JP3916881B2 - コマンド送信システム及びコマンド送信方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は人工衛星で実行させるコマンドを地上局から送信するコマンド送信システムに係り、特に上記人工衛星に緊急に処理させるべき緊急用コマンドの送信が要求されると、通常のコマンドよりも優先して送信するコマンド送信システム及びコマンド送信方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
人工衛星を中継局とする通信ネットワークを構築する衛星通信システムなどの宇宙機関において、人工衛星と地上局との間でのコマンド伝送は、宇宙機関のための国際標準を審議・作成する宇宙データシステム諮問委員会(CCSDS:Consultative Committee for Space DataSystems)が提唱するコマンド伝送方式に関する勧告(CCSDS 202.0−B−2, TELECOMMAND, PART2, DATA ROUTING SERVICE)によって標準化されている。
【0003】
図4は上述したCCSDS勧告に準拠した地上局と人工衛星との間における従来のコマンド伝送手順を示すシーケンス図である。図4では、人工衛星を中継局とする通信ネットワークを構築する衛星通信システムなどを考え、ハードウェア構成として、人工衛星の他に、該人工衛星の追跡・管制を行う管制設備などの地上局があるものとする。図4では、地上局を地上と略し、該地上側から人工衛星に対してコマンドを送信する手順について示している。
【0004】
図5は図4のシーケンスで伝送されるCCSDS勧告におけるコマンドのフォーマットを示す図である。図に示すように、コマンドフレームの構造は、フレームヘッダとフレームデータとに大別される。また、フレームヘッダはバージョン番号、バイパスフラグ、制御コマンドフラグ、スペア、宇宙機識別子、仮想チャネル識別子、フレーム長、及びフレームシーケンス番号から構成される。バージョン番号はフレーム構造の変更に伴って所定値が設定されるフレーム構造を特定する情報であり、バイパスフラグは宇宙機である人工衛星がコマンドフレームを受信したときにチェックされるフラグであって、その値によって人工衛星が地上局からのコマンドを正常に受信した際に、該地上局に返信する送達確認のプロトコルに該コマンドが準ずるか否かが判別される。制御コマンドフラグはコマンドフレームのデータフィールドに制御コマンド及びデータのうちのいずれが格納されているかを指定するものであり、スペアは値0が設定されるビットである。宇宙機識別子はコマンドを受信すべき宇宙機を識別する際に使用されるもので、仮想チャネル識別子は多重アクセスにおける仮想チャネルを識別する際に使用される。フレーム長は該コマンドフレームのデータ長を示し、フレームシーケンス番号は各コマンドフレームごとに昇順に付されて、伝送シーケンスのチェックに使用される。
【0005】
次に、図4に沿って従来のコマンド送信動作について説明する。
先ず、地上局は、図5で示したフレームシーケンス番号に順番に番号(送信順序番号)を付与した各コマンドを人工衛星に送信する。このとき、地上局は、送信したコマンドに対する衛星側からの送達確認がとれていない状態にあっても、送信単位として設定した所定のフレーム数のコマンドを連続的に送信することができる。図4の例では、3フレーム、即ち、送信順序番号が1から3までのコマンドが連続して送信されている。
【0006】
一方、人工衛星側は、地上局からのコマンドを正常に受信すると、次に送信されるべきコマンドの送信順序番号を応答として返信する。図4において、人工衛星は送信順序番号が1から3までのコマンドが連続して受信するので、次に期待する送信順序番号4を応答として返信する。
【0007】
上記応答を受信した地上局は、人工衛星側に送信したコマンドの送達確認がとれたものと認識して、次に送信すべきコマンドを送信する。図4の例ではコマンドの送信単位としてフレーム数3が設定されているので、送信順序番号4から6までのコマンドが人工衛星側に送信される。
このようにして、地上局と人工衛星との間で、コマンド送信、及び、コマンドの送達確認が繰り返し実施される。
【0008】
また、地上局では、人工衛星からの送達確認を受信するまでの期間においても、ある特定の情報を有するコマンドの送信要求が発生すると、送達確認の有無に依らず人工衛星に送信する処理が許容されている。
具体的に説明すると、地上局は、図5に示すコマンドフレームのヘッダ部分に設けたバイパスフラグエリアに特定の値が設定されていると、該コマンドを上記送達確認のプロトコルとは独立するものであると判断して、送達確認の有無に依らず人工衛星に送信する。CCSDS勧告の例では、バイパスフラグエリアに値0が設定されていると、該コマンドは送達確認のプロトコルに準ずる通常コマンドであると判断され、バイパスフラグエリアに値1が設定されていると、該コマンドは送達確認のプロトコルとは独立するものであると判断される。
【0009】
ここで、図4に示すように、送信順序番号9のコマンドを受信した人工衛星が、次に期待する送信順序番号10を返信する場合を考える。このとき、人工衛星からの送達確認が何らかの原因で地上局に届かないと、地上局は次のコマンドを送信することができない。
そこで、例えば緊急に人工衛星に処理させるべき内容を有するコマンドの送信要求があると、地上局は、そのコマンドのバイパスフラグエリアに値1を設定するだけで、送達確認待ち状態にあっても優先して人工衛星に送信することができる。
【0010】
以上のように、CCSDS勧告では、地上側と衛星側とのプロトコルとして、送達確認に基づくコマンド送信、及び、送達確認に依存しないコマンド送信の2つの方式を規定している。これにより、本勧告に従ったシステムでは、通常処理に対応するコマンドは前者の方式を、即時性を要求されるような緊急用のコマンドは後者の方式で伝送すれば、緊急用のコマンドを通常のコマンドよりも優先順位をあげて、人工衛星に送信することができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来のコマンド送信システムにおけるコマンド送信は以上のようになされていたので、即時性を必要とする緊急用のコマンドの送信処理が遅延する可能性があるという課題があった。
【0012】
上記課題を具体的説明すると、従来のコマンド送信システムが採用しているCCSDS勧告では、コマンド伝送のプロトコルを規定するのみである。このため、送達確認待ち状態にあっても緊急用のコマンドを優先して人工衛星に送信する処理に移行するが、地上局のコマンド送信設備が人工衛星に対して通常のコマンドの送信処理を行っている最中に、即時性を必要とする緊急用のコマンドの送信要求が発生しても、既存の送信処理が完了しないと、緊急用のコマンドを送信することができない。
【0013】
また、従来のコマンド送信システムにおける地上局のコマンド送信設備では、コマンド送信用のバッファの先頭に格納されたコマンドから順次送信処理を行うFIFO(First In First Out)方式を採用している。
このため、上記バッファに未送信のコマンドが溜まっていると、既存の未送信コマンドが全て送信されるまで、緊急用コマンドを送信することができない。
【0014】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、コマンド送信側で即時性を必要とする緊急用のコマンドと通常処理に係る通常コマンドとを判別することで、緊急用のコマンドの送信が要求された場合に、該緊急用のコマンドを上記通常コマンドよりも優先して送信することができるコマンド送信システム及びコマンド送信方法を得ることを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るコマンド送信システムは、CCSDS勧告に規定される、送達確認に応じて人工衛星にコマンドを送信するプロトコル及び送達確認の有無に依らず人工衛星にコマンドを送信するプロトコルのいずれかによってコマンド送信を行うコマンド送信システムにおいて、人工衛星に送信すべきコマンドを格納する送信待ちコマンド記憶手段と、送信待ちコマンド記憶手段に格納する前のコマンドを入力し、コマンドに含まれる識別値に基づいて人工衛星に優先的に処理させるべき優先コマンドであるか否かを判定する優先コマンド判定手段と、優先コマンド判定手段からコマンドを入力して、送信待ちコマンド記憶手段に格納するとともに、判定結果が優先コマンドであると、プロトコルに依らず、既存のコマンドの格納を一時停止して優先コマンドを優先して格納する送信順位決定手段と、送信待ちコマンド記憶手段に格納された順にコマンドを読み出して人工衛星に送信するコマンド送信手段とを備え、上記送信順位決定手段は、上記優先コマンド判定手段による判定結果が優先コマンドであると、上記送信待ちコマンド記憶手段に格納されている既存の未送信コマンドを全て廃棄若しくは退避して上記優先コマンドを読み出しの先頭に格納するものである。
【0017】
この発明に係るコマンド送信システムは、CCSDS勧告に規定される、送達確認に応じて人工衛星にコマンドを送信するプロトコル及び送達確認の有無に依らず人工衛星にコマンドを送信するプロトコルのいずれかによってコマンド送信を行うコマンド送信システムにおいて、人工衛星に送信すべきコマンドを入力して、コマンドに含まれる識別値に基づいて人工衛星に優先的に処理させるべき優先コマンドであるか否かを判定する優先コマンド判定手段と、優先コマンドを格納する送信待ち優先コマンド記憶手段と、プロトコルにより人工衛星に送信される優先コマンド以外のコマンドを格納する送信待ちコマンド記憶手段と、優先コマンド判定手段の判定結果が設定されるフラグと、フラグの設定値が優先コマンドである旨の判定結果を示している場合、プロトコルに依らず、送信すべきコマンドを読み出す記憶手段として優先コマンド記憶手段を選択する選択手段と、選択手段によって選択された記憶手段に格納されたコマンドを読み出して人工衛星に送信するコマンド送信手段とを備えるものである。
【0019】
この発明に係るコマンド送信方法は、CCSDS勧告に規定される、送達確認に応じて人工衛星にコマンドを送信するプロトコル及び送達確認の有無に依らず人工衛星にコマンドを送信するプロトコルのいずれかによってコマンド送信を行うコマンド送信方法において、人工衛星に送信すべきコマンドを入力して、コマンドに含まれる識別値に基づいて人工衛星に優先的に処理させるべき優先コマンドであるか否かを判定する優先コマンド判定ステップと、優先コマンド判定ステップにて判定されたコマンドを人工衛星に送信するにあたり、判定結果が優先コマンドであると、プロトコルに依らず、既存のコマンドに係る送信処理を一時停止して優先コマンドに係る送信処理を行うコマンド送信ステップとを備え、上記コマンド送信ステップにて、上記優先コマンド判定ステップにおける判定結果が優先コマンドであると、既存の未送信コマンドを全て廃棄若しくは退避して上記優先コマンドに係る送信処理を行うことを特徴とするものである。
【0020】
この発明に係るコマンド送信方法は、CCSDS勧告に規定される、送達確認に応じて人工衛星にコマンドを送信するプロトコル及び送達確認の有無に依らず人工衛星にコマンドを送信するプロトコルのいずれかによってコマンド送信を行うコマンド送信方法において、人工衛星に送信すべきコマンドを入力して、人工衛星に優先的に処理させるべき優先コマンドであるか否かを判定する優先コマンド判定ステップと、優先コマンド及びプロトコルにより人工衛星に送信される優先コマンド以外のコマンドをそれぞれ別の記憶手段に格納する送信待ちコマンド格納ステップと、優先コマンド判定ステップにおける判定結果をフラグに設定するステップと、フラグの設定値が優先コマンドである旨の判定結果を示している場合、プロトコルに依らず、優先コマンドを格納する記憶手段を、送信すべきコマンドを読み出す記憶手段として選択する選択ステップと、選択ステップにて選択された記憶手段に格納されたコマンドを読み出して人工衛星に送信するコマンド送信ステップとを備えるものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるコマンド送信システムの構成を示す図である。図において、1は宇宙機である人工衛星であって、外部から受信したコマンドをデコードして実行する機能を有する。2は管制設備3から受信したコマンドを人工衛星1に送信するコマンド送信設備であって、上記コマンドを解析して、その内容から適切な順序で人工衛星1に送信する。2−1は通常コマンド処理ブロック(送信順位決定手段)で、即時性を必要としない通常コマンドを入力してCCSDS勧告に基づいたデータ処理を施してコマンド送信バッファ2−3にキューイングする。2−2は緊急コマンド処理ブロック(送信順位決定手段)で、即時性を必要とする緊急用コマンド(優先コマンド)を入力してCCSDS勧告に基づいたデータ処理を施してコマンド送信バッファ2−3にキューイングする。2−3はコマンド送信バッファ(送信待ちコマンド記憶手段)であって、人工衛星1に送信すべきコマンドが順次キューイングされる。
【0022】
2−4は管制設備側インタフェース処理ブロック(優先コマンド判定手段)で、管制設備3から受信したコマンドが通常コマンドであるか緊急用コマンドであるかを判定して、通常コマンド処理ブロック2−1及び緊急コマンド処理ブロック2−2に適宜出力する。2−5は衛星側インタフェース処理ブロック(コマンド送信手段)で、コマンド送信バッファ2−3にキューイングされたコマンドを1つずつ読み出して人工衛星1に送信する。2−6は通常コマンド処理ブロック2−1に常に監視される緊急コマンド処理中フラグ(送信順位決定手段)であって、緊急コマンド処理ブロック2−2が緊急用コマンドを処理する際にオン状態に設定される。3は人工衛星1に実行させるべきコマンドを生成する管制設備であって、ネットワーク回線4を介してコマンド設備2にコマンドを送信する。4はコマンド送信設備2と管制設備3との間を通信接続するネットワーク回線である。
【0023】
次に動作について説明する。
先ず、管制設備3は、人工衛星1に実行させることで追跡・管制するコマンドを生成するとともに、該コマンドを含むメッセージのヘッダ部の所定のエリアに、人工衛星1に緊急に処理させたい内容のコマンド(優先コマンド)であるか否かを識別する識別値を設定する。このあと、管制設備3は、ネットワーク回線4を介して上記コマンドをコマンド送信設備2に送信する。コマンド送信設備2では、管制設備3から受信したコマンドを管制設備側インタフェース処理ブロック2−4に出力する。
【0024】
管制設備側インタフェース処理ブロック2−4では、入力したコマンドの上記所定のエリアに設定された内容を抽出して、人工衛星1に実行させるべき内容が即時性を必要とする緊急用コマンドであるか、即時性を要しない通常コマンドであるかを判定する。この判定結果が通常コマンドであると、管制設備側インタフェース処理ブロック2−4は、該通常コマンドを通常コマンド処理ブロック2−1に通知する。
【0025】
通常コマンド処理ブロック2−1は、入力した通常コマンドに対してCCSDS勧告に基づく処理を施してコマンド送信バッファ2−3にキューイングする。衛星側インタフェース処理ブロック2−5は、コマンド送信バッファ2−3にキューイングされた通常コマンドを読み出して人工衛星1に送信する。
このとき、管制設備3から通常コマンドが連続的に通知されてくると、上記と同様の処理が繰り返されて、通常コマンドがコマンド送信バッファ2−3に順次キューイングされるとともに、衛星側インタフェース処理ブロック2−5は、コマンド送信バッファ2−3にキューイングされたコマンドを1つずつ読み出して人工衛星1に送信する。
【0026】
一方、上記判定結果が緊急用コマンドであると、管制設備側インタフェース処理ブロック2−4は、該緊急用コマンドを緊急コマンド処理ブロック2−2に通知する。緊急コマンド処理ブロック2−2は、入力した緊急用コマンドに対してCCSDS勧告に基づく処理を施してコマンド送信バッファ2−3にキューイングする。このとき、緊急用コマンド処理ブロック2−2は、緊急コマンド処理中フラグ2−6をオン状態として緊急コマンドの処理中であることを明示する。
このようにして緊急コマンド処理ブロック2−2によってコマンド送信バッファ2−3にキューイングされた緊急用コマンドは、衛星側インタフェース処理ブロック2−5によって読み出されて人工衛星1に送信される。
【0027】
ここで、管制設備3から通常用コマンドと緊急用コマンドとが混在して管制設備側インタフェース処理ブロック2−4に到着している場合を考える。
管制設備側インタフェース処理ブロック2−4では、管制設備3からコマンドを受信するごとに、上述したような通常コマンドと緊急用コマンドとを区別する判定を行って、それぞれに対応する処理ブロック2−1,2−2に転送する。
【0028】
通常コマンド処理ブロック2−1では、緊急コマンド処理中フラグ2−6の設定値を常にモニタして、緊急コマンド処理ブロック2−2の処理実施状況を確認している。このとき、緊急コマンド処理中フラグ2−6がオン状態で緊急コマンド処理ブロック2−2が処理中である場合、通常コマンド処理ブロック2−1は、緊急コマンド処理ブロック2−2の処理が終了するまで、通常コマンドの処理を一時停止する処理待ち状態に移行する。
具体的には、通常コマンド処理ブロック2−1がコマンド送信バッファ2−3に対する通常コマンドのキューイングを停止する。これによって、緊急コマンド処理ブロック2−2は、通常コマンドに優先して緊急用コマンドをコマンド送信バッファ2−3にキューイングすることができる。
【0029】
上述のようにして緊急用コマンドの送信処理が終了すると、緊急コマンド処理ブロック2−2は緊急コマンド処理中フラグ2−6をオフ状態にする。これによって、通常コマンド処理ブロック2−1は、通常コマンドの送信処理を再開する。以上のようにすることで、緊急用コマンドの処理を優先させて行うことができる。
【0030】
以上のように、この実施の形態1によれば、人工衛星1に送信すべきコマンドを入力して、人工衛星1に優先的に処理させるべき緊急用コマンドであるか否かを判定し、判定したコマンドを人工衛星1に送信するにあたり、判定結果が緊急用コマンドであると、既存のコマンドに係る送信処理を一時停止して緊急用コマンドに係る送信処理を行うので、通常コマンドの処理によって緊急用コマンドの送信が遅延される不具合を解消することができる。
【0031】
なお、上記実施の形態1では、通常コマンド処理ブロック2−1が、常に緊急コマンド処理中フラグ2−6の状態を監視することで処理の切り替えを実現する例を示したが、コマンド送信設備2を構成するコンピュータ装置におけるOS(オペレーティングシステム)に依存する機能として、各処理ブロック2−1,2−2に応じてタスクの実行優先順位を定義するようにしてもよい。具体的には、処理ブロック2−2に係る処理のタスクに上位の優先順位を定義しておき、処理ブロック2−1に係る処理のタスクには処理ブロック2−2より下位の優先順位を定義しておく。このようにすることで、優先順位が上位である処理ブロック2−2の処理に係るタスクが動作すれば、優先順位が下位である処理ブロック2−1の処理に係るタスクが強制的に一時停止状態となる。
【0032】
実施の形態2.
図2はこの発明の実施の形態2によるコマンド送信システムの構成を示す図である。図において、2Aは管制設備3から受信したコマンドを人工衛星1に送信するコマンド送信設備であって、上記実施の形態1とは異なる処理を行ってコマンドを適切な順序で人工衛星1に送信する。2−2aは緊急コマンド処理ブロック(送信順位決定手段)で、上記実施の形態1と同様の動作をするとともに、即時性を必要とする緊急用コマンド(優先コマンド)をコマンド送信バッファ2−3にキューイングする際に、コマンド送信バッファ2−3に格納されている未送信コマンドを全て廃棄若しくは退避させて緊急用コマンドを読み出しの先頭にキューイングする。なお、図1と同一構成要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0033】
次に動作について説明する。
先ず、管制設備3は、人工衛星1に実行させることで追跡・管制するコマンドを生成するとともに、該コマンドを含むメッセージのヘッダ部の所定のエリアに、人工衛星1に緊急に処理させたい内容のコマンド(優先コマンド)であるか否かを識別する識別値を設定する。このあと、管制設備3は、ネットワーク回線4を介して上記コマンドをコマンド送信設備2Aに送信する。コマンド送信設備2Aでは、管制設備3から受信したコマンドを管制設備側インタフェース処理ブロック2−4に出力する。
【0034】
管制設備側インタフェース処理ブロック2−4では、入力したコマンドの上記所定のエリアに設定された内容を抽出して、人工衛星1に実行させるべき内容が即時性を必要とする緊急用コマンドであるか、即時性を要しない通常コマンドであるかを判定する。この判定結果が通常コマンドであると、管制設備側インタフェース処理ブロック2−4は、該通常コマンドを通常コマンド処理ブロック2−1に通知する。
【0035】
通常コマンド処理ブロック2−1は、入力した通常コマンドに対してCCSDS勧告に基づく処理を施してコマンド送信バッファ2−3にキューイングする。衛星側インタフェース処理ブロック2−5は、コマンド送信バッファ2−3にキューイングされた通常コマンドを読み出して人工衛星1に送信する。
このとき、管制設備3から通常コマンドが連続的に通知されてくると、上記と同様の処理が繰り返されて、通常コマンドがコマンド送信バッファ2−3に順次キューイングされるとともに、衛星側インタフェース処理ブロック2−5は、コマンド送信バッファ2−3にキューイングされたコマンドを1つずつ読み出して人工衛星1に送信する。
【0036】
一方、上記判定結果が緊急用コマンドであると、管制設備側インタフェース処理ブロック2−4は、該緊急用コマンドを緊急コマンド処理ブロック2−2aに通知する。緊急コマンド処理ブロック2−2aは、入力した緊急用コマンドに対してCCSDS勧告に基づく処理を施してコマンド送信バッファ2−3にキューイングする。
このようにして緊急コマンド処理ブロック2−2aによってコマンド送信バッファ2−3にキューイングされた緊急用コマンドは、衛星側インタフェース処理ブロック2−5によって読み出されて人工衛星1に送信される。
上述したように、通常コマンド処理ブロック2−1及び緊急コマンド処理ブロック2−2aの基本的動作は、上記実施の形態1と同様である。
【0037】
ここで、管制設備3から通常用コマンドと緊急用コマンドとが混在して管制設備側インタフェース処理ブロック2−4に到着している場合を考える。
管制設備側インタフェース処理ブロック2−4では、管制設備3からコマンドを受信するごとに、上述したような通常コマンドと緊急用コマンドとを区別する判定を行って、それぞれに対応する処理ブロック2−1,2−2aに転送する。緊急用コマンド処理ブロック2−2aは、緊急用コマンドに対してCCSDS勧告に基づく処理を施した後にコマンド送信バッファ2−3にキューイングする。このとき、緊急用コマンド処理ブロック2−2aは、既にコマンド送信バッファ2−3にキューイングされ、衛星側インタフェース処理ブロック2−5の送信処理待ちとなっているコマンドを、全て廃棄(クリア)する。これによって、緊急用コマンドは、コマンド送信バッファ2−3に先頭にキューイングされて、最初に送信することが可能となる。
【0038】
また、緊急用コマンドをコマンド送信バッファ2−3にキューイングする際、コマンド送信バッファ2−3に既に他の緊急用コマンドがキューイングされている場合は、先に送られていたものより、後からのものを優先する。即ち、後から通知された緊急用コマンドの方が、先に送られたものより優先度が高いものとして、緊急用コマンド処理ブロック2−2aは、コマンド送信バッファ2−3にキューイングされている他の緊急用コマンドをクリアして、後から通知された緊急用コマンドをコマンド送信バッファ2−3の読み出しの先頭にキューイングする。
【0039】
以上のように、この実施の形態2によれば、緊急用コマンドの送信要求があると、既存の未送信コマンドを全て廃棄若しくは退避して緊急用コマンドに係る送信処理を行うので、コマンド送信バッファ2−3にキューイングされている未送信コマンドによって緊急用コマンドの送信が遅延する不具合を解消することができる。
【0040】
なお、上記実施の形態2では、緊急用コマンド処理ブロック2−2aが緊急用コマンドをコマンド送信バッファ2−3にキューイングする際、コマンド送信バッファ2−3にキューイングされているコマンドを全て廃棄する例について示したが、上記コマンドを他のメモリに退避して、緊急用コマンドの送信処理が完了すると、退避した未送信コマンドをコマンド送信バッファ2−3に戻すようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施の形態2では、コマンド送信バッファ2−3のクリアを緊急用コマンド処理ブロック2−2aの判断にて行う例を示したが、管制設備側インタフェース処理ブロック2−4で緊急用コマンドを受信したと判断した際に、コマンド送信バッファ2−3をクリアするようにしてもよい。
【0042】
さらに、上記実施の形態2では、通常用コマンド処理ブロック2−1と緊急用コマンド処理ブロック2−2aとを別ブロックで構成する例を示したが、通常用コマンド処理ブロック2−1と緊急用コマンド処理ブロック2−2aとをまとめて1つの処理ブロックとし、緊急用コマンドを処理する場合に、コマンド送信バッファ2−3を一度クリアしてから緊急用コマンドをキューイングするようにしても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0043】
実施の形態3.
図3はこの発明の実施の形態3によるコマンド送信システムの構成を示す図である。図において、2Bは管制設備3から受信したコマンドを人工衛星1に送信するコマンド送信設備であって、上記実施の形態1、2とは異なる処理を行ってコマンドを適切な順序で人工衛星1に送信する。2−1bは通常コマンド処理ブロック(送信順位決定手段)で、即時性を必要としない通常コマンドを入力してCCSDS勧告に基づいたデータ処理を施し、通常コマンド送信バッファ2−7にキューイングする。2−2bは緊急コマンド処理ブロック(送信順位決定手段)で、即時性を必要とする緊急用コマンドを入力してCCSDS勧告に基づいたデータ処理を施し、緊急コマンド送信バッファ2−8にキューイングする。2−7は通常コマンド用送信バッファ(送信待ちコマンド記憶手段)であって、即時性を必要としない通常コマンドが順次キューングされる。2−8は緊急コマンド用送信バッファ(送信待ち優先コマンド記憶手段)であって、即時性を必要とする緊急用コマンドが順次キューングされる。2−9は両バッファ2−7,2−8のうちのいずれかから送信すべきコマンドを読み出すバッファを選択する送信バッファ選択フラグ(選択手段)である。なお、図1と同一構成要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0044】
次に動作について説明する。
先ず、管制設備3は、人工衛星1に実行させることで追跡・管制するコマンドを生成するとともに、該コマンドを含むメッセージのヘッダ部の所定のエリアに、人工衛星1に緊急に処理させたい内容のコマンド(優先コマンド)であるか否かを識別する識別値を設定する。このあと、管制設備3は、ネットワーク回線4を介して上記コマンドをコマンド送信設備2Bに送信する。コマンド送信設備2Bでは、管制設備3から受信したコマンドを管制設備側インタフェース処理ブロック2−4に出力する。
【0045】
管制設備側インタフェース処理ブロック2−4では、入力したコマンドの上記所定のエリアに設定された内容を抽出して、人工衛星1に実行させるべき内容が即時性を必要とする緊急用コマンドであるか、即時性を要しない通常コマンドであるかを判定する。この判定結果が通常コマンドであると、管制設備側インタフェース処理ブロック2−4は、該通常コマンドを通常コマンド処理ブロック2−1bに通知する。
【0046】
通常コマンド処理ブロック2−1bは、入力した通常コマンドに対してCCSDS勧告に基づく処理を施して通常コマンド用送信バッファ2−7にキューイングする。ここで、送信バッファ選択フラグ2−9は、通常コマンド処理ブロック2−1bが通常コマンドの処理を行っている間、通常コマンド用送信バッファ2−7を選択するように設定しておく。これによって、衛星側インタフェース処理ブロック2−5が、通常コマンド用送信バッファ2−7にキューイングされた通常コマンドを読み出して人工衛星1に送信することができる。
このとき、管制設備3から通常コマンドが連続的に通知されてくると、上記と同様の処理が繰り返されて、通常コマンドが通常コマンド用送信バッファ2−7に順次キューイングされるとともに、衛星側インタフェース処理ブロック2−5は通常コマンド用送信バッファ2−7にキューイングされたコマンドを1つずつ読み出して人工衛星1に送信する。
【0047】
一方、上記判定結果が緊急用コマンドであると、管制設備側インタフェース処理ブロック2−4は、該緊急用コマンドを緊急コマンド処理ブロック2−2bに通知する。緊急コマンド処理ブロック2−2bは、入力した緊急用コマンドに対してCCSDS勧告に基づく処理を施して緊急コマンド送信バッファ2−8にキューイングするとともに、送信バッファ選択フラグ2−9を緊急コマンド用送信バッファ2−8に設定する。
【0048】
衛星側インタフェース処理ブロック2−5は、送信バッファ選択フラグ2−9に示された指示に基づいて緊急コマンド用送信バッファ2−8が選択されていると、緊急コマンド用送信バッファ2−8にキューイングされた緊急コマンドを読み出して、人工衛星1に送信する。
【0049】
このあと、衛星側インタフェース処理ブロック2−5は、緊急用コマンド送信バッファ2−8にキューイングされた全ての緊急コマンドを人工衛星1に送信すると、送信バッファ選択フラグ2−9を制御して通常コマンド用送信バッファ2−7を選択させる。これにより、通常コマンドの処理に戻る。
【0050】
以上のように、この実施の形態3によれば、人工衛星1に送信すべきコマンドを入力して、人工衛星1に優先的に処理させるべき優先コマンドであるか否かを判定し、優先コマンド及びそれ以外のコマンドをそれぞれ別のバッファ2−7,2−8に格納するとともに、両バッファ2−7,2−8のうちのいずれかを送信すべきコマンドを読み出すバッファとして選択して、選択したバッファに格納されたコマンドを読み出して人工衛星1に送信するので、通常コマンドの処理や送信バッファにキューイングされている未送信コマンドによって緊急用コマンドの送信が遅延する不具合を解消することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、人工衛星に送信すべきコマンドを入力して、人工衛星に優先的に処理させるべき優先コマンドであるか否かを判定し、判定したコマンドを人工衛星に送信するにあたり、判定結果が優先コマンドであると、既存のコマンドに係る送信処理を一時停止して優先コマンドに係る送信処理を行うので、人工衛星に処理させるべき優先度が低いコマンドを処理することによって優先コマンドの送信が遅延することを防ぐことができるという効果がある。
【0052】
この発明によれば、判定結果が優先コマンドであると、既存の未送信コマンドを全て廃棄若しくは退避して優先コマンドに係る送信処理を行うので、既存の未送信コマンドによって優先コマンドの送信が遅延することを防ぐことができるという効果がある。
【0053】
この発明によれば、人工衛星に送信すべきコマンドを入力して、人工衛星に優先的に処理させるべき優先コマンドであるか否かを判定し、優先コマンド及びそれ以外のコマンドをそれぞれ別の記憶手段に格納するとともに、送信すべきコマンドを読み出す記憶手段として両記憶手段のうちのいずれかを選択して、選択した記憶手段に格納されたコマンドを読み出して人工衛星に送信するので、人工衛星に処理させるべき優先度が低いコマンドの処理や既存の未送信コマンドによって優先コマンドの送信が遅延することを防ぐことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1によるコマンド送信システムの構成を示す図である。
【図2】 この発明の実施の形態2によるコマンド送信システムの構成を示す図である。
【図3】 この発明の実施の形態3によるコマンド送信システムの構成を示す図である。
【図4】 従来のコマンド伝送手順を示すシーケンス図である。
【図5】 図4のシーケンスで伝送されるCCSDS勧告におけるコマンドのフォーマットを示す図である。
【符号の説明】
1 人工衛星、2,2A,2B コマンド送信設備、2−1,2−1b 通常コマンド処理ブロック(送信順位決定手段)、2−2,2−2a,2−2b 緊急コマンド処理ブロック(送信順位決定手段)、2−3 コマンド送信バッファ(送信待ちコマンド記憶手段)、2−4 管制設備側インタフェース処理ブロック、2−5 衛星側インタフェース処理ブロック、2−6 緊急コマンド処理中フラグ(送信順位決定手段)、2−7 通常コマンド用送信バッファ(送信待ちコマンド記憶手段)、2−8 緊急コマンド用送信バッファ(送信待ち優先コマンド記憶手段)、2−9 送信バッファ選択フラグ(選択手段)、3 管制設備、4 ネットワーク回線。

Claims (4)

  1. CCSDS(Consultative Committee for Space Data Systems)勧告に規定される、送達確認に応じて人工衛星にコマンドを送信するプロトコル及び送達確認の有無に依らず上記人工衛星にコマンドを送信するプロトコルのいずれかによってコマンド送信を行うコマンド送信システムにおいて、
    上記人工衛星に送信すべきコマンドを格納する送信待ちコマンド記憶手段と、
    上記送信待ちコマンド記憶手段に格納する前のコマンドを入力し、上記コマンドに含まれる識別値に基づいて上記人工衛星に優先的に処理させるべき優先コマンドであるか否かを判定する優先コマンド判定手段と、
    上記優先コマンド判定手段からコマンドを入力して、上記送信待ちコマンド記憶手段に格納するとともに、上記判定結果が優先コマンドであると、上記プロトコルに依らず、既存のコマンドの格納を一時停止して上記優先コマンドを優先して格納する送信順位決定手段と、
    上記送信待ちコマンド記憶手段に格納された順にコマンドを読み出して上記人工衛星に送信するコマンド送信手段とを備え
    上記送信順位決定手段は、上記優先コマンド判定手段による判定結果が優先コマンドであると、上記送信待ちコマンド記憶手段に格納されている既存の未送信コマンドを全て廃棄若しくは退避して上記優先コマンドを読み出しの先頭に格納することを特徴とするコマンド送信システム。
  2. CCSDS(Consultative Committee for Space Data Systems)勧告に規定される、送達確認に応じて人工衛星にコマンドを送信するプロトコル及び送達確認の有無に依らず上記人工衛星にコマンドを送信するプロトコルのいずれかによってコマンド送信を行うコマンド送信システムにおいて、
    上記人工衛星に送信すべきコマンドを入力して、上記コマンドに含まれる識別値に基づいて上記人工衛星に優先的に処理させるべき優先コマンドであるか否かを判定する優先コマンド判定手段と、
    上記優先コマンドを格納する送信待ち優先コマンド記憶手段と、
    上記プロトコルにより上記人工衛星に送信される上記優先コマンド以外のコマンドを格納する送信待ちコマンド記憶手段と、
    上記優先コマンド判定手段の判定結果が設定されるフラグと、
    上記フラグの設定値が優先コマンドである旨の判定結果を示している場合、上記プロトコルに依らず、送信すべきコマンドを読み出す記憶手段として上記優先コマンド記憶手段を選択する選択手段と、
    上記選択手段によって選択された記憶手段に格納されたコマンドを読み出して上記人工衛星に送信するコマンド送信手段とを備えたコマンド送信システム。
  3. CCSDS(Consultative Committee for Space Data Systems)勧告に規定される、送達確認に応じて人工衛星にコマンドを送信するプロトコル及び送達確認の有無に依らず上記人工衛星にコマンドを送信するプロトコルのいずれかによってコマンド送信を行うコマンド送信方法において、
    上記人工衛星に送信すべきコマンドを入力して、上記コマンドに含まれる識別値に基づいて上記人工衛星に優先的に処理させるべき優先コマンドであるか否かを判定する優先コマンド判定ステップと、
    上記優先コマンド判定ステップにて判定されたコマンドを上記人工衛星に送信するにあたり、判定結果が優先コマンドであると、上記プロトコルに依らず、既存のコマンドに係る送信処理を一時停止して上記優先コマンドに係る送信処理を行うコマンド送信ステップとを備え
    上記コマンド送信ステップにて、上記優先コマンド判定ステップにおける判定結果が優 先コマンドであると、既存の未送信コマンドを全て廃棄若しくは退避して上記優先コマンドに係る送信処理を行うことを特徴とするコマンド送信方法。
  4. CCSDS(Consultative Committee for Space Data Systems)勧告に規定される、送達確認に応じて人工衛星にコマンドを送信するプロトコル及び送達確認の有無に依らず上記人工衛星にコマンドを送信するプロトコルのいずれかによってコマンド送信を行うコマンド送信方法において、
    上記人工衛星に送信すべきコマンドを入力して、上記人工衛星に優先的に処理させるべき優先コマンドであるか否かを判定する優先コマンド判定ステップと、
    上記優先コマンド及び上記プロトコルにより上記人工衛星に送信される優先コマンド以外のコマンドをそれぞれ別の記憶手段に格納する送信待ちコマンド格納ステップと、
    上記優先コマンド判定ステップにおける判定結果をフラグに設定するステップと、
    上記フラグの設定値が優先コマンドである旨の判定結果を示している場合、上記プロトコルに依らず、上記優先コマンドを格納する記憶手段を、送信すべきコマンドを読み出す記憶手段として選択する選択ステップと、
    上記選択ステップにて選択された記憶手段に格納されたコマンドを読み出して上記人工衛星に送信するコマンド送信ステップとを備えたコマンド送信方法。
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