JP3919299B2 - 耳式体温計 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は耳式体温計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
病院等の医療機関や家庭において、健康管理や治療経過等の確認のためにしばしば体温を測定する。体温を測定するための体温計には種々のものがあり、疾患や病状に合わせて適宜選択される。
【0003】
そのなかで耳式体温計は、鼓膜温が深部体温に近いことを利用して、鼓膜またはその周辺部から放射される赤外線を検知することで体温を測定するものである。耳式体温計は、プローブ(探触子)を耳腔(外耳道)内に挿入して鼓膜またはその周辺部から発せられる赤外線(熱線)を赤外線センサーへ導き、その強度に応じて体温を測定する構成を有している。この耳式体温計は、数秒以内での体温測定が可能であること、および耳腔内に挿入する部分にカバーを被せたり、消毒することにより繰返し使用が可能であるなどの利点がある。
【0004】
しかし、プローブの耳腔内への挿入方向、挿入深さ等の測定条件が測定値へ及ぼす影響が大きく、また測定中にプローブが動くことによって測定値に大きな誤差が生じることがある。したがって、例えば測定に際し、測定スイッチの操作を行う場合、測定スイッチの操作の度に体温計本体を保持している手が動き、耳腔内に挿入された前記プローブがブレてしまうことがある。さらに、測定中に体温計本体を顔面に対して安定的に保持することができず、その位置がズレてしまうことがある。このような場合には、測定値のバラツキを生じて再現性が悪く、耳式体温計の信頼性を損なう可能性が大きいという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、測定に際しての動作、姿勢などに影響されず、精度の高い体温測定を可能とする体温計を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(6)の本発明により達成される。
【0007】
(1) 体温計本体の長手方向の一端側に設置され耳内に挿入されるプローブを備えた耳式体温計であって、
前記体温計本体の他端側でかつ前記プローブが設置されている面に、前記プローブを挿入する耳の近傍に当接し、前記体温計本体を支持するための少なくとも1つの隆起部が形成されていることを特徴とする耳式体温計。
【0008】
(2) 前記体温計本体の長手方向へ伸びる中心線の両側に少なくとも一対の前記隆起部が設けられている上記(1)に記載の耳式体温計。
【0009】
(3) 前記隆起部が人の頬骨の近傍に当接するようにして使用される上記(1)または(2)に記載の耳式体温計。
【0010】
(4) 前記隆起部の近傍に形成された凹部に体温計の電源の切/入を切り替える電源スイッチが設けられている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の耳式体温計。
【0011】
(5) 前記体温計本体に設置され少なくとも測定開始または終了時に操作する測定スイッチを備え、該測定スイッチの操作方向と前記隆起部の突出方向とが実質的に同一である上記(3)または(4)に記載の耳式体温計。
【0012】
(6) 前記隆起部の突出方向と、前記プローブの突出方向とが実質的に同一である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の耳式体温計。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の体温計を添付図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1、図2、図3および図4はそれぞれ本発明の体温計の正面図、側面図および上面図、背面図である。図5は図1中のA−A線断面図である。
【0021】
なお、説明の都合上、図1、図2、図4の上側を「上部」、下側を「下部」、図3の左側を「先端」、右側を「基端」、図5の上側を「先端」、下側を「基端」という。
【0022】
図1、図2、図3、図4および図5に示すように、本発明の体温計1は鼓膜およびその周辺部から発せられる赤外線の強度を測定することにより体温を検出する耳式体温計であり、赤外線センサー(サーモパイル型赤外線センサー)と温度センサーとからなる検温部10を内蔵する体温計本体2と、該体温計本体2の正面側に設置され、測定部位である耳腔に挿入されるプローブ6と、体温計本体2の背面上部に設置された測定スイッチ4とを備えている。また、体温計本体2の正面側には顔面に当接する少なくとも1対の隆起部22が形成されており、隆起部22の近傍に形成された凹部20には電源スイッチ3および表示部5が設けられている。そして、図4に示すように体温計本体2の背面側には測定スイッチ4が設けられている。
【0023】
なお、検温部がポロメータ型赤外線センサーを備えるものである場合には、かかる検温部をプローブ6の先端内部に設けることができる。
【0024】
プローブ6は、体温計本体2の正面側で体温計本体2の長手方向の一端(上部)に設置されている。
【0025】
このプローブ6は、図2、図3および図5に示すように、外径が先端に向かって漸減する形状をなしており、プローブ6の先端外周部63は、耳腔内へ挿入したときの安全性を考慮して縁部が丸みを帯びた形状をなしている。
【0026】
当該プローブ6は、図5に示すように体温計本体2の支持体7上にリングナット9によって着脱自在に支持・固定されている。支持体7は、大径部71とその先端側の小径部72とを有し、大径部71および小径部72の外周には、それぞれ、雄螺子73、74が形成されている。
【0027】
一方、管状のプローブ6の基端には、大径部71の先端面に当接する基部61を有するとともに、プローブ6の基端側内面には、前記雄螺子74と螺合する雌螺子62が形成されている。これらの雄螺子74と雌螺子62を螺合することにより、プローブ6が支持台7に支持、固定される。
【0028】
支持台7の中心部には、その先端から導入された赤外線(熱線)を検温部10の赤外線センサー(温度検出センサー)へ導くライトガイド(導波管)8が立設されている。ライトガイド8は、好ましくは熱伝導性のよい銅などの金属で構成され、その内面には金メッキが施されている。また、ライトガイド8には、その先端開口を覆うように保護シート81が被覆されている。これによりライトガイド8の内部にゴミ、塵等が侵入することが防止される。なお、保護シート81は、赤外線透過性を有する樹脂材料で構成されていることが好ましい。
【0029】
支持台7の大径部71にはリングナット9が螺合される。すなわち、リングナット9の基端側内面には雌螺子91が形成され、この雌螺子91が大径部71の雄螺子73と螺合することによりリングナット9が支持台7に支持、固定される。このリングナット9は、体温計本体2の1つの隆起部として作用する。
【0030】
このリングナット9は、雌螺子91の先端付近からその外径が先端方向へ向かって漸減するテーパ部92を有し、テーパ部92の内面には、プローブカバー11の胴部12に係合する係合部93が形成されている。
【0031】
プローブ6にプローブカバー11を被せられていてもよい。この場合、リングナット9を装着して所定方向に回転操作して螺合すると、プローブカバーの胴部12にプローブ6の傾斜部64とリングナット9の係合部93で挟持され、プローブカバー11がプローブ6に対し確実に固定される。これにより、体温測定中等に、プローブカバー11がプローブ6に対しズレを生じることがなく、また測定後、耳腔からプローブ6を抜き取った際に、プローブカバー11が耳腔内に残るといった不都合が回避できる。
【0032】
なお、本実施例のプローブカバー11の開口端(基端)の周囲にフランジ、取り付け基部等を設け、このフランジ等をプローブ6とリングナット9の間で挟持してプローブカバー11を固定することもできる。
【0033】
リングナット9の先端面94は、耳腔入口よりも大きな面積をもつほぼ平坦面であることが好ましい。これによりプローブ6を耳腔に挿入する際、先端面94が耳腔入口付近に当接し、プローブ6が所定の深さ以上に耳腔に挿入されないように規制する挿入深さ規制手段として機能する。このため、先端面94が当接するようにプローブ6を挿入して体温計1を使用することにより、常に一定の挿入深さで体温測定をすることができ、耳腔へのプローブ6の挿入深さが変動することによる測定値のバラツキを防止することができる。特に、測定スイッチ4を押圧する場合でもプローブ6の挿入深さが規制される。さらに、プローブ6の耳腔内への過剰な挿入により内耳を傷つけるという問題も回避される。
【0034】
ライトガイド8の基端に設けられた赤外線センサーは、サーモパイル(熱電対列)を備え、中心側に位置する集熱部にサーモパイルの温接点が、外周側に冷接点がそれぞれ設置された構成をなしている。そして、温接点と冷接点との温度差に相当するサーモパイルの出力信号と赤外線センサーの近くもしくは内部に設けられるサーミスタ(不図示)により出力される冷接点の温度に相当する信号との関数として体温を測定するものである。
【0035】
温度計本体2には、測定時に前記プローブ6を挿入する耳の近傍に当接する隆起部22が形成されている。これにより体温計1を使用する際、この隆起部22が支点となって体温計1は例えば顔面の所定箇所に固定される。すなわち、耳腔内に挿入されたプローブ6の挿入角度や挿入深さ等を測定の間そのまま維持することが容易となる。
【0036】
さらに、隆起部22は図1、図2および図3に示すように、少なくとも一対の隆起部22a、22bから構成されている。これらの隆起部22a、22bは、体温計本体2のプローブ6が設置されている面と同じ面、すなわち正面側にプローブ6が突出する方向と実質的に同一方向に隆起している。また、隆起部22a、22bは長手方向へ伸びる中心線Bの両側に設けられている。
【0037】
ここで、プローブ6が突出する方向と実質的に同じ方向に隆起するとは、プローブ6の突出方向の中心線と、隆起部の高さ方向への延長線とが略平行である状態を意味する。
【0038】
また、図7に示すようにこの隆起部22a、22bの各々が頬骨の近傍に当接するように、特に頬骨を挟む位置に当接して使用されることが好ましい。これにより、体温計1の固定をより容易かつ確実にすることができる。そのためには隆起部22a、22bは、凹部20を介し一定距離を隔てて配置されていることが好ましい。
【0039】
体温計本体2の長手方向の一端側に前記プローブ6が形成され、他端側に隆起部22a、22bが形成されている。すなわち、隆起部22a、22bは、プローブ6から顔面への支持・固定に適した距離を隔てて配置されている。このような構成によっても上記の場合と同様、隆起部22を支点として体温計1を顔面に対し確実に固定することができる。
【0040】
隆起部22a、22bの隆起高さ、形状等については特に限定されず、当接する顔面を傷つけたり、不快感を与えることなく体温計1を保持・静止させることができる程度の高さ、形状であればいかなるものでもよい。なお、隆起部22a、22bの双方が同じ隆起高さ、形状のものに限らず、互いに異なるものであってもよい。
【0041】
当該隆起部22a、22bは、例えば樹脂材料で形成され、体温計本体2と一体的に形成されたものであっても別部材であってもよく、また、隆起部22の頂部には顔面への刺激を緩和し、または滑りを防止するためのゴムや軟質樹脂等からなるクッション材を被せたものであってもよい。
【0042】
上記隆起部22a、22bの近傍に形成された凹部20には、体温計の電源の切/入を切り替える電源スイッチ3が設けられている。このような構成とすることにより、体温計1を把持している手指の一部または顔面の一部が電源スイッチ3に触れて、体温の測定中にも拘らず電源が切れてしまう等の誤動作を防止することができる。
【0043】
電源スイッチ3は、前記凹部20に位置するものであれば、いかなる形状、いかなる操作方式のものであってもよいが、凹部20の前記体温計本体2の中心線B上に位置することが好ましい。これにより、測定中に手指や顔面の一部が電源スイッチ3にさらに触れ難くなり、上記したような誤動作を確実に防止することができる。
【0044】
さらに、凹部20には表示部5が設けられている。上記電源スイッチ3の近傍に設けられていることにより、電源スイッチ3の操作と同時に当該電源スイッチ3の接続状態や体温計1の作動状態を表示部5の表示により容易に視認することができる。
【0045】
表示部5は、例えば液晶表示装置で構成されており、測定値、その他例えば測定の際における待機時間または経過時間、バッテリー残量等を認識させるための文字、記号またはシンボルマークを表示する。表示の形態はいかなるものでもよく、例えば時間の経過に伴って点灯または点滅するセグメントの個数が順次増加し、最終的に全てのセグメントが点灯または点滅するように構成されたものであってもよい。特に、動物等のキャラクターを表示する場合、体温測定を行う幼児や子供を飽きさせることなく円滑に体温測定を行うことができる。
【0046】
体温計本体2の背面側には、図4、図6に示すような少なくとも測定開始または終了時に操作する測定スイッチ4が設けられており、この測定スイッチ4の操作方向(押圧方向)と前記プローブ6の突出方向とが実質的に同一である。ここで、測定スイッチ4の操作方向と前記プローブ6の突出方向とが実質的に同一であるとは、プローブ6の突出方向の中心線と測定スイッチ4の操作方向への延長線とが略平行にあること、もしくは前記中心線と延長線とのなす角度が十分に小さく、後述する効果を大幅に減少させない程度を意味する。このような構成とすることにより、プローブ6を耳腔に挿入したままの状態で体温計本体2を把持した手で測定スイッチ4の操作を行っても、プローブ6は挿入方向と異なる方向に移動したりプローブ6が耳腔内で回転等することなく、耳腔への挿入角度、挿入位置等が変化することがない。したがって、常に同じ測定姿勢を維持することができ、測定値が変動することを防止できる。また、同様の理由により、測定スイッチ4の操作方向と前記隆起部22a、22bの突出方向とが実質的に同一であることが好ましい。
【0047】
このような測定スイッチ4の操作方式は特に限定されず、押圧式、スライド式、タッチ式等が挙げられるが、プローブ6の突出方向と実質的に同方向に押圧操作するもの(押圧式)が好ましく、押圧時にクリック感を伴う押圧式が特に好ましい。かかる方式のものは操作が簡単であり、測定スイッチ4の操作の度に体温計本体2を持ち替える必要がなく、したがって、プローブ6の耳腔への挿入角度、挿入位置等が変動することなく安定した体温測定が達成される。さらに、押圧時にクリック感を伴うものは、測定スイッチ4の操作が確実に行われたことを音および触感により確認することができる。
【0048】
また、測定スイッチ4は、測定の終了まで連続的に操作することにより体温を検知するものであることが好ましく、例えば測定開始時に測定スイッチ4を押下し、測定終了時までそのまま押下し続けるものが特に好ましい。これにより、測定中における体温計1のブレをさらに効果的に防止できる。
【0049】
このような測定スイッチ4の操作は、このほか測定終了時まで複数回クリックするものであってもよい。さらに、測定スイッチ4の配置位置、操作面の形状、大きさ、個数等は特に限定されるものではない。
【0050】
以上、本発明の体温計を添付図面に示す実施例に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
例えば、体温計本体2は図示のような形状に限られず、少なくともプローブ6および測定スイッチ4が設置可能で、片手で把持し易いものであればいかなるものでもよい。また、隆起部22の形状や個数は任意のものが可能であり、例えば22a、22bがそれらの端部で連続的に繋って1つの隆起部22を形成したものでもよい。
【0052】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の体温計によれば、測定に際し測定スイッチを操作しても体温計のブレがなく、また、プローブの耳腔内へ挿入方向や挿入深さが変化することがないため、測定値のバラツキがなく信頼性の高い体温測定が達成される。
【0053】
また、隆起部により体温計の位置や向きを固定できるため、測定中にプローブが動いたり、測定スイッチの操作の度にプローブの挿入方向、挿入深さが変動することがなく、精度の高い測定値を得ることができる。さらに、測定中に電源スイッチの誤動作を生じることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の体温計の正面図である。
【図2】本発明の体温計の側面図である。
【図3】本発明の体温計の上面図である。
【図4】本発明の体温計の背面図である。
【図5】図1中のA−A線断面図である。
【図6】本発明の体温計の使用例を示す図である。
【図7】本発明の体温計の使用例を示す図である。
【符号の説明】
1 体温計
2 体温計本体
20 凹部
22 隆起部
22a 隆起部
22b 隆起部
3 電源スイッチ
4 測定スイッチ
5 表示部
6 プローブ
61 基部
62 雄螺子
63 先端外周部
7 支持台
71 大径部
72 小径部
73、74 雄螺子
8 ライトガイド
81 保護シート
9 リングナット
91 雌螺子
92 テーパ部
93 係合部
94 先端面
10 検出部
11 プローブカバー
12 胴部
Claims (6)
- 体温計本体の長手方向の一端側に設置され耳内に挿入されるプローブを備えた耳式体温計であって、
前記体温計本体の他端側でかつ前記プローブが設置されている面に、前記プローブを挿入する耳の近傍に当接し、前記体温計本体を支持するための少なくとも1つの隆起部が形成されていることを特徴とする耳式体温計。 - 前記体温計本体の長手方向へ伸びる中心線の両側に少なくとも一対の前記隆起部が設けられている請求項1に記載の耳式体温計。
- 前記隆起部が人の頬骨の近傍に当接するようにして使用される請求項1または2に記載の耳式体温計。
- 前記隆起部の近傍に形成された凹部に体温計の電源の切/入を切り替える電源スイッチが設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載の耳式体温計。
- 前記体温計本体に設置され少なくとも測定開始または終了時に操作する測定スイッチを備え、該測定スイッチの操作方向と前記隆起部の突出方向とが実質的に同一である請求項3または4に記載の耳式体温計。
- 前記隆起部の突出方向と、前記プローブの突出方向とが実質的に同一である請求項1ないし5のいずれかに記載の耳式体温計。
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