JP3912858B2 - ポリエステルアミド系液晶配向処理剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の構造を有するポリエステルアミドからなる、加工性に優れ良好な液晶の配向特性を有する液晶配向処理剤に関するものであり、更に詳しくは比較的低い成膜温度で、ネマティック液晶分子が基板に対し、低い傾斜配向角を有し、かつ液晶注入後の熱処理において傾斜配向角が変化しない良好な配向安定性を示す液晶セル用配向処理剤、および強誘電性液晶、反強誘電性液晶に対して優れた配向均一性を示す液晶セル用配向処理剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子は、液晶の電気光学的変化を利用した表示素子であり、装置的に小型軽量であり、消費電力が小さい等の特性が注目され、近年、各種ディスプレイ用の表示装置として目覚ましい発展を遂げている。中でも正の誘電異方性を有するネマティック液晶を用い、相対向する一対の電極基板のそれぞれの界面で液晶分子を基板に対し平行に配列させ、かつ、液晶分子の配向方向が互いに直交するように両基板を組み合わせた、ツイステッドネマティック型(TN型)の電界効果型液晶表示素子は、その代表的なものである。
【0003】
このようなTN型の液晶表示素子においては、液晶分子の長軸方向を基板表面に均一に平行配向させること、更に、液晶分子を基板に対して一定の傾斜配向角をもって配向させることが重要である。この様に液晶分子を配向させる代表的な方法としては、従来より二つの方法が知られている。
第一の方法は、酸化珪素等の無機物を基板に対して斜めから蒸着することにより基板上に無機膜を形成し、蒸着方向に液晶分子を配向させる方法である。この方法では、一定の傾斜配向角を有する安定した配向は得られるものの工業的に製造するには生産性が悪く、大面積化が困難であるなどの問題が生じる。
【0004】
第二の方法は、基板表面に有機被膜をもうけ、その表面を綿、ナイロン、ポリエステル等の布で一定方向にラビングし、ラビング方向に液晶分子を配向させる方法である。この方法は、比較的容易に安定した配向が得られるため、工業的には専らこの方法が採用されている。有機膜としては、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられるが、化学的安定性、熱的安定性等の点からポリイミドが最も一般的に使用されている。この様な液晶配向膜に使用されているポリイミドの代表的な例としては、特開昭61−147932号公報に開示されるものがある。
【0005】
一方、カイラルスメクティック相を有する強誘電性液晶、反強誘電性液晶を用い、相対向する一対の電極基板のそれぞれの界面で液晶分子を基板に対し、層方向が一方向に向くように配列させた強誘電性液晶表示素子や反強誘電性液晶表示素子では、液晶分子が有する自発分極と電界の直接的な相互作用により、ネマティック液晶表示素子よりも優れた高速応答性、高視野角特性を有することが知られている。さらに、強誘電性液晶や反強誘電性液晶が有する螺旋ピッチよりもセルギャップを薄くした表面安定型強誘電性液晶、表面安定型反強誘電性液晶素子では、ネマティック液晶表示素子にはない、双安定や三安定を示し、単純マトリックス電極構造でも高精細の表示素子を作製できることが知られている。
【0006】
このような強誘電性液晶素子、反強誘電性液晶素子では、液晶分子を均一にかつ一定方向に配向させることが極めて重要である。このように液晶を配向させる代表的な方法としては、ネマティック液晶表示素子と同様に、酸化珪素等の無機物を斜め方向から蒸着して基板上に無機膜を形成する方法と、基板表面に有機被膜をもうけ、その表面を布で一定方向にラビングする方法が知られている。ラビングする有機膜としては、ネマティック液晶表示素子と同様に化学的安定性、熱的安定性の点からポリイミドが一般的に使用されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
正の誘電異方性を有するネマティック液晶を用い、相対向する一対の電極基板のそれぞれの界面で液晶分子を基板に対し平行に配列させ、かつ、液晶分子の配向方向が互いに直交するように両基板を組み合わせた、TN型の電界効果型液晶表示素子においては、液晶分子の長軸方向を基板表面に均一に平行に配向させること、更に液晶分子を基板に対して一定の傾斜配向角をもって配向させることが重要である。特に近年、TN型の電界効果型液晶表示素子において、コントラストを向上させるために3゜以下、好ましくは1〜2゜程度の低い傾斜配向角を安定に得ることが要求されている。また更には素子の軽量化の必要性から、プラスチックフィルムなどを基材に用いた液晶表示素子の開発も活発に進められている。
【0008】
しかし、従来のポリイミドを用いた液晶配向処理剤では、ポリイミド前駆体溶液を基板上に塗布し、その後加熱焼成により脱水閉環させてポリイミド膜を形成させることが一般的である。この為一般には200℃以上、好ましくは250℃〜300℃以上の高温焼成が必要とされ、特により安定した液晶配向を得る上では、より高温での焼成が重要である。
【0009】
またポリイミドの種類によっては、ポリイミド自体が溶剤に可溶なものもあり、これを用いた液晶配向処理剤では、例えば100℃〜200℃程度の比較的低い温度で加熱乾燥することで基板上にポリイミド膜を形成することが可能である。しかしながら、この場合に使用されるポリイミドは、溶剤に可溶であるため、一般にはポリイミド構造が柔軟であることが多く、より安定な液晶配向を得る上では必ずしも満足されるものではなかった。
【0010】
また更に、たとえば特開平59−200217号公報に記載されているように、従来からポリアミド樹脂も一部ではあるが液晶配向膜として用いられる場合があったが、本発明の課題であるより高度な液晶配向の熱的安定性或いは配向の均一性の上で必ずしも十分なものではなかった。
即ち、従来から、例えばプラスチックフィルムなどの耐熱性の低い基板を使用した液晶表示素子では、より焼成温度の低い配向膜材料が求められており、且つ低い焼成温度でもより安定した均一な液晶配向特性が得られる液晶配向処理剤が求められていた。特に、液晶注入後の傾斜配向角において、これまでも低い傾斜配向角を発現する配向膜材料はあるものの、液晶のアイソトロピック温度以上に加熱(以下アイソトロピック処理という)した際に傾斜配向角が変化してしまうことがあり、また、アイソトロピック処理により傾斜配向角が低下して液晶分子の配向が乱れてしまう問題もあった。また更には、一般に基板上に形成された樹脂膜をラビング処理して液晶配向膜として使用するが、この際にラビング方向に対して液晶分子を、従来のポリイミド膜以上に、より均一に配向させることも今後の液晶表示素子の特性を更に向上させる上で重要な課題である。これらの問題は、今後の液晶表示素子の一層の性能向上、即ち高コントラストで均一な液晶表示を達成する上では極めて重要な課題であり、単に傾斜配向角が低いだけでなく、熱処理に対して安定に3゜以下の低い傾斜配向角を与え、且つラビング方向により均一な配向を発現させる配向膜材料が切望されていた。
【0011】
一方、強誘電性液晶素子、反強誘電性液晶素子では液晶の均一な初期配向を得ることが極めて重要であり、この配向状態が液晶素子の性能に大きな影響を与えることが知られている。しかしながら、強誘電性液晶や反強誘電性液晶の配向状態を均一に制御することは困難で、一般にラビングしたポリイミド膜上ではジグザグ欠陥等の配向欠陥が観測され、これがコントラストの低下等の液晶表示素子の性能を著しく低減させる問題点があった。
【0012】
また、液晶配向膜をカラーフィルター上に形成させる場合、その耐熱性の観点からより低い温度で焼成可能な配向膜が好ましい。すなわち、より低温での焼成が可能で、かつ強誘電性液晶や反強誘電性液晶を欠陥がなく均一に配向することができる配向処理剤が切望されていた。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、新規な液晶配向処理剤に関するものであり、熱処理に対して安定した低い傾斜配向角の発現及び液晶の配向の均一性について鋭意検討した結果、特定の構造を有するポリエステルアミド樹脂が良好な特性を示すことを見出し本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記一般式(I)
【0014】
【化5】
【0015】
(式中、A1およびA2はそれぞれ独立に炭素数2〜12の直鎖状のアルキレン基であり、
【0019】
X1およびX2はそれぞれ独立に-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)S-または-SC(=O)-で表されるエステルまたはチオエステル結合、R1 、R 2 はそれぞれ独立にハロゲン原子または炭素数1〜6の直鎖状あるいは分岐状の低級アルキル基もしくはアルコキシ基、n1 、n 2 はそれぞれ独立に0〜2の整数である。)で表され、重量平均分子量が1,000以上であるポリエステルアミドからなる液晶配向処理剤に関するものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
前記一般式(I)中、A1およびA2で表される炭素数2〜12の直鎖状のアルキレン基とは炭素数2〜12のポリメチレン鎖を表す。また、前記一般式(I)中R1 、R 2 で表わされる炭素数1〜6の直鎖状あるいは分岐状の低級アルキル基もしくはアルコキシ基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、iso−プロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等を例示することができる。
【0021】
前記一般式(I)で表される繰り返し単位において、一般式(I)が下記一般式(IV)
【0022】
【化8】
【0023】
(式中、A1、A2、X1、X2、R1、R2、n1及びn2は一般式(I)の定義と同じ)
であることが液晶配向特性の観点から好ましい。
繰り返し単位が前記一般式(I)で表わされる本発明に用いられるポリエステルアミドは、例えば、以下に示す合成方法により製造することができる。すなわち、下記一般式(V)
【0024】
【化9】
【0025】
(式中、A1、R1、R2,X1、X2、n1およびn2は前記定義と同様である。)で表されるジアミン化合物、および下記一般式(VI)
【0026】
【化10】
【0027】
(式中、X3およびX4は水酸基、フッ素以外のハロゲン原子、低級アルコキシ基、フェノキシ基または置換フェノキシ基であり、A2は前記定義と同様である。)
で表わされるジカルボン酸化合物とを、等モル量混合し、通常の方法により重縮合反応を行なうことにより合成することができる。ここで、前記一般式(VI)中X3およびX4で表される置換基のうち、低級アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、iso−プロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等を、また、置換フェノキシ基としては、クロロフェノキシ基、ニトロフェノキシ基等をそれぞれ例示できる。
【0028】
前記一般式(VI)中X3およびX4で表される置換基が水酸基である化合物を用いる場合、重縮合反応は縮合剤の存在下行うことが望ましく、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリトルイル、亜リン酸トリ(クロロフェニル)、ジクロロ亜リン酸フェニル、ジクロロリン酸ジフェニル、トリフェニルホスフィン/ヘキサクロロエタン、ジフェニル(2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-3-ベンゾチアゾリル)ホスホナート、(C3H7)3P(O)O、POCl3、SOCl2、SiCl4、(CH3)2SiCl2等の縮合剤に必要に応じてピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、イミダゾールなどの有機塩基を添加して用いることにより反応が好適に進行する。また、この反応は有機溶媒中で行うことが好ましく、ヘキサン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、ピリジン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホアミド等が好適に用いられる。さらに、この重縮合反応で得られるポリアミドの溶解性が低い場合には、塩化カルシウム、塩化リチウム、臭化リチウム等の無機塩基を添加して行うことにより好適に反応が進行する。この縮合反応における反応温度は、通常室温から200℃程度の温度範囲が好ましい。
【0029】
一方、この重縮合反応において、前記一般式(VI)中X3およびX4で表される置換基がフッ素以外のハロゲン原子である化合物を用いる場合には、ハロゲン化水素が発生するので、その捕捉剤としてトリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン等の有機塩基存在下で行なうことにより好適に反応が進行する。また、この場合には0℃〜室温前後の比較的低い温度で行なうことが、副反応を押さえる点で好ましい。これらの反応はいずれも有機溶媒中で行うことが好ましく、ヘキサン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、ピリジン、クロロホルム、ジクロロエタン、N,N−ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホアミド等が好適に用いられる。また、得られるポリエステルアミドの溶解性が低い場合には、前記と同様な無機塩基を添加して行うことにより好適に反応が進行する。
【0030】
さらに、前記一般式(VI)中X3およびX4で表される置換基が低級アルコキシ基、フェノキシ基または置換フェノキシ基である化合物を用いる場合には、前記と同様に、有機溶媒中で必要に応じて前述の縮合剤存在下反応させることで目的とするポリエステルアミドが得られるが、その他にも、それぞれのモノマーを所定量混合した後必要に応じて触媒を添加し、常圧下もしくは減圧下においてモノマーが溶融する温度まで昇温する事により目的とする本発明に用いられるポリエステルアミドを製造することができる。ここで用いられる触媒としては、硫酸、硝酸、トシル酸、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、塩化アルミニウム、トリブチルアルミニウム、塩化チタン、トリブチルチタン、酢酸鉛等を例示できる。
【0031】
また、前記一般式(V)で表される化合物から誘導される以下のモノマー類、すなわち、下記一般式(VII)
【0032】
【化11】
【0033】
(式中、Y1およびY2はトリオルガノシリル基、アセチル基または置換アセチル基、A1、R1、R2、X1、X2、n1およびn2は前記定義と同様である。)
で表される化合物と、前記一般式(VI)で表される化合物のうちX3およびX4が水酸基である化合物とを等モル量混合し、重縮合反応を行なうことにより目的とするポリエステルアミドを得ることができる。ここで、前記一般式(VII)中Y1およびY2で表される置換基のうち、トリオルガノシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基等を、また置換アセチル基としては、トリフルオロアセチル基、ブロモアセチル基、ジブロモアセチル基、フェニルアセチル基等をそれぞれ例示できる。
【0034】
さらに、この重縮合反応においても、前記と同様に有機溶媒中で必要に応じて前述の縮合剤存在下反応させることで目的とするポリエステルアミドが得られるが、その他にも、それぞれのモノマーを所定量混合した後必要に応じて前記と同様な触媒を添加し、常圧下もしくは減圧下においてモノマーが溶融する温度まで昇温する事により目的とする本発明に用いられるポリエステルアミドを製造することができる。
【0035】
以上述べた製造方法において用いられる前記一般式(V)で表されるジアミン化合物は、例えば以下に示す方法により製造することができる。すなわち、下記一般式(VIII)
【0036】
【化12】
【0037】
(式中、Y3は酸素原子または硫黄原子、R1およびn1は前記定義と同様である。)で表される化合物と、下記一般式(IX)
【0038】
【化13】
【0039】
(式中、X5およびX6は水酸基またはハロゲン原子、A1は前記定義と同様である。)
で表される化合物とを、一般式(VIII)で表される化合物を一般式(IX)で表される化合物に対して2当量以上用いて縮合させるか、または一般式(IX)で表される化合物を一般式(VIII)で表される化合物に対して少なくとも1当量以上用いて反応させた後、下記一般式(X)
【0040】
【化14】
【0041】
(式中、Y4は酸素原子または硫黄原子、R2およびn2は前記定義と同様である。)
で表される化合物と再度縮合させる、あるいは、下記一般式(XI)
【0042】
【化15】
【0043】
(式中、X7は水酸基またはハロゲン原子、R1およびn1は前記定義と同様である。)
で表される化合物と、下記一般式(XII)
【0044】
【化16】
【0045】
(式中、Y5およびY6は酸素原子または硫黄原子、A1は前記定義と同様である。)
で表される化合物とを、一般式(XI)で表される化合物を一般式(XII)で表される化合物に対して2当量以上用いて縮合させるか、または一般式(XII)で表される化合物を一般式(XI)で表される化合物に対して少なくとも1当量以上反応させた後、下記一般式(XIII)
【0046】
【化17】
【0047】
(式中、X8は水酸基またはハロゲン原子、R2およびn2は前記定義と同様である。)
で表される化合物と再度縮合させることにより、下記一般式(XIV)
【0048】
【化18】
【0049】
(式中、A1、R1、R2,X1、X2、n1およびn2は前記定義と同様である。)で表されるジニトロ化合物を合成し、さらにこのジニトロ化合物のニトロ基を還元することにより、前記一般式(V)で表されるジアミン化合物を製造することができる。
上記の縮合反応において、前記一般式(IX)、(XI)および(XIII)中X5〜X8が水酸基である化合物をそれぞれ用いる場合には、一般に縮合剤の存在下好適に反応が進行する。その際用いられる縮合剤としては、塩酸や硫酸などの鉱酸、トシル酸などの芳香族スルホン酸、三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル錯体などのルイス酸、トリフルオロ酢酸無水物、ジシクロヘキシルカルボジイミド、N-アルキルピリジニウム塩、トリフェニルホスフィン、ポリリン酸エステルなどを挙げることができる。この場合の反応温度は通常室温から100℃の範囲で好適に反応が進行する。一方、上記の縮合反応において、前記一般式(IX)、(XI)および(XIII)中X5〜X8がハロゲン原子である化合物をそれぞれ用いる場合には、ハロゲン化水素が発生するので、その捕捉剤としてトリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の有機塩基存在下で行なうことにより好適に反応が進行する。また、この場合には0℃〜室温前後の比較的低い温度で行なうことが、副反応を押さえる点で好ましい。これらの反応はいずれも有機溶媒中で行うことが好ましく、ここで用いられる有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、アセトン、テトラヒドロフラン等が好適に用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
また、上記のニトロ基の還元反応は通常用いられる公知の還元剤と反応させることにより容易に進行するが、水素ガス雰囲気下ニッケル、白金、パラジウム、ロジウムなどの金属を触媒とした接触還元を行なうことにより、前記一般式(XIV)で表されるジニトロ化合物から前記一般式(V)で表されるジアミン化合物を収率良く合成することができる。いずれの反応も溶媒中で行なうことが望ましく、溶媒としては反応に関与しないものであればいずれでもよく、アルコール、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサン、ベンゼン、トルエン等を例示することができる。反応温度は−100℃〜150℃、好ましくは−50℃〜100℃の範囲で行なうことができる。
【0051】
以上述べたような製造方法により得られる、繰り返し単位が前記一般式(I)で表わされるポリエステルアミドの重量平均分子量は1,000以上、より好ましくは3,000以上であることが、液晶配向処理剤として用いる場合の安定性等の点で好ましい。ポリエステルアミドの重量平均分子量の上限は、特に限定されるものではないが、製造上の観点から20万以下が好ましい。分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー、浸透圧法、光散乱法、粘度法等の公知の方法により測定される。
【0052】
該ポリエステルアミドを液晶配向処理剤として使用するに際しては、上記縮合反応で得られたポリエステルアミド樹脂溶液をそのまま使用する事もできる。また得られたポリエステルアミド溶液から一旦ポリエステルアミドを単離したのち、適当な溶媒に再溶解させて使用することもできる。再溶解させる溶媒は、得られたポリエステルアミドを溶解させるものであれば特に限定されないが、その例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、フェノール、p-クロロフェノール、アニソール、クレゾール等が挙げられる。
【0053】
また、基板への塗布性を改善する目的から、単独ではこのポリエステルアミドを溶解させない溶媒であっても溶解性を損なわない範囲であれば上記溶媒に加えてもよい。その例としてはブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、トルエン、キシレン等が挙げられる。また更に、基板への密着性を上げる目的から、シランカップリング剤等の添加剤を適宜使用する事もできる。
【0054】
上記のようにして得られた本発明のポリエステルアミド溶液を、スピンコート、転写印刷法などの方法を用いてガラス、ウェハーまたはプラスチック等の基板上に塗布し、これを加熱処理してポリエステルアミド膜を形成するのが一般的である。この加熱処理温度としては、50℃〜450℃、好ましくは80℃〜350℃の任意の温度を選択することができるが、本発明の効果を得るための液晶配向膜の形成に際しては、一般には80℃〜200℃の比較的低い加熱温度を採用することができる。
【0055】
本発明に於けるポリエステルアミド樹脂は液晶配向処理剤として特に優れた特性を有するものである。即ち、本発明のポリエステルアミドより得られる液晶配向処理剤は該ポリエステルアミド樹脂を有機極性溶媒に溶解させた樹脂溶液を透明電極付きの基板上に塗布したのち、乾燥、焼成することによりポリエステルアミド樹脂膜を形成し、次いで膜表面をラビング処理して液晶配向膜として用いるものである。この際のポリエステルアミド膜の厚みとしては、特に限定されるものではないが、通常の液晶配向膜として使用される上で、100Å〜3000Åが適当である。次いで該樹脂膜をラビング処理等の配向処理を施し、液晶配向処理剤として使用することができる。
【0056】
ラビング処理は、一般には綿、ナイロン、ポリエステルなどの布を巻いたローラーを回転させ、そのローラーを一定の押し込み圧で基板に接触させて基板またはローラーを一定速度で移動させることにより行うことができる。また、ローラーが回転していない状態でローラーもしくは基板を移動させて行うことができる。回転ラビングでのラビングの強さは、次の式で定義されるラビング度(mm)で表すことが報告されている。
【0057】
【数1】
L=N・M{(2πrn/60V)−1} (1)
(1)式に於いて、Nはラビング回数、Mは押し込み量(mm)、rはラビングローラーの半径(mm)、nはローラーの回転数(rpm)、Vはステージの移動速度(mm/秒)である。本発明に用いることができるラビング度は特に限定されるものではないが、ポリアミド膜の密着性の観点から、500mm以下が好ましい。
【0058】
このようなラビング処理によって高分子鎖がラビング方向に配向されることが知られており、この高分子膜の配向の効果は、一般的に、ラビング処理後に誘起されるポリエステルアミド膜の複屈折位相差およびラビング方向と遅相軸のずれ角を測定することによって評価できる。この測定の原理は、次の文献に記載されている。
【0059】
An Improved Method for High Reflectivity Ellipsometry Based on a New Porarization Modulation Technique(S.N.Jasperson & E.Schnatterly)Rev.Sci.Inst.,vol.40, page761,1969
High Frequency Polarization Modulation Method for Mesuring Birefringenece(F.A.Modoine, R.W.Major & E.Sonder)Appl.Opt.,vol14,No.3,1975
本発明に於けるポリエステルアミド樹脂は液晶配向処理剤として特に優れた特性を有するものであるが、本発明の効果を得るためには、ポリエステルアミド分子鎖がラビングにより延伸され、ラビング方向に均一に配向することが重要である。ラビングによって誘起される複屈折位相差の大きさは、高分子の構造単位が有する屈折率の異方性、ラビング度、延伸される膜厚等に依存するが、複屈折位相差が大きいほど高分子鎖が配向していることを示すと考えられ、さらに、ラビング方向と遅相軸とのズレ角は、その大きさが小さいほど高分子鎖がラビング方向に配向していることを示していると考えられる。本発明の効果を得るためには、複屈折位相差の大きさがラビング度が10〜100mmのとき0.5以上、ラビング度が100mm以上で1.0以上であることが好ましく、また、ラビング方向と遅相軸のズレ角が、1.0°以下、さらに好ましくは0.5°以下であることが好適である。
【0060】
このようにラビングによって均一にかつ一方向に高分子鎖が配向した液晶配向処理剤を用いることによって、液晶分子を均一に配向させることができる。
以下、参考例、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明がこれらに限定されるものではないことはもちろんである。
【0061】
【実施例】
参考例1
【0062】
【化19】
【0063】
アルゴン雰囲気下、4-ニトロフェノール9.58 g(68.9 mmol)にクロロホルム70 mL、トリエチルアミン11.5 mL (82.5 mmol)を加えて均一に溶解した後、反応容器を0℃に冷却した。ここへアジピン酸クロリド5.00 mL(34.4 mmol)を滴下した。反応温度を徐々に室温へ上げながら、一晩撹拌した。クロロホルム50 mLおよび水100 mLを加えて、有機層を抽出した。この有機層を希塩酸水で洗浄した後、水層の液性が中性になるまで水洗、更に最後に飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶液を濃縮した。残査を酢酸エチルから再結晶精製したところ、上記構造式(1)で表されるジエステル化合物9.83 gを淡黄色固体として得た。収率:73.5%
IR (KBr disk, cm-1): 3117 (vw, arC-H st), 2969 (vw, alC-H st as), 1753 (s, C=O st; ester), 1615 (w), 1593 (m), 1520 (s, arC-NO2 st as), 1491 (m), 1348 (s, arC-NO2 st sy), 1250 (m, C-O st as), 1215 (s, C-O st sy), 1150 (m), 1121 (s), 926 (m), 864 (m), 853 (m), 720 (w).
1H-NMR (CDCl3, 90MHz, ppm): δ= 1.90 (m, 4H), 2.69 (t, 4H), 7.28 (d, 4H), 8.29 (d, 2H, J=9.0Hz).
上記方法により得られた(1)7.77 g(20.0 mmol)をテトラヒドロフラン(以下、THFと略す)120 mLおよびエタノール40 mLの混合溶媒に溶解した。ここへ5%Pd−カーボン粉末1.0 gを加えた。常圧下、水素ガス雰囲気内で一晩撹拌した。セライト濾過により触媒を除去した後、熱THFで充分に濾物を洗浄した。濾液をTHFから再結晶精製したところ、上記構造式(2)で表されるジアミン化合物4.59 gを薄茶色粉末として得た。収率:69.9%
IR (KBr disk, cm-1): 3382 (w, NH2 st as), 3310 (w, NH2 st sy), 3206 (w, NH2 st; hydrogen bonded), 3015 (vw , arC-H st), 2942 (w, alC-H st as), 2917 (w, alC-H st as), 2872 (vw, alC-H st sy), 1746 (s, C=O st; ester), 1653 (bw, -NH2 δ), 1605 (w, arC-C), 1505 (s, -NH2 δ), 1383 (m), 1250 (m, C-O st as), 1192 (s, C-O st sy), 1161 (m), 1134 (s), 841 (m, -NH2 δ), 762 (m), 731 (w), 513 (m).
1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz, ppm): δ= 1.68 (m, 4H), 2.55 (t, 4H), 5.01 (-NH2), 6.53 (d, 4H, J=8.7Hz), 6.74 (d, 4H, J=8.7Hz).
EI-MS: m/z = 328 (M)+, 109 (H2NC6H4OH)+.
元素分析結果(C18H20N2O4, 分子量: 328.37)
計算値:C: 65.84%, H: 6.14%, N: 8.53%
実測値:C: 65.69%, H: 6.32%, N: 8.31%
【0064】
実施例1及び2
【0065】
【化20】
【0066】
参考例1により得られたジアミン化合物(2)を表1に示す量秤量し、1 mol/L N−メチルピロリドン(以下、NMPと略す)溶液とした後これをアルゴン雰囲気下、攪拌しながら-78℃まで冷却し固化させた。ここへジアミン化合物(2)と等モル量のジ酸クロリド化合物、すなわちアジピン酸クロリドまたはイソフタル酸クロリドをそれぞれ表1記載の量を用いて調製した1 mol/L NMP溶液を加え、反応温度を室温までゆっくりと昇温した。昇温とともに攪拌が再開され表1記載の反応時間が経過後、NMPで1/2モル濃度まで希釈した。反応溶液を約100倍量のメタノールに攪拌しながら投入し、生じた繊維状の沈殿を濾取、減圧下60℃で一晩乾燥させ、上記構造式PA−1およびPA−2で表されるポリエステルアミドをそれぞれ得た。得られたポリエステルアミドの収量およびゲルパーミエーションクロマトグラフィーで求めた数平均分子量および重量平均分子量を以下の表2に示す。また、得られたPA−1およびPA−2のIRスペクトルを図1および2に、1H−NMRスペクトルを図3および4にそれぞれ示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
実施例3
実施例1で得られたポリエステルアミドPA−1をp−クロロフェノールに溶解させ、総固形分濃度5wt%の溶液を調製した。この溶液をガラス基板上に回転数2500rpmでスピンコートし、ついで180℃で1時間加熱処理を行うことによって膜厚1000Åのポリエステルアミド樹脂膜を形成した。
【0070】
このポリエステルアミド樹脂膜をレーヨン布を用い、表3の条件でラビング処理を施した。このようにラビング処理された各々の基板を50μmのスペーサーを挟んで、ラビング方向を反平行にして組み立て、ついでネマチック液晶(メルク社製ZLI−2293)を注入して、基板に対して平行配向したセルを作製した。このセルの配向状態を偏光顕微鏡により観察したところ、いずれのラビング条件でも欠陥は全く観測されず、液晶が均一に配向していることが確認された。また、結晶回転法により傾斜配向角を測定したところ、条件1では1.3°、条件2および条件3では1.2°と低い傾斜配向角が安定に得られていることが確認された。
【0071】
さらに、熱処理に対する傾斜配向角と配向状態の変化を評価するため、液晶セルを95℃で10分間、120℃で1時間、120℃で6時間、順次加熱処理を行なったが、熱処理による配向の乱れや欠陥の発生は一切みられず、均一な配向を保持しており、傾斜配向角の変化も全くないことが確認された。
【0072】
【表3】
【0073】
表3 ラビング条件
実施例4
実施例3に記載したポリエステルアミド樹脂膜のラビング処理による分子鎖の配向性を評価するため、ポリアミド樹脂膜を種々の強さでラビング処理し、オーク製作所高感度自動複屈折測定装置により複屈折位相差(以下△ndと略す)、および遅相軸とラビング方位とのずれ角を測定した。ラビングの強さを定量化するために、以下の数式(1)で算出されるラビング度L(mm)を導入した。
【0074】
【数2】
L=N・M{(2πnr/60V)−1} (1)
(1)式に於いて、Nはラビング回数、Mは押し込み量(mm)、rはラビングローラーの半径(mm)、nはローラーの回転数(rpm)、Vはステージの移動速度(mm/秒)である。表4にラビング強度に対する複屈折位相差と遅相軸のずれ角のラビング度依存性を示す。比較的小さいラビング度に於いても、△nd値は大きく、特にラビング度が大きい領域では極めて大きな△ndが観測され、また遅相軸のずれ角もいずれのラビング度においても極めて小さいことから、ポリエステルアミド分子鎖がラビング処理によって、ラビング方向へ均一に配向していることが確認された。
【0075】
【表4】
【0076】
実施例5
実施例2で得られたポリエステルアミドPA−2をNMPとブチルセルソルブ(以下BSと略す)の混合溶媒(重量比80:20)に溶解させ、総固形分濃度5wt%溶液を調製した。この溶液をガラス基板上に回転数2100rpmでスピンコートし、ついで180℃で1時間加熱処理を行うことによって膜厚1000 のポリエステルアミド樹脂膜を形成した。
【0077】
実施例3と同様に、異なるラビング条件でラビング処理を行って液晶セルを作製し、配向の均一性および傾斜配向角を評価したところ、いずれのラビング条件でも均一で良好な配向状態が得られ、ラビング条件1では2.3°、条件2では2.2°、条件3では1.7°の低い傾斜配向角が安定して得られていることが確認された。
【0078】
さらに、実施例3と同様の条件で、熱処理に対する傾斜配向性と配向状態の変化を評価したところ、熱処理による配向の乱れや欠陥の発生はみられず、また傾斜配向角の変化もみられなかった。
【0079】
実施例6
実施例5に記載したポリエステルアミド樹脂膜のラビング処理による分子鎖の配向性を評価するため、実施例4と同様にラビング処理に対する△nd、および遅相軸とラビング方向とのずれ角を測定したところ、ラビング度の増加に伴い△ndが増加し、また遅相軸のずれ角は小さいことから、ラビング処理によってポリエステルアミド分子鎖がラビング方向へ均一に配向することが確認された。
【0080】
実施例7
実施例1で得られたポリアミドPA−1をp−クロロフェノールに溶解させ、総固形分濃度5wt%の溶液を調製した。この溶液をガラス基板上に回転数2500rpmでスピンコートし、ついで180℃で1時間加熱処理を行うことによって膜厚1000Åのポリアミド樹脂膜を形成した。
【0081】
このポリアミド樹脂膜をナイロン布を用い、表3に記載の条件1でラビング処理を施した。このようにラビング処理された各々の基板を2μmのスペーサーを挟んで、ラビング方向を平行にして組み立て、ついで強誘電性液晶(メルク社製ZLI−3489)を注入して、表面安定化型液晶セルを作製した。このセルの配向状態を偏光顕微鏡により観察したところ、液晶セルの全領域にわたり欠陥は観測されず、強誘電性液晶が均一に配向していることが確認された。
【0082】
実施例8
実施例2で得られたポリアミドPA−2をNMPおよびBSの混合溶媒(重量比80:20)に溶解させ、総固形分濃度5wt%の溶液を調製した。この溶液をガラス基板上に回転数2100rpmでスピンコートし、ついで180℃で1時間加熱処理を行うことによって膜厚1000Åのポリアミド樹脂膜を形成した。
【0083】
このポリアミド樹脂膜をナイロン布を用い、表3に記載の条件1でラビング処理を施した。このようにラビング処理された各々の基板を2μmのスペーサーを挟んで、ラビング方向を平行にして組み立て、ついで強誘電性液晶(メルク社製ZLI−3489)を注入して、表面安定化型液晶セルを作製した。このセルの配向状態を偏光顕微鏡により観察したところ、液晶セルの全領域にわたり欠陥は観測されず、強誘電性液晶が均一に配向していることが確認された。
【0084】
比較例1
等モル量のピロメリット酸二無水物とジアミノジフェニルエーテルをNMP中で反応させ、ポリイミド前駆体を重合した。この溶液をNMPとBSの混合溶媒(重量比80:20)で希釈し、総固形分濃度5wt%溶液を調製した。このポリイミド前駆体溶液をガラス基板上に回転数3200rpmでスピンコートし、ついで250℃で1時間加熱処理を行うことによって膜厚1000Åのポリイミド樹脂膜を形成した。
【0085】
ローラー回転数300rpm、ステージ移動速度20mm/秒、押し込み量0.5mmのラビング条件でラビング処理を行い、実施例3と同様に、液晶セルを作製し配向の均一性および傾斜配向角の熱処理による変化を評価した。初期配向では、配向傾斜角2.0で均一な配向状態が得られるものの、熱処理により配向傾斜角が2.6°に変化し、熱処理に対して安定な配向傾斜角を得ることができなかった。
【0086】
比較例2
比較例1に記載したポリイミド樹脂膜のラビング処理による分子鎖の配向性を評価するため、実施例4と同様にラビング処理に対する△nd、および遅相軸とラビング方向とのずれ角を測定したところ、表5のように、いずれのラビング度でも△ndが小さく、また遅相軸のずれ角は大きいことから、ラビング処理によるポリイミド分子鎖のラビング方向への配向の均一性が低いことが確認された。
【0087】
【表5】
【0088】
比較例3
等モル量のイソフタル酸クロリドとジアミノジフェニルエーテルを窒素気流中−78℃のNMP中(濃度:1mol/l)で反応させた後、室温で撹拌した。この溶液をメタノール中にあけ、析出した高分子を濾別して乾燥させた。この高分子を再度NMPに溶解させて、メタノールにあけ、析出した高分子を濾別して乾燥させた。この操作を繰り返して高分子を精製し、対応するポリアミド粉末を得た。得られたポリアミドをゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより分子量測定したところ、ポリスチレン換算で数平均分子量:1.4x104、重量平均分子量:2.9x104であった。
【0089】
このポリアミド粉末を、NMPとBSの混合溶媒(重量比80:20)に溶解させ、総固形分濃度5wt%溶液を調製した。この溶液をガラス基板上に回転数約3000rpmでスピンコートし、ついで180℃で1時間加熱処理を行い、膜厚1000Åのポリアミド樹脂膜を形成した。
このポリアミド樹脂膜のラビング処理による分子鎖の配向性を評価するため、実施例4と同様にラビング処理に対する△nd、および遅相軸とラビング方向とのズレ角を測定したところ、表6のように、いずれのラビング度でも△ndが小さく、また遅相軸のズレ角は大きいことから、ラビング処理によるポリアミド分子鎖のラビング方向への配向の均一性が低いことが確認された。
【0090】
【表6】
【0091】
比較例4
比較例1に記載のポリイミド前駆体溶液をNMPとBSの混合溶媒(重量比80:20)で希釈し、総固形分濃度5wt%溶液を調製した。このポリイミド前駆体溶液をガラス基板上に回転数3200rpmでスピンコートし、ついで250℃で1時間加熱処理を行うことによって膜厚1000Åのポリイミド樹脂膜を形成した。
【0092】
このポリアミド樹脂膜をレーヨン布を用い、表3に記載の条件1でラビング処理を施した。このようにラビング処理された各々の基板を2μmのスペーサーを挟んで、ラビング方向が平行にして組み立て、ついで強誘電性液晶(メルク社製ZLI−3489)を注入して、表面安定化型液晶セルを作製した。このセルの配向状態を偏光顕微鏡により観察したところ、多数のジグザグ欠陥、線状欠陥が観測され、強誘電性液晶の配向が不均一であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られたポリアミドPA−1のIRスペクトル。
【図2】 実施例2で得られたポリアミドPA−2のIRスペクトル。
【図3】 実施例1で得られたポリアミドPA−1の1H−NMRスペクトル。
【図4】 実施例2で得られたポリアミドPA−2の1H−NMRスペクトル。
Claims (2)
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