JP3921945B2 - インクジェット式記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧力室内の圧力変動によりノズル開口からインク滴を吐出させて画像等を記録するインクジェット式記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット式プリンタやプロッタ等のインクジェット式記録装置では、記録ヘッドを主走査方向に、記録紙を副走査方向にそれぞれ移動させ、これらの移動に連動して記録ヘッドのノズル開口からインク滴を吐出させることにより、記録紙上に画像や文字を記録する。このインク滴の吐出は、ノズル開口に対応させて設けた圧力発生素子(例えば圧電振動子)を作動させ、ノズル開口と連通した圧力室に圧力変動を生じさせることで行われる。
【0003】
この種の記録装置では、画質を向上させるために大きさの異なる複数種類のドットによる階調表現が行われている。このため、インク滴を吐出させる同一波形形状の吐出パルス信号を複数含んだ一連の駆動信号から吐出パルス信号を選択して圧力発生素子に供給し、圧力発生素子に供給する吐出パルス信号の数に応じてドットの大きさを変えるようにした記録装置が提案されている。
この記録装置では、例えば、一定間隔で発生される吐出パルス信号を一記録周期内に3つ含ませて一連の駆動信号を構成し、大ドットを形成する場合は記録周期内の3つの吐出パルス信号を圧力発生素子に供給し、中ドットを形成する場合は2つの吐出パルス信号を圧力発生素子に供給し、小ドットを形成する場合は1つの吐出パルス信号を圧力発生素子に供給する。これにより、「大ドット」、「中ドット」、「小ドット」、「非記録」の4階調での階調表現を行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の記録ヘッドは、比較的高い周波数で圧力室に圧力変動を生じさせてインク滴を吐出するので、インク滴の量、飛翔速度、飛翔方向などは、ノズル開口のメニスカス(ノズル開口にて露出したインクの自由表面)の振動方向や位置によって変化してしまう。このため、インク滴の量等を揃えるためには、吐出パルス信号の供給開始時点におけるメニスカスの振動方向やメニスカスの位置を揃えることが肝要である。従って、前後に吐出される吐出パルス信号同士の時間間隔、言い換えれば、吐出パルス信号の圧力発生素子への供給間隔を揃えることが求められる。
【0005】
しかしながら、従来の記録装置では、吐出パルス信号の圧力発生素子への供給間隔がばらついてしまうことがあった。
例えば、50マイクロ秒の周期で吐出パルス信号が発生され、この吐出パルス信号が一記録周期内に3つ含まれている場合について考える。この場合において、大ドットを記録するときには、記録周期内の3つの吐出パルス信号を全て選択する。そして、中ドットを記録するときには、2つの吐出パルス信号、例えば1番目の吐出パルス信号と3番目の吐出パルス信号とを選択する。また、小ドットを記録するときには、1つの吐出パルス信号、例えば、2番目の吐出パルス信号を選択する。
【0006】
そして、大ドットを連続的に記録する場合には、50マイクロ秒の周期で発生する全ての吐出パルス信号を選択して圧力発生素子へ供給するので、吐出パルス信号の供給間隔は50マイクロ秒で一定になる。同様に、小ドットを連続的に記録する場合には、一記録周期内の特定の吐出パルス信号を選択して圧力発生素子へ供給するので、吐出パルス信号の供給間隔は150マイクロ秒で一定になる。従って、大ドットや小ドットについては、連続記録時においてもインク滴の量等を揃えることができる。
【0007】
しかし、中ドットを連続的に記録する場合には、一記録周期内に等間隔で発生する3つの吐出パルス信号の内の何れか2つの吐出パルス信号を選択することになるので、吐出パルス信号の供給間隔が50マイクロ秒、100マイクロ秒、50マイクロ秒、100マイクロ秒・・・、あるいは、その逆、とばらついて一定しない。このため、吐出パルス信号の供給開始時点におけるメニスカスの振動方向やメニスカスの位置がばらつき、インク滴の量にばらつきが生じてしまう。その結果、画像にむらが生じてしまう等の不具合が生じる。
【0008】
また、この種の記録ヘッドではメニスカスが空気に曝されているので、このメニスカスを通じてインク溶媒の蒸発が生じ、ノズル開口付近のインク粘度が上昇している。そして、ノズル開口付近のインク粘度が上昇してしまうと、やはりインク滴の量等がばらついてしまう。このため、記録ヘッドの主走査中において、インク滴を吐出しないノズル開口については、メニスカスを微振動させることでノズル開口付近のインクを攪拌し、インクの増粘を防止している。
【0009】
ここで、メニスカスを微振動させるための微振動パルス信号は、上記の吐出パルス信号と共に一記録周期内に配置される。このため、単に微振動パルス信号を配置しただけでは、一記録周期が長くなってしまい、記録速度の向上させることが困難になってしまう。また、前記録周期でインク滴を吐出した直後に微振動パルスを供給してしまうと、インク滴の吐出に伴うメニスカスの振動が収束しない内に微振動パルスが供給されてメニスカスが加振され、メニスカスの過剰な振動が持続してしまう虞がある。そして、過剰な振動が持続すると、次記録周期でインク滴を吐出する際にインク滴の量等がばらついてしまう。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録画像の高画質化を図ると共に、記録動作中になされるメニスカスの微振動を最適化することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のものは、インク滴を吐出させる同一波形形状の吐出パルス信号を複数含む一連の駆動信号を発生する駆動信号発生手段と、駆動信号発生手段が発生した駆動信号からパルス信号を選択し、選択したパルス信号を圧力発生素子に供給するパルス供給手段とを備え、圧力発生素子に供給する吐出パルス信号の数に応じて記録するドットの大きさを変えるように構成したインクジェット式記録装置において、
前記吐出パルス信号を、周期t毎に発生される基本吐出パルスと、基本吐出パルスの後に発生される補助吐出パルスとから構成し、
駆動信号発生手段は、3つの基本吐出パルスと、1つの補助吐出パルスとを一記録周期内に含む駆動信号を発生し、
パルス供給手段は、大ドットが連続して記録される際に、圧力発生素子へのパルス供給間隔が記録周期を跨いで一定になるように一記録周期内に発生される3つの基本吐出パルスを選択し、中ドットが連続して記録される際に、圧力発生素子へのパルス供給間隔が記録周期を跨いで一定になるように一記録周期内に発生される1つの基本吐出パルスと1つの補助吐出パルスを選択し、小ドットが連続して記録される際に、圧力発生素子へのパルス供給間隔が記録周期を跨いで一定になるように一記録周期内に発生される1つの基本吐出パルスを選択することを特徴とするインクジェット式記録装置である。
【0012】
請求項2に記載のものは、前記吐出パルス信号を、周期t毎に発生される基本吐出パルスと、基本吐出パルスの発生タイミングから1/2t経過後のタイミングで発生される補助吐出パルスとから構成し、
前記パルス供給手段は、中ドットが連続して記録される際に、圧力発生素子へのパルス供給間隔が記録周期を跨いで一定になるように一記録周期内に発生される1番目の基本吐出パルスを選択すると共に、2番目の基本吐出パルスの発生タイミングから1/2t経過後のタイミングで発生される補助吐出パルスとを選択することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット式記録装置である。
【0013】
請求項3に記載のものは、前記駆動信号は、インク滴が吐出しない程度にメニスカスを微振動させる微振動パルス信号を含み、
前記微振動パルス信号を、微振動加圧パルスと、微振動減圧パルスとから構成し、
前記駆動信号発生手段は、一対の微振動加圧パルス及び微振動減圧パルスを一記録周期内に含み、微振動加圧パルス及び微振動減圧パルスの一方を記録周期の前半であって隣り合う基本吐出パルス同士の間に配置すると共に、微振動加圧パルス及び微振動減圧パルスの他方を記録周期の後半に配置した駆動信号を発生し、
パルス供給手段は、ドットの非記録の際には、微振動加圧パルスと微振動減圧パルスとを選択することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット式記録装置である。
【0014】
請求項4に記載のものは、前記駆動信号発生手段は、微振動加圧パルス及び微振動減圧パルスの他方を、最後の基本吐出パルスよりも後に配置した駆動信号を発生することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット式記録装置である。
【0015】
請求項5に記載のものは、前記駆動信号発生手段は、微振動加圧パルスを記録周期の前半に配置し、微振動減圧パルスを記録周期の後半に配置した駆動信号を発生することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のインクジェット式記録装置である。
【0016】
請求項6に記載のものは、前記駆動信号発生手段は、2番目の基本吐出パルスを一記録周期の半分のタイミングで発生することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のインクジェット式記録装置である。
【0017】
請求項7に記載のものは、前記圧力発生素子を圧電振動子によって構成し、この圧電振動子の変形によって圧力室の容積を変化させることにより、圧力室に圧力変動を生じさせることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載のインクジェット式記録装置である。
【0018】
請求項8に記載のものは、前記圧力発生素子を発熱素子によって構成し、この発熱素子が発生する熱によって気泡の体積を変化させることにより、圧力室に圧力変動を生じさせることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載のインクジェット式記録装置である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ここで、図1は、代表的なインクジェット式記録装置であるインクジェット式プリンタ(以下、単にプリンタと称する。)のブロック図である。
【0020】
例示したプリンタは、プリンタコントローラ1とプリントエンジン2とから構成されている。プリンタコントローラ1は、図示しないホストコンピュータ等からの印刷データ等を受信するインターフェース3(以下、外部I/F3と称する。)と、各種データの記憶等を行うRAM4と、各種データ処理のためのルーチン等を記憶したROM5と、CPU等からなる制御部6と、クロック信号(CK)を発生する発振回路7と、記録ヘッド8へ供給する駆動信号(COM)を発生する駆動信号発生回路9と、ドットパターンデータ及び駆動信号等をプリントエンジン2に送信するためのインターフェース10(以下、内部I/F10という)とを備えている。
【0021】
外部I/F3は、例えばキャラクタコード、グラフィック関数、イメージデータのいずれか1つのデータ又は複数のデータからなる印刷データをホストコンピュータ等から受信する。また、外部I/F3は、ホストコンピュータに対してビジー信号(BUSY)やアクノレッジ信号(ACK)等を出力する。
【0022】
RAM4は、受信バッファ、中間バッファ、出力バッファ及びワークメモリ(図示せず)等として利用されるものである。受信バッファには、外部I/F3が受信したホストコンピュータからの印刷データが一時的に記憶される。中間バッファには、制御部6によって中間コードに変換された中間コードデータが記憶される。出力バッファには、ドット毎の階調データ、つまり、ドットパターンデータが展開される。ROM5は、制御部6によって実行される各種制御ルーチン、フォントデータ及びグラフィック関数、各種手続き等を記憶している。
【0023】
制御部6は、受信バッファ内の印刷データを読み出して中間コードに変換し、この中間コードデータを中間バッファに記憶する。また、制御部6は、中間バッファから読み出した中間コードデータを解析し、ROM5内のフォントデータ及びグラフィック関数等を参照して中間コードデータをドット毎の階調データに展開する。この階調データ(SI)は、例えば2ビットデータで構成される。
【0024】
この展開された階調データは出力バッファに記憶されて、記録ヘッド8の1行分に相当する階調データが得られると、この1行分の階調データは、内部I/F10を介して記録ヘッド8にシリアル伝送される。出力バッファから1行分の階調データが出力されると、中間バッファの内容が消去されて、次の中間コードに対する変換が行われる。また、制御部6は、タイミング信号発生手段の一部を構成し、内部I/F10を通じて記録ヘッド8にラッチ信号(LAT)やチャンネル信号(CH)を供給する。これらのラッチ信号やチャンネル信号は、図4に示すように、駆動信号(COM)を構成するパルス信号(第1パルスPS1〜第6パルスPS6と、接続パルスCP1及びCP2)の供給開始タイミングを規定する。
【0025】
駆動信号発生回路9は、本発明における駆動信号発生手段の一種であり、記録ヘッド8へ供給する一連の駆動信号を発生する。この駆動信号は、所定量のインク滴を記録ヘッド8のノズル開口11(図3参照)から吐出させ得る吐出パルス信号と、インク滴を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微振動パルス信号とを含んで構成される。
上記の吐出パルス信号は、周期t毎に発生される基本吐出パルスと、この基本吐出パルスと同じ波形形状であって、基本吐出パルスの発生タイミングから1/2t(0.5t)経過後のタイミングで発生される補助吐出パルスとからなり、微振動パルス信号は、微振動加圧パルスと微振動減圧パルスとからなる。
【0026】
図4に例示した駆動信号は、一記録周期T内に、3つの基本吐出パルス(第1パルスPS1,第3パルスPS3,第5パルスPS5)と、1つの補助吐出パルス(第4パルスPS4)と、微振動加圧パルス(第2パルスPS2)と、微振動減圧パルス(第6パルスPS6)とを含んでいる。そして、駆動信号発生回路9は、これらのパルス信号を記録周期T毎に繰り返し発生する。なお、この駆動信号については、後で詳しく説明する。
【0027】
プリントエンジン2は、記録ヘッド8と、キャリッジ機構12と、紙送り機構13とを備えている。
【0028】
キャリッジ機構12は、記録ヘッド8が取り付けられたキャリッジと、このキャリッジをタイミングベルト等を介して走行させるパルスモータ等からなり、記録ヘッド8を主走査方向に移動させる。紙送り機構13は、紙送りモータ及び紙送りローラ等からなり、記録紙(印刷媒体の一種)を順次送り出して副走査を行う。
【0029】
次に、記録ヘッド8について詳しく説明する。まず、記録ヘッド8の構造について説明する。
図3に示すように、例示した記録ヘッド8は、ケース20の先端面に流路ユニット21を接合している。そして、ケース20の内部に収納した振動子ユニット22によって流路ユニット21内の圧力室23に圧力変動を生じさせて、ノズル開口11からインク滴を吐出する構成である。
【0030】
ケース20は、振動子ユニット22を収容する収容室24が内部に形成された箱状体であり、例えば樹脂材によって成型される。ケース20内に設けた収容室24は、流路ユニット21との接合面側の開口から反対面まで連なっている。
【0031】
流路ユニット21は、流路形成基板25の一方の面にノズルプレート26を、流路形成基板25の他方の面に振動板27を接合した構成とされる。流路形成基板25は、シリコンウエハー等から形成されており、これをエッチング加工することにより所定パターンに区画されていて、各ノズル開口11と連通する複数の圧力室23、共通インク室28、共通インク室28から各圧力室23へ繋がる複数のインク供給路29等をなす隔壁が適宜に形成されている。なお、共通インク室28には、インク供給管30と接続される接続口が設けられ、インクカートリッジ(図示せず)に貯留されたインクがこの接続口を通じて共通インク室28に供給される。
【0032】
ノズルプレート26には、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル開口11…が列状に開設されており、これらのノズル開口11…によってノズル列が構成されている。そして、このノズル列は、紙送り方向、つまり、副走査方向に形成されている。
【0033】
振動板27は、ステンレス板等の支持板31にPPS膜等の弾性体膜32を積層した二重構造を採り、各圧力室23に対応する部分は支持板31が環状にエッチング加工されて、環内に島部33が形成されている。
【0034】
振動子ユニット22は、圧力発生素子の一種である圧電振動子34と固定板35とから構成されている。圧電振動子34は、圧電体と電極層とを交互に積層した一枚の圧電振動子板に、流路ユニット21の各圧力室23…に対応した所定ピッチでスリット部を形成することにより櫛歯状に形成される。また、固定板35は、この櫛歯状振動子の基端部分に固着される。この振動子ユニット22は、圧電振動子34の先端が開口から臨む姿勢でケース20の収容室24内に挿入され、固定板35を収容室24の内壁へ固着させることによりケース20に取り付けられる。この取付状態において、圧電振動子34の各先端は、振動板27の対応する島部33に固着される。
【0035】
各圧電振動子34は、対向する電極間に電位差を与えることにより、積層方向と直交する素子長手方向に伸縮し、圧力室23を区画する弾性体膜32を変位させる。即ち、この記録ヘッド8では、充電により圧電振動子34が素子長手方向に縮小するので、この縮小に伴って弾性体膜32が変位して圧力室23が膨張する。また、放電により圧電振動子34が素子長手方向に伸長するので、この伸長に伴って弾性体膜32がノズルプレート26側へ押され、島部33周辺の弾性体膜32が変形して圧力室23が収縮する。そして、このような圧力室23の容積変化に伴って圧力室23内に充填されたインクに圧力変動が生じるので、圧力室23の容積変化を制御することにより、ノズル開口11からインク滴を吐出させることができる。
【0036】
次に、図1及び図2を参照して記録ヘッド8の電気的な構成について説明する。なお、図2では、図1に記載されている制御ロジックやレベルシフタを省略している。
【0037】
この記録ヘッド8は、第1シフトレジスタ41及び第2シフトレジスタ42からなるシフトレジスタ回路と、第1ラッチ回路43と第2ラッチ回路44とからなるラッチ回路と、デコーダ45と、制御ロジック46と、レベルシフタ47と、スイッチ回路48と、圧電振動子34とを備えている。各シフトレジスタ41,42、各ラッチ回路43,44、デコーダ45、スイッチ回路48、及び、圧電振動子34は、それぞれ記録ヘッド8の各ノズル開口11に対応して複数設けられる。例えば、図2に示すように、第1シフトレジスタ素子41A〜41Nと、第2シフトレジスタ素子42A〜42Nと、第1ラッチ素子43A〜43Nと、第2ラッチ素子44A〜44Nと、デコーダ素子45A〜45Nと、スイッチ素子48A〜48Nと、圧電振動子34A〜34Nとから構成される。
【0038】
そして、この記録ヘッド8は、プリンタコントローラ1からの階調データ(SI)に基づいてインク滴を吐出させる。即ち、プリンタコントローラ1からの階調データは、発振回路7からのクロック信号(CK)に同期して、内部I/F10から第1シフトレジスタ41及び第2シフトレジスタ42にシリアル伝送される。プリンタコントローラ1からの階調データは、例えば、(10)、(01)等の2ビットデータであり、各ドット毎、即ち、各ノズル開口11毎に設定される。そして、全てのノズル開口11に関する下位ビット(ビット0)のデータが第1シフトレジスタ素子41A〜41Nに入力され、全てのノズル開口11に関する上位ビット(ビット1)のデータが第2シフトレジスタ素子42A〜42Nに入力される。
【0039】
第1シフトレジスタ41には第1ラッチ回路43が電気的に接続され、第2シフトレジスタ42には第2ラッチ回路44が電気的に接続されている。そして、プリンタコントローラ1からのラッチ信号(LAT)が各ラッチ回路に入力されると、第1ラッチ回路43は階調データの下位ビットのデータをラッチし、第2ラッチ回路44は階調データの上位ビットをラッチする。即ち、各シフトレジスタ素子41A〜41N,42A〜42Nに入力された階調データは、各ラッチ素子43A〜43N,44A〜44Nにラッチされる。このような動作をする第1シフトレジスタ41及び第1ラッチ回路43と、第2シフトレジスタ42及び第2ラッチ回路44の組は、それぞれが記憶回路を構成し、デコーダ45に入力される前の階調データを一時記憶する。
【0040】
各ラッチ回路でラッチされた階調データは、デコーダ45、詳しくは、デコーダ素子45A〜45Nに入力される。このデコーダ45は、2ビットの階調データを翻訳して8ビットの印字データを生成する。従って、このデコーダ45、上記の制御部6、シフトレジスタ41,42、及び、ラッチ回路43,44は、印字データ生成手段として機能し、階調データから印字データを生成する。
【0041】
この印字データの各ビットは、図5に示すように、駆動信号(COM)を構成する第1パルスPS1〜第6パルスPS6及び接続パルスCP1,CP2に対応しており、各パルスの選択情報として機能する。また、デコーダ45には、制御ロジック46からのタイミング信号も入力されている。この制御ロジック46は、制御部6と共にタイミング信号発生手段として機能しており、ラッチ信号(LAT)やチャンネル信号(CH)に基づいてタイミング信号を発生する。
【0042】
デコーダ45によって翻訳された8ビットの印字データは、タイミング信号によって規定されるタイミングで上位ビット側から順次レベルシフタ47に入力される。このレベルシフタ47は、電圧増幅器として機能し、印字データが「1」の場合には、スイッチ回路48を駆動できる電圧、例えば数十ボルト程度の電圧に昇圧された電気信号を出力する。
【0043】
レベルシフタ47で昇圧された「1」の印字データは、スイッチ手段として機能するスイッチ回路48に供給される。このスイッチ回路48の入力側には、駆動信号発生回路9からの駆動信号(COM)が供給されており、スイッチ回路48の出力側には圧電振動子34が接続されている。印字データは、スイッチ回路48の作動を制御する。例えば、スイッチ回路48に加わる印字データが「1」である期間中は、駆動信号が圧電振動子34に供給され、この駆動信号に応じて圧電振動子34は変形する。一方、スイッチ回路48に加わる印字データが「0」の期間中は、レベルシフタ47からはスイッチ回路48を作動させる電気信号が出力されないので、圧電振動子34へは駆動信号が供給されない。要するに、印字データ「1」が設定された第1パルスPS1〜第6パルスPS6が選択的に圧電振動子34に供給される。なお、第1接続パルスCP1と第2接続パルスは圧電振動子34に供給されないので、対応する印字データは常に「0」が設定される。また、印字データ「0」が設定されている期間中において、圧電振動子34は直前の電位を維持する。
【0044】
そして、以上の説明から分かるように、本実施形態では、制御部6、シフトレジスタ41,42、ラッチ回路43,44、デコーダ45、制御ロジック46、レベルシフタ47、及び、スイッチ回路48が、本発明のパルス供給手段として機能しており、パルス信号としての第1パルスPS1〜第6パルスPS6を駆動信号から選択し、この選択したパルスを圧電振動子34に供給する。
【0045】
次に、駆動信号(COM)と、この駆動信号に基づくインク吐出制御について説明する。
【0046】
まず、駆動信号について説明する。図4に示すように、駆動信号発生回路9が発生する駆動信号は、周期t毎(例えば、50マイクロ秒)に発生される基本吐出パルス、及び、この基本吐出パルスの発生タイミングから1/2t(例えば、25マイクロ秒)経過後のタイミングで発生される補助吐出パルスとからなる吐出パルス信号と、微振動加圧パルス、及び、微振動減圧パルスとからなる微振動パルス信号と、圧電振動子34には供給されない接続パルス信号とを含んで構成されている。
【0047】
例えば、上記の駆動信号発生回路9は、基本吐出パルスとしての第1パルスPS1、第3パルスPS3及び第5パルスPS5を周期t毎に発生している。そして、2番目の基本吐出パルスである第3パルスPS3を、記録周期Tの略半分のタイミングで発生している。詳しくは、後述する吐出要素P3が1/2Tのタイミングとなるように第3パルスPS3を発生している。
また、駆動信号発生回路9は、補助吐出パルスとしての第4パルスPS4を、第3パルスPS3と第5パルスPS5の丁度中間のタイミングで発生している。即ち、この第4パルスPS4は、記録周期Tの後半であって、2番目の基本吐出パルスである第3パルスPS3の発生タイミングから1/2t経過後のタイミングで発生される。
【0048】
これらの第1パルスPS1,第3パルスPS3,第4パルスPS4,第5パルスPS5は、何れも同じ波形形状をしている。即ち、これらのパルスPS1,PS3,PS4,PS5は、中間電位VMから最高電位VPまでインク滴を吐出させない程度の一定勾配で電位を上昇させる膨張要素P1と、最高電位VPを所定時間保持する膨張ホールド要素P2と、最高電位VPから最低電位VLまで急勾配で電位を下降させる吐出要素P3と、最低電位VLを所定時間保持する収縮ホールド要素P4と、最低電位VLから中間電位VMまで電位を上昇させる制振要素P5とを含んで構成されている。
【0049】
そして、これらのパルスPS1,PS3,PS4,PS5を圧電振動子34に供給すると、各パルスが供給される毎に所定量(例えば13ピコリットル)の小インク滴がノズル開口11から吐出される。
【0050】
また、駆動信号発生回路9は、微振動加圧パルスとしての第2パルスPS2を第1パルスPS1と第3パルスPS3との間に発生し、微振動減圧パルスとしての第6パルスPS6を第5パルスPS5よりも後のタイミングで発生している。つまり、第2パルスPS2は記録周期Tの前半に配置され、第6パルスPS6は記録周期Tの後半、詳しくは、記録周期Tの最後に配置されている。
【0051】
そして、第2パルスPS2は、中間電位VMから微振動電位VMLまでインク滴を吐出させない程度の一定勾配で電位を下降させる微振動加圧要素P6と、微振動電位VLMを維持する第1微振動ホールド要素P7とを含んで構成されている。また、第6パルスPS6は、微振動電位VLMを維持する第2微振動ホールド要素P8と、微振動電位VMLから中間電位VMまでインク滴を吐出させない程度の一定勾配で電位を上昇させる微振動減圧要素P9とを含んで構成されている。なお、微振動電位VMLは、中間電位VMよりも低く、最低電位VLよりも高く設定された電位である。
【0052】
これらの第2パルスPS2と第6パルスPS6は、後述するように対になって選択される。そして、これらのパルスPS2,PS6が選択される際には、他のパルスは選択されないため、第2パルスPS2が圧電振動子34に供給されると振動子電位は中間電位VMから振動子電位VMLまで下降し、第6パルスPS6が供給されるまで振動子電位VMLが維持される。その後、第6パルスPS6が供給されると、振動子電位は振動子電位VMLから中間電位VMまで上昇する。
その結果、微振動加圧要素P6の供給によって圧力室23が少し収縮し、室内のインクが少し加圧される。圧力室23の収縮状態は微振動減圧要素P9が供給されるまで維持され、微振動減圧要素P9の供給によって圧力室23が少し膨張するので、室内のインクが少し減圧される。このような圧力室23内のインク加減圧に伴ってメニスカスが微振動する。
【0053】
ところで、第2パルスPS2の終端電位と第3パルスPS3の始端電位とは相違するので、これらの電位を接続すべく駆動信号発生回路9は、第2パルスPS2と第3パルスPS3の間に第1接続パルスCP1を、第5パルスPS5と第6パルスPS6の間に第2接続パルスCP2をそれぞれ配置している。
第1接続パルスCP1は、微振動電位VMLから中間電位VMまで急勾配で電位を上昇させる第1接続要素P10を含んでおり、第2接続パルスCP2は、中間電位VMから微振動電位VMLまで急勾配で電位を下降させる第2接続要素P11を含んでいる。
そして、これらの第1接続パルスCP1及び第2接続パルスCP2は、専らパルス同士の接続に用いられるため、圧電振動子34には供給されない。このため、上記の第1接続要素P10や第2接続要素P11の勾配は、可能な限り急峻に設定することができる。
【0054】
このような駆動信号を用いるプリンタにおいては、一記録周期T内に供給する吐出パルス信号の数を変えることでノズル開口11から吐出させるインク滴の量を異ならせることができる。このため、パルス供給手段(制御部6、シフトレジスタ41,42、ラッチ回路43,44、デコーダ45、制御ロジック46、レベルシフタ47、及び、スイッチ回路48、以下同様。)は、記録するドットの大きさに応じて、一記録周期T内の吐出パルス(パルスPS1,PS3,PS4,PS5)の選択数を可変している。
【0055】
本実施形態では、一記録周期T内において、3つの吐出パルス信号を圧電振動子34に供給することで大ドットを記録し、2つの吐出パルス信号を供給することで中ドットを記録し、1つの吐出パルス信号を供給することで小ドットを記録する。さらに、ドットを記録しない(非記録)の場合には、微振動パルス信号を圧電振動子34に供給することでメニスカスを微振動させる。
【0056】
この場合、パルス供給手段は、同じ大きさのドットを連続して記録する際には、圧電振動子34へのパルス供給間隔が記録周期Tを跨いで一定になるように、基本吐出パルスと補助吐出パルスとを選択して圧電振動子34に供給する。また、ドットを記録しない場合には、微振動パルスを圧電振動子34に供給する。
例えば、図5に示すように、大ドットを記録する際には、パルス供給手段は、一記録周期T内に発生される全ての基本吐出パルス、即ち、第1パルスPS1、第3パルスPS3、及び第5パルスPS5を選択して圧電振動子34に供給する。また、中ドットを記録する際には、一記録周期T内に発生される基本吐出パルスの1つである第1パルスPS1と補助吐出パルスである第4パルスPS4とを選択して圧電振動子34に供給し、小ドットを記録する際には、2番目の基本吐出パルスである第3パルスPS3を選択して圧電振動子34に供給する。さらに、ドットを記録しない場合には、微振動加圧パルスである第2パルスPS2と微振動減圧パルスである第6パルスPS6を選択して圧電振動子34に供給する。
【0057】
このパルスの選択は、階調データをデコーダ45で翻訳することで得られた印字データに基づいて行われる。
即ち、デコーダ45は、階調値を示す階調データを受信すると、8ビットの印字データ(D1,D2,D3,D4,D5,D6,D7,D8)を生成する。そして、この印字データの各ビットは、上記したように、第1パルスPS1〜第6パルスPS6及び接続パルスCP1,CP2に対応している。詳しくは、印字データD1が第1パルスPS1に、印字データD2が第2パルスPS2に、印字データD3が第1接続パルスCP1に、印字データD4が第3パルスPS3に、印字データD5が第4パルスPS4に、印字データD6が第5パルスPS5に、印字データD7が第2接続パルスCP2に、印字データD8が第6パルスPS6に、それぞれ対応している。
そして、デコーダ45は、印字データD1をラッチ信号のタイミングで供給し、印字データD2をチャンネル信号CH1のタイミングで供給し、印字データD3をチャンネル信号CH2のタイミングで供給し、印字データD4をチャンネル信号CH3のタイミングで供給する。同様に、印字データD5をチャンネル信号CH4のタイミングで供給し、印字データD6をチャンネル信号CH5のタイミングで供給し、印字データD7をチャンネル信号CH6のタイミングで供給し、印字データD8をチャンネル信号CH7のタイミングで供給する。
【0058】
この制御により、図6に示すように、階調値1(階調データ00)の場合には、第2パルスPS2(微振動加圧パルス)と第6パルスPS6(微振動減圧パルス)とによる微振動パルス信号が圧電振動子34に供給され、これに伴って圧力室23内のインクがインク滴を吐出しない程度に加減圧されてメニスカスが微振動する。また、階調値2(階調データ01)の場合には、第3パルスPS3(2番目の基本吐出パルス)が圧電振動子34に供給され、これに伴ってノズル開口11からは1つのインク滴が吐出される。また、階調値3(階調データ10)の場合には、第1パルスPS1(1番目の基本吐出パルス)と第4パルスPS4(補助吐出パルス)とが圧電振動子34に供給され、これに伴ってノズル開口11からは2つのインク滴が吐出される。さらに、階調値4(階調データ11)の場合には、第1パルスPS1、第3パルスPS3、及び、第5パルスPS5(3番目の基本吐出パルス)が圧電振動子34に供給され、これに伴ってノズル開口11からは3つのインク滴が吐出される。
【0059】
その結果、図7(a)に示すように、1つのノズル開口11が、大ドット、非記録(印字内微振動)、中ドットと順次記録動作を変化する場合において、大ドットを記録した後に第2パルスPS2(微振動加圧パルス)が供給されるまでに、1番目の基本吐出パルスである第1パルスPS1分以上の時間間隔W1が空く。このため、メニスカスの過剰な振動が収まってから第2パルスPS2を供給することができる。また、第6パルスPS6(微振動減圧パルス)を記録周期Tの最後に配置しているので、第2パルスPS2が供給されてから第6パルスPS6を供給するまでの時間W2を長く取ることができる。これにより、ノズル開口11付近のインクの効率の良い攪拌が可能となると共に、次の記録周期Tにおける中ドットの記録時にメニスカスの振動を安定させることができる。従って、微振動パルス信号の供給によりメニスカスを過剰に振動させてしまう不具合を防止できる。さらに、第2パルスPS2と第6パルスPS6とを分割して記録周期Tの前半と後半とに分けて配置しているので、記録周期Tを過剰に長くすることがなく、限られた記録周期T内に各パルスを効率よく収めることができる。
【0060】
また、図7(b)〜(d)に示すように、同じ大きさのドットを連続して記録する際には、圧電振動子34へのパルス供給間隔が記録周期Tを跨いで一定に揃う。
【0061】
例えば、小ドットを連続的に記録する場合には、第3パルスPS3(2番目の基本吐出パルス)だけが選択されるので、吐出パルス信号の供給間隔は、先の記録周期Tにおける第3パルスPS3から次の記録周期Tにおける第3パルスPS3までの時間間隔3tとなる。従って、この場合には、周期3t(例えば150マイクロ秒)毎に吐出パルス信号が圧電振動子34に供給される。
【0062】
また、中ドットを連続的に記録する場合には、第1パルスPS1と第4パルスPS4とが選択される。ここで、同じ記録周期T内に属する第1パルスPS1から第4パルスPS4までの時間間隔は、第1パルスPS2から第3パルスPS3までの時間間隔が所定周期tであり、第3パルスPS3から第4パルスPS4までの時間間隔が0.5tであることから、両方の時間を加算した1.5tとなる。同様に、先の記録周期Tに属する第4パルスPS4から後の記録周期Tに属する第1パルスPS1までの時間間隔は、先の記録周期Tに属する第4パルスPS4から先の記録周期Tに属する第5パルスPS5までの時間間隔が0.5tであり、先の記録周期Tに属する第5パルスPS5から後の記録周期Tに属する第1パルスPS1までの時間間隔が所定周期tであることから、やはり1.5tとなる。従って、この場合には、周期1.5t(例えば75マイクロ秒)毎に吐出パルス信号が圧電振動子34に供給される。
【0063】
また、大ドットを記録する際には、所定周期t毎で発生される基本吐出パルスが全て選択されるので、先の記録周期Tにおける最後の吐出パルス信号(第5パルスPS5)から次の記録周期Tにおける最初の吐出パルス信号(第1パルスPS1)までの時間間隔も所定周期tとなる。従って、この場合には、所定周期t(例えば50マイクロ秒)毎に吐出パルス信号が圧電振動子34に供給される。
【0064】
その結果、吐出パルス信号としての第1パルスPS1〜第5パルスPS5の供給開始時点におけるメニスカスの状態(例えば、振動方向やメニスカスの位置など)を揃えることができる。即ち、大ドットを連続的に記録する場合には、第1パルスPS1の供給開始時点、第3パルスPS3の供給開始時点、及び、第5パルスPS5の供給開始時点においてメニスカスの状態を揃えることができる。同様に、中ドットを連続的に記録する場合には第1パルスPS1及び第4パルスPS4の供給開始時点においてメニスカスの状態を揃えることができ、小ドットを連続的に記録する場合には第3パルスPS3の供給開始時点においてメニスカスの状態を揃えることができる。
これにより、インク滴の量のばらつき、インク滴の飛翔速度、インク滴の飛翔方向のばらつきを防止することができ、画質の向上を図ることができる。
【0065】
さらに、本実施形態では小ドットを記録するための第3パルスPS3(2番目の基本吐出パルス)を一記録周期Tの半分のタイミングで発生しているので、この小ドットの着弾中心は、1ドットを構成するインク滴が着弾し得る領域であるドット記録領域内における主走査方向のほぼ中央になる。このため、ドット記録位置の偏りを少なくすることができ、画質の向上に寄与する。
【0066】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の追加、変更等が可能である。
【0067】
例えば、上記の実施形態では、微振動加圧パルスとしての第2パルスPS2を記録周期Tの前半に配置し、微振動減圧パルスとしての第6パルスPS6を記録周期Tの後半に配置した駆動信号を例示したが、微振動減圧パルスを記録周期Tの前半に配置し、微振動加圧パルスを記録周期Tの後半に配置してもよい。そして、上記の実施形態のように、微振動加圧パルスを記録周期Tの前半に配置し、微振動減圧パルスを記録周期Tの後半に配置すると、微振動加圧パルスの方が微振動減圧パルスよりもメニスカスを大きく振動させるので、インクの攪拌効果とメニスカスの安定性を高いレベルで両立させることができる。
【0068】
また、一記録周期T内で発生させる基本吐出パルスは3つに限定されるものではなく3つ以上であればよい。同様に、補助吐出パルスを一記録周期T内で複数発生させてもよい。
【0069】
また、圧力発生素子として圧電振動子34を用いた記録ヘッド8について説明したが、磁歪素子を圧力発生素子として用いても良い。さらに、ヒータ等の発熱素子を圧力発生素子として用い、この発熱素子が発生する熱によって気泡の体積を変化させることにより、圧力室23に圧力変動を生じさせる記録ヘッド8を用いてもよい。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば以下の効果を奏する。
即ち、吐出パルス信号を、周期t毎に発生される基本吐出パルスと、基本吐出パルスの後に発生される補助吐出パルスとから構成し、パルス供給手段は、大ドットが連続して記録される際に、圧力発生素子へのパルス供給間隔が記録周期を跨いで一定になるように一記録周期内に発生される3つの基本吐出パルスを選択し、中ドットが連続して記録される際に、圧力発生素子へのパルス供給間隔が記録周期を跨いで一定になるように一記録周期内に発生される1つの基本吐出パルスと1つの補助吐出パルスを選択し、小ドットが連続して記録される際に、圧力発生素子へのパルス供給間隔が記録周期を跨いで一定になるように一記録周期内に発生される1つの基本吐出パルスを選択するので、上記の各ドットを連続的に記録する際において、吐出パルス信号同士の時間間隔が一定になり、各吐出パルス信号の供給開始時点におけるメニスカスの状態を揃えることができる。これにより、インク滴の吐出条件を揃えることができ、インク滴の量のばらつき、インク滴の飛翔速度、インク滴の飛翔方向のばらつき等を防止することができる。その結果、画像にむらが生じることを防止することができ、記録画像の高画質化が図れる。
【0071】
そして、吐出パルス信号を、周期t毎に発生される基本吐出パルスと、基本吐出パルスの発生タイミングから1/2t経過後のタイミングで発生される補助吐出パルスとから構成し、パルス供給手段は、中ドットが連続して記録される際に、圧力発生素子へのパルス供給間隔が記録周期を跨いで一定になるように一記録周期内に発生される1番目の基本吐出パルスを選択すると共に、2番目の基本吐出パルスの発生タイミングから1/2t経過後のタイミングで発生される補助吐出パルスとを選択するので、中ドットを連続的に記録する際において、吐出パルス信号同士の時間間隔が1.5tと一定になり、各吐出パルス信号の供給開始時点におけるメニスカスの状態を揃えることができる。
【0072】
また、微振動加圧パルス及び微振動減圧パルスの一方を記録周期の前半であって隣り合う基本吐出パルス同士の間に配置すると共に、微振動加圧パルス及び微振動減圧パルスの他方を記録周期の後半に配置した駆動信号を発生し、パルス供給手段は、ドットの非記録の際には、微振動加圧パルスと微振動減圧パルスとを選択するので、例えば、1つのノズル開口が、ドットの記録、非記録、ドットの記録と記録周期毎に記録動作を変化する場合、非記録の記録周期の前半において微振動加圧パルス又は微振動減圧パルスの一方が供給されるまでには、基本吐出パルスの1つ分の時間間隔が少なくとも空く。このため、メニスカスの過剰な振動が収まってから微振動加圧パルス又は微振動減圧パルスを供給することができる。また、微振動加圧パルス及び微振動減圧パルスの他方を記録周期の後半に配置しているので、微振動加圧パルスと微振動減圧パルスとの供給間隔を長く取ることができる。これにより、ノズル開口付近のインクに対する効率の良い攪拌が可能となると共に、次の記録周期におけるドットの記録時にメニスカスの振動を安定させることができる。従って、微振動パルス信号の供給によりメニスカスを過剰に振動させてしまう不具合を防止できる。さらに、微振動加圧パルスと微振動減圧パルスとを分割して記録周期の前半と後半とに分けて配置しているので、記録周期を過剰に長くすることがなく、限られた記録周期内に各パルスを効率よく収めることもできる。
【0073】
また、微振動加圧パルス及び微振動減圧パルスの他方を、最後の基本吐出パルスよりも後に配置した場合には、微振動加圧パルスと微振動減圧パルスとの供給間隔を最も長く取ることができ、ノズル開口付近のインクに対し、一層効率の良い攪拌が可能となると共に、次の記録周期におけるドットの記録時にメニスカスの振動をより安定させることができる。
【0074】
また、微振動加圧パルスを記録周期の前半に配置し、微振動減圧パルスを記録周期の後半に配置した場合には、微振動加圧パルスの方が微振動減圧パルスよりもメニスカスを大きく振動させるので、インクの攪拌効果とメニスカスの安定性を高いレベルで両立させることができる。
【0075】
また、小ドットの記録に用いる2番目の基本吐出パルスを一記録周期の半分のタイミングで発生するようにした場合には、小ドットの着弾中心は、ドット記録領域内のほぼ中央になる。このため、ドット記録位置の偏りを少なくすることができ、画質の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 インクジェット式プリンタの全体構成を示すブロック図である。
【図2】 記録ヘッドの回路構成を説明するブロック図である。
【図3】 記録ヘッドの機械的構造を示す構成説明図である。
【図4】 駆動信号を説明する図である。
【図5】 駆動信号と階調値等との関係を説明する図である。
【図6】 パルス信号の選択パターンを説明する図である。
【図7】 選択パターン毎のパルス信号同士の時間間隔を説明する図である。
【符号の説明】
1 プリンタコントローラ
2 プリントエンジン
3 外部インターフェース
4 RAM
5 ROM
6 制御部
7 発振回路
8 記録ヘッド
9 駆動信号発生回路
10 内部インターフェース
11 ノズル開口
12 キャリッジ機構
13 紙送り機構
20 ケース
21 流路ユニット
22 振動子ユニット
23 圧力室
24 収容室
25 流路形成基板
26 ノズルプレート
27 振動板
28 共通インク室
29 インク供給路
30 インク供給管
31 支持板
32 弾性体膜
33 島部
34 圧電振動子
35 固定板
41 第1シフトレジスタ
42 第2シフトレジスタ
43 第1ラッチ回路
44 第2ラッチ回路
45 デコーダ
46 制御ロジック
47 レベルシフタ
48 スイッチ回路

Claims (8)

  1. インク滴を吐出させる同一波形形状の吐出パルス信号を複数含む一連の駆動信号を発生する駆動信号発生手段と、駆動信号発生手段が発生した駆動信号からパルス信号を選択し、選択したパルス信号を圧力発生素子に供給するパルス供給手段とを備え、圧力発生素子に供給する吐出パルス信号の数に応じて記録するドットの大きさを変えるように構成したインクジェット式記録装置において、
    前記吐出パルス信号を、周期t毎に発生される基本吐出パルスと、基本吐出パルスの後に発生される補助吐出パルスとから構成し、
    駆動信号発生手段は、3つの基本吐出パルスと、1つの補助吐出パルスとを一記録周期内に含む駆動信号を発生し、
    パルス供給手段は、大ドットが連続して記録される際に、圧力発生素子へのパルス供給間隔が記録周期を跨いで一定になるように一記録周期内に発生される3つの基本吐出パルスを選択し、中ドットが連続して記録される際に、圧力発生素子へのパルス供給間隔が記録周期を跨いで一定になるように一記録周期内に発生される1つの基本吐出パルスと1つの補助吐出パルスを選択し、小ドットが連続して記録される際に、圧力発生素子へのパルス供給間隔が記録周期を跨いで一定になるように一記録周期内に発生される1つの基本吐出パルスを選択することを特徴とするインクジェット式記録装置。
  2. 前記吐出パルス信号を、周期t毎に発生される基本吐出パルスと、基本吐出パルスの発生タイミングから1/2t経過後のタイミングで発生される補助吐出パルスとから構成し、
    前記パルス供給手段は、中ドットが連続して記録される際に、圧力発生素子へのパルス供給間隔が記録周期を跨いで一定になるように一記録周期内に発生される1番目の基本吐出パルスを選択すると共に、2番目の基本吐出パルスの発生タイミングから1/2t経過後のタイミングで発生される補助吐出パルスとを選択することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
  3. 前記駆動信号は、インク滴が吐出しない程度にメニスカスを微振動させる微振動パルス信号を含み、
    前記微振動パルス信号を、微振動加圧パルスと、微振動減圧パルスとから構成し、
    前記駆動信号発生手段は、一対の微振動加圧パルス及び微振動減圧パルスを一記録周期内に含み、微振動加圧パルス及び微振動減圧パルスの一方を記録周期の前半であって隣り合う基本吐出パルス同士の間に配置すると共に、微振動加圧パルス及び微振動減圧パルスの他方を記録周期の後半に配置した駆動信号を発生し、
    パルス供給手段は、ドットの非記録の際には、微振動加圧パルスと微振動減圧パルスとを選択することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット式記録装置。
  4. 前記駆動信号発生手段は、微振動加圧パルス及び微振動減圧パルスの他方を、最後の基本吐出パルスよりも後に配置した駆動信号を発生することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット式記録装置。
  5. 前記駆動信号発生手段は、微振動加圧パルスを記録周期の前半に配置し、微振動減圧パルスを記録周期の後半に配置した駆動信号を発生することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のインクジェット式記録装置。
  6. 前記駆動信号発生手段は、2番目の基本吐出パルスを一記録周期の半分のタイミングで発生することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のインクジェット式記録装置。
  7. 前記圧力発生素子を圧電振動子によって構成し、この圧電振動子の変形によって圧力室の容積を変化させることにより、圧力室に圧力変動を生じさせることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載のインクジェット式記録装置。
  8. 前記圧力発生素子を発熱素子によって構成し、この発熱素子が発生する熱によって気泡の体積を変化させることにより、圧力室に圧力変動を生じさせることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載のインクジェット式記録装置。
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