JP3913634B2 - 極低抵抗多結晶シリコンとその製造方法 - Google Patents

極低抵抗多結晶シリコンとその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば低抵抗シリコン膜の成膜に利用される多結晶シリコンインゴットとターゲットの製造方法に関し、比抵抗値が1mΩ・cm未満の極低抵抗を得るため大量のドープを行った原料シリコンをルツボで直接凝固して得るに際し、撹拌溶融と凝固後の再加熱を採用して外径300mm以上の大型多結晶シリコンインゴットを内部クラックなしで得ることが可能な極低抵抗多結晶シリコンとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、シリコン膜を得るためのDCスパッタリングにおいて、成膜速度の向上やさらに低抵抗のシリコン膜を生成するため、極低抵抗のシリコン材料が求められている。また、前記スパッタリング等で被成膜材(スパッタリング用ターゲット)の大型化に伴い、大型の極低抵抗のシリコン材料の開発が要望されている。
【0003】
多結晶シリコンインゴットの製造方法としては、石英製のルツボ内に原材料である多結晶シリコンを充填し加熱融解し、それを黒鉛又は石英製のルツボ内に流し込み凝固させる方法が一般的である。また、石英製のルツボ内で融解したシリコンを所要のルツボ内で直接凝固させる方法、さらには、誘導溶解によりシリコンを融解させ引抜きながら凝固させる連続鋳造の電磁鋳造法等が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、低抵抗のシリコン材料は、その比抵抗値は2mΩ・cm程度までであり、シリコンの比抵抗の調整は、ボロンドープ材を添加することで可能なことは知られている。
【0005】
シリコン原料を溶解した後に凝固させるキャスト法で製造した多結晶シリコンインゴットから機械加工によリターゲットを製造する場合には、少なくともターゲットより外径が20mm以上大きいインゴットを凝固させることが望ましい。例えば、外径100mm以上のターゲットを得ようとすると、水平断面の外径が120mm以上のインゴットを溶解凝固により製造しなければならない。
【0006】
従来のボロン濃度であれば、外径300mmを越えるような多結晶シリコンインゴットもクラックを発生させずに凝固させることができるが、比抵抗を1mΩ・cm未満という超高濃度のインゴットを得ようとすると、従来の10倍以上の添加量が必要となり、その結果、従来の製造方法ではインゴットにクラックが発生し、外径120mm以上の健全なインゴットを得ることができなかった。ボロンを多量にドーした場合にクラックが発生するのは、多量のドーピングにより機械的特性が低下するためと考えられる。
【0007】
直接凝固法においては、融解状態になった多結晶シリコンをルツボ内で凝固させてインゴットを製造するが、多結晶シリコンが凝固する際にその体積が膨張するため、多結晶シリコンはルツボ内壁により体積の膨張が拘束され、凝固した多結晶シリコンの内部に応力による歪みが内蔵されたままとなり、機械的な割れが生じてしまう。
【0008】
極低抵抗のシリコンインゴットを得るには高濃度の不純物の添加が不可欠となるが、このレベルの濃度領域では、例えば偏析係数の良好とされるボロンについても偏析が大きくなることが知られ、また、濃度により凝固温度、機械的強度も異なってくるため、偏析が大きくなることとの相乗効果により、既存の製造方法では、健全な大型の多結晶シリコンインゴット製造が困難であった。
【0009】
一方、インゴットとしては機械的な割れが発生していなくても、歪みは内蔵されたままとなっているために、後に行う加工作業中に応力が開放され、機械的な割れを発生させてしまうこととなる。
【0010】
この発明は、ルツボで直接凝固させて得る多結晶シリコンインゴットの製造に際して、比抵抗値を著しく低減するために多量のボロンドープ材を添加すると、インゴットにクラックなどが発生するという問題を解消し、また、内部応力が製造後に解放されてクラックなどを発生することがない、外径が120mm以上の健全な多結晶シリコンインゴット及び外径が100mm以上のスパッタリング用ターゲットを容易に製造可能にした極低抵抗多結晶シリコンとその製造方法の提供を目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、多量のボロンドープ材を添加した溶融シリコンをルツボで直接凝固させる際の問題点について種々検討した結果、比較的高速かつ間欠的なルツボの回転による撹拌溶融を図り、凝固開始前に一定時間この間欠的回動を保持した後に凝固させ、さらに凝固後に所定の再加熱を施すことにより、例えば、外径380mmの大型多結晶シリコンインゴットを内部クラック無しで得ることが可能となり、そのインゴットを機械加工することで外径300mmを越える大口径の多結晶シリコンスパッタリングターゲットを得られることを知見し、この発明を完成した。
【0012】
すなわち、この発明は、溶解したシリコンをルツボ内で凝固させて多結晶シリコンインゴットを得るに際し、ルツボを間欠的に5rpm〜20rpmの回転数で回動させながらシリコン材料とドーパント剤を溶解させる工程、溶解完了後に凝固を開始するまでに前記間欠的回動を行いながら溶解温度で例えば1時間以上保持する工程、溶解したシリコンをルツボで凝固させる工程、凝固完了後に1350℃〜1420℃に昇温する再加熱工程とを有することを特徴とする極低抵抗多結晶シリコンインゴットの製造方法である。
【0013】
また、この発明は、上記構成の製造方法にて、ルツボ内で直接凝固した直径が120mm以上でかつ直径/高さ比が1以上のインゴットであり、比抵抗値が1mΩ・cm未満であり、その内部にクラックがないことを特徴とする健全な極低抵抗多結晶シリコンインゴットを得ることができる。次いで、この健全な極低抵抗多結晶シリコンインゴットより、機械加工を経て直径が100mm以上でクラックの無いスパッタリング用ターゲットである極低抵抗多結晶シリコンターゲットが得られる。
【0014】
さらに、この発明は、上記構成の製造方法において、
ルツボが、少なくとも外周部を拘束しないで回転可能に保持されている方法、
溶解温度で保持する時間が1〜2時間である方法、
再加熱工程における昇温の開始温度が800℃以上である方法、
再加熱工程における昇温速度が、1℃/分〜30℃/分である方法、
再加熱工程における1350℃〜1420℃の保持時間が、30分〜300分である方法、を併せて提案する。
【0015】
【発明の実施の形態】
この発明において、対象とする多結晶シリコンインゴットは、直径が120mm以上でかつ直径/高さ比が1以上のインゴットであるが、これはルツボ内で直接凝固して製造するもので、直径/高さ比が1未満の円柱状の長いインゴットを得ることを目的としていない。
【0016】
また、この発明において、比抵抗値が1mΩ・cm以上のインゴット場合、直接凝固して製造する際、その内部にクラックがないものを得るのは比較的容易であるため、比抵抗値は1mΩ・cm未満とする。
発明者らの実験によれば、本発明によって比抵抗値が0.35mΩ・cm以上の多結晶シリコンインゴットが得られる。0.35mΩ・cm未満の多結晶シリコンインゴットを作製しようとしてボロンドープ量を更に多少増量しても多結晶シリコンインゴットの比抵抗値は0.35mΩ・cm未満とはならなかった。この理由は定かではないが、それ以上ボロンをドーしてもシリコンへのボロンの固溶限界によりボロンが過飽和となるため固溶せず析出して比抵抗値に影響を与えなくなるためではないかと推測される。実質的にこの発明により得られる多結晶シリコンインゴットの比抵抗値の範囲は、0.35mΩ・cm以上、0.99mΩ・cm以下である。比抵抗値は4探針法で測定した。
【0017】
この発明の製造方法において、溶解したシリコンをルツボ内で直接凝固させるが、ルツボの材質は多結晶シリコンインゴットに不純物を含有させることがないように公知の高純度の黒鉛又は石英製のものを利用することができる。又、形状は凝固性や回転撹拌等を考慮して直径/高さ比が1以上のインゴットが得られるものとする。
【0018】
また、ルツボは、溶解熱を得るために配置されるヒーター等の熱源に近接あるいは離反可能に昇降台に載置され、また撹拌溶融のために前記昇降台を回転可能に構成するが、例えばルツボの底部を支持して少なくとも外周部を拘束しないで回転可能に保持されている構成が望ましい。かかる昇降機構や、連続回転や間欠的回動を行うための回転機構には、公知のいずれの機械機構も動力も採用できる。
【0019】
具体的には、ルツボの底部を支持するための保持体も3分割以上の分割構造とすることで、溶解時のルツボの軟化を利用して凝固時に発生する多結晶シリコンの体積膨張によるルツボ及び保持体からの拘束を吸収できるようにし、該応力による歪みの内蔵を緩和するよう構成することが望ましい。さらに、保持体をルツボの外周部にも配置する場合は、石英ルツボと保持体の間に1〜15mmの空隙を適宜開けることが望ましい。
【0020】
この発明のシリコン材料とドーパント剤を溶解させる工程において、ルツボの回転数は、5rpm未満ではルツボ内の溶液を十分に撹拌する効果が少なく、20rpmを超えると撹拌効果が飽和するため、5rpm〜20rpmが好ましく、さらに好ましい回転数は10rpm〜15rpmである。
【0021】
また、ルツボの回動を間欠的に行うのは、回転を停止後にまた正回転あるいは逆転させてルツボ内の溶融液を十分に撹拌するためであり、間欠サイクルが20秒未満では、当該回転に溶融液が追従せず撹拌効果が得られず、又100秒を超えるサイクルでは、当該回転による溶融液の回転が同等となるまでの時間が長くなり、撹拌効率が悪くなるため、20〜100秒の間欠サイクルが好ましい。
【0022】
この発明は、シリコン材料とドーパント剤を溶解させる工程で所要の入熱を行いかつルツボを間欠的に回動させて溶融液の撹拌を行い、溶解工程の完了後に凝固を開始するまでに、前記間欠的回動を行いながら溶解温度で一定時間保持することを特徴とする。要するに、一般的な溶融工程にルツボを間欠的に回動させて溶融液の撹拌する工程を加えるが、さらに溶解完了後にこの溶解温度で間欠撹拌することを所定時間維持し、ドーパント剤の均一分散を確保するもので、1分以上の保持、好ましくは30分以上、2時間程度までかかる間欠的回動を継続することで、直接凝固で内部にクラックがない極低抵抗多結晶シリコンインゴットが得られる。
【0023】
この発明において、溶解したシリコンをルツボで凝固させる工程は、特に限定しないが、加熱源の出力制御あるいはルツボと加熱源との距離を相対的に大きくとるなど、ルツボへの入熱を制限するほか、ルツボ底部から熱を取るなどの方法を併用したり、また、除冷などの降温速度や降温後の一定温度の保持など種々の凝固方法があり、公知のいずれの方法も採用できる。
【0024】
この発明において、凝固完了後に1350℃〜1420℃に昇温する再加熱工程は、上記した溶融液の撹拌、間欠的回動の所定時間の保持とともに、内部にクラックがないシリコンインゴットを得るのに不可欠の工程であり、ルツボ内での凝固を確認した後直ちに昇温を開始してもよく、また、凝固工程完了近くから徐々に昇温し始めることも可能である。
【0025】
再加熱工程における昇温の開始温度は、800℃以上であることが好ましく、例えば、900℃〜1300℃程度の温度から昇温することが好ましく、その再加熱工程における昇温速度は、1℃/分未満では生産性が著しく悪く、30℃/分を超えると応力の発生が大きくなるため、1℃/分〜30℃/分が好ましく、さらには5℃/分〜15℃/分が好ましい。
【0026】
再加熱工程における1350℃〜1420℃の保持時間は、30分〜300分であることが好ましい、すなわち、30分未満では、充分な撹拌効果が得られず、また300分を超えると該効果が飽和して、ルツボからのコンタミネーションの影響が懸念される。
【0027】
再加熱工程後、シリコンインゴットを取り出すまでの間は、特に限定しないが、5時間以上かけて徐々に冷却して例えば200℃程度以下で取り出す、所謂徐冷処理されることが望ましい。
【0028】
【実施例】
図1は、この発明の極低抵抗多結晶シリコンインゴットの製造方法に使用する抵抗加熱炉の概略構成を示す説明図であり、詳述すると、加熱炉を構成する密閉容器9を有しており、石英裂のルツボ1、耐火材からなるルボ1の保持体3と、保持体3を載置する台座6及び回転軸7を有する昇降回転機構が密閉容器9内に配置され、その内部雰囲気を密閉状態で保持するようになっている。
【0029】
保持体3は、ここでは3分割の分割構造で台座6上に嵌合させて設置する構成であり、径方向へは一定量移動可能な構造としてあり、ルツボ1と1〜15mmの隙間5を設定可能にしてある。ルツボ1は保持体3の中に挿入配置され、前記の分割構造により多結晶シリコンの凝固時の膨張が径方向で吸収されるため、ルツボ形状を維持しつつ拘束を緩和でき、インゴット内の応力による歪みの内蔵を緩和させることが可能となる。
【0030】
ルツボ1内に投入された多結晶シリコン4は、熱絶縁体2に支持される抵抗発熱体8により側面より加熱融解される。融解及び凝固時の台座6は5rpm以上でかつ間欠的に回転し、ルツボ1内のシリコン4溶湯は、常時攪拌されて添加剤の均一分散化を図ることができる。
【0031】
シリコンインゴットの製造は、ルツボ1に多結晶シリコン4と必要量の添加材料を投入した後、台座6の上に保持体3、ルツボ1を同心円状にセットし、密閉容器9内は外部の酸素・窒素ガス等が流入しないようアルゴンガス等の不活性雰囲気に保持する。
【0032】
ルツボ1は抵抗発熱体8の加熱領域の位置に保持され、ルツボ1を回動させながら加熱を開始する。側面から加熱された多結晶シリコン4が融解温度に達すると順次融解が始まる。一定量を融解させるために必要量の多結晶シリコンを追加投入し、全量が融解されるまで、回転撹拌を実施する。この場合、回転機構によりルツボを連続又は間欠で一方向又は正逆方向に5rpm以上の回動させることで溶湯を攪拌し、添加材料の均一化を図る。
【0033】
全量融解後、一定時間、ここでは1時間の攪拌を行い、回転昇降機構によりルツボ1を加熱領域より徐々に下降させて遠ざけることで除冷を行い、凝固を開始する。かかる凝固中も、回動を維持して未凝固部分の攪拌を継続する。
【0034】
疑固時に多結晶シリコンは膨張するが、石英ルツボ1は加熱により軟化しており、前述のごとく外周部を拘束していないため、膨張分歪むために体積膨張によって発生する応力が緩和される。また攪拌を実施しているので、凝固部分の添加材料は均一化しており、偏析による影響も緩和されることになる。
【0035】
凝固完了後、引き続き加熱領域にルツボ1を戻してアニールを実施して内蔵された歪みの緩和を図る。その後、冷却を開始して冷却終了後に得られたインゴットを取り出すことで製造を終了する。
【0036】
内径が16インチの半導体用石英ルツボを用い、前述の方法により製造を実施したところ、80%以上の確率で、健全な380mm外径、150mm高さの極低抵抗の大型多結晶シリコンインゴットを製造できた。得られた多結晶シリコンインゴットの比抵抗は、図2に示すように、インゴット上面から高さ方向が24mm、130mm、147mmの各位置における径方向の比抵抗の分布も安定している。またインゴットから直径360mmのスパッタリング用ターゲットを機械加工する工程においてもクラックを生じることなく、必要サイズのターゲット材を得ることができた。
【0037】
【発明の効果】
この発明によると、多量のボロンドープ材を添加した低抵抗値を示す多結晶シリコンインゴットをルツボで直接凝固させて製造するに際し、インゴットにクラックが発生することなく、高い歩留りで製造でき、また実施例のごとく16インチ外径という大型の多結晶シリコンインゴットを安定的に得ることができる。また、この大型のインゴットより切り出される際にも内部応力が解放されて割れやひびなどを発生することがない、極めて健全な低抵抗多結晶シリコン材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の製造方法に使用する溶解装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】この発明による多結晶シリコンインゴットの外径方向の比抵抗の分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ルツボ
2 熱絶縁体
3 保持体
4 多結晶シリコン
5 隙間
6 台座
7 回転軸
8 抵抗発熱体
9 密閉容器

Claims (9)

  1. ルツボ内で直接凝固した直径が120mm以上で、比抵抗値が1mΩ・cm未満であり、その内部にクラックがない極低抵抗多結晶シリコンインゴット。
  2. 比抵抗値が0.35mΩ・cm〜0.99mΩ・cmである請求項1に記載の極低抵抗多結晶シリコンインゴット。
  3. ルツボ内で直接凝固した多結晶シリコンインゴットより機械加工された直径が100mm以上のスパッタリング用ターゲットであり、その内部にクラックがなく、比抵抗値が0.35mΩ・cm〜0.99mΩ・cmである極低抵抗多結晶シリコンターゲット。
  4. 溶解したシリコンをルツボ内で凝固させて多結晶シリコンインゴットを得るに際し、ルツボを間欠的に5rpm〜20rpmの回転数で回動させながらシリコン材料とドーパント剤を溶解させる工程、溶解完了後に凝固を開始するまでに前記間欠的回動を行いながら溶解温度で1分以上保持する工程、溶解したシリコンをルツボで凝固させる工程、凝固完了後に1350℃〜1420℃に昇温する再加熱工程とを有する極低抵抗多結晶シリコンインゴットの製造方法。
  5. ルツボが、少なくとも外周部を拘束しないで回転可能に保持されている請求項4に記載の極低抵抗多結晶シリコンインゴットの製造方法。
  6. 溶解温度で保持する時間が1〜2時間である請求項4に記載の極低抵抗多結晶シリコンインゴットの製造方法。
  7. 再加熱工程における昇温の開始温度が800℃以上である請求項4に記載の極低抵抗多結晶シリコンインゴットの製造方法。
  8. 再加熱工程における昇温速度が、1℃/分〜30℃/分である請求項4に記載の極低抵抗多結晶シリコンインゴットの製造方法。
  9. 再加熱工程における1350℃〜1420℃の保持時間が、30分〜300分である請求項4に記載の極低抵抗多結晶シリコンインゴットの製造方法。
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