JP3915648B2 - 車両の乗員保護装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステアリングコラムの変形に伴うエネルギー吸収により運転者の操舵部材への衝突を緩和する車両の乗員保護装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両の前方物体への衝突時におけるステアリングコラムの変形(ステアリングコラムのコラプスを含む)に伴うエネルギー吸収により、運転者の操舵部材(操舵ハンドル)への衝突を緩和するようにした車両の乗員保護装置はよく知られている。そして、特許文献1には、自車両から先行車両までの距離の減少率と自車両の速度とから車両の衝突を予測し、同予測時には、衝突までの時間的余裕や衝突の強さを推定するとともに、ステアリングコラムのコラプス荷重を前記推定値に応じて変更して、乗員の保護がより良好に図られるようにすることが示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−114157号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の装置においては、車両の衝突寸前すなわち運転者が操舵ハンドルに衝突する寸前における運転者と操舵ハンドルとの位置関係に関しては考慮されていない。そのため、運転者の操舵ハンドルに対する相対位置(角度および距離)が不適切であると、ステアリングコラムの変形によるエネルギー吸収が効果的に行われないおそれがある。
【0005】
【本発明の概要】
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、ステアリングコラムの変形(ステアリングコラムのコラプスを含む)に伴うエネルギー吸収により運転者の操舵部材への衝突を緩和する車両の乗員保護装置において、車両衝突時に常に良好に乗員を保護するようにしたことにある。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車両の衝突を予測する予測手段と、予測手段によって車両の衝突が予測されたとき、車両を操舵するための操舵部材に対する運転者の相対位置が所定位置になるように、操舵部材または運転者用シートを移動させる移動手段と、運転者による操舵部材の操作を検出する操舵操作検出手段と、操舵操作検出手段によって操舵部材の操作が検出されたとき、移動手段による操舵部材または運転者用シートの移動を禁止または抑制する移動抑制手段とを備えたことにある。(請求項1、特に第3および第4実施形態に対応)
この発明および後述する発明において、前記予測手段を、車両が前方物体(前方車両など)に衝突するまでの時間を予測する時間予測手段と、同予測時間が所定の短い時間以下であるとき車両の前方衝突を予測する判定手段とで構成できる。車両が前方物体に衝突するまでの時間は、車両前端部から前方物体までの距離と、車両の前方物体に対する相対速度とを検出して、検出距離を検出相対速度で除算することにより計算される。そして、前記所定の短い時間を、制動操作、操舵操作による衝突回避操作を早急に行わなければ車両が前方物体に衝突するであろうと予測される時間(例えば、0.5秒)、または即座に衝突回避操作を行っても車両の前方衝突を回避不能な時間(例えば、0.3秒)に設定するとよい。また、前記予測手段を、車両の前端から前方物体(前方車両など)までの距離を検出する距離検出手段と、同検出距離が所定の短い距離以下であるとき車両の前方衝突を予測する判定手段とで構成してもよい。
また、この発明および後述する発明において、前記移動手段を、例えば、ステアリングコラムのテレスコピック機構により運転者の操舵部材に対する距離を所定距離に変更するように、またはステアリングコラムのチルト機構により運転者の操舵部材に対する角度を所定角度に変更するようにして、操舵部材を移動させるように構成するとよい。また、前記移動手段を、例えば、運転者用シートの前後位置調整機構により運転者の操舵部材に対する距離を所定距離に変更するように、または運転者用シートの角度調整機構により運転者の操舵部材に対する角度を所定角度に変更するようにして、運転者用シートを移動させるように構成してもよい。
さらに、前記移動手段による操舵部材または運転者用シートの移動を、運転者のシートベルト装着の有無および/または運転者と操舵部材との距離に応じて制御するようにするとよい。具体的には、運転者のシートベルト装着の有無を検出して、運転者がシートベルトを装着していない場合にのみ、操舵部材を下方に向けるように移動し、または運転者用シートの後部が前部に対して高くなるように運転者用シートを移動する。これにより、車両衝突時には、シートベルトを装着していない運転者は水平に移動することになるが、この移動によってステアリングコラムを変形させ易くすることができる。また、運転者と操舵部材との距離を検出して、同検出距離がエアバックの大きさを考慮した所定値よりも大きければ、操舵部材を後方に移動し、または運転者用シートを前方に移動する。前記検出距離が前記所定値よりも小さければ、操舵部材を前方に移動し、または運転者用シートを後方に移動する。これにより、ステアリングコラムの変形に伴うエネルギー吸収とエアバックによる衝撃吸収の効果を最大限に引き出すことができる。
【0014】
また、前記本発明の特徴においては、移動手段による操舵部材または運転者用シートの移動が、予測手段によって車両の衝突が予測された時点で行なわれるようにすることができる。また、移動手段による操舵部材または運転者用シートの移動が、予測手段によって車両の前方衝突が予測された時点から所定時間の経過後に行なわれるようにすることもできる。また、移動抑制手段による操舵部材または運転者用シートの前方への移動を抑制するとは、操舵部材または運転者用シートの前方への移動量を少なくしたり、操舵部材または運転者用シートの前方への移動速度を小さくすることを意味する。
【0015】
この本発明の特徴においては、車両の衝突が予測された場合であっても、運転者によって操舵部材が操作されたときには、運転者による操舵部材の操作の障害となる操舵部材または運転者用シートの移動が禁止または抑制される。これにより、運転者による操舵部材の操作による車両の衝突回避操作が重視され、車両衝突を運転者による運転操作によって回避し易くなる。一方、操舵部材が操作されなければ、車両衝突の予測により、操舵部材または運転者用シートは、運転者の操舵部材に対する相対位置が適切になるように移動される。したがって、車両衝突に伴って運転者が操舵部材に衝突しても、この運転者による衝突がステアリングコラムの変形に伴うエネルギー吸収によって的確に緩和される。その結果、この本発明の特徴によれば、運転者の保護と車両の運転操作性の両立を図ることができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記予測手段、移動手段、操舵操作検出手段および移動抑制手段を備えた車両の乗員保護装置において、車両前端部の衝突を検出する先端衝突検出手段と、先端衝突検出手段によって車両前端部の衝突が検出されたとき、移動抑制手段による操舵部材または運転者用シートの移動を禁止または抑制する制御を解除する解除手段とを設けたことにある。(請求項2および特に第5実施形態に対応)
【0017】
これによれば、車両前端部分が物体へ衝突した時点では、解除手段が移動抑制手段による操舵部材または運転者用シートの移動を禁止または抑制する制御を解除するので、操舵部材または運転者用シートは、運転者の操舵部材に対する相対位置が適切になるように移動される。したがって、車両衝突に伴って運転者が操舵部材に衝突しても、この運転者による衝突がステアリングコラムの変形に伴うエネルギー吸収によって的確に緩和されるので、運転者は良好に保護される。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、車両の衝突前に同衝突が発生することを予測する第1予測手段と、第1予測手段によって車両の衝突が予測されたとき、車両を操舵するための操舵部材に対する運転者の相対位置が所定位置になるように、操舵部材または運転者用シートを移動させる第1移動手段と、運転者による操舵部材の操作を検出する操舵操作検出手段と、操舵操作検出手段によって操舵部材の操作が検出されたとき、移動手段による操舵部材または運転者用シートの移動を禁止または抑制する移動抑制手段と、車両の衝突前に同衝突が第1予測手段よりも高い確率で発生することを予測する第2予測手段と、第2予測手段によって車両の衝突が予測されたとき、移動抑制手段による操舵部材または運転者用シートの移動を禁止または抑制する制御を解除する解除手段とを設けたことにある。(請求項3および特に第6実施形態に対応)
【0019】
この場合、第1予測手段は、運転者が衝突回避操作を早急に行わなければ、車両が物体に衝突してしまう程度の可能性、例えば前方物体に衝突するまでの時間が0.5秒程度であることを予測するようにすればよい。また、第2予測手段は、運転者が衝突回避操作をしても、車両の物体への衝突を回避できない程度、例えば物体に衝突するまでの時間が0.3秒程度であることを予測するようにすればよい。
【0020】
この本発明の他の特徴においても、第1予測手段によって車両の衝突が予測されても、運転者によって操舵部材が操作されたときには、運転者による操舵操作の障害となる操舵部材または運転者用シートの移動が禁止または抑制される。これにより、運転者による衝突回避動作が重視され、車両衝突を運転者による運転操作によって回避し易くなる。一方、操舵部材が操作されなくて、第2予測手段によって車両の衝突が予測された場合には、解除手段の作用によって操舵部材または運転者用シートは、運転者の操舵部材に対する相対位置が適切になるように移動される。したがって、車両衝突に伴って運転者が操舵部材に衝突しても、この運転者による衝突がステアリングコラムの変形に伴うエネルギー吸収によって的確に緩和される。その結果、この本発明の他の特徴によれば、運転者の保護と車両の運転操作性の両立を図ることができる。
【0021】
また、本発明の他の特徴は、車両の衝突前に同衝突を予測する予測手段と、予測手段によって車両の衝突が予測されたとき、車両を操舵するための操舵部材に対する運転者の相対位置が所定位置になるように、操舵部材または運転者用シートを第1速度で移動させる第1移動手段と、車両前端部の衝突を検出する先端衝突検出手段と、先端衝突検出手段によって車両前端部の衝突が検出されたとき、操舵部材に対する運転者の相対位置が所定位置になるように、操舵部材または前記運転者用シートを前記第1速度よりも速い第2速度で移動させる第2移動手段とを備えたことにある。(請求項4および特に第7実施形態に対応)
【0022】
この本発明の他の特徴においては、車両の前端部が物体へ衝突するまでは、操舵部材または運転者用シートの移動速度を小さくでき、運転者は衝突回避のために操舵部材を操作し易くなる。また、車両前端部が物体へ衝突した後には、操舵部材または運転者用シートは、運転者の操舵部材に対する相対位置が適切になるように高速で移動される。したがって、車両衝突に伴って運転者が操舵部材に衝突しても、この運転者による衝突がステアリングコラムの変形に伴うエネルギー吸収によって的確に緩和される。その結果、この本発明の他の特徴によれば、運転者の保護と車両の運転操作性の両立を図ることができる。
【0023】
また、本発明の他の特徴は、車両の衝突前に同衝突が発生することを予測する第1予測手段と、第1予測手段によって車両の衝突が予測されたとき、車両を操舵するための操舵部材に対する運転者の相対位置が所定位置になるように、操舵部材または運転者用シートを第1速度で移動させる第1移動手段と、車両の衝突前に同衝突が第1予測手段よりも高い確率で発生することを予測する第2予測手段と、第2予測手段によって車両の衝突が予測されたとき、操舵部材に対する運転者の相対位置が所定位置になるように、操舵部材または運転者用シートを、第1速度よりも速い第2速度で移動させる第2移動手段とを設けたことにある。(請求項5および特に第8実施形態に対応)
【0024】
この場合、第1予測手段は、運転者が衝突回避操作をしなければ、車両が物体に衝突してしまう程度の可能性を予測するようにすればよい。また、第2予測手段は、運転者が衝突回避操作をしても、車両の物体への衝突を回避できないことを予測するようにすればよい。
【0025】
この本発明の他の特徴においては、車両の物体への衝突の可能性が高くなるまでは、操舵部材または運転者用シートの移動速度を小さくでき、運転者は衝突回避のために操舵部材を操作し易くなる。また、車両の物体への衝突の可能性が極めて高い場合には、操舵部材または運転者用シートは、運転者の操舵部材に対する相対位置が適切になるように高速で移動される。したがって、車両衝突に伴って運転者が操舵部材に衝突しても、この運転者による衝突がステアリングコラムの変形に伴うエネルギー吸収によって的確に緩和される。その結果、この本発明の他の特徴によれば、運転者の保護と車両の運転操作性の両立を図ることができる。
【0026】
また、本発明の他の特徴は、車両の衝突前に同衝突を予測する予測手段と、予測手段によって車両の衝突が予測されたとき、車両を操舵するための操舵部材に対する運転者の相対位置が所定位置になるように、操舵部材または運転者用シートを移動させる移動手段と、移動手段による操舵部材または運転者用シートの移動速度を時間経過に従って速くするように制御する移動速度制御手段とを備えたことにある。(請求項6および特に第9実施形態に対応)
【0027】
この本発明の他の特徴においては、車両の前方物体への衝突が予測された時点における操舵部材または運転者用シートの移動速度を小さくでき、運転者は衝突回避のために操舵部材を操作し易くなる。そして、時間経過にしたがって操舵部材または運転者用シートの移動速度は速くなるので、車両が物体に衝突してしまった場合でも、操舵部材に対する運転者の相対位置が適切になる。したがって、車両衝突に伴って運転者が操舵部材に衝突しても、この運転者による衝突がステアリングコラムの変形に伴うエネルギー吸収によって的確に緩和される。その結果、この本発明の他の特徴によれば、運転者の保護と車両の運転操作性の両立を図ることができる。
【0028】
また、本発明の他の特徴は、前記移動速度制御手段に代えて、移動手段による操舵部材または運転者用シートの移動速度を、車両衝突の発生までの時間が短くなるに従って速くするように制御する移動速度制御手段を備えたことにある。(請求項7および特に第10実施形態に対応)
【0029】
これによれば、車両が物体に衝突するまでの時間が長ければ、操舵部材または運転者用シートの移動速度を小さくでき、運転者は衝突回避のために操舵部材を操作し易くなる。そして、車両が物体に衝突するまでの時間が短ければ、すなわち車両の物体への衝突が回避不能ならば、操舵部材または運転者用シートは充分に速く移動するので、車両が物体に衝突してしまった場合でも、操舵部材に対する運転者の相対位置が適切になる。したがって、車両衝突に伴って運転者が操舵部材に衝突しても、この運転者による衝突がステアリングコラムの変形に伴うエネルギー吸収によって的確に緩和される。その結果、この本発明の他の特徴によれば、運転者の保護と車両の運転操作性の両立を図ることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
a.第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態について図面を用いて説明すると、図1は、同実施形態に係る車両の乗員保護装置の全体を概略的に示すブロック図である。この乗員保護装置は、主にステアリングコラム10の変形に伴うエネルギー吸収により運転者の操舵ハンドル20への衝突を緩和するものである。
【0031】
ステアリングコラム10は、図1および図2に示すように、インターミディエイトシャフト11、ロワーメインシャフト12およびアッパーメインシャフト13からなり、操舵ハンドル20の回動をインターミディエイトシャフト11の下端に接続したステアリングリンク機構14に伝達して図示しない前輪を左右に操舵する。ロワーメインシャフト12とアッパーメインシャフト13とは、軸線回りに一体的に回転するように連結されているが、軸線方向の相対位置を変更可能に連結されている。そして、ロワーメインシャフト12とアッパーメインシャフト13との軸線方向の相対位置は、ロワーメインシャフト12に組み付けられた駆動手段としての電動モータ15aを含み、電動モータ15aの回転により両メインシャフト12,13の互いの軸線方向位置を変更可能なテレスコピック機構15により調節されるようになっている。
【0032】
アッパーメインシャフト13の上端部には、傾動部材21を介して操舵ハンドル20が組み付けられている。操舵ハンドル20は、車両を操舵する操舵部材を構成するもので、その中央部にて傾動部材21に一体的に固定されている。この操舵ハンドル20の中央部には、エアバック装置22が収容されている。傾動部材21は、アッパーメインシャフト13の上端部に同シャフト13と軸線回りに一体回転するように組み付けられているが、回転軸21a回りに回動可能に組み付けられてアッパーメインシャフト13の軸線に対して上下方向に傾動可能になっている。そして、操舵ハンドル20および傾動部材21とアッパーメインシャフト13との間の上下方向の角度が、傾動部材21に固定した駆動手段としての電動モータ23aを含み、電動モータ23aの回転によりアッパーメインシャフト13に対する傾動部材21の傾動位置を変更可能なチルト機構23により調節されるようになっている。
【0033】
また、ロワーメインシャフト12およびアッパーメインシャフト13は、分離ロワーブラケット16およびブレークアウェイブラケット17を介して車体BD側に固定されている。そして、車両の衝突時には、これらのブラケット16,17が車体BDから分離され、ロワーおよびアッパーの両メインシャフト12,13が収縮するとともに、インターミディエイトシャフト11が収縮して操舵ハンドル20が車室内に押し出されることを防止する。また、ブレークアウェイブラケット17にはエネルギー吸収プレート18が組み付けられていて、同プレート18は、カプセル(図示しない)を残してブレークアウェイブラケット17が前方に移動した際に変形して、操舵ハンドル20(ホイールパッド)と共に衝撃によるエネルギーを吸収する。これらのステアリングコラム10の変形に伴うエネルギーの吸収により、車両衝突時における運転者の操舵ハンドル20への衝突に伴う衝撃が緩和される。
【0034】
次に、このような乗員保護装置を電気的に制御する電気制御装置の構成について説明する。電気制御装置は、CPU、ROM、RAM、タイマなどからなるマイクロコンピュータを主用構成部品とする電子制御ユニット30を備えている。電子制御ユニット30は、図3,4のプログラムの実行により、駆動回路31,32,33を介して電動モータ15a,23aおよびエアバック装置22の作動をそれぞれ制御する。この電子制御ユニット30には、位置センサ41、角度センサ42、距離センサ43、シートベルト装着センサ44、距離センサ45、車体衝突センサ46および車速センサ47からの各検出信号が入力されている。
【0035】
位置センサ41は、テレスコピック機構15内に組み込まれて、アッパーメインシャフト13のロワーメインシャフト12に対する相対位置を検出する。角度センサ42は、チルト機構23内に組み込まれて、傾動部材21のアッパーメインシャフト13に対する傾動角度を検出する。距離センサ43は、操舵ハンドル20の運転者側に組み付けた赤外線式、超音波式の距離測定センサで構成されており、操舵ハンドル20から運転者までの距離Lhを検出する。シートベルト装着センサ44は、運転者用シート50に設けたバックル51内に設けられて、運転者がシートベルト52を装着しているか否かを検出する。
【0036】
距離センサ45は、車両の前端部に取り付けられたミリ波、赤外線などを利用したレーダー装置によって構成されて、車両の前端から前方物体(主に前方車両)までの距離Lxを検出する。車体衝突センサ46は、車両の車体(例えば、車両の重心位置)に組み付けられた加速度センサによって構成される。車速センサ47は、変速機の出力軸の回転数を計測することにより、車速Vを検出する。
【0037】
上記のように構成した第1実施形態に係る乗員保護装置の作動を説明すると、イグニッションスイッチIGの投入により、電子制御ユニット30は、図3の衝突予測プログラムを所定の短時間毎に繰り返し実行し始める。この衝突予測プログラムの実行はステップ100にて開始され、ステップ102にて車速センサ47によって検出された車速Vを入力して、同車速Vが所定の小さな車速Vo(例えば、時速5Km/h)以上であるかを判定することにより,車両が走行状態にあるか否かを判定する。車両がほぼ停止状態にあって、車速Vが所定の小さな車速Vo未満であれば、ステップ102にて「No」と判定して、ステップ116に進む。
【0038】
ステップ116においては、駆動回路31,32を介して電動モータ15a,23aを駆動制御して、操舵ハンドル20を原位置に復帰させる。ただし、操舵ハンドル20が既に原位置にある場合には、前記原位置への復帰制御は行われない。なお、操舵ハンドル20の原位置とは、運転者の操作に応答した図示しないプログラムの実行により、位置センサ41および角度センサ42による検出位置および検出角度に応じて電動モータ15a,23aを作動させて設定した操舵ハンドル20の運転状態位置である。前記ステップ116の処理後、ステップ118にてこの衝突予測プログラムの実行を一旦終了する。
【0039】
一方、車両が走行を開始して、ステップ102にて「Yes」すなわち車速Vが所定の小さな車速Vo以上であると判定されると、電子制御ユニット43はステップ104以降の処理を実行する。ステップ104においては、距離センサ45によって検出された車両前端から前方物体までの距離Lxを入力して、今回のプログラムの実行による入力距離を表す今回距離Lnewとして設定する。次に、ステップ106にて、前回のプログラムの実行時に入力した距離Lx(以降、前回距離Loldという)から今回距離Lnewを減算した減算値Lold−Lnewを、この衝突予測プログラムの実行時間間隔Δtで除算することにより、前方物体との相対速度Vab(=(Lold−Lnew)/Δt)を計算する。なお、前回距離Loldは、図示しない初期設定処理によって「0」に設定されている。この場合、初回に計算される相対速度Vabは負になり、後述するステップ108にて「No」と判定されてステップ116に進み、実質的な処理が実行されないので、初回に計算される相対速度Vabが不適切であっても、この点が問題になることはない。
【0040】
前記相対速度Vabの計算後、ステップ107にて、次回の相対速度Vabの計算のために、前回距離Loldを今回距離Lnewに更新しておく。次に、ステップ108にて同相対速度Vabが正であるかを判定する。相対速度Vabが正でなければ、前述のように、ステップ108にて「No」と判定して、前述したステップ116にて操舵ハンドル20を原位置に維持または復帰させる。これは、相対速度Vabが正でないことは車両の前端部から前方物体までの距離Lxが変化しないまたは増加していることを意味し、この場合には車両が前方物体に衝突する可能性がないので、操舵ハンドル20が原位置にあればよいからである。
【0041】
一方、相対速度Vabが正であれば、ステップ108にて「Yes」と判定して、ステップ110に進む。ステップ110においては、今回距離Lnewを相対速度Vabで除算することにより、現在の相対速度Vabで走行し続ければ、車両の前端部が前方物体に衝突するまでの時間Ts(=Lnew/Vab)を計算する。以下、この時間Tsを先端衝突時間という。次に、ステップ112にて、この先端衝突時間Tsが所定時間Ts2以下であるかを判定する。この場合、先端衝突時間Tsは、運転者がブレーキペダル10の踏み込み、操舵ハンドル20の操作などの衝突回避操作を早急に行わなければ、車両の前端部が前方物体に衝突するであろうと予測される時間、例えば、0.5秒程度の値に設定されている。
【0042】
先端衝突時間Tsが所定時間Ts2よりも大きければ、ステップ112にて「No」と判定して、前述したステップ116の処理を実行して操舵ハンドル20を原位置に維持または復帰させる。一方、先端衝突時間Tsが所定時間Ts2以下になると、ステップ112にて「Yes」と判定し、ステップ114のハンドル移動ルーチンを実行する。
【0043】
ハンドル移動ルーチンは、図4に詳細に示されており、その実行がステップ300にて開始される。この実行開始後、電子制御ユニット30は、ステップ302にてシートベルト装着センサ44からの検出信号を入力して、運転者がシートベルト52を装着しているか否かを判定する。運転者がシートベルト52を装着していれば、ステップ302にて「Yes」と判定してステップ306,308に進む。一方、運転者がシートベルト52を装着していなければ、ステップ302にて「No」と判定して、ステップ304にて操舵ハンドル20の傾動角度を変更する。具体的には、電子制御ユニット30は、角度センサ42による検出角度を用いて、所定傾動角度になるまで電動モータ23aを作動させて操舵ハンドル20の傾動角度を変更する。この場合、所定傾動角度とは、例えば、図5(A)に示すように、操舵ハンドル20の軸線方向が通常の運転状態よりも水平側に傾いていて、シートベルト52を装着していない運転者が車両衝突時に適切な角度で操舵ハンドル20に衝突するようにするための角度である。前記ステップ304の処理後、ステップ306,308に進む。
【0044】
ステップ306においては、距離センサ43による検出距離Lhが入力されて、同検出距離Lhが所定距離Lh1以下であるかを判定する。また、ステップ308においては、前記検出距離Lhが所定距離Lh2以上であるかを判定する。所定距離Lh1は、エアバック装置22内のエアバック22aがその展開時に運転者と操舵ハンドル20との間に的確に収まって、車両衝突時に運転者の前方への移動がエアバック22aによって拘束かつ吸収される適性距離Lh0よりも所定量だけ小さな値Lh0−ΔLhに設定されている。また、所定距離Lh2は、前記適性距離Lh0よりも所定量だけ大きな値Lh0+ΔLhに設定されている。
【0045】
いま、検出距離Lhが前記所定距離Lh1よりも大きくかつ前記所定距離Lh2よりも小さければ(Lh1<Lh<Lh2)、ステップ306,308にて共に「No」と判定して、ステップ314にてこのハンドル移動ルーチンの実行を終了する。一方、検出距離Lhが前記所定距離Lh1以下であれば、ステップ306にて「Yes」と判定して、ステップ310にて操舵ハンドル20を前方へ移動する。具体的には、電子制御ユニット30は、距離センサ43による検出距離Lhを用いて、図5(B)に示すように、検出距離Lhが適性距離Lh0になるまで電動モータ15aを作動させて操舵ハンドル20の前方へ移動する。
【0046】
また、検出距離Lhが前記所定距離Lh2以上であれば、ステップ306にて「No」と判定するとともに、ステップ308にて「Yes」と判定して、ステップ332にて操舵ハンドル20を後方へ移動する。具体的には、電子制御ユニット30は、距離センサ43による検出距離Lhを用いて、図5(C)に示すように、検出距離Lhが適性距離Lh0になるまで電動モータ15aを作動させて操舵ハンドル20を後方へ移動する。前記ステップ310,312の処理後、ステップ314にてハンドル移動ルーチンの実行を終了する。以下、このようなハンドル移動ルーチンの実行によって移動される操舵ハンドル20の位置を待機位置という。ふたたび、図3の説明に戻ると、このステップ114のハンドル移動ルーチンの実行後、ステップ118にて衝突予測プログラムの実行を一旦終了する。
【0047】
所定の短時間の経過後、電子制御ユニット30はこの衝突予測プログラムの実行を再開して、操舵ハンドル20の移動を制御する。そして、操舵ハンドル20が一旦移動制御されても、運転者によるブレーキペダル10の踏み込み操作、操舵ハンドル20の操作などの衝突回避操作によって車両の衝突が回避されて、相対速度Vabが負になったり、先端衝突時間Tsが所定時間Ts2よりも大きくなった場合には、ステップ102,108,112にて「No」と判定されて、ステップ116の処理によって操舵ハンドル20は原位置に復帰する。ただし、車両が前方物体に実際に衝突した場合には、車両がたとえ停止しても、前記操舵ハンドル20の原位置復帰は行われない。
【0048】
また、前記衝突回避操作によっても、車両の衝突が回避されなくて、車両が前方物体に衝突した際には、エアバック22aが展開する。具体的には、電子制御ユニット30は、図示しないプログラムの実行により、車体衝突センサ46からの検出加速度が車体衝突を表す所定加速度以上になると、駆動回路33を介してエアバック装置22を作動させてエアバック22aを展開させる。なお、前記車体衝突とは、前方物体との衝突が車体にまで影響してくる状態をいう。
【0049】
このような車体衝突が発生した時点では、前述のようにエアバック22aの展開によって運転者の操舵ハンドル20への衝突が緩和される。また、このとき、ステアリングコラム10の変形、操舵ハンドル20およびホイールパッドの変形によっても、運転者が受ける衝撃が緩和される。
【0050】
上記作動説明からも理解できるように、上記第1実施形態によれば、車両の前方物体(前方車両など)への衝突を事前に予測して、同予測時に操舵ハンドル20が待機位置に移動されるので、車両が前方物体に衝突しても、同衝突時には操舵ハンドル20は待機位置に移動し終えている。したがって、車両衝突に伴って運転者が操舵ハンドル20に衝突しても、この運転者による衝突がステアリングコラム10の変形に伴うエネルギー吸収によって的確に緩和されるので、運転者が良好に保護される。
【0051】
特に、運転者がシートベルト52を装着していない場合には、操舵ハンドル20を下方に傾動させる(図5(A)参照)。これにより、車両衝突時には、シートベルト20を装着していない運転者は水平に移動することになるが、この移動によってステアリングコラム10を変形させ易くすることができる。また、運転者と操舵ハンドル20との距離が長かったり、短かったりすれば、同距離が適切になるように操舵ハンドル20が移動されるので(図5(B)(C)参照)、ステアリングコラム10の変形に伴うエネルギー吸収とエアバックによる衝撃吸収の効果を最大限に引き出すことができる。
【0052】
また、上記第1実施形態においては、操舵ハンドル20を移動させる条件として、先端衝突時間Tsが、早急に衝突回避操作をしなければ車両の前端部が前方物体に衝突するであろうと予測される時間(すなわち所定時間Ts2)以下であることを採用した。しかし、この条件に代えて、先端衝突時間Tsが、即座にブレーキペダル10の踏み込み操作、操舵ハンドル20の操作などの車両の衝突回避操作をしても車両の前方衝突を回避不能な所定時間Ts1(例えば、0.3秒)以下であるという条件を採用してもよい。この場合、上記図3のステップ112の括弧内に示すように、先端衝突時間Tsが所定時間Ts1以下であるかを判定するようにすればよい。これによっても、車両衝突時における操舵ハンドル20の移動に対する時間遅れがなくなり、車両衝突時における乗員の保護が的確に図られる。
【0053】
また、上記第1実施形態では、車両の前端部が前方物体に衝突するまでの時間を予測して、車両の前方物体への衝突を予測するようにしたが、車両の前端部から前方物体までの距離Lxが小さいときに、車両が前方物体に衝突することを予測するようにしてもよい。この場合、上記図4のステップ106〜110の処理を省略し、ステップ112において,ステップ104にて入力した今回距離Lnewが、車両が前方物体に衝突する可能性のある、または同衝突を回避不能な所定距離Lx0以下であるかを判定するようにすればよい。そして、今回距離Lnewが所定距離Lx0以下であるとき、ステップ114の処理を実行して、操舵ハンドル20を移動させるようにすればよい。
【0054】
また、この場合、車速Vも考慮して、車両の前方物体への衝突を予測するようにするとさらによい。すなわち、車速Vが大きくなるに従って、前記今回距離Lnewと比較される所定距離Lx0を大きな値に設定するとよい。
【0055】
b.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態に係る乗員保護装置は、図1に重ねて示すように、距離センサ45および車速センサ47に代えて、先端衝突センサ61を備えている。先端衝突センサ61は、車両の前端部(例えば、前方側バンパ)に組み付けられた加速度センサによって構成される。また、この第2実施形態に係る電子制御ユニット30は、上記図3の衝突予測プログラムに代えて、図6の衝突予測プログラムを記憶していて同プログラムを所定の短時間毎に繰り返し実行する。他の部分に関しては、上記第1実施形態と同じである。
【0056】
以下、この第2実施形態に係る乗員保護装置の作動を説明する。この乗員保護装置においても、イグニッションスイッチIGの投入後、電子制御ユニット30は、図6の衝突予測プログラムを所定の短時間毎に繰り返し実行し始める。この衝突予測プログラムの実行もステップ100にて開始され、電子制御ユニット30は、ステップ120にて、先端衝突センサ61の出力信号に基づいて車両の前端が前方物体(主に、前方車両)に衝突しているかを判定する。具体的には、先端衝突センサ61によって検出された加速度が、車両の前端部の前方物体への衝突に伴って発生する所定加速度以上であるかを判定する。
【0057】
このステップ120の判定において、車両の前端部が前方物体に衝突していない、すなわち「No」と判定されれば、ステップ118にてこの衝突予測プログラムの実行を一旦終了する。なお、この場合には、操舵ハンドル20は原位置にある。一方、車両の前端部が前方物体に衝突して、ステップ120にて「Yes」と判定されると、電子制御ユニット30は、上記第1実施形態と同様なステップ114のハンドル移動ルーチンの処理を実行する。これにより、操舵ハンドル20は、待機位置に移動する。
【0058】
その結果、この第2実施形態によれば、車両の前端部の前方物体への衝突時に、操舵ハンドル20が待機位置に移動されるので、車両の物体に対する衝突が車体に及ぶ時点では、運転者の操舵ハンドル20に対する相対位置が既に適切になっている。したがって、車両衝突に伴って運転者が操舵ハンドル20に衝突しても、この運転者による衝突がステアリングコラム10の変形に伴うエネルギー吸収によって的確に緩和されるので、運転者が良好に保護される。
【0059】
c.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態に係る乗員保護装置は、上記第1実施形態の乗員保護装置に加えて、図1に重ねて示すように、ロワーメインシャフト12に組み付けられて操舵ハンドル20の操舵角θを検出する操舵角センサ62を有している。そして、この操舵角センサ62は、検出操舵角θを電子制御ユニット30に入力する。
【0060】
また、この第3実施形態に係る電子制御ユニット30は、上記第1実施形態に係る図3の衝突予測プログラムに代えて、図7の衝突予測プログラムを記憶していて同プログラムを所定の短時間毎に繰り返し実行する。他の部分に関しては、上記第1実施形態と同じである。
【0061】
以下、この第3実施形態に係る乗員保護装置の作動を説明する。この乗員保護装置においても、イグニッションスイッチIGの投入後、電子制御ユニット30は、図7の衝突予測プログラムを所定の短時間毎に繰り返し実行し始める。この衝突予測プログラムの実行もステップ100にて開始され、電子制御ユニット30は、上記第1実施形態と同様なステップ102〜112による衝突予測処理を実行する。この衝突予測処理により、車両が前方物体に衝突する可能性がなければ(または衝突回避不能でなければ)、ステップ112にて「No」と判定して、上記第1実施形態と同様なステップ116の処理により、操舵ハンドル20を原位置に維持又は復帰させて、ステップ118にこの衝突予測プログラムの実行を終了する。
【0062】
一方、ステップ112において、車両が前方物体に衝突する可能性あり(Ts≦Ts2)(または衝突回避不能である(Ts≦Ts1))と判定されれば、すなわち「Yes」と判定されれば、ステップ130以降の処理が実行される。ステップ130においては、操舵ハンドル20が運転者によって操作されているかを判定する。この判定においては、電子制御ユニット30は、操舵角センサ62から検出操舵角θを入力し、今回入力した検出操舵角θと前回入力した検出操舵角θとを比較して、両検出操舵角が所定値以上異なれば、操舵ハンドル20が操作されていると判定し、それ以外のとき操舵ハンドル20は操作されていないと判定する。
【0063】
ステップ130にて、操舵ハンドル20が操作されていない、すなわち「No」と判定されると、電子制御ユニット30は上記第1実施形態と同様なステップ114のハンドル移動ルーチンを実行する。一方、ステップ130にて、操舵ハンドル20が操作されている、すなわち「Yes」と判定されると、ステップ132に進む。ステップ132においては、駆動回路31,32による電動モータ15a,23aの作動を停止させて、操舵ハンドル20の移動を停止させる。
【0064】
このような第3実施形態においては、車両の衝突が予測された場合であっても、運転者によって操舵ハンドル20が操作されたときには、運転者による操舵ハンドル20の操作の障害となる操舵ハンドル20の移動が禁止される。これにより、運転者による操舵ハンドル20の操作による車両の衝突回避操作が重視され、車両衝突を運転者による運転操作によって回避し易くなる。一方、操舵ハンドル20が操作されなくて、車両の衝突が予測された場合には、操舵ハンドル20は、運転者の操舵ハンドル20に対する相対位置が適切になるように移動される。したがって、車両衝突に伴って運転者が操舵ハンドル20に衝突しても、この運転者による衝突がステアリングコラム10の変形に伴うエネルギー吸収によって的確に緩和される。その結果、この第3実施形態によれば、運転者の保護と車両の運転操作性の両立を図ることができる。
【0065】
d.第4実施形態
次に、上記第3実施形態を変形した第4実施形態について説明する。この第4実施形態においては、電子制御ユニット30は図8の衝突予測プログラムを実行する。この図8の衝突予測プログラムは、上記第4実施形態に係る図7の衝突予測プログラムのステップ132の処理に代えて、ステップ140の処理を実行するものである。
【0066】
このステップ140の処理は、ステップ130にて「Yes」すなわち操舵ハンドル20が操作されていると判定されたときに実行される。そして、このステップ140においては、上記ステップ114の操舵ハンドル20の移動量に比べて少量の移動量だけ操舵ハンドル20を移動させる。すなわち、電子制御ユニット30は、位置センサ41,42と協働して駆動回路31,32を制御して、操舵ハンドル20が待機位置の方向に移動する回転方向に、上記ステップ132の場合よりも所定量だけ小さい回転角度だけ電動モータ15a,23aを回転させる。
【0067】
その結果、この第4実施形態によっても、運転者による前方物体への衝突回避操作が重視されるとともに、車両が前方物体に衝突した場合でも、運転者の操舵ハンドル20に対する相対位置が待機位置に近づいている。したがって、運転者の車両操作の意志を反映するとともに、運転者の操舵ハンドル20に対する衝突に対しても良好な保護が図られる。
【0068】
e.第5実施形態
次に、上記第3実施形態を変形した第5実施形態について説明する。この第5実施形態においては、電子制御ユニット30は図9の衝突予測プログラムを実行する。この図9の衝突予測プログラムは、上記第3実施形態に係る図7の衝突予測プログラムのステップ130とステップ132と間にステップ150の処理を挿入したものである。
【0069】
ステップ150においては、先端衝突センサ61からの検出信号に基づいて、車両の前端部が前方物体に衝突したか否かを判定する。そして、前記車両の前端部の前方物体への衝突が検出されない状態では、ステップ150における「No」との判定のもとに、前述したステップ132の処理の実行により操舵ハンドル20の移動を停止して、ステップ118にてこの衝突予測プログラムの実行を終了する。
【0070】
一方、操舵ハンドル20が操舵されていても、車両の前端部が前方物体に衝突すると、ステップ150にて「Yes」と判定して、前述したステップ114のハンドル移動ルーチンを実行して操舵ハンドル20を移動させる。
【0071】
このように動作する第5実施形態においては、車両の前方物体への衝突が予測された後、操舵ハンドル20の操作があれば、操舵ハンドル20は移動されない。したがって、この第5実施形態においても、操舵ハンドル20の操作に基づく運転者による車両の衝突回避操作が重視される。しかし、車両の前端部が前方物体に衝突した際には、操舵ハンドル20は待機位置に移動されるので、運転者の操舵ハンドル20に対する衝突に対しても良好な保護が図られる。
【0072】
また、この第5実施形態では、車両の衝突予測があり、かつ先端衝突が検出される前に、操舵ハンドル20が操作された状態では、操舵ハンドル20を全く移動しないようにした。しかし、これに代えて、この状態では、上記第4実施形態(図8のステップ140)の場合のように、操舵ハンドル20を待機位置方向に少量だけ移動させるようにしてもよい。
【0073】
f.第6実施形態
次に、上記第5実施形態を変形した第6実施形態について説明する。この第6実施形態においては、電子制御ユニット30は図10の衝突予測プログラムを実行する。この図10の衝突予測プログラムは、上記第5実施形態に係る図9の衝突予測プログラムのステップ112および150の判定処理を、それぞれステップ160および162の判定処理に置換したものである。
【0074】
ステップ160の判定処理は、ステップ110の処理により計算した先端衝突時間Tsが所定時間Ts2(例えば、0.5秒)以下であるか、すなわち運転者が衝突回避操作をしなければ車両が前方物体に衝突する可能性があるかを判定するものである。ステップ162の判定処理は、前記計算した先端衝突時間Tsが所定時間Ts1(例えば、0.3秒)以下であるか、すなわち車両の前方物体への衝突回避が不能であるかを判定するものである。
【0075】
したがって、この第6実施形態にあっては、ステップ160にて「Yes」、すなわち運転者が衝突回避操作をしなければ車両が前方物体に衝突する可能性があると判定された場合であっても、ステップ162にて「Yes」、すなわち衝突回避不能であると判定されるまでに、運転者によって操舵ハンドル20が操作された場合、運転者による操舵ハンドル20の操作の障害となる操舵ハンドル20の移動が禁止される。これにより、運転者による衝突回避動作が重視され、車両衝突を運転者による運転操作によって回避し易くなる。
【0076】
一方、操舵ハンドル20が操作されても、ステップ162にて「Yes」、すなわち衝突回避不能と判定されると、ステップ114の処理により操舵ハンドル20は待機位置に移動されるので、運転者の操舵ハンドル20に対する衝突に対しても良好な保護が図られる。その結果、この第6実施形態によっても、運転者の保護と車両の運転操作性の両立を図ることができる。
【0077】
また、この第6実施形態においても、上記第5実施形態の場合と同様に、車両の衝突予測があり、かつ先端衝突が検出される前に、操舵ハンドル20が操作された状態では、上記第4実施形態(図8のステップ140)の場合のように操舵ハンドル20を待機位置方向に少量だけ移動させるようにしてもよい。
【0078】
g.第7実施形態
次に、本発明の第7実施形態について説明する。この第7実施形態においては、電子制御ユニット30は図11の衝突予測プログラムを実行する。この図11の衝突予測プログラムは、上記第1実施形態に係る図3の衝突予測プログラムのステップ112とステップ114との間にステップ170〜174からなる処理を挿入したものである。
【0079】
ステップ170の処理は、先端衝突センサ61の検出出力に基づいて、車両の前端部が前方物体に衝突しているかを判定する処理である。そして、車両の前端部が前方物体に衝突していなければ、ステップ170にて「No」と判定して、ステップ172にて操舵ハンドル20の移動速度MVを所定値MV1に設定して、ステップ114のハンドル移動ルーチンを実行する。一方、車両の前端部が前方物体に衝突すると、ステップ170にて「Yes」と判定して、ステップ174にて操舵ハンドル20の移動速度MVを前記所定値MV1よりも大きな所定値MV2(MV2>MV1)に設定して、ステップ114のハンドル移動ルーチンを実行する。この移動速度MVは、ステップ114のハンドル移動ルーチンの処理による操舵ハンドル20の移動速度を決定する変数である。すなわち、ハンドル移動ルーチンにおいては、この移動速度MVに応じて駆動回路31,32が制御されて、電動モータ15a,23aの回転速度が移動速度MVに比例して制御される。
【0080】
したがって、この第7実施形態においては、ステップ112にて「Yes」、すなわち運転者による衝突回避操作がなければ車両が前方物体に衝突する可能性あり(Ts≦Ts2)(または衝突回避不能である(Ts≦Ts1))と判定された後、車両の前端部が前方物体に衝突するまでは、操舵ハンドル20は待機位置に低速で移動制御される。これにより、この状態では、運転者は、衝突回避のための操舵ハンドル20の操作をし易くなる。
【0081】
一方、車両の前端部が前方物体に衝突すると、操舵ハンドル20は待機位置に高速で移動制御される。これにより、車両衝突が車体に影響を与える状況下では、操舵ハンドル20は適正位置に移動しているので、運転者の操舵ハンドル20に対する衝突に対しても良好な保護が図られる。その結果、この第7実施形態によっても、運転者の保護と車両の運転操作性の両立を図ることができる。
【0082】
h.第8実施形態
次に、上記第7実施形態を変形した第8実施形態について説明する。この第8実施形態においては、電子制御ユニット30は図12の衝突予測プログラムを実行する。この図12の衝突予測プログラムは、上記第7実施形態に係る図11の衝突予測プログラムのステップ112,170の判定処理を、それぞれステップ180,182の判定処理に置換したものである。
【0083】
ステップ180の判定処理は、ステップ110の処理により計算した先端衝突時間Tsが所定時間Ts2(例えば、0.5秒)以下であるか、すなわち運転者が衝突回避操作をしなければ車両が前方物体に衝突する可能性があるかを判定するものである。ステップ182の判定処理は、前記計算した先端衝突時間Tsが所定時間Ts1(例えば、0.3秒)以下であるか、すなわち前方物体への衝突回避が不能であるかを判定するものである。
【0084】
したがって、この第8実施形態においては、車両の前方物体への衝突回避が不能になるまでは、言い換えれば車両の前方物体への衝突の可能性が極めた高くなるまでは、操舵ハンドル20の待機位置への移動速度が小さくなる。そのため、この状態では、運転者は、衝突回避のための操舵ハンドル20の操作をし易くなる。また、車両の前方物体への衝突が回避不能になると、言い換えれば車両の前方物体への衝突の可能性が極めて高い場合には、操舵ハンドル20は高速で待機位置に移動されるので、車両衝突時における運転者の操舵ハンドル20に対する衝突に対しても良好な保護が図られる。その結果、この第8実施形態によっても、運転者の保護と車両の運転操作性の両立を図ることができる。
【0085】
i.第9実施形態
次に、上記第8実施形態を変形した第9実施形態について説明する。この第9実施形態においては、電子制御ユニット30は図13の衝突予測プログラムを実行する。この図13の衝突予測プログラムは、上記第8実施形態に係る図12の衝突予測プログラムのステップ182,172,174の処理を、ステップ210〜228の処理に変更したものである。
【0086】
この第9実施形態においては、ステップ180にて車両が前方物体に衝突する可能性があると判定された後、ステップ210にて移動中フラグMVFが“0”であるか否かを判定する。この移動中フラグMVFは、“1”により操舵ハンドル20が待機位置へ移動中であることを表し、“0”により操舵ハンドル20が移動中でないことを表す。そして、移動中フラグMVFは、ステップ180にて、ステップ110の処理により計算した先端衝突時間Tsが所定時間Ts2(例えば、0.5秒)以下でない、すなわち運転者が衝突回避操作をしなくても車両が前方物体に衝突する可能性がないと判定された場合に、ステップ230の処理により“0”に設定されている。また、この移動中フラグMVFは、ステップ102,108の判定処理により、車両停止中である場合または前方物体との距離が離れつつある場合も、“0”に設定されている。
【0087】
いま、ステップ180にて「Yes」すなわち運転者が衝突回避操作をしなければ車両が前方物体に衝突する可能性があると判定され、かつ移動中フラグMVFが“0”であれば、ステップ212に進む。ステップ212においては、上記第8実施形態と同様な操舵ハンドル20の移動速度MVを小さな初期値MV0に設定する。そして、ステップ214にてハンドル移動ルーチンを実行する。このハンドル移動ルーチンは、上述した図12のステップ114のハンドル移動ルーチンと同じである。したがって、このステップ214のハンドル移動ルーチンの実行により、操舵ハンドル20は、小さな初期速度で待機位置に移動し始める。このステップ214の処理後、ステップ216にて移動中フラグMVFを“1”に変更し、ステップ218にてカウント値Nを「0」に初期設定して、ステップ118にてこの衝突予測プログラムの実行を一旦終了する。
【0088】
前記のように移動中フラグMVFが“1”に変更されると、次にこの衝突予測プログラムが実行されたときには、ステップ210にて「No」と判定してステップ220に進む。ステップ220においては、カウント値Nが所定値N0(N0は「1」より大きな整数値)に達したか否かを判定する。カウント値Nが所定値N0に達していなければ、ステップ220にて「No」と判定して、ステップ222にてカウント値Nに「1」を加算して、ステップ118にて衝突予測プログラムの実行を終了する。
【0089】
前記ステップ222の処理によりカウント値Nが大きくなって所定値N0以上になると、ステップ220にて「Yes」と判定して、ステップ224に進む。ステップ224においては、操舵ハンドル20の移動速度MVに小さな所定値ΔMVを加算する。そして、ステップ226にて、前記ステップ214と同様なハンドル移動ルーチンを実行する。その結果、操舵ハンドル20の待機位置への移動速度が所定値ΔMVだけ増加する。このステップ226の処理後、ステップ228にてカウント値Nを「0」に初期設定して、ステップ118にてこの衝突予測プログラムの実行を一旦終了する。
【0090】
このように、カウント値Nが所定値N0に達するまで、前述したステップ210,220,222の処理が実行される。そして、カウント値Nが所定値N0以上になると、前記ステップ224,226の処理により、操舵ハンドル20の待機位置への移動速度を所定値ΔMVだけ速める。したがって、この衝突予測プログラムの実行により、操舵ハンドル20の待機位置への移動速度は時間経過に従って徐々に速められる。
【0091】
このように動作する結果、この第9実施形態によれば、車両の前方物体への衝突が予測された時点における操舵ハンドル20の待機位置への移動速度は小さく、運転者は衝突回避のための操舵ハンドル20の操作がし易くなる。そして、時間経過にしたがって操舵ハンドル20の待機位置への移動速度は速くなるので、車両が前方物体に衝突してしまった場合には、操舵ハンドル20は待機位置まで移動していて、車両衝突時における運転者の操舵ハンドル20に対する衝突に対しても良好な保護が図られる。その結果、この第9実施形態によっても、運転者の保護と車両の運転操作性の両立を図ることができる。
【0092】
j.第10実施形態
次に、上記第9実施形態を変形した第10実施形態について説明する。この第10実施形態においては、電子制御ユニット30は図14の衝突予測プログラムを実行する。この図14の衝突予測プログラムは、上記第9実施形態に係る図13の衝突予測プログラムにおけるステップ210〜228の処理を、ステップ240,242の処理に変更したものである。
【0093】
ステップ240においては、上記ステップ110の処理により計算した先端衝突時間Tsに応じて操舵ハンドル20の移動速度MVを決定する。この場合、電子制御ユニット30内には、先端衝突時間Tsが短くなるに従って増加する関係にある移動速度MVを先端衝突時間Tsに対応させて記憶した移動速度テーブルが用意されている。そして、電子制御ユニット30は、移動速度テーブルを参照することにより、先端衝突時間Tsに対応した移動速度MVを決定する。
【0094】
このステップ242の移動速度MVの計算後、上記第9実施形態のステップ214,226と同様なステップ242のハンドル移動ルーチンを実行する。そして、このハンドル移動ルーチンの実行により、操舵ハンドル20は待機位置に移動速度MVに比例した速度で移動する。これにより、操舵ハンドル20の待機位置への移動速度は、車両の前方衝突が発生するまでの時間が短くなるに従って速くなる。
【0095】
その結果、第10実施形態によれば、車両が前方物体に衝突するまでの時間が長ければ、操舵ハンドル20の待機位置への移動速度が小さく、運転者は、衝突回避のための操舵ハンドル20の操作をし易くなる。そして、車両が前方物体に衝突するまでの時間が短ければ、すなわち車両の前方物体への衝突が回避不能ならば、操舵ハンドル20は待機位置まで速く移動するので、車両衝突時における運転者の操舵ハンドル20に対する衝突に対しても良好な保護が図られる。その結果、この第9実施形態によっても、運転者の保護と車両の運転操作性の両立を図ることができる。
【0096】
k.その他の変形例
次に、上記第1ないし第10実施形態に共通の変形例について説明する。この変形例は、上記各実施形態において操舵ハンドル20を移動させるのに代えて、運転者用シート50を移動させることにより、運転者と操舵ハンドル20の相対位置を変更するものである。
【0097】
この変形例に係る乗員保護装置は、図1に重ねて示すように、前後動用電動モータ71および上下動用電動モータ72を含み、運転者用シート50の前後位置を変更するとともに、運転者用シート50の後部を上下動させて運転者用シート50の前後方向の傾きを変更するシート移動機構70を備えている。また、このシート移動機構70内には、運転者用シート50の前後位置、運転者用シート50の前後方向の傾きなどを検出するシートセンサ群73が組み込まれている。これらの電動モータ71、72は、上述した電動モータ15a,23aに代えて、駆動回路31,32よりそれぞれ制御される。また、シートセンサ群73は、位置センサ41および角度センサ42に代えて、電子制御ユニット30に接続されている。
【0098】
このように構成した変形例においては、電子制御ユニット30は上述した図3、図6ないし図14の衝突予測プログラムを上記第1ないし第10実施形態と同様に実行する。ただし、この変形例においては、図3,6,7〜12のステップ114、図13のステップ214,226および図14のステップ242において、ハンドル移動ルーチンの実行に代えて、シート移動ルーチンを実行する。このシート移動ルーチンは、図15に詳細に示されており、その実行がステップ320にて開始される。この実行開始後、電子制御ユニット30は、ステップ322〜332の処理を実行して運転者用シート50の移動を制御する。ステップ322の運転者のシートベルト52の装着の有無の判定、ステップ326,328の運転者と操舵ハンドル20との距離の判定は、上述した図4のハンドル移動ルーチンのステップ302,306,308の判定処理と同じである。
【0099】
そして、運転者がシートベルト52を装着していれば、ステップ322にて「Yes」と判定して、ステップ326以降に進む。一方、運転者がシートベルト52を装着していなければ、ステップ322にて「No」と判定して、ステップ324にて運転者用シート50の角度を変更する。具体的には、電子制御ユニット30は、シートセンサ群73による検出信号を用いて、所定傾動角度になるまで電動モータ72を作動させて運転者用シート50の傾動角度を変更する。この場合、所定角度とは、例えば、図5(A)の運転者と操舵ハンドル20との相対角度に一致するように、運転者用シート50の後部を通常運転時よりも持ち上げた角度である。
【0100】
また、検出距離Lhが前記所定距離Lh1よりも大きくかつ前記所定距離Lh2よりも小さければ(Lh1<Lh<Lh2)、ステップ326,328にて共に「No」と判定して、ステップ314にてこのハンドル移動ルーチンの実行を終了する。一方、検出距離Lhが前記所定距離Lh1以下であれば、ステップ326にて「Yes」と判定して、ステップ330にて運転者用シート50を後方へ移動する。具体的には、電子制御ユニット30は、距離センサ43による検出距離Lhを用いて、検出距離Lhが適性距離Lh0になるまで電動モータ71を作動させて運転者用シート50を後方へ移動する。
【0101】
また、検出距離Lhが前記所定距離Lh2以上であれば、ステップ326にて「No」と判定するとともに、ステップ328にて「Yes」と判定して、ステップ332にて運転者用シート50を前方へ移動する。具体的には、電子制御ユニット30は、距離センサ43による検出距離Lhを用いて、検出距離Lhが適性距離Lh0になるまで電動モータ71を作動させて運転者用シート50を前方へ移動する。前記ステップ330,332の処理後、ステップ334にてシート移動ルーチンの実行を終了する。
【0102】
このようなシート移動ルーチンによる運転者用シート50の移動制御によっても、車体衝突が発生した時点では、運転者の操舵ハンドル20に対する位置が待機位置となり、エアバック22aの展開によって運転者の操舵ハンドル22aの衝突が緩和される。また、このとき、前述のようにステアリングコラム10の変形、操舵ハンドル20およびホイールパッドの変形によっても運転者の前記衝突による衝撃も緩和されて、運転者が保護される。
【0103】
また、上記変形例では、操舵ハンドル20を移動させるのに代えて、運転者用シート50を移動させるようにしたが、操舵ハンドル20および運転者用シート50の両方を同時に移動させるようにしてもよい。これによれば、運転者と操舵ハンドル20との相対位置をより速く待機位置に対応させることができる。
【0104】
以上、第1〜第10実施形態およびそれらの各種変形例において、本発明に係る乗員保護装置の各種実施の態様について説明したが、本発明の乗員保護装置の実施にあたっては、これらの実施形態および変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、さらに種々の変形も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の各実施形態に係る乗員保護装置の全体概略図である。
【図2】 ステアリングコラム部の拡大図である。
【図3】 本発明の第1実施形態に係り、図1の電子制御ユニットによって実行される衝突予測プログラムのフローチャートである。
【図4】 前記衝突予測プログラムのハンドル移動ルーチンを詳細に示すフローチャートである。
【図5】 (A)〜(C)は操舵ハンドルの移動状態を説明する説明図である。
【図6】 本発明の第2実施形態に係り、図1の電子制御ユニットによって実行される衝突予測プログラムのフローチャートである。
【図7】 本発明の第3実施形態に係り、図1の電子制御ユニットによって実行される衝突予測プログラムのフローチャートである。
【図8】 本発明の第4実施形態に係り、図1の電子制御ユニットによって実行される衝突予測プログラムのフローチャートである。
【図9】 本発明の第5実施形態に係り、図1の電子制御ユニットによって実行される衝突予測プログラムのフローチャートである。
【図10】 本発明の第6実施形態に係り、図1の電子制御ユニットによって実行される衝突予測プログラムのフローチャートである。
【図11】 本発明の第7実施形態に係り、図1の電子制御ユニットによって実行される衝突予測プログラムのフローチャートである。
【図12】 本発明の第8実施形態に係り、図1の電子制御ユニットによって実行される衝突予測プログラムのフローチャートである。
【図13】 本発明の第9実施形態に係り、図1の電子制御ユニットによって実行される衝突予測プログラムのフローチャートである。
【図14】 本発明の第10実施形態に係り、図1の電子制御ユニットによって実行される衝突予測プログラムのフローチャートである。
【図15】 上記第1ないし第10実施形態のハンドル移動ルーチンに代えて実行されるシート移動ルーチンの詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10…ステアリングコラム、12…ロワーメインシャフト、13…アッパーメインシャフト、15…テレスコピック機構、17…ブレークアウェイブラケット、20…操舵ハンドル、21…傾動部材、22…エアバック装置、23…チルト機構、30…電子制御ユニット、43,45…距離センサ、44…シートベルト装着センサ、46…車体衝突センサ、47…車速センサ、50…運転者用シート、52…シートベルト、61…先端衝突センサ、62…操舵角センサ、70…シート移動機構。
Claims (7)
- ステアリングコラムの変形に伴うエネルギー吸収により運転者の操舵部材への衝突を緩和する車両の乗員保護装置において、
車両の衝突を予測する予測手段と、
前記予測手段によって車両の衝突が予測されたとき、車両を操舵するための操舵部材に対する運転者の相対位置が所定位置になるように、前記操舵部材または運転者用シートを移動させる移動手段と、
運転者による操舵部材の操作を検出する操舵操作検出手段と、
前記操舵操作検出手段によって操舵部材の操作が検出されたとき、前記移動手段による操舵部材または運転者用シートの移動を禁止または抑制する移動抑制手段とを備えたことを特徴とする車両の乗員保護装置。 - 前記請求項1に記載した車両の乗員保護装置において、
車両前端部の衝突を検出する先端衝突検出手段と、
前記先端衝突検出手段によって車両前端部の衝突が検出されたとき、前記移動抑制手段による操舵部材または運転者用シートの移動を禁止または抑制する制御を解除する解除手段とを設けたことを特徴とする車両の乗員保護装置。 - ステアリングコラムの変形に伴うエネルギー吸収により運転者の操舵部材への衝突を緩和する車両の乗員保護装置において、
車両の衝突前に同衝突が発生することを予測する第1予測手段と、
前記第1予測手段によって車両の衝突が予測されたとき、車両を操舵するための操舵部材に対する運転者の相対位置が所定位置になるように、前記操舵部材または運転者用シートを移動させる移動手段と、
運転者による操舵部材の操作を検出する操舵操作検出手段と、
前記操舵操作検出手段によって操舵部材の操作が検出されたとき、前記移動手段による操舵部材または運転者用シートの移動を禁止または抑制する移動抑制手段と、
車両の衝突前に同衝突が前記第1予測手段よりも高い確率で発生することを予測する第2予測手段と、
前記第2予測手段によって車両の衝突が予測されたとき、前記移動抑制手段による操舵部材または運転者用シートの移動を禁止または抑制する制御を解除する解除手段とを設けたことを特徴とする車両の乗員保護装置。 - ステアリングコラムの変形に伴うエネルギー吸収により運転者の操舵部材への衝突を緩和する車両の乗員保護装置において、
車両の衝突前に同衝突を予測する予測手段と、
前記予測手段によって車両の衝突が予測されたとき、車両を操舵するための操舵部材に対する運転者の相対位置が所定位置になるように、前記操舵部材または運転者用シートを第1速度で移動させる第1移動手段と、
車両前端部の衝突を検出する先端衝突検出手段と、
前記先端衝突検出手段によって車両前端部の衝突が検出されたとき、前記操舵部材に対する運転者の相対位置が所定位置になるように、前記操舵部材または前記運転者用シートを前記第1速度よりも速い第2速度で移動させる第2移動手段とを備えたことを特徴とする車両の乗員保護装置。 - ステアリングコラムの変形に伴うエネルギー吸収により運転者の操舵部材への衝突を緩和する車両の乗員保護装置において、
車両の衝突前に同衝突が発生することを予測する第1予測手段と、
前記第1予測手段によって車両の衝突が予測されたとき、車両を操舵するための操舵部材に対する運転者の相対位置が所定位置になるように、前記操舵部材または運転者用シートを第1速度で移動させる第1移動手段と、
車両の衝突前に同衝突が前記第1予測手段よりも高い確率で発生することを予測する第2予測手段と、
前記第2予測手段によって車両の衝突が予測されたとき、前記操舵部材に対する運転者の相対位置が所定位置になるように、前記操舵部材または前記運転者用シートを、前記第1速度よりも速い第2速度で移動させる第2移動手段とを設けたことを特徴とする車両の乗員保護装置。 - ステアリングコラムの変形に伴うエネルギー吸収により運転者の操舵部材への衝突を緩和する車両の乗員保護装置において、
車両の衝突前に同衝突を予測する予測手段と、
前記予測手段によって車両の衝突が予測されたとき、車両を操舵するための操舵部材に対する運転者の相対位置が所定位置になるように、前記操舵部材または運転者用シートを移動させる移動手段と、
前記移動手段による操舵部材または運転者用シートの移動速度を時間経過に従って速くするように制御する移動速度制御手段とを備えたことを特徴とする車両の乗員保護装置。 - ステアリングコラムの変形に伴うエネルギー吸収により運転者の操舵ハンドルへの衝突を緩和する車両の乗員保護装置において、
車両の衝突前に同衝突を予測する予測手段と、
前記予測手段によって車両の衝突が予測されたとき、車両を操舵するための操舵部材に対する運転者の相対位置が所定位置になるように、前記操舵部材または運転者用シートを移動させる移動手段と、
前記移動手段による操舵部材または運転者用シートの移動速度を、車両の衝突発生までの時間が短くなるに従って速くするように制御する移動速度制御手段とを備えたことを特徴とする車両の乗員保護装置。
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