JP3916704B2 - 遠心高温高圧反応装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、遠心分離機などの遠心力場発生手段により、化学反応に供する被処理液を高温高圧で化学反応処理する遠心力場を利用した高温高圧反応装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
超臨界状態の水は、酸触媒などを添加しなくても高いイオン反応場となり、またそのイオン積や誘電率などの物性を若干の温度や圧力により大幅に制御することができる。従って、超臨界水を反応溶媒として用いれば、高い反応速度と反応選択性の制御が期待できる。このため、近年、超臨界水酸化分解(SCWO)やバイオマスの利用化など高温高圧水を反応媒体とした高温高圧反応について多くの検討が成されている。
【0003】
上記のような高温高圧条件を得るには、高圧ポンプによる昇圧、減圧弁により減圧(圧力調整)が一般的であるが、高圧発生場として遠心力場を利用できれば新しい概念による反応方法が達成できる。このような概念から、設備コストが安価であり、小容量で比較的動力費のかからない方法で、亜臨界または超臨界状態で被処理液を化学反応できる遠心力場を利用した化学反応処理方法として、遠心力場発生装置内に被処理液を導入し、遠心力場発生装置を作動させて得られた高圧状態下で前記被処理液の化学反応処理を促進させることが提案されている(特開平6−296852号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、主に上記のような亜臨界または超臨界状態などの高温高圧条件で被処理液を化学反応できる遠心力場を利用した化学反応処理を、広範囲に安定かつスムーズに実施するに適した装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、高速で回転する回転体の軸心部に被処理液の供給部、該供給部と連通して回転体の内縁部に反応部、該反応部と連通して回転体の軸心部近傍に処理液の排出部を設けた高温高圧反応装置において、反応部と処理液の排出部との間に処理液を冷却する冷却部を設けたものであり、また回転体には反応部と冷却部とを断熱する断熱部を設けていることを特徴とする遠心高温高圧反応装置である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明においては、被処理液は導入部より回転体内部に供給され、遠心力により加圧されて次式に示す圧力を得、回転体内縁部で最高圧力に達する。
【0007】
【数1】
【0008】
この内縁部を外部より加熱することにより、高温高圧反応場が得られる。反応後、処理液は減圧され排出部より排出される。途中、処理液は、被処理液との熱交換により、さらに冷却水により冷却される。このように、回転体が加圧、減圧、熱交換の各機能を有する多機能型反応器であり、加圧・減圧が開放系で行うことが可能である。
【0009】
本発明の大きな特徴は、処理液の排出部に冷却部を設け反応後の処理液を冷却することにある。被処理液が反応部で高温、高圧状態で反応すると、処理液はガスの発生または超臨界状態となり密度が低下したり、また反応部の熱が処理液に伝導して突沸現象を起こす恐れがある。この状態でそのまま排出部に移行すると、遠心力による反応部での高圧が安定して得られ難いが、本発明では、上記のように反応部を過ぎた下流部に冷却部を設けているため、処理液は冷却部で冷却されて密度が高い液体として維持することができる。このため、遠心力による高圧を安定して得ることができる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の実施例を示す主要部断面図である。図において、1は図示しない駆動手段に連結した駆動軸で、該駆動軸1には遠心力場を形成する、円形横断面を有する回転体(本体)2がその軸心部の一端側(図において下方部)を固定され、駆動軸1の回転により高速回転するようにされている。回転体2の上部軸心側には、上部蓋(図示せず)を介して被処理液や冷却媒体などの供給、処理液などの排出路を形成する多重筒体15が取り付けられている。
【0011】
駆動軸1に連結された回転体2は、軸心を中心として、軸心部を含んだ環状部4と、これに通ずるコーン状に拡がる拡張部5、およびこの拡張部5に連通して縦方向に延びる内縁部6からなる、縦断面がアンカー状、W状もしくはVまたはU字を張り合わせたような形状の中空路3が形成されている。中空路3は、その内部の中間位置に沿って筒状の仕切壁7が設けられ、軸心部において仕切壁7の片側から供給された処理液が反転し、反応後の処理液が他側を通って軸心部近傍に流れるように、屈曲した処理液の流通路8が形成されている。
【0012】
回転体2は、中空路の環状部4と内縁部6との間に、冷却媒体用の環状の中空部9が設けられ、上記流通路8と同様に、その中間位置に中空部9を二分する隔壁10が配設されており、片側から他側に冷却媒体が流通するごとく、冷却媒体の通路11が形成され、反応が行われた処理液の冷却ゾーンを形成する冷却部12が設けられている。また、内縁部6と冷却媒体の環状中空部9の間の環状のブロック体13には、処理液と冷却媒体との間の熱移動を防ぐ断熱部14が設けられている。断熱部14としては、二点鎖線で示すような位置に空洞部を設けているが、断熱材から構成したり、また断熱材を挿設、固設することもできる。
【0013】
駆動軸1の上方に位置する給排液用の多重筒体15は、4重筒から構成され、軸心部に被処理液の供給路16、その外側に処理液の排出路17、さらに処理液の排出路17の外側に冷却媒体の供給路18、この供給路18の外部に排出路19を順次形成している。これら通路の入出口は、それぞれ回転体1の各通路に対応し、最内層に位置する被処理液の供給路16はその筒状の導出口16aが回転体1の中空路環状部4内に突出し、流通路8の入口8aに被処理液を導入するようにされ、また仕切壁7の他側(外側)に配された流通路8の出口8bは被処理液供給路16の外側に設けられた環状の排出路17に連結し、その導入口17aを通して導出される。同様に、冷却媒体も、その導入口18aと導出口18bがそれぞれ冷却媒体通路の入口11aと出口11bに対応する位置に設けられている。なお、回転体2と多重筒体15の各通路間などには、適宜、ウエアリング、ラビリンスなどの液漏洩を防止する手段が設けられる。また、回転体2は、図示しない加熱用ジャケットを備えたケーシング内に収納されている。
【0014】
上記のように構成された装置において、被処理液は、供給路16の導出口16aから高速回転する回転体2の流通路8の入口に導入され、環状部4から拡張部5を経て内縁部6に流れ、その下側から上側を経て反転して下方に至る反応ゾーンを形成する反応部6aに達した頃に充分に反応が行われ、反応熱が出る。この反応熱により、反応が未だ充分でない反応ゾーンの入口の被処理液と熱交換が行われ、反応ゾーンもしくは内縁部6に入る被処理液が加熱されるため、ケーシングのジャケットの加熱を比較的低く抑えることができる。反応終了後の処理液は、仕切壁7の他側から冷却ゾーンに至り、ここで冷却されたのち、排出路17に至る。
【0015】
本発明においては、反応が行われた後の処理液の流通路8に冷却ゾーンを形成する冷却部12が設けられているため、確実かつ安定した高圧が得られ、被処理液の高温高圧反応がスムーズに行われる。高速で回転する回転体2に被処理液を供給すると、反応ゾーンにおいて遠心力による高圧および外部加熱と反応熱での高温によって被処理液中の反応成分が反応する。反応後の処理液は、前記のように冷却ゾーンで冷却されて排出されるが、ここで、反応後の処理液を冷却することは極めて重要である。これは、反応ゾーンで高温、高圧で反応すると、処理液はガスの発生または超臨界状態となり密度が低下したり、また反応部の熱が処理液に伝導して突沸現象を起こす恐れがあるため、そのまま排出部に移行すると遠心力による反応ゾーンでの高圧が安定して得られ難いが、本発明では、反応ゾーンを過ぎた下流部に冷却部12を設けており、このため冷却部12で冷却されて密度の高い液体として維持するため、遠心力による高圧を安定して得ることができる。
【0016】
また、反応ゾーンと冷却ゾーンとを断熱する断熱部13が設けられているため、反応ゾーンと冷却ゾーンとの熱移動による反応ゾーンの温度低下および冷却ゾーンでの温度上昇による冷却媒体の沸騰などが防止される。
【0017】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲での設計変更などがあっても本発明に含まれる。
【0018】
例えば、実施例では、処理液の流通路8を屈曲した仕切壁7を内設したW状に形成したものを示したが、このような形状に限られるものではないし、被処理液や冷却媒体の供給 、および処理液や冷却媒体の排出もその流通方向を同一側に限らず、他側から行えるようにしてもよく、回転体2への被処理液や冷却媒体の供給、および処理液や冷却媒体の排出は多重筒体15によるものの外、他の任意の手段を採用することができる。また、回転体は片持支持した例を示したが両持支持に構成するようにしてもよいことはいうまでもない。さらに、冷却部は螺旋状あるいはこの他の流路をガイドもしくは規制する手段を設けても、間接、直接に流通路内外に管状体を配して管状体に冷却媒体を通して冷却するようにすることができる。冷却媒体としては液体、ガス体あるいはその両者を利用できるが、液体、特に水を使用するのが好ましい。
【0019】
また、実施例は、反応部内の被処理液を主にケーシングからの熱により加熱するようにしたが、これに限定されるものではなく、反応部に供給される前の被処理液を例えば外部熱交換器により加熱したり、本体部内に内設した例えばスチーム加熱や電気加熱により加熱したりしてもよい。また、輻射加熱としてハロゲンランプ、赤外線ランプを用いたり、誘導加熱、マイクロ波加熱、高温ガス吹き付け加熱などを採用してもよい。また、大量の発熱がある湿式酸化のような場合には、本体部内に熱交換器を設けることもできる。
【0020】
本装置に使用される被処理液としては、例えばフロン、塩素系溶剤の分解、無害化を目的とする場合にはフロンや塩素系溶剤、またバイオマスの加水分解を目的とする場合にはバイオマス溶液、さらにPCB、農薬などを含む排水の処理の場合にはこれらを含む排水、さらにまた排水や汚泥中の有機物の湿式酸化の場合には有機物を含む排水と酸化剤、また金属塩水溶液から超微粒子酸化物を製造する場合には金属塩水溶液、廃液からの金属回収の場合には金属を含む廃液などが利用される。
【0021】
次に、本発明をさらに具体的に説明すると、図に示す実施例と同様な装置(回転体サイズ:直径210×高さ255mm)を使用し、回転速度18,720rpmで高温高圧反応を行った。使用した装置の仕様を表1に示す。反応温度の制御は放射温度計で回転体表面温度を測定し、この信号で加熱ヒーターを制御することにより行った。振動は、軸受振動をFFTアナライザーにより危険域に達しないことを確認した。本装置では、回転体内部温度の直接測定が難しいため、反応系、反応温度、反応圧力などの条件を同一として実施した管型反応器の試験結果と比較することにより、推定した。
【0022】
反応系として、H2 O2 によるピコリン酸酸化分解反応を取り上げ、全有機炭素(TOC)に注目し分解率を調べた。その結果を表2に示す。これらの結果から、反応温度は200℃程度まで達していることが分かる。また、被処理液と冷却媒体との熱交換および断熱が良好に行われ、処理液が安定した液体状態となる温度に維持されていることが分かる。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
このような性能確認の結果、温度200℃、圧力20Mpaの反応条件が達成されていることが確認できた。さらに、同様の実験結果から、反応条件として温度200〜250℃、圧力250〜35kg/cm2 、回転数10,000〜30,000rpmで安定した高温高圧反応を行うことができるが、かかる条件に限定されるものではない。使用材料の許容応力、温度などから、上記条件反応以上にすることが難しかったが、使用装置よりも許容応力、耐高温性、駆動部(軸受)などにおいてより優れたものが見つかれば、さらに高度な反応条件にするこができることは言うまでもない。本発明装置はその反応の雰囲気として超臨界状態および亜臨界状態であるのが好ましいが、これに限定されるものではない。なお、ここでいう亜臨界状態とは、臨界点(水の場合、温度374.2℃、圧力218.3atm)より低い条件下をいい、また超臨界状態とは、臨界点以上の条件下をいう。
【0026】
【発明の効果】
以上に説明したごとく、本発明によれば、遠心力場利用した高温高圧反応装置を作動させて装置内に高温高圧、特に確実かつ安定した圧力状態を作り出すことを可能にしたため、かかる環境下における被処理液の化学反応処理をスムーズに促進させることができるとともに、従来の大型の工業設備を用いなくても遠心力場発生装置という比較的小型の装置を用いて広範囲の高圧状態を容易に作り出すことができ、これにより設備コストが安価になり、小容量で比較的低圧の反応条件にも対応できるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示す主要部の縦断面図である。
【符号の説明】
1 駆動軸
2 回転体
3 中空路
4 環状部
5 拡張部
6 内縁部
6a 反応部
7 仕切壁
8 流通路
9 中空部
10 隔壁
11 通路
12 冷却部
13 ブロック体
14 断熱部
15 多重筒体
16 被処理液の供給路
17 処理液の排出路
18 冷却媒体の供給路
19 冷却媒体の排出路
Claims (6)
- 高速で回転する回転体の軸心部に被処理液の供給部、該供給部と連通して回転体の内縁部に反応部、該反応部と連通して回転体の軸心部近傍に処理液の排出部を設けた高温高圧反応装置において、反応部と処理液の排出部との間に処理液を冷却する冷却部を設けたことを特徴とする遠心高温高圧反応装置。
- 反応部と冷却部とを断熱する断熱部を設けている請求項1記載の遠心高温高圧反応装置。
- 回転体が軸心を中心として、軸心部を含んだ環状部とこれに通ずるコーン状に拡がる拡張部およびこの拡張部に連通して縦方向に延びる反応部を形成する内縁部からなる、縦断面がアンカー状形状の中空路が形成され、該中空路はその内部の中間位置に沿って筒状の仕切壁が設けられ、軸心部において仕切壁の片側から供給された被処理液が反転し他側を通って軸心部近傍部に流れ、該軸心部近傍部から排出部に連通するように、屈曲した処理液の流通路が形成されている請求項1または2記載の遠心高温高圧反応装置。
- 処理液の排出部が被処理液の供給部と同一側に設けられている請求項1、2または3記載の遠心高温高圧反応装置。
- 冷却部が環状部と内縁部との間に設けられた環状の中空部に該中空部を二分する隔壁が配設され、片側から他側に冷却媒体が流通するごとく、冷却媒体の通路が形成され、排出部に移行する処理液の冷却ゾーンを形成する冷却部が設けられている請求項3または4記載の遠心高温高圧反応装置。
- 反応部と冷却部の間に両部間の熱移動を抑制する断熱部が設けられている請求項5記載の遠心高温高圧反応装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP27400396A JP3916704B2 (ja) | 1996-09-26 | 1996-09-26 | 遠心高温高圧反応装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP27400396A JP3916704B2 (ja) | 1996-09-26 | 1996-09-26 | 遠心高温高圧反応装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH1099673A JPH1099673A (ja) | 1998-04-21 |
JP3916704B2 true JP3916704B2 (ja) | 2007-05-23 |
Family
ID=17535602
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP27400396A Expired - Lifetime JP3916704B2 (ja) | 1996-09-26 | 1996-09-26 | 遠心高温高圧反応装置 |
Country Status (1)
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Families Citing this family (2)
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JP4766634B2 (ja) * | 2001-04-09 | 2011-09-07 | 栄司 西本 | 汚染液体処理装置 |
SE536493C2 (sv) * | 2009-03-10 | 2013-12-27 | Alfa Laval Corp Ab | En modul innefattande en reaktorenhet |
-
1996
- 1996-09-26 JP JP27400396A patent/JP3916704B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH1099673A (ja) | 1998-04-21 |
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