JP2001316942A - 溶融紡糸用ポリエステル組成物 - Google Patents

溶融紡糸用ポリエステル組成物

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JP2001316942A
JP2001316942A JP2000134880A JP2000134880A JP2001316942A JP 2001316942 A JP2001316942 A JP 2001316942A JP 2000134880 A JP2000134880 A JP 2000134880A JP 2000134880 A JP2000134880 A JP 2000134880A JP 2001316942 A JP2001316942 A JP 2001316942A
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polyester
melt
polyester composition
shear rate
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JP2000134880A
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Yoshiji Funatsu
義嗣 船津
Masato Kuroda
正人 黒田
Mototada Fukuhara
基忠 福原
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】紡糸速度の上昇と共に増大する分子配向を抑制
し、かつ製糸性に優れるポリエステル部分配向未延伸糸
の生産性向上に適したポリエステル組成物を提供するこ
と。 【解決手段】270℃における溶融剪断粘度が下記条件
1、2である溶融紡糸用ポリエステル組成物。 1 剪断速度1.0×10-1sec-1において3.0×103〜8.0×1
03poise 2 剪断速度1.0×103sec-1において8.0×102〜2.0×10
3poise

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は溶融紡糸用ポリエス
テル組成物に関する。さらに詳しくは、製糸性かつ生産
性に優れた溶融紡糸用ポリエステル組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレンテレフタレートをはじめと
するポリエステル繊維は種々の特性に優れることから多
量にかつ広い分野にわたって用いられている。なかでも
引取速度を2000〜4000m/分とした部分配向未延伸糸
は、延伸に用いうることは勿論のこと、そのまま延伸仮
撚加工にも供しうる利点を有しているため、工業的に重
要な位置を占めている。一方、仮撚加工糸に関しては、
この部分配向未延伸糸を用いて延伸と仮撚を同時に行う
延伸仮撚加工を採用することにより、旧来の延伸糸を仮
撚する加工方法に比べて大幅な生産性の向上が達成され
た。
【0003】近年、さらなる生産性の向上に対する要求
が高まると共に、未延伸糸の紡糸速度を速くすることに
よって、単位時間当たりの生産性を向上させようという
試みが行われるようになったが、ポリエステル繊維の場
合には、紡糸速度の増大と共に配向結晶化が進み、繊維
の機械的性質が変わってしまうという問題がある。この
問題を解決し、紡糸速度を速くした場合にも同等の特性
の繊維を得るという目的で、紡糸速度が速くなるに伴っ
て増大するポリエステルの分子配向を抑制する手段が数
多く検討されてきた。その中でポリエステルに別のポリ
マーを含有させる方法や分岐剤を導入する方法などが知
られている。
【0004】例えば特開昭56-91013号公報では、スチレ
ン系重合体を含むポリエステル、特開昭57-47912号公報
ではスチレン系重合体を除く重合体(ポリメチルメタク
リレート、ポリ(4−メチル−1−ペンテン))を含むポ
リエステルを用いることにより残留伸度を向上させる方
法が開示されている。また特開昭53-292号公報では、ポ
リエステルに連鎖分岐剤を共重合させることで延伸比を
向上させる方法が開示されている。これらの技術では確
かに分子配向を抑制する効果は認められるものの、重合
条件あるいは添加量等の条件によっては分子配向を抑制
する効果が小さくなるばかりか、口金パックにおける圧
力損失が大きくなり、口金パック交換頻度が増すことに
加え、紡糸糸切れなど製糸性に問題が発生するおそれが
ある。製糸性の悪化は時間労力等の手間に加え屑量の増
加などをまねくことから、このような場合生産性が向上
するとは言い難い。これはポリエステル溶融紡糸の製糸
性に重要な意味を持つポリマの流動性を考慮していない
ためである。
【0005】特開昭61-111358号公報は、紡糸速度6000
m/分という高速紡糸領域ではあるが、溶融粘度挙動と
製糸性、繊維物性の関係を考慮しており注目すべき技術
である。該公報ではポリエステルに分散質を0.2〜7重
量部添加し、剪断速度1.0×10 -2sec-1と5.0×100sec-1
での粘度の差を該公報中記載の「粘度増加パラメータ
ー」に関係づけられる値以上に増加させることで主とし
て高速紡糸糸の力学特性を改善する技術が開示されてい
る。
【0006】しかし該公報では特定の2点での剪断速度
における溶融粘度の差を規定しているが粘度の絶対値は
議論されておらず、該公報記載の条件さえ満たせばどの
ような粘度のポリマを用いても良いような印象を受ける
が、実際にはポリエステル溶融紡糸における適正範囲が
存在し、粘度が高すぎても低すぎても製糸性に支障をき
たす。また溶融粘度についても低剪断域での増粘が焦点
であり、高剪断域については「溶融粘度の増加が小さ
い」との記載はあるものの少なくとも増粘の傾向は認め
られ、口金パックの圧力損失が増加することは否めな
い。さらに該公報では「分散質粒子が微細且つ安定に分
散」することが要件であり、粒子の大きさについても述
べられているが、粒子には高次凝集体など発生する懸念
があり、不均一になった場合口金パックの圧力損失が大
きくなるばかりか経時的な圧力増加が大きくなり製糸性
がより悪化するという問題があることに加え、凝集粒子
は繊維中では異物・欠陥となり、繊維の強度低下をもた
らす可能性がある。
【0007】この様に、ポリエステルを改質することに
より繊維配向を抑制させる従来技術においては流動性に
ついての考慮がほとんどなされておらず製糸性に問題が
あった。また流動性を考慮した例についても口金パック
圧の増加が懸念され、製糸性が悪化する傾向にあった。
このため口金パック交換頻度の増加、紡糸糸切れ頻発な
ど時間労力等の手間が発生することに加え屑量の増加な
どをまねき、生産性の向上が望めないという課題があっ
た。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記
従来技術の問題点を解消し、紡糸における配向を抑制
し、かつ製糸性に優れるポリエステル部分配向未延伸糸
の生産性向上に適したポリエステル組成物を提供するこ
とにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、紡糸速度
の上昇と共に増大する分子配向を抑制し、かつ製糸性良
好にポリエステル部分配向未延伸糸を得るため鋭意検討
を重ねてきた。その中で、溶融剪断粘度がある一定条件
を満たすポリエステル組成物を用いることによって従来
技術の欠点を解消できることを見いだし、本発明に到達
したものである。
【0010】すなわち、本発明は270℃における溶融剪
断粘度が下記条件1、2である融紡糸用ポリエステル組
成物を提供するものである。 1 剪断速度1.0×10-1sec-1において3.0×103〜8.0×1
03poise 2 剪断速度1.0×103sec-1において8.0×102〜2.0×10
3poise
【0011】
【発明の実施の形態】本発明でいうポリエステルとは、
ジカルボン酸化合物とジオール化合物のエステル結合か
ら形成される重合体であり、好ましくはポリエチレンテ
レフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブ
チレンテレフタレートであり、より好ましくはポリエチ
レンテレフタレートである。
【0012】また本発明で用いるポリエステルは、発明
の主旨を損ねない範囲で他の成分が共重合されていても
良い。さらに、本発明のポリエステルは艶消剤、難燃
剤、滑剤等の添加剤を少量含有しても良い。共重合成分
としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボ
ン酸、ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン
酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、5−ナトリ
ウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウ
ムイソフタル酸等の芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン
酸およびそれらの誘導体、またエチレングリコール、プ
ロピレングリコール、ブチレングリコール、テトラメチ
レングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノー
ル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、
ポリアルキレングリコール、ビスフェノールA、ビスフ
ェノールSのような芳香族、脂肪族、脂環族のジオール
化合物を挙げることができる。
【0013】本発明における溶融紡糸用ポリエステル組
成物は270℃における溶融剪断粘度が下記条件1、2を
満たすことが必要である。 1 剪断速度1.0×10-1sec-1において3.0×103〜8.0×1
03poise 2 剪断速度1.0×103sec-1において8.0×102〜2.0×10
3poise 本発明における溶融剪断粘度の測定法は剪断速度1.0×1
0-1sec-1については円錐−円板の回転粘度計、剪断速度
1.0×103sec-1については毛管粘度計を用いる。なおポ
リエステル組成物の剪断速度1.0×10-1sec-1のような低
剪断域での測定については測定時間が長時間にわたるこ
とから特に試料の経時変化(熱劣化、窒素雰囲気下での
剪断による分子量増加(松尾、石室、日本レオロジー学
会誌 Vol.20 No.4 p.204(1992)))が知られており、この
影響を補正するため本発明では剪断速度を変化させた測
定を4回以上繰り返した後、測定値の時間変化から各々
の剪断速度での試料充填10秒後の値を外挿し、流動曲線
を得て、剪断速度1.0×10- 1sec-1の値を算出する。剪断
速度1.0×103sec-1についても、測定時間は短いもの
の、精度向上の観点から同様の解析から得られる値を用
いる。
【0014】従来、ポリエステル溶融紡糸における繊維
配向形成と溶融粘度の関係や製糸性と溶融粘度の関係は
十分に検討されていなかった。本発明者らはポリエステ
ル溶融紡糸線上での細化挙動と繊維物性、ならびにポリ
エステル流動曲線について検討を行い、本発明に至った
のであるが、図1を用いて以下に説明する。
【0015】ポリエステル溶融紡糸における分子配向は
紡糸張力に影響され、紡糸速度の増加に伴い紡糸張力が
増大し、分子配向が大きくなる。したがって製糸過程に
おいて紡糸速度を増大させても分子配向が抑制された繊
維を得るには、ポリエステル組成物中に変形しにくい部
分を形成させ、この部分に紡糸張力の多くを担わせるこ
とによって達成されると考えられる。すなわち変形しに
くい部分が紡糸張力の多くを担うことにより、それ以外
のポリエステル部分は低張力で変形することができ、配
向が抑制できるのである。したがってポリエステル組成
物中に変形しにくい部分、すなわち、紡糸における変形
様式が伸長変形であることを加味すれば伸長粘度が大き
い部分が少量だけ存在することが重要となる。
【0016】そこで伸長粘度挙動が必要となるが、ポリ
エステルの溶融伸長粘度については未だ十分に測定でき
ないのが現状である。しかしポリオレフィンなどの測定
から伸長粘度には系の最長緩和時間の影響が強く現れる
ことが知られている(A.Minegishi et al,.PPS-14,G1-P0
4(1998))。
【0017】図1に各種ポリエステルの溶融剪断粘度の
剪断速度依存性を模式的に示す。変形様式は異なるが溶
融剪断粘度については種々の測定法が知られており、剪
断速度が十分小さいときに観測される粘度(ゼロ剪断粘
度)には上述した系の最長緩和時間の影響が現れること
も知られている(「化学者のためのレオロジー」小野木
重治著 p.233(1982))。これらに基づき検討を行った結
果、270℃での、1.0×10- 1sec-1程度の剪断速度が十分
に小さい領域での溶融剪断粘度に紡糸時の繊維構造形成
に影響を及ぼすような緩和時間が反映され、図1中のA
に示されるように、この溶融剪断粘度が3.0×103〜8.0
×103poiseと一般的な衣料用ポリエステル(図1のB)よ
りも大きいときに溶融紡糸において得られる繊維の配向
が抑制されることを見出したのである。
【0018】しかし270℃、剪断速度1.0×10-1sec-1
の溶融粘度が単に3000〜8000poiseという値であれば、
いわゆる「高粘度」タイプのポリエステル組成物(図1
のC)に見られる値であり、この場合得られる繊維の配
向は抑制されない。これは分子量の増加により最長緩和
時間が長くなったが、組成物全体として緩和時間が長時
間化したため、上述した「低張力で変形できるそれ以外
の部分」が減少し配向抑制効果が見られなくなったと考
えられる。したがって配向抑制効果を発現させるには最
長緩和時間が長い成分が微量存在し、それ以外の主成分
は通常のポリエステルと同様であることが必要となる。
【0019】本発明者らはさらに検討を進めた結果、1.
0×103sec-1程度の高剪断速度での溶融剪断粘度には最
長緩和時間の影響はほとんど反映されず、主成分の粘度
挙動が反映されることを見出した。かくして、270℃で
のポリエステル組成物の剪断速度1.0×10-1sec-1での溶
融粘度が3.0×103〜8.0×103poiseであることに加え、
剪断速度1.0×103sec-1での溶融粘度が8.0×102〜2.0×
103poise(図1のA)と一般的な衣料用ポリエステル(図
1のB)よりも小さければ紡糸時の繊維構造形成に影響
を及ぼすような緩和時間成分が存在し、かつそれ以外の
主成分は通常のポリエステルと同様であると考えられ、
このようなポリエステル組成物を用い溶融紡糸を行うこ
とで得られる繊維の配向が抑制されるのである。
【0020】本発明のポリエステル組成物を用いると得
られる繊維の配向が抑制されることに加え製糸性も向上
するが、この理由は以下のように考えられる。
【0021】配向を抑制する従来の技術においては、添
加種や添加量の調整に重きが置かれており、条件によっ
ては溶融粘度が大きくなる傾向にあった(図1のE)。こ
の溶融粘度の増加が口金パックでの圧力損失を増加さ
せ、さらに吐出異常を招き製糸性を悪化させると考えら
れる。製糸性に寄与するのは口金パック通過後の吐出挙
動であり、このときの粘度挙動が重要な役割を果たすの
である。ところで口金パックでの圧力損失の大部分は口
金すなわち毛管を通過する際の圧力損失であり、ここで
の剪断速度は毛管のスペックや吐出量によって変化する
ものの103sec-1程度である。上述したように本発明のポ
リエステル組成物では、剪断速度1.0×103sec-1での溶
融粘度には主成分の粘度挙動が反映され、その粘度は8.
0×102〜2.0×103poiseと通常の衣料用ポリエステルと
同等かやや低い値であるため安定した吐出が可能であ
り、かつ口金パックでの圧力損失も減少するため製糸性
が向上すると考えられる。
【0022】本発明のポリエステル組成物の剪断速度1.
0×10-1sec-1での溶融粘度は3.0×103〜8.0×103poise
である。溶融粘度が3.0×103poiseに満たない場合は上
述したように配向抑制効果の発現が不十分である。溶融
粘度が大きいほど配向抑制効果も大きいが、8.0×103po
iseを越えると、流動性が悪化し製糸性に支障をきたす
おそれがある。
【0023】また本発明のポリエステル組成物の剪断速
度1.0×103sec-1での溶融粘度は8.0×102〜2.0×103poi
seである。溶融粘度が2.0×103poiseを越えると配向抑
制効果が不十分となるばかりか口金パックでの圧力損失
の増加、製糸性の悪化を招く。溶融粘度が小さいほど配
向抑制効果、製糸性とも向上するが、8.0×102poiseに
満たない場合には口金での圧力損失が小さくなりすぎ、
分配性の低下等を招き製糸性に悪影響を及ぼすおそれが
ある。
【0024】本発明のポリエステル組成物を得るには、
通常のポリエステルを改質する必要があるが、上述した
ように270℃での剪断速度1.0×103sec-1での溶融粘度が
8.0×102〜2.0×103poise、かつ剪断速度1.0×10-1sec
-1での溶融粘度が3.0×103〜8.0×103poiseであればそ
の手段および添加量は特に限定されるものではなく、例
えばポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等異種ポ
リマのブレンドやトリメリット酸、ペンタエリスリトー
ル等分岐剤の共重合、およびポリエチレングリコールな
ど減粘効果を有する成分の共重合、さらには種々の添加
剤の使用などの手法を単独あるいは併用して用いること
ができる。ただしこれら改質種の添加量が過度に多いと
ポリエステルとしての風合いを損ねるおそれがあるた
め、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレー
ト、エチレンナフタレート、より好ましくはエチレンテ
レフタレートからなる繰り返し単位がポリエステル組成
物全体に対して95重量%以上を占めるよう添加量を調整
することが好ましい。この中では下記一般式1で表され
るジアセタール化合物の0.05〜1.0重量%の割合での添
加が添加量に対する効果の面から最も好ましい。
【0025】
【化2】 本発明のポリエステル組成物を用い溶融紡糸を行うこと
でポリエステル部分配向未延伸糸の生産性が向上され
る。この際の引取速度は特に規定されるものではない
が、3000〜5000m/分とすることで後に続く延伸および
延伸仮撚工程に適切な部分配向未延伸糸を供することが
できる。
【0026】本発明のポリエステル組成物より形成され
る部分配向未延伸糸は、通常のポリエステルより形成さ
れる部分配向未延伸糸に比べて同じ紡糸条件で溶融紡糸
を行ったときに、より低い配向度を示す。したがって同
一の紡糸速度で引き取った場合には延伸および延伸仮撚
時の延伸倍率をより大きくすることができるため、所望
繊度のポリエステル延伸糸および加工糸を得るために必
要な部分配向未延伸糸の繊度をより大きくすることが可
能となり、単位時間当たりの紡糸生産量を向上すること
ができる。
【0027】また通常のポリエステルより形成される部
分配向未延伸糸と同様の配向度を本発明のポリエステル
組成物から得るには、部分配向未延伸糸の紡糸速度をよ
り大きくすることにより実現できる。この場合、所望繊
度のポリエステル延伸糸および加工糸を得るために必要
な部分配向未延伸糸の繊度は、本発明のポリエステル組
成物からなる部分配向未延伸糸と通常のポリエステルか
らなる部分配向未延伸糸ではほぼ同等になるが、本発明
の部分配向未延伸糸はより大きい紡糸速度で得られるた
め、単位時間当たりの紡糸生産性はより向上できる。
【0028】以下実施例により、本発明を具体的かつよ
り詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に制
限されるものではない。なお、実施例中の物性値は以下
の方法によって測定した。
【0029】
【実施例】A.270℃での溶融剪断粘度 低剪断速度域についてはユー・ビー・エム社製Rheosol-
G3000NTを用い、円錐−円板型の回転粘度計にて窒素雰
囲気下で測定した。また高剪断速度域については東洋精
機社製キャピログラフ1Bを用い、毛管粘度計にて窒素
雰囲気下で測定した。各々の測定に際しては剪断速度を
変化させた測定を4回繰り返した後、試料充填後の経時
変化を考慮するため測定値の時間変化から試料充填10秒
後の値を外挿し、流動曲線を得て、剪断速度1.0×103se
c-1および1.0×10-1sec-1の値を算出した。
【0030】B.伸度 オリエンテック社製テンシロン引張試験機を用い、初期
試料長50mm、引張速度400mm/分で測定し求めた。
【0031】C.複屈折率(△n) OLYMPUS社製BH−2偏光顕微鏡コンペンセータ
ーを用い、通常の干渉縞法によって、レターデーション
と繊維径より求めた。
【0032】D.製糸性 実施例における各々の条件で約500kgの部分配向未延伸
糸を試作した際の紡糸糸切れ回数から100kgあたりの糸
切れ回数を計算し、試作中の口金パック圧力損失の経時
変化から圧力損失が25MPaに達する時間(日数)を計算
し、これを口金パック交換周期として製糸性の指標とし
た。なお糸切れには単糸切れの他にローラーへの単糸巻
き付きなども回数に加えた。
【0033】E.紡糸生産性(W84) 実施例で得られた延伸糸の繊度と、その際の紡糸吐出量
から84dTexの延伸糸を得るために必要な紡糸吐出量を以
下の式より算出し、紡糸生産性の指標とした。
【0034】
【数1】 実施例1 テレフタル酸とエチレングリコールを用い通常のエステ
ル化反応を行いビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタ
レート低重合体を得、次いでエチレングリコールに分散
させたビス−O−(p−メチルベンジリデン)ソルビトー
ルをポリマ量に対し0.25重量%添加し重縮合反応を行い
ポリエステル組成物を得た。得られたポリマの溶融粘度
を表1に示す。
【0035】これを1軸エクストルーダーを用い紡糸温
度295℃で孔径0.23mmφ、孔数36の紡糸口金より50g/
分の吐出量で紡出し、4000m/分の紡糸速度で引き取っ
てポリエステル部分配向未延伸糸POYを得た。製糸性
を表1に示すが糸切れも少なく、算出したパック交換周
期も長く製糸性は極めて良好であった。このPOYの繊
度、伸度、△nを表1に示す。
【0036】このPOYを延伸速度800m/分、1ホッ
トローラー温度90℃、2ホットローラー温度120℃で延
伸糸の伸度が約38%となるように延伸した。この際の紡
糸生産性は59.2g/分であった。
【0037】
【表1】 比較例1〜3 重縮合反応時にビス−O−(p−メチルベンジリデン)ソ
ルビトールを添加しないこと以外は実施例1と同様の方
法でポリエチレンテレフタレートを得た。これを紡糸速
度3000、4000、5000m/分としたこと以外は比較例1と
同様の方法で紡糸を行いポリエチレンテレフタレートP
OYを得た。製糸性を表1に示すが、製糸性は良好であ
ったが紡糸速度の増加とともに糸切れ回数が増加してお
り、加えて算出したパック交換周期は実施例1よりも短
かった。これらPOYの繊度、伸度、△nを表1に示
す。紡糸速度の増加に伴い伸度が減少、△nが増加して
おり、POYの配向が増加していることがわかる。また
実施例1と比較例2は同一の紡糸速度であるが、実施例
1の方が伸度が大きく、△nが小さく配向が抑制されて
いることがわかる。
【0038】これらPOYを比較例1と同様の手法で延
伸したところ、延伸倍率は紡糸速度の増加に伴い低下し
たが、紡糸生産性は44.7、45.2、47.7g/分と紡糸速度
の増加に伴い大きくなる傾向であった。しかしいずれの
紡糸速度でも実施例1に比べ生産性は小さい。
【0039】このように通常のポリエチレンテレフタレ
ートでは紡糸速度を増加させるに伴い配向が増加し、延
伸倍率が低下することから紡糸生産性の向上は多くは望
めず、実施例1に比べ生産性向上の程度は極めて小さい
ことが分かる。加えて通常のポリエチレンテレフタレー
トでの製糸性よりも実施例1のポリエステル組成物での
製糸性の方が良好であることが分かる。
【0040】比較例4 重合時間を長くすること以外は比較例1と同様の方法で
重合を行い、高粘度タイプのポリエチレンテレフタレー
トを得た。得られたポリマの溶融粘度を表1に示す。
【0041】これを紡糸速度を実施例1と同様の方法で
紡糸を行いポリエチレンテレフタレートPOYを得た。
製糸性を表1に示す。実施例1に比べ糸切れは同等であ
るが、算出したパック交換周期は短くなった。このPO
Yの繊度、伸度、△nを表1に示す。比較例2に比べ若
干の伸度の減少、△nの増加が見られ、高重合度とする
こでPOYの配向が増加していることがわかる。
【0042】このPOYを実施例1と同様の手法で延伸
したところ、紡糸生産性は41.6g/分と実施例1よりも
小さく、比較例2に比べさらに小さくなった。
【0043】このように通常のポリエステルを高粘度化
させ、270℃での剪断速度1.0×10-1sec-1での溶融粘度
を4.9×103poiseとしても、剪断速度1.0×103sec-1での
溶融粘度が3.1×103poiseであれば得られる繊維の配向
はむしろ増加し、加えてパック交換周期も短くなること
がわかる。
【0044】比較例5 重合時間を短くすること以外は比較例1と同様の方法で
重合を行い、低粘度タイプのポリエチレンテレフタレー
トを得た。得られたポリマの溶融粘度を表1に示す。
【0045】これを実施例1と同様の方法で紡糸を行い
ポリエチレンテレフタレートPOYを得た。製糸性を表
1に示す。実施例1に比べ糸切れは同等であるが、この
場合でも算出したパック交換周期は短くなった。このP
OYの繊度、伸度、△nを表1に示す。比較例2に比べ
若干の伸度の増加、△nの減少が見られ、低重合度とす
ることでPOYの配向が減少していることがわかる。
【0046】このPOYを比較例1と同様の手法で延伸
したところ、紡糸生産性は45.7g/分と比較例2に比べ
若干大きくなったものの、実施例1よりも小さかった。
【0047】このように通常のポリエステルを低粘度化
させ、270℃での剪断速度1.0×103sec-1での溶融粘度を
1.0×103poiseとしても、剪断速度1.0×10-1sec-1での
溶融粘度が1.8×103poiseであれば紡糸生産性の向上は
多くは見込めないことがわかる。
【0048】比較例6 重縮合反応時にエチレングリコールに分散させたコロイ
ダルシリカを、二酸化珪素に換算して、得られたポリエ
ステル組成物に対し2.0重量%添加すること以外は比較
例1と同様の方法で重合を行いポリエステル組成物を得
た。得られたポリマの溶融粘度を表1に示す。
【0049】これを実施例1と同様の方法で紡糸を行い
ポリエステルPOYを得た。製糸性を表1に示すが、糸
切れが多発し、算出したパック交換周期は実施例1に比
べ大幅に短くなり製糸性は不良であった。このPOYの
繊度、伸度、△nを表1に示す。通常のポリエチレンテ
レフタレートである比較例2に比べ伸度の増加、△nの
減少が見られ、POYの配向が減少しているものの、実
施例1に比べその程度は小さい。
【0050】このPOYを実施例1と同様の手法で延伸
したところ、延伸性は不良であったものの紡糸生産性は
48.8g/分と通常のポリエチレンテレフタレートである
比較例2よりも大きいものの実施例1よりも小さかっ
た。
【0051】このようにポリエステルを改質し、270℃
での剪断速度1.0×10-1sec-1での溶融粘度を5.4×103po
iseとしても、剪断速度1.0×103sec-1での溶融粘度が2.
6×103poiseであれば、紡糸生産性は向上するものの糸
切れ発生、パック交換周期の短縮による弊害が発生し、
真の生産性向上は期待できない。
【0052】実施例2 重縮合反応時にトリメリット酸トリメチルをポリマ量に
対し0.20重量%、重量平均分子量約3.0×105のポリスチ
レンを1.0重量%添加すること以外は比較例1と同様の
方法で重合を行いポリエステル組成物を得た。得られた
ポリマの溶融粘度を表1に示す。
【0053】これを紡糸速度を5000m/分とした以外は
実施例1と同様の方法で紡糸を行いポリエステルPOY
を得た。製糸性を表1に示すが、同一の紡糸速度である
比較例3に比べ糸切れも同等であり、算出したパック交
換周期は長くなり製糸性は概ね良好であった。このPO
Yの繊度、伸度、△nを表1に示す。同一の紡糸速度で
ある比較例3に比べ伸度の増加、△nの減少が見られ、
POYの配向が減少していることがわかる。
【0054】このPOYを実施例1と同様の手法で延伸
したところ、紡糸生産性は63.6g/分と比較例3に比べ
非常に大きくなった。
【0055】このように270℃での剪断速度1.0×103sec
-1での溶融粘度が2.0×103poise、剪断速度1.0×10-1se
c-1での溶融粘度が8.0×103poiseであるポリエステル組
成物を用いることにより、同一の紡糸速度でも配向が抑
制されたPOYを得ることができ紡糸生産性を大きく向
上でき、さらに、このようなポリエステル組成物を用い
ることでパック交換周期を長くすることができる。
【0056】実施例3 重縮合反応時に重量平均分子量約1.0×103のポリエチレ
ングリコールをポリマ量に対し3.0重量%、抗酸化剤と
してペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ
−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ
ート]を0.1重量%添加すること以外は比較例1と同様の
方法で重合を行いポリエステル組成物を得た。得られた
ポリマの溶融粘度を表1に示す。
【0057】これを紡糸速度を3000m/分とすること以
外は実施例1と同様の方法で紡糸を行いポリエステルP
OYを得た。製糸性を表1に示すが、同一の紡糸速度で
ある比較例1と糸切れも同等であり、算出したパック交
換周期は大幅に長くなり製糸性は極めて良好であった。
このPOYの繊度、伸度、△nを表1に示す。同一の紡
糸速度である比較例1に比べ伸度の増加、△nの減少が
見られ、POYの配向が減少していることがわかる。
【0058】このPOYを実施例1と同様の手法で延伸
したところ、紡糸生産性は50.6g/分と同様の紡糸速度
である比較例1に比べ大きくなった。
【0059】このように270℃での剪断速度1.0×103sec
-1での溶融粘度が0.8×103poise、剪断速度1.0×10-1se
c-1での溶融粘度が3.0×103poiseであるポリエステル組
成物を用いることにより、同一の紡糸速度でも配向が抑
制されたPOYを得ることができ紡糸生産性を向上で
き、さらに、このようなポリエステル組成物を用いるこ
とでパック交換周期を大幅に長くすることができる。
【0060】
【発明の効果】本発明のポリエステル組成物を用いるこ
とで大きい配向抑制効果を持ち、かつ製糸性に優れた溶
融紡糸、特に部分配向未延伸糸の溶融紡糸が可能となり
生産性の向上が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明および従来のポリエステルの、270℃で
の溶融剪断粘度の剪断速度依存性の例。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J002 CF051 CF061 CF091 CF101 CF141 CF151 EL106 GK01 4L035 BB31 BB33 BB34 BB40 BB77 BB89 EE08 EE20 HH10 JJ17

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】270℃における溶融剪断粘度が下記条件
    1、2である溶融紡糸用ポリエステル組成物。 1 剪断速度1.0×10-1sec-1において3.0×103〜8.0×1
    03poise 2 剪断速度1.0×103sec-1において8.0×102〜2.0×10
    3poise
  2. 【請求項2】エチレンテレフタレートからなる繰り返し
    単位がポリエステル組成物全体に対して95重量%以上を
    占めることを特徴とする請求項1記載の溶融紡糸用ポリ
    エステル組成物。
  3. 【請求項3】下記一般式1で表されるジアセタール化合
    物が0.05〜1.0重量%添加されてなることを特徴とする
    請求項1または2記載の溶融紡糸用ポリエステル組成
    物。 【化1】
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