JP3918366B2 - 溶融紡糸用ポリエステル組成物、ポリエステル部分配向未延伸糸およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は溶融紡糸用ポリエステル組成物、およびポリエステル部分配向未延伸糸およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、製糸性かつ生産性に優れた溶融紡糸用ポリエステル組成物およびポリエステル部分配向未延伸糸の製造方法と、延伸性、加工性、工程通過性に優れたポリエステル部分配向未延伸糸に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートをはじめとするポリエステル繊維は種々の特性に優れることから多量にかつ広い分野にわたって用いられている。なかでも引取速度を2000〜4000m/分とした部分配向未延伸糸(以下POYと略記する)は、延伸に用いうることは勿論のこと、そのまま延伸仮撚加工にも供しうる利点を有しているため、工業的に重要な位置を占めている。一方、仮撚加工糸に関しては、このPOYを用いて延伸と仮撚を同時に行う延伸仮撚加工を採用することにより、旧来の延伸糸を仮撚する加工方法に比べて大幅な生産性の向上が達成された。
【0003】
近年、さらなる生産性の向上に対する要求が高まると共に、未延伸糸の紡糸速度を速くすることによって、単位時間当たりの生産性を向上させようという試みが行われるようになったが、ポリエステル繊維の場合には、紡糸速度の増大と共に配向結晶化が進み、繊維の機械的性質が変わってしまうという問題がある。この問題を解決し、紡糸速度を速くした場合にも同等の特性の繊維を得るという目的で、紡糸速度が速くなるに伴って増大するポリエステルの分子配向を抑制する手段が数多く検討されてきた。その中でポリエステルに別のポリマーを含有させる方法などが知られている。
【0004】
例えば特開平11−61568号公報には平均分子量が500以上で、無水マレイン酸の平均共重合量がポリマー1モル当たり2〜20モルであるビニル系ポリマー(好ましくはスチレン・無水マレイン酸系共重合体)を、ポリエステルに対して0.01〜10重量%配合することにより分子配向を抑制させる技術が開示されている。この技術では無水マレイン酸とポリエステルとの反応により配向抑制効果が発現するものと考えられるため、無水マレイン酸の共重合量が多いほど配向抑制効果は大きいものの、この場合ポリエステル中にゲル化が起こるためか紡糸糸切れが多く、さらにパック圧の経時的な上昇も大きいため、安定した生産が困難となり、生産性の向上は望めない。
【0005】
またポリエステルにスチレン系重合体を含有させる方法も知られている。
【0006】
例えば、特開昭56−91013号公報では、スチレン系重合体を含むポリエステルを用いることにより残留伸度を向上させる方法が開示されている。この技術では残留伸度向上、すなわち紡糸時の配向を抑制する効果は認められるものの、スチレン系重合体とポリエステルの流動特性の違いからか単糸切れ、紡糸糸切れが多く製糸性が悪い。このため安定した生産が困難となり、生産性の向上は望めない。
【0007】
この様に、ポリエステルにポリスチレン系重合体を含有させる従来技術では、配向抑制効果は認められるものの製糸性が悪く、このため安定した生産が困難となり、生産性の向上が望めないという課題があった。また得られる部分配向未延伸糸も加工時の毛羽の発生など延伸性、加工性、工程通過性に欠点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解消し、紡糸における配向を抑制し、かつ製糸性に優れるポリエステル部分配向未延伸糸の生産性向上に適したポリエステル組成物を提供すること、および該ポリエステル部分配向未延伸糸を工程上の問題なく安定してかつ効率的に生産する方法を提供すること、さらには延伸性、延伸仮撚加工性に優れるポリエステル部分配向未延伸糸を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、紡糸速度の上昇と共に増大する分子配向を抑制し、かつ製糸性、延伸性および延伸仮撚加工性の良好なポリエステル部分配向未延伸糸を得るため鋭意検討を重ねてきた。その中で、ある特性を持たせたポリスチレン系重合体をポリエステルに含有させることによって従来技術の欠点を解消できることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0010】
すなわち、本発明は伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.10以上であるポリスチレン系重合体が0.5〜5重量%含有されていることを特徴とする溶融紡糸用ポリエステル組成物を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるポリエステルとして、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレートであり、より好ましくはポリエチレンテレフタレートである。
【0013】
また本発明で用いるポリエステルは、発明の主旨を損ねない範囲で他の第3成分が共重合されていても良い。さらに、本発明のポリエステルは艶消剤、難燃剤、滑剤等の添加剤を少量含有しても良い。
【0014】
本発明における溶融紡糸用ポリエステル組成物には、伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.10以上であるポリスチレン系重合体が0.5〜5重量%含有されていることが必要である。
【0015】
本発明でいうポリスチレン系重合体とは、スチレン系単量体から構成されていれば特に制限はなく、スチレン系単量体として、スチレンの他α−メチルスチレン、α−エチルスチレンのような側鎖アルキル置換スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、o−t−ブチルスチレン、p−メチルスチレンのような核アルキル置換スチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレンのようなハロゲン化スチレン等があげられる。好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンである。スチレン単量体はこれらのうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
また本発明ではスチレン系重合体としての特性を損ねない範囲でスチレン系単量体と共重合可能な単量体を共重合しても良い。スチレン系単量体と共重合可能な単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリルニトリル、メチルメタクリレートのようなアクリル酸エステル系単量体、マレイミド、N−フェニルマレイミドのようなマレイミド系単量体、およびマレイン酸エステルなどがあげられる。
【0017】
本発明において用いる伸長粘度の非線形性成長定数Cgとは、1軸伸長粘度の非線形性パラメーターλnのHenckeyひずみε依存性である。Henckeyひずみは、日本レオロジー学会誌,Vol.11,p14(1983)などに記載されているように伸長比の自然対数で定義される。なお以後Henckeyひずみを単にひずみと記載する。伸長粘度の非線形性パラメーターλnは、日本レオロジー学会編「講座・レオロジー」p.221などに記載されているように低ひずみ速度での微少変形(線形領域)の伸長粘度と、同時刻での高ひずみ速度での大変形(非線形領域)の伸長粘度の比で表され、大変形時の伸長粘度の増加分を表すパラメーターである。
【0018】
本発明において用いる伸長粘度の非線形性成長定数Cgとは、以下の手順で求める定数と定義する。
(1)温度T=160℃で、ひずみ速度dε/dtがそれぞれ0.1sec-1、0.025sec-1での1軸伸長粘度ηEを測定し、下式より伸長粘度の非線形性パラメーターλnを求める。
【0019】
【数1】
(2)logλnをひずみεに対しプロットし、直線近似して求められる勾配をCgとする。
【0020】
なお、伸長粘度の非線形性パラメーターλnは測定温度やひずみ速度にあまり影響を受けないが、本発明において用いるCgは先に示した測定条件において求められる値とする。
【0021】
本発明において用いるポリスチレン系重合体は伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.10以上であり、好ましくは0.12以上である。Cgが0.10以上であることにより後述するように粘度挙動が大きく変化し、通常のポリスチレン系重合体を含有するポリエステルに比べて製糸性、特に高速製糸性に優れるため、安定した生産が可能となり、生産性の向上が達成されるのである。Cgが0.10に満たない場合は一般のポリスチレン系重合体と同様に製糸性が悪くなる。
【0022】
さらにポリスチレン系重合体の含有量を同一とした場合、Cgが0.10以上であるポリスチレン系重合体を含有するポリエステル組成物より形成されるPOYは、通常のポリスチレン系重合体を含有するポリエステルより形成されるPOYに比べて同じ紡糸条件で溶融紡糸を行ったときに、より低い配向度を示すのである。このため同一の配向抑制効果を発現させるために必要なポリスチレン系重合体の含有量を少なくすることができ、ポリスチレン系重合体を多く含有することに起因する製品の繊度斑、毛羽が発生しやすく高次加工での工程通過性に劣るなどの欠点を解消することができる。
【0023】
伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.10以上であるポリスチレン系重合体の方が、Cgが0.10に満たない通常のポリスチレン系重合体を含有するよりも製糸性に優れ、かつ得られる繊維の配向度がより抑制される理由については明らかではないが次のように考えられる。
【0024】
ポリエステル溶融紡糸における分子配向は紡糸張力に影響されるため、製糸過程において紡糸速度を増大させても分子配向が抑制された繊維を得るには、含有させるポリスチレン系重合体の大変形時の伸長粘度が高いことが有効であると考えられる。粘度を高めるには分子量を大きくすることなどが一般に知られているが、この場合は伸長粘度は高くなるものの同時に剪断粘度や低ひずみ域での伸長粘度(線形領域)も高くなってしまう。その結果ベースとなるポリエステルとの粘度差が大きくなり、混合・分散の均一性を保つことが困難となる。
【0025】
一方、本発明で用いるCgが0.10以上であるポリスチレン系重合体は、そのCgが大きいほど伸長ひずみが大きくなる(非線形領域)につれ伸長粘度が高くなるが、低ひずみ領域(線形領域)では粘度は大きくなく、むしろ同一の分子量の場合では剪断粘度が低くなる。
【0026】
これらのことから、Cgが0.10以上であるポリスチレン系重合体では通常のポリスチレン系重合体に比べ溶融重合体配管内や口金などの剪断変形時には流動性に優れるため、配管および孔への分配性、管内での均一流動安定性、吐出直後の流線の安定性などに優れ、製糸性が改良されるものと推定される。
【0027】
さらにCgが0.10以上であるポリスチレン系重合体は通常のポリスチレン系重合体に比べ、伸長変形が大きくなった際に粘度が急激に高くなり、変形しにくくなる。このことは溶融紡糸における細化挙動中に、伸長粘度が急激に高くなることを意味し、得られる繊維の配向度が通常のポリスチレン系重合体を含有させた場合よりも抑制されると推定される。
【0028】
先に述べたように、伸長粘度の非線形性パラメーターλnはひずみ速度の異なる伸長粘度の比であるため測定温度やひずみ速度にあまり影響を受けないほか、分子量にもあまり影響を受けない。そのためCgは単に分子量を変えるだけでは変化は小さい。Cgを変化させる手法としては、例えば分岐を生じさせることであり、分岐の数が多いほどCgは大きくなる。したがって本発明で用いるCgが0.10以上であるポリスチレン系重合体としては、例えばランダム分岐ポリスチレンなどがあげられるが、本発明においてはCgが0.10以上であれば特に制限はなくどのようなものでも良い。
【0029】
本発明において伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.10以上であるポリスチレン系重合体の含有量が0.5重量%未満では配向抑制効果はほとんど見られない。伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.10以上であるポリスチレン系重合体の含有量が増えるほど配向抑制効果も大きくなるが、5重量%より多く含有させた場合には繊維が高伸度、低強度となり、紡糸時の毛羽や単糸切れ等、POYの製糸性の悪化を招いてしまう。
【0030】
本発明のポリエステル組成物より形成されるPOYは、伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.10以上であるポリスチレン系重合体を含有しないポリエステルより形成されるPOYに比べて同じ紡糸条件で溶融紡糸を行ったときに、より低い配向度を示す。したがって同一の紡糸速度で引き取った場合には延伸および延伸仮撚時の延伸倍率をより大きくすることができるため、所望繊度のポリエステル延伸糸および加工糸を得るために必要なPOYの繊度をより大きくすることが可能となり、単位時間当たりのPOY生産量を向上することができる。
【0031】
また伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.10以上であるポリスチレン系重合体を含有しないポリエステルより形成されるPOYと同様の配向度を本発明のポリエステル組成物から得るには、POYの紡糸速度をより大きくすることにより実現できる。この場合、所望繊度のポリエステル延伸糸および加工糸を得るために必要なPOYの繊度は、本発明のポリエステル組成物からなるPOYと伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.10以上であるポリスチレン系重合体を含有しないポリエステルからなるPOYではほぼ同等になるが、本発明のPOYはより大きい紡糸速度で得られるため、単位時間当たりのPOY生産性はより向上できる。
【0032】
本発明のポリエステル組成物より形成されるPOYは配向抑制効果を有しているため延伸或いは延伸仮撚加工を行う際に種々の良好な特性を持ち、単位時間当たりのPOY生産量がより大きくできるという利点の他にも、延伸および延伸仮撚加工時の工程通過性の向上、加工糸とした場合のより高い捲縮特性といった好ましい特性を有している。
【0033】
本発明のポリエステル部分配向未延伸糸は、分子配向度を示す指標である複屈折率が0.015〜0.07であることが好ましい。複屈折率が0.015〜0.07であることにより延伸仮撚加工で適正な加熱温度および延伸倍率を取ることができ、安定した加工が可能となる。
【0034】
本発明のポリエステル部分配向未延伸糸は、伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.10以上であるポリスチレン系重合体を0.5〜5重量%含有されている溶融紡糸用ポリエステル組成物を3000〜8000m/分の引取速度で溶融紡糸することによって製造できる。
【0035】
伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.10以上であるポリスチレン系重合体をポリエステル中に含有させるにはポリエステルの重縮合反応中あるいは反応後の任意の段階において行うことができる。またチップ化したポリエステル樹脂と伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.10以上であるポリスチレン系重合体を紡糸前に溶融混練あるいはドライブレンドしてもかまわない。さらには高濃度で伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.10以上であるポリスチレン系重合体を含有するマスターチップを別途作成しておき、溶融紡糸に当たってこれを含有させても良い。
【0036】
本発明のポリエステル組成物を用いることで、大きい配向抑制効果を持ち、かつ製糸性に優れた溶融紡糸、特にPOYの溶融紡糸が可能となり生産性の向上が達成できる。また本発明のポリエステル組成物はポリエステルに伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.10以上であるポリスチレン系重合体を含有させるという簡便な手法で得られ、この組成物より形成されるPOYは、延伸および延伸仮撚加工時の工程通過性の向上、加工糸とした場合のより高い捲縮特性といった好ましい特性を有しており、工業的観点から見て非常に有意義であると考えられる。
【0037】
以下実施例により、本発明を具体的かつより詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。なお、実施例中の物性値は以下の方法によって測定した。
【0038】
【実施例】
A.伸長粘度の非線形性成長定数Cg
伸長レオメーターにより、ひずみ速度一定(0.025sec−1および0.1sec−1)、160℃の条件下で伸長粘度を測定し、本文記載の方法により求めた。
B.伸度
オリエンテック社製テンシロン引張試験機を用い、初期試料長50mm、引張速度400mm/分で測定し求めた。
C.複屈折率(△n)
OLYMPUS社製BH−2偏光顕微鏡コンペンセーターを用い、通常の干渉縞法によって、レターデーションと繊維径より求めた。
D.繊度斑(U%)
チェルベガーウスター社製ウスター斑試験機を用いて、糸速100m/分、測定タイプノーマルで測定し、U%値を求めた。
E.加工糸の捲縮特性(CR)
繊維を10回巻のカセ状にし、無荷重下、90℃,20分間の温水処理を行う。一晩風乾した後、20℃の水中にて、繊維のデニールの0.04倍の初荷重と繊維のデニールの2.0倍の実荷重をカセに掛け、2分後にカセの長さを測定する(L1)。すぐに実荷重を取り外し2分後に再度長さを測定する(L2)。 このようにして求めたL1とL2をもとに、{(L1−L2)/L1}×100をもってCR値とした。
F.毛羽
東レ(株)製フライカウンターを用いて、給糸速度200m/分、測定感度0.1の条件で、50分の測定を10回行い、カウントされた毛羽の個数の平均値を104mあたりの毛羽数とした。
実施例1
テレフタル酸とエチレングリコールを用い通常の重縮合反応により得られたポリエチレンテレフタレートに対し、ジビニルベンゼンを分岐剤としたメルトフローレート2.8、伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.18である分岐ポリスチレンを3wt%含有させてポリエステル組成物を得た。
【0039】
これを1軸エクストルーダーを用い紡糸温度295℃で孔径0.23mmφ、孔数36の紡糸口金より吐出量82.5g/分、5000m/分の紡糸速度で引き取ってポリエステルPOYを得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。このPOYの繊度、伸度、△nを表1に示す。△nは26×10-3と同一の紡糸速度で得られたPOY(比較例2)よりも小さくなっており、Cgが0.18であるポリスチレンをポリエステルに含有させることで紡糸時の配向が抑制されていることに加え、製糸性が良好であることが分かる。
【0040】
このPOYをフリクションディスクタイプの延伸仮撚機を用い加工速度800m/分、加工温度210℃で延伸仮撚加工(以下DTY加工と記す)を行った。加工中に糸切れは発生せず、加工性は優れており、毛羽も0.8コ/104mと非常に少ないものであった。この加工糸の繊度、CRを表1に示す。CRは48%と大きく、優れた捲縮特性を有していることが分かる。
【0041】
表1から分かるように75デニールの加工糸を得るに際し、Cgが0.18であるポリスチレンを含有させたポリエステル組成物を用いることで、POYの紡糸速度を大きくしても配向が抑制されるためDTY加工倍率を大きくすることができ、POY生産性を大きく向上(紡糸吐出量の増加)することが可能となることに加え、得られるPOYは加工性に優れ、加工糸とした場合に捲縮特性に優れるという特性を持つことがわかる。
【0042】
【表1】
比較例1
ポリスチレン系重合体を含有させない以外は実施例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。これを吐出量47.0g/分、紡糸速度3000m/分とした以外は実施例1と同様の方法で紡糸を行いポリエステルPOYを得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。このPOYの繊度、伸度、△nを表1に示す。
【0043】
このPOYを実施例1と同様の方法でDTY加工を行った。加工中に糸切れは発生せず、加工性は優れており、得られた加工糸の毛羽は1.0コ/104mであった。この加工糸の繊度、CRを表1に示す。CRは46%であり加工糸として十分な捲縮特性を有していることが分かる。
【0044】
表1から分かるように75デニールの加工糸を得るに際し、通常のポリエステル組成物を用いると、得られるPOYの製糸性、加工性および加工糸の品位は十分であるが、実施例1に比べPOY生産性は低下(紡糸吐出量の減少)していることがわかる。
比較例2
比較例1で得たポリエステル組成物を用い、吐出量を47.9g/分とした以外は実施例1と同様の方法で紡糸を行いポリエステルPOYを得た。紡糸中に糸切れが数回発生し、製糸性は実施例1よりも劣っていた。このPOYの繊度、伸度、△nを表1に示す。紡糸速度の上昇に伴い△nは90×10-3と大きくなっている。
【0045】
このPOYを実施例1と同様の方法でDTY加工を行った。ここでも加工中に糸切れが数回発生し、加工性は実施例1よりも劣っていた。また毛羽は2.5コ/104mと多くなっていた。この加工糸の繊度、CRを表1に示す。CRは38%であり加工糸としてはやや不十分な捲縮特性しか有していないことが分かる。
【0046】
表1から分かるように75デニールの加工糸を得るに際し、通常のポリエステル組成物を用いPOYの紡糸速度を大きくすることではPOY生産性はほとんど向上せず、かつ得られる加工糸は捲縮特性に乏しく、品位に劣ることがわかる。
比較例3
実施例1で得たポリエチレンテレフタレートに対し、メルトフローレート2.1、伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.07である汎用ポリスチレンを3wt%含有させ、ポリエステル組成物を得た。
【0047】
これを吐出量を52.1g/分とした以外は実施例1と同様の方法で紡糸を行いポリエステルPOYを得た。紡糸中に糸切れが数回発生し、製糸性は劣っていた。このPOYの繊度、伸度、△nを表1に示す。また△nは56×10-3と実施例1よりも大きくなっている。
【0048】
このPOYを実施例1と同様の方法でDTY加工を行ったところ、加工中に糸切れが多発し加工性は不良であり、毛羽も3.6コ/104mと非常に多かった。この加工糸の繊度、CRを表1に示す。CRは39%であり加工糸としては不十分な捲縮特性しか有していないことが分かる。
【0049】
表1から分かるように75デニールの加工糸を得るに際し、Cgが0.07である汎用ポリスチレンを含有させたポリエステル組成物によっても紡糸時に配向が抑制され、POY生産性を向上(紡糸吐出量の増加)することが可能であるが、紡糸および加工性が悪化し、加工糸とした場合の捲縮特性にも劣ることに加え、実施例1に比較して配向抑制の程度も小さいことがわかる。
実施例2
実施例1での分岐ポリスチレンとポリエチレンテレフタレートを用い、ポリスチレン含有量を0.5wt%とすること以外は実施例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。
【0050】
これを吐出量を52.5g/分、紡糸速度3000m/分とした以外は実施例1と同様の方法で紡糸を行いポリエステルPOYを得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。このPOYの繊度、伸度、△nを表1に示す。△nは21×10-3と同一の紡糸速度で得られたPOY(比較例1)よりも小さくなっており、0.5wt%でも紡糸時の配向が抑制されていることが分かる。
【0051】
このPOYを実施例1と同様の方法でDTY加工を行った。加工中に糸切れは発生せず、加工性は優れており、毛羽は0.8コ/104mと少ないものであった。この加工糸の繊度、CRを表1に示す。CRは46%であり、優れた捲縮特性を有していることが分かる。
【0052】
表1から分かるように75デニールの加工糸を得るに際し、Cgが0.18であるポリスチレンの含有量が0.5wt%のポリエステル組成物でも、POYの紡糸速度が同一の場合に配向が抑制されるためDTY加工倍率をより大きくすることができ、POY生産性を向上(紡糸吐出量の増加)することが可能となることに加え、得られるPOYは加工性に優れ、加工糸とした場合に捲縮特性に優れるという特性を持つことがわかる。
実施例3
実施例1での分岐ポリスチレンとポリエチレンテレフタレートを用い、ポリスチレン含有量を5wt%とすること以外は実施例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。
【0053】
これを吐出量を80.7g/分、紡糸速度8000m/分とした以外は実施例1と同様の方法で紡糸を行いポリエステルPOYを得た。紡糸中に糸切れが1回発生したものの、製糸性は概ね良好であった。このPOYの繊度、伸度、△nを表1に示す。△nは52×10-3であり、Cgが0.18であるポリスチレンの含有量を5wt%と大きくすることで紡糸時の配向が抑制され、紡糸速度8000m/分でもDTY加工に供し得るPOYが得られることが分かる。
【0054】
このPOYを実施例1と同様の方法でDTY加工を行った。加工中に糸切れが1度発生したものの、加工性は概ね良好であり、毛羽は1.0コ/104mと少ないものであった。この加工糸の繊度、CRを表1に示す。CRは46%であり、優れた捲縮特性を有していることが分かる。
【0055】
表1から分かるように75デニールの加工糸を得るに際し、Cgが0.18であるポリスチレンの含有量を5wt%としたポリエステル組成物を用いることで、通常のポリエチレンテレフタレートではDTY加工に供し得るPOYが得られない紡糸速度でも通常のDTY加工を行い得るPOYが得られ、POY生産性を向上(紡糸吐出量の増加)することが可能となることに加え、得られるPOYは加工糸とした場合に捲縮特性に優れることがわかる。
実施例4
分岐ポリスチレンと汎用ポリスチレンを混合させ、メルトフローレート2.6、伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.12であるポリスチレン系重合体を得た。このポリスチレン系重合体を実施例1で得たポリエチレンテレフタレートに対し3wt%含有させてポリエステル組成物を得た。
【0056】
これを吐出量を64.6g/分とした以外は実施例1と同様の方法で紡糸を行いポリエステルPOYを得た。紡糸中に糸切れが1回発生したものの、製糸性は概ね良好であった。このPOYの繊度、伸度、△nを表1に示す。△nは43×10-3であり、汎用ポリスチレンを含有していても、ポリスチレン系重合体のCgが0.10以上であれば製糸性は良好であり、紡糸時の配向も汎用ポリスチレンのみの場合(比較例3)よりも抑制されることが分かる。
【0057】
このPOYを実施例1と同様の方法でDTY加工を行った。加工中に糸切れが1度発生したものの、加工性は概ね良好であり、毛羽は1.1コ/104mと少ないものであった。この加工糸の繊度、CRを表1に示す。CRは45%であり、加工糸として十分な捲縮特性を有していることが分かる。
【0058】
表1から分かるように75デニールの加工糸を得るに際し、汎用ポリスチレンを含有していても、ポリスチレン系重合体のCgが0.10以上であれば製糸性および加工性は良好であり、加えて配向抑制の程度も汎用ポリスチレンのみの場合よりも大きく、POY生産性をより向上(紡糸吐出量の増加)することが可能となる。
【0059】
【発明の効果】
本発明のポリエステル組成物を用いることで大きい配向抑制効果を持ち、かつ製糸性に優れた溶融紡糸、特にPOYの溶融紡糸が可能となり生産性の向上が達成できる。また本発明のポリエステル組成物はポリエステルに伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.10以上であるポリスチレン系重合体を含有させるという簡便な手法で得られる。さらに、本発明のポリエステル組成物より形成されるPOYは、延伸および延伸仮撚加工時の工程通過性の向上、加工糸とした場合のより高い捲縮特性といった好ましい特性を有している。
Claims (5)
- 伸長粘度の非線形性成長定数Cgが0.10以上であるポリスチレン系重合体が0.5〜5重量%含有されていることを特徴とする溶融紡糸用ポリエステル組成物。
- 主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1記載の溶融紡糸用ポリエステル組成物。
- 請求項1または2記載のポリエステル組成物より形成されたことを特徴とするポリエステル部分配向未延伸糸。
- 複屈折率が0.015〜0.07であることを特徴とする請求項3記載のポリエステル部分配向未延伸糸。
- 請求項1または2記載のポリエステル組成物を、3000〜8000m/分の引取速度で溶融紡糸することを特徴とするポリエステル部分配向未延伸糸の製造方法。
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