JP3919395B2 - 改質木材の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性等の性質を付与した改質木材を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の改質木材の製造方法として、例えば特公平4−4122号公報には、木材にアルキルシリケート化合物の溶液を含浸させた後に、このアルキルシリケート化合物を加熱硬化させて改質木材を得る方法が開示されている。また、特開平8−25314号公報には、リン酸化合物系の難燃剤溶液とシリカ溶液とを木材に順次含浸させた後に、加熱加圧処理をして改質木材を得る方法が開示されている。特開昭62−144902号公報には、▲1▼二酸化珪素、酸化アルミニウム等の不燃性無機物の超微粒子を飽水処理木材中に拡散させるか或いは▲2▼混合により不燃性無機物(リン酸塩、硼酸塩等)を生じさせる複数の液体を木材に順次含浸させた後、この不燃性無機物の脱落を防ぐためにシリカゾル、珪酸リチウム等の固定化剤を含浸させて硬化させる加工木材の製造方法が開示されている。特開平3−51104号公報には、木材内部の空気を二酸化炭素で置換し、この木材に、二酸化炭素と反応して不燃性無機化合物を生じる無機化合物の水溶液を含浸させる加工木材の製造方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特公平4−4122号公報に記載の実施例では、アルキルシリケート化合物を硬化させる際に、この化合物の沸点に近い温度まで加熱している。この方法によると、木材中に含浸させた溶液が漏れ出すためアルキルシリケート化合物の無駄が多く、十分な難燃性を付与することは困難である。この公報には、アルキルシリケート化合物を加水分解により硬化させることも記載されており、この場合にはアルキルシリケートの加水分解液を木材に含浸させるものと推察される。しかし、この加水分解液は時間経過に伴いゲル化するため可使時間の制約をうけ、作業性、経済性に問題がある。
【0004】
一方、特開平8−25314号公報および特開昭62−144902号公報に記載の▲2▼の方法では、二種以上の液体を木材に順次含浸させるため、二液目以降の含浸液は、前工程で木材中に含浸された液により汚染されるので長時間の繰り返し使用ができないという問題がある。また、これらの方法では液−液拡散を用いており、特開昭62−144902号公報に記載の▲1▼の方法も液体中に分散させた超微粒子を飽水木材中に拡散移動させるものであるため、この拡散工程に時間がかかり、さらに木材の深部にまで液体や超微粒子を拡散させることは非常に困難である。そして、特開平3−51104号公報に記載の方法によると、木材中にある二酸化炭素の量に限りがあるので、十分な難燃性を付与するだけの不燃性無機化合物を生じさせることができないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、簡単な工程により十分な難燃性を有する加工木材が得られる加工木材の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の改質木材の製造方法は、木材に珪酸化合物を含ませる工程と、上記珪酸化合物を含む木材に酸無水物ガスを用いて、上記珪酸化合物を上記木材内でゲル化させる工程と、上記工程で生成した珪酸化合物ゲルを含む上記木材に、シランカップリング剤および反応性樹脂化合物の少なくとも一方を含む下地処理剤を浸透させ、該下地処理剤により上記珪酸化合物ゲルと上記木材とを化学的に結合させる工程と、を備えることを特徴とする。これにより、珪酸化合物ゲルの木材からの脱落を防止し、加工木材中の水分移動を抑えて難燃性を維持するともに、この加工木材に優れた寸法安定性を付与することができる
上記珪酸化合物としては、アルカリ珪酸塩およびコロイダルシリカから選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0007】
木質系材料に珪酸化合物を含ませる上記工程は、木質系材料中の水分および空気を実質的に除去した後、上記珪酸化合物を溶解または分散させた珪酸化合物溶液を上記木質系材料に含浸または圧入することにより行うことが好ましい。ここで、上記珪酸化合物溶液は、水性コロイダルシリカおよびオルガノコロイダルシリカの少なくとも一方と、塩基性化合物と、を含むシリカゾル溶液であることが好ましい。
木材に珪酸化合物を含ませる上記工程において、上記木材には該木材表面に開口した浸透孔が予め設けられていることが好ましい。
【0008】
そして、上記珪酸化合物の含浸量は、木材の乾燥重量に対してSiO 換算で40〜200重量%とすることが好ましい
【0009】
以下、本発明をより詳細に説明する。
(1)木材について
本発明の改質木材の製造方法は、針葉樹、広葉樹など全ての天然木材、およびそれらの加工木材に適用することができる。これらの木材は十分に乾燥し、収縮、反りなどの狂いを取り除き、十分に強度を挙げた状態にして使用することが好ましい。また、本発明の方法により改質する木材は、柱材、板材等の他、合板、繊維板、パーティクルボード、フローリング、集成材、積層材等の加工木材等、いずれの形態であってもよい。
【0010】
木材の水分率は、一般に屋外保存では平衡水分率で約15重量%、室内保存では8〜15重量%、平均では12重量%程度である。本発明の製造方法を実施するにあたっては、木材に珪酸化合物を含ませる前に、この木材を水分率0〜7重量%の範囲にまで乾燥して組織内の導管や細胞壁などの強度を向上させ、珪酸化合物溶液の含浸圧等に耐え得る木材組織をつくる処理を行うことが好ましい。また、生材では水分率が50〜100重量%程度と多いため、高周波加熱加工、過熱蒸気加熱加工、熱板加熱加工等により木材を急速乾燥させ、脂を除去し、細胞壁孔を貫通させて、珪酸化合物溶液等の木材への浸透性を向上させる処理を行うことが好ましい。あるいは、上記両方の処理を組み合わせた前処理を行った木材を使用してもよい。
【0011】
(2)珪酸化合物について
本発明の製造方法において使用する「珪酸化合物」は、後述する酸無水物ガスによりゲル化させることのできる化合物であって、アルカリ珪酸塩およびコロイダルシリカが好適に用いられる。
【0012】
(i)アルカリ珪酸塩
珪酸化合物としての「アルカリ珪酸塩」は、一般式Me2O・nSiO2〔nは0.5〜10であり、MeはNa、K、Li、R3NまたはR4N(Rは水素原子またはコリン、モノメチルトリエタノールアンモニウム等の有機基)である。〕で示される珪酸化合物であって、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、第3級アミン珪酸塩、第4級アンモニウム珪酸塩等が例示される。このうち、得られた改質木材の変色が少ないことから、珪酸リチウム、第3級アミン珪酸塩、第4級アンモニウム珪酸塩から選択される一種または二種以上の化合物を用いることが好ましい。
【0013】
上記アルカリ珪酸塩を木材に含ませる際には、この化合物をSiO2濃度15〜50重量%(より好ましくは15〜30重量%)の珪酸塩溶液として用いることが好ましい。SiO2濃度が50重量%を超えると、珪酸塩溶液の粘度が高くなりすぎてこの溶液を木材内部に浸透させることが困難となる。一方、SiO2濃度が15重量%未満では、十分な量の珪酸化合物を木材に含ませることができず、木材改質の効果が不足する場合がある。
【0014】
(ii)コロイダルシリカ
珪酸化合物としての「コロイダルシリカ」は、一般式Me2O・nSiO2〔nは50〜300であり、MeはNa、R3NまたはR4N(Rは水素原子またはコリン、モノメチルトリエタノールアンモニウム等の有機基)である。〕で示される粒径5〜50nmのシリカ(上記アルカリ珪酸塩とは異なり、SiO2のモル比が50〜300と大きい。)が分散したコロイド溶液である。SiO2濃度20〜50重量%(より好ましくは30〜40重量%)のものを用いることができ、水分散系のものと有機溶媒分散系のものとがある。このコロイダルシリカを木材に含ませる際には、低粘度(好ましくは1〜50cps/25℃、より好ましくは1〜30cps/25℃)で小粒径のものが木材への浸透性に優れるので好ましく、改質効果の点からはSiO2濃度の高いものが好ましい。
【0015】
水分散系のコロイダルシリカ(水性コロイダルシリカともいう。)を使用する場合には、SiO2濃度20〜50重量%(より好ましくは20〜40重量%)、シリカの粒径20nm以下(より好ましくは15nm以下)の低粘度品を用いることが好ましい。なお、上記一般式におけるMeがR4Nである水性コロイダルシリカ(アンモニウムシリケート)は、他の化合物に比べて、溶液中のSiO2濃度が比較的高い(例えば40重量%程度)場合にも低粘度であり、かつ結合力が強いなどの特長を有することから、本発明において好適に用いられ、良好な結果を示す。
一方、有機溶媒分散系のコロイダルシリカ(オルガノコロイダルシリカともいう。)を使用する場合には、SiO2濃度20〜40重量%(より好ましくは20〜30重量%)、シリカの粒径20nm以下(より好ましくは15nm以下)の低粘度品を用いることが好ましい。溶媒がメタノール、イソプロパノールまたはキシレン−ブタノール混合系である場合には、低粘度でSiO2濃度の高いものとすることができ、いずれも本発明において良好な結果を示す。
なお、本発明において好ましく用いられるコロイダルシリカの粒径は、木材の細胞壁孔の直径(例えば7〜10μm程度)に対して1/10〜1/1000程度であるため、容易に木材の細胞壁の内部等にまで含浸させることができる。
【0016】
(iii)珪酸化合物溶液について
上記珪酸化合物は、これを溶媒に溶解または分散させた「珪酸化合物溶液」とし、含浸または圧入等の方法によって木材中に、木材の組織内(導管や細胞壁等の内部)にまで含ませることが好ましい。
この珪酸化合物溶液は、アルカリ珪酸塩および/またはコロイダルシリカを含むものとすることができる。コロイダルシリカとしては、水性コロイダルシリカおよびオルガノコロイダルシリカのいずれか一方を用いてもよく、両方を用いてもよい。特に、アルカリ珪酸塩として変色しやすいものを使用する場合には、コロイダルシリカを併用することにより、アルカリ金属による変色を著しく抑制することができる。アルカリ珪酸塩とコロイダルシリカとを併用する場合、珪酸化合物の合計量に占めるアルカリ珪酸塩の割合(固形分比)は50重量%以下とすることが好ましく、30重量%以下とすることがより好ましく、10重量%以下とすることが更に好ましい。
【0017】
珪酸化合物溶液がアルカリ性である場合には、後続する工程でこの溶液への酸無水物ガスの溶解性が高くなり、これによりゲル化が容易となるので好ましい。珪酸化合物溶液をアルカリ性とするために、この溶液に塩基性化合物を添加することができ、特に珪酸化合物溶液がアルカリ珪酸塩を含まない(すなわち、コロイダルシリカ単体からなる)場合には、塩基性化合物を含有するシリカゾルとすることが好ましい。
【0018】
(3)珪酸化合物を含ませる工程について
(i)操作方法および操作条件
木材に珪酸化合物を含ませる際の好ましい操作方法としては、まず木材中の水分および空気を実質的に除去して木材内の導管や組織細胞内等に空隙を形成させ、次いでこの木材に珪酸化合物溶液を含浸または圧入して、上記空隙(導管、組織細胞内等)に珪酸化合物溶液を充満させる方法が挙げられる。
上記「水分および空気を実質的に除去」する程度としては、水分は木材の重量に対して0〜7重量%となるまで、空気は気圧100Torr以下(より好ましくは50Torr以下)の真空度となるまで除去することが好ましい。
【0019】
木材に珪酸化合物溶液を含浸または圧入する際の圧力条件は、含浸される木材の真空度および水分率、さらに木材の種類、木目の状態、木材の大きさや形状等により異なるが、常圧で行ってもよく、必要に応じて100kg/cm2程度以下の圧力を加えてもよい。ただし、軟質系の木材では10〜30kg/cm2程度以上、硬質系の木材では50kg/cm2程度以上となると、木材の種類や形状により反り、変形、割れなどが生じる場合がある。このため、常圧〜50Kg/cm2(軟質系木材では常圧〜30Kg/cm2、より好ましくは常圧〜15Kg/cm2)の圧力とすることが好ましい。
また、珪酸化合物溶液を圧入する場合、低圧力で十分な浸透速度を得る方法の一つとして、珪酸化合物溶液の液温を上げる方法がある。このとき、液温を180℃以上とすると木材の損傷、溶液の変質等が起こる場合があるので、木材の種類や形状に応じて40〜150℃程度の液温とすることが好ましい。液温をこの程度に上げることにより、常温の場合と比較して木材への浸透速度は2〜5倍となり、浸透工程に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0020】
尚、厚み、長さ又は面積のある大きな木材や、木目の詰まった堅い木材等は、加圧や加熱を行っても、珪酸化合物溶液を木材内部深くまで浸透させることは困難である。このような場合には、予め木材に「浸透孔」を設けることにより、当初の木材表面のみならずこの浸透孔からも珪酸化合物溶液が圧入されるので、木材内部に珪酸化合物溶液を容易に(例えば低圧力、短時間で)深く浸透させることが可能となる。
例えば、図1(A)において、木材2の矢印a方向には珪酸化合物溶液が浸透しやすいが、矢印b方向には浸透しにくい。このとき、図1(A)(B)に示すように、木材2の表面から適当な深さまで延びる微小な浸透孔1を、珪酸化合物溶液を木材2の全体に浸透させるために必要な個数および間隔で穿設することにより、珪酸化合物溶液を木材2の全体に容易に浸透させることができる。また、図2に示す方向に延びるように浸透孔1を設けてもよい。この浸透孔1は、木材2の裏面側や側面側に開口して、なるべく木目3に対向する角度に延びるように設けると、美観を損なうことなく浸透性を向上させることができる。
浸透孔の大きさは、直径0.5〜1mm程度とすることが好ましい。浸透孔一つにつき、その周囲25〜75mmの範囲に溶液を浸透させることができる。
【0021】
(ii)木材に含ませるSiO2の量
十分な難燃効果を得るためには、原材料である木材の乾燥重量に対して200重量%以上の珪酸化合物溶液を木材に含ませることが好ましく、250重量%以上とすることがより好ましく、300重量%以上とすることがさらに好ましい。また、SiO2換算としては、木材の乾燥重量に対して40〜200重量%を含ませることが好ましく、50〜180重量%がより好ましく、100〜150重量%がさらに好ましい。なお、木材の種類および処理条件等を調節することによって、木材の乾燥重量に対して200重量%を超えるSiO2を含有させることも可能であり、この場合にも優れた性質を有する加工木材が得られる。
【0022】
(4)酸無水物ガスについて
本発明において使用する「酸無水物ガス」は、使用温度(通常は常温)において気体であり、珪酸化合物溶液等に溶解して酸性を呈する化合物であって、木材に含ませた珪酸化合物のゲル化剤として機能する。このような酸無水物ガスとしては、CO2等の炭素酸化物、SO2等の硫黄酸化物、NO2等の窒素酸化物、HCl等のハロゲン化水素、OF2等の弗化酸素が挙げられ、これらを一種単独で、または二種以上を任意の割合で混合して用いることができる。このうち、経済性、作業性、毒性等の点から、酸無水物ガスとしては、燃焼ガスまたは純粋な二酸化炭素(CO2)を使用することが最も好ましい。
これらの酸無水物ガスが木材中の珪酸化合物溶液に溶解すると、酸無水物ガスの溶解量に比例して溶液のpHが低下する。そして、珪酸化合物溶液のpHが6.5付近まで低下すると、珪酸化合物のゲル化が進行する。
【0023】
珪酸化合物溶液がアルカリ珪酸塩を含むか、あるいはアルカリ珪酸塩およびコロイダルシリカを含む場合には、珪酸化合物溶液がアルカリ性となるので酸無水物ガスを容易に十分に溶解させることができる。一方、珪酸化合物溶液がコロイダルシリカ単体からなる場合には、珪酸化合物溶液に塩基性化合物を含有させることにより、酸無水物ガスの溶解速度を高めることが好ましい。これにより、珪酸化合物のゲル化不良を防止することができる。この塩基性化合物としては、アンモニア、トリメチルアミン等の各種アミン類、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属類等を使用することができる。pHが高すぎるとゲル化開始までに多量の酸無水物ガスを溶解させることとなるので、酸無水物ガス溶解前における珪酸化合物溶液のpHは8.0〜11.0(より好ましくは8.5〜10.0)であることが好ましい。
【0024】
このゲル化工程は常圧で行ってもよいが、酸無水物ガスの珪酸化合物溶液への溶解を促進させるために加圧下で行ってもよい。この加圧の程度は、通常常圧から100kg/cm2程度以下であり、好ましくは5〜70kg/cm2、より好ましくは10〜50kg/cm2である。圧力が高すぎると、木材の種類や形状によって反り、変形、割れなどが生じる場合がある。酸無水物ガスが燃焼ガス又は純粋な二酸化炭素である場合には、例えば10〜30kg/cm2の圧力に1〜10時間(より好ましくは2〜6時間)維持することにより珪酸化合物をゲル化させることができる。また、酸無水物ガスが塩化水素ガスである場合には、例えば2〜5kg/cm2の圧力に0.5〜3時間(より好ましくは1〜2時間)維持すればよい。また、処理温度は通常は常温であるが、加熱または冷却してもよい。
【0025】
(5)下地処理について
ゲル化工程終了後の木材は、適当に(例えば水分率1〜40重量%程度に)乾燥させることにより不燃性の加工木材として使用可能である。
また、木材は多くの水酸基を有し、シリカゲルも多くのシラノール基を持っている。そこで、木材内部で生成したシリカゲルのシラノール基や木材(セルロース等)の水酸基と、反応性樹脂化合物(エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂及びその前駆体等)および/またはシランカップリング剤とを反応固化させる下地処理を行い、シリカゲルと木材とを化学的に結合させることができる。これにより、木材中における水分移動が抑制されて狂いが防止されるので、難燃性および寸法安定性に一層優れた加工木材となる。また、後述のように加工木材の表面を塗装する場合には、この下地処理を行うことにより塗料の接着性が向上する。
【0026】
(i)シランカップリング剤
シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、3−メタリロキシプロピルトリメトキシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等の代表的なシランカップリング剤、又はシラン縮合物等を使用することができる。このシラン縮合物としては、エポキシシランとアミノシランとの縮合反応によるシラン縮合物、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーやエポキシ樹脂等の反応性基含有プレポリマーとシランとの縮合反応によるシラン縮合物等が挙げられる。
【0027】
本発明において特に好ましく用いられるシランカップリング剤の市販品としては、アミノシラン系シランカップリング剤である商品名「KBP−43」、「KBP−41」、「KBP−40」、および、イソシアネート基を有するシランカップリング剤である商品名「X−12−413」(以上、いずれも信越化学工業製品株式会社製)を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、短時間で硬化し、接着性が高く、また得られた加工木材の耐水性及び耐候性に優れ、適応性も良いという良好な結果を示す。
【0028】
(ii)反応性樹脂化合物
本発明において使用できる反応性樹脂化合物としては、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリルウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、レゾルシノール系樹脂等が挙げられる。このうち、ポリエーテル、ポリエステル、アクリルポリオール、ブタジエンポリオールアルキッド、エポキシ、ひまし油及び飽和ポリエステル等を、ポリイソシアネートと反応させて得られる「ポリイソシアネートオリゴマー」が特に有用である。
【0029】
(iii)処理方法
上記シランカップリング剤および反応性樹脂化合物は、いずれか一方を使用してもよい。例えば、シランカップリング剤を溶媒等で希釈して木材に浸透させることにより、木材中のシリカゲル表面を改質して、木材組織、反応性樹脂化合物、塗料等の有機材料との接着性を著しく向上させることができる。
また、シランカップリング剤および反応性樹脂化合物の両方を同時にあるいは順次に使用する下地処理を行うことにより良好な結果が得られる。例えば、まずシランカップリング剤を溶媒等で希釈した下地処理剤を木材に浸透させてシリカゲル表面を改質し、次いで反応性樹脂化合物を溶媒等で希釈した下地処理剤を浸透させて表面改質されたシリカゲルや木材組織と反応固化させる。あるいは、シランカップリング剤と反応性樹脂化合物とを予め混合した下地処理剤、更にはこれらを必要に応じて適宜反応させたオリゴマーからなる下地処理剤を使用してもよい。
【0030】
なお、この下地処理を行うにあたっては、ゲル化後の木材を適度に乾燥させておくことが好ましい。この乾燥の程度としては、木材の水分率が1〜50重量%(より好ましくは2〜40重量%)となる範囲が好ましい。下地処理剤としてエポキシ樹脂ベースの水分散型及び水溶型樹脂を使用する場合には残存水分率が比較的高くてもよいが(例えば20〜40重量%)、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリルウレタン系樹脂等のように水分に敏感でゲル化しやすい化合物を下地処理剤に用いる場合には、過剰水分によるイソシアネート基の加水分解を抑えるために、木材の水分率を2〜20重量%の範囲に調整することが好ましい。
【0031】
(6)表面塗装について
本発明の加工木材は、ウレタン系、アクリル系、フッ素系、シリコーン系、アミノアルキッド系、不飽和ポリエステル系、フェノール系等の従来公知の塗料から選択される一種または二種以上を用いて、従来公知の各種方法により表面塗装することができる。
本発明の加工木材の製造方法において、下地処理工程および塗装工程は必須ではないが、これらの工程を実施した場合には、下地処理材および塗料によって木材の内部や表面を完全に覆うことにより、木材内の水分移動による狂いを防ぎ、長期にわたってこの木材に寸法安定性および難燃性を付与することができる。一方、例えば敷物とする木材チップの不燃化加工等においてはこれらの工程を行うことなく最終製品とすることができる。
【0032】
(7)改質木材の用途について
本発明の方法により製造された改質木材は、難燃性および寸法安定性に優れ、また防腐性、防虫性、高強度をも備えることから、例えば以下の用途に好ましく使用される。
【0033】
(i)建築用内装部材
建築材料のうち、天井材、間仕切材、壁材、床材等の内装部材として使用することができる。これらの部材は、薄物の板材が主体であるため珪酸化合物溶液を含浸させやすく、目的に合わせてJIS A 1321やJIS A 5801等に合格するよう含浸量を調整して加工することができる。珪酸化合物溶液の含浸量としては、乾燥木材に対して230〜320重量%(SiO2換算で40〜160重量%)とすることが好ましい。
【0034】
(ii)建築用構造部材
建築材料のうち、柱、梁、床、壁等の構造部材として使用することができる。これらの用途向けの木材は、柱、梁、床等を中心に、厚さ、長さ、幅等が大きく含浸しにくいため、浸透孔を穿設することが有効である。また、水分率を下げて木材組織の強度を上げる前処理、および脱脂により細胞壁孔を貫通させて珪酸化合物溶液の浸透性を改善する前処理を施した木材を使用することが好ましい。目的に合わせて、JIS A 1301に合格するよう含浸量を調整して加工することができる。珪酸化合物溶液の含浸量としては、乾燥木材に対して230〜320重量%(SiO2換算で40〜160重量%)とすることが好ましい。
なお、大型の部材に関しては、経済性を考慮して、部材の表面から所定の深さまでの範囲に珪酸化合物溶液を含浸させてもよい。この場合にも十分な難燃性を付与することができる。
【0035】
(iii)建築用開口部材
建築材料のうち、戸、窓、階段等の開口部材としても使用することができる。これらの部材は、柱状、板状等、様々な形状のものがある。大型形状の木材を加工する場合には、構造部材の場合と同様に、浸透孔を設けたり、前処理を行った木材を使用することが好ましい。
防火戸、防火戸木枠、木製サッシ、階段等の部材については、JIS A 1301やJIS A 1311の試験に合格するように珪酸化合物溶液を木材に十分含浸させることが必要となる。具体的には、乾燥木材に対して250〜330重量%(SiO2換算で50〜170重量%)含浸させることが好ましい。
また、アルミサッシ内部の中空部分に、珪酸化合物溶液を十分に含浸させて製造した加工木材を充填することにより、アルミサッシの強度および耐熱性を向上させる、という使用方法も有用である。
【0036】
(iv)その他
本発明により得られた加工木材は、その寸法安定性、難燃性、防腐性、防虫性、高強度等の性質を利用して、上記建築材料に限らず、電柱、ベンチ、木冊、庭園橋、ガードレール等の木質材料として好適に使用することができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の改質木材の製造方法につき、実施例を挙げて説明する。なお、以下における「部」および「%」は、特に記載のない場合は重量基準である。
【0038】
(実施例1)
下記のようにして加工木材を製造し、その性能を評価した。
(1)木材
タイプII合板〔15t(厚さ)×220×220mm〕を乾燥機に入れ、含水率を3%程度まで下げて寸法安定性を図ったものを使用する。
(2)珪酸化合物溶液
「珪酸リチウム35」(固形分濃度20%)25部(固形分換算で5部)と、水性コロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名「スノーテックスXS」、シリカ粒径4〜6nm、固形分濃度20%)75部(固形分換算で15部)との混合品を使用する。この珪酸化合物溶液のSi2O換算の固形分濃度は20%、粘度は7cps/25℃、pHは10である。
【0039】
(3)含浸工程
前記タイプII合板を圧カタンクに入れて密閉する。この圧力タンク内を真空ポンプによって10〜50Torrに至るまで減圧して、タイプII合板の組織細胞内や導管内の水分および空気を吸引除去し、タイプII合板内の組織細胞内や導管内に空隙を形成する。次に、この圧力タンク内に珪酸化合物溶液を入れて、タイプII合板を浸漬する。
そして、N2ガスを用いて圧力タンク内を50kg/cm2の圧力に20時間維持し、合板内部の空隙に珪酸化合物溶液を常温で浸透させる。含浸が終了した時点で、圧カタンク内から珪酸化合物溶液を除去して別タンクに移す。
【0040】
(4)ゲル化工程
引続き、二酸化炭素を用いて、圧力タンク内を30kg/cm2の圧力に4時間維持し、上記(3)の工程で浸透された珪酸化合物を合板内でゲル化させる。ゲル化が十分に進行したことを確認した後、この合板を圧カタンクから取り出す。この合板につき、珪酸化合物溶液の含浸率を測定したところ、含浸前の木材重量に対して280%(Si2O換算で56%)であった。
【0041】
(5)下地処理工程および塗装工程
上記(4)の工程で得られた合板を水分率10〜40%程度まで乾燥させる。その後、イソシアネート基を有するシランカップリング剤(信越化学工業(株)製、商品名「X−12−413」)2部(有姿)を、反応性樹脂化合物(ポリイソシアネートオリゴマー変性品:Bayer社製、商品名「ディスモジュールTT」)98部(有姿)に添加して、これらを反応させたオリゴマーからなる下地処理剤を調製し、木材内部にこの下地処理剤を十分に含浸させ、固化させる。
さらに、表1に示す塗料及び条件で、下塗り、着色、上塗りからなる塗装工程を行う。塗装方法としては、スプレーを用いていずれも40〜60g/m2の目付けで塗装した。尚、表1に示す使用材料は、いずれも玄々化学(株)製の商品名である。
【0042】
【表1】
Figure 0003919395
【0043】
(6)加工木材の性能評価
上記(1)〜(5)の工程で得られた加工木材につき、JIS A 1321に準じて燃焼試験を行った。その結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
Figure 0003919395
珪酸化合物溶液の含浸率 280%(Si2O換算で56%)
温度時間面積(℃分) 0
発煙係数 (CA) 3
残炎時間(秒) 0
上記のように、ほぼ完全な不燃効果が得られた。
【0045】
(実旋例2)
下記の各種木材を用いて加工木材を製造し、その性能を評価した。
(1)木材
表3に示すラワン材、欅材、杉材および合板(合板の水分率は8%、その他の材料の水分率は12%)を乾燥機に入れ、水分率を5%以下としたものを使用する。
(2)珪酸化合物溶液
水性コロイダルシリカ(日本化学工業(株)製、商品名「シリカドール3OS」、シリカ粒径7〜10nm、固形分濃度30%)を、28%アンモニア水を用いてpH9.0に調整したものを使用する。この珪酸化合物溶液の粘度は10cps/25℃である。
【0046】
(3)含浸工程
上記木材を圧カタンク内に入れ、実施例1と同様に圧力タンク内を減圧して木材の組織細胞内や導管内の水分および空気を吸引除去する。この木材を珪酸化合物溶液に浸漬し、N2ガスを用いて圧力タンク内を50kg/cm2の圧力に8時間維持した後、更に100kg/cm2の圧力に3時間維持する2段階で、常温にて含浸を行う。
(4)ゲル化工程
その後、二酸化炭素を用いて圧力タンク内を常温で30kg/cm2の圧力に4時間維持し、珪酸化合物のゲル化が十分に進行したことを確認して木材を圧力タンクから取りし出た。この木材につき、珪酸化合物溶液の含浸率を測定した。その結果を表3に併せて示す。
(5)下地処理工程および塗装工程
実施例1と同様に下地処理を行った後、塗装を行う。
(6)加工木材の性能評価
得られた各加工木材につき、JIS A 1321に準じて燃焼試験を行った。その結果、いずれも実施例1とほぼ同様な結果が得られた。
なお、珪酸化合物溶液の含浸率は、200%以上(Si2O換算で60%以上)でほぼ満足のいく難燃効果が得られ、さらに250%以上(Si2O換算で75%以上)になるとほぼ完全な不燃効果を示すようになる。
【0047】
【表3】
Figure 0003919395
【0048】
(実施例3)
この実施例3は、厚みのある下記木材を用いて加工木材を製造し、浸透孔を設けた場合と設けない場合との珪酸化合物溶液の浸透性を比較した例である。
(1)木材
下記3種の木材を使用し、それぞれ浸透孔を設けたものと設けないものとを用意する。尚、浸透孔は、図1(A)(B)に示すように、直径1mm、深さ30mmの穴を、30mm間隔で、木目に対向する方向で裏面側から表面側に向かってあけた。また、各木材は、乾燥機に入れて水分率を3%以下として使用した。
<使用木材>
ラワン材(35t×220×220mm)
杉材 (35t×220×220mm)
水楢材 (35t×220×220mm)
(2)珪酸化合物溶液
「珪酸ナトリウム3号」(固形分濃度40%)20部(固形分換算で8部)と、水性コロイダルシリカ(日本化学工業(株)製、商品名「シリカドール3OS」、シリカ粒径7〜10nm、固形分濃度30%)80部(固形分換算で24部)との混合物を使用する。この珪酸化合物溶液のSi2O換算の固形分濃度は32%、粘度は22cps/25℃、pHは11である。
【0049】
(3)含浸工程
前記木材を圧力タンク内に入れ、実施例1と同様に圧力タンク内を減圧して木材中の水分および空気を吸引除去する。この木材を珪酸化合物液に浸漬し、N2ガスを用いて圧力タンク内を50kg/cm2の圧力に維持して、常温にて珪酸化合物溶液を含浸させた。各木材につき、この含浸時間が20時間のものと1時間のものとを作製した。
(4)ゲル化工程
そして、二酸化炭素を用いて圧力タンク内を常温で30kg/cm2に4時間維持し、珪酸化合物のゲル化を確認した後、各木材を圧カタンクから取り出す。それらの各種木材につき珪酸化合物溶液の含浸率を測定した。その結果を表4に示す。
(5)下地処理工程および塗装工程
実施例1と同様に下地処理を行った後、塗装を行う。
(6)加工木材の性能評価
JIS A 1321に準じて燃焼試験を実施した。
【0050】
【表4】
Figure 0003919395
【0051】
表4に示すように、浸透孔を設けた木材は浸透孔を設けていない木材に比べて浸透速度が大きく、浸透孔を設けていない木材の1/20以下の処理時間で同等以上の含浸率とすることができた。尚、直径0.5〜1mm程度の浸透孔を一つ穿設することにより、この浸透孔の周辺25〜75mmの範囲に珪酸化合物溶液を拡散浸透させる効果があった。また、含浸が困難な木材に浸透孔を設けることにより、この木材に珪酸化合物溶液を、より低い圧力で容易に浸透させることができるようになる。
尚、一般的な拡散浸透では、木口からの浸透では木材表面から25〜80mm、板目面や木端からの木目を通しての浸透では木材表面から2〜6mmまでが限度と考えられる。しかし、拡散浸透性の悪い木材であっても、上記のように木材の裏面や木端等の目立たない箇所に必要数だけ浸透孔をあければ、変形や強度の低下もなく容易に薬液の浸透が可能となり、これにより十分な難燃効果をもつ加工木材を製造することができる。
【0052】
(実施例4)
内装や天井材等に用いられる薄板合板に対し、メタノールを分散媒とするオルガノコロイダルシリカ(メタノールシリカゾル)を用いて加工木材を製造した。(1)木材
厚みの異なる二種の突板張りタイプII合板(3t×220×220mm及び6t×220×220mm)を乾燥機に入れ、水分率を3%以下としたものを使用する。
(2)珪酸化合物溶液
メタノールシリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名「メタノールシリカゾルMA−ST」、シリカ粒径15nm、固形分濃度30%)を、アンモニア水(28%)を用いてpHを8.8に調整したものを使用する。この珪酸化合物溶液の粘度は3cps/25℃である。
【0053】
(3)含浸工程
前記合板を圧カタンク内に入れ、実施例1と同様に圧力タンク内を減圧して合板中の水分および空気を吸引除去する。この合板を珪酸化合物溶液に浸漬し、N2ガスを用いて圧力タンク内を20kg/cm2の圧力に5時間維持した後、更に50kg/cm2の圧力に2時間維持する2段階で、常温にて含浸を行う。
(4)ゲル化工程
二酸化炭素を用いて圧力タンク内を常温で30kg/cm2の圧力に4時間維持し、珪酸化合物のゲル化を確認した後、含浸合板を圧力タンクから取り出す。この合板につき珪酸化合物溶液の含浸率を測定した。その結果を表5に示す。
(5)下地処理工程および塗装工程
実施例1と同様に下地処理を行った後、塗装を行う。
【0054】
【表5】
Figure 0003919395
【0055】
この表5から判るように、珪酸化合物溶液としてメタノールシリカゾルを用いた本実施例では、木材内の空気および水分を除去して木材内に空隙を設けてから含浸させることによる効果に加えて、メタノールの表面張力が22.55dyn/cm2(20℃)と低いため濡れやすく浸透性が良い等のメタノール効果もあって、木材の厚みに差があってもほぼ同じ含浸率が得られた。また、得られた加工木材につきJIS A 1321に準じて燃焼試験を実施したところ、いずれも実施例1とほぼ同様に優れた難燃性を示した。
【0056】
(実施例5)
(1)木材
過熱蒸気加熱処理により脂を除去し、細胞壁孔を貫通させた杉板(15t×220×220mm)を乾燥機に入れ、水分率を5%以下としたものを使用する。
(2)珪酸化合物溶液
アンモニウムシリケート(日本化学工業株式会社製の水性コロイダルシリカ、商品名「AS−17」、シリカ粒径15nm)を使用する。この珪酸化合物溶液のSi2O換算の固形分濃度は40%、粘度は14cps/25℃、pHは11である。
【0057】
(3)含浸工程
上記木材を圧カタンク内に入れ、実施例1と同様に圧力タンク内を減圧して木材内の水分および空気を吸引除去する。この木材を上記珪酸化合物溶液に浸漬し、N2ガスを用いて圧力タンク内を15kg/cm2の圧力に40時間維持して、常温にて含浸を行う。
(4)ゲル化工程
二酸化炭素を用いて圧力タンク内を常温で25kg/cm2の圧力に3.5時間維持し、珪酸化合物のゲル化を確認した後に木材を圧力タンクから取り出す。この木材につき珪酸化合物溶液の含浸率を測定したところ、含浸率310%(SiO2換算で124%)であった。
(5)下地処理工程および塗装工程
得られた木材wを水分率8%まで乾燥させる。その後、実施例1と同様に下地処理をおよび塗装を行う。
(6)加工木材の性能評価
JIS A 1321に準じて燃焼試験を実施した。その結果、ほぼ完全な不燃効果を示した。
【0058】
【発明の効果】
本発明の製造方法では、まず木材に珪酸化合物を含ませる。このとき、予め木材中の空気と水分を除去しておくことにより、木材の導管や組織細胞内に珪酸化合物溶液を効率よく浸透、充満させることができる。その後、この木材を酸無水物ガス(好ましくは二酸化炭素)に、好ましくは加圧下で接触させると、酸無水物ガスが珪酸化合物溶液に溶解して組織内部に深く浸透する。これにより、珪酸化合物溶液を木材の導管や組織細胞内で均一にゲル化させることができる。
このように本発明では、木材中に含ませた珪酸化合物溶液に酸無水物ガスを溶解させてゲル化させる。この方法によると、液体を含む木材中に他の液体を拡散(液−液拡散)させて二種の液体の反応により不溶解塩などの無機物を生成させる従来の方法とは異なり、酸無水物ガスを木材の深部まで容易に拡散させてゲル化を起こすことができる。また、ゲル化剤として液体ではなく気体を用いるので、二種類目の液体が木材中の液体によって汚染される等の問題は生じない。さらに、木材中の空気を二酸化炭素で置換する従来の方法とは異なり、本発明では予め珪酸化合物を含ませた木材に酸無水物ガスを供給するので、反応時間、圧力などを調節することにより、この珪酸化合物をゲル化させるに十分な量の酸無水物ガスを木材中に溶解させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法において、木材に浸透孔を穿設した例を示すもので、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図2】本発明の製造方法において、木材に浸透孔を穿設した他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1:浸透孔、2:木材、3:木目

Claims (6)

  1. 木材に珪酸化合物を含ませる工程と、
    上記珪酸化合物を含む木材に酸無水物ガスを用いて、上記珪酸化合物を上記木材内でゲル化させる工程と、
    上記工程で生成した珪酸化合物ゲルを含む上記木材に、シランカップリング剤および反応性樹脂化合物の少なくとも一方を含む下地処理剤を浸透させ、該下地処理剤により上記珪酸化合物ゲルと上記木材とを化学的に結合させる工程と、
    を備えることを特徴とする改質木材の製造方法。
  2. 上記珪酸化合物は、アルカリ珪酸塩およびコロイダルシリカから選択される少なくとも一種である請求項1記載の改質木材の製造方法。
  3. 木材に珪酸化合物を含ませる上記工程は、木材中の水分および空気を実質的に除去した後、上記珪酸化合物を溶解または分散させた珪酸化合物溶液を上記木材に含浸または圧入することにより行われる請求項1または2記載の改質木材の製造方法。
  4. 上記珪酸化合物溶液は、水性コロイダルシリカおよびオルガノコロイダルシリカの少なくとも一方と、塩基性化合物と、を含むシリカゾル溶液である請求項3記載の改質木材の製造方法。
  5. 木材に珪酸化合物を含ませる上記工程において、上記木材には該木材表面に開口した浸透孔が予め設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の改質木材の製造方法。
  6. 上記珪酸化合物の含浸量は、木材の乾燥重量に対してSiO 換算で40〜200重量%である請求項1から5のいずれか一項に記載の改質木材の製造方法。
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