JP3921924B2 - 電子写真機器用ロール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機,プリンター,ファクシミリ装置等の電子写真機器に用いられる、現像ロール,帯電ロール,転写ロール等の電子写真機器用ロールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、現像ロール等の電子写真機器用ロールとしては、例えば、軸体の外周にシリコーンゴムを用いたベースゴム層が形成され、さらにこのベースゴム層の外周面に水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)を用いた塗膜層が形成されたロールが汎用されている。このようなロールは、シリコーンゴムを用いたベースゴム層の外周面にコロナ放電等の処理を施し、その上にH−NBRを主成分とする塗膜層形成材料を塗布することにより作製される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のロールにおけるベースゴム層と塗膜層との接着は、ベースゴム層の活性化処理面と、H−NBRとの水素結合的結合力によるものであるため、上記ロールを湿熱条件下で長期にわたり放置すると、ベースゴム層と塗膜層との層間接着力が低下し、プリンター等での使用の際に塗膜層が剥がれる等の問題が生じる。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、湿熱条件下での塗膜層の剥離等を防止することができる電子写真機器用ロールの提供をその目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の電子写真機器用ロールは、軸体の外周に、シリコーンゴムを主成分とし、かつその外周面が活性化処理されているベースゴム層が形成され、このベースゴム層の外周面に沿って塗膜層が形成された電子写真機器用ロールであって、上記塗膜層が、下記の(A)および(B)を含有するゴム組成物によって形成されているという構成をとる。
(A)水素添加アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム。
(B)メルカプト変性シランカップリング剤。
【0006】
すなわち、本発明者らは、湿熱条件下での塗膜層の剥離等が生じない電子写真機器用ロールを得るべく、塗膜層形成材料を中心に鋭意研究を重ねた。その結果、塗膜層形成材料として、水素添加アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム(A)およびメルカプト変性シランカップリング剤(B)を含有するゴム組成物を用いると、このメルカプト変性シランカップリング剤(B)が、ベースゴム層の活性化処理面と、塗膜層とを共有結合的結合力で接着するようになり、ベースゴム層と塗膜層との層間接着力が湿熱条件下で長期にわたり放置しても接着力が低下せず塗膜層の剥離が生じないことを見出し、本発明に到達した。
【0007】
また、本発明において、「活性化処理」とは、コロナ放電,プラズマ放電等によって、ベースゴム層の外周面に化学変化等を生起させる処理のことをいう。
【0008】
特に、上記メルカプト変性シランカップリング剤(B)の含有量が、水素添加アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム(A)に対して所定の範囲に設定されると、塗膜層の表面硬度を低く抑えることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0010】
本発明の電子写真機器用ロールは、例えば、図1に示すように、軸体1と、この軸体1の外周面に沿って形成されるベースゴム層2と、このベースゴム層2の外周面に形成される塗膜層3とを備えたものである。そして、上記ベースゴム層2の外周面は、先に述べたような活性化処理がなされている。
【0011】
上記軸体1としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属製の芯金や、金属製の中空円筒体が用いられる。そして、その金属材料としては、アルミニウム、ステンレス等があげられる。
【0012】
上記軸体1の外周面に形成されるベースゴム層2の主成分であるシリコーンゴムとしては、特に限定されるものではないが、ジメチルシリコーンポリマーに架橋サイトとしてビニル基を付加したものに、ジメチルシリコーンオイルを添加したものを用いることが好ましい。
【0013】
なお、本発明においてシリコーンゴムを主成分とするとは、上記ベースゴム層2がシリコーンゴムのみからなる場合も含む趣旨である。
【0014】
また、上記ベースゴム層2には、上記シリコーンゴムに加えてカーボンブラック等の導電剤を配合することも可能である。
【0015】
上記ベースゴム層2の外周面に形成される塗膜層3は、水素添加アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム(A)およびメルカプト変性シランカップリング剤(B)を含有するゴム組成物によって形成されている。
【0016】
上記水素添加アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム(A)は、ブタジエンとアクリロニトリルの乳化重合により得られるアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムを、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の溶剤に溶解し、Rh、Pd、Pt等の貴金属触媒の存在下において水素付加反応を行うことにより得られる。
【0017】
上記(B)のシランカップリング剤は、導電性に影響を与えないという点で、メルカプト変性シランカップリング剤が用いられる。
【0018】
上記メルカプト変性シランカップリング剤としては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等があげられる。
【0019】
上記メルカプト変性シランカップリング剤(B)の配合割合は、水素添加アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム(A)100重量部(以下、「部」と略す)に対して0.01〜15部の範囲に設定することが好ましい。より好ましくは0.1〜5部の範囲である。すなわち、上記メルカプト変性シランカップリング剤(B)の含有量が0.01部未満では、メルカプト変性シランカップリング剤(B)の効果が充分に発揮されず湿熱条件下での長期放置により層間剥離を引き起こしやすい傾向がみられ、逆に15部を超えると、形成される塗膜層3の硬度が高くなりすぎる傾向がみられるからである。
【0020】
なお、上記塗膜層3形成材料であるゴム組成物には、上記(A)および(B)に加えて、導電剤,発泡剤,架橋剤,架橋促進剤,オイル等を適宜配合しても差し支えない。
【0021】
本発明の電子写真機器用ロールは、例えばつぎのようにして製造される。すなわち、まず、前記ベースゴム層2形成材料用の各成分をニーダー等の混練機で混練してベースゴム層2形成材料を調製し、これを、図2に示すように、下蓋15をセットした金属製の軸体(芯金)1と円筒型16との間の空隙部に注型する。ついで、上蓋17を円筒型16に外嵌し、このロール型全体を加熱して上記ベースゴム層2形成材料を加硫した後(150〜220℃×20分)、ロール型から取り出して、ベースゴム層2を形成する。つづいて、ベースゴム層2の外周面にコロナ放電処理を施し、活性化させる。一方、水素添加アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム(A)、メルカプト変性シランカップリング剤(B)および必要に応じて導電剤等の成分を配合し、これをニーダー等の混練機で混練して、塗膜層形成材料(コーティング液)を調製し、これを、上記処理がなされたベースゴム層2の外周面に塗布した後、乾燥等を行うことによりベースゴム層2の外周面に塗膜層3を形成する。このようにして、目的とする2層構造の電子写真機器用ロールを得ることができる(図1参照)。
【0022】
なお、上記塗膜層3形成材料の塗布は、ディッピング法、ロールコート法等によって行うことも可能である。
【0023】
なお、上記活性化処理は、コロナ放電処理に限定されるものではなく、例えばプラズマ放電処理によって行うことも可能である。
【0024】
このようにして得られた電子写真機器用ロールは、ベースゴム層2の厚みが、通常、0.5〜10mmであり、好ましくは1〜5mmである。また、上記塗膜層3の厚みは1〜100μmの範囲が好ましく、特に好ましくは3〜30μmである。
【0025】
なお、本発明の電子写真機器用ロールは、2層構造に限定されるものではなく、例えば塗膜層3の外周面に表層を形成しても差し支えない。
【0026】
本発明の電子写真機器用ロールは、例えば現像ロール,帯電ロール,転写ロール,給紙ロール等に用いることができる。
【0027】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0028】
【実施例1】
〔ベースゴム層形成材料の調製〕
X−34−424 A/B(シリコーンゴム、信越化学工業社製)100部と、X−34−387 A/B(シリコーンゴム、信越化学工業社製)100部とを混合分散して、ベースゴム層形成材料を調製した。
【0029】
〔塗膜層形成材料の調製〕
H−NBR(ゼットポール0020、日本ゼオン社製)100部と、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(A189、日本ユニカー社製)0.01部と、ステアリン酸0.5部と、亜鉛華(ZnO)5部と、ケッチェンブラック30部と、加硫促進剤(テトラメチルチウラムジスルフィド)0.5部と、加硫促進剤(オルト−トリル−ビグアニジン)1部と、加硫剤(硫黄)0.5部とを混合分散させて、塗膜層形成材料であるゴム組成物を調製した。
【0030】
〔ロールの作製〕
つぎに、軸体1としてSUS303製芯金(直径10mm)を準備し、この外周面に接着剤を塗布したものを、ロール型内部にセットし、上記軸体とロール型内周面の間の空隙部に上記ベースゴム層2形成材料であるコンパウンドを注型し(図2参照)、加熱加硫(180℃×1時間)させた後、脱型して、さらに2次加硫処理(200℃×4時間)することにより軸体1の外周にベースゴム層2(厚み5mm)を形成した。このようにして得られたベースゴム層2付き軸体を上記金型から脱型し、上記ベースゴム層2外周面に、高周波電源装置を用い、コロナ放電を発生させ、電極との距離3mm、角度90度にて10秒間コロナ処理を行った。そして、上記処理がなされたベースゴム層2の外周面に、上記塗膜層形成材料からなるコーティング液を塗布後、乾燥および加熱処理を行うことによりベースゴム層の外周面に塗膜層3(厚み5μm)を形成し、2層構造のロールを得た(図1参照)。
【0031】
【実施例2】
メルカプト変性シランカップリング剤(γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)の配合割合を0.1部に変更する以外は実施例1と同様にして、塗膜層形成材料を調製した。そして、実施例1と同様のベースゴム層形成材料を調製し、さらに実施例1と同様の製法により、ロールを作製した。
【0032】
【実施例3】
メルカプト変性シランカップリング剤(γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)の配合割合を1部に変更する以外は実施例1と同様にして、塗膜層形成材料を調製した。そして、実施例1と同様のベースゴム層形成材料を調製し、さらに実施例1と同様の製法により、ロールを作製した。
【0033】
【実施例4】
メルカプト変性シランカップリング剤(γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)の配合割合を5部に変更する以外は実施例1と同様にして、塗膜層形成材料を調製した。そして、実施例1と同様のベースゴム層形成材料を調製し、さらに実施例1と同様の製法により、ロールを作製した。
【0034】
【実施例5】
メルカプト変性シランカップリング剤(γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)の配合割合を10部に変更する以外は実施例1と同様にして、塗膜層形成材料を調製した。そして、実施例1と同様のベースゴム層形成材料を調製し、さらに実施例1と同様の製法により、ロールを作製した。
【0035】
【実施例6】
メルカプト変性シランカップリング剤(γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)の配合割合を15部に変更する以外は実施例1と同様にして、塗膜層形成材料を調製した。そして、実施例1と同様のベースゴム層形成材料を調製し、さらに実施例1と同様の製法により、ロールを作製した。
【0036】
【比較例】
メルカプト変性シランカップリング剤を配合しないこと以外は実施例1と同様にして、塗膜層形成材料を調製した。そして、実施例1と同様のベースゴム層形成材料を調製し、さらに実施例1と同様の製法により、ロールを作製した。
【0037】
このようにして得られた各ロールについて、ベースゴム層と塗膜層との層間接着力および塗膜層の表面硬度を下記の方法に従って測定し、評価した。その結果を後記の表1に示した。
【0038】
〔層間接着力〕
図3(a)に示すように、ロールの塗膜層3に対し、その外周に沿って、破線Xで示される幅2.5cmの切り込みを入れ、さらに、上記塗膜層3に対して芯金方向に切り込み(破線Y)を入れて、そこから塗膜層3を少し剥がし、図3(b)に示すように、剥がされた塗膜層3の端部をAGSオートグラフ(シマヅ社製)で垂直に引き上げて(矢印Z方向)、その引張り強度を測定した。これを、湿熱条件に放置する前(初期)のロール、および湿熱条件(40℃×80%RH)に1週間放置後のロールに対して、それぞれおこなった。そして、引張り強度が5N以上のものを◎、3N以上5N未満のものを○、1N以上3N未満のものを△、1N未満のものを×として表示した。
【0039】
〔表面硬度〕
上記ロールに形成された塗膜層3の表面硬度を、マイクロゴム硬度計MD−1型(高分子計器社製)を用いて測定し、評価した。すなわち、MD−1が45°未満のものを◎、45°以上50°未満のものを○、50°以上55°未満のものを△、55°以上のものを×として表示した。
【0040】
【表1】
【0041】
上記表1の結果から、全実施例品は、ベースゴム層2と塗膜層3との層間接着力に優れ、湿熱条件下に放置したあとでも、その接着力は保持されていた。また、塗膜層3の表面硬度も良好であった。これに対して、比較例品は、湿熱条件下に放置した後、層間剥離が確認された。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、本発明の電子写真機器用ロールは、塗膜層が水素添加アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム(A)およびメルカプト変性シランカップリング剤(B)を含有するゴム組成物を用いて形成されているため、このメルカプト変性シランカップリング剤(B)がベースゴム層の活性化処理面と塗膜層とを共有結合的結合力で接着するようになる。そのため、上記ベースゴム層と塗膜層との層間接着力が湿熱条件下でも保持され、剥がれや破れ等の発生を防止できる。さらに、上記(B)のシランカップリング剤がメルカプト変性シランカップリング剤であることから、導電性に影響を与えることもなく、よって、本発明の電子写真機器用ロールを、例えば現像ロールとして電子写真複写機に組み込み使用すると、湿熱条件下での長期間の使用においても、画質の低下が防止され、高画質の複写画像が得られる。また、本発明の電子写真機器用ロールを、例えば船内に積んで東南アジア等へ運搬する際、船内が湿熱条件となることがあっても、層間剥離を生じることがない。
【0043】
特に、上記メルカプト変性シランカップリング剤(B)の含有量が、水素添加アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム(A)に対して所定の範囲に設定されると、湿熱条件下での層間接着力が充分得られることに加え、塗膜層の表面硬度を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電子写真機器用ロールの一例を示す断面図である。
【図2】 本発明の電子写真機器用ロールの製法を示す説明図である。
【図3】 (a)はロールの側面図であり、(b)はロールの塗膜層の層間接着力の測定方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1 軸体
2 ベースゴム層
3 塗膜層
Claims (2)
- 軸体の外周に、シリコーンゴムを主成分とし、かつその外周面が活性化処理されているベースゴム層が形成され、このベースゴム層の外周面に沿って塗膜層が形成された電子写真機器用ロールであって、上記塗膜層が、下記の(A)および(B)を含有するゴム組成物によって形成されていることを特徴とする電子写真機器用ロール。
(A)水素添加アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム。
(B)メルカプト変性シランカップリング剤。 - 上記(B)の含有量が、上記(A)100重量部に対して0.01〜15重量部の範囲に設定されている請求項1記載の電子写真機器用ロール。
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