JP3915858B2 - カラー画像信号処理装置およびカラー画像信号処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディジタル複写機やプリンタなど、カラー画像を取り扱う各種の機器に関するものであり、特に、入力側のカラー画像信号を出力側の色再現可能領域内のカラー画像信号に色変換処理を行うカラー画像信号処理装置およびカラー画像信号処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カラー画像を出力する機器として、例えばCRTやカラーLCDなどの表示装置や、プリンタなどの印刷機器等がある。これらの出力装置では、それぞれの出力方式の違いなどによって、再現可能な色範囲(色再現可能領域)が異なっている。しかし、入力されるカラー画像信号は出力側の色再現可能領域を考慮せずに入力されることも多い。そのため、各出力装置において、少なくとも再現できない色については最も近いと考えられる色に置き換えて出力し、画像全体としてその出力装置においては最良の画質で再現できるようにしている。このとき、与えられるカラー画像信号を、出力装置の色再現可能領域内の色に置き換える色の写像(Color Mapping)が必要となる。
【0003】
このような色の写像を行うためには、まず出力装置における色再現可能領域の境界を求めておく必要がある。例えば特開平7−203235号公報に記載されている技術では、明らかに色再現可能領域の境界上にあると考えられる8色の飽和色R(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)、W(白)をL* a* b* 色空間の色に変換し、得られた8点から近隣の3点を三角形で結び、12面体で色再現可能領域の境界面を近似している。しかし、実際の色再現可能領域の境界面は12面体よりもさらに凹凸を有する立体であるので、単純な12面体による色再現域の近似は、色再現域のロス及びオーバーヒットが非常に大きいという問題がある。
【0004】
また、例えば特開平7−30774号公報に記載されている方法では、L* a* b* 色空間において色再現可能領域をL* 軸に垂直なK個の平面で切断する。そして、K個の断面の各々に対して等色相間隔で360度をS分割し、K×S個の境界上の点を求め、K×S個の点から複数の三角形を生成し、色再現可能領域の境界を近似している。これによって、より精度よく色再現可能領域の境界を得ることができる。
【0005】
しかしこの方法では、飽和色を見付け、精度よく色再現可能領域の境界のデータを生成するために多量の計算と数多くの境界信号を生成する必要があるため、効率が悪い。これを改善するため、例えば色再現可能領域の境界上の隣接するサンプルデータをもとにブロックを形成し、ブロックを分割しながら色再現可能領域の境界を求めて行く方法も提案されている。このような各種の方法によって、色再現可能領域の境界を細かく得られるようになった。
【0006】
一方、このようにして求めた色再現可能領域を用いて、例えば入力されたカラー画像信号が色再現可能領域外の色である場合には、色再現可能領域内の色へ変換する。また、入力されるカラー画像信号の取りうる色領域が、出力側の色再現可能領域よりも少なくとも部分的に小さい場合には、なるべく出力側の色再現可能領域全体を利用して色表現できるように、色変換を行うこともある。このような色変換の手法としては、例えば、明度を一定にして彩度を変更し、色再現可能領域内の色に変換する方法がある。また別の方法として、色再現可能領域内の一点、例えば明度軸上の一点を目標点として、目標点に向かう方向あるいはその逆方向に彩度および明度ともに変更する方法もある。
【0007】
図10は、色再現可能領域の一例における色変換時の問題点の説明図、図11は、同じく拡大図である。ここではある色相における断面を、明度−彩度平面で示している。上述のように色再現可能領域の境界を細かく取得することによって、色再現可能領域の境界面の凹凸をも表現できるようになった。これによって、入力カラー画像信号を色再現可能領域内の適切な色に変換できるようになった。しかし、このように細かく色再現可能領域の境界を実際に求めてみると、図10において楕円形で囲んだ部分のように、一部において大きな凹凸が発生することがある。このような大きな凹凸が発生すると、色変換処理が正確に行えなくなるという問題があった。
【0008】
例えば色変換の方法として、目標点に向かう方向あるいはその逆方向に彩度および明度ともに変更する方法を用いる場合を考える。目標点として明度軸上の一点を設定し、この目標点に向かうベクトルを図10および図11に矢印で示している。このベクトルの方向あるいはその逆方向に明度および彩度を変更する。このとき、図11に示す色A〜色Bおよび色C〜色Dは色再現可能領域内であるが、色B〜色Cについては色再現可能領域外の色である。そのため、色Eを色再現可能領域内の色に変更しようとしたとき、色A〜色Bの間の色に変換するのか、色A〜色Dの間の色に変換するかが一意に決まらなくなってしまう。
【0009】
また、いずれに決めたとしても、色Eと微妙に彩度の異なる色との間で、変換後の色が大きく変化して、色の段差が生じる可能性がある。例えば色Fは色Bに近い色に変換されるが、色Gは色Dに近い色に変換される。色Eは色Bまたは色Dのいずれかあるいはそれらに近い色に変換されるが、いずれに変換されたとしても、他方の色との間には大きな色の違いが現れてしまう。
【0010】
さらに、色C〜色Dは色変換されないのに、色B〜色Cが色再現可能領域内への色変換の対象となり、この部分の色についても、色再現が不均一になるなどの問題もある。
【0011】
図12は、入力側の色領域を出力側の色再現可能領域に合わせる場合の問題点の説明図である。図11と同様に、目標点に向かう方向あるいはその逆方向に彩度および明度ともに変更する色変換方法を用いる。入力側の色領域をなるべく出力側の色再現可能領域に合わせるように色変換を行い、出力側の色再現能力を有効に利用して色再現を行う。しかし、出力側の色再現可能領域の境界に大きな凹凸が存在していると、例えば入力側の色領域の外郭の色Hは、色Bあるいは色Dが候補となり、一律的な変換点を見い出せなくなる。また、図11の場合と同様に、彩度および明度が少し変化しただけで変換後の色が大きく変化する可能性があり、色再現が不均一になる可能性があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、入力されたカラー画像信号に対して、望ましい出力側のカラー画像信号に変換でき、高画質の色再現が可能なカラー画像信号処理装置およびカラー画像信号処理方法を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、入力カラー画像信号を出力側の色再現可能領域内の出力カラー画像信号へ変換するカラー画像信号処理装置およびカラー画像信号処理方法であって、入力カラー画像信号の色に応じた色相断面における最大彩度を有する色と最小明度を有する色を結ぶ線分に対して色再現可能領域の外郭が凸形状の場合には凸部分を近似する複数の線分に分割して該線分について近似処理を繰り返すことにより出力側の色再現可能領域の外郭の少なくとも一部について近似処理を行い、入力カラー画像信号を近似処理された外郭を有する色再現可能領域内の出力カラー画像信号へ変換することを特徴とするものである。近似処理は、曲線あるいは複数の線分で近似することができ、また、滑らかな凸輪郭線として近似することができる。近似処理による誤差は、色変換処理の際に吸収させることができる。
【0014】
例えば上述のように出力側の色再現可能領域の境界に大きな凹凸が生じている場合、その部分を含む区間について近似処理を行うことができる。これによって、色変換処理の際に出力側の色再現可能領域の境界が複数個生じるようなことはなく、一律な変換処理を行うことができる。また、この近似処理によって、色変換処理後の色に段差が発生することはなく、画質を向上させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態を示すブロック図である。図中、1は色再現域データ保持部、2は色再現域整形部、3は色変換部である。色再現域データ保持部1は、少なくとも出力側の色再現可能領域の境界を示す外郭データを保持している。この外郭データは、後段の色変換部3において色変換処理を行う際に精度よく色再現可能領域内の色へ変換できるように、所定の精度で求めておくとよい。例えば明らかに色再現可能領域の境界上にあると考えられる色、例えば飽和色R、G、B、Y、M、C、K、Wなどを用い、隣接する色によって形成される四角形あるいは三角形を順次分割して行く方法によって、所定の精度で色再現可能領域の外郭データを得ることができる。
【0016】
色再現域整形部2は、入力カラー画像信号の色に応じた色相断面における出力側の色再現可能領域の外郭の少なくとも一部について近似処理を行う。色再現域データ保持部1に保持されている外郭データは、上述のように精度よく求められている。このような精度のよい外郭データを求める過程で、例えば上述の図10ないし図12に示したような大きな凹凸が実際には発生してしまう。この色再現域整形部2では、このような凹凸を近似処理によってある程度平滑化する。これによって、次の色変換部3で色変換処理を行う場合に、上述のように色再現可能領域が複数の領域に分離されたり、あるいは色の段差の発生を防止することができる。
【0017】
色変換部3は、色再現域整形部2によって近似処理された外郭データを用いて、入力カラー画像信号を出力カラー画像信号へ変換する。このとき、入力カラー画像信号が出力側の色再現可能範囲外の色である場合に、出力側の色再現可能範囲内の色に変換する処理を行うことができる。あるいは、入力側の色範囲内の入力カラー画像信号の色を、出力側の色再現可能範囲に合わせるように色の変換処理を行うことができる。色変換の処理方法としては、上述のように、例えば明度を固定して彩度を変化する方法や、ある目標点に向けて明度および彩度とも変化させる方法など、種々の方法を用いることができる。もちろん、これらの方法を組み合わせて用いてもよく、色再現可能範囲において最大彩度を有する明度よりも高い明度では明度を固定して彩度を変化させる方法、それ以下では目標点に向けて明度および彩度を変化させる方法を用いることができる。また、このような色変換処理に先立って、ある程度の色相変換を行ってもよい。色相変換を行う場合、色再現域整形部2から、色相変換後の色を含む色相断面における外郭データに対して近似処理を行った結果を受け取るようにするとよい。このような色変換処理において、出力側の色再現可能領域の輪郭を示す外郭データは精度よく求められているので、限られた色再現可能領域内の色を有効に利用し、望ましい色再現を実現可能な出力カラー画像信号を出力することができる。また、出力側の色再現可能領域の輪郭のうち、一律的な変換処理において不都合となる大きな凹凸は近似処理によって平滑化されているので、一律的な変換処理を行っても色の段差等が発生せず、良好な色再現を実現可能な出力カラー画像信号を得ることができる。
【0018】
図2、図3は、本発明の実施の一形態における動作の一例を示すフローチャートである。予めS11において、出力側の色再現可能領域の境界面の外郭データを所定の精度で得て、色再現域データ保持部1に保持させておく。外郭データは、装置に依存しない色空間、例えばCIE−L* a* b* 色空間において求めておくとよい。なお、以下の説明では内部の処理はCIE−L* a* b* 色空間において行うものとする。図4は、色再現可能領域の一例を示す概念図である。一般に色再現可能領域は一様ではなく、図4に示すように複雑な3次元形状を有している。図4に示す立体の内側が色再現が可能な領域であり、その外側は色を再現できない領域である。ここでは、色再現が可能な領域と色を再現できない領域との境界面を示す外郭データを求めておく。上述のようにこの境界面の形状は一様ではないので、例えば三角形などの多角形状に分割して表現しておくとよい。図4では、境界面の一部のみ、三角形状に分割して図示しているが、このような分割を境界面の全面について行うことになる。
【0019】
入力カラー画像信号が入力されると、S12において、入力カラー画像信号に応じた色相断面、例えば色相を変化させなければ入力カラー画像信号の色、色相を変化させる場合には変化させた後の色相の色を含み明度軸を通る平面を決定する。図5は、色相断面の一例の説明図である。ここでは、入力カラー画像信号をCIE−L* a* b* 色空間で入力色として示している。CIE−L* a* b* 色空間では、この入力色を含み、L* 軸を通る平面Pを決定する。そして、その決定した平面Pにおける出力側の色再現可能領域の輪郭を、色再現域データ保持部1に保持されている外郭データから得る。これにより、例えば次に説明する図6(A),図7(A)に示すような色再現可能領域の輪郭が得られる。このような色再現可能領域の輪郭は、一般的には図4や図5に示すように色再現可能領域の形状が一様ではないため、それぞれの色相ごとに異なった形状となる。
【0020】
S13およびS14(および図3の処理)において、S12で得た色相断面における色再現可能領域の輪郭について、近似処理を行って輪郭を整形する。ここでは整形する色再現可能領域の輪郭の範囲として、最大彩度を有する色Bと最小明度を有する明度軸上の色Aの間とする。この範囲において、1以上の線分によって近似する。そのために、S13において色Bと色Aを求め、この2つの色を結ぶ線分ABについて、S14および図3に示す処理によって1以上の近似線分を求める。このようにして近似処理が行われた色再現可能領域の輪郭を示す外郭データをもとに、S15において入力カラー画像信号に対して色変換処理を行い、出力カラー画像信号を得る。
【0021】
色再現可能領域の輪郭の近似処理による整形について、さらに具体例を用いながら図3に示した処理を説明する。図6は、色再現可能領域の輪郭の整形部分が凸形状の場合の近似処理の一例の説明図、図7は、同じく凹形状の場合の近似処理の一例の説明図である。図2のS12において、色相断面を決定して色再現可能領域の輪郭を取得することにより、例えば図6(A)や図7(A)に示すような色再現可能領域の輪郭が得られる。なお、色相断面は明度L* 軸と彩度C* 軸とで表現することができる。
【0022】
このような色再現可能領域の輪郭から、S13において、最大彩度を有する色Bと、明度軸(CIE−L* a* b* 色空間ではL* 軸)上の最小明度を有する色Aとを求める。これによって、例えば図6(B)や図7(B)に示す点A,点Bとして示す色が求められる。この点Aと点Bを結ぶ線分ABを考え、この線分ABについて、S14により図3に示す処理を行う。
【0023】
図3のS21において、線分ABの中心点を点Cとする。この中心点Cを通り、かつ、線分ABに垂直な直線Lを求め、この直線Lと色再現可能領域の輪郭線との交点Dを求める(図6(B)、図7(B)参照)。
【0024】
このとき求められた交点Dが線分ABの内側か外側かをS22で判断する。ここで、線分ABは通常は正の傾きを有しているので、L* 軸に近い側を色再現可能領域内という意味で内側、C* 軸に近い側を外側と称している。例えば交点Dが線分ABの内側である場合とは、図7(B)に示すような場合、すなわち色再現可能領域の輪郭線が凹形状の場合である。この場合には、与えられた線分ABはすでに色再現可能領域の境界のほとんどを包含していると見なすことができる。そのためS23において、線分ABを近似した結果として返す。すなわち図7に示した例では、図7(C)に示すように線分ABが近似結果となる。
【0025】
一方、交点Dが線分ABの外側である場合、すなわち図6(B)に示すように色再現可能領域の輪郭線が凸形状の場合には、凸部分を近似するように、さらに多数の線分に分割して近似処理を繰り返す。すなわち、S24において、線分ADと線分DBを新たな近似直線とする。そしてS25において近似の精度を確認し、所望の精度であれば線分ADと線分DBを近似結果として返す。所望の精度でなければ、S26において、線分ADおよび線分DBに対して、それぞれ、線分ABのときと同様にこの図3に示す処理を行う。これによって図3に示す処理は再帰的に実行され、与えられた線分間の輪郭線が凹形状であったり、あるいは凸形状の場合には所望の精度に達するまで線分の分割が行われる。得られた線分が近似結果となる。
【0026】
例えば図6(B)において、線分ADおよび線分DBに分割される。このとき、所望の精度に達していなかったとする。すると、線分ADについて、その中心点を求め、中心点を通り線分ADに直交する直線と色再現可能領域の輪郭線との交点Fを求める。そして線分ADを線分AFと線分FDに分割する。この時点で所望の精度に達していれば、線分AFおよび線分FDが点Aから点Dまでの近似結果として得られる。もちろん、所望の精度が得られていない場合には、線分AFおよび線分FDについて、それぞれ、同様の処理を繰り返すことになる。
【0027】
同様にして線分DBについても、その中心点を求め、中心点を通り線分DBに直交する直線と色再現可能領域の輪郭線との交点Eを求める。そして、線分DBを線分DEと線分EBに分割する。この時点で所望の精度に達していれば、線分DEおよび線分EBが点Dから点Bまでの近似結果として得られる。もちろん、所望の精度が得られていない場合には、線分DEおよび線分EBについて、それぞれ、同様の処理を繰り返すことになる。
【0028】
このようにして、最終的に近似結果として線分AF、線分FD、線分DE、線分EBが得られる。図6(C)は、このようにして得られた近似結果を示している。色再現可能領域のうち低明度の部分に凹凸が存在していたが、線分AFによって近似されている。このような近似処理によって、色再現可能領域の境界は所望の近似精度でなるべく凸形状となるように近似される。そのため、例えば図10〜図12に示したように色変換方向に色再現可能領域が複数出現することはなく、色変換部3によって一律的な色変換処理が可能となる。また、近似したことによって、色が微妙に変化する場合に変換後の色に段差が生じることがなくなり、画質の劣化を低減することができる。なお、近似処理を施さなかった部分については、予め求めておいた色再現域データ保持部1に保持されている外郭データをそのまま用いて色変換を行うことになる。そのため、実際の色再現可能領域を最大限に利用した色再現が行えるように、色変換処理を行うことが可能である。
【0029】
図8は、本発明の実施の一形態における近似処理の別の例を示すフローチャート、図9は、同じく具体例の説明図である。近似処理の方法は、上述の方法以外にも各種の方法を適用することができる。例えば図9(A)に示すように色再現可能領域の輪郭が凹凸を有する場合に、次に説明するようにして、凹凸を包容する近似輪郭線を求めることができる。この例においても、最大彩度を有する色Bと、明度軸上の最小明度を有する色Aとの間について近似処理を行うものとする。なお、全体の処理は図2と同様である。
【0030】
まず図2のS13において点Aと点Bを結ぶ線分ABを求め、S14において図8に示す処理が呼び出される。S31において、線分ABに平行で再現可能領域の輪郭に接する直線L1を求め、接点を点Cとする。S32において、直線L1(あるいは点C)が線分ABの外側か内側かを判定する。内側であれば、線分ABは点A〜点Bの区間において既に色再現可能領域の輪郭を包容しているので、S33において、線分ABを近似直線として確定する。
【0031】
直線L1(あるいは点C)が線分ABの外側である場合には、S34において点Cで分割し、線分ACと線分CBを仮に近似直線とする。例えば図9(A)においては点Cにおいて直線L1と接している。このときの直線L1(点C)は線分ABの外側である。そのため、点Cで分割し、図9(B)に示すように線分ACおよび線分CBを仮に近似直線とする。
【0032】
S35において、所望の近似精度で求められたか否かを判定し、所望の近似精度範囲内であれば、線分ACおよび線分CBを近似直線として確定する。所望の近似精度で求められていない場合には、S36において、線分ACおよび線分CBのそれぞれについて図8に示す処理を再帰的に実行する。
【0033】
図9(B)では、線分ACおよび線分CBでは所望の近似精度ではないものとし、線分ACと線分CBのそれぞれについて、さらに近似処理を行っている。すなわち、線分ACと平行で、色再現可能領域の輪郭と接する直線L2を求め、接点Cを求める。そして、線分ADおよび線分DCを求める。この場合、線分ADはほぼ色再現可能領域の輪郭と一致しているので、そのまま近似直線となる。また、線分DCについては、たとえ近似精度が所望範囲内でなくても、線分DCは輪郭を包容しているので、近似直線として確定する。同様にして線分CBについても処理を行うと、線分CEおよび線分EBが得られる。このようにして、図9(C)に示すように近似される。
【0034】
このような近似処理によって、近似処理を行った色再現可能領域の境界は包容する線分群で近似される。そのため、例えば図10〜図12に示したように色変換方向に色再現可能領域が複数出現することはなく、色変換部3によって一律的な色変換処理が可能となる。また、近似したことによって、色が微妙に変化する場合に変換後の色に段差が生じることがなくなり、画質の劣化を低減することができる。なお、近似処理を施さなかった部分については、予め求めておいた色再現域データ保持部1に保持されている外郭データをそのまま用いて色変換を行うことになる。そのため、実際の色再現可能領域を最大限に利用した色再現が行えるように、色変換処理を行うことが可能である。
【0035】
上述の2つの近似処理の例では、1ないし複数の線分によって色再現可能領域の境界の一部を近似した。しかしこれに限らず、例えば曲線によって近似するなど、種々の近似方法によって色再現可能領域の境界を整形することが可能である。
【0036】
上述の実施の形態では、入力カラー画像信号が入力される度に、その入力カラー画像信号に応じた色相断面を求めて、色再現可能領域の境界に近似処理を施した。本発明はこれに限らず、例えば全ての色相断面について予め色再現域整形部2で近似処理を行い、近似処理後の外郭データを再び色再現域データ保持部1に保持させておき、色変換部3は色変換の際に直接色再現域データ保持部1から外郭データを取得するように構成してもよい。
【0037】
また、色再現域整形部2で近似処理を行ったことにより、色変換時の誤差が生じる場合がある。このような誤差は、色変換部3で色変換処理を行う際に誤差を考慮して変換を行うことによって吸収することができる。あるいは、色変換部3よりも後段に別の色変換手段を有している場合には、その別の色変換手段で色変換誤差を吸収させてもよい。
【0038】
さらに、上述の具体例では、最大彩度を有する色Bと、明度軸上の最小明度を有する色Aとの間について近似処理を行っているが、本発明はこれに限られるものではない。色再現可能領域の境界面は精度よく求めているので、なるべくこのときに求めた外郭データを利用することが望ましい。そのため、近似処理を行う区間をもっと狭い範囲に限定してもよい。特に図10〜図12のような不具合が生じるのは、明度軸上の最小明度を有する色Aに近い領域であることが多い。そのため、この領域に限定して近似処理を行ってもよい。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、全体として精度よく求めておいた出力側の色再現可能領域の外郭データを利用して、色再現可能領域を有効に利用した望ましい色変換を行うことができる。それとともに、精度よく外郭データを求めたことによって発生する不都合な凹凸については、近似処理によって整形する。これによって、色変換処理の際に出力側の色再現可能領域の境界が複数個生じるようなことはなく、一律な色変換処理を行うことができる。また、この近似処理によって、色再現可能領域の境界形状による色の段差が発生することがなくなり、画質を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の一形態を示すブロック図である。
【図2】 本発明の実施の一形態における動作の一例を示すフローチャートである。
【図3】 本発明の実施の一形態における動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】 色再現可能領域の一例を示す概念図である。
【図5】 色相断面の一例の説明図である。
【図6】 色再現可能領域の輪郭の整形部分が凸形状の場合の近似処理の一例の説明図である。
【図7】 色再現可能領域の輪郭の整形部分が凹形状の場合の近似処理の一例の説明図である。
【図8】 本発明の実施の一形態における近似処理の別の例を示すフローチャートである。
【図9】 本発明の実施の一形態における近似処理の別の例の具体例の説明図である。
【図10】 色再現可能領域の一例における色変換時の問題点の説明図である。
【図11】 色再現可能領域の一例における色変換時の問題点を説明するための拡大図である。
【図12】 入力側の色領域を出力側の色再現可能領域に合わせる場合の問題点の説明図である。
【符号の説明】
1…色再現域データ保持部、2…色再現域整形部、3…色変換部。
Claims (5)
- 入力カラー画像信号を出力側の色再現可能領域内の出力カラー画像信号へ変換するカラー画像信号処理装置において、出力側の色再現可能領域の外郭データを保持する色再現域データ保持手段と、入力カラー画像信号の色に応じた色相断面における出力側の色再現可能領域の外郭を示す外郭データを前記色再現域データ保持手段から取得し該外郭データの少なくとも一部について近似処理を行う色再現域整形手段と、該色再現域整形手段によって近似処理された外郭データを用いて前記入力カラー画像信号を出力カラー画像信号へ変換する色変換手段を有し、前記色再現域整形手段は、最大彩度を有する色と最小明度を有する色を結ぶ線分に対して色再現可能領域の外郭が凸形状の場合には凸部分を近似する複数の線分に分割して該線分について近似処理を繰り返すことを特徴とするカラー画像信号処理装置。
- 入力カラー画像信号を出力側の色再現可能領域内の出力カラー画像信号へ変換するカラー画像信号処理装置において、出力側の色再現可能領域の外郭データを保持する色再現域データ保持手段と、入力カラー画像信号の色に応じた色相断面における出力側の色再現可能領域の外郭を示す外郭データを前記色再現域データ保持手段から取得し該外郭データの少なくとも一部について近似処理を行う色再現域整形手段と、該色再現域整形手段によって近似処理された外郭データを用いて前記入力カラー画像信号を出力カラー画像信号へ変換する色変換手段を有し、前記色再現域整形手段は、最大彩度を有する色と最小明度を有する色を結ぶ線分と平行で色再現可能領域の外郭に接する直線を求めて接点を取得し、該接点が線分の外側であれば前記線分の端点と前記接点とを結ぶ線分で近似して該近似処理を繰り返すことを特徴とするカラー画像信号処理装置。
- 前記色変換手段は、前記色再現域整形手段によって前記外郭データを近似処理した際の誤差を考慮して変換処理を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカラー画像信号処理装置。
- 入力カラー画像信号を出力側の色再現可能領域内の出力カラー画像信号へ変換するカラー画像信号処理方法において、入力カラー画像信号の色に応じた色相断面における最大彩度を有する色と最小明度を有する色を結ぶ線分に対して色再現可能領域の外郭が凸形状の場合には凸部分を近似する複数の線分に分割して該線分について近似処理を繰り返すことにより出力側の色再現可能領域の外郭の少なくとも一部について近似処理を色再現域整形手段で行い、前記入力カラー画像信号を近似処理された外郭を有する色再現可能領域内の出力カラー画像信号へ色変換手段で変換することを特徴とするカラー画像信号処理方法。
- 入力カラー画像信号を出力側の色再現可能領域内の出力カラー画像信号へ変換するカラー画像信号処理方法において、入力カラー画像信号の色に応じた色相断面における最大彩度を有する色と最小明度を有する色を結ぶ線分と平行で色再現可能領域の外郭に接する直線を求めて接点を取得し、該接点が線分の外側であれば前記線分の端点と前記接点とを結ぶ線分で近似して該近似処理を繰り返すことにより出力側の色再現可能領域の外郭の少なくとも一部について近似処理を色再現域整形手段で行い、前記入力カラー画像信号を近似処理された外郭を有する色再現可能領域内の出力カラー画像信号へ色変換手段で変換することを特徴とするカラー画像信号処理方法。
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