JP3914462B2 - 内視鏡用クリップ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、内視鏡の処置具挿通チャンネルに通して使用されて、体内の止血、結紮或いはマーキング等を行うために用いられる内視鏡用クリップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は従来の内視鏡用クリップ装置の先端に配置されたクリップ1が開いた状態の側面断面図であり、基端部で互いに連結された一対の腕部1aが基端部1bで互いに連結されて開閉自在に形成されている。
【0003】
そして、各腕部1aの基端部1bの近傍に形成された開閉駆動部1cにクリップ閉じリング6を後方から押し被せることにより、腕部1aが開いた後に閉じ、クリップ1を閉じた状態に維持して患部に留置することができるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図9は、そのようなクリップ1が開いた状態の正面図であり、180°対称に配置された一対の腕部1aが、開閉駆動部1cにおいて相互に面接触して安定した状態で当接し合っている。
【0005】
しかし、腕部1aを3個以上設けると、図10に3個の場合が示されるように、腕部1aどうしが縁部における点接触の状態になるので、各腕部1aに作用する力が少しアンバランスになっただけで、図11に示されるように腕部1aの当接状態が崩れて正常に開閉しなくなってしまう。
【0006】
また、腕部1aを3個以上設けると、開閉動作が非常に重くなって実用性がなくなってしまう。そのため、3個以上の腕部1aによって患部を包み込むマルチ方向クリッピングを行うことができなかった。
【0007】
そこで本発明は、クリップに3個以上の腕部を設けて軽い操作力量で安定した状態で開閉させて、患部を包み込むマルチ方向クリッピングを確実かつ容易に行うことができる内視鏡用クリップ装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡用クリップ装置は、基端部で互いに連結された複数の腕部が開閉自在に設けられたクリップと、各腕部の基端寄りの位置に形成された開閉駆動部に係合することにより腕部を開閉したあと閉じた状態に維持するクリップ閉じリングとが、シースの先端付近にシースから離脱可能に配置され、開閉駆動部に係合していない状態のクリップ閉じリングをシースの基端側からの遠隔操作によって開閉駆動部に係合させる操作動作伝達部材が、シース内に挿通配置された内視鏡用クリップ装置において、クリップに互いに交差することなく略均等の方向に開閉する少なくとも3個の腕部を設けて、クリップが開いた状態のときに開閉駆動部の内側において各腕部に内接する芯金をクリップに内挿配置すると共に、クリップが開閉する動作の最中の芯金とクリップ閉じリングの少なくとも一方とクリップとの間の摩擦抵抗を減らすための摩擦抵抗低減部を設けたものである。
【0009】
なお、クリップが開閉する動作の最中の芯金とクリップとの間の干渉量を小さくするための逃げが芯金に形成されていて、その逃げが摩擦抵抗低減部になっていてもよい。
【0010】
或いは、クリップが開閉する動作の最中に芯金と接触する部分の全部又は一部の肉厚がクリップの他の部分の肉厚より薄く形成されていて、その薄肉部が摩擦抵抗低減部になっていてもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は内視鏡用クリップ装置の全体構成を示しており、例えば四フッ化エチレン樹脂チューブ又は超弾性合金管等からなる可撓性の外套管2の先端部分にクリップ1が配置されている。
【0012】
図2においては、クリップ1は基端寄りの部分が外套管2の先端内に収容されていて、開いた状態の腕部1aとその各先端に内方に向かって突出形成された先端爪部1dとが見えている。
【0013】
外套管2は、例えばステンレス鋼線を一定の径で密着巻きしたコイルパイプからなるシース7に緩く被嵌されており、シース7の基端に連結された操作部20は、端部に指掛け22が取り付けられた本体軸21に対して、操作ワイヤ3(操作動作伝達手段)の基端に連結されたスライダー23がスライド自在に取り付けられた構成になっている。
【0014】
また、外套管2の基端筒状体24が本体軸21に対して独立してスライド自在に配置されており、基端筒状体24に突設された送水注入口金25から外套管2内に送液することができるようになっている。
【0015】
図1は、この実施例の内視鏡用クリップ装置の先端部分を拡大して示しており、閉じた状態のクリップ1がほぼ完全に外套管2内に収納されるように外套管2が少し前方に押し出された状態になっている。
【0016】
クリップ1は、例えばバネ用ステンレス鋼板等を曲げて一つながりに形成されていて、基端部1bにおいて互いにつながっている3個の腕部1aが相互に交差することなく放射状に開閉自在に均等の間隔(即ち、略120°間隔)に配置されている。
【0017】
各腕部1aの基端寄りの位置には、内方に括れた括れ部1c1の直後の部分に外方に膨んだ膨出部1c2が形成された開閉駆動部1cが形成されており、開閉駆動部1cを変形させることにより腕部1aが開閉するようになっている。
【0018】
操作部20に配置された前述のスライダー23によって軸線方向に進退操作される操作ワイヤ3はシース7の軸線位置に配置されていて、操作ワイヤ3の先端には、クリップ1から後方に延出するクリップ連結ワイヤ5に対して係脱させることができるクリップ連結フック4が取り付けられている。
【0019】
クリップ連結フック4は、後側半部に操作ワイヤ3の先端が半田付け等によって連結固着され、先側半部の側面部分に凹んで形成された凹部4aに、環状のクリップ連結ワイヤ5を係脱させることができるようになっている。この実施例のクリップ連結ワイヤ5は、一本のワイヤの両端部分を結び合わせて環状に形成されている。5aがその結び目である。
【0020】
シース7の先端に半田付け等によって固着されたリング受け筒8の先側部分には、クリップ1の膨出部1c2を外面側から押さえ付けて変形させるためのクリップ閉じリング6の基端寄りの部分が係脱自在に嵌め込まれている。
【0021】
また、クリップ1の開閉駆動部1cから基端部1bにかけて、腕部1aの内側にはクリップ芯金9が内挿配置されている。クリップ芯金9は、クリップ1の括れ部1c1の内側に位置する部分が細い円柱状に形成されている(細径部9a)。
【0022】
クリップ芯金9の細径部9aより後方部分は、その部分の前後両端が括れ部1c1部分を通過できない太い円形の断面形状に形成されていて、クリップ1の内側から抜け出ないようになっている。
【0023】
そして、クリップ芯金9の細径部9aより後方部分の前後両端以外の部分には、クリップ1が開閉する動作の最中にクリップ芯金9とクリップ1との間の干渉量を小さくするための逃げ9bが形成されていて、その部分ではクリップ芯金9が細径部9a部分と同程度の細径に形成されている。
【0024】
クリップ連結ワイヤ5は、クリップ1の基端部1bとクリップ芯金9の後端面との間に通され、クリップ閉じリング6はクリップ1の基端部1bの外面に被嵌されて摩擦力によりそこに係止されている。
【0025】
このようにして、クリップ1、クリップ連結ワイヤ5、クリップ閉じリング6及びクリップ芯金9は、シース7及び操作ワイヤ3に対して結合/分離自在な一つのユニット状に構成されている。
【0026】
このような内視鏡用クリップ装置を使用する際には、図示されていない内視鏡の処置具挿通チャンネルに通された内視鏡用クリップ装置の先端がクリッピング対象の患部の正面に誘導されたら、図3に示されるように、外套管2を後方に退避させて操作部20側から操作ワイヤ3を強く牽引すると、クリップ1の膨出部1c2がクリップ閉じリング6内に引き込まれて変形することにより腕部1aが大きく開く。
【0027】
この状態ではクリップ1の括れ部1c1が内方に向かって強く押されるが、正面図である図4にも示されるように、括れ部1c1はその内側にあるクリップ芯金9の細径部9aに周囲から均等に押し付けられるので、3個の腕部1aはバランスが崩れることなく略120°間隔で確実に大きく開く。
【0028】
そして、操作ワイヤ3をさらに強く操作部20側へ牽引すれば、図5に示されるように、クリップ1の腕部1aの拡がり部分の一部がクリップ閉じリング6内に引き込まれた状態になって窄められ、各腕部1aの先端の先端爪部1dが患部100を包み込む状態に粘膜に突き刺さる。
【0029】
このようなクリップ1の一連の開閉動作の際には、クリップ1の膨出部1c2がクリップ閉じリング6で押し潰されることにより、クリップ1の膨出部1c2と基端部1bとの間の部分が内側に押し込まれてクリップ芯金9に押し付けられる方向に変形する。
【0030】
しかし、クリップ芯金9にはその部分に逃げ9b(摩擦抵抗低減部)が形成されていてクリップ1との干渉量が小さくなっている(又は干渉しなくなっている)ので、クリップ1の膨出部1c2と基端部1bとの間の部分がクリップ芯金9に強く押し付けられず、したがってクリップ1とクリップ芯金9との間、及びクリップ1とクリップ閉じリング6との間には小さな摩擦抵抗しか発生しない。その結果、クリップ1を軽い操作力量で円滑に開閉させることができる。
【0031】
クリップ1が閉じきった後、操作ワイヤ3を前方に押し出しながらシース7を後方に少し退避させれば、クリップ閉じリング6がリング受け筒8から外れ、クリップ連結フック4がシース7より前方に突き出た状態で、その部分を左右に適当に動かすことによりクリップ連結ワイヤ5とクリップ連結フック4との係合が外れる。
【0032】
このようにして、クリップ閉じリング6によって強制的に閉じられた状態のクリップ1により、患部100をマルチ方向からクリッピングした状態で体内に留置することができる。
【0033】
図6と図7は、各々本発明の参考例を示しており、図6に示されるように、クリップ芯金9の逃げ9bを細径部9aと連続的に形成しても差し支えない。
【0034】
また、図7に示されるように、クリップ芯金9に逃げ9bを形成する代わりに、クリップ1が開閉する動作の最中にクリップ芯金9と接触する部分の全部又は一部の肉厚をクリップ1の他の部分の肉厚より薄く形成することにより、クリップ芯金9とクリップ閉じリング6の少なくとも一方とクリップ1との間の摩擦抵抗を小さくしてもよい。
【0035】
なお本発明は上記実施例に限定されるものではなく、クリップ1の腕部1aの数が4個以上設けられていてもよい。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、クリップが開いた状態のときに開閉駆動部の内側において各腕部に内接する芯金をクリップに内挿配置したことにより、クリップに3個以上の腕部を設けて安定した状態で開閉させることができ、さらに、クリップが開閉する動作の最中の芯金とクリップ閉じリングの少なくとも一方とクリップとの間の摩擦抵抗を減らすための摩擦抵抗低減部を設けたことにより、クリップの開閉を軽い操作力量で容易に行うことができ、優れた実用性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の内視鏡用クリップ装置の先端部分の側面断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例の内視鏡用クリップ装置の全体構成を示す外観図である。
【図3】本発明の第1の実施例の内視鏡用クリップ装置のクリップの開閉動作における開状態を示す側面断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例の内視鏡用クリップ装置のクリップの開閉動作における開状態を示す正面図である。
【図5】本発明の第1の実施例の内視鏡用クリップ装置のクリップの開閉動作における閉状態を示す側面断面図である。
【図6】 本発明の参考例の内視鏡用クリップ装置のクリップの開閉動作における開状態を示す側面断面図である。
【図7】 本発明の第2の参考例の内視鏡用クリップ装置のクリップの開閉動作における開状態を示す側面断面図である。
【図8】従来の内視鏡用クリップ装置(二本腕)のクリップの開閉動作における開状態を示す側面断面図である。
【図9】従来の内視鏡用クリップ装置(二本腕)のクリップの開閉動作における開状態を示す正面図である。
【図10】従来の内視鏡用クリップ装置(三本腕)のクリップの開閉動作における開状態を示す正面図である。
【図11】従来の内視鏡用クリップ装置(三本腕)のクリップの開閉動作における開状態を示す正面図である。
【符号の説明】
1 クリップ
1a 腕部
1b 基端部
1c 開閉駆動部
1c1 括れ部
1c2 膨出部
3 操作ワイヤ(操作動作伝達手段)
4 クリップ連結フック
5 クリップ連結ワイヤ
6 クリップ閉じリング
7 シース
9 クリップ芯金
9a 細径部
9b 逃げ(摩擦抵抗低減部)
20 操作部
Claims (1)
- 基端部で互いに連結された複数の腕部が開閉自在に設けられたクリップと、上記各腕部の基端寄りの位置に形成された開閉駆動部に係合することにより上記腕部を開閉したあと閉じた状態に維持するクリップ閉じリングとが、シースの先端付近に上記シースから離脱可能に配置され、上記開閉駆動部に係合していない状態の上記クリップ閉じリングを上記シースの基端側からの遠隔操作によって上記開閉駆動部に係合させる操作動作伝達部材が、上記シース内に挿通配置された内視鏡用クリップ装置であって、
上記クリップに互いに交差することなく略均等の方向に開閉する少なくとも3個の腕部が設けられて、上記クリップが開いた状態のときに上記開閉駆動部の内側において上記各腕部に内接する芯金が上記クリップに内挿配置されたものにおいて、
上記開閉駆動部は、上記各腕部の基端寄りの位置に内方に括れて形成された括れ部と、その括れ部の直後の部分からその後方にわたって外方に膨らんで形成された膨出部とを備え、
上記芯金は、上記括れ部の内側に位置する細径部と、上記細径部の後端側に連なって上記膨出部内に位置し、上記括れ部を通過できないよう上記細径部より太く形成された太径部と、上記クリップの開閉動作に際して上記膨出部が内方に押し込まれた状態になるときに上記芯金に作用する上記膨出部の押し付け力を小さくするために上記太径部の後端側に連なって上記太径部より細い径に形成された逃げ部、とを備えていることを特徴とする内視鏡用クリップ装置。
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