JP3917940B2 - 斜面歩行用部材付き靴 - Google Patents
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Description
技術分野
本発明は、靴に関し、特に、斜面又は坂道を上り下りするときあるいは斜面又は坂道に対して横方向に平行に移動するときに、より自然な姿勢を保つことができる登山靴に関する。
背景技術
人が平坦な土地を歩行する場合にはその人が履いている靴等の履物の底(以下、「靴底」で代表する)は概ね水平に保たれており、当該人の重心は概ね踵の真上にあるのが通常である。この状態は最も自然に歩行しやすい姿勢である(以下、「自然体」という)。
これに対し、人が斜面や坂道を登る場合には、靴底は概ね斜面と同じ角度でつま先が上を向くことになる。このため、当該人は自然体で歩行することができず、自然体を維持するためには靴底の後部、特に踵部分を高くして靴底を斜面に対し概ね水平にすることが必要である。
従来、登山靴に関するもので、その登山靴の踵部に補助踵を取り付けている登山靴用取付具があった(実公昭第42−11251号)。
また、上記考案の欠点を改良するものとして、取付具を土踏まずに当接し、底面が略半円形状である登山用取付器具があった(実開昭第62−196004号)。この考案についての明細書には、踵ではなく土踏まずで体重を支えるため、土踏まず部周辺の筋肉疲労及び脚部疲労を軽減できるという効果も有する旨の記載がある。
靴の踵部に補助踵を取り付ける登山靴には、サイズ毎の取付具が必要であるという欠点がある。
また、略半円形状の登山用取付器具は、上記登山靴用取付具同様に通常の登山靴に対して別途取付具が必要であり、平坦地を歩く際には、それを取り外して持ち歩き、斜面にさしかかるとそれを取り付けなければならないという問題がある。
また、確かに土踏まずで体重を支えることにより、土踏まず部周辺の筋肉疲労を軽減できるかもしれないが、体重のかかる2つの支点が近くなることによる不安定感から、逆に脚部、特に重心直下の踵部やふくらはき部の筋肉疲労を増大するであろうという問題もある。
ところで、上記と同様な考えにより、反対に斜面を下る場合には、靴底の前部、特につま先部分の高さを高くして、靴が斜面に接地したときの靴底を概ね水平になるようにできるとよいであろう。
さらに、斜面に対して横方向に平行に歩く場合にも、両足の靴の谷側の側面の高さを高くして、靴が斜面に設置したときの靴底を概ね水平になるようにできるとよいであろう。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、靴底の踵及びつま先部分の高さ、並びに靴底の側面部の高さを調節して自然体に近い姿勢により斜面の上り下りあるいは斜面に平行に歩行することを可能にするための部材を備える靴を提供することを目的とする。
発明の開示
上記課題を解決するために、本発明の一実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、靴の踵部の両側面及び底面を囲むように嵌合されるU字型の台部材であって、U字型台部材の両端部から上方に延びるアームのほぼ中央には前記靴の踵部の側面から外方向に向かって延びる軸が取り付けられた台部材と、
前記台部材よりもアームが長いU字型の取付部材であって、その両アームのほぼ中央には前記台部材の軸を差し込むための軸穴を有し、底辺部は前記両アームのそれぞれの一端附近に結合される取付部材と、
前記台部材の軸に係合することにより、前記台部材に前記取付部材を接合することができる固定部材とを備え、
斜面を上るときには、前記取付部材のアームが靴の側面から見て靴底に対して略垂直になるように前記固定部材で前記台部材に前記取付部材を接合することにより、前記靴の踵部分の高さを調節できることを特徴としている。
また、その実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、上り斜面の傾斜角に対応して、前記靴底に対する前記取付部材のアームの角度を略垂直の位置から後方に向けて少なくとも90°の間で回転することにより調整できるものであってもよい。
そして、その実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、前記取付部材のアームが、中央に軸穴を持つ固定部材と、長手方向に向かって延びるスライド用の縦穴を持つスライド部材とから構成されてもよく、この場合、前記取付部材の底辺部が、前記スライド部材のそれぞれの下端又はその附近の部位に結合され、前記スライド部材は、上り斜面の傾斜角に対応して、靴底に対し上下方向にスライドできてもよい。
また、前記スライド部材はその縦穴に平行にもう一つの縦穴を設け、前記固定部材は、対応する前記スライド部材の縦穴に平行する該スライド部材の縁に沿って、前記スライド部材を包み込むことができる枠を有する等、あるいは、前記固定部材に軸穴からその固定部材の幅方向所定の距離にその縦穴に嵌合する位置に小さな突起を設け、このもう一つの縦穴に小さな突起が嵌合できる等、両者の平行関係を確保する手段を設けてもよい。
ここで、上記いずれの実施の形態においても、斜面歩行用部材付き靴は、前記取付部材の軸穴から底辺部までの長さが、前記靴の踵部分の側面の水平方向における長さの少なくとも半分強以上である必要がある。
そして、前記台部材の前記軸は、該台部材の両アーム及び前記靴の踵部を貫通する一本の軸であってもよい。
さらに、上記のいずれかの斜面歩行用部材付き靴の前記固定部材は、前記台部材の軸と螺合する雌ねじを有していてもよく、あるいは、前記台部材の軸から所定の距離だけ離隔して位置し、バネの偏圧によって台部材のアーム外側に突出する1個の突起を設け、この突起と係合する複数の貫通ホールを円周方向に相互に離隔して持つリングを前記取付部材のアームに固定するとともに、台部材の軸に回転自在に固定し、リング及び取付部材のアームを回転しその突起とリングのホールとの係合によって取付部材のアームを必要な角度で固定し、突起はリングホールの外側から内側へ押し込むことによってリングのホールとの係合を解くように構成してもよい。
本発明のもう一つの実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、靴の靴底に対して垂直にその靴の背面に係合される1以上の中空のシリンダーと、
前記シリンダーの内部をスライドすることができる該シリンダーの数と同数のアーム部からなる取付部材と、
前記シリンダーと前記アーム部の各対において、該シリンダーに対し該アーム部を所望する位置に接合する固定部材とを備え、
斜面を上るときには、斜面の傾斜角に対応して、前記取付部材をスライドさせて前記固定部材で所定の位置に接合することにより、前記靴の踵部分を所定の高さに調節できることを特徴としている。
また、その実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、前記中空のシリンダーが1以上の円筒形又は角筒形であり、該シリンダーが複数個である場合、これらのシリンダー内をスライドする複数個のアーム部は、底辺部によってその下端附近のすべてを結合されてもよい。また、この斜面歩行用部材付き靴は、前記固定部材が前記アーム部を前記シリンダーに対して固定する雄ネジであり、該シリンダーがこの雄ネジを螺合するためにその内表面にネジ溝を備える小穴を有することとしてもよく、この場合、前記アーム部の表面には、前記ネジが嵌合する複数の凹部あるいは横溝を備えてもよい。
前記シリンダーが複数個ある場合、すべてのシリンダー内の同じ高さの適当な位置に水平方向に位置する一本の棒で連結したシリンダー内部に突出することができるバネで偏圧したそれぞれ1個のバネ式突起を設け、これらのすべての突起を一本の棒で連結し、シリンダー内を上下する取付部材の前記アームのすべてにはこの突起と係合する複数個の凹部又は穴を設け、このバネ式突起をシリンダーの外方に偏圧して該アームを上下し、所定の高さで該バネ式突起をアームの凹部又は穴と係合させるようにバネの偏圧を開放することによりその位置で取付部材を固定し、バネ突起をシリンダー外方に向かって引っ張ることにより該アームの凹部との係合を解いてもよい。
本発明のさらなる実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、靴のつま先部の側面及び底面を囲むように嵌合されるU字型の台部材であって、U字型台部材の底辺部の両端部から上方に延びるアームを有し、該アームのほぼ中央には前記靴のつま先部の側面から外方向に延びる軸が取り付けられた台部材と、
前記台部材よりもアームが長い、2個のアームを有するU字型の取付部材であって、その両アームのほぼ中央には前記台部材の軸を差し込むための軸穴を有る取付部材と、
前記台部材の軸に係合することにより、前記台部材に前記取付部材を接合することができる固定部材とを備え、
斜面を下るときには、前記取付部材のアームが靴底に対して略垂直になるように前記固定部材で前記台部材に前記取付部材を接合することにより、前記靴のつま先部分の高さを調節できることを特徴としている。
また、その実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、下り斜面の傾斜角に対応して、前記靴底に対する前記取付部材のアームの角度を略垂直の位置から前方に向けて少なくとも90°の間で回転することにより調整できるものであってもよい。
そして、その実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、前記取付部材が、中央に軸穴を持つ2つの固定部材と、長手方向に延びるスライド用の縦穴を持つ2つのスライド部材とから構成されてもよく、この場合、前記取付部材の底辺部が、前記スライド部材のそれぞれの下端附近に結合され、前記スライド部材は、下り斜面の傾斜角に対応して、靴底に対し下方向にスライドできるように設けられてもよい。
また、前記固定部材は、対応する前記スライド部材の縦穴に平行する該スライド部材の両辺の縁に沿って、前記スライド部材を包み込むことができる枠を有する等、あるいは、前記固定部材に軸穴から該固定部材お幅方向所定の距離に小さな突起を有し、前記スライド部材にその縦穴に平行にもう一つの縦穴を設け、このもう一つの縦穴に小さな突起が嵌合できる等、両者の平行関係を確保する手段を設けてもよい。
ここで、その実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、前記取付部材の軸穴から底辺部までの長さが、前記靴のつま先部分の側面の水平方向における長さの少なくとも半分以上であってもよい。そして、前記台部材の前記軸は、該台部材の両アーム及び前記靴のつま先部を貫通する一本の軸であってもよい。
さらに、上記のいずれかの斜面歩行用部材付き靴において、前記固定具は、前記台部材の軸と螺合する雌ねじを有していてもよく、あるいは、前記台部材の軸から所定の距離に位置し、バネの偏圧によって台部材のアーム外側に突出する1個の突起を設け、この突起と係合する複数の貫通ホールを円周方向に相互に離隔して持つリングを前記取付部材のアームに固定するとともに、台部材の軸に回転自在に固定し、リング及び取付部材のアームを回転し突起とリングのホールとの係合によって取付部材のアームを必要な角度で固定し、突起はリングのホールの外側から内側へ押し込むことによってリングのホールとの係合を解いてもよい。
本発明のさらなる実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、上述されたいずれかの実施の形態における斜面歩行用部材付き靴の各部材をそれぞれに応じて靴のつま先部及び踵部に備える構成としてもよい。
さらに、本発明の別の実施態様においては、前記台部材の両アームの形状をその上端において直角に後方に曲がりその先端が概ね靴底の最後部に達するプレート状としの先端近くに前記の台部材の第一の軸と同様な第二の軸を設け、取付部材の固定部材には軸穴と反対の端近くに該固定部材より長さがやや小さい筋交い部材の一端を回転自在に接合し、この筋交い部材の長手方向の一側方に複数の凹型切り込みを設け、この切込みを前記プレート先端近くの第二の軸に係合させ固定具で固定することにより取付部材のアームを必要な角度で固定する[筋交い部材を使用しないときは該部材の他の端は切込みを第一の軸に係合させて固定する]ことを特徴とする請求項1乃至9に記載の斜面歩行用部材付き靴
本発明のさらにもう一つの実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、靴の土踏まず部分の両側面及び底面を囲むように嵌合されるU字型の台部材であって、該台部材の土踏まず部分の側面及びその反対側面から上方に延びる両プレート部には、1以上の円筒形あるいは角筒形の中空のシリンダーが該プレート部の横幅に対し所定の位置に該プレート部の長手方向にそれぞれ取り付けられている、台部材と、
前記シリンダーの内部をスライドすることができる該シリンダーの数と同数のアーム部からなる、前記両プレート部にそれぞれ取り付けられる2つの取付部材と、
前記シリンダーと前記アーム部との各対において、該シリンダーに対し該アーム部を所望する位置に接合する固定部材とを備え、
斜面に対して概ね水平方向に歩くときには、斜面の傾斜角に対応して、両足の靴の双方の谷側の前記取付部材をスライドさせて前記固定部材で所定の位置に接合することにより、前記靴底部分を概ね水平に保ち、歩行を容易にすることを特徴としている。
また、その実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、前記台部材の中空のシリンダーが1以上の円筒形又は角筒形であり、該シリンダーが複数個である場合、これらのシリンダー内をスライドする複数個のアーム部は、底辺部によってそのすべてのアーム部の下端附近を結合されてもよい。また、この斜面歩行用部材付き靴は、前記固定部材は、前記アーム部を前記シリンダーに対して接合して固定する雄ネジであり、該シリンダーは、この雄ネジを螺合するためにその内表面にネジ溝を備える小穴を有することとしてもよく、この場合、前記アーム部の表面には、前記雄ネジが嵌合する複数の凹部あるいは横溝を備えてもよい。
前記シリンダーが複数個である場合、すべてのシリンダー内の同じ高さの適当な位置に水平方向に位置する一本の棒で連結したシリンダー内部に突出することができるバネで偏圧したそれぞれ1個のバネ式突起を設け、シリンダー内を上下する取付部材の前記アームのすべてにはこの突起と係合する複数個の凹部又は穴を設け、そのバネ式突起をシリンダーの外方に偏圧して該アームを上下し、所定の高さで該バネ式突起をアームの凹部又は穴と係合させるようにバネの偏圧を開放することによりその位置で取付部材を固定し、バネ式突起をシリンダー外方に向かって引っ張ることにより該アームの凹部との係合を解いてもよい。
本発明のさらなる実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、上述の靴の側面にシリンダーを備えるいずれかの斜面歩行用部材付き靴に、上述の靴の踵部分に台部材、取付部材、及び固定部材を備える実施の形態における斜面歩行用部材付き靴の各部材、あるいは、上述の靴の背面にシリンダーを備える実施の形態における斜面歩行用部材付き靴の各部材のいずれかと、上述の靴のつま先部分に台部材、取付部材、及び固定部材を備える実施の形態における斜面歩行用部材付き靴の各部材とを一方又は両方備える構成としてもよい。
したがって、本発明に係る斜面歩行用部材付き靴を履くことにより、斜面の傾斜によらずおよそ一般的な斜面の上り又は下りの際あるいは斜面に平行に歩行する際に、最も自然に歩行しやすい姿勢で歩行することができる。
また、部材は収納あるいは格納可能であるので、斜面を上り下りするとき以外の平坦な場所を歩行する際にも、取付具を持ち歩かなくてよい。このため、当該靴のユーザーの利便性を増すことができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、図1〜図12を参照して本発明に係る斜面歩行用部材付き靴の第1〜第4の実施の形態を詳細に説明する。なお、いずれの実施の形態においても、説明の便宜上、場合により靴として登山靴を用いて説明する。
最初に、斜面を上る場合に用いられる、踵部分を高くすることができる登山靴について説明する(第1及び第2の実施の形態)。
(第1の実施の形態)
まず、図1〜4を参照して、本発明の第1の実施の形態の構成を説明する。
図1〜図3は、本発明を適用した第1の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴1の歩行用部材の構成を示す図である。これらの図において、斜面歩行用部材付き登山靴1は、登山靴以外に、台部材11、雌形止めネジ12a及びこれに螺合する雄形ネジ付き軸12b、U字型部材アーム固定部材13、U字型部材アームスライド部材14、並びに、U字型部材底辺部材15を備える。
台部材11は、図1(a)及び(b)に示すような形状をしており、これは、例えば、細長い金属板で作成された金具であり、斜面歩行用部材付き登山靴1の踵部4の側面で踵部4の長さ方向の概ね中央に、靴底の表面(地面)に対しほぼ垂直に靴底及び靴の側面に沿ってU字型に嵌合させられ、任意の位置においてビス等で踵部4に固定される。この部材は、所定の強度を有するものであれば、プラスチックや磁器材料などの金属以外の材料であってもよい。
台部材11は、斜面歩行用部材付き登山靴1の踵部4の両側面にそれぞれ係合するアーム部11a(図1(a)参照)、及び、当該登山靴1の踵部4の靴底面に係合する底面部11b(図1(b)参照)からなる。各アーム部11aのほぼ中央部分には、当該登山靴1の踵部4から外側に向けて水平に突出した金属等の短い雄形ネジ付き軸12bが両側に固定して設けられ、その軸12bの先端部分には雌形止めネジ12a用のネジ溝が設けられている。
なお、台部材11の雄形ネジ付き軸12bは、この台部材11の両アームとともに、当該登山靴1の踵部4を貫通する一本の軸としてもよい。この場合、この軸12bは、台部材11に固定されるとともに、登山靴1の踵部4の内部にもしっかりと固定されるので、斜面歩行用部材付き登山靴1は、より安定して使用することができる。
図2は、上述した台部材11に取り付けられる各部材(U字型部材アーム固定部材13、U字型部材アームスライド部材14、及びU字型部材底辺部材15)の構成を示す。
図2(a)において、登山靴1の両側面に台部材11と接するように取り付けられる2枚のU字型部材アーム固定部材13は、長方形の金属板であり、それぞれの中央部付近に軸穴13aを有する。この固定部材13は必ずしも常に長方形の金属板である必要はなく、円形平板状のものでもよく、場合によってはその大小は問題でない。また、この固定部材13は条件によっては不要とすることもできる。同様に、登山靴1の両側面であって、上述の固定部材13と台部材11の間にどちらにも接するように取り付けられる2枚のU字型部材アームスライド部材14も、長方形の金属板として図示されているが、必ずしもこの形状に限るものではない。部材14が台部材11に係合したときにおいて広範囲にスライドさせるためにその長さはU字型部材固定部材13よりも長い。また、各U字型部材アームスライド部材14は、そのほぼ中心部から長さ方向に延びる所定の長さのスライド用縦穴14aが設けられる。
また、U字型部材アーム固定部材13は、対応するU字型部材アームスライド部材14のスライド用縦穴14aに平行する両辺の縁(図2(a)の右図において、長手方向の向かい合う両辺に沿って)に、U字型部材アームスライド部材14を包み込むことができる枠(図示せず)を有することとしてもよい。この場合、U字型部材アームスライド部材14は、その長手方向の両辺をU字型部材アーム固定部材13の枠によってしっかりと固定されるので、斜面歩行用部材付き登山靴1は、より安定して使用することができる。
その他、U字型部材固定部材13の軸穴13aから所定の距離に小さな突起(図示せず)を設けるとともに、U字型部材アームスライド部材14に縦穴14aに平行するもう一つの縦穴(図示せず)を設け、このもう一つの縦穴に小さな突起が嵌合できるように構成する等、U字型部材アーム固定部材13とU字型部材アームスライド部材14との平行関係を確保する手段はいくつも考えられ得る。
図2(b)において、2枚のU字型部材アームスライド部材14は、U字型部材底辺部材15とほぼ直角をなすように、各々の対応する一端又はこれに近い部位がU字型部材底辺部材15の両端に結合される。このU字型部材底辺部材15は、踵部分にかかる当該靴を履く人の体重を支えることができるものであれば、どのような材料であってもよいが、登山をするときに使用することを考慮すると硬質のもの(例えば、金属等)がよい。また、底辺部材15がスライド部材14の下端よりも上方に取り付けられるときは、当然ながら、スライド部材14の下端が靴を履く人の体重を部分的に支持することになるので、これに耐える強度が必要である。
以下、2枚のU字型部材アーム固定部材13、2枚のU字型部材アームスライド部材14、及びU字型部材底辺部材15を総称して、適宜U字型部材16として説明する(図3(b)参照)。
図3(a)は、上述した部材を登山靴に備えた本発明を適用した第1の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴1のU字型部材16の動作範囲を示す図である。
この図3(a)に示されるように、U字型部材16は、台部材11の雄形ネジ付き軸12bを中心に(図3(a)では、雌形止めネジ12aの後側にあるため、図示せず)、靴底にほぼ直角の位置から後方に約90度回転することができる。
ここで、図2(a)からも分かるように、U字型アーム固定部材13は、軸穴13aを中心に回転することはできるが、踵部分に対して上下にスライドすることはできない。それに対して、U字型アームスライド部材14は、回転もスライドも可能である。
図3(b)は、図3(a)における台部材11(図3(a)では、U字型部材アーム固定部材13の後側にあるため、図示せず)とU字型部材アーム固定部材13及びU字型部材アームスライド部材14の接合部を示す側面図である。
この図3(b)において、この接合部は、台部材11の雄形ネジ付き軸12bに、U字型部材アームスライド部材14のスライド用縦穴14a、U字型部材アーム固定部材13の軸穴13aの順に差し込まれ、その上から雌形止めネジ12aをこれらの穴に挿入しながら雄形ネジ付き軸12bに螺合することにより、当該靴の踵部4に嵌合している台部材11のアーム部11aにこれらの部材を圧接、固定させる構造である。
また、U字型部材16は、U字型部材アーム固定部材13及びU字型部材アームスライド部材14を台部材11に圧接、固定する雌形止めネジ12aを弛めることにより、靴底の表面(すなわち、地面)に対し概ね垂直の位置からU字型部材底辺部材15が靴の後方に向かって雄形ネジ付き軸12bを中心に約90°回転して靴底表面に対し水平に配置することができる(図3(a)参照)。
そして、U字型部材16を垂直にしてからU字型部材アームスライド部材14を最下位にスライドして固定したときに登山靴1の踵部分の高さが最高となり、U字型部材16を水平にしたときにその高さが最低(すなわち、登山靴そのものの踵の高さ)となる。このように、U字型部材アーム固定部材13及びU字型部材アームスライド部材14を水平にして雌形止めネジ12aにより登山靴1の踵部4の側面に圧接、固定することによって、当該靴のU字型部材16は平坦な場所における歩行にも支障がないように装着可能である。
ここで、U字型部材16を登山靴1に装着したまま回転できるようにするため、つまり、U字型部材底辺部材15が登山靴1の踵部4に引っ掛からずに雄形ネジ付き軸12bを中心にU字型部材16を回転できるようにするために、このU字型部材底辺部材15の回転半径、すなわち、雄形ネジ付き軸12bからU字型部材底辺部材15までの長さは、図3(a)において、U字型部材アームスライド部材14が踵部4の水平方向ほぼ中央に設けられたときは、当該登山靴1の踵部4の側面の長さ方向における該長さの少なくとも半分強以上とする必要がある。
次いで、登山靴1の踵部分の高さを調整する方法について説明する。
U字型部材アーム固定部材13及びU字型部材アームスライド部材14を台部材11に圧接、固定している両側の雌形止めネジ12aを弛め、登山靴1の踵部分が適当な高さになるように台部材11の雄形ネジ付き軸12bを中心にU字型部材16を所定の角度だけ回転し、その位置において当該雌形止めネジ12aを締めてU字型部材アーム固定部材13及びU字型部材アームスライド部材14を台部材11に圧接、固定する。
U字型部材16を靴底に対し略垂直としても当該登山靴の踵部分の調整が付かない程急な斜面の場合には、前記方法とは異なり、雌形止めネジ12aを弛めてU字型部材16を靴底に対し略垂直とした後、U字型部材アーム固定部材13に対しU字型部材アームスライド部材14を下方にスライドさせ、上り斜面の角度に対して登山靴1の踵部分を適当な高さに調整してから、雌形止めネジ12aを締めることによりU字型部材アーム固定部材13及びU字型部材アームスライド部材14を台部材11に圧接、固定する。
以上のように、本実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴1は、U字型部材16を用いて登山靴1の踵部分の高さを所望の高さに調整することにより、この登山靴1を履いて歩行している人の体をより自然体に近い状態に保持することができる。
なお、本実施の形態において、U字型部材16を圧接、固定するために、雌形止めネジ12aを用いて説明したが、台部材11にしっかりと固定することができる固定部材であればどのようなものでもよい。
図4は、本発明を適用した第1の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴1の取付部分の変形例を示す図である。この図4において、斜面歩行用部材付き登山靴1は、登山靴以外に、台部材11、軸12、U字型部材アーム固定部材13、U字型部材底辺部材15、リング17、貫通ホール(リングホール)17a、及び突起18を備える。この変形例では、U字型部材アーム固定部材13のアーム部と台部材11との取付部分のみが上記実施の形態と異なるので、変更点のみを説明し、その他の説明は省略する。
リング17は、U字型部材アーム固定部材13の外側に接するように台部材11の軸12にその中心を固定され、所定の角度(図では約90°)円周方向に回転させることができる。また、リング17の円周上には、一定の角度毎にリング17を貫通するホール17aが複数設けられる。このリングのホール17aは、台部材11のU字型部材アーム固定部材13に接する側に突出する突起18と係合することができる。
突起18は、上述のように台部材11の軸12から横方向に離隔した箇所(図4では、軸からつま先方向側)から突出するものであるが、この突起18は、バネの偏圧によって台部材11から外側に突出するものである。
次いで、取付部分を変更した登山靴1の踵部分の高さを調整する方法について説明する。斜面の傾斜に対応して登山靴1の踵部分が適当な高さになるように、突起18をリングのホール17aの外側から内側へ押し込むことによって突起18とリングのホール17aとの係合を解き、リング17と共にU字型部材アーム固定部材13を回転させてアームの角度を必要な(適当な)角度に調節し、その位置で突起18を押し込むことを止めることにより台部材11から外側に突出した突起18と対応するリングのホール17aとを係合して、U字型部材アーム固定部材13を所定の角度に固定して、所望する登山靴1の踵部分の高さに調整する。
以上のように、第1の実施の形態の取付部分に対する変形例では、U字型部材アーム固定部材13等を台部材11に接合する場合において、雌形止めネジ12aと雄形ネジ付き軸12bを用いる代わりに、リング17とバネ式突起18を用いることとした。そのため、雌形止めネジ12aを雄形ネジ付き軸12bに螺合するよりも簡易にU字型部材アーム固定部材13等を台部材11に圧接、固定することができるので、ユーザーの利便性を向上することができるとともに、より短時間で登山靴1の踵部分の高さを調整することができる。
本変形例では、U字型部材アームスライド部材14を省略して説明したが、このU字型部材アームスライド部材14を含んでアームの角度を調節すると共に、スライドさせることによって登山靴の踵部の高さを調整することとしてもよい。
なお、第一の実施の形態の変形として、図13に第5の実施の形態として示す取付部分をして下に説明する。同図において、台部材11の両アームの形状を、その上端において直角に後方に曲がりその先端が概ね靴底の最後部に達するプレート状とし、その先端近くに台部材11の第一の軸12と同様な第二の軸39を設け、取付部材16の固定部材13には軸穴13aと反対の端近くにこの固定部材より長さがやや小さい筋交い部材40の一端41を回転自在に接合し、この筋交い部材40の長手方向の一側方に複数の凹型切込み42を設け、この切込みを前記プレート先端近くの第二の軸39に係合させ、雌ネジ等の固定具で固定することにより取付部材16のアーム13又はアーム13、14を必要な角度で固定する。また、筋交い部材40の使用を必要としないときは、該部材を前記アームの回りに回転させて部材の切込み42を第一の軸12に係合させて固定する。このような取付部分は靴底の前端になこともできる。これは前記の「後方」、「最後部」を「前方」、「最前部」と読みかえることにより容易に理解できる。図8、9、10の取付部分を変形することによって達成できる。また、筋交い部材40の幅をやや小さくすることにより操作を容易にすることができる。
(第2の実施の形態)
次に、図5〜図7を参照して、本発明の第2の実施の形態を詳細に説明する。図5は、本発明を適用した第2の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴2の歩行用部材の構成を示す図である。この図5において、斜面歩行用部材付き登山靴2は、登山靴以外に、2個の雄形止めネジ21、1個のU字型部材22、及び2本のシリンダー23を備える。
U字型部材22は、シリンダー23の間隔に対応する一定間隔に設けられた2本の垂直アーム部22aと、これらの一端(下端)を底部で係合する1本の台座22bとからなるが、この垂直アーム部22aの数は2本以上であってもよい。2本以上の場合には、後述するシリンダー23もこれに対応する数を有し、それに見合う間隔に配置される。また、垂直アーム部22aは、後述するシリンダー23内で摺動できるような形状(例えば、シリンダー23の内径よりも少し小さい外形を持つ円柱形)を有するが、その形状は円柱形に限定されず、例えば、角筒形(例えば、四角柱)などであってもよい。
2本のシリンダー23は、靴底の表面(地面)とほぼ垂直に一定の間隔で、ビス等により登山靴の後部背面に2点以上で接合、固定される(接合部は図示せず)。垂直アーム部22aが同時にその中を摺動できるように、それらは互いに平行である。
また、各シリンダー23は、その内部が中空であり、所定の高さ(シリンダー23の長さ方向で中心よりも下側の方がよい。)に当該登山靴の後部背面に対し垂直に雄形止めネジ21を螺合するための小穴23aが設けられる(図5では直接図示されないが、図5(a)を参照)。この小穴23aは、その内表面に雄形止めネジ21と螺合するための雌形のネジ溝を有する。この小穴23aに雄形止めネジ21を締め付けることにより、シリンダー23に挿入されたU字型部材22の垂直アーム部22aを圧接して、所望する位置にU字型部材22を固定することができる。このシリンダー23は、適当な強度があるものであれば金属製以外のものでもよい。
なお、雄形止めネジ21によるU字型部材22の固定をより確実なものとするために、例えば、図5(a)及び(b)に示されるように、U字型部材22の垂直アーム部22aの雄形止めネジ21と接する表面部分には、雄形止めネジ21の先端が引っ掛かる横溝22cを一定間隔で付けておくか、あるいは、雄形止めネジ21の先端が嵌入される凹部を一定間隔で設けておくことが望ましい。
また、第1の実施の形態と同様に、上記各器具を装着したまま平坦な場所における歩行にも支障がないように、U字型部材22は、その垂直アーム部22aがシリンダー23内に最も深く挿入された場合には、その台座22bが地面に接しないように調整され得る。
この第2の実施の形態では、シリンダー23内に格納されるU字型部材22のアーム部22aを上下にスライドし、シリンダー23の小穴23aに雄形止めネジ21を螺合して圧接、固定することにより、登山靴の踵部分の高さを調整することができる点で第1の実施の形態と異なる。
次いで、登山靴2の踵部分の高さを調整する方法について説明する。
図5において、U字型部材22をシリンダー23内で固定している2つの雄形止めネジ21を弛め、登山靴2の踵部分が適当な高さになるように2つの垂直アーム部22a(すなわち、U字型部材22)をスライドする。そして、適当な位置において、上記横溝22cに雄形止めネジ21の先が圧接されるように、該2つのネジ21を締めて、U字型部材22をシリンダー23内に固定する。
なお、この第2の実施の形態では、登山靴2の踵部分の高さは、より強固に圧接、固定するためには、雄形止めネジ21によって固定される垂直アーム部22aの位置は、垂直アーム部22aの横溝22c又は凹部24dが設けられている範囲内のみである。
以上のように、本実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴2は、U字型部材22などを用いて登山靴2の踵部分の高さを所望の高さに調整することにより、この登山靴2を履いて歩行している人の体をより自然に近い状態に保持することができる。
図6は、本発明を適用した第2の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴2の取付部分の変形例を示す図である。この図6において、斜面歩行用部材付き登山靴2は、登山靴以外に、1個のU字型部材22、2本のシリンダー23、1本のバー(棒)24、及び2個のバネ式突起25を備える。以下、本変形例の取付部分について説明し、重複した説明は省略する。なお、シリンダー23の形状が円筒形あるいは角筒形のいずれであってもよく、それらに限られないのは、上記と同様である。
上述のように、シリンダー23には小穴23aがあり、U字型部材22には一定間隔に設けられた複数の凹部22dがある。この凹部22dは、小穴23aを挟んで後述するバネ式突起25と係合し、U字型部材22を所定の長さに固定することができる(つまり、登山靴の踵部分を所定の高さに固定できる。)。ここで、凹部22dはバネ式突起25と係合できるものであれば、上述の横溝22cであってもよい。
なお、この変形例において、バネ式突起25は雄形ネジの形状を有しておらず、小穴23aの内表面もネジ切りをされる必要はない。この点で、第2の実施の形態の他の例に比べ、シリンダー23の製造が容易であるという利点を有する。
凹部22dと係合するバネ式突起25は、シリンダー23の本数に対応する数設けられ、それらはすべて1つのバー24によって連結、固定される。そのため、このバー24は、一体としてバネの偏圧を受ける。
次いで、取付部分を変更した登山靴2の踵部分の高さを調整する方法について説明する。斜面の傾斜に対応して登山靴2の踵部分が適用な高さになるように、バー24をシリンダー23の外側に向かって引っ張ることにより、U字型部材22のアーム部22aの凹部22dと複数のバネ式突起25との係合を解き、U字型部材22の上方あるいは下方にスライドさせて所定の位置に調整する。そして、バー25を引っ張ることを止めることによりバネ式突起25と凹部22dとを係合させ、その位置でU字型部材22を固定して、所望する登山靴2の踵部分の高さに調整する。
以上のように、第2の実施の形態の取付部分(固定部分)に対する変形例では、U字型部材22をシリンダー23と所定の位置で係合する場合において、雄形止めネジ21を用いる代わりに、バネ式突起25を用いることとした。したがって、雄形止めネジ21をU字型部材22の横溝22cに嵌入するよりも簡易にU字型部材22をシリンダー23に固定することができるので、この登山靴2を履くユーザーの利便性を向上することができるとともに、瞬時に登山靴2の踵部分の高さを調整することができる。
図7は、本発明を適用した第2の実施の形態における斜面歩行用金具付き登山靴2のU字型部材22の変形例を示す図である。この図7において、斜面歩行用部材付き登山靴2は、登山靴以外に、1つの雄形止めネジ21、1つのシリンダー23、及び1つのスライド板26を備える。この図7の斜面歩行用部材付き登山靴2は、シリンダー23を一つにした点と、垂直アーム部22aの代わりに一つのスライド板26にした点(すなわち、台座22bを必要としない点)で上記図5及び図6の登山靴2とは異なる。
シリンダー23は、1つの中空の長方形の角柱(角筒形)であり、その中をスライド板26がスライド可能である。上述の図5及び図6の場合と同様に、シリンダー23には、当該登山靴2の後部背面に対し垂直な所定の高さ(シリンダー23の長さ方向で中心よりも下側の方がよい)に雄形止めネジ21と螺合してスライド板26を固定する小穴23aが設けられる。スライド板26を固定する部材として雄形止めネジ21を使用する場合には、この小穴23aの内表面は雌形にネジ切られている。なお、このシリンダー23は、適当な強度があるものであれば金属製以外のものでもよい。
スライド板26は、蒲鉾板のような長方形の角柱であり、上記雄形止めネジ21と接する表面部分には凹部あるいは横溝が一定間隔で設けられる(図7においては凹部26aを示す)。このスライド板26も、シリンダー23と同様に適当な強度があるものであればどのような材料のものでもよい。しかしながら、金属製であると登山靴2の背面部の重量が重くなり歩行に支障をきたすことも考えられるので、軽量な強化プラスチックなどの方がよい場合もあろう。
なお、この実施の形態では、2以上の垂直アーム部22aを用いず、1つのスライド板26としたので、これらの垂直アーム部22aの一端を互いに固定する台座22bが不要である。このため、変形例の斜面歩行用部材付き登山靴2は、上記他の第2の実施の形態のものに比べて、部品の点数を減らすことができ、取付部材の作製が簡略化されるという利点を有する。
また、図7において、スライド板26を固定するための部材として、1つの雄形止めネジ21のみを示したが、雄形止めネジ21の数は1つに限られず、所定間隔で垂直方向あるいは水平方向に複数用いられてもよい(水平方向の場合、小穴23aは適当な距離をおいて複数備えられ、凹部26a又は横溝は小穴23aに対応する位置で垂直方向に複数配列される)。そして、例えば、2つの雄形止めネジ21が用いられる場合、図6のバネ式突起25を備えるバー24を利用することもできる。雄形止めネジ21が1つの場合よりも複数個の場合の方がスライド板26をしっかりと固定できることはいうまでもない。
なお、この変形例における登山靴2の踵部分の高さを調整する方法は、上記図5又は図6の登山靴2の場合と同様であるため、ここでは重複記載を避けてその説明を省略する。
(第3の実施の形態)
次に、斜面を下る場合に用いられる、つま先部分を高くすることができる登山靴について説明する。
図8〜図10は、本発明を適用した第3の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴3の歩行用部材の構成を示す図である。これらの図において、斜面歩行用部材付き登山靴3は、第1の実施の形態と同様に、登山靴以外に、台部材31、雌形止めネジ32a及び雄形ネジ付き軸32b、U字型部材アーム固定部材33、U字型部材アームスライド部材34、及びU字型部材底辺部材35を備える。
なお、U字型部材アーム固定部材33、U字型部材アームスライド部材34、及びU字型部材底辺部材35は、第1の実施の形態と同様な構造であるので、その図示を省略し、第1の実施の形態で用いた図面(図2)によって説明する。この場合、本実施の形態では、図2におけるU字型部材アーム固定部材13の軸穴13aをU字型部材アーム固定部材33の軸穴33aと、U字型部材アームスライド部材14のスライド用縦穴14aをU字型部材アームスライド部材34のスライド用縦穴34aとする。
台部材31は、第1の実施の形態における台部材11と同様な構造であり、図8(a)及び(b)に示すように、斜面歩行用部材付き登山靴3のつま先部5の側面でつま先部5の長さ方向の中心から幾分先端側にずれた位置に取り付けられ、靴底の表面(地面)に対しほぼ垂直に靴底及び靴の側面に沿ってU字型に嵌合させられ、任意の位置においてビス等で靴底に固定される。
なお、本発明の第1の実施の形態と同様に、台部材31の雄形ネジ付き軸32bは、この台部材31の両アームとともに、当該登山靴3のつま先部5を貫通する一本の軸としてもよい。この場合、この軸32bは、台部材31に固定されるとともに、登山靴3のつま先部3の内部にもしっかりと固定されるので、斜面歩行用部材付き登山靴3は、より安定して使用することができる。
U字型部材アーム固定部材33は、第1の実施の形態におけるU字型部材アーム固定部材13と同様な構造であり(図2(a)参照)、そのほぼ中心部に軸穴33aが設けられる(図示省略)。
U字型部材アームスライド部材34は、第1の実施の形態におけるU字型部材アームスライド部材14と同様な構造であり(図2(a)及び(b)参照)、そのほぼ中心部から長手方向に所定の長さでスライド用縦穴34aが設けられる(図示省略)。
なお、本発明の第1の実施の形態と同様に、U字型部材アーム固定部材33は、対応するU字型部材アームスライド部材34のスライド用縦穴(図示せず)に平行する両辺の縁に、U字型部材アームスライド部材34を包み込むことができる枠(図示せず)を有することとしてもよい。この場合、U字型部材アームスライド部材34は、その長手方向の両辺をU字型部材アーム固定部材33の枠によってしっかりと固定されるので、斜面歩行用部材付き登山靴3は、より安定して使用することができる。
U字型部材底辺部材35は、第1の実施の形態と同様に、2枚のU字型部材アームスライド部材34と略直角をなすように、その両端が各々対応するU字型部材アームスライド部材34の一端に結合される。
図9は、上述した部材を登山靴に備えた本発明を適用した第3の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴3のU字型部材アーム固定部材33、U字型部材アームスライド部材34、及びU字型部材底辺部材35の動作範囲を示す図である。第1の実施の形態と同様に、上記3つの部材を総称して適宜U字型部材36として説明する。
U字型部材36は、U字型部材アーム固定部材13及びU字型部材アームスライド部材14を台部材11に圧接、固定する雌形止めネジ32aを弛めることにより、靴底の表面(すなわち、地面)に対し概ね垂直の位置からU字型部材底辺部材35が靴のつま先方向に雄形ネジ付き軸32bの周りに90°以上回転して靴底表面に対し水平、あるいはつま先部分の上方に配置することができる。
そして、登山靴3は、U字型部材36を水平、あるいはつま先部の上方に配置したときに登山靴3のつま先部分の高さが最低となる。この状態で雌形止めネジ32aを締める(雄形ネジ付き軸32bに螺合する)ことにより台部材31の側面に圧接、固定することによって、U字型部材底辺部材35が靴の先端又はつま先の底面より上方に配置して固定される。したがって、当該登山靴3は、平坦な場所における歩行にも支障がないように装着可能である。
また、第1の実施の形態と同様に、登山靴3のつま先部分の高さを広範囲で調整可能にするために、U字型部材36を所定の角度だけ回転し、あるいは、斜面が急な場合には、U字型部材36を靴底表面に対しほぼ垂直にし、さらにはU字型部材アームスライド部材34を下方にスライドさせて、その位置において雌形止めネジ32aを締め付けることによりU字型部材36を台金具31に圧接、固定することができる。これにより、当該登山靴3のつま先の高さを下り斜面の角度に適した任意の高さに調整することが可能である。
図10は、本発明を適用した第3の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴3の取付部分の変形例を示す図である。この図10において、斜面歩行用部材付き登山靴3は、登山靴以外に、台部材31(図示せず)、軸32、U字型部材アーム固定部材33、U字型部材アームスライド部材34、U字型部材底辺部材35、リング37、貫通ホール(リングホール)37a、及び突起(バネ式)38を備える。この変形例では、U字型部材アーム固定部材33及びU字型部材アームスライド部材34と図示しない台部材31との取付部分のみが上記図9の実施の形態と異なる。
なお、各部材の構成及びその動作は、前述した第1の実施の形態の変形例と同様であるので、ここでは説明を省略する。また、各部材の構成及びその動作が同様であることにより、上記第1の実施の形態の変形例と類似(適用場面が斜面の登りと降りの違いがある)の効果を有することはいうまでもない。
以上のように、本発明を適用した第1〜第3の実施の形態では、斜面歩行用部材付き登山靴1〜3は、その踵部分又はつま先部分の高さを斜面の角度に合わせて調整することができるU字型部材アーム固定部材13若しくは33、U字型部材アームスライド部材14若しくは34、及びU字型部材底辺部材15若しくは35、又は、U字型部材22若しくはスライド板26及びシリンダー23を備える構成とした。
したがって、歩行中に平坦地から斜面に、又は、斜面から平坦地に差しかかる度に、いちいちこれらの取付部材を付けたりはずしたりする必要がないので、本発明が適用される斜面歩行用部材付き登山靴1〜3は、登山の際の利便性が向上するとともに、取付部材をはずさないまま一般の生活でもその靴を使用することができる。
また、本発明が適用される斜面歩行用部材付き登山靴1〜3は、斜面を上り下りするときには、ある程度離れた距離にある2つの部位にある支点により体重を支えることになるので、従来のものに比べ歩行中の安定感を増すことができる。
さらに、本発明の上記各実施の形態において3種類の取付具について説明したが、登山靴は、このうち、第1又は第2の実施の形態における踵部分に取り付けることができる取付部材のいずれかと、第3の実施の形態におけるつま先部分に取り付けることができる取付部材とを両方備える構成としてもよい。この場合には、本発明によって、それぞれの実施の形態の利点を有する斜面歩行用部材付き登山靴を提供することができる。
(第4の実施の形態)
図11及び図12を参照して、本発明の第4の実施の形態を詳細に説明する。図11は、本発明を適用した第4の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴10の歩行用部材の構成を示す図である。この図11において、斜面歩行用部材付き登山靴10は、登山靴以外に、2つの雄形止めネジ101、1個のU字型部材102、及び2本のシリンダー103を登山靴の両側面に1セットずつと、台部材104とを備える(図の簡略化のため、図11では、反対側面に取り付けられた部材は図示していない)。本実施の形態において、登山靴10の側面に配置された部材のほとんどは、上記第2の実施の形態において登山靴2の背面に取り付けられた取付部材と同様の構成である。
台部材104は、上記第1及び第3の実施の形態において登山靴の踵部4又はつま先部5にU字型に嵌合させられたものと同様な構成であり、登山靴の土踏まず部分の靴の両側面及び靴底に沿ってU字型に嵌合させられ、任意の位置においてビス等で固定される。台金具104の靴側面における横幅は、登山靴(又は人)の土踏まずに対応する長さ程度である。
U字型金具102は、シリンダー103の間隔に対応する一定間隔に設けられた2本の垂直アーム部102aと、これらの一端(下端)を底部で係合する1本の台座102bとからなる。上記第2の実施の形態と同様に、垂直アーム102aの数は2本以上であってもよく、この場合、シリンダー103もこれに対応する数を有し、それに見合う間隔に配置される。また、垂直アーム部102aは、シリンダー103内で摺動可能な形状であればよく、例えば、円柱形や角筒形などの形状である。
シリンダー103は、台金具104の長さ方向に対して適当な位置において台金具104の2点以上にビス等によってしっかりと固定される(接合部は図示せず)。また、シリンダー103は、垂直アーム部102aがその中を摺動できるように、互いに平行に配置され、その内部が中空である。
シリンダー103は、所定の高さに小穴が設けられる(図示せず)。この小穴は、その内表面に雄形止めネジ101と螺合するための雌形のネジ溝を有する。このシリンダー23は、適当な強度があるものであれば金属製以外のものでもよい。
なお、上記第2の実施の形態と同様に、雄形止めネジ101によるU字型部材102の固定をより確実なものとするために、例えば、図11に示されるように、U字型部材102の垂直アーム部102aの雄形止めネジ101と接する表面部分には、雄形止めネジ101の先端が引っ掛かる横溝102cを一定間隔で付けておくか、あるいは、雄形止めネジ101の先端が嵌入される凹部を一定間隔で設けておくことが望ましい。
次いで、登山靴10の側面の高さを調整する方法について説明する。本実施の形態の登山靴10は、斜面の傾斜に対して横(水平)方向に歩行する際に使用されるものである。
図11において、斜面を水平方向に歩行する際の谷側部分に該当する2つの雄形止めネジ101を弛め、登山靴10の斜面谷側の側面部分が斜面の角度に対して適当な高さになるように、2つの垂直アーム部102a(すなわち、U字型部材102)をスライドする。垂直アーム部102aの上記横溝102cに雄形止めネジ101の先が圧接されるように、この2つのネジ101を締めて、U字型部材102をシリンダー103内に固定する。
なお、このように斜面谷側のU字型部材102を所定の高さに固定したとき、登山靴10の斜面に対して尾根側に据え付けられたU字型部材102(図示せず)は、シリンダー103内で最も深く(最も高く)嵌入され、尾根側の登山靴10の側面は靴底の高さになっている。
以上のように、本実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴10は、U字型部材102などを用いて登山靴10の斜面の谷側部分の側面だけを高くすることによって、この登山靴10を履いて歩行している人の体をより自然に近い状態に保持することができる。
なお、上記では、片側の登山靴10の調整方法についてのみ説明したが、両側の靴の側面高さを調整する場合には、以下のような方法もある。すなわち、斜面に対して平行に歩行するとき、谷側の足の方が尾根側の足に比べて低くなるため、谷側の登山靴10をより高めに調整するという方法である。説明の便宜上、右手に谷を見ながら(右足が谷側)水平に歩行する場合について詳細に説明する。左足の登山靴10を上記方法で調整した後、右足の登山靴10に対しては、尾根側(進行方向に対して左側)のU字型部材102を左足の登山靴10の谷側のU字型部材102よりも高くする。そして、右足の谷側(進行方向に対して右側)のU字型部材102を斜面の角度に応じて尾根側の側面高さよりも高くする。このように両足について調整することにより、登山靴10を履いて歩行している人の体を一層自然に近い状態に保持することができる。
また、図11において、本実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴10の2つの雄形止めネジ101の代わりに、第2の実施の形態における図6のバネ式突起25を備えるバー24を利用することもできる。各部の構成及び動作については、第2の実施の形態において説明されているため、ここでは図示及び説明を省略する。
図12は、本発明を適用した第4の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴10の変形例を示す図である。この図12において、斜面歩行用部材付き登山靴10は、登山靴以外に、1つの雄形止めネジ101、1つのシリンダー103、及び一つのスライド板26を登山靴の両側面にそれぞれ備える。この図12の斜面歩行用部材付き登山靴10は、シリンダー103を一つにした点と、垂直アーム部102aの代わりに一つのスライド板105にした点(すなわち、台座102bを必要としない点)で上記図11の登山靴10とは異なる。
シリンダー103は、1つの中空の長方形の角柱(角筒形)であり、その中をスライド板26がスライド可能である。上述の図11の登山靴10と同様に、シリンダー103には、当該登山靴10の側面に対し垂直な所定の高さ(シリンダー103の長さ方向で中心よりも下側の方がよい)に雄形止めネジ101と螺合してスライド板105を固定する小穴103a(図示せず)が設けられる。スライド板105を固定する部材として雄形止めネジ101を使用する場合には、この小穴103aの内表面は雌形にネジ切られている。なお、このシリンダー103は、適当な強度があるものであれば金属製以外のものでもよい。
スライド板105は、蒲鉾板のような長方形の角柱であり、上記雄形止めネジ101と接する表面部分には凹部105aあるいは横溝が一定間隔で設けられる(図12では凹部を示す)。このスライド板105も、シリンダー103と同様に適当な強度があるものであればどのような材料のものでもよい。しかしながら、金属製であると登山靴10の両側面部の重量が重くなり歩行に支障をきたすことも考えられるので、軽量な強化プラスチックなどの方がよい場合もあろう。
なお、この実施の形態では、スライド板105を用いたので、台座102bが不要である。このため、変形例の斜面歩行用部材付き登山靴10は、上記図11の実施の形態のものに比べて部品の点数を減らすことができ、取付部材の作製が簡略化されるという利点を有する。
また、図12において、スライド板105を固定するために一つの雄形止めネジ101のみを使用したが、雄形止めネジ101の数は1つに限られず、所定間隔で垂直方向あるいは水平方向に複数用いられてもよい(水平方向の場合、小穴103aは適当な距離をおいて複数備えられ、凹部105a又は横溝は小穴23aに対応する位置で垂直方向に複数配列される。そして、例えば、2つの雄形止めネジ101が用いられる場合、上記第2の実施の形態の図6におけるバネ式突起25を備えるバー24を利用することもできる。雄形止めネジ101が1つの場合よりも複数の場合の方がスライド板105をしっかりと固定できることはいうまでもない。
なお、この変形例における登山靴10の谷側側面部の高さを調整する方法は、上記図11の登山靴10の場合と同様であるため、ここでは重複記載を避けてその説明を省略する。
以上のように、本発明を適用した第4の実施の形態では、斜面歩行用部材付き登山靴10は、その土踏まずの辺りの側面部分の高さを斜面の角度に合わせて調整することができるU字型部材102若しくはスライド板105、及びシリンダー103を備える構成とした。
したがって、本発明の斜面歩行用登山靴10によれば、登山中に斜面に対して水平方向に歩行する場合における、歩行している人の体をより自然に近い状態に保持することができるとともに、従来のものに比べ歩行中の安定感を増すことができる。
なお、この第4の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴10は、上記第1又は第2の実施の形態における踵部分に取り付けることができる取付部材のいずれかと、第3の実施の形態におけるつま先部分に取り付けることができる取付部材とを両方あるいは一方備える構成としてもよい。この場合には、本発明によって、それぞれの実施の形態の利点を有する斜面歩行用部材付き登山靴を提供することができる。
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に示された構成に限られず、特許請求の範囲の精神から逸脱しない範囲内において様々な変更及び変形も可能である。例えば、固定具は、ねじ以外の公知の部材を適宜組合せて用いることができる。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、斜面を上り下りするとき以外の平坦な場所を歩行する際にも、斜面歩行用の取付部材を持ち歩かなくてよく、斜面の傾斜にかかわらず踵又はつま先部の高さを調整して使用することにより、最も自然に歩行しやすい姿勢で歩行することができる。
また、本発明によれば、斜面に平行に横方向に歩行する場合には、靴の側面の谷側の高さを調整できるので、最も自然に歩行しやすい姿勢で歩行することができる。
【図面の簡単な説明】
図1(a)は、本発明を適用した第1の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴1のU字型金具アーム固定部材13を外した際の当該靴の側面図であり、図1(b)は、その場合における当該靴の裏面図である。
図2(a)は、本発明を適用した第1の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴1のU字型部材アーム固定部材13及びU字型部材アームスライド部材14の正面図であり、図2(b)は、U字型部材アームスライド部材14とU字型部材底辺部材15との結合状態を示す図である。
図3は、本発明を適用した第1の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴1のU字型部材アーム固定部材13、U字型部材アームスライド部材14、及びU字型部材底辺部材15の動作範囲を示す図である。
図4は、本発明を適用した第1の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴1の取付部分の変形例を示す図である。
図5(a)は、本発明を適用した第2の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴2の背面図であり、図5(b)は、当該靴の側面図である。
図6は、本発明を適用した第2の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴2の取付部分の変形例を示す図である。
図7は、本発明を適用した第2の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴2のU字型部材22の変形例を示す図である。
図8(a)は、本発明を適用した第3の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴3の側面図であり、図8(b)は、当該靴の裏面図である。
図9は、本発明を適用した第3の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴3のU字型部材アーム固定部材33、U字型部材アームスライド部材34、及びU字型部材底辺部材35の動作範囲を示す図である。
図10は、本発明を適用した第3の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴3の取付部分の変形例を示す図である。
図11は、本発明を適用した第4の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴10の側面図である。
図12は、本発明を適用した第4の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴10の取付部分の変形例を示す図である。
図13は、本発明を適用した第5の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴10の取付部分の変形例を示す図である。
本発明は、靴に関し、特に、斜面又は坂道を上り下りするときあるいは斜面又は坂道に対して横方向に平行に移動するときに、より自然な姿勢を保つことができる登山靴に関する。
背景技術
人が平坦な土地を歩行する場合にはその人が履いている靴等の履物の底(以下、「靴底」で代表する)は概ね水平に保たれており、当該人の重心は概ね踵の真上にあるのが通常である。この状態は最も自然に歩行しやすい姿勢である(以下、「自然体」という)。
これに対し、人が斜面や坂道を登る場合には、靴底は概ね斜面と同じ角度でつま先が上を向くことになる。このため、当該人は自然体で歩行することができず、自然体を維持するためには靴底の後部、特に踵部分を高くして靴底を斜面に対し概ね水平にすることが必要である。
従来、登山靴に関するもので、その登山靴の踵部に補助踵を取り付けている登山靴用取付具があった(実公昭第42−11251号)。
また、上記考案の欠点を改良するものとして、取付具を土踏まずに当接し、底面が略半円形状である登山用取付器具があった(実開昭第62−196004号)。この考案についての明細書には、踵ではなく土踏まずで体重を支えるため、土踏まず部周辺の筋肉疲労及び脚部疲労を軽減できるという効果も有する旨の記載がある。
靴の踵部に補助踵を取り付ける登山靴には、サイズ毎の取付具が必要であるという欠点がある。
また、略半円形状の登山用取付器具は、上記登山靴用取付具同様に通常の登山靴に対して別途取付具が必要であり、平坦地を歩く際には、それを取り外して持ち歩き、斜面にさしかかるとそれを取り付けなければならないという問題がある。
また、確かに土踏まずで体重を支えることにより、土踏まず部周辺の筋肉疲労を軽減できるかもしれないが、体重のかかる2つの支点が近くなることによる不安定感から、逆に脚部、特に重心直下の踵部やふくらはき部の筋肉疲労を増大するであろうという問題もある。
ところで、上記と同様な考えにより、反対に斜面を下る場合には、靴底の前部、特につま先部分の高さを高くして、靴が斜面に接地したときの靴底を概ね水平になるようにできるとよいであろう。
さらに、斜面に対して横方向に平行に歩く場合にも、両足の靴の谷側の側面の高さを高くして、靴が斜面に設置したときの靴底を概ね水平になるようにできるとよいであろう。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、靴底の踵及びつま先部分の高さ、並びに靴底の側面部の高さを調節して自然体に近い姿勢により斜面の上り下りあるいは斜面に平行に歩行することを可能にするための部材を備える靴を提供することを目的とする。
発明の開示
上記課題を解決するために、本発明の一実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、靴の踵部の両側面及び底面を囲むように嵌合されるU字型の台部材であって、U字型台部材の両端部から上方に延びるアームのほぼ中央には前記靴の踵部の側面から外方向に向かって延びる軸が取り付けられた台部材と、
前記台部材よりもアームが長いU字型の取付部材であって、その両アームのほぼ中央には前記台部材の軸を差し込むための軸穴を有し、底辺部は前記両アームのそれぞれの一端附近に結合される取付部材と、
前記台部材の軸に係合することにより、前記台部材に前記取付部材を接合することができる固定部材とを備え、
斜面を上るときには、前記取付部材のアームが靴の側面から見て靴底に対して略垂直になるように前記固定部材で前記台部材に前記取付部材を接合することにより、前記靴の踵部分の高さを調節できることを特徴としている。
また、その実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、上り斜面の傾斜角に対応して、前記靴底に対する前記取付部材のアームの角度を略垂直の位置から後方に向けて少なくとも90°の間で回転することにより調整できるものであってもよい。
そして、その実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、前記取付部材のアームが、中央に軸穴を持つ固定部材と、長手方向に向かって延びるスライド用の縦穴を持つスライド部材とから構成されてもよく、この場合、前記取付部材の底辺部が、前記スライド部材のそれぞれの下端又はその附近の部位に結合され、前記スライド部材は、上り斜面の傾斜角に対応して、靴底に対し上下方向にスライドできてもよい。
また、前記スライド部材はその縦穴に平行にもう一つの縦穴を設け、前記固定部材は、対応する前記スライド部材の縦穴に平行する該スライド部材の縁に沿って、前記スライド部材を包み込むことができる枠を有する等、あるいは、前記固定部材に軸穴からその固定部材の幅方向所定の距離にその縦穴に嵌合する位置に小さな突起を設け、このもう一つの縦穴に小さな突起が嵌合できる等、両者の平行関係を確保する手段を設けてもよい。
ここで、上記いずれの実施の形態においても、斜面歩行用部材付き靴は、前記取付部材の軸穴から底辺部までの長さが、前記靴の踵部分の側面の水平方向における長さの少なくとも半分強以上である必要がある。
そして、前記台部材の前記軸は、該台部材の両アーム及び前記靴の踵部を貫通する一本の軸であってもよい。
さらに、上記のいずれかの斜面歩行用部材付き靴の前記固定部材は、前記台部材の軸と螺合する雌ねじを有していてもよく、あるいは、前記台部材の軸から所定の距離だけ離隔して位置し、バネの偏圧によって台部材のアーム外側に突出する1個の突起を設け、この突起と係合する複数の貫通ホールを円周方向に相互に離隔して持つリングを前記取付部材のアームに固定するとともに、台部材の軸に回転自在に固定し、リング及び取付部材のアームを回転しその突起とリングのホールとの係合によって取付部材のアームを必要な角度で固定し、突起はリングホールの外側から内側へ押し込むことによってリングのホールとの係合を解くように構成してもよい。
本発明のもう一つの実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、靴の靴底に対して垂直にその靴の背面に係合される1以上の中空のシリンダーと、
前記シリンダーの内部をスライドすることができる該シリンダーの数と同数のアーム部からなる取付部材と、
前記シリンダーと前記アーム部の各対において、該シリンダーに対し該アーム部を所望する位置に接合する固定部材とを備え、
斜面を上るときには、斜面の傾斜角に対応して、前記取付部材をスライドさせて前記固定部材で所定の位置に接合することにより、前記靴の踵部分を所定の高さに調節できることを特徴としている。
また、その実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、前記中空のシリンダーが1以上の円筒形又は角筒形であり、該シリンダーが複数個である場合、これらのシリンダー内をスライドする複数個のアーム部は、底辺部によってその下端附近のすべてを結合されてもよい。また、この斜面歩行用部材付き靴は、前記固定部材が前記アーム部を前記シリンダーに対して固定する雄ネジであり、該シリンダーがこの雄ネジを螺合するためにその内表面にネジ溝を備える小穴を有することとしてもよく、この場合、前記アーム部の表面には、前記ネジが嵌合する複数の凹部あるいは横溝を備えてもよい。
前記シリンダーが複数個ある場合、すべてのシリンダー内の同じ高さの適当な位置に水平方向に位置する一本の棒で連結したシリンダー内部に突出することができるバネで偏圧したそれぞれ1個のバネ式突起を設け、これらのすべての突起を一本の棒で連結し、シリンダー内を上下する取付部材の前記アームのすべてにはこの突起と係合する複数個の凹部又は穴を設け、このバネ式突起をシリンダーの外方に偏圧して該アームを上下し、所定の高さで該バネ式突起をアームの凹部又は穴と係合させるようにバネの偏圧を開放することによりその位置で取付部材を固定し、バネ突起をシリンダー外方に向かって引っ張ることにより該アームの凹部との係合を解いてもよい。
本発明のさらなる実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、靴のつま先部の側面及び底面を囲むように嵌合されるU字型の台部材であって、U字型台部材の底辺部の両端部から上方に延びるアームを有し、該アームのほぼ中央には前記靴のつま先部の側面から外方向に延びる軸が取り付けられた台部材と、
前記台部材よりもアームが長い、2個のアームを有するU字型の取付部材であって、その両アームのほぼ中央には前記台部材の軸を差し込むための軸穴を有る取付部材と、
前記台部材の軸に係合することにより、前記台部材に前記取付部材を接合することができる固定部材とを備え、
斜面を下るときには、前記取付部材のアームが靴底に対して略垂直になるように前記固定部材で前記台部材に前記取付部材を接合することにより、前記靴のつま先部分の高さを調節できることを特徴としている。
また、その実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、下り斜面の傾斜角に対応して、前記靴底に対する前記取付部材のアームの角度を略垂直の位置から前方に向けて少なくとも90°の間で回転することにより調整できるものであってもよい。
そして、その実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、前記取付部材が、中央に軸穴を持つ2つの固定部材と、長手方向に延びるスライド用の縦穴を持つ2つのスライド部材とから構成されてもよく、この場合、前記取付部材の底辺部が、前記スライド部材のそれぞれの下端附近に結合され、前記スライド部材は、下り斜面の傾斜角に対応して、靴底に対し下方向にスライドできるように設けられてもよい。
また、前記固定部材は、対応する前記スライド部材の縦穴に平行する該スライド部材の両辺の縁に沿って、前記スライド部材を包み込むことができる枠を有する等、あるいは、前記固定部材に軸穴から該固定部材お幅方向所定の距離に小さな突起を有し、前記スライド部材にその縦穴に平行にもう一つの縦穴を設け、このもう一つの縦穴に小さな突起が嵌合できる等、両者の平行関係を確保する手段を設けてもよい。
ここで、その実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、前記取付部材の軸穴から底辺部までの長さが、前記靴のつま先部分の側面の水平方向における長さの少なくとも半分以上であってもよい。そして、前記台部材の前記軸は、該台部材の両アーム及び前記靴のつま先部を貫通する一本の軸であってもよい。
さらに、上記のいずれかの斜面歩行用部材付き靴において、前記固定具は、前記台部材の軸と螺合する雌ねじを有していてもよく、あるいは、前記台部材の軸から所定の距離に位置し、バネの偏圧によって台部材のアーム外側に突出する1個の突起を設け、この突起と係合する複数の貫通ホールを円周方向に相互に離隔して持つリングを前記取付部材のアームに固定するとともに、台部材の軸に回転自在に固定し、リング及び取付部材のアームを回転し突起とリングのホールとの係合によって取付部材のアームを必要な角度で固定し、突起はリングのホールの外側から内側へ押し込むことによってリングのホールとの係合を解いてもよい。
本発明のさらなる実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、上述されたいずれかの実施の形態における斜面歩行用部材付き靴の各部材をそれぞれに応じて靴のつま先部及び踵部に備える構成としてもよい。
さらに、本発明の別の実施態様においては、前記台部材の両アームの形状をその上端において直角に後方に曲がりその先端が概ね靴底の最後部に達するプレート状としの先端近くに前記の台部材の第一の軸と同様な第二の軸を設け、取付部材の固定部材には軸穴と反対の端近くに該固定部材より長さがやや小さい筋交い部材の一端を回転自在に接合し、この筋交い部材の長手方向の一側方に複数の凹型切り込みを設け、この切込みを前記プレート先端近くの第二の軸に係合させ固定具で固定することにより取付部材のアームを必要な角度で固定する[筋交い部材を使用しないときは該部材の他の端は切込みを第一の軸に係合させて固定する]ことを特徴とする請求項1乃至9に記載の斜面歩行用部材付き靴
本発明のさらにもう一つの実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、靴の土踏まず部分の両側面及び底面を囲むように嵌合されるU字型の台部材であって、該台部材の土踏まず部分の側面及びその反対側面から上方に延びる両プレート部には、1以上の円筒形あるいは角筒形の中空のシリンダーが該プレート部の横幅に対し所定の位置に該プレート部の長手方向にそれぞれ取り付けられている、台部材と、
前記シリンダーの内部をスライドすることができる該シリンダーの数と同数のアーム部からなる、前記両プレート部にそれぞれ取り付けられる2つの取付部材と、
前記シリンダーと前記アーム部との各対において、該シリンダーに対し該アーム部を所望する位置に接合する固定部材とを備え、
斜面に対して概ね水平方向に歩くときには、斜面の傾斜角に対応して、両足の靴の双方の谷側の前記取付部材をスライドさせて前記固定部材で所定の位置に接合することにより、前記靴底部分を概ね水平に保ち、歩行を容易にすることを特徴としている。
また、その実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、前記台部材の中空のシリンダーが1以上の円筒形又は角筒形であり、該シリンダーが複数個である場合、これらのシリンダー内をスライドする複数個のアーム部は、底辺部によってそのすべてのアーム部の下端附近を結合されてもよい。また、この斜面歩行用部材付き靴は、前記固定部材は、前記アーム部を前記シリンダーに対して接合して固定する雄ネジであり、該シリンダーは、この雄ネジを螺合するためにその内表面にネジ溝を備える小穴を有することとしてもよく、この場合、前記アーム部の表面には、前記雄ネジが嵌合する複数の凹部あるいは横溝を備えてもよい。
前記シリンダーが複数個である場合、すべてのシリンダー内の同じ高さの適当な位置に水平方向に位置する一本の棒で連結したシリンダー内部に突出することができるバネで偏圧したそれぞれ1個のバネ式突起を設け、シリンダー内を上下する取付部材の前記アームのすべてにはこの突起と係合する複数個の凹部又は穴を設け、そのバネ式突起をシリンダーの外方に偏圧して該アームを上下し、所定の高さで該バネ式突起をアームの凹部又は穴と係合させるようにバネの偏圧を開放することによりその位置で取付部材を固定し、バネ式突起をシリンダー外方に向かって引っ張ることにより該アームの凹部との係合を解いてもよい。
本発明のさらなる実施の形態における斜面歩行用部材付き靴は、上述の靴の側面にシリンダーを備えるいずれかの斜面歩行用部材付き靴に、上述の靴の踵部分に台部材、取付部材、及び固定部材を備える実施の形態における斜面歩行用部材付き靴の各部材、あるいは、上述の靴の背面にシリンダーを備える実施の形態における斜面歩行用部材付き靴の各部材のいずれかと、上述の靴のつま先部分に台部材、取付部材、及び固定部材を備える実施の形態における斜面歩行用部材付き靴の各部材とを一方又は両方備える構成としてもよい。
したがって、本発明に係る斜面歩行用部材付き靴を履くことにより、斜面の傾斜によらずおよそ一般的な斜面の上り又は下りの際あるいは斜面に平行に歩行する際に、最も自然に歩行しやすい姿勢で歩行することができる。
また、部材は収納あるいは格納可能であるので、斜面を上り下りするとき以外の平坦な場所を歩行する際にも、取付具を持ち歩かなくてよい。このため、当該靴のユーザーの利便性を増すことができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、図1〜図12を参照して本発明に係る斜面歩行用部材付き靴の第1〜第4の実施の形態を詳細に説明する。なお、いずれの実施の形態においても、説明の便宜上、場合により靴として登山靴を用いて説明する。
最初に、斜面を上る場合に用いられる、踵部分を高くすることができる登山靴について説明する(第1及び第2の実施の形態)。
(第1の実施の形態)
まず、図1〜4を参照して、本発明の第1の実施の形態の構成を説明する。
図1〜図3は、本発明を適用した第1の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴1の歩行用部材の構成を示す図である。これらの図において、斜面歩行用部材付き登山靴1は、登山靴以外に、台部材11、雌形止めネジ12a及びこれに螺合する雄形ネジ付き軸12b、U字型部材アーム固定部材13、U字型部材アームスライド部材14、並びに、U字型部材底辺部材15を備える。
台部材11は、図1(a)及び(b)に示すような形状をしており、これは、例えば、細長い金属板で作成された金具であり、斜面歩行用部材付き登山靴1の踵部4の側面で踵部4の長さ方向の概ね中央に、靴底の表面(地面)に対しほぼ垂直に靴底及び靴の側面に沿ってU字型に嵌合させられ、任意の位置においてビス等で踵部4に固定される。この部材は、所定の強度を有するものであれば、プラスチックや磁器材料などの金属以外の材料であってもよい。
台部材11は、斜面歩行用部材付き登山靴1の踵部4の両側面にそれぞれ係合するアーム部11a(図1(a)参照)、及び、当該登山靴1の踵部4の靴底面に係合する底面部11b(図1(b)参照)からなる。各アーム部11aのほぼ中央部分には、当該登山靴1の踵部4から外側に向けて水平に突出した金属等の短い雄形ネジ付き軸12bが両側に固定して設けられ、その軸12bの先端部分には雌形止めネジ12a用のネジ溝が設けられている。
なお、台部材11の雄形ネジ付き軸12bは、この台部材11の両アームとともに、当該登山靴1の踵部4を貫通する一本の軸としてもよい。この場合、この軸12bは、台部材11に固定されるとともに、登山靴1の踵部4の内部にもしっかりと固定されるので、斜面歩行用部材付き登山靴1は、より安定して使用することができる。
図2は、上述した台部材11に取り付けられる各部材(U字型部材アーム固定部材13、U字型部材アームスライド部材14、及びU字型部材底辺部材15)の構成を示す。
図2(a)において、登山靴1の両側面に台部材11と接するように取り付けられる2枚のU字型部材アーム固定部材13は、長方形の金属板であり、それぞれの中央部付近に軸穴13aを有する。この固定部材13は必ずしも常に長方形の金属板である必要はなく、円形平板状のものでもよく、場合によってはその大小は問題でない。また、この固定部材13は条件によっては不要とすることもできる。同様に、登山靴1の両側面であって、上述の固定部材13と台部材11の間にどちらにも接するように取り付けられる2枚のU字型部材アームスライド部材14も、長方形の金属板として図示されているが、必ずしもこの形状に限るものではない。部材14が台部材11に係合したときにおいて広範囲にスライドさせるためにその長さはU字型部材固定部材13よりも長い。また、各U字型部材アームスライド部材14は、そのほぼ中心部から長さ方向に延びる所定の長さのスライド用縦穴14aが設けられる。
また、U字型部材アーム固定部材13は、対応するU字型部材アームスライド部材14のスライド用縦穴14aに平行する両辺の縁(図2(a)の右図において、長手方向の向かい合う両辺に沿って)に、U字型部材アームスライド部材14を包み込むことができる枠(図示せず)を有することとしてもよい。この場合、U字型部材アームスライド部材14は、その長手方向の両辺をU字型部材アーム固定部材13の枠によってしっかりと固定されるので、斜面歩行用部材付き登山靴1は、より安定して使用することができる。
その他、U字型部材固定部材13の軸穴13aから所定の距離に小さな突起(図示せず)を設けるとともに、U字型部材アームスライド部材14に縦穴14aに平行するもう一つの縦穴(図示せず)を設け、このもう一つの縦穴に小さな突起が嵌合できるように構成する等、U字型部材アーム固定部材13とU字型部材アームスライド部材14との平行関係を確保する手段はいくつも考えられ得る。
図2(b)において、2枚のU字型部材アームスライド部材14は、U字型部材底辺部材15とほぼ直角をなすように、各々の対応する一端又はこれに近い部位がU字型部材底辺部材15の両端に結合される。このU字型部材底辺部材15は、踵部分にかかる当該靴を履く人の体重を支えることができるものであれば、どのような材料であってもよいが、登山をするときに使用することを考慮すると硬質のもの(例えば、金属等)がよい。また、底辺部材15がスライド部材14の下端よりも上方に取り付けられるときは、当然ながら、スライド部材14の下端が靴を履く人の体重を部分的に支持することになるので、これに耐える強度が必要である。
以下、2枚のU字型部材アーム固定部材13、2枚のU字型部材アームスライド部材14、及びU字型部材底辺部材15を総称して、適宜U字型部材16として説明する(図3(b)参照)。
図3(a)は、上述した部材を登山靴に備えた本発明を適用した第1の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴1のU字型部材16の動作範囲を示す図である。
この図3(a)に示されるように、U字型部材16は、台部材11の雄形ネジ付き軸12bを中心に(図3(a)では、雌形止めネジ12aの後側にあるため、図示せず)、靴底にほぼ直角の位置から後方に約90度回転することができる。
ここで、図2(a)からも分かるように、U字型アーム固定部材13は、軸穴13aを中心に回転することはできるが、踵部分に対して上下にスライドすることはできない。それに対して、U字型アームスライド部材14は、回転もスライドも可能である。
図3(b)は、図3(a)における台部材11(図3(a)では、U字型部材アーム固定部材13の後側にあるため、図示せず)とU字型部材アーム固定部材13及びU字型部材アームスライド部材14の接合部を示す側面図である。
この図3(b)において、この接合部は、台部材11の雄形ネジ付き軸12bに、U字型部材アームスライド部材14のスライド用縦穴14a、U字型部材アーム固定部材13の軸穴13aの順に差し込まれ、その上から雌形止めネジ12aをこれらの穴に挿入しながら雄形ネジ付き軸12bに螺合することにより、当該靴の踵部4に嵌合している台部材11のアーム部11aにこれらの部材を圧接、固定させる構造である。
また、U字型部材16は、U字型部材アーム固定部材13及びU字型部材アームスライド部材14を台部材11に圧接、固定する雌形止めネジ12aを弛めることにより、靴底の表面(すなわち、地面)に対し概ね垂直の位置からU字型部材底辺部材15が靴の後方に向かって雄形ネジ付き軸12bを中心に約90°回転して靴底表面に対し水平に配置することができる(図3(a)参照)。
そして、U字型部材16を垂直にしてからU字型部材アームスライド部材14を最下位にスライドして固定したときに登山靴1の踵部分の高さが最高となり、U字型部材16を水平にしたときにその高さが最低(すなわち、登山靴そのものの踵の高さ)となる。このように、U字型部材アーム固定部材13及びU字型部材アームスライド部材14を水平にして雌形止めネジ12aにより登山靴1の踵部4の側面に圧接、固定することによって、当該靴のU字型部材16は平坦な場所における歩行にも支障がないように装着可能である。
ここで、U字型部材16を登山靴1に装着したまま回転できるようにするため、つまり、U字型部材底辺部材15が登山靴1の踵部4に引っ掛からずに雄形ネジ付き軸12bを中心にU字型部材16を回転できるようにするために、このU字型部材底辺部材15の回転半径、すなわち、雄形ネジ付き軸12bからU字型部材底辺部材15までの長さは、図3(a)において、U字型部材アームスライド部材14が踵部4の水平方向ほぼ中央に設けられたときは、当該登山靴1の踵部4の側面の長さ方向における該長さの少なくとも半分強以上とする必要がある。
次いで、登山靴1の踵部分の高さを調整する方法について説明する。
U字型部材アーム固定部材13及びU字型部材アームスライド部材14を台部材11に圧接、固定している両側の雌形止めネジ12aを弛め、登山靴1の踵部分が適当な高さになるように台部材11の雄形ネジ付き軸12bを中心にU字型部材16を所定の角度だけ回転し、その位置において当該雌形止めネジ12aを締めてU字型部材アーム固定部材13及びU字型部材アームスライド部材14を台部材11に圧接、固定する。
U字型部材16を靴底に対し略垂直としても当該登山靴の踵部分の調整が付かない程急な斜面の場合には、前記方法とは異なり、雌形止めネジ12aを弛めてU字型部材16を靴底に対し略垂直とした後、U字型部材アーム固定部材13に対しU字型部材アームスライド部材14を下方にスライドさせ、上り斜面の角度に対して登山靴1の踵部分を適当な高さに調整してから、雌形止めネジ12aを締めることによりU字型部材アーム固定部材13及びU字型部材アームスライド部材14を台部材11に圧接、固定する。
以上のように、本実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴1は、U字型部材16を用いて登山靴1の踵部分の高さを所望の高さに調整することにより、この登山靴1を履いて歩行している人の体をより自然体に近い状態に保持することができる。
なお、本実施の形態において、U字型部材16を圧接、固定するために、雌形止めネジ12aを用いて説明したが、台部材11にしっかりと固定することができる固定部材であればどのようなものでもよい。
図4は、本発明を適用した第1の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴1の取付部分の変形例を示す図である。この図4において、斜面歩行用部材付き登山靴1は、登山靴以外に、台部材11、軸12、U字型部材アーム固定部材13、U字型部材底辺部材15、リング17、貫通ホール(リングホール)17a、及び突起18を備える。この変形例では、U字型部材アーム固定部材13のアーム部と台部材11との取付部分のみが上記実施の形態と異なるので、変更点のみを説明し、その他の説明は省略する。
リング17は、U字型部材アーム固定部材13の外側に接するように台部材11の軸12にその中心を固定され、所定の角度(図では約90°)円周方向に回転させることができる。また、リング17の円周上には、一定の角度毎にリング17を貫通するホール17aが複数設けられる。このリングのホール17aは、台部材11のU字型部材アーム固定部材13に接する側に突出する突起18と係合することができる。
突起18は、上述のように台部材11の軸12から横方向に離隔した箇所(図4では、軸からつま先方向側)から突出するものであるが、この突起18は、バネの偏圧によって台部材11から外側に突出するものである。
次いで、取付部分を変更した登山靴1の踵部分の高さを調整する方法について説明する。斜面の傾斜に対応して登山靴1の踵部分が適当な高さになるように、突起18をリングのホール17aの外側から内側へ押し込むことによって突起18とリングのホール17aとの係合を解き、リング17と共にU字型部材アーム固定部材13を回転させてアームの角度を必要な(適当な)角度に調節し、その位置で突起18を押し込むことを止めることにより台部材11から外側に突出した突起18と対応するリングのホール17aとを係合して、U字型部材アーム固定部材13を所定の角度に固定して、所望する登山靴1の踵部分の高さに調整する。
以上のように、第1の実施の形態の取付部分に対する変形例では、U字型部材アーム固定部材13等を台部材11に接合する場合において、雌形止めネジ12aと雄形ネジ付き軸12bを用いる代わりに、リング17とバネ式突起18を用いることとした。そのため、雌形止めネジ12aを雄形ネジ付き軸12bに螺合するよりも簡易にU字型部材アーム固定部材13等を台部材11に圧接、固定することができるので、ユーザーの利便性を向上することができるとともに、より短時間で登山靴1の踵部分の高さを調整することができる。
本変形例では、U字型部材アームスライド部材14を省略して説明したが、このU字型部材アームスライド部材14を含んでアームの角度を調節すると共に、スライドさせることによって登山靴の踵部の高さを調整することとしてもよい。
なお、第一の実施の形態の変形として、図13に第5の実施の形態として示す取付部分をして下に説明する。同図において、台部材11の両アームの形状を、その上端において直角に後方に曲がりその先端が概ね靴底の最後部に達するプレート状とし、その先端近くに台部材11の第一の軸12と同様な第二の軸39を設け、取付部材16の固定部材13には軸穴13aと反対の端近くにこの固定部材より長さがやや小さい筋交い部材40の一端41を回転自在に接合し、この筋交い部材40の長手方向の一側方に複数の凹型切込み42を設け、この切込みを前記プレート先端近くの第二の軸39に係合させ、雌ネジ等の固定具で固定することにより取付部材16のアーム13又はアーム13、14を必要な角度で固定する。また、筋交い部材40の使用を必要としないときは、該部材を前記アームの回りに回転させて部材の切込み42を第一の軸12に係合させて固定する。このような取付部分は靴底の前端になこともできる。これは前記の「後方」、「最後部」を「前方」、「最前部」と読みかえることにより容易に理解できる。図8、9、10の取付部分を変形することによって達成できる。また、筋交い部材40の幅をやや小さくすることにより操作を容易にすることができる。
(第2の実施の形態)
次に、図5〜図7を参照して、本発明の第2の実施の形態を詳細に説明する。図5は、本発明を適用した第2の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴2の歩行用部材の構成を示す図である。この図5において、斜面歩行用部材付き登山靴2は、登山靴以外に、2個の雄形止めネジ21、1個のU字型部材22、及び2本のシリンダー23を備える。
U字型部材22は、シリンダー23の間隔に対応する一定間隔に設けられた2本の垂直アーム部22aと、これらの一端(下端)を底部で係合する1本の台座22bとからなるが、この垂直アーム部22aの数は2本以上であってもよい。2本以上の場合には、後述するシリンダー23もこれに対応する数を有し、それに見合う間隔に配置される。また、垂直アーム部22aは、後述するシリンダー23内で摺動できるような形状(例えば、シリンダー23の内径よりも少し小さい外形を持つ円柱形)を有するが、その形状は円柱形に限定されず、例えば、角筒形(例えば、四角柱)などであってもよい。
2本のシリンダー23は、靴底の表面(地面)とほぼ垂直に一定の間隔で、ビス等により登山靴の後部背面に2点以上で接合、固定される(接合部は図示せず)。垂直アーム部22aが同時にその中を摺動できるように、それらは互いに平行である。
また、各シリンダー23は、その内部が中空であり、所定の高さ(シリンダー23の長さ方向で中心よりも下側の方がよい。)に当該登山靴の後部背面に対し垂直に雄形止めネジ21を螺合するための小穴23aが設けられる(図5では直接図示されないが、図5(a)を参照)。この小穴23aは、その内表面に雄形止めネジ21と螺合するための雌形のネジ溝を有する。この小穴23aに雄形止めネジ21を締め付けることにより、シリンダー23に挿入されたU字型部材22の垂直アーム部22aを圧接して、所望する位置にU字型部材22を固定することができる。このシリンダー23は、適当な強度があるものであれば金属製以外のものでもよい。
なお、雄形止めネジ21によるU字型部材22の固定をより確実なものとするために、例えば、図5(a)及び(b)に示されるように、U字型部材22の垂直アーム部22aの雄形止めネジ21と接する表面部分には、雄形止めネジ21の先端が引っ掛かる横溝22cを一定間隔で付けておくか、あるいは、雄形止めネジ21の先端が嵌入される凹部を一定間隔で設けておくことが望ましい。
また、第1の実施の形態と同様に、上記各器具を装着したまま平坦な場所における歩行にも支障がないように、U字型部材22は、その垂直アーム部22aがシリンダー23内に最も深く挿入された場合には、その台座22bが地面に接しないように調整され得る。
この第2の実施の形態では、シリンダー23内に格納されるU字型部材22のアーム部22aを上下にスライドし、シリンダー23の小穴23aに雄形止めネジ21を螺合して圧接、固定することにより、登山靴の踵部分の高さを調整することができる点で第1の実施の形態と異なる。
次いで、登山靴2の踵部分の高さを調整する方法について説明する。
図5において、U字型部材22をシリンダー23内で固定している2つの雄形止めネジ21を弛め、登山靴2の踵部分が適当な高さになるように2つの垂直アーム部22a(すなわち、U字型部材22)をスライドする。そして、適当な位置において、上記横溝22cに雄形止めネジ21の先が圧接されるように、該2つのネジ21を締めて、U字型部材22をシリンダー23内に固定する。
なお、この第2の実施の形態では、登山靴2の踵部分の高さは、より強固に圧接、固定するためには、雄形止めネジ21によって固定される垂直アーム部22aの位置は、垂直アーム部22aの横溝22c又は凹部24dが設けられている範囲内のみである。
以上のように、本実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴2は、U字型部材22などを用いて登山靴2の踵部分の高さを所望の高さに調整することにより、この登山靴2を履いて歩行している人の体をより自然に近い状態に保持することができる。
図6は、本発明を適用した第2の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴2の取付部分の変形例を示す図である。この図6において、斜面歩行用部材付き登山靴2は、登山靴以外に、1個のU字型部材22、2本のシリンダー23、1本のバー(棒)24、及び2個のバネ式突起25を備える。以下、本変形例の取付部分について説明し、重複した説明は省略する。なお、シリンダー23の形状が円筒形あるいは角筒形のいずれであってもよく、それらに限られないのは、上記と同様である。
上述のように、シリンダー23には小穴23aがあり、U字型部材22には一定間隔に設けられた複数の凹部22dがある。この凹部22dは、小穴23aを挟んで後述するバネ式突起25と係合し、U字型部材22を所定の長さに固定することができる(つまり、登山靴の踵部分を所定の高さに固定できる。)。ここで、凹部22dはバネ式突起25と係合できるものであれば、上述の横溝22cであってもよい。
なお、この変形例において、バネ式突起25は雄形ネジの形状を有しておらず、小穴23aの内表面もネジ切りをされる必要はない。この点で、第2の実施の形態の他の例に比べ、シリンダー23の製造が容易であるという利点を有する。
凹部22dと係合するバネ式突起25は、シリンダー23の本数に対応する数設けられ、それらはすべて1つのバー24によって連結、固定される。そのため、このバー24は、一体としてバネの偏圧を受ける。
次いで、取付部分を変更した登山靴2の踵部分の高さを調整する方法について説明する。斜面の傾斜に対応して登山靴2の踵部分が適用な高さになるように、バー24をシリンダー23の外側に向かって引っ張ることにより、U字型部材22のアーム部22aの凹部22dと複数のバネ式突起25との係合を解き、U字型部材22の上方あるいは下方にスライドさせて所定の位置に調整する。そして、バー25を引っ張ることを止めることによりバネ式突起25と凹部22dとを係合させ、その位置でU字型部材22を固定して、所望する登山靴2の踵部分の高さに調整する。
以上のように、第2の実施の形態の取付部分(固定部分)に対する変形例では、U字型部材22をシリンダー23と所定の位置で係合する場合において、雄形止めネジ21を用いる代わりに、バネ式突起25を用いることとした。したがって、雄形止めネジ21をU字型部材22の横溝22cに嵌入するよりも簡易にU字型部材22をシリンダー23に固定することができるので、この登山靴2を履くユーザーの利便性を向上することができるとともに、瞬時に登山靴2の踵部分の高さを調整することができる。
図7は、本発明を適用した第2の実施の形態における斜面歩行用金具付き登山靴2のU字型部材22の変形例を示す図である。この図7において、斜面歩行用部材付き登山靴2は、登山靴以外に、1つの雄形止めネジ21、1つのシリンダー23、及び1つのスライド板26を備える。この図7の斜面歩行用部材付き登山靴2は、シリンダー23を一つにした点と、垂直アーム部22aの代わりに一つのスライド板26にした点(すなわち、台座22bを必要としない点)で上記図5及び図6の登山靴2とは異なる。
シリンダー23は、1つの中空の長方形の角柱(角筒形)であり、その中をスライド板26がスライド可能である。上述の図5及び図6の場合と同様に、シリンダー23には、当該登山靴2の後部背面に対し垂直な所定の高さ(シリンダー23の長さ方向で中心よりも下側の方がよい)に雄形止めネジ21と螺合してスライド板26を固定する小穴23aが設けられる。スライド板26を固定する部材として雄形止めネジ21を使用する場合には、この小穴23aの内表面は雌形にネジ切られている。なお、このシリンダー23は、適当な強度があるものであれば金属製以外のものでもよい。
スライド板26は、蒲鉾板のような長方形の角柱であり、上記雄形止めネジ21と接する表面部分には凹部あるいは横溝が一定間隔で設けられる(図7においては凹部26aを示す)。このスライド板26も、シリンダー23と同様に適当な強度があるものであればどのような材料のものでもよい。しかしながら、金属製であると登山靴2の背面部の重量が重くなり歩行に支障をきたすことも考えられるので、軽量な強化プラスチックなどの方がよい場合もあろう。
なお、この実施の形態では、2以上の垂直アーム部22aを用いず、1つのスライド板26としたので、これらの垂直アーム部22aの一端を互いに固定する台座22bが不要である。このため、変形例の斜面歩行用部材付き登山靴2は、上記他の第2の実施の形態のものに比べて、部品の点数を減らすことができ、取付部材の作製が簡略化されるという利点を有する。
また、図7において、スライド板26を固定するための部材として、1つの雄形止めネジ21のみを示したが、雄形止めネジ21の数は1つに限られず、所定間隔で垂直方向あるいは水平方向に複数用いられてもよい(水平方向の場合、小穴23aは適当な距離をおいて複数備えられ、凹部26a又は横溝は小穴23aに対応する位置で垂直方向に複数配列される)。そして、例えば、2つの雄形止めネジ21が用いられる場合、図6のバネ式突起25を備えるバー24を利用することもできる。雄形止めネジ21が1つの場合よりも複数個の場合の方がスライド板26をしっかりと固定できることはいうまでもない。
なお、この変形例における登山靴2の踵部分の高さを調整する方法は、上記図5又は図6の登山靴2の場合と同様であるため、ここでは重複記載を避けてその説明を省略する。
(第3の実施の形態)
次に、斜面を下る場合に用いられる、つま先部分を高くすることができる登山靴について説明する。
図8〜図10は、本発明を適用した第3の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴3の歩行用部材の構成を示す図である。これらの図において、斜面歩行用部材付き登山靴3は、第1の実施の形態と同様に、登山靴以外に、台部材31、雌形止めネジ32a及び雄形ネジ付き軸32b、U字型部材アーム固定部材33、U字型部材アームスライド部材34、及びU字型部材底辺部材35を備える。
なお、U字型部材アーム固定部材33、U字型部材アームスライド部材34、及びU字型部材底辺部材35は、第1の実施の形態と同様な構造であるので、その図示を省略し、第1の実施の形態で用いた図面(図2)によって説明する。この場合、本実施の形態では、図2におけるU字型部材アーム固定部材13の軸穴13aをU字型部材アーム固定部材33の軸穴33aと、U字型部材アームスライド部材14のスライド用縦穴14aをU字型部材アームスライド部材34のスライド用縦穴34aとする。
台部材31は、第1の実施の形態における台部材11と同様な構造であり、図8(a)及び(b)に示すように、斜面歩行用部材付き登山靴3のつま先部5の側面でつま先部5の長さ方向の中心から幾分先端側にずれた位置に取り付けられ、靴底の表面(地面)に対しほぼ垂直に靴底及び靴の側面に沿ってU字型に嵌合させられ、任意の位置においてビス等で靴底に固定される。
なお、本発明の第1の実施の形態と同様に、台部材31の雄形ネジ付き軸32bは、この台部材31の両アームとともに、当該登山靴3のつま先部5を貫通する一本の軸としてもよい。この場合、この軸32bは、台部材31に固定されるとともに、登山靴3のつま先部3の内部にもしっかりと固定されるので、斜面歩行用部材付き登山靴3は、より安定して使用することができる。
U字型部材アーム固定部材33は、第1の実施の形態におけるU字型部材アーム固定部材13と同様な構造であり(図2(a)参照)、そのほぼ中心部に軸穴33aが設けられる(図示省略)。
U字型部材アームスライド部材34は、第1の実施の形態におけるU字型部材アームスライド部材14と同様な構造であり(図2(a)及び(b)参照)、そのほぼ中心部から長手方向に所定の長さでスライド用縦穴34aが設けられる(図示省略)。
なお、本発明の第1の実施の形態と同様に、U字型部材アーム固定部材33は、対応するU字型部材アームスライド部材34のスライド用縦穴(図示せず)に平行する両辺の縁に、U字型部材アームスライド部材34を包み込むことができる枠(図示せず)を有することとしてもよい。この場合、U字型部材アームスライド部材34は、その長手方向の両辺をU字型部材アーム固定部材33の枠によってしっかりと固定されるので、斜面歩行用部材付き登山靴3は、より安定して使用することができる。
U字型部材底辺部材35は、第1の実施の形態と同様に、2枚のU字型部材アームスライド部材34と略直角をなすように、その両端が各々対応するU字型部材アームスライド部材34の一端に結合される。
図9は、上述した部材を登山靴に備えた本発明を適用した第3の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴3のU字型部材アーム固定部材33、U字型部材アームスライド部材34、及びU字型部材底辺部材35の動作範囲を示す図である。第1の実施の形態と同様に、上記3つの部材を総称して適宜U字型部材36として説明する。
U字型部材36は、U字型部材アーム固定部材13及びU字型部材アームスライド部材14を台部材11に圧接、固定する雌形止めネジ32aを弛めることにより、靴底の表面(すなわち、地面)に対し概ね垂直の位置からU字型部材底辺部材35が靴のつま先方向に雄形ネジ付き軸32bの周りに90°以上回転して靴底表面に対し水平、あるいはつま先部分の上方に配置することができる。
そして、登山靴3は、U字型部材36を水平、あるいはつま先部の上方に配置したときに登山靴3のつま先部分の高さが最低となる。この状態で雌形止めネジ32aを締める(雄形ネジ付き軸32bに螺合する)ことにより台部材31の側面に圧接、固定することによって、U字型部材底辺部材35が靴の先端又はつま先の底面より上方に配置して固定される。したがって、当該登山靴3は、平坦な場所における歩行にも支障がないように装着可能である。
また、第1の実施の形態と同様に、登山靴3のつま先部分の高さを広範囲で調整可能にするために、U字型部材36を所定の角度だけ回転し、あるいは、斜面が急な場合には、U字型部材36を靴底表面に対しほぼ垂直にし、さらにはU字型部材アームスライド部材34を下方にスライドさせて、その位置において雌形止めネジ32aを締め付けることによりU字型部材36を台金具31に圧接、固定することができる。これにより、当該登山靴3のつま先の高さを下り斜面の角度に適した任意の高さに調整することが可能である。
図10は、本発明を適用した第3の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴3の取付部分の変形例を示す図である。この図10において、斜面歩行用部材付き登山靴3は、登山靴以外に、台部材31(図示せず)、軸32、U字型部材アーム固定部材33、U字型部材アームスライド部材34、U字型部材底辺部材35、リング37、貫通ホール(リングホール)37a、及び突起(バネ式)38を備える。この変形例では、U字型部材アーム固定部材33及びU字型部材アームスライド部材34と図示しない台部材31との取付部分のみが上記図9の実施の形態と異なる。
なお、各部材の構成及びその動作は、前述した第1の実施の形態の変形例と同様であるので、ここでは説明を省略する。また、各部材の構成及びその動作が同様であることにより、上記第1の実施の形態の変形例と類似(適用場面が斜面の登りと降りの違いがある)の効果を有することはいうまでもない。
以上のように、本発明を適用した第1〜第3の実施の形態では、斜面歩行用部材付き登山靴1〜3は、その踵部分又はつま先部分の高さを斜面の角度に合わせて調整することができるU字型部材アーム固定部材13若しくは33、U字型部材アームスライド部材14若しくは34、及びU字型部材底辺部材15若しくは35、又は、U字型部材22若しくはスライド板26及びシリンダー23を備える構成とした。
したがって、歩行中に平坦地から斜面に、又は、斜面から平坦地に差しかかる度に、いちいちこれらの取付部材を付けたりはずしたりする必要がないので、本発明が適用される斜面歩行用部材付き登山靴1〜3は、登山の際の利便性が向上するとともに、取付部材をはずさないまま一般の生活でもその靴を使用することができる。
また、本発明が適用される斜面歩行用部材付き登山靴1〜3は、斜面を上り下りするときには、ある程度離れた距離にある2つの部位にある支点により体重を支えることになるので、従来のものに比べ歩行中の安定感を増すことができる。
さらに、本発明の上記各実施の形態において3種類の取付具について説明したが、登山靴は、このうち、第1又は第2の実施の形態における踵部分に取り付けることができる取付部材のいずれかと、第3の実施の形態におけるつま先部分に取り付けることができる取付部材とを両方備える構成としてもよい。この場合には、本発明によって、それぞれの実施の形態の利点を有する斜面歩行用部材付き登山靴を提供することができる。
(第4の実施の形態)
図11及び図12を参照して、本発明の第4の実施の形態を詳細に説明する。図11は、本発明を適用した第4の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴10の歩行用部材の構成を示す図である。この図11において、斜面歩行用部材付き登山靴10は、登山靴以外に、2つの雄形止めネジ101、1個のU字型部材102、及び2本のシリンダー103を登山靴の両側面に1セットずつと、台部材104とを備える(図の簡略化のため、図11では、反対側面に取り付けられた部材は図示していない)。本実施の形態において、登山靴10の側面に配置された部材のほとんどは、上記第2の実施の形態において登山靴2の背面に取り付けられた取付部材と同様の構成である。
台部材104は、上記第1及び第3の実施の形態において登山靴の踵部4又はつま先部5にU字型に嵌合させられたものと同様な構成であり、登山靴の土踏まず部分の靴の両側面及び靴底に沿ってU字型に嵌合させられ、任意の位置においてビス等で固定される。台金具104の靴側面における横幅は、登山靴(又は人)の土踏まずに対応する長さ程度である。
U字型金具102は、シリンダー103の間隔に対応する一定間隔に設けられた2本の垂直アーム部102aと、これらの一端(下端)を底部で係合する1本の台座102bとからなる。上記第2の実施の形態と同様に、垂直アーム102aの数は2本以上であってもよく、この場合、シリンダー103もこれに対応する数を有し、それに見合う間隔に配置される。また、垂直アーム部102aは、シリンダー103内で摺動可能な形状であればよく、例えば、円柱形や角筒形などの形状である。
シリンダー103は、台金具104の長さ方向に対して適当な位置において台金具104の2点以上にビス等によってしっかりと固定される(接合部は図示せず)。また、シリンダー103は、垂直アーム部102aがその中を摺動できるように、互いに平行に配置され、その内部が中空である。
シリンダー103は、所定の高さに小穴が設けられる(図示せず)。この小穴は、その内表面に雄形止めネジ101と螺合するための雌形のネジ溝を有する。このシリンダー23は、適当な強度があるものであれば金属製以外のものでもよい。
なお、上記第2の実施の形態と同様に、雄形止めネジ101によるU字型部材102の固定をより確実なものとするために、例えば、図11に示されるように、U字型部材102の垂直アーム部102aの雄形止めネジ101と接する表面部分には、雄形止めネジ101の先端が引っ掛かる横溝102cを一定間隔で付けておくか、あるいは、雄形止めネジ101の先端が嵌入される凹部を一定間隔で設けておくことが望ましい。
次いで、登山靴10の側面の高さを調整する方法について説明する。本実施の形態の登山靴10は、斜面の傾斜に対して横(水平)方向に歩行する際に使用されるものである。
図11において、斜面を水平方向に歩行する際の谷側部分に該当する2つの雄形止めネジ101を弛め、登山靴10の斜面谷側の側面部分が斜面の角度に対して適当な高さになるように、2つの垂直アーム部102a(すなわち、U字型部材102)をスライドする。垂直アーム部102aの上記横溝102cに雄形止めネジ101の先が圧接されるように、この2つのネジ101を締めて、U字型部材102をシリンダー103内に固定する。
なお、このように斜面谷側のU字型部材102を所定の高さに固定したとき、登山靴10の斜面に対して尾根側に据え付けられたU字型部材102(図示せず)は、シリンダー103内で最も深く(最も高く)嵌入され、尾根側の登山靴10の側面は靴底の高さになっている。
以上のように、本実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴10は、U字型部材102などを用いて登山靴10の斜面の谷側部分の側面だけを高くすることによって、この登山靴10を履いて歩行している人の体をより自然に近い状態に保持することができる。
なお、上記では、片側の登山靴10の調整方法についてのみ説明したが、両側の靴の側面高さを調整する場合には、以下のような方法もある。すなわち、斜面に対して平行に歩行するとき、谷側の足の方が尾根側の足に比べて低くなるため、谷側の登山靴10をより高めに調整するという方法である。説明の便宜上、右手に谷を見ながら(右足が谷側)水平に歩行する場合について詳細に説明する。左足の登山靴10を上記方法で調整した後、右足の登山靴10に対しては、尾根側(進行方向に対して左側)のU字型部材102を左足の登山靴10の谷側のU字型部材102よりも高くする。そして、右足の谷側(進行方向に対して右側)のU字型部材102を斜面の角度に応じて尾根側の側面高さよりも高くする。このように両足について調整することにより、登山靴10を履いて歩行している人の体を一層自然に近い状態に保持することができる。
また、図11において、本実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴10の2つの雄形止めネジ101の代わりに、第2の実施の形態における図6のバネ式突起25を備えるバー24を利用することもできる。各部の構成及び動作については、第2の実施の形態において説明されているため、ここでは図示及び説明を省略する。
図12は、本発明を適用した第4の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴10の変形例を示す図である。この図12において、斜面歩行用部材付き登山靴10は、登山靴以外に、1つの雄形止めネジ101、1つのシリンダー103、及び一つのスライド板26を登山靴の両側面にそれぞれ備える。この図12の斜面歩行用部材付き登山靴10は、シリンダー103を一つにした点と、垂直アーム部102aの代わりに一つのスライド板105にした点(すなわち、台座102bを必要としない点)で上記図11の登山靴10とは異なる。
シリンダー103は、1つの中空の長方形の角柱(角筒形)であり、その中をスライド板26がスライド可能である。上述の図11の登山靴10と同様に、シリンダー103には、当該登山靴10の側面に対し垂直な所定の高さ(シリンダー103の長さ方向で中心よりも下側の方がよい)に雄形止めネジ101と螺合してスライド板105を固定する小穴103a(図示せず)が設けられる。スライド板105を固定する部材として雄形止めネジ101を使用する場合には、この小穴103aの内表面は雌形にネジ切られている。なお、このシリンダー103は、適当な強度があるものであれば金属製以外のものでもよい。
スライド板105は、蒲鉾板のような長方形の角柱であり、上記雄形止めネジ101と接する表面部分には凹部105aあるいは横溝が一定間隔で設けられる(図12では凹部を示す)。このスライド板105も、シリンダー103と同様に適当な強度があるものであればどのような材料のものでもよい。しかしながら、金属製であると登山靴10の両側面部の重量が重くなり歩行に支障をきたすことも考えられるので、軽量な強化プラスチックなどの方がよい場合もあろう。
なお、この実施の形態では、スライド板105を用いたので、台座102bが不要である。このため、変形例の斜面歩行用部材付き登山靴10は、上記図11の実施の形態のものに比べて部品の点数を減らすことができ、取付部材の作製が簡略化されるという利点を有する。
また、図12において、スライド板105を固定するために一つの雄形止めネジ101のみを使用したが、雄形止めネジ101の数は1つに限られず、所定間隔で垂直方向あるいは水平方向に複数用いられてもよい(水平方向の場合、小穴103aは適当な距離をおいて複数備えられ、凹部105a又は横溝は小穴23aに対応する位置で垂直方向に複数配列される。そして、例えば、2つの雄形止めネジ101が用いられる場合、上記第2の実施の形態の図6におけるバネ式突起25を備えるバー24を利用することもできる。雄形止めネジ101が1つの場合よりも複数の場合の方がスライド板105をしっかりと固定できることはいうまでもない。
なお、この変形例における登山靴10の谷側側面部の高さを調整する方法は、上記図11の登山靴10の場合と同様であるため、ここでは重複記載を避けてその説明を省略する。
以上のように、本発明を適用した第4の実施の形態では、斜面歩行用部材付き登山靴10は、その土踏まずの辺りの側面部分の高さを斜面の角度に合わせて調整することができるU字型部材102若しくはスライド板105、及びシリンダー103を備える構成とした。
したがって、本発明の斜面歩行用登山靴10によれば、登山中に斜面に対して水平方向に歩行する場合における、歩行している人の体をより自然に近い状態に保持することができるとともに、従来のものに比べ歩行中の安定感を増すことができる。
なお、この第4の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴10は、上記第1又は第2の実施の形態における踵部分に取り付けることができる取付部材のいずれかと、第3の実施の形態におけるつま先部分に取り付けることができる取付部材とを両方あるいは一方備える構成としてもよい。この場合には、本発明によって、それぞれの実施の形態の利点を有する斜面歩行用部材付き登山靴を提供することができる。
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に示された構成に限られず、特許請求の範囲の精神から逸脱しない範囲内において様々な変更及び変形も可能である。例えば、固定具は、ねじ以外の公知の部材を適宜組合せて用いることができる。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、斜面を上り下りするとき以外の平坦な場所を歩行する際にも、斜面歩行用の取付部材を持ち歩かなくてよく、斜面の傾斜にかかわらず踵又はつま先部の高さを調整して使用することにより、最も自然に歩行しやすい姿勢で歩行することができる。
また、本発明によれば、斜面に平行に横方向に歩行する場合には、靴の側面の谷側の高さを調整できるので、最も自然に歩行しやすい姿勢で歩行することができる。
【図面の簡単な説明】
図1(a)は、本発明を適用した第1の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴1のU字型金具アーム固定部材13を外した際の当該靴の側面図であり、図1(b)は、その場合における当該靴の裏面図である。
図2(a)は、本発明を適用した第1の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴1のU字型部材アーム固定部材13及びU字型部材アームスライド部材14の正面図であり、図2(b)は、U字型部材アームスライド部材14とU字型部材底辺部材15との結合状態を示す図である。
図3は、本発明を適用した第1の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴1のU字型部材アーム固定部材13、U字型部材アームスライド部材14、及びU字型部材底辺部材15の動作範囲を示す図である。
図4は、本発明を適用した第1の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴1の取付部分の変形例を示す図である。
図5(a)は、本発明を適用した第2の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴2の背面図であり、図5(b)は、当該靴の側面図である。
図6は、本発明を適用した第2の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴2の取付部分の変形例を示す図である。
図7は、本発明を適用した第2の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴2のU字型部材22の変形例を示す図である。
図8(a)は、本発明を適用した第3の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴3の側面図であり、図8(b)は、当該靴の裏面図である。
図9は、本発明を適用した第3の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴3のU字型部材アーム固定部材33、U字型部材アームスライド部材34、及びU字型部材底辺部材35の動作範囲を示す図である。
図10は、本発明を適用した第3の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴3の取付部分の変形例を示す図である。
図11は、本発明を適用した第4の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴10の側面図である。
図12は、本発明を適用した第4の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴10の取付部分の変形例を示す図である。
図13は、本発明を適用した第5の実施の形態における斜面歩行用部材付き登山靴10の取付部分の変形例を示す図である。
Claims (42)
- 靴の踵部の両側面及び底面を囲むように嵌合されるU字型の台部材であって、
U字型台部材の底辺部の両端部から上方に延びるアームを有し、該アームのほぼ中央には前記靴の踵部の側面から外方向に向かって延びる軸が取り付けられた台部材と、
前記台部材よりもアームが長い、2個のアームを有するU字型の取付部材であって、その両アームのほぼ中央には前記台部材の軸を差し込むための軸穴を有する取付部材と、
前記台部材の軸に係合することにより、前記台部材に前記取付部材を接合することができる固定部材とを備え、
斜面を上るときには、前記取付部材のアームが靴の側面から見て靴底に対して略垂直になるように前記固定部材で前記台部材に前記取付部材を接合することにより、前記靴の踵部分の高さを調節できることを特徴とする斜面歩行用部材付き靴。 - 上り斜面の傾斜角に対応して、前記靴底に対する前記取付部材のアームの角度を略垂直の位置から後方に向けて少なくとも90°の間で回転することにより調整できることを特徴とする請求項1記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記取付部材の前記アームは、中央に軸穴を持つ固定部材と、略中央から長手方向の一端へ向かって延びるスライド用の縦穴を持つスライド部材とからなることを特徴とする請求項1記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記固定部材は、対応する前記スライド部材の縦穴に平行する該スライド部材の両辺の縁に沿って、前記スライド部材を包み込むことができる枠を有することを特徴とする請求項3記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記スライド部材は、前記縦穴に平行にもう一つの縦穴を設け、前記固定部材は、前記軸穴から前記固定部材の幅方向所定の距離に前記縦穴に嵌合する位置に小さな突起を設け、該もう一つの縦穴に該小さな突起が嵌合した状態で、該スライド部材がスライドすることを特徴とする請求項3記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記取付部材の底辺部材は、前記取付部材の両アームの各スライド部材の一端に結合され、前記スライド部材は、上り斜面の傾斜角に対応して、靴底に対し下方向にスライドできることを特徴とする請求項3乃至5の何れか一項に記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記取付部材の両アームの軸穴から底辺部材までの長さは、前記靴の踵部分の側面の水平方向における長さの少なくとも半分以上であることを特徴とする請求項1記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記台部材の前記軸は、該台部材の両アーム及び前記靴の踵部を貫通する一本の軸とすることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記固定部材は、前記台部材の軸と螺合する雌ねじを有することを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記台部材の両アームの形状をその上端において直角に後方に曲がりその先端が概ね靴底の最後部に達するプレート状としの先端近くに前記の台部材の第一の軸と同様な第二の軸を設け、取付部材の固定部材には軸穴と反対の端近くに該固定部材より長さがやや小さい筋交い部材の一端を回転自在に接合し、この筋交い部材の長手方向の一側方に複数の凹型切り込みを設け、この切込みを前記プレート先端近くの第二の軸に係合させ固定具で固定することにより取付部材のアームを必要な角度で固定することを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記台部材の両アームの形状をその上端において直角に前方に曲がりその先端が概ね靴底の最前部に達するプレート状としの先端近くに前記の台部材の第一の軸と同様な第二の軸を設け、取付部材の固定部材には軸穴と反対の端近くに該固定部材より長さがやや小さい筋交い部材の一端を回転自在に接合し、この筋交い部材の長手方向の一側方に複数の凹型切り込みを設け、この切込みを前記プレート先端近くの第二の軸に係合させ固定具で固定することにより取付部材のアームを必要な角度で固定することを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記第二の軸に係合する固定具が雌ネジを有することを特徴とする請求項10又は11に記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記台部材の両アームの形状をその上端において直角に後方に曲がりその先端が概ね靴底の最後部に達するプレート状としの先端近くに前記の台部材の第一の軸と同様な第二の軸を設け、取付部材の固定部材には軸穴と反対の端近くに該固定部材より長さがやや小さい筋交い部材の一端を回転自在に接合し、この筋交い部材の長手方向の一側方に複数の凹型切り込みを設け、この切込みを前記プレート先端近くの第二の軸に係合させ固定具で固定することにより取付け部材のアームを必要な角度で固定するし筋交い部材を使用しないときは該筋交い部材を前記アームの回りに回転させて該部材の切込みを第一の軸に係合させて固定することを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記台部材の両アームの形状をその上端において直角に前方に曲がりその先端が概ね靴底の最前部に達するプレート状としの先端近くに前記の台部材の第一の軸と同様な第二の軸を設け、取付部材の固定部材には軸穴と反対の端近くに該固定部材より長さがやや小さい筋交い部材の一端を回転自在に接合し、この筋交い部材の長手方向の一側方に複数の凹型切り込みを設け、この切込みを前記プレート先端近くの第二の軸に係合させ固定具で固定することにより取付部材のアームを必要な角度で固定することを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記第二の軸に係合する固定具が雌ネジを有することを特徴とする請求項13又は14に記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記台部材の軸から所定の距離だけ離隔して位置し、バネの偏圧によって台部材のアーム外側に突出する1個の突起を設け、この突起と係合する複数の貫通ホールを円周方向に相互に離隔して持つリングを前記取付部材のアームに固定するとともに、台部材の軸に回転自在に固定し、リング及び取付部材のアームを回転し前記突起と前記リングのホールとの係合によって取付部材のアームを必要な角度で固定し、前記突起は前記リングのホールの外側から内側へ押し込むことによってリングホールとの係合を解くことを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 靴の靴底に対して垂直にその靴の背面に係合される1以上の中空のシリンダーと、
前記シリンダーの内部をスライドすることができる該シリンダーの数と同数のアーム部からなる取付部材と、
前記シリンダーと前記アーム部の各対において、該シリンダーに対し該アーム部を所望する位置に接合する固定部材とを備え、
斜面を上るときには、斜面の傾斜角に対応して、前記取付部材をスライドさせて前記固定部材で所定の位置に接合することにより、前記靴の踵部分を所定の高さに調節できることを特徴とする斜面歩行用部材付き靴。 - 前記中空のシリンダーは、1以上の円筒形又は魚筒形であり、該シリンダーが複数個である場合、これらのシリンダー内をスライドする複数個のアーム部は、底辺部によってその下端附近のすべてを結合されることを特徴とする請求項17記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記固定部材は、前記アーム部を前記シリンダーに対して接合して固定する雄ネジであり、該シリンダーは、この雄ネジを螺合するためにその内表面にネジ溝を備える小穴を有することを特徴とする請求項17又は18記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記アーム部の表面には、前記雄ネジが嵌合する複数の凹部あるいは横溝を備えることを特徴とする請求項19記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記シリンダーが複数個である場合、すべてのシリンダー内の同じ高さの適当な位置に水平方向に位置する一本の棒で連結した、シリンダー内部に突出することができるバネで偏圧したそれぞれ1個のバネ式突起を設け、シリンダー内を上下する取付部材の前記アームのすべてにはこの突起と係合する複数個の凹部又は穴を設け、前記バネ式突起をシリンダーの外方に偏圧して該アームを上下し、所定の高さで該バネ式突起をアームの凹部又は穴と係合させるようにバネの偏圧を開放することによりその位置で取付部材を固定し、バネ式突起をシリンダー外方に向かって引っ張ることにより該アームの凹部との係合を解くことを特徴とする請求項17又は18記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 靴のつま先部の側面及び底面を囲むように嵌合されるU字型の台部材であって、U字型台部材の底辺部の両端部から上方に延びるアームを有し、該アームのほぼ中央には前記靴のつま先部の側面から外方向に延びる軸が取り付けられた台部材と、
前記台部材よりもアームが長い2個のアームを有するU字型の取付部材であって、その両アームのほぼ中央には前記台部材の軸を差し込むための軸穴を有する取付部材と、
前記台部材の軸に係合することにより、前記台部材に前記取付部材を接合することができる固定部材とを備え、
斜面を下るときには、前記取付部材のアームが靴底に対して略垂直になるように前記固定部材で前記台部材に前記取付部材を接合することにより、前記靴のつま先部分の高さを調節できることを特徴とする斜面歩行用部材付き靴。 - 下り斜面の傾斜角に対応して、前記靴底に対する前記取付部材のアームの角度を略垂直の位置から前方に向けて少なくとも90°の聞で回転することにより調整できることを特徴とする請求項20記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記取付部材は、中央に軸穴を持つ2つの固定部材と、長手方向に延びるスライド用の縦穴を持つ2つのスライド部材とからなることを特徴とする請求項20記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記固定部材は、対応する前記スライド部材の縦穴に平行する該スライド部材の両辺の縁に沿って、前記スライド部材を包み込むことができる枠を有することを特徴とする請求項22記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記固定部材は、前記軸穴から該固定部材の幅方向所定の距離に小さな突起を有し、前記スライド部材は、前記縦穴に平行にもう一つの縦穴を設け、該もう一つの縦穴に該小さな突起が嵌合した状態で、該スライド部材がスライドすることを特徴とする請求項22記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記取付部材の底辺部は、前記スライド部材のそれぞれの下端附近に結合され、前記スライド部材は、下り斜面の傾斜角に対応して、靴底に対し下方向にスライドできることを特徴とする請求項22乃至24の何れか一項に記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記取付部材の軸穴から底辺部までの長さは、前記靴のつま先部分の側面の靴長手方向における長さの少なくとも半分以上であることを特徴とする請求項20記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記台部材の前記軸は、該台部材の両アーム及び前記靴のつま先部を貫通する一本の軸とすることを特徴とする請求項20乃至24の何れか一項に記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記固定部材は、前記台部材の軸と螺合する雌ねじを有することを特徴とする請求項20乃至25の何れか一項に記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記台部材の軸から所定の距離だけ離隔して位置し、バネの偏圧によって台部材のアーム外側に突出する1個の突起を設け、この突起と係合する複数の貫通ホールを円周方向に相互に離隔して持つリングを前記取付部材のアームに固定するとともに、台部材の軸に回転自在に固定し、リング及び取付部材のアームを回転し前記突起と前記リングのホールとの係合によって取付部材のアームを必要な角度で固定し、前記突起は前記リングのホールの外側から内側へ押し込むことによってリングホールとの係合を解くことを特徴とする請求項20乃至28の何れか一項に記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記台部材の両アームの形状をその上端において直角に前方に曲がりその先端が概ね靴底の最前部に達するプレート状としの先端近くに前記の台部材の第一の軸と同様な第二の軸を設け、取付部材の固定部材には軸穴と反対の端近くに該固定部材より長さがやや小さい筋交い部材の一端を回転自在に接合し、この筋交い部材の長手方向の一側方に複数の凹型切り込みを設け、この切込みを前記プレート先端近くの第二の軸に係合させ固定具で固定することにより取付部材のアームを必要な角度で固定すると共に、前記筋交い部材を使用しないときは該部材の他の端は切込みを第一の軸に係合させて固定することを特徴とする請求項20乃至28の何れか一項に記載の斜面歩行用部材付き靴
- 前記第二の軸に係合する固定具が雌ネジを有することを特徴とする請求項29又は30に記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記台部材の両アームの形状をその上端において直角に後方に曲がりその先端が概ね靴底の最後部に達するプレート状とし、その先端近くに前記台部材の第一の軸と同様な第二の軸を設け、
前記取付部材の固定部材には、軸穴とは反対側の端部近傍に前記固定部材より長さがやや小さい筋交い部材の一端を回転自在に接合し、この筋交い部材の長手方向の一側方に複数の凹型切り込みを設け、この切込みを前記プレート先端近くの第二の軸に係合させ固定具で固定することにより取付け部材のアームを必要な角度で固定すると共に、この筋交い部材を使用しないときは、この筋交い部材を前記アームの回りに回転させて前記筋交い部材の切込みを第一の軸に係合させて固定することを特徴とする請求項20乃至28の何れか一項に記載の斜面歩行用部材付き靴。 - 前記台部材の軸から所定の距離だけ離隔して位置し、バネの偏圧によって台部材のアーム外側に突出する1個の突起を設け、この突起と係合する複数の貫通ホールを円周方向に相互に離隔して持つリングを前記取付部材のアームに固定するとともに、台部材の軸に回転自在に固定し、リング及び取付部材のアームを回転し前記突起と前記リングのホールとの係合によって取付部材のアームを必要な角度で固定し、前記突起は前記リングのホールの外側から内側へ押し込むことによってリングホールとの係合を解くことを特徴とする請求項21乃至28の何れか一項に記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 請求項1乃至15の何れか一項に記載の斜面歩行用部材付き靴に、請求項25乃至30の何れか一項に記載の台部材、取付部材、及び固定部材を備えることを特徴とする斜面歩行用部材付き靴。
- 靴の土踏まず部分の両側面及び底面を囲むように嵌合されるU字型の台部材であって、該台部材の土踏まず部分の側面及びその反対側面から上方に延びる両プレート部には、1以上の円筒形あるいは角筒形の中空のシリンダーが該プレート部の横幅に対し所定の位置に該プレート部の長手方向にそれぞれ取り付けられている台部材と、
前記シリンダーの内部をスライドすることができる該シリンダーの数と同数のアーム部からなる、前記両プレート部にそれぞれ取り付けられる2つの取付け部材と、
前記シリンダーと前記アーム部との各対において、該シリンダーに対し該アーム部を所望する位置に接合する固定部材とを備え、
斜面に対して概ね水平方向に歩くときには、斜面の傾斜角に対応して、両足の靴の双方の谷側の前記取付部材をスライドさせて前記固定部材で所定の位置に接合することにより、前記靴底部分を概ね水平に保ち、歩行を容易にすることを特徴とする斜面歩行用部材付き靴。 - 前記台部材の中空のシリンダーは、1以上の円筒形又は角筒形であり、該シリンダーが複数個ある場合、これらのシリンダー内をスライドする複数個のアーム部は、底辺部によってそのすべてのアーム部の下端附近を結合されることを特徴とする請求項37記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記固定部材は、前記アーム部を前記シリンダーに対して接合して固定する雄ネジであり、該シリンダーは、この雄ネジを螺合するためにその内表面にネジ溝を備える小穴を有することを特徴とする請求項37又は38に記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記アーム部の表面には、前記雄ネジが嵌合する複数の凹部あるいは横溝を備えることを特徴とする請求項39記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 前記シリンダーが複数個である場合、すべてのシリンダー内の同じ高さの適当な位置に、水平方向に位置する一本の棒で連結したシリンダー内部に突出することができるバネで偏圧したそれぞれ1個のバネ式突起を設け、シリンダー内を上下する取付部材の前記アームのすべてにはこの突起と係合する複数個の凹部又は穴を設け、前記バネ式突起をシリンダーの外方に偏圧して該アームを上下し、所定の高さで該バネ式突起をアームの凹部又は穴と係合させるようにバネの偏圧を開放することによりその位置で取付部材を固定し、バネ式突起をシリンダー外方に向かって引っ張ることにより該アームの凹部との係合を解くことを特徴とする請求項35又は36記載の斜面歩行用部材付き靴。
- 請求項35乃至39の何れか一項に記載の斜面歩行用部材付き靴に、請求項1乃至16の何れか一項に記載の台部材、取付部材、及び固定部材あるいは請求項17乃至21の何れか一項に記載のシリンダー、取付部材、及び固定部材と、請求項22乃至33の何れか一項に記載の台部材、取付部材、及び固定部材とを一方あるいは両方備えることを特徴とする斜面歩行用部材付き靴。
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