JP3918069B2 - 二重エヤゾール装置の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は二重エヤゾール装置の製造方法に関する。
従来より、耐圧性を有する容器本体の内部に、可撓性ないし可壊性を有するガスバリヤ性の内袋を収容した二重エヤゾール装置が用いられている。このものは内袋に原液を充填し、内袋と容器本体との間に圧縮ガスからなるプロペラントを充填しており、そのため原液とプロペラントとを互いに混じらないように容器内に充填することができる。なおプロペラントとして液化ガスも使用しうる。このような二重エヤゾール装置における内袋としては、単層ないし複層の合成樹脂シートをブロー成形した立体的な形状を備えた内袋や、アルミ箔ないしアルミと合成樹脂フィルムとのラミネートフィルムを扁平な袋状に成形した折り畳み自在の内袋、あるいはアルミニウムシートをフランジ付きの立体的な円筒状に成形した内袋などがある。そして原液とプロペラントの組み合わせに応じて種々の内袋を採用している。
上記の立体的な形状の合成樹脂製の内袋を用いた二重エヤゾール容器では、原液やプロペラントを充填する場合、まず内袋をその開口部近辺を容器本体のビード部に引っ掛けるようにして容器本体内に吊し、その状態で内袋に原液を充填する。ついでバルブのマウンティングカップを内袋の開口部近辺を挟んでビード部にクリンプし、3者を一体化する。さらに容器本体の底部などに設けたプロペラント充填用の専用バルブから、プロペラントを充填している。また本出願人は先に、内袋の底部に、その内部から外部にのみ流体を通すチェッキバルブを設けておき、内袋、バルブ、容器本体の三者を一体化した後、原液吐出用のバルブを通じて内袋内に圧縮ガスを充填し、ついで容器本体を上下逆に配置して同じバルブを通じて原液を内袋内に充填し、それにより内袋内の圧縮ガスをチェッキバルブを通じて容器本体と内袋の間の空間に押し込む方法を提案している。しかしこの方法は内袋にチェッキバルブを必要とするほか、充填工程で容器本体を上下逆にするなど、煩雑な工程が必要である。
また、折り畳み自在の内袋を用いる二重エヤゾール装置の場合は、バルブのハウジングの下部に内袋の上端開口部を気密に固定し、容器本体内に挿入した折り畳んだ状態の内袋に対してバルブを通じて原液を充填し、さらにバルブと容器本体の開口部の隙間からプロペラントをアンダーカップ充填することができる。その場合は容器本体の底部にプロペラントの充填用バルブを設ける必要はない。
また前記アルミニウムの筒状の内袋を用いる場合は、もともと内袋の外形が容器本体の開口部より小さいので、容器本体とは別個にあらかじめバルブに原液を充填した内袋を固着し、その後に内袋を容器本体内に吊り下げるように保持し、容器本体の開口部と内袋の隙間からプロペラントをアンダーカップ充填することができる。この場合も容器本体の底部に専用のバルブを設ける必要がない。
前述の立体的な形態の合成樹脂製の内袋は比較的厚くすることができるので、折り畳み可能な内袋やアルミニウム製の筒状の内袋に比してガスが漏れにくく、原液を充分に保護することができる。さらに可撓性を有することから容器の開口部より大きく、容器胴部の内面に当接または近接する程度のものを使用することができるので、容量が大きい。しかしその反面、前述のように三者を一体化した後にプロペラントを充填するので、容器本体の底部や内袋に専用のバルブを設ける必要があり、バルブの製造および取り付けコストが高く、さらに一連の充填ラインで原液とプロペラントを充填できないという問題がある。
本発明は立体的な合成樹脂の内袋の利点を損なわず、しかも他の内袋と同じように専用のバルブを省略することができ、シール性を保ちながら、プロペラントを充填することができる製造方法を提供することを技術的課題としている。
本発明のエアゾール装置の製造方法は、耐圧性の容器本体と、その容器本体に挿入され、円筒状の首部とその首部の上端に有する外方向に張り出すフランジ部とを上端近辺に備えた可撓性を有する軟質合成樹脂製の内袋と、その内袋の上端近辺を容器本体の上端開口部との間に挟持するマウンティングカップを備えたバルブと、容器本体と内袋の間に充填されるプロペラントと、内袋の内部に充填される原液とからなり、前記マウンティングカップが前記内袋の首部の内径寸法よりいくらか大きい外径寸法を有する側壁部を備えており、その嵌め合い寸法が、内袋の首部とマウンティングカップの側壁部を密接にシールする嵌合寸法である二重エヤゾール装置を、上部シール部と、下部シール部と、両方のシール部の間に連通するガス充填通路とを備えたプロペラント機構と、容器本体の上部でバルブをホールドし、前記上部シール部を兼ねたホールド機構と、バルブをクリンプするクリンプ機構とを備えており、前記上部シール部を兼ねたホールド機構が、下部シール部に対して上下に摺動自在である充填・クリンプ装置を用いて製造する方法であって、容器本体の内部に内袋を挿入し、内袋の内部に原液を充填し、原液を充填した内袋の首部の内周面をバルブのマウンティングカップの側壁部の外周に嵌合させ前記内袋とバルブとの間をシールし、プロペラント充填機構の下部シール部を容器本体と当接させてシールし、上部シール部を兼ねたホールド機構をバルブの被せ部の外周と嵌合させてシールすると共に、内袋のフランジ部と容器本体の上端との間に隙間があくようにバルブをホールドし、前記ガス充填通路から隙間を介してプロペラントを容器本体と内袋の間に充填し、ついでシール状態を保ったまま上部シール部を兼ねたホールド機構を下降させて、バルブを容器本体のビード部の上面に押圧し、クリンプ機構により内袋の上端近辺を挟むようにバルブのマウンティングカップのまっすぐ延びる円筒状の側壁部の内周側を容器本体のビード部にクリンプさせて容器本体の上端に固着することを特徴としている。
また、このような製造方法であって、フランジ部を容器本体の上端開口部に係合させた状態で原液を充填してもよい。また、内袋として、さらに原液を充填した内袋の重量を保持しうる程度にバルブのマウンティングカップの側壁部の外周面と強く嵌合する内周面を備えた内袋を用い、内袋の内周面をバルブのマウンティングカップの側壁部の外周面と嵌合させた状態で、下部シール部で容器本体を押さえつけたまま、上部シール部を兼ねたホールド機構を上昇させてバルブを少し上昇させることにより、内袋を吊るし上げ、それにより内袋の上端近辺と容器本体の上端との間にプロペラントを充填するための隙間をあけてもよい。さらに、内袋として、容器本体の内底面の上に載置したときに上端部が容器本体の上端よりいくらか突出して隙間を生ずるものを用い、その隙間からプロペラントを充填した後、内袋を縦方向に変形させながらバルブを押し下げて容器本体の上端に固着させてもよい。そして、内袋として、外周表面に縦溝を有する内袋を用い、その縦溝をプロペラントの充填用の通路に利用してもよい。
本発明の二重エアゾール装置の製造方法は、容量が大きいウォールバックタイプの内袋を用いているにも関わらず、アンダーカップ充填によりプロペラントを充填しているので、容器本体の底部に充填専用のバルブを設ける必要がなく、シール性を保ちながら、一連の製造ラインでエヤゾール装置を製造することができる。
つぎに図面を参照しながら本発明の製造方法を説明する。図1は本発明の製造方法に用いられる二重エヤゾール容器の一実施形態の組立前の状態を示す要部断面図、図2はその組み立て途中の状態を示す要部断面図、図3はその組立後の状態を示す要部断面図、図4は製造された二重エヤゾール装置の一実施形態の全体を示す断面図、図5は図4のV-V 線断面図、図6、図7および図8はそれぞれ二重エヤゾールにかかわるバルブの他の実施形態を示す断面図、図9aは二重エヤゾールにかかわる内袋の他の実施形態を示す要部断面図、図9bは図9aのIV-IV 線断面図、図10はその内袋を備えた二重エヤゾール容器のプロペラント充填工程を示す要部断面図、図11は本発明の製造方法のプロペラント充填方法の一実施形態の全体を示す工程図、図12は本発明の製造方法のプロペラント充填方法を示す拡大断面図、図13aおよび図13bはそれぞれ二重エヤゾールにかかわるバルブのさらに他の実施形態を示す側面図および底面図、図14はそのバルブの下側から見た斜視図、図15はエヤゾール容器のさらに他の実施形態を示す断面図である。
まず図1を参照してエヤゾール容器の一実施形態を説明する。図1に示すエヤゾール容器Aにおいて符号1は有底筒状の容器本体であり、2は内袋、3はバルブである。容器本体1は図4に示すように、上端に開口部4を備えた有底筒状の金属製の耐圧容器であり、本実施形態ではアルミニウムなどの1枚の金属板を、円筒状の胴部5、その上端近辺に設けられる円錐状の肩部6、胴部5の下端を塞ぐ底部7からなる有底筒状に一体に成型したものである。肩部5の上端には外側にカーリング加工されたビード部8が設けられている。このものは従来公知の製造法、たとえば深絞り成型、口部絞り成型およびカーリング成型などによって製造することができる。なお金属板を巻いた筒状の胴部の両端に、肩部(ドーム)および底部を接合した3ピース缶などであってもよい。
前記の内袋2はガスバリア性の軟質合成樹脂からなる立体形状を備えた可撓製を有する袋体であり、容器本体1と同じく、ほぼ円筒状の胴部9、円錐状の肩部10および底部11を備えている。さらに肩部の上端には円筒状の首部12を備えており、その上端に外方向に張り出す円板状のフランジ部13を有する。その首部12の長さLはアンダーカップ充填のために内筒2を容器本体1に収容した状態で上下に移動させる余地を与えるためのものである。図4に示す製造されたエヤゾール装置の状態では、内袋2の内部空間K1にはバルブ3を通じて外部に噴出させる原液Gを充填しており、容器本体1と内袋2の間の隙間空間K2には、圧縮ガスなどのプロペラントが充填されている。圧縮ガスをプロペラントとする場合、それらの内部空間K1と隙間空間K2の比率は、通常は80:20〜50:50程度であり、70:30〜60:40程度が好ましい。
図1に示すように、首部12の外径寸法D1は容器本体1のビード部8の内径に対して緩い嵌め合いの寸法、あるいは隙間があく寸法としている。内袋2の胴部9は、容器本体1のビード部8の内径より大きく、本実施形態では内袋2に原液を充填したときに容器本体1の胴部5の内面によってバックアップされるように、容器本体1の胴部5よりもわずかに小さい寸法としている。この点からこの内袋2はいわゆるウォールバックタイプと呼ばれる内袋である。しかし内袋2の胴部9を容器本体1の胴部5よりも充分に小径にしてもよい。内袋2は従来の内袋と同様に、たとえばブロー成型などで成型することができる。通常は内袋2の胴部9には、図5に示すようにプロペラントを内袋2と容器本体1の間に導くための縦向きの凹溝14が設けられている。凹溝14には内袋2がつぶれたとき、原液が流れる上下方向の通路を確保する働きもある。
なお内袋2が可撓性を有するとは、ここでは内袋2の少なくとも胴部9を容器本体1の開口部4から内部に入れることができ、かつ胴部9がプロペラントの加圧力で扁平に押しつぶされる程度に変形が可能であることを意味する。内袋2の材料はとくに限定されないが、たとえばポリエチレン、ポリアミド樹脂(ナイロン)などの合成樹脂、あるいはそれらの積層樹脂、あるいは樹脂とアルミ箔などとの積層樹脂など、従来よりウォールバックタイプの内袋に用いられているものと同じものを採用することができる。内袋2の厚さはたとえば0.2〜0.6mm程度が好ましいが、首部12やフランジ部13を0.2〜1.0mmとし、胴部9を0.2〜0.6mmとし、底部を0.5〜1.0mmとするなど、部位により厚さを変えるようにしてもよい。
前記のバルブ3は、容器本体1の開口部4を塞ぐマウンティングカップ15と、それに保持されるハウジング16およびステムラバー17とを備え、ハウジング16内にはステム18の下部が上下に摺動自在に収容されており、さらにハウジング16の下部にはステム18を常時上方に付勢するバネ19が収容されている。
マウンティングカップ15は金属板のプレス成形品であり、周辺部に内袋2のフランジ部13を介して容器本体1のビード部8に被せられる断面コ字状ないし円弧状の被せ部20が、下向きに開くように設けられている。被せ部20内にはガスケット21が収容されている。しかし内袋2のフランジ部13でシールが充分である場合は、ガスケット21を省略することができる。被せ部20の内周側はそのまま下方に延びて円筒状の側壁部22となっており、その下端から内側に延びて底部23が設けられ、底部23の中央部に有底筒状のハウジング保持部24が立ち上がるように設けられている。ハウジング保持部24の上底部25の中央には、ステム18を通す開口部が形成されている。
マウンティングカップ15の側壁部22の外径寸法D2は、本実施形態では内袋2の首部12の内径寸法D3よりもいくらか大きくしており、それにより内袋2の首部12とはきつめの止まり嵌合になっている。詳しくいえば、マウンティングカップ15の側壁部22の外周面に内袋2を被せたとき、その摩擦力で原液Gを充填した内袋2の重量を充分に保持しうる程度の寸法にしている。なお内袋2の首部12の長さLは前述のようにアンダーカップ充填のときに内袋2の上下動を許すものであるが、この摩擦力を充分な大きさにする働きもある。また内袋2のフランジ部13の外径はマウンティングカップ15の被せ部20の外壁26の内径よりわずかに大きくしており、そのためこの部位でも内袋2の重量を保持する摩擦力を生ずる。ただし前述の側壁部22との摩擦力の方が大きく、重要である。
バルブ3のハウジング16、ステムラバー17、ステム18およびバネ19は従来公知のものをいずれも使用し得る。本実施形態では、ハウジング16は合成樹脂製の有底筒状の形態を有し、上端周辺に、マウンティングカップ15のハウジング保持部24と係合する突起部27を備え、下端に連通孔28および筒状のディップチューブ取りつけ部29を備えている。なお二重エヤゾール装置ではとくにディップチューブは必要でないが、内袋2がつぶれた後に原液吐出時の通路を確保するためにディップチューブを設けてもよい。ステムラバー17はステム18の外周に嵌められる内孔を有する円盤状のゴムないし軟質合成樹脂製の弾性部材である。ステム18は上部が原液の噴出時の通路となる内部通路30を有する筒状にされ、ステムラバー17の内孔と嵌合する環状溝31を介した下部にはハウジング内部を上下にスライドする案内部32およびバネ19と係合する溝33が設けられている。環状溝31の内底部には内部通路30と連通する小孔34が設けられている。
上記のように、このエヤゾール容器Aでは、内袋2に首部12およびフランジ部13を設けた点、およびそれらの寸法をマウンティングカップ15の被せ部20の寸法との関係で特定の嵌合寸法に設定した点に特徴があり、他の部分については従来のものと同じものを使用しうる。つぎに図1、図2および図3を参照しながら上記のように構成されるエヤゾール容器Aに対して原液およびプロペラントを充填する方法を説明する。
まず内袋2をその可撓性を利用して容器本体1の開口部4から内部に入れ、フランジ部13をビード部8に引っ掛けるようにして吊す(図1の実線の状態)。その状態で内袋2の開口部から原液(図4の符号G)を充填する。このことからわかるように、本実施形態ではフランジ部13や首部12は原液の重量を充分に支えることができる程度の強度および剛性を備えている。
ついでバルブ3を容器本体1の上端に被せ、マウンティングカップ15の側壁部22を内袋2の首部12の内部に嵌入する。そのとき側壁部22と首部12がしっかり嵌合し、原液Gの重量を充分支持することができる。その状態でバルブ3を少し持ち上げ、図2に示すように内袋2のフランジ部13をビード部8から浮かせる。そしてその隙間Pからプロペラントを容器本体1と内袋2の間にアンダーカップ充填する。そのとき、内袋2の首部12とマウンティングカップ15の側壁部22とが気密に嵌合している。そのためプロペラントを高圧で充填するとき、内袋2の内部に入ることはない。なお図2における符号36および37はマウンティングカップ15をビード部8にクリンプする装置を兼ねた充填装置である。プロペラントとしては通常、窒素、空気、炭酸ガス、さらにヘリウムなどの不活性ガスを圧縮した圧縮ガスが用いられる。しかし場合により、プロパン、ブタンなどの液化ガスも使用しうる。
プロペラントの充填が終了した後、バルブ3を下降させてその被せ部20でガスケット21および内袋2のフランジ部13をビード部8に押しつけ、クリンプ装置37でマウンティングカップ15の側壁部22を部分的に内側に突出させるクリンプ加工を行う。それにより図3に示すように、マウンティングカップ15、すなわちバルブ3が容器本体1のビード部8に固定される。そして内袋2とバルブ3の側壁部22の間の気密性、および容器本体1と内袋2の間の空間の気密保される。これによりエヤゾール容器Aが組み立てられると共にエヤゾール装置が完成する。
上記のように本実施形態の製造法は、ウォールバックタイプの内袋2を採用しているにも関わらず、アンダーカップ充填によりプロペラントを充填することができるので、容器本体1の底部7に充填専用のバルブを設ける必要がなく、しかも充填・クリンプ装置36、37は、他のエヤゾール装置のものをほとんどそのまま使用することができ、一連のラインでエヤゾール装置を製造することができる。
図6はエヤゾール容器に用いるバルブの他の実施形態を示している。このバルブ38ではマウンティングカップ15を金属板の内面側(エヤゾール容器の内部側)に合成樹脂フィルム39をラミネートしたラミネート金属板から形成している。合成樹脂フィルム39としては、厚さ20〜200μm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリプロピレン(PP)、などの樹脂の単独フィルムあるいは積層フィルムを使用することができる。なお、このバルブ38のハウジング16では、ディップチューブ取り付け部(図1の符号29参照)を省略し、原液の通路として、4〜6本のスリット40を放射状に配設している。このスリット40はとくに高粘度の原液を充填する場合、および噴出させる場合に都合がよい。
このようなバルブ38を採用すると、内袋2のフランジ部13に加えて合成樹脂フィルム39がマウンティングカップ15と容器本体1のビード部8との間をシールするので、独立した部品であるガスケット(図1の符号21)を使用する必要がなく、そのためエヤゾール容器の組立作業が容易になる。さらにガスケット21がある場合はその弾力性で内袋2がマウンティングカップ15の側壁部22から抜け易くなることがあるが、本実施形態ではガスケット21を使用していないので、内袋2の保持力が一層向上する。
図7に示すバルブ42はマウンティングカップ15の被せ部20の内面から側壁部22にかけてゴムライニング43を設けている点に特徴がある。ゴムライニング43は厚さ0.5〜1.0mm程度とするのが好ましい。そのゴムライニング43は、独立した部品であるガスケット21と異なり、たとえばマウンティングカップ15をプレス成型した後、未加硫のゴムを塗り、ついで加硫することによりマウンティングカップ15の金属板と一体化したものである。なおゴムに代えて軟質合成樹脂を採用してもよい。
このバルブ42は側壁部22の周囲に内袋2を嵌合させるとき、内袋2とゴムライニング43の摩擦力が大きいので、原液の重量をより確実に保持することができる利点がある。また内袋2とマウンティングカップ15の間のシール性も一層向上させることができる。
図8に示すバルブ45はマウンティングカップ15の被せ部20の外壁26の内面および側壁部22の下部に、横向きの、すなわち円周方向に延びるリブ46、47を備えている。リブ46、47は部分的に形成してもよく、また完全な環状に形成してもよい。また外壁26の内面または側壁部22のいずれか一方だけに設けてもよい。このバルブ45においても、側壁部22の外周に内袋2を嵌着するときに、内袋2とリブ46、47とがしっかりと係合するので、内袋2を保持する力を大きくすることができる利点がある。
前記実施形態の製造法では、内袋2のフランジ部13を容器本体1のビード部8に引っ掛けて内袋2の開口部から原液Gを充填しているが、そのときにバルブ3を通じて、すなわちバルブ3のステム18の内部通路30から原液を充填するようにしてもよい。また内袋2の重量は内周面とマウンティングカップ15の側壁部22の外周面との間の摩擦力で保持しているが、場合により内袋と側壁部との間に即効性の接着剤を介在させ、接着剤の力で重量を保持させるようにすることもできる。
図9aおよび図9bに示す内袋2Aは、図1の内袋2と実質的に同じ形態を有し、ほぼ円筒状の胴部9、円錐状の肩部10および底部を有する。さらに肩部10の上端には円筒状の首部12を備えており、その上端にフランジ部13を有する。この内袋2Aの特徴は、首部12から肩部10にかけて縦方向の溝48を形成している点である。溝部48は首部12の下半分から肩部12の上1/3程度の範囲に設けるのが好ましい。
溝48は内袋2Aの外周面に等間隔で1〜10本、好ましくは4〜8本程度設ける。なお溝48は内袋2の厚さを部分的に薄くすることにより形成し、図5の凹溝14のように厚さを変えずに変形させて形成するものではない。すなわち首部12の内面は図10に示すようにマウンティングカップ15の側壁部22に嵌合させるので、平滑にするのが好ましい。溝48の深さDpは、たとえば内袋の首部の厚さTの1/5〜1/3程度とし、さらに好ましくは1/4程度とする。また溝48の幅Wはたとえば0.5〜5mm程度とする。
上記のごとく構成される内袋2Aは、図1〜2などの充填方法にそのまま使用することができる。すなわち図10に示すように、内袋2Aをバルブ3の側壁部22に嵌合させ、容器本体1のビード部8から少し持ち上げて隙間Pからプロペラントを充填するとき、溝48がビード部8の上方から下方まで連通しているので、プロペラントが溝48を通って容器本体1と内袋2の隙間空間K2にスムーズに入っていく。そのため充填作業が容易であり、逆にいえば、内袋2Aと容器本体1の嵌合をきつくしてもスムーズな充填が確保されることになる。
プロペラントの充填後は、バルブ3を下降させてマウンティングカップ15の被せ部20を容器本体1のビード部8に当接させると、溝48がない首部12の上部がビード部8の内面と当接する。それにより溝部48による上下の連通がなくなり、気密性が確保されることになる。
図11は本発明の製造方法のプロペラント充填方法の一実施形態の全体の工程を示している。図11の左端に示すガスを充填する前の工程S1では、容器本体1の内部に内袋2を挿入し、内袋2の内部空間K1に原液を充填し、内袋2の上端にバルブ3を嵌合させる。この工程S1ではまだバルブ3をクリンプしていない。なおこの実施形態では、内袋2の上端のフランジ部を容器本体1のビード部に引っ掛けたとき、内袋2の底部11が容器本体1の底部7ないしそれに形成したリブによって支えられる高さにしている。そのため内袋2に充填した原液の重量はフランジ部13だけでなく、底部11によっても支持される。したがって内袋2が安定している。
さらにこの工程S1では、容器本体1などの上部に、バルブ3をホールドするホールド機構50と、プロペラント充填機構51と、バルブをクリンプするクリンプ機構52とを備えた充填・クリンプ装置53が待機している。プロペラント充填機構51は、図12に詳細に示すように、容器本体1の肩部6と当接してシールする下部シール部54と、バルブ3の被せ部20と当接してシールする上部シール部55とを備えており、両方のシール部54、55の間に連通するガス充填通路56を有する。またホールド機構50は上部シール部55と合体させており、その両者は下部シール部54に対して上下に摺動自在である。各シール部54、55は軟質樹脂またはゴムなどの弾性材料のリングで構成しうる。
図11に戻って、上記の充填前の工程S1の後、充填・クリンプ装置53が下降し、下部シール部54が容器本体の肩部6に当接して押えつけると共にシールし、同時にホールド機構50がバルブの被せ部20の外周に嵌合してシールおよびホールドする工程S2が行なわれる。
ついで下部シール部54で肩部6を押えつけたまま、上部シール部55とホールド機構50とがわずかに上昇し、バルブ3およびそのバルブ3に嵌合された内袋2を吊り上げると共に、ガス充填通路56から窒素ガスなどの圧縮ガスを充填する工程S3を行なう。このときバルブ3を持ち上げても容器本体1は下部シール部54で押えているので上昇しない。
そのとき図12に詳細に示すように、バルブ3の被せ部20は上部シール部55でシールされ、容器本体1の肩部6は下部シール部54でシールされている。また内袋2とバルブ3との間は内袋2の首部12の内面とマウンティングカップの側壁部22の密接によりシールされている。そしてバルブ3が吊り上げられたことにより、内袋2のフランジ13は容器本体1のビード部8から離れている。そのため圧縮ガスは、首部12とビード部8との間を通って、内袋2と容器本体1の間の隙間空間K2に充填される。
なお図11の工程S3に示すように、このときは内袋2の底部11は容器本体1の底部7から離れている。しかし内袋2を上下方向にいくらか伸縮可能に構成し、フランジ部13をたとえば2〜3mm程度持ち上げても内袋2の底部11が容器本体1の底部7から離れないようにしてもよい。そうすることにより内袋2を安定して保持しうる。内袋2を上下に伸縮可能にするには、内袋2自体の弾性変形による撓みを利用すればよいが、部分的に蛇腹状にするなどにより、変形量を増大させる形状を採用することもできる。
ついで図11の右端の工程S4に示すように、上記のシール状態を保ったまま、上部シール部55およびホールド機構50が下降してバルブ3をビード部8の上面に押圧し、クリンプ機構52のコレット57が下降して拡げられ、バルブ3を容器本体1にクリンプする。そのとき同時に内袋2が被せ部20とビード部8の間に挟みつけられ、内袋2の内部空間K1も、内袋2と容器本体1の間の隙間空間K2もシールされる。その後はコレット57が再び狭められ、充填・クリンプ装置53が上昇して、つぎの容器本体の装填を待つことになる。
ところで図12に示すバルブ3は、ハウジング16の下方に内袋2を破るための尖突起を備えたガス抜き部材58を設けている。このガス抜き部材58は、図13aおよび図13bに詳細に示すように、略四角形状の板材の下面の4隅に三角錐状の尖突起59を備えた、たとえば合成樹脂製の部材であり、中央部にハウジング16を貫通させる孔60を有する。図13は尖突起59の形状を分かり易く示すための下側から見た斜視図である。図12ではガス抜き部材58を止めリング61でハウジング16に固定している。
従来の容器本体1の底部にプロペラント充填用の専用バルブを設けた二重エヤゾール容器では、そのバルブをガス抜きのために使用することができるが、本発明のエヤゾール容器の場合は専用バルブを設けないため、このようなガス抜き部材58を設けることが有用である。
図15に示すエヤゾール容器では、内袋2は、その底部11を容器本体1の底部7に着けた状態でフランジ部13がビード部8より2〜3mm上側に来て隙間Pがあく高さにしている。したがって図11のガス充填工程S3においてバルブ3を持ち上げたときでも原液の重量が容器本体1によって支えられ、安定している。なお、バルブ3を容器本体1にクリンプする工程S4では、バルブ3を下側に押し付けるときに内袋2を縦方向に弾力的に撓ませればよい。
二重エヤゾール容器の一実施形態の組立前の状態を示す要部断面図である。 そのエヤゾール容器の組み立て途中の状態を示す要部断面図である。 そのエヤゾール容器の組立後の状態を示す要部断面図である。 二重エヤゾール装置の全体を示す縦断面図である。 図4のV-V 線断面図である。 二重エヤゾール容器に用いるバルブの他の実施形態を示す要部断面図である。 二重エヤゾール容器に用いるバルブのさらに他の実施形態を示す要部断面図である。 二重エヤゾール容器に用いるバルブのさらに他の実施形態を示す要部断面図である。 図9aは本発明にかかわる内袋の他の実施形態を示す要部断面図、図9bは図9aのIV-IV 線断面図である。 図9の内袋を備えた二重エヤゾール容器のプロペラント充填工程を示す要部断面図である。 本発明の製造法の一実施形態の全体を示す工程図である。 図11の製造法におけるプロペラント充填工程を示す拡大断面図である。 図13aおよび図13bはそれぞれ本発明にかかわるバルブのさらに他の実施形態を示す側面図および底面図である。 そのバルブの下側から見た斜視図である。 本発明のエヤゾール容器のさらに他の実施形態を示す断面図である。
符号の説明
A 二重エヤゾール容器
1 容器本体
2 内袋
3 バルブ
8 ビード部
12 首部
13 フランジ部
15 マウンティングカップ
38 バルブ
39 合成樹脂フィルム
42 バルブ
43 ゴムライニング
45 バルブ
46 リブ
47 リブ
S1 充填前の工程
S2 バルブをホールドする工程
S3 バルブを持ち上げてガス充填する工程
S4 バルブをクリンプする工程

Claims (5)

  1. 耐圧性の容器本体と、その容器本体に挿入され、円筒状の首部とその首部の上端に有する外方向に張り出すフランジ部とを上端近辺に備えた可撓性を有する軟質合成樹脂製の内袋と、その内袋の上端近辺を容器本体の上端開口部との間に挟持するマウンティングカップを備えたバルブと、容器本体と内袋の間に充填されるプロペラントと、内袋の内部に充填される原液とからなり、前記マウンティングカップが前記内袋の首部の内径寸法よりいくらか大きい外径寸法を有する側壁部を備えており、その嵌め合い寸法が、内袋の首部とマウンティングカップの側壁部を密接にシールする嵌合寸法である二重エヤゾール装置を、上部シール部と、下部シール部と、両方のシール部の間に連通するガス充填通路とを備えたプロペラント充填機構と、容器本体の上部でバルブをホールドし、前記上部シール部を兼ねたホールド機構と、バルブをクリンプするクリンプ機構とを備えており、前記上部シール部を兼ねたホールド機構が、下部シール部に対して上下に摺動自在である充填・クリンプ装置を用いて製造する方法であって、容器本体の内部に内袋を挿入し、内袋の内部に原液を充填し、原液を充填した内袋の首部の内周面をバルブのマウンティングカップの側壁部の外周に嵌合させ前記内袋とバルブとの間をシールし、プロペラント充填機構の下部シール部を容器本体と当接させてシールし、上部シール部を兼ねたホールド機構をバルブの被せ部の外周と嵌合させてシールすると共に、内袋のフランジ部と容器本体の上端との間に隙間があくようにバルブをホールドし、前記ガス充填通路から隙間を介してプロペラントを容器本体と内袋の間に充填し、ついでシール状態を保ったまま上部シール部を兼ねたホールド機構を下降させて、バルブを容器本体のビード部の上面に押圧し、クリンプ機構により内袋の上端近辺を挟むようにバルブのマウンティングカップのまっすぐ延びる円筒状の側壁部の内周側を容器本体のビード部にクリンプさせて容器本体の上端に固着する、二重エヤゾール装置の製造法。
  2. 前記フランジ部を容器本体の上端開口部に係合させた状態で原液を充填する請求項1記載の製造法。
  3. 前記内袋として、さらに原液を充填した内袋の重量を保持しうる程度にバルブのマウンティングカップの側壁部の外周面と強く嵌合する内周面を備えた内袋を用い、内袋の内周面をバルブのマウンティングカップの側壁部の外周面と嵌合させた状態で、下部シール部で容器本体を押さえつけたまま、上部シール部を兼ねたホールド機構を上昇させてバルブを少し上昇させることにより、内袋を吊るし上げ、それにより内袋の上端近辺と容器本体の上端との間にプロペラントを充填するための隙間をあける請求項1記載の製造法。
  4. 前記内袋として、容器本体の内底面の上に載置したときに上端部が容器本体の上端よりいくらか突出して隙間を生ずるものを用い、その隙間からプロペラントを充填した後、内袋を縦方向に変形させながらバルブを押し下げて容器本体の上端に固着させる請求項1の記載の製造法。
  5. 前記内袋として、外周表面に縦溝を有する内袋を用い、その縦溝をプロペラントの充填用の通路に利用する請求項1、2、3または4記載の製造法。
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