JP3918703B2 - 静電現像トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光ドラムの感光体層上に形成された静電潜像をトナーにより現像する、所謂、電子写真方式により画像を形成するプリンタ、コピー、ファクシミリ等の画像形成装置に使用される静電現像トナーに関し、特に、トナーの平均粒子径Dと着色剤としてトナーに含有される酸化鉄粒子の平均粒子径dとの比(d/D)を所定範囲に設定し、また、酸化鉄粒子の残留磁化σrと飽和磁化σsとの比(σr/σs)を所定値以下に設定することにより、画像のかぶりを効率的に抑制することが可能な静電現像トナーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、感光ドラムの感光体層上に形成された静電潜像を、着色剤を含有するトナー粒子にシリカ微粒子等の外添剤を外添した静電現像トナーを使用して現像する電子写真方式により画像を形成するように構成された各種の画像形成装置が提案されている。
【0003】
例えば、特開平5−341556号公報には、レーザ等の光源を介して潜像担持体の感光層上に静電潜像を形成し、潜像担持体に接触されているトナー担持体から静電潜像に対してトナーを供給して静電潜像を現像する画像形成装置に使用されるトナーであって、カーボンブラック等の着色剤を含む結着樹脂中に鉄酸化物を20〜50wt%含有させた一成分トナーが記載されている。
【0004】
また、特開平11−143121号公報には、静電潜像保持体の感光層上に静電潜像を形成し、現像材担持体(現像ロール)からトナーを供給して静電潜像を現像する画像形成装置に使用されるトナーであって、トナー粒子に対して、飽和磁化σsが5A・m2/kg以下、残留磁化σrが3A・m2/kg以下の磁性粉を外添したトナーが記載されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−341556号公報(第2頁、第3頁、図1)
【特許文献2】
特開平11−143121号公報(第2頁〜第5頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、画像かぶりの抑制等の各種の目的で、トナー中に金属酸化物等の磁性粉を含有させる場合、かかる磁性粉のトナーに対する含有量は勿論のこと、その他磁性粒子の飽和磁化σs、残留磁化σr等の各種の磁性特性を考慮する必要がある。
【0007】
しかしながら、前記特開平5−341556号公報に記載されたトナーでは、トナーに対する鉄酸化物の含有量を20〜50wt%とする点については記載されているが、含有量以外の鉄酸化物の磁性特性については何等勘案されていない。
【0008】
また、前記特開平11−143121号公報に記載されたトナーでは、トナー外添される磁性粉の飽和磁化σs、残留磁化σrについては、それぞれ5A・m2/kg以下、3A・m2/kg以下の点につき勘案されてはいるが、前記特開平5−341556号公報の場合と同様、磁性粉に関してその他の磁性特性については何等勘案されてはいない。
【0009】
本発明者等は、トナーに含有される酸化鉄粒子に関して、酸化鉄粒子が有する各種の磁性特性が画像形成に与える影響につき種々実験を行って鋭意検討を重ねた結果、トナーの粒子径と酸化鉄粒子の粒子径との関係、又、酸化鉄粒子の飽和磁化σsと残留磁化σrとの関係は、画像かぶりの抑制に重要な影響を与えることを見出し、本発明をなすに至ったものであり、トナーの平均粒子径Dと着色剤としてトナーに含有される酸化鉄粒子の平均粒子径dとの比(d/D)を所定範囲に設定し、また、酸化鉄粒子の残留磁化σrと飽和磁化σsとの比(σr/σs)を所定値以下に設定することにより、画像のかぶりを効率的に抑制することが可能な静電現像トナー提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため請求項1に係る静電現像トナーは、感光ドラムの周面に形成された感光体層に静電潜像を形成し、感光ドラムに対して接触されている非磁性現像ローラから静電潜像にトナーを供給して静電潜像を現像する画像形成装置に使用される静電現像トナーであって、前記静電現像トナーは、樹脂粒子中に着色剤としての酸化鉄粒子が含有されており、前記静電現像トナーの平均粒子径Dと前記酸化鉄粒子の平均粒子径dとの比(d/D)が、0.01〜0.03の範囲にあり、前記酸化鉄粒子は、79.6kA/mの磁場において3〜7kA/mの保持力Hcを有するとともに、残留磁化σrと飽和磁化σsとの比(σr/σs)が0.3以下であり、前記酸化鉄粒子は、トナーに対して4〜7vol%含有されており、前記静電現像トナーには、カーボンブラックは含有されていないことを特徴とする。
【0011】
請求項1の静電現像トナーでは、静電現像トナーの平均粒子径Dと酸化鉄粒子の平均粒子径dとの比(d/D)を、0.01〜0.03の範囲に設定したので、画像かぶりを効率的に抑制することが可能となる。尚、前記比(d/D)の値がかかる範囲を外れると、画像かぶりが多くなる。
また、酸化鉄粒子が79.6kA/mの磁場において3〜7kA/mの保持力Hcを有するとともに、酸化鉄粒子における残留磁化σrと飽和磁化σsとの比(σr/σs)が0.3以下であるので、非磁性現像ローラを使用する非磁性現像プロセスにおいては、飽和磁化σsが大きくても残留磁化σrが小さい場合にはトナー間の磁気的凝集力は弱くなってトナー間の凝集を防止でき、また、残留磁化σrと飽和磁化σsとの比(σr/σs)が小さければトナーの流動性を悪化させることなく静電潜像を現像することができる。この結果、画像かぶりを効率的に抑制することが可能となる。尚、これに対して、残留磁化σrが小さくて且つ飽和磁化σsも小さい場合(両者の比(σr/σs)が大きい場合)には、酸化鉄自体の磁化力が弱くなって、トナー全体の帯電性が不均一となることから、画像かぶりが発生し易くなる。
更に、着色剤としての酸化鉄粒子がトナーに対して4〜7vol%含有されていることから、画像かぶりを抑制しつつ適切な印字濃度で画像形成することができる。また、酸化 鉄粒子の含有量が4〜7vol%の範囲である場合には、画像形成に伴う酸化鉄粒子による感光ドラムの感光層の削れ量を許容範囲に抑えることができる。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
また、請求項2に係る静電現像トナーは、請求項1の静電現像トナーにおいて、前記酸化鉄粒子は、球形状を有することを特徴とする。請求項2の静電現像トナーでは、酸化鉄粒子が球形状を有していることから、異形状に形成されている場合に比して、トナーを均一に帯電することができ、これより画像かぶりを有効に抑制することができる。
【0016】
【0017】
尚、酸化鉄粒子の含有量が、4vol%よりも少ない場合には、画像濃度が低くなって視認性が悪化してしまい、また、7vol%よりも多い場合には、画像かぶりが発生し易くなる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る静電現像トナーについて、本発明を具体化した実施形態に基づき説明する。
【0019】
[画像形成装置について]
先ず、本実施形態に係る静電現像トナーが使用される画像形成装置としてのレーザプリンタについて、図1及び図2に基づき説明する。図1はレーザプリンタの縦断側断面図、図2はレーザプリンタの現像ユニット及び感光ドラム部分の拡大側面図である。
【0020】
図1において、本発明の実施態に係るレーザプリンタ1は、本体ケース2と、画像形成の為の記録媒体としての用紙Pを給紙するフィーダユニット10と、画像形成のための帯電、露光、現像、転写、回収等の工程が順次行われる感光体である感光ドラム20と、感光ドラム20から用紙Pに転写された転写画像を用紙Pに定着させるための定着ユニット70と、画像が定着された用紙Pを搬送路PPに沿って排出するための排紙トレイ77とを備えて構成されている。
【0021】
レーザプリンタ1はまた、感光ドラム20を回動するための図示しない駆動手段を備えており、更に感光ドラム20の周囲に沿って順に、駆動手段により回動される感光ドラム20上に静電潜像を形成するレーザスキャナユニット30と、感光ドラム20上に形成された静電潜像をトナーにより現像するための現像ローラ56を有する現像ユニット50と、感光ドラム20上に現像されたトナー画像を用紙Pに転写する転写ローラ60と、転写後の感光ドラム20に残された残留電位を除去する除電ランプ41と、転写ローラ60による転写の後に感光ドラム20に残留した残留トナーを感光ドラム20を用いて所定のタイミングで現像ユニット50に戻すために、除電ランプ41により除電した後の感光ドラム20上の残留トナーを一時的に吸着して且つ吐き出してならすクリーニングローラ42と、除電及びならし後の感光ドラム20を静電潜像形成可能に帯電させるための帯電器40とを備えて構成されている。
【0022】
また、フィーダユニット10は、本体ケース2の後端部に位置する上部のフィーダ部ケース3内に配置された、用紙Pと略同様の幅寸法を有する用紙押圧板11を備える。用紙押圧板11は、その後端部において揺動可能に枢支されている。用紙押圧板11の前端部には、圧縮バネ12が設けられており、該圧縮バネ12により用紙押圧板11は上側に弾性付勢される。用紙押圧板11には、左右方向に延びる給紙ローラ13が、回転自在に枢支されている。給紙ローラ13は、図示外の駆動系により、給紙のタイミングで回転駆動されるように構成されている。フィーダユニット10はまた、フィーダ部ケース3内に、定形カット紙からなる用紙Pを複数枚収容可能な給紙カセット14が傾斜状に着脱自在に装着されており、給紙ローラ13の回転により、給紙カセット14に収容された用紙Pのうち、上側の用紙Pから1枚ずつ給紙されるように構成されている。更に、フィーダユニット10は、用紙Pの重送を防止する為に、給紙ローラ13の下側に分離部材15を備えており、この分離部材15は、圧縮バネ16により給紙ローラ13に弾性付勢されている。給紙ローラ13よりも搬送方向(図1において、後方から前方向き)下流側には、給紙された用紙Pの先端を揃える1対のレジストローラ17及び18が回転可能に夫々枢支されている。
【0023】
図1及び図2において、感光ドラム20は、正帯電性の材料から構成されており、例えば、正帯電性のポリカーボネイトを主成分とする有機感光体からなる。より具体的には、図2に示すように、感光ドラム20は、例えば、円筒状でアルミ製の円筒スリーブ21を本体として、その外周部に、ポリカーボネートに光導電性樹脂を分散させた所定厚さ(例えば、初期膜厚は、30〜50μmに設定されている)の光導電層22を形成した中空状のドラムから構成されており、円筒スリーブ21を接地した状態で、本体ケース2に回転自在に枢支されている。即ち、感光ドラム20上に形成されたプラス極性(正帯電)の静電潜像に対して、プラス極性に帯電したトナー53を反転現像方式で現像するように構成されている。感光ドラム20は、駆動手段により、側面視で時計回りに回転駆動されるように構成されている。
【0024】
図1において、レーザスキャナユニット30は、感光ドラム20の下側に配設されており、感光ドラム20上に静電潜像を形成する為のレーザ光Lを発生するレーザ発生器31、回転駆動されるポリゴンミラー(5面体ミラー)32、一対のレンズ33及び34、並びに一対の反射ミラー35及び36を含んで構成されている。
【0025】
帯電器40は、例えば、タングステンなどからなる帯電用ワイヤからコロナ放電を発生させる正帯電用のスコロトロン型の帯電器から構成されている。本実施の形態では、クリーナーレス方式を採るが、帯電器40は感光ドラム20に対して非接触に対向配置されており、感光ドラム20上の残留トナーが帯電器40に付着しないように構成されている。
【0026】
本体ケース2に設けられた除電ランプ41は、例えば、LED(レーザ発光ダイオード)、EL(ElectroLuminescence)、蛍光灯などの光源を備えて構成されており、転写後に感光ドラム20に残留する電荷を光Leを照射することにより、除去(除電)する。
【0027】
クリーニングローラ42は、バイアス電圧を変化させることにより、吸引モードにおいて、転写ローラ60による転写の後に感光ドラム20に残留した残留トナー53を一旦吸収し、吐き出しモードにおいて、感光ドラム20上で行われる次の露光、現像、転写等の妨げとならないタイミングで、吸収した残留トナー53を感光ドラム20に吐き出してならすことにより、残留トナー53を感光ドラム20上より現像ユニット50に戻すように構成されている。かかるクリーニングローラ42は、例えば、バイアス電圧印加可能なシリコンゴムやウレタンゴムなどからなる導電性を有する発泡弾性体から構成されている。
【0028】
尚、クリーニングローラ42は感光ドラム20に接触しているが、前記のようにシリコンゴムやウレタンゴムの発砲弾性体から構成されているので感光ドラム20との摩擦は低減され、そのクリーニング動作時に感光ドラム20の光導電層22を削ってしまうことはない。
【0029】
図1及び図2において、現像ユニット50は、現像部ケース4内に着脱可能に装着された二重円筒状のトナーボックス51を備えている。トナーボックス51は、回転駆動されるアジテータ52と、電気絶縁性を有する正帯電性のトナー53とを収容する。トナーボックス51の前側には、トナーボックス51に形成されたトナー供給口51aを介してアジテータ52の回転により供給されたトナー53を貯蔵するトナー貯蔵室54が形成されている。トナー貯蔵室54には、供給ローラ55がその長手方向に水平に配設され、回転可能に枢支されている。更に、トナー貯蔵室54の前側を仕切るように且つ供給ローラ55と感光ドラム20とに夫々接するように、現像ローラ56がその長手方向に水平に配設され、回転可能に枢支されている。
【0030】
供給ローラ55は、シリコンゴムやウレタンゴムなどからなる導電性を有する発泡弾性体から構成されている。また、現像ローラ56は、図2に示すように感光ドラム20と接触することにより、ニップ部Nを構成し、更に、シリコンゴムやウレタンゴムなどからなる導電性のリジッドなローラである。本実施形態のレーザプリンタ1では例えば、正帯電性のトナー及び正帯電性のポリカーボネイトを主成分とする有機感光体からなる感光ドラム20を用いているので、ウレタンゴムが現像ローラ56の材料とされる。
【0031】
尚、感光ドラム20に対する現像ローラ56のニップ圧(当接圧)は、50〜350kPaの範囲に設定されている。かかるニップ圧が50kPa以下に低くなると、現像ローラ56における偏心状態が直接画像に現れることとなって画像に歪が発生してしまい、また、ニップ圧が350kPa以上に高くなると、現像ローラ56を駆動するためのトルクが大きくなり過ぎて、その駆動上支障が発生する。
【0032】
図2に示すように、現像ユニット50における現像部ケース4にはトナー貯蔵室54が設けられており、トナー貯蔵室54は、供給ローラ55の上側の上部空間Sを大きく設けて形成されている。
【0033】
図1及び図2において、現像部ケース4には、ステンレス製またはリン青銅製の薄い板状の弾性を有する層厚規制ブレード57が下向きに取り付けられている。
【0034】
層厚規制ブレード57の下端部に形成された屈曲部57aが、現像ローラ56に押圧状態で接触しており、供給ローラ55から供給されて現像ローラ56の表面に層状に付着したトナー53の層厚が、この層厚規制ブレード57で所定厚さ(約7〜12μm)に規制される。
【0035】
転写ローラ60は、感光ドラム20の上側に接するように設けられ回転自在に枢支され、シリコンゴムやウレタンゴムなどからなる導電性を有する発泡弾性体から構成されている。
【0036】
定着ユニット70は、感光ドラム20よりも搬送方向下流側に設けられ、周知のハロゲンランプを内蔵した加熱用ローラ71と押圧ローラ72とからなり、用紙Pの下面に転写されたトナー画像が加熱されつつ押圧されて用紙Pに定着される。
【0037】
用紙搬送用の1対の搬送ローラ75及び排紙トレイ77は、定着ユニット70の搬送方向下流側に夫々設けられている。
【0038】
本実施の形態によれば、図1に示すように、給紙ローラ13、感光ドラム20、定着ユニット70及び排紙トレイ77は、略直線形状に延びる搬送経路PPに沿って給紙カセット14から給紙された用紙Pを搬送するように構成されている。
【0039】
[トナーについて]
本実施形態におけるトナーは、正帯電性のものであり、例えば、真球形状に近いスチレンアクリルなどからなる重合樹脂トナーからなる非磁性一成分トナーであり、かかる重合樹脂トナー粒子中には着色剤としての略球形状を有する酸化鉄粒子が、トナーに対して4〜7vol%含有されているとともに、互いに粒子径が異なり流動性を付与する2種類のシリカ微粒子、ワックス、荷電制御剤等の各種の外添剤が添加されている。
【0040】
尚、トナーは前記重合トナーの他に、粉砕トナーを用いてもよい。
【0041】
ここに、酸化鉄粒子は略球形状を有していることから、異形状に形成されている場合に比して、トナーを均一に帯電することができ、これより画像かぶりを有効に抑制することができる。また、着色剤としての酸化鉄粒子がトナーに対して4〜7vol%含有されていることから、画像かぶりを抑制しつつ適切な印字濃度で画像形成することができる。また、酸化鉄粒子の含有量が4〜7vol%の範囲である場合には、画像形成に伴う酸化鉄粒子による感光ドラムの感光層の削れ両を許容範囲に抑えることができる。
【0042】
続いて、前記した酸化鉄粒子について、保持力Hc、飽和磁化σs、残留磁化σr、平均粒子径dが相互に異なる6種類の酸化鉄粒子を製造するとともに、各酸化鉄粒子を含有させた6種類のトナー(実施例1〜4、比較例1、2の6種類)を調整し、各トナーについて画像形成初期のかぶり値と6000枚印字後におけるかぶり値とを測定した。
【0043】
実施例1〜4、比較例1、2のトナーに使用された酸化鉄粒子の保持力Hc、飽和磁化σs、残留磁化σr、平均粒子径d、及び、各トナーについて測定されたトナーの平均粒子径Dが、下記表1に記載されている。
【0044】
【表1】
【0045】
1.各実施例のトナーについて
(1)実施例1
実施例1のトナーに使用された酸化鉄粒子に関し、各種物性値が表1に示されている。
【0046】
(保持力Hc(kA/m))
測定磁場1kOe(97.6kA/m)で測定された保持力Hcは、4.70kA/m(59eO)であった。
【0047】
(飽和磁化σsと残留磁化σr)
飽和磁化σsは、66.7Am2/kgであり、また、残留磁化σrは、5Am2/kgであった。これより、残留磁化σrと飽和磁化σsとの比(σr/σs)は、0.07となる。
【0048】
(酸化鉄の平均粒子径dとトナーの平均粒子径D)
酸化鉄粒子の平均粒子径dは、0.22μmであった。また、最終的に調整されたトナーの平均粒子径Dは、9.155μmであった。これより、酸化鉄粒子の平均粒子径dとトナーの平均粒子径Dとの比(d/D)は、0.024となる。
【0049】
前記のように調整されたトナーについて、画像形成開始時における初期かぶり値は0.35であり、また、6000枚印字した後におけるかぶり値は1.01であった。
【0050】
一般的に、かぶり値の許容値は、2.0以下とされていることから、実施例1のトナーで測定されたかぶり値は、初期値及び6000枚印字後の双方において許容範囲にあり、画像かぶりが抑制されたことが分かる。
(2)実施例2
実施例2のトナーに使用された酸化鉄粒子に関し、各種物性値が表1に示されている。
【0051】
(保持力Hc(kA/m))
測定磁場1kOe(97.6kA/m)で測定された保持力Hcは、6.77kA/m(85eO)であった。
【0052】
(飽和磁化σsと残留磁化σr)
飽和磁化σsは、65Am2/kgであり、また、残留磁化σrは、8.7Am2/kgであった。これより、残留磁化σrと飽和磁化σsとの比(σr/σs)は、0.13となる。
【0053】
(酸化鉄の平均粒子径dとトナーの平均粒子径D)
酸化鉄粒子の平均粒子径dは、0.13μmであった。また、最終的に調整されたトナーの平均粒子径Dは9.220μmであった。これより、酸化鉄粒子の平均粒子径dとトナーの平均粒子径Dとの比(d/D)は、0.014となる。
【0054】
前記のように調整されたトナーについて、画像形成開始時における初期かぶり値は1.13であり、また、6000枚印字した後におけるかぶり値は1.29であった。
【0055】
一般的に、かぶり値の許容値は、2.0以下とされていることから、実施例2のトナーで測定されたかぶり値は、初期値及び6000枚印字後の双方において許容範囲にあり、画像かぶりが抑制されたことが分かる。
(3)実施例3
実施例3のトナーに使用された酸化鉄粒子に関し、各種物性値が表1に示されている。
【0056】
(保持力Hc(kA/m))
測定磁場1kOe(97.6kA/m)で測定された保持力Hcは、7.40kA/m(93eO)であった。
【0057】
(飽和磁化σsと残留磁化σr)
飽和磁化σsは、66Am2/kgであり、また、残留磁化σrは、9.3Am2/kgであった。これより、残留磁化σrと飽和磁化σsとの比(σr/σs)は、0.14となる。
【0058】
(酸化鉄の平均粒子径dとトナーの平均粒子径D)
酸化鉄粒子の平均粒子径dは、0.22μmであった。また、最終的に調整されたトナーの平均粒子径Dは8.907μmであった。これより、酸化鉄粒子の平均粒子径dとトナーの平均粒子径Dとの比(d/D)は、0.021となる。
【0059】
前記のように調整されたトナーについて、画像形成開始時における初期かぶり値は0.56であり、また、6000枚印字した後におけるかぶり値は1.03であった。
【0060】
一般的に、かぶり値の許容値は、2.0以下とされていることから、実施例3のトナーで測定されたかぶり値は、初期値及び6000枚印字後の双方において許容範囲にあり、画像かぶりが抑制されたことが分かる。
(4)実施例4
実施例4のトナーに使用された酸化鉄粒子に関し、各種物性値が表1に示されている。
【0061】
(保持力Hc(kA/m))
測定磁場1kOe(97.6kA/m)で測定された保持力Hcは、9.07kA/m(114eO)であった。
【0062】
(飽和磁化σsと残留磁化σr)
飽和磁化σsは、59.6Am2/kgであり、また、残留磁化σrは、10Am2/kgであった。これより、残留磁化σrと飽和磁化σsとの比(σr/σs)は、0.17となる。
【0063】
(酸化鉄の平均粒子径dとトナーの平均粒子径D)
酸化鉄粒子の平均粒子径dは、0.23μmであった。また、最終的に調整されたトナーの平均粒子径Dは9.041μmであった。これより、酸化鉄粒子の平均粒子径dとトナーの平均粒子径Dとの比(d/D)は、0.025となる。
【0064】
前記のように調整されたトナーについて、画像形成開始時における初期かぶり値は1.17であり、また、6000枚印字した後におけるかぶり値は1.20であった。
【0065】
一般的に、かぶり値の許容値は、2.0以下とされていることから、実施例3のトナーで測定されたかぶり値は、初期値及び6000枚印字後の双方において許容範囲にあり、画像かぶりが抑制されたことが分かる。
2.各比較例のトナーについて
(1)比較例1
比較例1のトナーに使用された酸化鉄粒子に関し、各種物性値が表1に示されている。
【0066】
(保持力Hc(kA/m))
測定磁場1kOe(97.6kA/m)で測定された保持力Hcは、22.5kA/m(283eO)であった。
【0067】
(飽和磁化σsと残留磁化σr)
飽和磁化σsは、0.6Am2/kgであり、また、残留磁化σrは、0.2Am2/kgであった。これより、残留磁化σrと飽和磁化σsとの比(σr/σs)は、0.33となる。
【0068】
(酸化鉄の平均粒子径dとトナーの平均粒子径D)
酸化鉄粒子の平均粒子径dは、0.3μmであった。また、最終的に調整されたトナーの平均粒子径Dは8.832μmであった。これより、酸化鉄粒子の平均粒子径dとトナーの平均粒子径Dとの比(d/D)は、0.034となる。
【0069】
前記のように調整されたトナーについて、画像形成開始時における初期かぶり値は2.39であり、また、6000枚印字した後におけるかぶり値は3.11であった。
【0070】
一般的に、かぶり値の許容値は、2.0以下とされていることからすれば、実施例3のトナーで測定されたかぶり値は、初期値及び6000枚印字後の双方において許容範囲を大きく外れており、画像かぶりが充分に抑制されていないことが分かる。
(2)比較例2
比較例2のトナーに使用された酸化鉄粒子に関し、各種物性値が表1に示されている。
【0071】
(保持力Hc(kA/m))
測定磁場1kOe(97.6kA/m)で測定された保持力Hcは、4.62kA/m(58eO)であった。
【0072】
(飽和磁化σsと残留磁化σr)
飽和磁化σsは、0.2Am2/kgであり、また、残留磁化σrは、0.1Am2/kgであった。これより、残留磁化σrと飽和磁化σsとの比(σr/σs)は、0.5となる。
【0073】
(酸化鉄の平均粒子径dとトナーの平均粒子径D)
酸化鉄粒子の平均粒子径dは、0.017μmであった。また、最終的に調整されたトナーの平均粒子径Dは9.240μmであった。これより、酸化鉄粒子の平均粒子径dとトナーの平均粒子径Dとの比(d/D)は、0.002となる。
【0074】
前記のように調整されたトナーについて、画像形成開始時における初期かぶり値は5.06であった。かかるかぶり値の値は、画像形成の初期において、かぶり値の許容値(2.0)から大きく外れており、従って、6000枚の印字を行うまでもなく、画像かぶりが全く抑制されていないことが分かる。
3.酸化鉄平均粒子径dとトナー平均粒子径Dの比(d/D)とかぶりとの関係
前記表1に基づき、酸化鉄粒子の平均粒子径dとトナー粒子の平均粒子径Dとの比(d/D)の値とかぶり値の関係について調べるべく、比(d/D)の値とかぶり値との関係をプロットした。この結果が図3に示されている。図3は比(d/D)の値とかぶり値の関係を示すグラフであり、横軸は比(d/D)の値、縦軸はかぶり値の値を示す。
【0075】
図3において、Aは実施例1、Bは実施例2、Cは実施例3、Dは実施例4、Eは比較例1、Fは比較例2について、それぞれ得られたプロットを示す。
【0076】
ここに、かぶり値の許容値は2.0以下であることが必要であることから、効率的に画像かぶりを抑制するためには、図3から明らかなように、酸化鉄粒子の平均粒子径dとトナー粒子の平均粒子径Dとの比(d/D)の値は、0.010〜0.030の範囲に存在する必要がある。比(d/D)の値が0.03以上となったり、また、0.010以下になると、かぶり値は2.0以上となってしまい、画像かぶりを効率的に抑制することができなくなる。
4.飽和磁化σsと残留磁化σrとの比(σr/σs)とかぶり値との関係
酸化鉄粒子について測定された飽和磁化σsと残留磁化σrとの比(σr/σs)の値とかぶり値の関係について調べるべく、比(σr/σs)の値とかぶり値との関係をプロットした。この結果が図4に示されている。図4は比(σr/σs)の値とかぶり値の関係を示すグラフであり、横軸は比(σr/σs)の値、縦軸はかぶり値の値を示す。
【0077】
図4において、Aは実施例1、Bは実施例2、Cは実施例3、Dは実施例4、Eは比較例1、Fは比較例2について、それぞれ得られたプロットを示す。
【0078】
ここに、かぶり値の許容値は2.0以下であることが必要であることから、効率的に画像かぶりを抑制するためには、図4から明らかなように、酸化鉄粒子の飽和磁化(σs)と残留磁化(σr)との比(σr/σs)の値は、0.30以下の範囲に存在する必要がある。比(σr/σs)の値が0.03以上となると、かぶり値は2.0以上となってしまい、画像かぶりを効率的に抑制することができなくなる。
【0079】
ここに、比(σr/σs)の値が0.03以下である場合には、非磁性現像ローラを使用する非磁性現像プロセスにおいては、飽和磁化σsが大きくても残留磁化σrが小さい場合にはトナー間の磁気的凝集力は弱くなってトナー間の凝集を防止でき、また、残留磁化σrと飽和磁化σsとの比(σr/σs)が小さければトナーの流動性を悪化させることなく静電潜像を現像することができる。この結果、画像かぶりを効率的に抑制することが可能となる。
【0080】
これに対して、残留磁化σrが小さくて且つ飽和磁化σsも小さい場合(両者の比(σr/σs)が大きい場合)には、酸化鉄自信の磁化力が弱くなって、トナー全体の帯電性が不均一となることから、画像かぶりが発生し易くなる。
【0081】
【発明の効果】
以上説明した通り本発明に係る静電現像トナーによれば、トナーの平均粒子径Dと着色剤としてトナーに含有される酸化鉄粒子の平均粒子径dとの比(d/D)の値を0.01〜0.03の範囲に設定し、また、酸化鉄粒子の残留磁化σrと飽和磁化σsとの比(σr/σs)の値を0.3以下に設定することにより、画像のかぶり効率的に抑制することが可能な静電現像トナー提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 レーザプリンタの縦断側断面図である。
【図2】 レーザプリンタの現像ユニット及び感光ドラム部分の拡大側面図である。
【図3】 比(d/D)の値とかぶり値の関係を示すグラフである。
【図4】 比(σr/σs)の値とかぶり値の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 レーザプリンタ
20 感光ドラム
22 光導電層
56 現像ローラ
Claims (2)
- 感光ドラムの周面に形成された感光体層に静電潜像を形成し、感光ドラムに対して接触されている非磁性現像ローラから静電潜像にトナーを供給して静電潜像を現像する画像形成装置に使用される静電現像トナーであって、
前記静電現像トナーは、樹脂粒子中に着色剤としての酸化鉄粒子が含有されており、
前記静電現像トナーの平均粒子径Dと前記酸化鉄粒子の平均粒子径dとの比(d/D)が、0.01〜0.03の範囲にあり、
前記酸化鉄粒子は、79.6kA/mの磁場において3〜7kA/mの保持力Hcを有するとともに、残留磁化σrと飽和磁化σsとの比(σr/σs)が0.3以下であり、
前記酸化鉄粒子は、トナーに対して4〜7vol%含有されており、
前記静電現像トナーには、カーボンブラックは含有されていないことを特徴とする静電現像トナー。 - 前記酸化鉄粒子は、球形状を有することを特徴とする請求項1に記載の静電現像トナー。
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