JP3920738B2 - 微細構造体の乾燥方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体基板のような表面に微細な凹凸(微細構造表面)を有する構造体に対して、液化二酸化炭素または超臨界二酸化炭素を用いた乾燥を行う方法に関し、詳細には、微細パターンを膨潤、倒壊させることなく乾燥する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造プロセスの中でフォトレジストを用いてパターン形成するリソグラフィ工程において、現像後、現像液またはリンス液をパターン(凹部)内部から乾燥除去する時に起きるパターンの倒壊現象が問題視されている。この微細構造体のパターンの倒壊現象は、現像液やリンス液の加熱乾燥時の体積膨張が一要因であるが、乾燥時にパターン間に働く毛管力によってパターン同士が引きつけ合うことも一つの要因である。特に現在では、パターンの微細化や高アスペクト比化(幅に比して高さが高い)が進行し、倒壊現象がますます顕在化している。
【0003】
毛管力や体積膨張の影響を低減する乾燥方法として、超臨界流体を用いた乾燥方法が検討されている。温度、圧力共に臨界点を超えた超臨界流体を用いることで、気液界面を無くした状態、すなわち毛管力フリーの状態で、ウエハ等の微細構造体を乾燥することが可能になるからである。
【0004】
この超臨界乾燥方法では、臨界温度、臨界圧力が水に比べて非常に低く、かつ大気放出しても安全な二酸化炭素が、超臨界流体として多用されている。超臨界二酸化炭素は、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の極性溶媒から、ヘキサン、フルオロカーボン類等の極性の低い溶媒まで溶解し得る良溶媒である。従って、これらの溶媒が現像液やリンス液として用いられるレジスト材料の場合は、超臨界二酸化炭素がパターン内部の現像液やリンス液を抽出除去することができるので、ウエハ等の微細構造体の乾燥が実現するのである。
【0005】
しかし、半導体LSI分野においては、上記のような有機溶媒を用いて現像するレジスト材料よりも、むしろテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液で現像するレジスト材料の方が一般的であって、この場合はリンス液として水(超純水)を用いている。水は超臨界二酸化炭素に溶解しないので、超臨界二酸化炭素による乾燥を遂行するためには、水を、超臨界二酸化炭素に溶解し得る液体に置換する、すなわちパターン内部の水をそのような液体と置き換える必要がある。
【0006】
エタノール等の親水性有機溶媒を用いれば、水との置換は容易であるが、上記水溶液現像に用いられるレジスト材料は、エタノール等のアルコール類に溶けてしまうため、これらのアルコール類を水置換用の液体として用いることができない。
【0007】
一方、ヘキサンやフルオロカーボン類は水との親和性が全くないため、水との置換自体が困難である。このため特開2001-165568号では、界面活性剤(例えばソルビタン脂肪酸エステル)を利用して水と脂肪族炭化水素(例えばヘキサン)を乳化状態にした後、脂肪族炭化水素へと完全置換する技術が開示されている。しかし、水と脂肪族炭化水素とを乳化状態にするための具体的方法は特に述べられていない。機械的な強制撹拌を行って乳化状態を得ようとすると、パターンが倒壊するおそれがあるため、この手法は半導体製造プロセスにおいては採用が難しい。一方で、撹拌等を行わないままでは充分な乳化状態を得ることができず、水と脂肪族炭化水素との界面には依然として界面張力が存在するため、この界面張力の存在によって隣接するパターン間に毛管力が働き、パターンが倒壊するおそれがある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明では、パターン間等の微細構造体の凹部に保持された水と、液化または超臨界二酸化炭素との親和性のある疎水性溶媒とを置換する際に、毛管力フリーの状態で置換することができ、パターンの倒壊等のおそれのない乾燥方法を提供することを課題として掲げた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、表面に微細な凹部が多数形成されており、これらの凹部の内部に水を保持した微細構造体を乾燥する方法であって、
(1)微細凹部内の液体を、曇点を有する界面活性剤(A)の曇点±1℃以内の温度に調整すると共に、曇点±1℃以内の温度に調整された界面活性剤(A)と疎水性溶媒(B)との混合液を凹部内に過剰に供給することによって、凹部内の水の一部または全部を凹部内から除去する工程、
(2)凹部内の液体を界面活性剤(A)の曇点+1℃を超える温度へ昇温すると共に、曇点+1℃を超える温度に調整された疎水性溶媒(B)を凹部内へ過剰に供給することによって、凹部内の液体を疎水性溶媒(B)のみへ置換する工程、
(3)凹部内に疎水性溶媒(B)を有する微細構造体を、液化二酸化炭素または超臨界二酸化炭素と接触させることにより、凹部内の疎水性溶媒(B)を液化二酸化炭素または超臨界二酸化炭素へ置換する工程、
とをこの順番で含むと共に、上記(1)および(2)の各工程については大気圧下で行うことところに要旨を有する。
【0010】
曇点を有する界面活性剤(A)を用い、かつ、曇点±1℃の温度で水と疎水性溶媒(B)とを置換することで、両者の間に界面張力が働かない状態で、両者を置換できるようになったので、パターン等の微細構造を破壊せずに微細構造体を乾燥することができた。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る乾燥方法の(1)の工程において、微細構造体を回転させながら、界面活性剤(A)と疎水性溶媒(B)との混合液を微細構造体表面に供給するものである。水と疎水性溶媒(B)との置換が簡単に行える。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る乾燥方法の(1)の工程において、曇点±1℃以内の温度に調整された界面活性剤(A)と疎水性溶媒(B)との混合液を凹部内に供給する前に、曇点を有する界面活性剤(A)の曇点+1℃以下の温度に調整された界面活性剤(A)の水溶液を上記微細な凹部内へ供給しておくものである。凹部内の水を界面活性剤(A)の水溶液へと置換しておくことで、界面張力フリーな曇点での疎水性溶媒(B)との置換が一層容易になる。
【0013】
上記界面活性剤(A)としては、レジストへのダメージ、エネルギーコスト、水の沸点等を考慮すると、曇点が10〜100℃の範囲にある化合物を用いるものが好ましい(請求項4)。なお、本発明には、上記乾燥方法で得られた微細構造体も含まれる(請求項5)。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の乾燥方法の対象は微細構造体であり、例えばフォトレジストの現像後の半導体基板のような微細な凹凸が形成された構造体が例示されるが、半導体基板に限定されず、金属、プラスチック、セラミックス等に清浄乾燥表面を形成するための乾燥方法としても利用可能である。
【0015】
本発明の乾燥方法では、微細構造体表面の微細凹部に水が保持されていることを前提とする。前記したように、半導体ウエハ製造プロセスでは、レジストパターンを水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液で現像することが多く、この場合は、水(超純水)を用いて現像液をリンスするが、本発明では、この水によるリンス工程後の微細構造体を乾燥するための方法を提示するので、微細凹部に水が保持されていることを要件とした。
【0016】
本発明の乾燥方法は、前記(1)〜(3)の工程を必須工程とする。方法の詳細は後述し、まず、曇点を有する界面活性剤(A)と、液化二酸化炭素または超臨界二酸化炭素に溶解し得る疎水性溶媒(B)について説明する。
【0017】
曇点を有する界面活性剤(A)の「曇点」とは、非イオン(ノニオン)界面活性剤の水に対する溶解度が温度の上昇と共に減少していき、界面活性剤の水和性結晶が析出して溶液が白濁する温度のことをいう。本発明では、界面活性剤(A)として、曇点未満では親水性が強く、曇点を超えると親油性(疎水性)が強くなる性質のノニオン界面活性剤を用いる。
【0018】
界面活性剤(A)の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(例えばポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、グリコールエーテル等のエーテルタイプ;ソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート等)、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等)、脂肪酸モノグリセライド(モノステアリン酸グリセライド、モノオレイン酸グリセライド等)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(ラウリン酸ジエチレングリコールエステル、モノオレイン酸プロピレングリコールエステル等)等のエステルタイプ;ポリオキシアルキレンアルキルアミン(ポリオキシエチレンラウリルステアリルアミン等)等のアミンタイプ;ポリオキシアルキレンアルキルアミド(ポリオキシエチレンステアリルアミン等)等のアミンタイプ;高級アルコールとポリオキシアルキレンとの縮合物;ポリオキシエチレン−オキシプロピレン縮合物(プルロニック型やテトロニック型)等のポリマータイプ等が挙げられ、これらの内の1種、または2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0019】
上記ノニオン界面活性剤は、オキシアルキレン(アルキレンオキサイド)の縮合mol数によって曇点が変わり、縮合mol数の増大に伴い曇点は上昇する。水の沸点(100℃)よりも曇点が低い方が好ましいので、界面活性剤(A)の曇点は10〜100℃(より好ましくは20〜60℃)が好ましい。この範囲であれば、レジスト材料へのダメージが小さく、エネルギーコストも小さくて済むからである。この観点から界面活性剤(A)としては、縮合mol数が30〜50mol程度のポリプロピレングリコールやポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン縮合物、あるいはこれらのアルキルエーテルやアルキルエステルが好適に用いられる。下式には、曇点25℃の界面活性剤の一例を示した。下式中、m+nは7である。なお、上記各界面活性剤の曇点は、市販品であれば製品情報として得ることができる。また、各種界面活性剤関連書籍にも曇点のデータが蓄積されている。
【0020】
【化1】
【0021】
一方、液化二酸化炭素または超臨界二酸化炭素に溶解し得る疎水性溶媒(B)とは、大気圧下で水とは混じり合わない疎水性の溶媒であって、高圧下では液化二酸化炭素または超臨界二酸化炭素に溶解する溶媒であれば、特に限定されず用いることができるが、ペンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の脂環状炭化水素類、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類等、C4F9OCH3(例えば、住友スリーエム社製「HFE7100」)、C4F9OC2H5(例えば、住友スリーエム社製「HFE7200」)等のハイドロフルオロエーテル類や、住友スリーエム社製のフロリナート(登録商標)シリーズの「FC−40」、「FC−43」、「FC−70」、「FC−72」、「FC−75」、「FC−77」、「FC−84」、「FC−87」、「FC−3283」、「FC−5312」等のフルオロカーボン系溶媒、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
【0022】
次に、本発明の乾燥方法を順を追って説明する。まず第1工程は、
(1)微細凹部内の液体を、曇点を有する界面活性剤(A)の曇点±1℃以内の温度に調整すると共に、曇点±1℃以内の温度に調整された界面活性剤(A)と疎水性溶媒(B)との混合液を凹部内に過剰に供給することによって、凹部内の水の一部または全部を凹部内から除去する工程である。
【0023】
界面活性剤(A)の曇点の±1℃以内という温度条件に設定すると、この界面活性剤(A)の界面張力低減作用によって、水と疎水性溶媒(B)との間の界面張力はほぼゼロ(界面張力フリー)となる。従って、界面活性剤(A)と疎水性溶媒(B)との混合液を凹部内にどんどん過剰に供給することで、水が凹部から界面張力フリーな状態のまま流出していき、凹部内から水が除去される。水はこの第1工程で全て除去されることが好ましいが、若干量の水が凹部内に残存していても構わない。続く(2)の工程では、水を逆ミセル状態で除去することが可能だからである。
【0024】
この第1工程によって、凹部内の水と、界面活性剤(A)および疎水性溶媒(B)との混合液とが置換される。この第1工程では、水と疎水性溶媒(B)を置換しても、界面張力フリーな状態で置換されるため、微細なパターンに何ら力が働かず、パターンの倒壊のおそれがない。ただし、界面張力フリーな状態を維持するために、凹部内の液体の温度と、界面活性剤(A)と疎水性溶媒(B)との混合液の温度とを、厳密に界面活性剤(A)の曇点の±1℃以内に制御する必要がある。より好ましくは曇点の±0.5℃以内に制御する。
【0025】
界面活性剤(A)は、疎水性溶媒(B)と共に凹部内へ供給するだけでなく、予め、界面活性剤(A)の水溶液として上記凹部内へ供給しておいても構わない。界面活性剤(A)の水溶液は、曇点を有する界面活性剤(A)の曇点+1℃以下の温度で供給することができる。この「界面活性剤(A)の水溶液を曇点+1℃以下の温度で供給する」方法には、界面活性剤(A)の水溶液を曇点±1℃に調整して界面張力フリーな状態のまま凹部内へ供給する方法と、曇点−1℃未満の水溶液を凹部内へ供給して、その後上記第1工程までに凹部内の液体を曇点±1℃に昇温する方法とが含まれており、いずれも採用可能である。
【0026】
曇点未満では、界面活性剤(A)は親水性が高く、水と容易に溶液状態を形成するので、予め、凹部内の水に界面活性剤(A)を溶解させておけば、上記第1工程での界面張力フリーな状態が速やかに形成され、水と疎水性溶媒(B)との置換は一層スムーズになる。
【0027】
界面活性剤(A)と疎水性溶媒(B)との混合液、あるいは予め行ってもよい界面活性剤(A)の水溶液の凹部内への具体的な供給方法としては、▲1▼微細構造体を回転させながら、供給液をノズル等から微細構造体表面に供給するいわゆるスピンコート法、▲2▼微細構造体を回転させることなく、供給液をシャワー状に微細構造体表面全面に供給する方法、▲3▼微細構造体を供給液の入った容器へ浸漬する方法等が挙げられる。
【0028】
上記▲1▼のスピンコート法は、遠心力によって水が簡単に除去されて供給液と置換されるため、最も好ましい方法である。回転数は特に限定されないが、100〜5000rpmが好ましい。一方、▲2▼の供給方法や▲3▼の浸漬方法を採用する場合は、水との間に比重差のある供給液を用いることが好ましい。▲2▼の供給方法では、疎水性溶媒(B)として比重の重いハロゲン化炭化水素やフルオロカーボン系溶媒等を用いることにより、凹部内の下側へこれらの重い溶媒が沈み込み、水が浮いてくるので凹部内から容易に除去することができる。また、▲3▼の方法では、比重の重い疎水性溶媒(B)を用いれば、上記▲2▼の場合と同様の効果が期待でき、比重の軽い疎水性溶媒(B)を用いる場合には微細構造体の上下を逆にして供給液に浸漬すればよい。
【0029】
第1工程で用いられる界面活性剤(A)と疎水性溶媒(B)との混合液における界面活性剤(A)の濃度は、0.01〜10質量%が好ましい。より好ましい濃度の下限は0.1質量%、上限は7.5質量%である。また、必要に応じて予め凹部内に界面活性剤(A)を存在させるために使用する界面活性剤(A)の水溶液における界面活性剤(A)の濃度は、0.02〜20質量%が好ましい。より好ましい濃度の下限は0.2質量%、上限は15質量%である。
【0030】
第1工程に要する時間は特に限定されないが、▲1▼の方法を採用する場合には、10秒〜1分、▲2▼の方法では1〜3分、▲3▼の方法では1〜5分がそれぞれ好ましい。この第1工程は続く第2工程と共に大気圧下で行えばよい。
【0031】
第1工程が終了したら、第2工程を行う。第2工程は、
(2)凹部内の液体を界面活性剤(A)の曇点+1℃を超える温度へ昇温すると共に、曇点+1℃を超える温度に調整された疎水性溶媒(B)を凹部内へ過剰に供給することによって、凹部内の液体を疎水性溶媒(B)のみへ置換する工程である。
【0032】
曇点+1℃を超える温度になると、界面活性剤(A)は親油性が高くなる。従って、界面活性剤(A)は疎水性溶媒(B)に溶解するようになる。従って、曇点+1℃を超える温度の疎水性溶媒(B)を過剰に凹部内へ供給することにより、凹部内の疎水性溶媒(B)と界面活性剤(A)の溶液は凹部外へと押し出され、凹部内は疎水性溶媒(B)のみに満たされ、疎水性溶媒(B)による置換が終了する。なお、微量であれば界面活性剤(A)が残存していても構わない。続く第3工程によっても、界面活性剤(A)の除去が可能だからである。
【0033】
この第2工程では、界面活性剤(A)が溶け込んだ疎水性溶媒(B)溶液を、疎水性溶媒(B)で除去するのであるから、両者間には界面張力はほとんど働かず、パターンに悪影響を及ぼすことはない。また、第1工程での水の除去が不完全で、第2工程の段階に移っても水が凹部内に微量に残存していた場合であっても、凹部内の液体が曇点+1℃を超える温度に昇温されることによって、疎水性溶媒(B)の連続相の中に界面活性剤(A)により安定化された水滴が形成される(逆ミセル)。そして、この水滴がこの第2工程によって凹部外へと除去されるため、水も完全に除去される。第1工程を終えた段階で凹部内に残存している水は微量なため、この第2工程で形成される水滴も微量であって、この逆ミセルの界面張力がパターンに及ぼす影響は非常に小さく、パターン倒壊等のおそれはない。
【0034】
第2工程の温度条件としては、疎水性溶媒(B)への界面活性剤(A)の溶解を促進するために、曇点+2℃以上に設定することが好ましく、曇点+5℃以上に設定することがさらに好ましい。なおこの温度条件は、凹部内の液体および供給液の温度である。第2工程に要する時間は、第1工程の場合と同様である。
【0035】
第2工程を終了したら、第3工程を行う。第3工程は、
(3)凹部内に疎水性溶媒(B)を有する微細構造体を、液化二酸化炭素または超臨界二酸化炭素と接触させることにより、凹部内の疎水性溶媒(B)を液化二酸化炭素または超臨界二酸化炭素へ置換する工程である。
【0036】
第2工程終了段階では、微細構造体の凹部内には疎水性溶媒(B)のみが満たされている。第3工程では、この微細構造体を高圧処理が可能なチャンバーへ入れ、液化二酸化炭素または超臨界二酸化炭素をチャンバー内に充填し、微細構造体と液化/超臨界二酸化炭素とを接触させて、疎水性溶媒(B)を微細構造体の凹部内から抽出除去し、凹部内の流体を液化/超臨界二酸化炭素で置換する。疎水性溶媒(B)は液化/超臨界二酸化炭素に溶解する上、液化/超臨界二酸化炭素は微細パターンの凹部内への浸透力にも優れているので、この置換工程においてもパターンへの悪影響は全くない。
【0037】
第2工程終了後、微細構造体を高圧処理チャンバーへ装填するまでは、微細構造体は大気圧下に置かれており、疎水性溶媒(B)が揮散するとパターンへの悪影響が懸念されるため、微細構造体の表面が疎水性溶媒(B)に覆われた状態で高圧処理チャンバーへ装填することが推奨される。従って、第2工程終了後、微細構造体表面を疎水性溶媒(B)で完全に濡らした状態、つまり液盛り状態にして、速やかに上記チャンバーへと搬送することが好ましい。また、第2工程終了後、第3工程をすぐに行わないのであれば、疎水性溶媒(B)の中に微細構造体を浸漬して保存しておいてもよい。
【0038】
第3工程によって、微細構造体の凹部内に液化/超臨界二酸化炭素が満たされたら、続いてはチャンバー内を減圧して、大気圧に戻すことによって、液化/超臨界二酸化炭素が微細構造体表面から気化するので、乾燥が終了する。チャンバー内の圧力を大気圧にすることにより、二酸化炭素は速やかに気体になって蒸発するので、微細構造体の微細パターンが破壊されることもなく、乾燥が終了する。なお、減圧の前のチャンバー内の二酸化炭素は超臨界状態とすることが好ましい。気相のみを経由して大気圧へ減圧できるため、パターン倒れを確実に防止することができる。
【0039】
液化二酸化炭素とは、5MPa以上の加圧二酸化炭素であり、超臨界二酸化炭素とするには31.2℃以上、7.1MPa以上とすればよい。乾燥工程における圧力は、5〜30MPaが好ましく、より好ましくは7.1〜20MPaである。温度は、31.2〜120℃が好ましい。31.2℃よりも低いと、疎水性溶媒(B)が二酸化炭素に溶解しにくいため、微細構造体表面から疎水性溶媒(B)を除去するのに時間がかかり、乾燥工程の効率が低くなるが、120℃を超えても乾燥効率の向上が認められない上、エネルギー的に無駄である。乾燥に要する時間は、対象物の大きさ等に応じて適宜変更すればよいが、数分〜数十分程度で充分である。
【0040】
【実施例】
以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術範囲に包含される。なお、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を示す。
【0041】
実験例1
Siウエハ上に、シプレー社製フォトレジスト「UV2」を回転数3000rpmでスピンコートし、膜厚4000Åのレジスト膜を形成した。続いて130℃で90秒間プリベークを行った後、電子ビーム露光(電子ビーム加速50keV;電子ドース10μC/cm2)によりパターンニングを行った。さらに、140℃で90秒間ベークを行った。露光したレジスト膜が形成されたウエハを、現像液(2.38%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)を用いて1分間の現像処理を行った。現像後、ウエハを回転させながら超純水をウエハ表面に供給して、現像液を洗い流した。
【0042】
続いてこのウエハ表面を乾燥させることなく、曇点25℃の下記化学式で示されるノニオン界面活性剤を1%溶解させた23℃の水を、ウエハを回転させながら(回転数200rpm)その表面に供給し、リンス液を上記界面活性剤水溶液で完全に置換した。
【0043】
【化2】
【0044】
ただし、上式中、m+nは7である。
【0045】
次に、ウエハを曇点である25℃に昇温し、10秒間保持した後、25℃に温度管理された上記界面活性剤を1%含むヘキサンを、ウエハを200rpmで回転させながらウエハの上から10秒間供給して界面活性剤水溶液を除去した。続いて、ウエハを27℃に昇温し、27℃に温度管理された純ヘキサンをウエハを200rpmで回転させながらウエハの上から30秒間供給した(第2工程)。
【0046】
ウエハの回転を止め、ウエハ停止後に表面が乾かないようにヘキサンを液盛りし、これを高圧処理チャンバーへ装填した。予め35℃に加熱した二酸化炭素を液送ポンプで35℃に保温されたチャンバーに供給しながら、圧力調整バルブでチャンバー内の二酸化炭素が8MPaとなるように調整して、チャンバー内の二酸化炭素を超臨界状態にした。この超臨界二酸化炭素をチャンバー内に流通させることによりチャンバーからヘキサンを除去し、チャンバー内を超臨界二酸化炭素のみに置換した(第3工程)。この後35℃に保持したまま、チャンバー内圧力を大気圧まで減圧し、レジスト膜を有するウエハを乾燥させた。このレジストパターンを電子顕微鏡で観察した結果、パターン倒壊は全く認められなかった。
【0047】
また、比較のため、レジストパターン形成、現像および超純水によるリンスの後、そのままスピン乾燥法(回転数2000rpm)で乾燥したサンプルについても電子顕微鏡により観察した結果、全てのパターンが倒壊していた。
【0048】
実施例2
実施例1と同様にして、レジストパターン形成、現像および超純水によるリンスを行った。次に、ウエハを25℃に昇温して10秒間保持した。続いて、ウエハを200rpmで回転させながら、前記界面活性剤を1%含むヘキサン混合液を25℃でウエハ表面に供給して水を除去した(第1工程)。以下は実施例1と同様にして、第2工程および第3工程を行い、チャンバーを減圧してウエハを乾燥させた。レジストパターンを電子顕微鏡で観察した結果、パターン倒壊は全く認められなかった。
【0049】
【発明の効果】
本発明の乾燥方法によれば、液化/超臨界の二酸化炭素による処理の前に、微細構造体の表面の水を、界面張力フリーな状態で、二酸化炭素との親和性が高い疎水性溶媒へと置換することができるので、微細構造体のパターンの倒壊を可及的に抑制することができた。
Claims (5)
- 表面に微細な凹部が多数形成されており、これらの凹部の内部に水を保持した微細構造体を乾燥する方法であって、
(1)微細凹部内の液体を、曇点を有する界面活性剤(A)の曇点±1℃以内の温度に調整すると共に、曇点±1℃以内の温度に調整された界面活性剤(A)と疎水性溶媒(B)との混合液を凹部内に過剰に供給することによって、凹部内の水の一部または全部を凹部内から除去する工程、
(2)凹部内の液体を界面活性剤(A)の曇点+1℃を超える温度へ昇温すると共に、曇点+1℃を超える温度に調整された疎水性溶媒(B)を凹部内へ過剰に供給することによって、凹部内の液体を疎水性溶媒(B)のみへ置換する工程、
(3)凹部内に疎水性溶媒(B)を有する微細構造体を、液化二酸化炭素または超臨界二酸化炭素と接触させることにより、凹部内の疎水性溶媒(B)を液化二酸化炭素または超臨界二酸化炭素へ置換する工程、
とをこの順番で含むと共に、上記(1)および(2)の各工程については大気圧下で行うことを特徴とする微細構造体の乾燥方法。 - 上記(1)の工程において、微細構造体を回転させながら、界面活性剤(A)と疎水性溶媒(B)との混合液を微細構造体表面に供給するものである請求項1に記載の微細構造体の乾燥方法。
- 上記(1)の工程において、曇点±1℃以内の温度に調整された界面活性剤(A)と疎水性溶媒(B)との混合液を凹部内に供給する前に、曇点を有する界面活性剤(A)の曇点+1℃以下の温度に調整された界面活性剤(A)の水溶液を上記微細な凹部内へ供給しておくものである請求項1または2に記載の微細構造体の乾燥方法。
- 上記界面活性剤(A)として、曇点が10〜100℃の範囲にある化合物を用いるものである請求項1〜3のいずれかに記載の乾燥方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の乾燥方法で得られたことを特徴とする微細構造体。
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