合体組成物よりなる樹脂層(A)とスチレン系重合体またはオレフィン系重合体よりなる樹脂層(B)と前記極性樹脂よりなる樹脂層(C)が、樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)の形態で積層した構造を少なくとも一部に有する積層構造体。
【0102】
積層構造体(イ)および積層構造体(ハ)において、樹脂層(B)は、極性の低い、スチレン系重合体またはオレフィン系重合体から主としてなる。
スチレン系重合体としては、スチレン系単量体から誘導される構造単位を10重量%以上含有する重合体が好ましく用いられ、50重量%以上含有する重合体がより好ましく用いられる。スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、3,4−ジメチルスチレンなどを挙げることができる。スチレン系重合体はスチレン系単量体の1種または2種以上から誘導される構造単位を有している。また、該スチレン系重合体は変性されていてもよいし、架橋されていてもよい。
また、樹脂層(B)を形成するスチレン系重合体は、ゴム質重合体を含有するスチレン系重合体組成物であってもよい。その場合のゴム質重合体は、ガラス転移温度が0℃以下のものであることが好ましい。そのようなゴム質重合体としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸低級アルキルエステルを30重量%以下の割合で含有するスチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレンなどを挙げることができる。ゴム質重合体は、ガラス転移温度が−20℃以下のものであることがより好ましい。
【0103】
また、樹脂層(B)を形成するオレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィンの単独重合体、前記したオレフィンの2種以上からなるオレフィン共重合体、または前記したオレフィンの1種または2種以上と他のビニル系単量体の1種または2種以上との共重合体を挙げることができる。また、該オレフィン系重合体は変性されていてもよいし、架橋されていてもよい。
また、場合によっては、樹脂層(B)は、上記したスチレン系重合体(組成物)の1種または2種以上と、上記したオレフィン系重合体の1種または2種以上とを含有する重合体組成物からなっていてもよい。
【0104】
さらに、樹脂層(B)は、その本来の特性の妨げにならない限りは、必要に応じて、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、紫外線吸収剤などの添加剤の1種または2種以上を含有していてもよい。
【0105】
積層構造体(ロ)および積層構造体(ハ)における樹脂層(C)は、極性の高い樹脂よりなっており、例えば、ポリウレタン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物;芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物の共重合体;それらの混合物などが挙げられ、それらは変性されていてもよいし、架橋されていてもよい。
これらの中でも樹脂層(C)を構成する素材としては、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリカーボネート樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を使用することが好ましく、ポリウレタン樹脂を使用することがより好ましい。
【0106】
また、樹脂層(C)は、樹脂層(C)の性質を損なわない限りは、必要に応じて、熱安定剤(例えば、金属セッケン、リン化合物、硫黄化合物、フェノール系化合物、L−アスコルビン酸類、エポキシ化合物など)、可塑剤(例えば、脂肪族二塩基酸エステル、ヒドロキシ多価カルボン酸エステル、脂肪酸エステル、ポリエステル系化合物、リン酸エステルなど)、耐衝撃性付与剤(例えば、エチレン−プロピレンラバー、エチレン−プロピレンターポリマー、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、無機微粉末、有機滑剤、分散剤、染顔料、帯電防止剤、酸化防止剤などの1種または2種以上を含有していてもよい。
【0107】
上記の積層構造体(イ)、積層構造体(ロ)または積層構造体(ハ)では、各層の厚さは特に制限されず、各層を構成する重合体の種類、積層構造体(イ)、積層構造体(ロ)または積層構造体(ハ)における全体の層数、積層構造体(イ)、積層構造体(ロ)または積層構造体(ハ)の用途などに応じて適宜調節し得るが、一般には、樹脂層(A)の厚さを1μm〜5mm、樹脂層(B)の厚さを5μm〜10mm、樹脂層(C)の厚さを5μm〜10mmとしておくことが、積層構造体(イ)、積層構造体(ロ)または積層構造体(ハ)の製造の容易性、層間接着力などの点から好ましい。
【0108】
積層構造体(イ)、積層構造体(ロ)または積層構造体(ハ)における全体の層数は、積層構造体(イ)にあっては、樹脂層(A)/樹脂層(B)の積層構造を少なくとも一部に有しており、積層構造体(ロ)にあっては、樹脂層(A)/樹脂層(C)の積層構造を少なくとも一部に有しており、積層構造体(ハ)にあっては、樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)の順に積層されている構造を少なくとも一部に有している限り、特に制限されるものではない。
また、積層構造体(イ)、(ロ)および(ハ)は、必要に応じ、他の材料(例えば、紙、布帛、金属、セラミック、木材など)からなる層を1つまたは2つ以上有していてもよい。
【0109】
何ら限定されるものではないが、積層構造体(イ)の例としては、樹脂層(A)/樹脂層(B)からなる2層構造物;樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(B)からなる3層構造物;(紙、布帛または金属からなる層)/樹脂層(A)/樹脂層(B)からなる3層構造物;樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(A)からなる4層構造物;樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(B)からなる5層構造物;(紙、布帛または金属からなる層)/樹脂層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(A)/(紙、布帛または金属からなる層)からなる5層構造物などを挙げることができる。
また、積層構造体(ロ)の例としては、樹脂層(A)/樹脂層(C)からなる2層構造物;樹脂層(C)/樹脂層(A)/樹脂層(C)からなる3層構造物;(紙、布帛または金属からなる層)/樹脂層(A)/樹脂層(C)からなる3層構造物;樹脂層(C)/樹脂層(A)/樹脂層(C)/樹脂層(A)からなる4層構造物;樹脂層(C)/樹脂層(A)/樹脂層(C)/樹脂層(A)/樹脂層(C)からなる5層構造物;(紙、布帛または金属からなる層)/樹脂層(A)/樹脂層(C)/樹脂層(A)/(紙、布帛または金属からなる層)からなる5層構造物などを挙げることができる。
さらに、積層構造体(ハ)の例としては、樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)からなる3層構造物;(紙、布帛または金属からなる層)/樹脂層(C)/樹脂層(A)/樹脂層(B)からなる4層構造物;樹脂層(C)/樹脂層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)からなる5層構造物;樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)/樹脂層(A)/樹脂層(B)からなる5層構造物;(紙、布帛または金属からなる層)/樹脂層(C)/樹脂層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)/(紙、布帛または金属からなる層)からなる7層構造物;(紙、布帛または金属からなる層)/樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)/樹脂層(A)/樹脂層(B)/(紙、布帛または金属からなる層)からなる7層構造物などを挙げることができる。
【0110】
上記において、1つの積層構造体中に2つ以上の樹脂層(B)および/または2つ以上の樹脂層(C)が存在する場合、該2つ以上の樹脂層(B)および/または2つ以上の樹脂層(C)は、それぞれ同じ重合体よりなるものであってもよいし、異なる重合体よりなるものであってもよい。
【0111】
積層構造体(イ)、積層構造体(ロ)および積層構造体(ハ)の製造法としては、何ら限定されるものではないが、例えば、
[1]樹脂層(A)用の本発明の熱可塑性重合体組成物および樹脂層(B)用の重合体を用いるか[積層構造体(イ)を製造する場合]、樹脂層(A)用の本発明の熱可塑性重合体組成物および樹脂層(C)用の重合体を用いるか[積層構造体(ロ)を製造する場合]、または樹脂層(A)用の本発明の熱可塑性重合体組成物、樹脂層(B)用の重合体および樹脂層(C)用の重合体を用いて[積層構造体(ハ)を製造する場合]、それらを溶融共押出成形して、押出成形と同時に積層させて積層構造体を製造する方法;
[2]樹脂層(B)および樹脂層(C)を構成するフィルム、シート、その他の成形品を射出成形や押出成形などにより予め製造しておき、樹脂層(A)用の本発明の熱可塑性重合体組成物を溶融押出成形しながら予め製造しておいた樹脂層(B)用の成形品および/または樹脂層(C)用の成形品と積層して一体化させて積層構造体を製造する方法;
[3]樹脂層(A)用の本発明の熱可塑性重合体組成物、樹脂層(B)を構成する重合体、樹脂層(C)を構成する重合体を用いて、射出成形や押出成形などによりそれぞれの重合体よりなるフィルム、シート、その他の成形品を予め製造しておき、予め成形した樹脂層(A)を構成する成形品と樹脂層(B)または樹脂層(C)を構成する成形品を積層した後、または予め成形した樹脂層(B)を構成する成形品、樹脂層(A)を構成する成形品および樹脂層(C)を構成する成形品をこの順序で積層した後、高周波接着装置や加熱溶封機(ヒートシーラ)などを用いて加熱下に接着、一体化して、積層構造体を製造する方法;
[4]樹脂層(B)および/または樹脂層(C)を構成する成形品を射出成形や押出成形などにより予め製造し、それを金型内に配置(インサート)しておき、そこに樹脂層(A)用の本発明の熱可塑性重合体組成物を溶融下に充填し、接着、一体化させて、積層構造体を製造する方法;
[5]樹脂層(B)を構成する重合体、樹脂層(C)を構成する重合体を用いて、射出成形や押出成形などによりそれぞれの重合体よりなるフィルム、シート、その他の成形品を予め製造しておき、樹脂層(B)を構成する成形品および樹脂層(C)を構成する成形品の一方に本発明の熱可塑性重合体組成物の溶液を塗布した後、樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)の順序になるように積層し、有機溶剤を蒸発させて接着、一体化して、積層構造体を製造する方法;
[6]射出成形や押出成形などにより樹脂層(B)を構成するフィルム、シート、その他の成形品を予め製造し、次いで樹脂層(A)用の本発明の熱可塑性重合体組成物を溶融押出成形しながら積層一体化して積層構造体(イ)を製造し、得られた積層構造体(イ)に塗料用や接着剤用に変性された前記極性樹脂を塗布した後、乾燥、硬化などにより接着、一体化して樹脂層(C)を形成することにより、積層構造体(ハ)を製造する方法;
などを挙げることができる。
【0112】
上記した[1]〜[4]の場合には、有機溶剤を使用することなく、溶融した樹脂層(A)によって、樹脂層(A)と樹脂層(B)の間、または樹脂層(A)と樹脂層(C)の間の接着、一体化を行うことができるので、有機溶剤による自然環境の破壊や、作業環境の悪化、溶剤の回収などの問題や手間を生ずることなく、目的とする積層構造体を製造することができる。
また、上記した[5]の場合には、有機溶剤を使用するものの、樹脂層(B)の表面に対し、プライマー処理、コロナ放電処理、プラズマ処理などの活性化処理を施す手間を省くことができるので、目的とする積層構造体を効率的に製造することができる。
さらに、上記した[6]の場合には、溶融した樹脂層(A)によって樹脂層(A)と樹脂層(B)の間を接着、一体化するので、樹脂層(B)の表面に対し、プライマー処理、コロナ放電処理、プラズマ処理などの活性化処理を施す手間を省くことができ、作業の効率化が図れる。また、有機溶を使用しないので、自然環境の破壊や、作業環境の悪化、溶剤の回収などの問題や手間を削減することができる。
【0113】
共押出成形法によって積層構造体を製造する場合は、積層構造体の層数などに応じて、例えば2台以上の押出機を1つのダイに結合して、複数の重合体をダイの内側または外側で積層一体化して製造することができる。その場合のダイとしては、Tダイ、環状ダイなどを使用することができ、押出機やダイの形状や構造などは特に制限されない。
【0114】
何ら限定されるものではないが、本発明の熱可塑性重合体組成物を使用してなる複合成形体は、例えば、インストルメントパネル、センターパネル、センターコンソールボックス、ドアトリム、ピラー、アシストグリップ、ハンドル、エアバックカバーなどの自動車用内装部品;モール、バンパーなどの自動車外装部品;掃除機バンパー、冷蔵庫戸当たり、カメラグリップ、電動工具グリップ、リモコンスイッチ、OA機器の各種キートップなどの家電部品;水中眼鏡などのスポーツ用品;各種カバー;耐摩耗性、密閉性、防音性、防振性などを目的とした各種パッキン付き工業部品;カールコード電線被覆;食品用、医療用、農業用包装用などの各種フィルム;壁紙、化粧板などの建材;ベルト、ホース、チューブ、マット、シート、消音ギアなどの電気・電子部品などに使用することができる。
【0115】
また、本発明の熱可塑性重合体組成物は、ホットメルト接着剤としてそのまま保存、流通、販売することができる。また、本発明の熱可塑性重合体組成物は、必要なときに、各種製品や上記の各種複合成形体の製造において、ホットメルト接着剤として使用することができる。
本発明の熱可塑性重合体組成物を使用してなるホットメルト接着剤においては、その形態は特に制限されず、例えば、ペレットなどの粒状体、棒状体、フィルム、シート、板状体などの任意の形状をとり得る。
【0116】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、熱可塑性重合体組成物の溶融粘度(溶融滞留安定性)、押出成形性(フィルムの製造状態および表面状態)、射出成形性(成形物の表面状態)およびそれらの連続成形性、並びに積層構造体における接着強度や塗料の付着性評価は、以下の方法により測定または評価した。
【0117】
(1)溶融粘度(溶融滞留安定性)
1333.2Pa(10Torr)以下の圧力下、80℃で1時間減圧乾燥した熱可塑性重合体組成物の溶融粘度を、高化式フローテスター〔島津製作所製;キャピラリーレオメーターCFT−500D(ノズル寸法:直径1mm×長さ10mm)〕を使用して測定した。荷重490.3N(50kgf)、200℃の条件下における滞留時間を変更して、熱可塑性重合体組成物の溶融粘度を数点測定し、滞留時間に対して溶融粘度をプロットしたグラフを作成し、そのグラフから滞留時間に対して溶融粘度の変化がほぼ無くなったときの溶融粘度を求め、それをウレタン結合が解離平衡に到達したときの溶融粘度(ηa)とした。また、荷重490.3N(50kgf)、200℃の条件下における滞留時間が60分となった時点の溶融粘度(ηa)を測定した。
下記の数式により溶融粘度比率を求めて、溶融滞留安定性の指標とした。この値が0.9〜1.4の範囲内であればウレタン結合の解離反応や副生成反応などが抑制され、溶融滞留安定性に優れている。
溶融粘度比率(R)=ηa/ηa
【0118】
(2)積層構造体の製造時の押出成形性
3台の押出機を用いて3種類の樹脂を1組の共通ダイ(25mmφ、シリンダー温度:190〜245℃、ダイス温度:230℃)に導き、そのダイ内部において樹脂同士を溶融状態で積層一体化した後、60℃のロール上に押し出して冷却して、最外層(50μm)/接着層(10μm)/中間層(50μm)/接着層(10μm)/最外層(50μm)からなる5層の積層構造体を製造した。吐出量を4kg/hr(ロールの巻き取り速度は約2m/分)および10kg/hr(ロールの巻き取り速度は5m/分)としたときの得られた積層構造体の状態を観察すると共に、巻き取った積層構造体の平滑性を観察した。評価基準は以下に示すとおりである。
押出成形性の評価基準
○:吐出量4kg/hrおよび10kg/hrで押し出した積層構造体に凹凸や湾曲などの不良現象が生じておらず、平滑な表面を有し、且つ製造時に正常に巻き取りが可能である。
△:吐出量4kg/hrで押し出した積層構造体には凹凸や湾曲などの不良現象が生じておらず、平滑な表面を有し、且つ製造時に正常な巻き取りが可能である。また、吐出量10kg/hrで押し出した積層構造体には凹凸や湾曲などの不良現象が多少生じるか、或いは、表面の平滑性が多少損なわれるかしたが、製造時の巻き取りは可能である。
×:吐出量4kg/hrで押し出した積層構造体に凹凸や湾曲などの不良現象が多少生じるか、或いは、表面の平滑性が多少損なわれるかしたが、製造時に巻き取りは可能である。また、吐出量10kg/hrで押し出した積層構造体には凹凸や湾曲が生じ、表面が平滑でなく、且つ製造時には正常な巻き取りが不可能である。
【0119】
(3)積層構造体の製造時の射出成形性
表面を鏡面仕上げした金型を用いて、その金型内に樹脂板(最外層)〔直径:120mm、厚さ:1mm〕を予め配置しておき、そこに実施例または比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を射出(シリンダー温度:200〜220℃、金型温度:40℃)して、樹脂板の一方の表面に熱可塑性重合体組成物(接着層)の層が積層した積層構造体(直径:120mm、積層構造体の厚さ:2mm)を製造し、得られた積層構造体の表面状態を観察した。評価基準は以下に示すとおりである。
射出成形性の評価基準
○:積層構造体の表面の全面が滑らかで平滑であってフローマークも観察されない。
△:積層構造体の表面の一部にフローマークが発生し、平滑でない部分が若干観察される。
×:積層構造体の表面の全面にフローマークが発生し、表面に凹凸が発生している。
【0120】
(4)押出成形または射出成形における連続成形性
上記(2)〔押出成形〕または(3)〔射出成形〕に示した積層構造体の製造を連続的に行い、成形品表面に吐出圧力変動、ショートショット(充填不足)、バリ、ヒケ、ヤケ、フローマークなどの不良現象が発生したり、表面の平滑性(厚みの均一性)がなくなったりして、高品質の成形品を連続的に生産できなくなったときの時間を測定した。評価基準は以下に示すとおりである。
押出成形または射出成形における連続成形性の評価基準
○:72時間以上連続成形が可能である。
△:24時間を超え、72時間未満まで連続成形が可能である。
×:24時間以内に不良現象が発生している。
【0121】
(5)積層構造体における接着強度
熱可塑性重合体組成物を使用して、上記(2)または(3)に示した方法で製造した積層構造体[押出成形で製造した最外層(50μm)/接着層(10μm)/中間層(50μm)/接着層(10μm)/最外層(50μm)からなる5層の積層構造体、または射出成形で製造した2層の積層構造体(直径120mm、厚さ2mm)]から試験片(サイズ:1cm×8cm)を切り出し、最外層または中間層と接着層(熱可塑性重合体組成物よりなる層)との界面接着強度を、島津製作所製「オートグラフ測定装置IS−500D」を使用して、室温下、引張速度300mm/分の条件で180度剥離試験により求めた。
なお、最外層と接着層、または中間層と接着層の接着強度を測定する際に、層間の接着が極めて強固であり、各層間の剥離ができず、そのため接着強度の測定が行えない場合には、「剥離不能」と評価した。また、上記の各層間の接着が非常に弱く、手で容易に剥離できるのもは、「剥離」と評価した。
【0122】
(6)塗料の付着性評価
上記(3)に示した方法で製造した積層構造体(直径:120mm、厚さ:2mm)の接着層(熱可塑性重合体組成物よりなる層)の表面に、二液型有機溶剤系ウレタン系塗料〔関西ペイント(株)社製、レタンPG80(商品名)〕を塗布し、100℃、15分の条件で硬化させた。次に、カッターナイフを用いて硬化した塗膜に1mm間隔で100個の碁盤目ができるように切れ目を入れ、その上にセロハン粘着テープを十分圧着させた後、塗膜面と約30度に保ち手前に一気に引き剥がし、碁盤目で囲まれた部分の状態を観察した。剥離しなかった碁盤目の数を記録し、塗料の付着性の評価とした。
【0123】
以下の参考例、実施例および比較例で用いた化合物の略号と物性を以下に示す。
〔官能基含有ブロック共重合体〕
TPS−1
ポリスチレンブロック−ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロックからなり、水酸基を末端に有するトリブロック共重合体の水素添加物[1分子当たりの平均官能基数:0.7、スチレン含有量:30重量%、数平均分子量:50,000、ポリイソプレンブロックにおける水素添加率:90%、ポリイソプレンブロックにおける1,4−結合量:45モル%、1,2−結合および3,4−結合の合計量:55モル%、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重):13g/10分]
TPS−1は、分子の片末端に水酸基を有するブロック共重合体[HVSIS−OH−1;ポリスチレンブロック−ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有するトリブロック共重合体の水素添加物、数平均分子量:50,000、スチレン含有量:30重量%、ポリイソプレンブロックにおける水素添加率:90%、ポリイソプレンブロックにおける1,4−結合量:45モル%、1,2−結合および3,4−結合の合計量:55モル%]と分子内に水酸基を有しないブロック共重合体[HVSIS−1;ポリスチレンブロック−ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有するトリブロック共重合体の水素添加物、数平均分子量:50,000、スチレン含有量:30重量%、ポリイソプレンブロックにおける水素添加率:90%、ポリイソプレンブロックにおける1,4−結合量:45モル%、1,2−結合および3,4−結合の合計量:55モル%]を含有する〔HVSIS−OH−1/HVSIS−1=7/3(モル比)〕。
【0124】
TPS−2
ポリスチレンブロック−ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロックからなり、水酸基を末端に有するトリブロック共重合体の水素添加物[1分子当たりの平均官能基数:0.8、スチレン含有量:25重量%、数平均分子量:80,000、ポリイソプレンブロックにおける水素添加率:85%、ポリイソプレンブロックにおける1,4−結合量:45モル%、1,2−結合および3,4−結合の合計量:55モル%、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重):6g/10分]
TPS−2は、分子の片末端に水酸基を有するブロック共重合体[HVSIS−OH−2(ポリスチレンブロック−ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有するトリブロック共重合体の水素添加物、数平均分子量:80,000、スチレン含有量:25重量%、ポリイソプレンブロックにおける水素添加率:85%、ポリイソプレンブロックにおける1,4−結合量:45モル%、1,2−結合および3,4−結合の合計量:55モル%)]と分子内に水酸基を有しないブロック共重合体[HVSIS−2(ポリスチレンブロック−ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有するトリブロック共重合体の水素添加物、数平均分子量:80,000、スチレン含有量:25重量%、ポリイソプレンブロックにおける水素添加率:85%、ポリイソプレンブロックにおける1,4−結合量:45モル%、1,2−結合および3,4−結合の合計量:55モル%)]を含有する〔HVSIS−OH−2/HVSIS−2=8/2(モル比)〕。
なお、TPS−1およびTPS−2は、それぞれ、特開平7−118492号公報の参考例2に記載された方法に準じ、スチレンおよびイソプレンを、テトラメチルエチレンジアミンが存在するシクロヘキサン中でsec−ブチルリチウムを用いて重合し、エチレンオキサイドを添加することにより分子鎖の末端に水酸基を有する重合体を製造し、該重合体をチーグラー系触媒を用いて水素添加することによって製造した。
【0125】
TPS−3
ポリスチレンブロック−ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有し、分子の片末端に水酸基を有するトリブロック共重合体の水素添加物〔数平均分子量:50,000、スチレン含有量:30重量%、ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロックにおける水素添加率:98%、イソプレンとブタジエンの比率:50/50(モル比)、ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロックにおける1,2−結合および3,4−結合の合計量:8モル%、1分子当たりの平均水酸基数:0.9個〕
TPS−3は、分子の片末端に水酸基を有するブロック共重合体[SEEPS−OH〔ポリスチレンブロック−ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有するトリブロック共重合体の水素添加物、数平均分子量:50,000、スチレン含有量:30重量%、ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロックにおける水素添加率:98%、イソプレンとブタジエンの比率:50/50(モル比)、ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロックにおける1,2−結合および3,4−結合の合計量:8モル%〕]と分子内に水酸基を有しないブロック共重合体[SEEPS〔ポリスチレンブロック−ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有するトリブロック共重合体の水素添加物、数平均分子量:50,000、スチレン含有量:30重量%、ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロックにおける水素添加率:98%、イソプレンとブタジエンの比率:50/50(モル比)、ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロックにおける1,2−結合および3,4−結合の合計量:8モル%〕]を含有する〔SEEPS−OH/SEEPS=9/1(モル比)〕。 なお、TPS−3は、特開平10−139963号公報の参考例1に記載された方法に準じ、スチレン、イソプレンおよびブタジエンを原料として製造した。
【0126】
〔高分子ポリオール〕
POH−1
3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸を反応させて製造した、数平均分子量が1,500であるポリエステルジオール〔株式会社クラレ製、「クラレポリオールP−1500」(商品名)〕。
POH−2
3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸を反応させて製造した、数平均分子量が3,500であるポリエステルジオール〔株式会社クラレ製、「クラレポリオールP−3500」(商品名)〕。
POH−3
数平均分子量が2,000であるポリテトラメチレングリコール〔三菱化学株式会社製、「PTMG2000」(商品名)〕。
〔鎖伸長剤〕
BD: 1,4−ブタンジオール
MPD: 3−メチル−1,5−ペンタンジオール
〔有機ジイソシアネート化合物〕
MDI: 4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
〔化合物(b)〕
CAT−1: ジブチルスズジアセテート
CAT−2: テトライソプロピルチタネート
〔化合物(c)〕
INACT: ジステアリルホスフェート
〔積層用樹脂〕
PP: ポリプロピレン〔株式会社グランドポリマー社製、「グランドポリプロF109BB」(商品名)〕
TPU: 熱可塑性ポリウレタン〔株式会社クラレ製、「クラミロン8170」(商品名)〕
【0127】
実施例1
(1)(熱可塑性重合体組成物の製造)
ジブチルスズジアセテート(CAT−1)を10ppm含有する高分子ポリオール(POH−1)、鎖伸長剤(BD)および有機ジイソシアネート化合物(MDI)を、POH−1:BD:MDIのモル比が1.0:3.5:4.5(窒素原子含有率は4.3重量%)で、かつこれらの合計供給量が90g/分となるようにして同軸方向に回転する二軸スクリュー型押出機(30mmφ、L/D=36;加熱ゾーンは前部、中央部、後部の3つの帯域に分けた)の加熱ゾーンの前部に連続供給して、260℃の連続溶融重合でポリウレタン形成反応を実施した。官能基含有ブロック共重合体(TPS−1)を110g/分となるようにして上記の二軸スクリュー型押出機の加熱ゾーンの中央部に連続供給し、上記のポリウレタン形成反応による反応混合物と反応させた。
次に、上記の二軸スクリュー型押出機の後部にジステアリルホスフェート(INACT)を添加(供給量:0.013g/分)し、得られた溶融物をストランド状で水中に連続的に押し出し、次いでペレタイザーで切断し、ペレットを得た。得られたペレットを80℃で4時間除湿乾燥することにより、熱可塑性重合体組成物1を得た。熱可塑性重合体組成物1の溶融粘度を上記した方法で測定し、溶融粘度比率(ηa/ηa)を求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0128】
熱可塑性重合体組成物1の一部を取り、ジメチルホルムアミドを用いて組成物中のポリウレタンを抽出除去した。次いでシクロヘキサンを用いて未反応のHVSIS−OH−1およびHVSIS−1を抽出除去し、残留した固形物を乾燥することにより、ブロック共重合体1を得た。H−NMRで分析した結果、ブロック共重合体1は、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕とポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕からなるジブロック共重合体であることが分かった。なお、シクロヘキサンによる抽出物は、GPC分析の結果、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕を2個、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕を1個有するトリブロック共重合体を含有していることが分かった。
ジメチルホルムアミドを用いて抽出されたポリウレタンおよびシクロヘキサンを用いて抽出されたHVSIS−OH−1、HVSIS−1およびトリブロック共重合体の重量は、上記したジブロック共重合体を100重量部としたとき、ポリウレタンは195重量部、HVSIS−OH−1は0重量部、HVSIS−1は88重量部、上記したトリブロック共重合体は150重量部であった。また、熱可塑性重合体組成物1におけるCAT−1およびINACTの含有量を仕込み量に基づいて算出すると、組成物全体に対し、CAT−1が2.3ppmであり、INACTが65ppmであった。
上記したジブロック共重合体およびトリブロック共重合体における付加重合系ブロック(イ)は、いずれもHVSIS−1と同様の構造を有していた。また、上記したジブロック共重合体の数平均分子量は84,000であり、トリブロック共重合体の数平均分子量は102,000であった。
【0129】
(2)(積層構造体の製造)
上記(1)で得られた熱可塑性重合体組成物1、並びに上記のPPおよびTPUを用いて、上記した方法で押出成形を行って、押出成形性および連続成形性の評価を行うとともに、得られた積層構造体における層間の接着強度を上記した方法で測定した。結果を表1に示す。
【0130】
実施例2
高分子ポリオール(POH−2)、鎖伸長剤(BD)、有機ジイソシアネート化合物(MDI)、官能基含有ブロック共重合体(TPS−2)、CAT−1(化合物(b))およびINACT(化合物(c))を、下記の表1に示す割合で使用したこと以外は実施例1と同様の方法により、熱可塑性重合体組成物2を製造した。熱可塑性重合体組成物2について、上記した方法により溶融粘度を測定し、溶融粘度比率(ηa/ηa)を求め、溶融滞留安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0131】
熱可塑性重合体組成物2の一部を取り、ジメチルホルムアミドを用いて組成物中のポリウレタンを抽出除去した。次いでシクロヘキサンを用いて未反応のHVSIS−OH−2およびHVSIS−2を抽出除去し、残留した固形物を乾燥することにより、ブロック共重合体2を得た。H−NMRで分析した結果、ブロック共重合体2は、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕とポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕からなるジブロック共重合体であることが分かった。なお、シクロヘキサンによる抽出物は、GPC分析の結果、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕を2個、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕を1個有するトリブロック共重合体を含有していることが分かった。
ジメチルホルムアミドを用いて抽出されたポリウレタンおよびシクロヘキサンを用いて抽出された未反応のHVSIS−OH−2、HVSIS−2およびトリブロック共重合体の重量は、上記したジブロック共重合体を100重量部としたとき、ポリウレタンは192重量部、HVSIS−OH−2は0重量部、HVSIS−2は50重量部であり、上記したトリブロック共重合体は163重量部であった。また、熱可塑性重合体組成物2におけるCAT−1およびINACTの含有量を仕込み量に基づいて算出すると、組成物全体に対し、CAT−1が5.9ppmであり、INACTが30ppmであった。
上記したジブロック共重合体およびトリブロック共重合体における付加重合系ブロック(イ)は、いずれもHVSIS−2と同様の構造を有していた。また、上記したジブロック共重合体の数平均分子量は160,000であり、トリブロック共重合体の数平均分子量は170,000であった。
【0132】
熱可塑性重合体組成物2、並びに上記のPPおよびTPUを用いて、実施例1と同様の方法で押出成形を行って、押出成形性および連続成形性の評価を行うとともに、得られた積層構造体における層間の接着強度を上記した方法で測定した。結果を表1に示す。
【0133】
実施例3
高分子ポリオール(POH−1)、鎖伸長剤(BD)、有機ジイソシアネート化合物(MDI)、官能基含有ブロック共重合体(TPS−1)、CAT−1(化合物(b))およびINACT(化合物(c))を、下記の表1に示す割合で使用したこと以外は実施例1と同様の方法により、熱可塑性重合体組成物3を製造した。熱可塑性重合体組成物3について、上記した方法により溶融粘度を測定し、溶融粘度比率(ηa/ηa)を求め、溶融滞留安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0134】
熱可塑性重合体組成物3の一部を取り、ジメチルホルムアミドを用いて組成物中のポリウレタンを抽出除去した。次いでシクロヘキサンを用いて未反応のHVSIS−OH−1およびHVSIS−1を抽出除去し、残留した固形物を乾燥することにより、ブロック共重合体3を得た。H−NMRで分析した結果、ブロック共重合体3は、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕とポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕からなるジブロック共重合体であることが分かった。なお、シクロヘキサンによる抽出物は、GPC分析の結果、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕を2個、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕を1個有するトリブロック共重合体を含有していることが分かった。
ジメチルホルムアミドを用いて抽出されたポリウレタンおよびシクロヘキサンを用いて抽出された未反応のHVSIS−OH−1、HVSIS−1およびトリブロック共重合体の重量は、上記したジブロック共重合体を100重量部としたとき、ポリウレタンは167重量部、HVSIS−OH−1は0重量部、HVSIS−1は71重量部であり、上記したトリブロック共重合体は138重量部であった。また、熱可塑性重合体組成物3におけるCAT−1およびINACTの含有量を仕込み量に基づいて算出すると、組成物全体に対し、CAT−1が5.4ppmであり、INACTが100ppmであった。
上記したジブロック共重合体およびトリブロック共重合体における付加重合系ブロック(イ)は、いずれもHVSIS−1と同様の構造を有していた。また、上記したジブロック共重合体の数平均分子量は113,000であり、トリブロック共重合体の数平均分子量は113,000であった。
【0135】
上記で得られた熱可塑性重合体組成物3の100重量部にPP10重量部を配合した混合物、並びに上記したPPおよびTPUを用いて、実施例1と同様の方法で押出成形を行って、押出成形性および連続成形性の評価を行うとともに、得られた積層構造体における層間の接着強度を上記した方法で測定した。結果を表1に示す。
【0136】
比較例1
高分子ポリオール(POH−1)、鎖伸長剤(BD)、有機ジイソシアネート化合物(MDI)、官能基含有ブロック共重合体(TPS−1)およびCAT−1(化合物(b))を下記の表1に示す割合で使用し、INACT(化合物(c))を使用しなかったこと以外は実施例1と同様の方法により、熱可塑性重合体組成物C1を製造した。熱可塑性重合体組成物C1について、上記した方法により溶融粘度を測定し、溶融粘度比率(ηa/ηa)を求め、溶融滞留安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0137】
熱可塑性重合体組成物C1の一部を取り、ジメチルホルムアミドを用いて組成物中のポリウレタンを抽出除去した。次いでシクロヘキサンを用いて未反応のHVSIS−OH−1およびHVSIS−1を抽出除去し、残留した固形物を乾燥することにより、ブロック共重合体C1を得た。H−NMRで分析した結果、ブロック共重合体C1は、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕とポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕からなるジブロック共重合体であることが分かった。なお、シクロヘキサンによる抽出物は、GPC分析の結果、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕を2個、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕を1個有するトリブロック共重合体を含有していることが分かった。
ジメチルホルムアミドを用いて抽出されたポリウレタンおよびシクロヘキサンを用いて抽出された未反応のHVSIS−OH−1、HVSIS−1およびトリブロック共重合体の重量は、上記したジブロック共重合体を100重量部としたとき、ポリウレタンは218重量部、HVSIS−OH−1は0重量部、HVSIS−1は61重量部であり、上記したトリブロック共重合体は127重量部であった。また、熱可塑性重合体組成物C1におけるCAT−1の含有量を仕込み量に基づいて算出すると、組成物全体に対し9.4ppmであった。
上記したジブロック共重合体およびトリブロック共重合体における付加重合系ブロック(イ)は、いずれもHVSIS−1と同様の構造を有していた。また、上記したジブロック共重合体の数平均分子量は128,000であり、トリブロック共重合体の数平均分子量は128,000であった。
【0138】
熱可塑性重合体組成物C1、並びに上記のPPおよびTPUを用いて、実施例1と同様の方法で押出成形を行って、押出成形性および連続成形性の評価を行うとともに、得られた積層構造体における層間の接着強度を上記した方法で測定した。結果を表1に示す。
【0139】
比較例2
高分子ポリオール(POH−2)、鎖伸長剤(BD)、有機ジイソシアネート化合物(MDI)、官能基含有ブロック共重合体(TPS−1)およびINACT(化合物(c))を下記の表1に示す割合で使用し、CAT−1(化合物(b))を使用しなかったこと以外は実施例1と同様の方法により、熱可塑性重合体組成物C2を製造した。熱可塑性重合体組成物C2について、上記した方法により溶融粘度を測定し、溶融粘度比率(ηa/ηa)を求め、溶融滞留安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0140】
熱可塑性重合体組成物C2の一部を取り、ジメチルホルムアミドを用いて組成物中のポリウレタンを抽出除去した。次いでシクロヘキサンを用いて未反応のHVSIS−OH−1およびHVSIS−1を抽出除去し、残留した固形物を乾燥することにより、ブロック共重合体C2を得た。H−NMRで分析した結果、ブロック共重合体C2は、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕とポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕からなるジブロック共重合体であることが分かった。なお、シクロヘキサンによる抽出物は、GPC分析の結果、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕を2個、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕を1個有するトリブロック共重合体を含有していることが分かった。
ジメチルホルムアミドを用いて抽出されたポリウレタンおよびシクロヘキサンを用いて抽出された未反応のHVSIS−OH−1、HVSIS−1およびトリブロック共重合体の重量は、上記したジブロック共重合体を100重量部としたとき、未反応のポリウレタンは764重量部、HVSIS−OH−1は0重量部、HVSIS−1は221重量部であり、上記したトリブロック共重合体は614重量部であった。また、熱可塑性重合体組成物C2におけるINACTの含有量を仕込み量に基づいて算出すると、組成物全体に対し50ppmであった。
上記したジブロック共重合体およびトリブロック共重合体における付加重合系ブロック(イ)は、いずれもHVSIS−1と同様の構造を有していた。
【0141】
熱可塑性重合体組成物C2、並びに上記のPPおよびTPUを用いて、実施例1と同様の方法で押出成形を行って、押出成形性および連続成形性の評価を行うとともに、得られた積層構造体における層間の接着強度を上記した方法で測定した。結果を表1に示す。
【0142】
比較例3
高分子ポリオール(POH−1)、鎖伸長剤(BD)、有機ジイソシアネート化合物(MDI)、官能基含有ブロック共重合体(TPS−2)、CAT−1(化合物(b))およびINACT(化合物(c))を、下記の表1に示す割合で使用したこと以外は実施例1と同様の方法により、熱可塑性重合体組成物C3を製造した。熱可塑性重合体組成物C3について、上記した方法により溶融粘度を測定し、溶融粘度比率(ηa/ηa)を求め、溶融滞留安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0143】
また、熱可塑性重合体組成物C3、並びに上記のPPおよびTPUを用いて、実施例1と同様の方法で押出成形を行って、押出成形性および連続成形性の評価を行うとともに、得られた積層構造体における層間の接着強度を上記した方法で測定した。結果を表1に示す。
【0144】
【表1】
Figure 0003923385
【0145】
表1中の注。
1)高分子ポリオールに対する、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物のモル比。
2)官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤、有機ジイソシアネート化合物、化合物(b)および化合物(c)の合計重量に対する割合。
3)高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に対する割合。
4)官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に対する割合。
【0146】
実施例4
高分子ポリオール(POH−3)、鎖伸長剤(BD)、有機ジイソシアネート化合物(MDI)、官能基含有ブロック共重合体(TPS−1)、CAT−1(化合物(b))およびINACT(化合物(c))を、下記の表2に示す割合で使用したこと以外は実施例1と同様の方法により、熱可塑性重合体組成物4を製造した。熱可塑性重合体組成物4について、上記した方法により溶融粘度を測定し、溶融粘度比率(ηa/ηa)を求め、溶融滞留安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0147】
熱可塑性重合体組成物4の一部を取り、ジメチルホルムアミドを用いて組成物中のポリウレタンを抽出除去した。次いでシクロヘキサンを用いて未反応のHVSIS−OH−1およびHVSIS−1を抽出除去し、残留した固形物を乾燥することにより、ブロック共重合体4を得た。H−NMRで分析した結果、ブロック共重合体4は、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕とポリ(テトラメチレングリコール)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕からなるジブロック共重合体であることが分かった。なお、シクロヘキサンによる抽出物は、GPC分析の結果、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕を2個、ポリ(テトラメチレングリコール)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕を1個有するトリブロック共重合体を含有していることが分かった。
ジメチルホルムアミドを用いて抽出されたポリウレタンおよびシクロヘキサンを用いて抽出された未反応のHVSIS−OH−1、HVSIS−1およびトリブロック共重合体の重量は、上記したジブロック共重合体を100重量部としたとき、ポリウレタンは200重量部、HVSIS−OH−1は0重量部、HVSIS−1は113重量部であり、上記したトリブロック共重合体は213重量部であった。また、熱可塑性重合体組成物4におけるCAT−1およびINACTの含有量を仕込み量に基づいて算出すると、組成物全体に対し、CAT−1が16.5ppmであり、INACTが300ppmであった。
上記したジブロック共重合体およびトリブロック共重合体における付加重合系ブロック(イ)は、いずれもHVSIS−1と同様の構造を有していた。
【0148】
熱可塑性重合体組成物4および上記のPP(最外層)を用いて、上記した方法で射出成形を行って、射出成形性および連続成形性の評価を行うとともに、得られた積層構造体における層間の接着強度および塗料の付着性を上記した方法で測定または評価した。結果を表2に示す。
【0149】
実施例5
高分子ポリオール(POH−3)、鎖伸長剤(BD)、有機ジイソシアネート化合物(MDI)、官能基含有ブロック共重合体(TPS−2)、CAT−1(化合物(b))およびINACT(化合物(c))を、下記の表2に示す割合で使用したこと以外は実施例1と同様の方法により、熱可塑性重合体組成物5を製造した。熱可塑性重合体組成物5について、上記した方法により溶融粘度を測定し、溶融粘度比率(ηa/ηa)を求め、溶融滞留安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0150】
熱可塑性重合体組成物5の一部を取り、ジメチルホルムアミドを用いて組成物中のポリウレタンを抽出除去した。次いでシクロヘキサンを用いて未反応のHVSIS−OH−2およびHVSIS−2を抽出除去し、残留した固形物を乾燥することにより、ブロック共重合体5を得た。H−NMRで分析した結果、ブロック共重合体5は、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕とポリ(テトラメチレングリコール)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕からなるジブロック共重合体であることが分かった。なお、シクロヘキサンによる抽出物は、GPC分析の結果、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕を2個、ポリ(テトラメチレングリコール)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕を1個有するトリブロック共重合体を含有していることが分かった。
ジメチルホルムアミドを用いて抽出されたポリウレタンおよびシクロヘキサンを用いて抽出された未反応のHVSIS−OH−2、HVSIS−2およびトリブロック共重合体の重量は、上記したジブロック共重合体を100重量部としたとき、ポリウレタンは124重量部、HVSIS−OH−2は0重量部、HVSIS−2は92重量部であり、上記したトリブロック共重合体は300重量部であった。また、熱可塑性重合体組成物5におけるCAT−1およびINACTの含有量を仕込み量に基づいて算出すると、組成物全体に対し、CAT−1が15.1ppmであり、INACTが500ppmであった。
上記したジブロック共重合体およびトリブロック共重合体における付加重合系ブロック(イ)は、いずれもHVSIS−2と同様の構造を有していた。
【0151】
熱可塑性重合体組成物5および上記のPP(最外層)を用いて、上記した方法で射出成形を行って、射出成形性および連続成形性の評価を行うとともに、得られた積層構造体における層間の接着強度および塗料の付着性を上記した方法で測定または評価した。結果を表2に示す。
【0152】
比較例4
高分子ポリオール(POH−3)、鎖伸長剤(BD)、有機ジイソシアネート化合物(MDI)、官能基含有ブロック共重合体(TPS−1)およびCAT−1(化合物(b))を下記の表2に示す割合で使用し、INACT(化合物(c))を使用しなかったこと以外は実施例1と同様の方法により、熱可塑性重合体組成物C4を製造した。熱可塑性重合体組成物C4について、上記した方法により溶融粘度を測定し、溶融粘度比率(ηa/ηa)を求め、溶融滞留安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0153】
熱可塑性重合体組成物C4の一部を取り、ジメチルホルムアミドを用いて組成物中のポリウレタンを抽出除去した。次いでシクロヘキサンを用いて未反応のHVSIS−OH−1およびHVSIS−1を抽出除去し、残留した固形物を乾燥することにより、ブロック共重合体C4を得た。H−NMRで分析した結果、ブロック共重合体C4は、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕とポリ(テトラメチレングリコール)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕からなるジブロック共重合体であることが分かった。なお、シクロヘキサンによる抽出物は、GPC分析の結果、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕を2個、ポリ(テトラメチレングリコール)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕を1個有するトリブロック共重合体を含有していることが分かった。
ジメチルホルムアミドを用いて抽出されたポリウレタンおよびシクロヘキサンを用いて抽出された未反応のHVSIS−OH−1、HVSIS−1およびトリブロック共重合体の重量は、上記したジブロック共重合体を100重量部としたとき、ポリウレタンは175重量部、HVSIS−OH−1は0重量部、HVSIS−1は75重量部であり、上記したトリブロック共重合体は150重量部であった。また、熱可塑性重合体組成物C4におけるCAT−1の含有量を仕込み量に基づいて算出すると、組成物全体に対し16.6ppmであった。
【0154】
熱可塑性重合体組成物C4および上記のPP(最外層)を用いて、上記した方法で射出成形を行って、射出成形性および連続成形性の評価を行うとともに、得られた積層構造体における層間の接着強度および塗料の付着性を上記した方法で測定または評価した。結果を表2に示す。
【0155】
比較例5
高分子ポリオール(POH−3)、鎖伸長剤(BD)、有機ジイソシアネート化合物(MDI)、官能基含有ブロック共重合体(TPS−2)、CAT−1(化合物(b))およびINACT(化合物(c))を、下記の表2に示す割合で使用したこと以外は実施例1と同様の方法により、熱可塑性重合体組成物C5を製造した。熱可塑性重合体組成物C5について、上記した方法により溶融粘度を測定し、溶融粘度比率(ηa/ηa)を求め、溶融滞留安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0156】
熱可塑性重合体組成物C5および上記のPP(最外層)を用いて、上記した方法で射出成形を行って、射出成形性および連続成形性の評価を行うとともに、得られた積層構造体における層間の接着強度および塗料の付着性を上記した方法で測定または評価した。結果を表2に示す。
【0157】
比較例6
(1)CAT−1(化合物(b))を50ppm、およびINACT(化合物(c))を285ppm含有する高分子ポリオール(POH−3)、鎖伸長剤(BD)および有機ジイソシアネート化合物(MDI)を、POH−3:BD:MDIのモル比が1.0:2.6:3.6(窒素原子含有率は3.2重量%)で、かつこれらの合計供給量が110g/分となるようにして同軸方向に回転する二軸スクリュー型押出機(30mmφ、L/D=36;加熱ゾーンは前部、中央部、後部の3つの帯域に分けた)の加熱ゾーンの前部に連続供給して、260℃で連続溶融重合を実施した。官能基含有ブロック共重合体(TPS−2)を90g/分となるようにして上記の二軸スクリュー型押出機の加熱ゾーンの中央部に連続供給し、上記の反応混合物と反応させ、得られた溶融物をストランド状で水中に連続的に押し出し、次いでペレタイザーで切断し、ペレットを得た。得られたペレットを80℃で4時間除湿乾燥することにより、熱可塑性重合体組成物C6を得た。熱可塑性重合体組成物C6の溶融粘度を上記した方法で測定し、溶融粘度比率(ηa/ηa)を求め、溶融滞留安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0158】
熱可塑性重合体組成物C6の一部を取り、ジメチルホルムアミドを用いて組成物中のポリウレタンを抽出除去した。次いでシクロヘキサンを用いて未反応のHVSIS−OH−2およびHVSIS−2を抽出除去し、残留した固形物を乾燥することにより、ブロック共重合体C6を得た。H−NMRで分析した結果、ブロック共重合体C6は、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕とポリ(テトラメチレングリコール)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕からなるジブロック共重合体であることが分かった。なお、シクロヘキサンによる抽出物は、GPC分析の結果、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕を2個、ポリ(テトラメチレングリコール)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕を1個有するトリブロック共重合体を含有していることが分かった。
ジメチルホルムアミドを用いて抽出されたポリウレタンおよびシクロヘキサンを用いて抽出された未反応のHVSIS−OH−2、HVSIS−2およびトリブロック共重合体の重量は、上記したジブロック共重合体を100重量部としたとき、ポリウレタンは1020重量部、HVSIS−OH−2は0重量部、HVSIS−2は177重量部であり、上記したトリブロック共重合体は670重量部であった。また、熱可塑性重合体組成物C6におけるCAT−1およびINACTの含有量を仕込み量に基づいて算出すると、組成物全体に対し、CAT−1が17.3ppmであり、INACTが100ppmであった。
なお、上記したジブロック共重合体およびトリブロック共重合体における付加重合系ブロック(イ)は、いずれもHVSIS−2と同様の構造を有していた。
【0159】
(2)熱可塑性重合体組成物C6および上記のPP(最外層)を用いて、上記した方法で射出成形を行って、射出成形性および連続成形性の評価を行うとともに、得られた積層構造体における層間の接着強度および塗料の付着性を上記した方法で測定または評価した。結果を表2に示す。
【0160】
【表2】
Figure 0003923385
【0161】
表2中の注。
1)高分子ポリオールに対する、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物のモル比。
2)官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤、有機ジイソシアネート化合物、化合物(b)および化合物(c)の合計重量に対する割合。
3)高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に対する割合。
4)官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に対する割合。
【0162】
実施例6
(1)官能基含有ブロック共重合体(TPS−1)〔供給量:110g/分〕、CAT−1(化合物(b))を10ppm含有する高分子ポリオール(POH−1)、鎖伸長剤(BD)および有機ジイソシアネート化合物(MDI)〔POH−1:BD:MDI=1.0:3.5:4.5(モル比、窒素原子含有率は4.3重量%);POH−1、BDおよびMDIの合計供給量:90g/分〕を同軸方向に回転する二軸スクリュー型押出機(30mmφ、L/D=36;加熱ゾーンは前部、中央部、後部の3つの帯域に分けた)の加熱ゾーンの前部に連続供給して、260℃の連続溶融重合でポリウレタン形成反応を実施した。
次に、上記の二軸スクリュー型押出機の後部にINACT(化合物(c))を添加(供給量:0.003g/分)し、得られた溶融物をストランド状で水中に連続的に押し出し、次いでペレタイザーで切断し、ペレットを得た。得られたペレットを80℃で4時間除湿乾燥することにより、熱可塑性重合体組成物6を得た。熱可塑性重合体組成物6の溶融粘度を上記した方法で測定し、溶融粘度比率(ηa/ηa)を求め、溶融滞留安定性を評価した。結果を表3に示す。
【0163】
熱可塑性重合体組成物6の一部を取り、ジメチルホルムアミドを用いて組成物中のポリウレタンを抽出除去した。次いでシクロヘキサンを用いて未反応のHVSIS−OH−1およびHVSIS−1を抽出除去し、残留した固形物を乾燥することにより、ブロック共重合体6を得た。H−NMRで分析した結果、ブロック共重合体6は、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕とポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕からなるジブロック共重合体であることが分かった。なお、シクロヘキサンによる抽出物は、GPC分析の結果、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕を2個、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕を1個有するトリブロック共重合体を含有していることが分かった。
ジメチルホルムアミドを用いて抽出されたポリウレタンおよびシクロヘキサンを用いて抽出された未反応のHVSIS−OH−1、HVSIS−1およびトリブロック共重合体の重量は、上記したジブロック共重合体を100重量部としたとき、ポリウレタンは431重量部、HVSIS−OH−1は0重量部、HVSIS−1は206重量部であり、上記したトリブロック共重合体は525重量部であった。また、熱可塑性重合体組成物6におけるCAT−1およびINACTの含有量を仕込み量に基づいて算出すると、組成物全体に対し、CAT−1が2.3ppmであり、INACTが15ppmであった。
なお、上記したジブロック共重合体およびトリブロック共重合体における付加重合系ブロック(イ)は、いずれもHVSIS−1と同様の構造を有していた。
【0164】
(2)上記で得られた熱可塑性重合体組成物6、並びに上記のPPおよびTPUを用いて、上記した方法で押出成形を行って、押出成形性および連続成形性の評価を行うとともに、得られた積層構造体における層間の接着強度を上記した方法で測定した。結果を表3に示す。
【0165】
実施例7
(1)熱可塑性ポリウレタンの製造
CAT−1(化合物(b))5ppm含有する高分子ポリオール(POH−2)、鎖伸長剤(BD)および有機ジイソシアネート化合物(MDI)を、POH−2:BD:MDIのモル比が1.0:2.4:3.5(窒素原子含有率は2.1重量%)で、かつこれらの合計供給量が200g/分となるようにして同軸方向に回転する二軸スクリュー型押出機(30mmφ、L/D=36)に連続供給して、260℃の連続溶融重合でポリウレタン形成反応を実施した。得られた熱可塑性ポリウレタンの溶融物をストランド状で水中に連続的に押し出し、次いでペレタイザーで切断し、ペレットを得た。得られたペレットを80℃で4時間除湿乾燥することにより熱可塑性ポリウレタンを得た。得られた熱可塑性ポリウレタンについて、上記した方法により溶融粘度(ηa)を測定したところ、12700ポイズであった。
【0166】
(2)熱可塑性重合体組成物の製造
官能基含有ブロック共重合体(TPS−2)〔供給量:110g/分〕および上記(1)で得られた熱可塑性ポリウレタン(供給量:90g/分)を同軸方向に回転する二軸スクリュー型押出機(30mmφ、L/D=36;加熱ゾーンは前部、中央部、後部の3つの帯域に分けた)の加熱ゾーンの前部に連続供給して、260℃で反応させた。
次に、上記の二軸スクリュー型押出機の後部にINACT(化合物(c))を添加(供給量:0.01g/分)し、得られた溶融物をストランド状で水中に連続的に押し出し、次いでペレタイザーで切断し、ペレットを得た。得られたペレットを80℃で4時間除湿乾燥することにより、熱可塑性重合体組成物7を得た。熱可塑性重合体組成物7について、上記した方法により溶融粘度を測定し、溶融粘度比率(ηa/ηa)を求め、溶融滞留安定性を評価した。結果を表3に示す。
【0167】
熱可塑性重合体組成物7の一部を取り、ジメチルホルムアミドを用いて組成物中のポリウレタンを抽出除去した。次いでシクロヘキサンを用いて未反応のHVSIS−OH−2およびHVSIS−2を抽出除去し、残留した固形物を乾燥することにより、ブロック共重合体7を得た。H−NMRで分析した結果、ブロック共重合体7は、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕とポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕からなるジブロック共重合体であることが分かった。なお、シクロヘキサンによる抽出物は、GPC分析の結果、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕を2個、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕を1個有するトリブロック共重合体を含有していることが分かった。
ジメチルホルムアミドを用いて抽出されたポリウレタンおよびシクロヘキサンを用いて抽出された未反応のHVSIS−OH−2、HVSIS−2およびトリブロック共重合体の重量は、上記したジブロック共重合体を100重量部としたとき、ポリウレタンは127重量部、HVSIS−OH−2は0重量部、HVSIS−2は370重量部であり、上記したトリブロック共重合体は70重量部であった。また、熱可塑性重合体組成物7におけるCAT−1およびINACTの含有量を仕込み量に基づいて算出すると、組成物全体に対し、CAT−1が5ppmであり、INACTが50ppmであった。
なお、上記したジブロック共重合体およびトリブロック共重合体における付加重合系ブロック(イ)は、いずれもHVSIS−2と同様の構造を有していた。
【0168】
(3)積層体の製造
上記で得られた熱可塑性重合体組成物7、並びに上記のPPおよびTPUを用いて、上記した方法で押出成形を行って、押出成形性および連続成形性の評価を行うとともに、得られた積層構造体における層間の接着強度を上記した方法で測定した。結果を表3に示す。
【0169】
【表3】
Figure 0003923385
【0170】
表3中の注。
1)高分子ポリオールに対する、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物のモル比。
2)官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤、有機ジイソシアネート化合物、化合物(b)および化合物(c)の合計重量に対する割合。
3)高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に対する割合。
4)官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に対する割合。
【0171】
表1〜3の結果から、実施例1〜7で得られた本発明の熱可塑性重合体組成物は、押出成形性や射出成形性、特に連続成形性に優れていることが分かる。また、本発明の熱可塑性重合体組成物を使用し、押出成形や射出成形で得られた積層構造体は非極性樹脂や極性樹脂との層間の接着強度が極めて高く、しかも、塗料の付着性にも優れていることが分かる。
【0172】
実施例8
高分子ポリオール(POH−2)、鎖伸長剤(BD)、有機ジイソシアネート化合物(MDI)、官能基含有ブロック共重合体(TPS−3)、CAT−1(化合物(b))およびINACT(化合物(c))を、下記の表4に示す割合で使用したこと以外は実施例1と同様の方法により熱可塑性重合体組成物8を製造した。得られた熱可塑性重合体組成物8について、上記した方法により溶融粘度を測定し、溶融粘度比率(ηa/ηa)を求め、溶融滞留安定性を評価した。結果を表4に示す。
【0173】
熱可塑性重合体組成物8の一部を取り、ジメチルホルムアミドを用いて組成物中のポリウレタンを抽出除去した。次いでシクロヘキサンを用いて未反応のSEEPS−OHおよびSEEPSを抽出除去し、残留した固形物を乾燥することにより、ブロック共重合体8を得た。H−NMRで分析した結果、ブロック共重合体8は、ポリスチレンブロック−水素添加ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕とポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕からなるジブロック共重合体であることが分かった。なお、シクロヘキサンによる抽出物は、GPC分析の結果、ポリスチレンブロック−水素添加ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕を2個、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕を1個有するトリブロック共重合体を含有していることが分かった。
ジメチルホルムアミドを用いて抽出された未反応のポリウレタンおよびシクロヘキサンを用いて抽出された未反応のSEEPS−OH、SEEPSおよびトリブロック共重合体の重量は、上記したジブロック共重合体を100重量部としたとき、未反応のポリウレタンは180重量部、SEEPS−OHは0重量部、SEEPSは21重量部であり、上記したトリブロック共重合体は133重量部であった。また、熱可塑性重合体組成物8におけるCAT−1およびINACTの含有量を仕込み量に基づいて算出すると、組成物全体に対し、CAT−1が7.5ppmであり、INACTが150ppmであった。
なお、上記したジブロック共重合体およびトリブロック共重合体における付加重合系ブロック(イ)は、いずれもSEEPSと同様の構造を有していた。また、上記したジブロック共重合体の数平均分子量は75,000であり、トリブロック共重合体の数平均分子量は103,000であった。
【0174】
実施例9
高分子ポリオール(POH−1)、鎖伸長剤(MPD)、有機ジイソシアネート化合物(MDI)、官能基含有ブロック共重合体(TPS−3)、CAT−1(化合物(b))およびINACT(化合物(c))を、下記の表4に示す割合で使用したこと以外は実施例1と同様の方法により、熱可塑性重合体組成物9を製造した。熱可塑性重合体組成物9について、上記した方法により溶融粘度を測定し、溶融粘度比率(ηa/ηa)を求め、溶融滞留安定性を評価した。結果を表4に示す。
【0175】
熱可塑性重合体組成物9の一部を取り、ジメチルホルムアミドを用いて組成物中のポリウレタンを抽出除去した。次いでシクロヘキサンを用いて未反応のSEEPS−OHおよびSEEPSを抽出除去し、残留した固形物を乾燥することにより、ブロック共重合体9を得た。H−NMRで分析した結果、ブロック共重合体9は、ポリスチレンブロック−水素添加ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕とポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕からなるジブロック共重合体であることが分かった。なお、シクロヘキサンによる抽出物は、GPC分析の結果、ポリスチレンブロック−水素添加ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕を2個、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕を1個有するトリブロック共重合体を含有していることが分かった。
ジメチルホルムアミドを用いて抽出されたポリウレタンおよびシクロヘキサンを用いて抽出された未反応のSEEPS−OH、SEEPSおよびトリブロック共重合体の重量は、上記したジブロック共重合体を100重量部としたとき、未反応のポリウレタンは160重量部、SEEPS−OHは0重量部、SEEPSは24重量部であり、上記したトリブロック共重合体は138重量部であった。また、熱可塑性重合体組成物9におけるCAT−1およびINACTの含有量を仕込み量に基づいて算出すると、組成物全体に対し、CAT−1が2.3ppmであり、INACTが30ppmであった。
なお、上記したジブロック共重合体およびトリブロック共重合体における付加重合系ブロック(イ)は、いずれもSEEPSと同様の構造を有していた。また、上記したジブロック共重合体の数平均分子量は90,000であり、トリブロック共重合体の数平均分子量は102,000であった。
【0176】
実施例10
高分子ポリオール(POH−2)、鎖伸長剤(BD)、有機ジイソシアネート化合物(MDI)、官能基含有ブロック共重合体(TPS−2)、CAT−2(化合物(b))およびINACT(化合物(c))を、下記の表4に示す割合で使用したこと以外は実施例1と同様の方法により、熱可塑性重合体組成物10を製造した。得られた熱可塑性重合体組成物10について、上記した方法により溶融粘度を測定し、溶融粘度比率(ηa/ηa)を求め、溶融滞留安定性を評価した。結果を表4に示す。
【0177】
熱可塑性重合体組成物10の一部を取り、ジメチルホルムアミドを用いて組成物中のポリウレタンを抽出除去した。次いでシクロヘキサンを用いて未反応のHVSIS−OH−2およびHVSIS−2を抽出除去し、残留した固形物を乾燥することにより、ブロック共重合体10を得た。H−NMRで分析した結果、ブロック共重合体10は、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕とポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕からなるジブロック共重合体であることが分かった。なお、シクロヘキサンによる抽出物は、GPC分析の結果、ポリスチレンブロック−水素添加ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕を2個、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4−ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕を1個有するトリブロック共重合体を含有していることが分かった。
ジメチルホルムアミドを用いて抽出されたポリウレタンおよびシクロヘキサンを用いて抽出された未反応のHVSIS−OH−2、HVSIS−2およびトリブロック共重合体の重量は、上記したジブロック共重合体を100重量部としたとき、ポリウレタンは166重量部、HVSIS−OH−2は0重量部、HVSIS−2は43重量部であり、上記したトリブロック共重合体は127重量部であった。また、熱可塑性重合体組成物10におけるCAT−2およびINACTの含有量を仕込み量に基づいて算出すると、組成物全体に対し、CAT−2が5ppmであり、INACTが100ppmであった。
なお、上記したジブロック共重合体およびトリブロック共重合体における付加重合系ブロック(イ)は、いずれもHVSIS−2と同様の構造を有していた。また、上記したジブロック共重合体の数平均分子量は160,000であり、トリブロック共重合体の数平均分子量は165,000であった。
【0178】
【表4】
Figure 0003923385
【0179】
上記表4中の注。
1)高分子ポリオールに対する、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物のモル比。
2)官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤、有機ジイソシアネート化合物、化合物(b)および化合物(c)の合計重量に対する割合。
3)高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に対する割合。
4)官能基含有ブロック共重合体、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に対する割合。
【0180】
【発明の効果】
本発明によれば、非粘着性で、取扱い性および溶融成形性に優れる熱可塑性重合体組成物が提供される。本発明の熱可塑性重合体組成物は、特に溶融状態における熱安定性に優れていることから、高品質の成形品を生産性良く製造することができる。
本発明の熱可塑性重合体組成物は、各種成形品の製造、他の材料との複合化による複合成形体の製造、ホットメルト接着剤などの広範な用途において利用可能である。

Claims (12)

  1. 芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックを有するブロック共重合体またはその水素添加物からなる付加重合系ブロック(イ)と高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物から形成されるポリウレタンブロック(ロ)を有するブロック共重合体(a)、有機スズ系化合物、有機チタン系化合物および第3級アミンから選ばれる少なくとも1種の化合物(b)並びにリン系化合物および/またはフェノール系化合物(c)を含有し、以下のA〜Eを満足する熱可塑性重合体組成物であって、
    以下のi)〜 iv )を満足するように、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとからなり、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1つの成分と反応し得る官能基を末端に有するブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体(a )、数平均分子量が500〜10,000の高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物を、化合物(b)の存在下に反応させて得られる生成物に、化合物(c)を添加して得られるか、または、
    以下のi’)〜 iv ’)を満足するように、数平均分子量が500〜10,000の高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物と、前記ブロック共重合体(a )を、化合物(b)の存在下に反応させて得られる生成物に、化合物(c)を添加して得られる熱可塑性重合体組成物。
    A:高分子ポリオールの数平均分子量が500〜10,000である。
    B:ポリウレタンブロック(ロ)において、有機ジイソシアネート化合物に由来する窒素原子含有量が、前記高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に基づいて1〜6.5重量%の範囲内である。
    C:化合物(b)の含有量がブロック共重合体(a)の重量に対して0.1ppm〜0.2重量%である。
    D:化合物(c)の含有量がブロック共重合体(a)の重量に対して1ppm〜2重量%である。
    E:熱可塑性重合体組成物の溶融粘度が下記の式(I)を満足する。
    0.9≦ηa/ηa≦1.4 (I)
    〔ηa:荷重490.3N(50kgf)、200℃の条件下でウレタン結合が解離平衡に到達した時点の熱可塑性重合体組成物の溶融粘度、
    ηa:荷重490.3N(50kgf)、200℃の条件下で60分経過した時点の熱可塑性重合体組成物の溶融粘度〕
    i)[ブロック共重合体(a )の重量]:[高分子ポリオールの重量+鎖伸長剤の重量+有機ジイソシアネート化合物の重量]=10:90〜90:10である。
    ii )有機ジイソシアネート化合物に由来する窒素原子含有量が、前記高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に基づいて1〜6.5重量%の範囲内である。
    iii )化合物(b)の使用量が、前記ブロック共重合体(a )、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に対して0.1ppm〜0.2重量%の範囲内である。
    iv )化合物(c)の添加量が、前記ブロック共重合体(a )、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に対して1ppm〜2重量%の範囲内である。
    i’)[ブロック共重合体(a )の重量]:[高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物の重量]=10:90〜90:10である。
    ii ’)有機ジイソシアネート化合物に由来する窒素原子含有量が、前記高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に基づいて1〜6.5重量%の範囲内である。
    iii ’)化合物(b)の使用量が、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネ ート化合物の反応物と前記ブロック共重合体(a )の合計重量に対して0.1ppm〜0.2重量%の範囲内である。
    iv ’)化合物(c)の添加量が、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物と前記ブロック共重合体(a )の合計重量に対して1ppm〜2重量%の範囲内である。
  2. ブロック共重合体(a)における付加重合系ブロック(イ)とポリウレタンブロック(ロ)の重量比が、付加重合系ブロック(イ)/ポリウレタンブロック(ロ)=95/5〜10/90である請求項1記載の熱可塑性重合体組成物。
  3. 鎖伸長剤が、分岐を分子内に有する数平均分子量が100〜400の脂肪族ジオールである請求項1または2に記載の熱可塑性重合体組成物。
  4. 付加重合系ブロック(イ)における共役ジエン系重合体ブロックが、水素添加されていてもよいイソプレン重合体ブロック、水素添加されていてもよいブタジエン重合体ブロックまたは水素添加されていてもよいイソプレンとブタジエンとの共重合体ブロックである請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体組成物。
  5. 付加重合系ブロック(イ)における共役ジエン系重合体ブロックが、1,2−結合および3,4−結合の合計の割合が30モル%以上である、水素添加されていてもよいイソプレン重合体ブロックまたは水素添加されていてもよいイソプレンとブタジエンとの共重合体ブロックである請求項4に記載の熱可塑性重合体組成物。
  6. 付加重合系ブロック(イ)における共役ジエン系重合体ブロックが、1,2−結合の割合が60モル%以上である水素添加されていてもよいブタジエン重合体ブロックである請求項4に記載の熱可塑性重合体組成物。
  7. さらにスチレン系重合体またはオレフィン系重合体よりなる重合体(d)を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体組成物からなる成形品。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体組成物と他の材料よりなる複合成形体。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体組成物からなるホットメルト接着剤。
  11. 芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとからなり、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1つの成分と反応し得る官能基を末端に有するブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体(a)、数平均分子量が500〜10,000の高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物を、有機スズ系化合物、有機チタン系化合物および第3級アミンから選ばれる少なくとも1種の化合物(b)の存在下に反応させて得られる生成物に、リン系化合物および/またはフェノール系化合物(c)を添加することからなり、以下のi)〜iv)を満足する熱可塑性重合体組成物の製造方法。
    i)[ブロック共重合体(a)の重量]:[高分子ポリオールの重量+鎖伸長剤の重量+有機ジイソシアネート化合物の重量]=10:90〜90:10である。
    ii)有機ジイソシアネート化合物に由来する窒素原子含有量が、前記高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に基づいて1〜6.5重量%の範囲内である。
    iii)化合物(b)の使用量が、前記ブロック共重合体(a)、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に対して0.1ppm〜0.2重量%の範囲内である。
    iv)化合物(c)の添加量が、前記ブロック共重合体(a)、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に対して1ppm〜2重量%の範囲内である。
  12. 数平均分子量が500〜10,000の高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物と、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとからなり、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1つの成分と反応し得る官能基を末端に有するブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体(a)を、有機スズ系化合物、有機チタン系化合物および第3級アミンから選ばれる少なくとも1種の化合物(b)の存在下に反応させて得られる生成物に、リン系化合物および/またはフェノール系化合物(c)を添加することからなり、以下のi)〜iv)を満足する熱可塑性重合体組成物の製造方法。
    )[ブロック共重合体(a)の重量]:[高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物の重量]=10:90〜90:10である。
    ii)有機ジイソシアネート化合物に由来する窒素原子含有量が、前記高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の合計重量に基づいて1〜6.5重量%の範囲内である。
    iii)化合物(b)の使用量が、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物と前記ブロック共重合体(a)の合計重量に対して0.1ppm〜0.2重量%の範囲内である
    iv)化合物(c)の添加量が、高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物の反応物と前記ブロック共重合体(a)の合計重量に対して1ppm〜2重量%の範囲内である。
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