JP3912740B2 - 高圧噴射ノズル管及びこれを付設した固化処理杭造成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地盤に高圧の水やセメントミルクを噴射して固化処理杭を造成する高圧噴射ノズル管及びこれを付設する固化処理杭造成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地盤改良工法のひとつに高圧のジェット噴流を利用した固化処理杭造成工法がある。更にこの固化処理杭造成工法には、水平噴流式固化処理杭造成工法と交差噴流式固化処理杭造成工法がある。水平噴流式固化処理杭造成工法は、例えば機械式攪拌装置の先端を、施工する柱体の芯に合わせて回転軸を回転させ、回転軸の下部に放射状に設けた1以上の攪拌翼の回転域内外の地盤中に、回転軸の所定の位置に付設された所定の長さを有する高圧噴射ノズル管口から水を高圧噴射させ、原位置土を切削しながら貫入を行い、設計深度に達したところで吐出を停止し、回転軸をそのまま回転又は逆転して、高圧噴射ノズル管口からセメントミルク等の固化材を高圧噴射により吐出させ、切削土と攪拌混合しながら地盤中に引き上げて柱状体を造成する工法である。この場合、攪拌翼を付設しない回転軸を使用する場合もある。
【0003】
交差噴流式固化処理杭造成工法は、高圧の交差ジェット噴流を地中に注入して固化処理杭を造成し地盤を改良する工法であり、該工法によれば、交差噴流の衝突地点で切削能力が急激に低下するため、切削効力が交差地点で吸収され、一種の型枠効果が生じ寸法精度の高い固化処理杭を造成することができる。
【0004】
このような高圧のジェット噴流を利用した固化処理杭造成工法によれば、単位体積当たりの処理コストが低減された大径の柱状固化処理杭を造成できる。このため、従来の高圧噴射ノズル管にはジェット噴流をできる限り遠くまで噴射できる構造が採用されている。図5は従来の高圧噴射ノズル管の一例を示す。この高圧噴射ノズル管50はノズル部51と、ノズル部51を固定する基管部53とからなるもので、ノズル部51の内周面は、先端よりノズル口径部511、先端方向へ縮径するテーパ面状の内径部512を有し、外周面は雄螺子部513を有するものであり、基管部53は、一端側の内周面にノズル部51の雄螺子部513と螺合する雌螺子部521を有し、他端側が不図示の20〜40MPaの高圧ポンプを備える高圧液状物供給手段に接続される。なお、符号52は液漏れを防止するOリングである。このような構造を有する高圧噴射ノズル管50によれば、ノズル口径が先端に向けて徐々に縮径するテーパ面状で形成され、且つ高圧ポンプを使用するため、ジェット噴流54を収束できると共に遠くまで噴射することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、地盤改良に対する要望も多様化しており、施工場所が広く採れない、小径の固化処理杭を多数造成したい、あるいは固化処理杭の造成速度を高めたい等の要望がある。特に小径の固化処理杭を造成したい場合、従来の固化処理杭造成装置を転用するにしても、交差噴流式ではノズルの角度を変更する必要があり、水平噴流式では高圧で大きな馬力のポンプを小さな馬力のポンプに変更する必要があった。ノズル角度の変更はノズルを構成する部材の新たな作製を伴いコストが上昇するという問題があり、また、角度調整も複雑な工程を伴うものであった。更に高圧ポンプの変更は大型機材の変更となり、容易に行えるものではない。
【0006】
従って、本発明の目的は、ノズルの複雑な角度調整を必要とせず、高圧ポンプをそのまま使用することができ、固化処理杭の出来上がり径の変更の要望に容易に対応できる高圧噴射ノズル管及びこれを付設する固化処理杭造成装置を提供するものである。また、本発明の他の目的は、特に小径の固化処理杭の造成速度を高めることができる高圧噴射ノズル管及びこれを付設する固化処理杭造成装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明(1)は、内周面には先端方向へ縮径するテーパ面状の内径部を少なくとも有し、外周面には雄螺子部を有するノズル部と、一端側の内周面に該ノズル部の雄螺子部と螺合する雌螺子部を有し、他端側が高圧液状物供給手段に接続される管状の基管部と、先端が前記ノズル部の先端近傍に位置する先細りの針状部を有し、軸心が前記基管部の軸心と合致するように該基管部の管状内に固定されるノズル口径調整部材とを備えるものであって、固化処理杭の造成に使用される高圧噴射ノズル、本発明(2)は、前記ノズル部の雄螺子部に螺合し、該ノズル部を前記基管部にロックするロックナットを更に備える前記(1)記載の高圧噴射ノズル管、本発明(3)は、前記高圧液状物が、高圧のセメントミルク又は高圧の水である前記(1)又は(2)記載の高圧噴射ノズル管、本発明(4)は、前記(1)〜(3)の高圧噴射ノズル管を付設してなる固化処理杭造成装置をそれぞれ提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態における高圧噴射ノズル管を図1〜図4を参照して説明する。図1は本例の高圧噴射ノズル管の一部の概略断面(切削長が短い場合)、図2は図1のA−A線に沿って見た図、図3は本例の高圧噴射ノズル管の一部の概略断面(切削長が長い場合)、図4は本例の高圧噴射ノズル管が付設された固化処理杭造成装置の概略図をそれぞれ示すものである。本例の高圧噴射ノズル管10は、固化処理杭造成装置40の中空の回転軸41に付設されるもので、ノズル部1と、基管部3と、ノズル口径調整部材2と、ロックナット4から構成される。
【0009】
ノズル部1は内周面には少なくとも先端方向へ縮径するテーパ面状の内径部11を、外周面には雄螺子部14を有する。本例ではノズル部1は、内周面には先端から所定の開口を有するノズル口径部12と、内径部11と、先端方向とは逆方向に緩やかに拡径するテーパ面状の後側内径部13を有し、外周面には先端からスパナ等で挟持される六角断面のナット部15と、所定長の雄螺子部14と、雄螺子部14の外径よりやや小さな外径で滑らかな外周面のシール部16とからなる。ノズル部1の先端に所定の開口を有するノズル口径部12を設けることにより、地盤の切削長を最大にする際、収束された噴流を得ることができる。また、ナット部15の外周形状は上記六角断面の他、回動工具に対応する適宜の形状を選択することができる。
【0010】
基管部3は管状であり、一端側(先端側)より、内周面にはノズル部1の雄螺子部14と螺合する雌螺子部31を有し、雌螺子部31に連続してその奥側には雌螺子部31よりやや小さな内径を有しノズル部1のシール部16と緊密に嵌合する内周面部32を有している。この内周面部32においてノズル部1のシール部16と嵌合する部位にはOリング溝に嵌合するOリング5が配設され、そのやや奥側では後述するノズル口径調整部材2を支持する放射状リブ6を接続している。そして基管部3の他端は固化処理杭造成装置40の回転軸内の中空部に配設される配管を通じて不図示の高圧液状物供給手段に接続されている。
【0011】
ノズル口径調整部材2は先端23がノズル部1の先端近傍に位置する先細りの針状部21と、これに連続する円形断面の棒状本体部22を有し、軸心が基管部3の軸心と合致するように基管部3に言わば宙吊り状態で固定されている。ノズル口径調整部材2と基管部3の固定方法は、ノズル口径調整部材2の棒状本体部22に接合する径方向に延びる4本の放射状リブ6の他端を基管部3の内周面部32に接合する方法であり、4本の放射状リブ6で形成される4つの隙間7を高圧の液状物が通ることになる(図2)。このように、ノズル口径調整部材2を基管部3に固定させ、且つノズル部1を基管部3に対してねじ込み度合いを調整することで、ノズル部1とノズル口径調整部材2の位置関係を調整し、ノズルの開口度を自在に設定している。
【0012】
ロックナット4はノズル部1を基管部3にロックするものであり、ノズル部1の雄螺子部14に螺合すると共に、外周形状はスパナ等の工具により挟持し回動し易いように六角形状となっている。なお、ロックナット4の外周形状は上記六角断面の他、使用工具に応じた適宜の形状を選択することができる。なお、ノズル部1を基管部3にロックする方法は、このようなロックナット4を用いる方法に限定されず、例えばノズル部1と基管部3をロックするロックピンを用いる方法も使用できる。この場合、基管部3におけるノズル部1と螺合する側にロックピンが螺合する螺子孔を1個設け、ロックピンの先端部をノズル部1の雄螺子部14面に押し込むことでノズル部1と基管部3はロックされる。
【0013】
本例の高圧噴射ノズル管10は、ノズル部1の基管部3に対するねじ込み度合いでノズル部1の先端から噴射される高圧液状物の地盤切削長を変化させることができる。すなわち、図1に示される高圧噴射ノズル管10はノズル部1を矢印X方向に回して基管部3に対するねじ込み度合いを最大としたもので、ノズル部1の雄螺子部14からシール部16に至る段差17が基管部3の内周面の段差34に当接し、それ以上のねじ込みを不可能な状態にしている。この状態において、ノズル口径調整部材2の先端23はノズル部1の先端面18と一致しているため、ノズル口径調整部材2はノズル口径部12の口径を狭めるように作用する。このようなノズル口径に不図示の高圧液状物噴射手段から高圧の液状物が供給されると、ノズル部1からの噴流は拡散するため地盤を削る切削能力が低下し、切削長L1と短くなる。この拡散した噴流は円錐状に広がるため、切削長L1においては直径がW1の円形断面となる。なお、ノズル部1を基管部3に更にねじ込む構造としてもよい。この場合、ノズルの口径はほとんど閉塞する程度まで狭められ、切削長L1を限りなくゼロに近づけることができ、切削幅W1を更に大きく採ることもできる。噴流の拡散状態を大きくすることで、地盤を削る切削能力は低下するものの、切削幅が大きくなり、回転軸の回転速度を高めることができると共に、引き上げ速度も高められ、この相乗効果により造成速度を高められ、施工効率が向上する。従って、特に小径の固化処理杭を多数造成し、固化処理杭の造成速度を高めたい等の用途に好適である。
【0014】
図3に示される高圧噴射ノズル管10はノズル部1を基管部3に対するねじ込み度合いを小さくしたものである。すなわち、図1の状態の高圧噴射ノズル管10において、ロックナット4を緩め、次いでノズル部1を矢印Y方向に回して、ノズル部1の先端位置を基管部3の先端から(L4−L2)分突出させる。この状態において、ノズル口径調整部材2の先端23はノズル部1のノズル口径部12の手前に位置しているため、ノズル口径調整部材2はノズル口径部12の口径に殆ど影響していない。このようなノズル口径に不図示の高圧液状物噴射手段から高圧の液状物が供給されると、ノズル部1からの噴流は収束して地盤の切削能力が高められ、切削長L3となり図1のL1に比べて長くなる。この収束した噴流は切削長L3においては直径がW2の円形断面となる。噴流を収束状態とすることで、地盤の切削能力は高められ、切削幅が小さくなる。この場合、回転軸の引き上げ速度を高めることができないものの、単位当たりの造成コストを低減した大径の固化処理杭を造成することができる。
【0015】
本発明の固化処理杭造成装置は、従来の水平噴流式又は交差噴流式の固化処理杭造成工法に用いられる公知の固化処理杭造成装置において、高圧噴射ノズル管を本発明の前記高圧噴射ノズル管に置換えたものである。本発明の固化処理杭造成装置の一例を示せば、クローラークレーンと、クローラークレーンに一端が固定された強制昇降装置を支持又はガイドするリーダーと、強制昇降装置に連結する中空の回転軸と、回転軸の先端部分に付設された高圧噴射ノズル管と配管を通して接続される地上設置の高圧液状物供給手段から構成される。図4はその回転軸の先端部分の概略を示す図である。固化処理杭造成装置40において、回転軸41の下部には、片側長さLの1以上の攪拌翼42、43と、攪拌翼42、43の裏側の回転軸部分に付設される高圧噴射ノズル管10、10と、回転軸41の下方に付設される固化材供給管9とからなる。なお、符号45は掘削ビットである。
【0016】
本例の図1の高圧噴射ノズル管10が付設された固化処理杭造成装置40を用いて固化処理杭を造成する方法を以下に説明する。高圧噴射ノズル管10において、ノズル部1の基管部3に対するねじ込み度合いは地上において調整する。すなわち、図3のようなねじ込み度合いになっていれば、前述のように、ロックナット4を緩め、ノズル部1を矢印X方向に回して基管部3に対してねじ込み、ノズル部1とノズル口径調整部材2の位置関係を調整する。次いで、公知の水平噴流式固化処理杭造成工法を適用する。
【0017】
水平噴流式固化処理杭造成工法は、例えば回転軸41先端を施工する柱体の芯に合わせて回転させ、回転軸41の下部に放射状に設けた攪拌翼42、43の回転域内外の地盤中に回転軸41に付設された高圧噴射ノズル管10、10から水を高圧噴射させ、原位置土を切削しながら貫入を行い、設計深度に達したところで水の吐出を停止し、回転軸をそのまま回転又は逆転して、高圧噴射ノズル管10、10からセメントミルク等の固化材を高圧噴射により吐出させ、切削土と攪拌混合しながら地盤中に引き上げて柱状体を造成する。この工法は貫入時に水で地盤を切削しながら改良地盤を緩めておき、引抜き時に固化材を供給する工法であるが、これに限定されず、貫入時には水などの噴射はなく、引抜き時に高圧噴射ノズル管10、10から水を噴射し、最下部に付設される固化材供給管9から固化材を吐出するようにしてもよい。
【0018】
本発明の高圧噴射ノズル管10は、交差噴流式固化処理杭造成工法にも適用できる。この場合、地上において、ノズル部1の基管部3へのねじ込み度合いを調整する他、切削長で上手く交差するよう噴射角度も予め調整しておく。本発明の高圧噴射ノズル管10は固化処理杭造成工程において、セメントミルク等の固化材を噴射する場合と、水を噴射する場合があるが、この場合、地上の固化材供給手段と水供給手段に接続する分岐配管途中に切り換え弁等を設け、適宜の制御手段で切換等の制御を行えばよい。本発明の固化処理杭造成装置は、攪拌翼を有するものは高圧噴射ノズル管の長さを攪拌翼の片側長さと同じにできるため、攪拌翼長さと切削長の合計長さの例えば直径1,400〜3,000mmの固化処理杭が造成でき、攪拌翼の無いものは例えば直径600〜1,400mmの固化処理杭が造成できる。攪拌翼の無いものは大型機械の搬入が困難な狭い場所に好適である。
【0019】
【発明の効果】
本発明の高圧噴射ノズル管を用いれば、ノズルの複雑な角度調整を必要とせず、既存の高圧ポンプをそのまま使用することができるため、固化処理杭の出来上がり径の変更の要望に容易に対応できる。また、施工条件に最適な出来上がり径の造成の要望に容易に対応でき、経済的な施工となる。特に水平噴流式固化処理杭造成工法においては、簡単なノズルのねじ込み調整のみで行える点で好適である。また、本発明の高圧噴射ノズル管を拡散噴流となるように調整し、小径の固化処理杭を造成する場合、切削幅を大きくすることができ、造成速度を高めることができて経済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における高圧噴射ノズル管の一部の概略断面である。
【図2】図1のA−A線に沿って見た図である。
【図3】本発明の実施の形態における高圧噴射ノズル管の一部の概略断面である。
【図4】本発明の実施の形態における固化処理杭造成装置の一部の概略図である。
【図5】従来の高圧噴射ノズル管の一部の概略図である。
【符号の説明】
1、51 ノズル部
2 ノズル口径調整部材
3、53 基管部
4 ロックナット
6 放射状リブ
7 隙間
9 固化材供給管
10、50 高圧噴射ノズル管
11 テーパ面状の内径部
12 ノズル口径部
13 後側内径部
14 雄螺子部
15 ナット部
16 外周面のシール部
21 針状部
22 棒状本体部
23 ノズル口径調整部材の先端
31 雄螺子部
32 内周面部
40 固化処理杭造成装置
41 回転軸
L1、L3 切削長
W1、W2 切削幅
Claims (4)
- 内周面には先端方向へ縮径するテーパ面状の内径部を少なくとも有し、外周面には雄螺子部を有するノズル部と、一端側の内周面に該ノズル部の雄螺子部と螺合する雌螺子部を有し、他端側が高圧液状物供給手段に接続される管状の基管部と、先端が前記ノズル部の先端近傍に位置する先細りの針状部を有し、軸心が前記基管部の軸心と合致するように該基管部の管状内に固定されるノズル口径調整部材とを備えるものであって、固化処理杭の造成に使用されることを特徴とする高圧噴射ノズル管。
- 前記ノズル部の雄螺子部に螺合し、該ノズル部を前記基管部にロックするロックナットを更に備えることを特徴とする請求項1記載の高圧噴射ノズル管。
- 前記高圧液状物が、高圧のセメントミルク又は高圧の水であることを特徴とする請求項1又は2記載の高圧噴射ノズル管。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の高圧噴射ノズル管を付設してなることを特徴とする固化処理杭造成装置。
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