JP3918994B2 - 2層相変化型情報記録媒体およびその光記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光情報記録・再生を行う光情報記録媒体に関し、さらに詳しくは、2層相変化型情報記録媒体およびその光記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
CD−RやCD−RWなどの光ディスクは、ポリカーボネートなどプラスチックの円形基板の上に記録層を設け、さらにその上にアルミニウムや金、銀などの金属を蒸着またはスパッタリングして反射層を形成したもので、基板面側からレーザー光を入射して、信号の記録、再生を行う。近年、コンピューター等で扱う情報量が増加したことから、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RWのような、光ディスクの信号記録容量の増大、および信号情報の高密度化が進んでいる。CDの記録容量は650MB程度で、DVDは4.7GB程度であるが、今後、更なる高記録密度化が要求されている。
【0003】
本発明の従来技術として、このような高記録密度媒体を実現するために、使用するレーザー波長を青色光領域まで短波長化することが提案されている。また、記録再生を行うピックアップに用いられる対物レンズの開口数を大きくすることで、光記録媒体に照射されるレーザー光のスポットサイズを小さくして、高記録密度が可能となる。
しかしながら、レーザーの短波長化や対物レンズの開口数の増大などにより、スポットサイズを小さくして記録密度を高める方法には限界があり、情報記録層を片面に2層設けることによって容量を高める技術が、特許第2702905号公報などが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記2層相変化光ディスクは多くの課題があり、まだ実用化には至っていない。例えば、レーザー光照射側から見て手前に位置する記録層がレーザー光を十分に透過しなければ、奥側に位置する記録層の記録、再生はできない。そこでレーザー光を十分に透過させるためには、第1情報記録層のAgやAlなどの反射層をなくすか、極薄にしなければならない。
【0005】
一般に相変化型光記録では、記録層をレーザー光照射により溶融させ、急冷することにより非晶質マークを形成するが、反射層のない第1情報記録層では、熱拡散が小さいために非晶質マークを形成することが困難になる。
【0006】
一方、レーザー光入射側からみて奥側にある第2情報記録層を記録、再生する場合は、レーザー光がピックアップに戻ってくるまでに第1情報記録層である程度吸収されてしまうために、第2情報記録層は、高吸収かつ高反射率でなければならない。そのためには、十分な厚さの反射層を設けなくてはならない。
【0007】
このことから、第1情報記録層と第2情報記録層は、熱的に構造が全く異なったものになり、第1情報記録層は第2情報記録層に比べて急冷しにくい、つまり非晶質化しにくいという現象が生じる。この問題を解決するためには、第1記録層も非晶質化しやすいように、それぞれの記録層材料の結晶化速度を変えたり、また、2層とも記録再生特性が良好になるよう、それぞれ別々の記録方法で記録するといったことが要求される。結晶化速度の遅い記録材料の方が、速い材料に比べて記録層の冷却速度が遅くても、すなわち急冷でなくても、非晶質化を行うことが出来る。つまり、急冷しにくい第1記録層に結晶化速度の遅い材料を用いることによって、第1、第2記録層とも同じ記録条件(記録線速度)で、良好に記録再生を行うことが出来る。
【0008】
本発明は、2層構造の相変化型光記録媒体において、上記問題点を解決し、第1情報記録層、第2情報記録層ともに記録再生特性の優れた2層相変化情報記録媒体およびその記録方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、請求項1では、光が入射される側から、光透過層、第1情報記録層、透明層、第2情報記録層の順に積層されてなる2層光情報記録媒体において、第1情報記録層、第2情報記録層は、光の入射によって、結晶状態と非晶質状態との相変化によって情報を記録しうる記録層を有し、第1情報記録層に形成された第1記録層材料と、第2情報記録層に形成された第2記録層材料は、Sb−Te共晶系合金を主成分とし、第1記録層材料を構成するSb、Teの原子比Sb/Te=X、第2記録層材料を構成するSb、Teの原子比Sb/Te=Yとすると、2≦X、Y≦4.6の範囲で、かつ、X<Yである2層相変化型情報記録媒体である ことを最も主要な特徴とする。
【0010】
請求項2では、第1記録層材料、第2記録層材料を構成するSb、Teの原子比が、2.5≦X≦3.6、2.7≦Y≦4.6の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の2層相変化型情報記録媒体であることを主要な特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係わる2層層変化型情報記録媒体の概略断面図である。光透過層3の上に、第1情報記録層1、透明層4、第2情報記録層2、保護基板5を順次蓄積した構造からなるものである。第1情報記録層1は、第1下部保護層11、第1記録層12、第1上部保護層13、第1反射層14、第1放熱層15からなり、第2情報記録層2は、第2下部保護層21、第2記録層22、第2上部保護層23、第2反射層24からなる。
【0018】
光透過層3、透明層4の材料は通常ガラス、セラミックスあるいは樹脂であり、樹脂基板が成形性、コストの点で好適である。樹脂の例としてはポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられるが、成形性、光学特性、コストの点で優れるポリカーボネート樹脂やポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂が好ましい。
【0019】
光透過層3あるいは透明層4には案内溝などの凹凸パターンが形成されており、射出成形または、フォトポリマー法によって成形される。透明層4は、記録再生を行う際に、ピックアップが第1情報記録層と第2情報記録層とを識別し、光学的に分離可能とする厚さであり、30〜50μmが好ましい。50μmより厚いと、第2情報記録層を記録再生する際に、球面収差が発生し、記録再生が困難になってしまう。
【0020】
本発明において、記録層12、22の材料としては、Sb−Te共晶系合金が使用される。CD−RWで使われているAg−In−Sb−Te四元系合金も、Sb−Te共晶系合金を主成分としており、記録(アモルファス化)感度・速度、及び消去比が極めて良好なため、記録層の材料として適している。また、結晶化速度も速く、高線速記録、高密度記録に適している。これらの記録層材料にはさらなる性能向上、信頼性向上などを目的にAg、Inの他に、Au、Al、B、Bi、C、Ca、Cu、Cr、Co、Cd、Ce、Cs、Dy、Fe、Ge、Gd、Hf、K、La、Li、Mn、Ni、Nb、N、Nd、Na、O、Os、Pd、Pr、Pb、Ru、Rh、Rb、S、Sb、Si、Sm、Sc、Se、Ti、Tb、Ta、V、W、Y、Zn、Zrなどの他の元素や不純物を添加することができる。Sb−Te共晶系合金は、Sb−Teの比によって結晶化速度が変化することが知られている。すなわち、Sb−Te比が大きいほど、結晶化速度は速くなる。
【0021】
記録材料の結晶化速度を測定するのは、通常は転移線速を測定し、その値から結晶化速度を見積もっている。転移線速とは、線速を速めながらDCイレーズを行い、反射率が下がり始めた線速、すなわち、非晶質化が始まった線速の事をいう。結晶化速度が速いほど、当然、非晶質化の始まる線速も速くなるため、転移線速によって結晶化速度が速いか遅いかを相対的に評価することが出来る。
【0022】
本発明では、第1情報記録層を構成する第1記録層材料のSb−Te比と、第2情報記録層を構成する第2記録層材料のSb−Te比を変えて、それぞれ適切に選ぶことにより、第1情報記録層、第2情報記録層ともに記録再生特性の優れた2層相変化型情報記録媒体を得た。すなわち、第1記録層材料を構成するSb/Teの原子比Sb−Te=X、第2記録層材料を構成するSb/Teの原子比Sb−Te=Yとすると、X≦Yとすることによって、2層ともに、高C/Nで、消去比の優れることを見出した。Sb−Te比は、第1記録層、第2記録層ともに、2≦Sb−Te≦4.6であることが好ましい。2より小さいと、結晶化速度が遅すぎ、高線速記録が不可能となり、また、消去比も悪化してしまう。4.6より大きいと、第1情報記録層では、C/N値が不十分になり、保存特性も悪化する。以上の範囲内でSb−Teを調節し、第1記録層と第2記録層の転移線速の差を、2m/s以上にすることが好ましい。
【0024】
本発明の記録層は、各種気相成長法、たとえば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できる。なかでも、スパッタリング法が、量産性、膜質等に優れている。
【0025】
反射層14、24としては、Al、Au、Ag、Cu、Taなどの金属材料、またはそれらの合金などを用いることができる。また、添加元素としては、Cr、Ti、Si、Pdなどが使用される。このような反射層は、各種気相成長法、たとえば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できる。なかでも、スパッタリング法が、量産性、膜質等に優れている。第2反射層24は、50〜200nm、好適には80〜150nmとするのがよい。50nmより薄くなると反射率が小さくなり、200nmより厚くなると感度の低下を生じる。
【0026】
第1情報記録層の光透過率減少を防ぐためには、第1反射層14は設けない方が好ましいが、第1反射層14を設けることにより、記録時に第1記録層12の熱が、第1上部保護層13を介して第1反射層14に拡散されるので、より冷却速度が速くなり、非晶質マークの形成が容易になり、ジッター値も低くなる。また、光学シミュレーションによれば、結晶部の反射率と非晶質の反射率の差を大きくすることができ、大きな再生信号振幅を得られる。しかしながら、第2情報記録層へ透過するレーザー光を考慮すると、反射膜14の膜厚は10nm以下であることが好ましい。10nmより厚いと、透過率が減少し、第2情報記録層の記録再生が困難になる。
【0027】
また、第1記録層の結晶状態の反射光と非晶質状態の反射光のうち、反射率の高い方をR1 High、低い方をR1 Lowとすると、
R1 High/R1 Low≧1.5
であり、結晶状態および非晶質状態での光透過率が40%以上であることが好ましい。R1 High/R1 Lowが上記範囲外であると、第1情報記録層から得られる再生信号振幅が不足する。また、光透過率が40%に満たないと、第2情報記録層の記録再生が困難になる。
【0028】
また、第2記録層の結晶状態の反射光と非晶質状態の反射光のうち、反射率の高い方をR2 High、低い方をR2 Lowとすると、
R2 High/R2 Low≧1.5
であり、結晶状態および非晶質状態での光吸収率が50%以上であることが好ましい。R2 High/R2 Lowが上記範囲外であると、第2情報記録層から得られる再生信号振幅が不足する。また、光吸収率が50%未満であると、第2情報記録層の記録感度が不足する。
【0029】
保護層11、13、21、23は記録層12、22の劣化変質を防ぎ、記録層12、22の接着強度を高め、かつ記録特性を高めるなどの作用を有するもので、SiO、SiO2、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgO、ZrO2などの金属酸化物、Si3N4、AlN、TiN、BN、ZrNなどの窒化物、ZnS、In2S3、TaS4などの硫化物、SiC、TaC、B4C、WC、TiC、ZrCなどの炭化物やダイヤモンド状カーボンあるいは、それらの混合物が挙げられる。これらの材料は、単体で保護層とすることもできるが、互いの混合物としてもよい。また、必要に応じて不純物を含んでもよい。保護層の融点は記録層よりも高いことが必要である。このような保護層は、各種気相成長法、たとえば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できる。なかでも、スパッタリング法が、量産性、膜質等に優れている。
【0030】
第1下部保護層11、第2下部保護層21の厚さは、20〜200nmであることが好ましい。20nm以下であると、保護膜としての機能を果たさなくなる。200nmより厚いと、量産性に問題が生じてくる。これらの範囲で、最適な反射率になるように、膜厚の設計を行う。第1上部保護層13、第2上部保護層23の膜厚は、3〜40nmであることが好ましい。3nmより薄いと、記録感度が低下してしまう。40nmより厚いと、放熱効果が得られなくなってしまう。
【0031】
放熱層15としては、AlN、Si3N4、SiC、Al2O3、BN、酸化インジウム/酸化スズ複合酸化物(ITO)、酸化スズ/酸化アンチモン複合酸化物(ATO)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)など比較的熱伝導率の高いものが挙げられる。これらを単体としてもよいし、これらの混合物を用いてもよい。熱伝導率が下がらない範囲で、必要に応じて不純物を含んでいてもよい。放熱層15の膜厚は、20〜200nmが好ましい。20nmより薄いと、放熱効果が得られなくなる。200nmより厚いと、量産性に問題が生じる。
【0032】
次に、本発明の2層相変化型情報記録媒体の記録方法について、詳細に説明する。本発明の2層相変化型情報記録媒体の記録方法は、線速度一定(CLV)方式で記録マークを形成する記録方法であり、第1情報記録層に記録を行う際の線速度が、第2情報記録層に記録を行う際の線速度より、速いことが特徴である。こうすることによって、第1情報記録層、第2情報記録層ともに、低ジッターかつ消去比が優れることを見出した。記録する際の線速度と、冷却速度に密接な関係がある。反射層14薄い第1情報記録層では、前述のように第2情報記録層に比べて冷却速度は遅くなる。したがって、第1情報記録層の線速度を速めることによって、冷却しやすくして、非晶質マークを容易に形成できる。このような記録方法を用いれば、第1記録層と第2記録層の材料構成を大きく変更しなくても、2層ともに記録特性の優れた光ディスクを提供することができる。
【0033】
また、第1情報記録層の記録における記録パワーPw1と消去パワーPe1の比Pw1/Pe1を、第2情報記録層の記録における記録パワーPw2と消去パワーPe2の比Pw2/Pe2よりも大きくすることによって、第1情報記録層、第2情報記録層ともに、低ジッターかつ消去比が優れることを見出した。
【0034】
【実施例】
実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0035】
実施例1
直径12cm、厚さ0.6mmで表面にピッチ0.4μmの連続溝によるトラッキングガイドの凹凸を持つポリカーボネート基板上にZnS・SiO2からなる第1下部保護層150nm、Ag−In−Sb−Teからなる第1記録層6nm、ZnS・SiO2からなる第1上部保護層10nm、AlTiからなる第1反射層10nm、AlNからなる放熱層200nmの順に製膜し、第1情報記録層を形成した。製膜方法はArガス雰囲気中のスパッタ法である。このようにして形成された第1記録層の透過率を測定した。
この第1情報記録層上に、2P光重合法によって、ピッチ0.4μmの連続溝によるトラッキングガイドの凹凸を持つ透明層を形成した。透明層の厚さは40μmである。さらにその上に、ZnS・SiO2からなる第2下部保護層40nm、Ag−In−Sb−Teからなる第2記録層12nm、ZnS・SiO2からなる第2上部保護層15nm、AlTiからなる第2反射層150nmの順に製膜し、第2情報記録層を形成した。製膜方法はArガス雰囲気中のスパッタ法である。
【0036】
その上に、スピンコーターを用いてオーバーコート層を設けて2層相変化型光ディスクを作成した。第1記録層材料、第2記録層材料は、Ag、Inの量は一定でSb−Te比を変えて数種類の上記2層相変化型光ディスクの作製を行った。ついで、大口径の半導体レーザーを有する初期化装置によって、それぞれの光ディスクの記録層の初期化処理を行った。
【0037】
作成された各光ディスクについて
レーザー波長 407nm
NA(開口数)=0.65
線速 6.5m/s
線密度0.19μm/bitの条件で、3TマークのC/Nおよび消去比の測定を行った。
各メディアの第1記録層、第2記録層のSb−Teを横軸にし、CN、消去比を縦軸にしたグラフを図4に示す。図からわかるように、第1記録層、第2記録層におけるSb−Te比のそれぞれの最適値は、第1記録層の方が小さい値であることがわかった。また、これとは別にAg−In−Sb−Teを用いた相変化光ディスクのSb−Te比と転移線速の関係を示したのが、図5である。図4、5から、第1記録層のSb−Te比を第2記録層のSb−Te比よりも小さく、すなわち、第1記録層材料の結晶化速度を第2記録層の結晶化速度より遅くすれば、2層とも高C/Nおよび消去比に優れた2層相変化光ディスクを得ることが出来る。
【0038】
参考例1
直径12cm、厚さ0.6mmで表面にピッチ0.4μmの連続溝によるトラッキングガイドの凹凸を持つポリカーボネート基板上にZnS・SiO2からなる第1下部保護層150nm、GeNからなる界面層3nm、Ge2Sb2Te5からなる第1記録層6nm、GeNからなる界面層3nm、ZnS・SiO2からなる第1上部保護層10nm、AlTiからなる第1反射層10nm、AlNからなる放熱層200nmの順に製膜し、第1情報記録層を形成した。製膜方法はArガス雰囲気中のスパッタ法である。このようにして形成された第1記録層の透過率を測定した。この第1情報記録層上に、2P法によって、ピッチ0.4μmの連続溝によるトラッキングガイドの凹凸を持つ透明層を形成した。透明層の厚さは40μmである。
【0039】
さらにその上に、ZnS・SiO2からなる第2下部保護層40nm、Ag1In7Sb65Te27からなる第2記録層12nm、ZnS・SiO2からなる第2上部保護層15nm、AlTiからなる第2反射層150nmの順に製膜し、第2情報記録層を形成した。
【0040】
製膜方法はArガス雰囲気中のスパッタ法である。その上に、スピンコーターを用いてオーバーコート層を設けて2層相変化型光ディスクを作成した。ついで、大口径の半導体レーザーを有する初期化装置によって、光ディスクの記録層の初期化処理を行った。
【0041】
この光ディスクに対して、実施例1と同条件で3TマークのC/Nおよび消去比の測定を行った。また、第1情報記録層、第2情報記録層の光学特性を示す。なお、以下に示す反射率、光透過率、光吸収率は、それぞれの情報記録層に入射した光の強度を100%としたときの値である。
第1情報記録層
C/N:52dB
消去比:35dB
結晶部
反射率:11.6%
光透過率:56.4%
光吸収率:32.0%
非晶質部
反射率:4.7%
光透過率:50.8%
光吸収率:44.5%
第2情報記録層
C/N:56dB
消去比:48dB
結晶部
反射率:40.2%
光吸収率:59.8%
非晶質部
反射率:19.8%
光吸収率:80.2%
【0042】
また、このサンプルディスクとは別に、Ge2Sb2Te5とAg1In7Sb65Te27を記録材料として用いた1層光ディスクをそれぞれ作成した。(基板/ZnS・SiO2:50nm/記録材料:15nm/ZnS・SiO2:15nm/Ag:120nm)この光ディスクを用いて、7mWの照射パワーでイレーズし、転移線速を測定したところ、Ge2Sb2Te5は1.5m/sで、Ag1In7Sb65Te27は8m/sであった。
【0043】
以上の結果から、この光ディスクは第1情報記録層で高い光透過率が得られているので、第2情報記録層へ十分な強度の光を入射することが出来た。また、第1情報記録層、第2情報記録層ともに、結晶、非晶質の反射率差が大きいので、十分な信号振幅を得ることができ、かつ、C/Nが大きく、消去比も優れているので、良好な記録再生特性を得ることが出来た。
【0044】
また、実施例1、参考例1およびその他の試作実験からも、第2情報記録層から十分な信号振幅を得るには、第1記録層の結晶:非晶質反射率比R1 High/R1 Low≧1.5および第2記録層の結晶:非晶質反射率比R2 High/R2 Low≧1.5であることが必要であり、また第1記録層の結晶状態および非晶質状態での光透過率が40%以上、第2記録層の結晶状態および非晶質状態での光吸収率が50%以上であると良いことが確認された。
【0045】
実施例3
直径12cm、厚さ0.6mmで表面にピッチ0.4μmの連続溝によるトラッキングガイドの凹凸を持つポリカーボネート基板上にZnS・SiO2からなる第1下部保護層150nm、Ag1In7Sb65Te27からなる第1記録層6nm、ZnS・SiO2からなる第1上部保護層10nm、AlTiからなる第1反射層10nm、AlNからなる放熱層200nmの順に製膜し、第1情報記録層を形成した。製膜方法はArガス雰囲気中のスパッタ法である。このようにして形成された第1記録層の透過率を測定した。この第1情報記録層上に、2P法によって、ピッチ0.4μmの連続溝によるトラッキングガイドの凹凸を持つ透明層を形成した。透明層の厚さは40μmである。
【0046】
さらにその上に、ZnS・SiO2からなる第2下部保護層40nm、Ag1In7Sb65Te27からなる第2記録層12nm、ZnS・SiO2からなる第2上部保護層15nm、AlTiからなる第2反射層150nmの順に製膜し、第2情報記録層を形成した。製膜方法はArガス雰囲気中のスパッタ法である。その上に、スピンコーターを用いてオーバーコート層を設けて2層相変化型光ディスクを作成した。ついで、大口径の半導体レーザーを有する初期化装置によって、それぞれの光ディスクの記録層の初期化処理を行った。
【0047】
この2層光ディスクの第1記録層、第2記録層に対してCLV方式で、記録線速を変えて記録を行い、C/Nおよび消去比を測定した結果が図6である。図から明らかなように、高C/Nおよび消去比最大となる記録線速は、第1情報記録層の方が第2情報記録層より速いことがわかる。このことから、線速度一定(CLV)方式で記録マークを形成する記録方式において、第1情報記録層に記録を行う際の線速度を、第2情報記録層に記録を行う際の線速度より速くすれば、第1情報記録層、第2情報記録層ともに、記録再生特性が優れることがわかった。
【0048】
また、第1情報記録層、第2情報記録層のライトパワーPw、イレースパワーPeの比を変えて記録を行い、C/Nおよび消去比を測定した結果が図7である。図から明らかなように、消去比最大となるPw/Pe比は、第1情報記録層の方が第2情報記録層よりも大きいことがわかる。このことから、第1情報記録層の記録における記録パワーPw1と消去パワーPe1の比Pw1/Pe1を、第2情報記録層の記録における記録パワーPw2と消去パワーPe2の比Pw2/Pe2よりも大きくすれば、第1情報記録層、第2情報記録層ともに、記録再生特性が優れることがわかった。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1によれば、光が入射される側から、光透過層、第1情報記録層、透明層、第2情報記録層の順に積層されてなる2層光情報記録媒体において、第1情報記録層、第2情報記録層は、光の入射によって、結晶状態と非晶質状態との相変化によって情報を記録しうる記録層を有し、第1情報記録層に形成された第1記録層材料と、第2情報記録層に形成された第2記録層材料は、Sb−Te共晶系合金を主成分とし、第1記録層材料を構成するSb、Teの原子比Sb/Te=X、第2記録層材料を構成するSb、Teの原子比Sb/Te=Yとすると、2≦X、Y≦4.6の範囲で、かつ、X<Yであることを特徴とする2層相変化型情報記録媒体を提供できる。
【0050】
請求項2によれば、第1記録層材料、第2記録層材料を構成するSb、Teの原子比が、2.5≦X≦3.6、2.7≦Y≦4.6の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の2層相変化型情報記録媒体をうることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係わる2層相変化型情報記録媒体の概略断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係わる2層相変化型情報記録媒体の概略断面図である。
【図3】本発明のさらに他の実施形態に係わる2層相変化型情報記録媒体の概略断面図である。
【図4】第1及び第2情報記録層のSb−Te比とCN比、消去比の関係を示す説明図である。
【図5】記録材料のSb−Te比と転移線速の関係を示す説明図である。
【図6】第1及び第2情報記録層の記録線速とCN比、消去比の関係を示す説明図である。
【図7】第1情報記録層及び第2情報記録層の記録パワーPと消去パワーの比に対するCN比、消去比の関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1 第1情報記録層
2 第2情報記録層
3 光透過層
4 透明層
5 保護基板
11 第1下部保護層
12 第1記録層
13 第1上部保護層
14 第1反射層
15 放熱層
16 界面層
17 界面層
21 第2下部保護層
22 第2記録層
23 第2上部保護層
24 第2反射層
Claims (2)
- 光が入射される側から、光透過層、第1情報記録層、透明層、第2情報記録層の順に積層されてなる2層光情報記録媒体において、第1情報記録層、第2情報記録層は、光の入射によって、結晶状態と非晶質状態との相変化によって情報を記録しうる記録層を有し、第1情報記録層に形成された第1記録層材料と、第2情報記録層に形成された第2記録層材料は、Sb−Te共晶系合金を主成分とし、第1記録層材料を構成するSb、Teの原子比Sb/Te=X、第2記録層材料を構成するSb、Teの原子比Sb/Te=Yとすると、2≦X、Y≦4.6の範囲で、かつ、X<Yであることを特徴とする2層相変化型情報記録媒体。
- 第1記録層材料、第2記録層材料を構成するSb、Teの原子比が、2.5≦X≦3.6、2.7≦Y≦4.6の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の2層相変化型情報記録媒体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002034488A JP3918994B2 (ja) | 2002-02-12 | 2002-02-12 | 2層相変化型情報記録媒体およびその光記録方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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