JP3912191B2 - 光ピックアップ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オプチカルベース上で対物レンズを取り付けたレンズホルダーを複数本(4本)のサスペンションワイヤを介してサスペンションに揺動自在に支持して、レンズホルダーと一体に対物レンズを光ディスクに対してフォーカス方向及びトラッキング方向に揺動させる光ピックアップ装置において、対物レンズの光軸が光ディスクの信号面に対して略垂直な姿勢を取るようにチルト調整できる光ピックアップ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
音声信号,映像信号,データ信号などの各種の情報信号を高密度に記録及び/又は再生できる光ディスクは、光ディスクドライブ内に移動自在に設けた光学ピックアップ装置により信号面上の所望の記録トラックを高速にアクセスできることから多用されている。
【0003】
この際、上記した光学ピックアップ装置は、半導体レーザーから出射したレーザー光を対物レンズにより絞り込んで光スポットを得て、この光スポットを光ディスクの信号面上の記録トラックに照射し、且つ、信号面の反射膜で反射された戻り光をフォトディテクタにより検出して情報信号を再生している。尚、情報信号を光ディスクの信号面上に記録する場合にはレーザーパワーの強い記録用の光スポットを信号面上に照射し、一方、記録済みの情報信号を再生する場合にはレーザーパワーの弱い再生用の光スポットを信号面上に照射している。
【0004】
ところで、光ディスクに情報信号を記録及び/又は再生する際に、光ディスクの信号面に対する対物レンズの光軸は、光学的な収差等を抑制する上から正確に垂直状態となっていることが好ましいが、光ピックアップの組み立て誤差等に起因して上記したような正確な垂直状態を確保することはかなり困難なので、光ディスクに対して対物レンズの光軸の傾きを調整するためのチルト調整機構が要求されるようになった。
【0005】
図1は従来例における一例のチルト調整機構を備えた光ピックアップ装置を示した斜視図である。
【0006】
図1に示した如く、従来例における一例のチルト調整機構を備えた光ピックアップ装置10Aでは、基台となるオプチカルベース11が絶縁性を有する樹脂材を用いて成形加工により一体的に形成されている。このオプチカルベース11の上面11aは不図示の光ディスクの信号面と略平行に形成されており、この上面11aの前方に上面11aより一段下がってガイドレール支持部11bが形成され、且つ、このガイドレール支持部11bに不図示の光ディスクドライブ内に設けたガイドレールGRが摺動自在に嵌合することで、オプチカルベース11が後述する対物レンズ13を取り付けたレンズホルダー14と一体に不図示の光ディスクの径方向に移動可能になっている。
【0007】
上記したオプチカルベース11の上面11a上には、軟磁性鋼板などを用いて形成したヨークベース12の平坦面12aが取り付けられており、且つ、この平坦面12aの上方に対物レンズ13を取り付けたレンズホルダー14が上下左右合計で4本のサスペンションワイヤ15を介してサスペンション16に揺動自在に支持されている。
【0008】
より具体的には、まず、上記したヨークベース12は、レンズホルダー14を挟んだ前後に一対の第1ヨーク部12b,12cが平坦面12aから上方に向かって切り起こし形成されていると共に、レンズホルダー14内で対物レンズ13を挟んだ前後に貫通して略矩形状に形成した一対の貫通孔14a,14b内に一対の第2ヨーク部12d,12eが上方に向かって切り起こされて進入している。
【0009】
また、ヨークベース12の平坦面12aには、対物レンズ13の下方にレーザー光通過用の貫通孔12fが穿設されている。更に、ヨークベース12に形成した一対の第1ヨーク部12b,12cの内側に一対のマグネット17,17が固着されており、且つ、一対のマグネット17,17は一対の第2ヨーク部12d,12eにそれぞれ対向している。
【0010】
次に、レンズホルダー14は絶縁性を有する樹脂材を用いて小型軽量に直方形状に形成されており、中心部に形成した不図示の対物レンズ取付用段付き孔内の上方部位に対物レンズ13が接着剤などにより取り付けられていると共に、直方形状の外周部位に沿ってフォーカスコイル18が巻回しながら接着剤などにより固着され、且つ、一対のマグネット17,17と対向する外周部位側に前後2個づづで合計4個のトラッキングコイル19が接着剤などにより固着されている。
【0011】
次に、サスペンション16は絶縁性を有する樹脂材を用いてコ字枠状に形成されており、且つ、サスペンション16はヨークベース12の平坦面12aの上方でこのヨークベース12に形成した一対の第1ヨーク部12b,12cのうちで後方の第1ヨーク部12cにネジ20を用いて固着されている。
【0012】
そして、上下左右合計で4本のサスペンションワイヤ15は、半田付け可能な導電性を有する線材を用いてレンズホルダー14とサスペンション16との間で不図示の光デイスクの信号面に対して略平行に配置されている。また、4本のサスペンションワイヤ15の各一端部側をレンズホルダー14の左右側面の上下に突出形成した4本の凸部14cにそれぞれ支持させると共に、各一端部側の先端部位をレンズホルダー14の左右側面の上下に圧入した4本の導電性ピン21にフォーカスコイル18の端部又はトラッキングコイル19の端部と一緒に半田付けし、且つ、各一端部側と反対側の各他端部をサスペンション16の左右側面側の上下にそれぞれ支持させると共に、各他端部の先端部位をサスペンション16の後面に固着させた配線基板22にそれぞれ半田付けしている。
【0013】
尚、レンズホルダー14を半田付けに対して耐熱性を有する樹脂材を用いて成形した場合には、レンズホルダー14の左右側面の上下に4本の導電性ピン21を圧入せずに、4本の導電性ピン21に代えてレンズホルダー14の左右側面の上下にレンズホルダー14と一体に4本の端子(図示せず)を突出させ、各端子にフォーカスコイル18の端部又はトラッキングコイル19の端部を予めからませた上で、フォーカスコイル18の端部又はトラッキングコイル19の端部と一緒にサスペンションワイヤ15の各一端部を半田付けする方法もある。
【0014】
従って、フォーカスコイル18及びトラッキングコイル19は4本のサスペンションワイヤ15のいずれかを介して配線基板22に電気的に接続され、更に、配線基板22から4本のケーブル23を介してオプチカルベース11に形成したガイドレール支持部11bと略直交する側面11cに沿って略垂直に取り付けたコネクタ回路基板24に電気的に接続され、信号源側のコネクタ(図示せず)をコネクタ回路基板24に取り付けたコネクタ25に接続することで、フォーカスコイル18及びトラッキングコイル19にフォーカス駆動電流及びトラッキング駆動電流が供給されるようになっている。
【0015】
これにより、フォーカスコイル18及びトラッキングコイル19に各駆動電流を供給すると、一対の第1ヨーク部12b,12cに固着した一対のマグネット17,17と、一対の第2ヨーク部12d,12eとの間に発生する磁界により、レンズホルダー14に取り付けた対物レンズ13が4本のサスペンションワイヤ15を介して不図示の光ディスクに対してフォーカス方向FO及びトラッキング方向TRに揺動自在になっている。
【0016】
更に、オプチカルベース11の側面11c側で上方に向かって突出形成した板バネ支持台11d上にチルト調整用板バネ26が固着されており、このチルト調整用板バネ26の先端部位から下方に向かって折り曲げ形成した折り曲げ部26aがヨークベース12の平坦面12a上に常に当接している。そして、オプチカルベース11の裏面側に設けた不図示のチルト調整用ネジでヨークベース12の裏面側を、ヨークベース12の平坦面12aに当接しているチルト調整用板バネ26の付勢力に抗して押し上げて、レンズホルダー14に取り付けた対物レンズ13の光軸Kが不図示の光ディスクの信号面に対して略垂直な姿勢を取るようにチルト調整を行った後、樹脂材を用いて成形した化粧カバー27をレンズホルダー14の上方部位に嵌め込んでいる。
【0017】
尚、ここでの図示を省略するものの、オプチカルベース11の裏面側には、レーザー光を対物レンズ13側に出射する半導体レーザーと、半導体レーザーからのレーザー光をビームスプリッタを介して対物レンズ13で絞り込んで得た光スポットを光ディスクの信号面に照射し、この信号面の反射膜で反射された戻り光を対物レンズ13,ビームスプリッタを介して検出して情報信号を再生するフォトディテクタなどが設けられている。
【0018】
更に、光ピックアップ装置の小型化,高性能化,生産性などを図る場合には、オプチカルベース11の裏面側に、レーザー光を出射する半導体レーザー,光ディスクからの戻り光を回折するホログラム素子,ホログラム素子で回折した戻り光を検出するフォトディテクタなどを一体的に集積したホログラムデバイスが設けられている。
【0019】
次に、図2は従来例における他例のチルト調整機構を備えた光ピックアップ装置を示した断面図である。
【0020】
図2に示した如く、従来例における他例のチルト調整機構を備えた光ピックアップ装置60では、基台となるオプチカルベース61の枠内部61aに、レーザー光を出射させる半導体レーザー62と、半導体レーザー62からのレーザー光を反射して後述する対物レンズ65を介して光ディスクD側に向けて立ち上げる立ち上げミラー63とが設けられている。
【0021】
また、オプチカルベース61の上面61bから上方に向けて突出形成した部位に凹状球面部61cが対物レンズ65の中心点LOを中心として半径Rで形成され、且つ、この凹状球面部61cの中心部に半導体レーザー62からのレーザー光を通過させるための貫通孔61c1が穿設されている。
【0022】
一方、オプチカルベース61の上面61bの上方には、樹脂材を用いて枠状に形成した可動部枠体64が配置されている。そして、可動部枠体64の上面64a上には、対物レンズ65を対物レンズ取付用段付き孔66a内に取り付けたレンズホルダー66が上下左右で合計4本(上下2本のみ図示)のサスペンションワイヤ67を介してサスペンション68に揺動自在に支持されている。
【0023】
また、可動部枠体64内で対物レンズ65の下方には、下面64bから下方に向けて突出形成した凸状球面部64cが対物レンズ65の中心点LOを中心として略半径Rで形成され、且つ、この凸状球面部64cの中心部に半導体レーザー62からのレーザー光を通過させるための貫通孔64c1が穿設されている。
【0024】
そして、オプチカルベース61に形成した凹状球面部61cと、可動部枠体64に形成した凸状球面部64cとでチルト機構が構成され、オプチカルベース61の凹状球面部61c上に可動部枠体64の凸状球面部64cを摺動可能に嵌合させて、対物レンズ65の光軸Kが光ディスクDの信号面に対して略垂直な姿勢を取るように可動部枠体64の凸状球面部64cをオプチカルベース61の凹状球面部61c上でチルト方向に3次元的に変位させることにより、可動部枠体64の傾斜角をチルト調整した後に、オプチカルベース61の上面61bと可動部枠体64の下面64bとの間に接着剤69を挿入して両者61,64をチルト調整した状態で接着して固定している。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図2に示した従来例における他例のチルト調整機構を備えた光ピックアップ装置60では、前述したように、オプチカルベース61に形成した凹状球面部61c上に、可動部枠体64に形成した凸状球面部64cを摺動可能に嵌合させて、対物レンズ65の光軸Kが光ディスクDの信号面に対して略垂直な姿勢を取るように可動部枠体64の傾斜角をチルト調整した後に、オプチカルベース61の上面61bと可動部枠体64の下面64bとの間に接着剤69を挿入して両者61,64をチルト調整した状態で接着して固定しているものの、接着による固定方法はチルトする方向(上下方向)に接着剤69を塗布しているために、接着剤69の経時変化による収縮や、接着剤69の温度変化による収縮に起因する応力変化がチルト方向(上下方向)に生じるために、チルト調整後に対物レンズ65のチルト角度がずれてしまう問題が発生している。
【0027】
そこで、簡単な構造で光ディスクの信号面に対して対物レンズを確実にチルト調整できる光ピックアップ装置が望まれている。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、請求項1記載の発明は、対物レンズを取り付けたレンズホルダーを複数本のサスペンションワイヤを介して可動部枠体内に揺動自在に支持し、且つ、前記可動部枠体内で前記対物レンズの下方に形成した凸状球面部をオプチカルベースに形成した凹状球面部上に摺動可能に嵌合させて、前記対物レンズの光軸が光ディスクの信号面に対して略垂直な姿勢を取るように前記可動部枠体の凸状球面部を前記オプチカルベースの凹状球面部上で変位させることにより前記可動部枠体の傾斜角をチルト調整した上でこの可動部枠体の外側面を前記オプチカルベース上に接着剤を用いて固着させた光ピックアップ装置において、
前記傾斜角をチルト調整した前記可動部枠体中で前記光ディスクの信号面に対して略垂直に設けた外側面と、前記オプチカルベース上で前記可動部枠体の外側面よりも外側に前記光ディスクの信号面に対して略垂直に設けた固定壁との間を前記接着剤を用いて接着したことを特徴とする光ピックアップ装置である。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る光ピックアップ装置の一実施例を図3乃至図8を参照して<第1実施例>,<第2実施例>の順に詳細に説明する。
【0031】
<第1実施例>
図3は本発明に係る第1実施例の光ピックアップ装置を示した斜視図、
図4は本発明に係る第1実施例の光ピックアップ装置において、対物レンズを取り付けたレンズホルダーをチルト調整した状態で4本のサスペンションワイヤに半田付けした場合を示した斜視図、
図5は本発明に係る第1実施例の光ピックアップ装置において、対物レンズを取り付けたレンズホルダーをチルト調整する際に、レンズホルダーの側面に取り付けた4本の端子と4本のサスペンションワイヤとの位置関係を説明するために模式的に示した側面図であり、(a)はレンズホルダーが回動不可能状態を示し、(b),(c)はレンズホルダーが回動可能状態を示した図である。
【0032】
図3及び図4に示した本発明に係る第1実施例の光ピックアップ装置10Bは、先に図1を用いて説明した従来例における一例の光ピックアップ装置10Aの構成と一部を除いて同様の構成であり、ここでは説明の便宜上、先に示した構成部材に対しては同一の符号を付し、且つ、先に示した構成部材は必要に応じて適宜説明し、従来と異なる構成部材に新たな符号を付して従来と異なる点を中心にして説明する。
【0033】
図3及び図4に示した如く、本発明に係る第1実施例の光ピックアップ装置10Bでは、先に図1を用いて説明した従来例における一例の光ピックアップ装置10Aと同様に、オプチカルベース11の上面11a上で対物レンズ13を取り付けたレンズホルダー14を複数本(4本)のサスペンションワイヤ15を介して不図示の光ディスクに対してフォーカス方向FO及びトラッキング方向TRに揺動させているものの、従来例における一例の光ピックアップ装置10Aと異なる点を説明すると、オプチカルベース11の上面11a上には板バネ支持台11dは形成されてなく、これに伴って板バネ支持台11d上に固着するチルト調整用板バネ26も設けられていない。
【0034】
また、ヨークベース12の後方に切り起こした第1ヨーク部12cにサスペンション16がネジ20を用いて固着されてなく、このサスペンション16に代えてオプチカルベース11の上面11aの後方にサスペンション部11eがコ字枠状に一体的に形成されており、これにより、オプチカルベース11に形成したサスペンション部11eの寸法精度を確保できる。
【0035】
尚、この第1実施例において、図1を用いて説明した従来例と同様に、オプチカルベース11に対して別体のサスペンション16をヨークベース12の第1ヨーク部12cにネジ20を用いて固着させた場合でも適用可能である。
【0036】
また、対物レンズ13を取り付けるためのレンズホルダー14は、半田付けに対して耐熱性及び絶縁性を有する樹脂材を用いて成形加工により形成されている。このレンズホルダー14は、左右側面の上下に従来例で説明したような4本の凸部14c及び4本の導電性ピン21が設けられてなく、これらに代えてレンズホルダー14の左右側面の上下に4本の端子14dが対物レンズ13の略中心位置に合わせてレンズホルダー14と一体に左右側面から突出して設けられている。そして、レンズホルダー14の左右側面の上下に突出させた4本の端子14dのいずれかに、フォーカスコイル18の端部及びトラッキングコイル19の端部を予めからませている。
【0037】
ここで、第1実施例では、対物レンズ13を取り付けたレンズホルダー14を、4本のサスペンションワイヤ15を介してオプチカルベース11に形成したサスペンション部11eに揺動自在に支持する際に、4本のサスペンションワイヤ15を不図示の光デイスクの信号面に対して略平行に配置すると共に、4本のサスペンションワイヤ15の各他端部をサスペンション部11eの左右側面側の上下にそれぞれ充填したダンピング材28及び接着材29で固着した状態で、各他端部の先端部位をサスペンション部11eの後面に接着剤で固着させた配線基板22にそれぞれ半田付けしている。
【0038】
この後、レンズホルダー14の傾斜角を後述するように予めチルト調整した上で、4本のサスペンションワイヤ15の各一端部をレンズホルダー14の左右側面の上下に突出させた4本の端子14dに予めからませたフォーカスコイル18の端部及びトラッキングコイル19の端部と一緒に半田付けするにあたって、4本のサスペンションワイヤ15の各一端部をレンズホルダー14の左右側面の上下に突出させた4本の端子14dの先端部端面のところで半田付けするか、又は、導電性ペーストを用いて接合したことを特徴としている。これにより、4本のサスペンションワイヤ15のいずれかにフォーカスコイル18及びトラッキングコイル19が電気的に接続されるようになっている。
【0039】
この際、4本のサスペンションワイヤ15の各一端部をレンズホルダー14の左右側面の上下に突出させた4本の端子14dのところで半田付けする前に、図5(a)〜(c)に示した如く、レンズホルダー14に取り付けた対物レンズ13の光軸Kを不図示の光ディスクの信号面に対して略垂直な姿勢を取るようにレンズホルダー14の中心点LHOを中心としてレンズホルダー14を回動させる必要がある。
【0040】
具体的に説明すると、図5(a)に示した状態は、対物レンズ13を取り付けたレンズホルダー14がチルト方向に回動不可能な状態を示している。即ち、対物レンズ13を取り付けたレンズホルダー14を、このレンズホルダー14の中心点LHOを中心にしてチルト方向(上下方向)に傾ける際に、4本のサスペンションワイヤ15の各一端部をレンズホルダー14の左右側面の上下に突出させた4本の端子14dのうちで延出した部位の上下で半田付けしようとすると、4本のサスペンションワイヤ15は不図示の光デイスクの信号面に対して略平行になるようにオプチカルベース11のサスペンション部11eに予め支持されているため、レンズホルダー14のチルト方向(上下方向)への回動時に、4本のサスペンションワイヤ15の各一端部は端子14dのうちで延出した部位によって上方に押し上げられて(又は下方に押し下げられて)変形してしまうか、あるいは、端子14dのうちで延出した部位から遠ざかってしまい半田付けが困難になってしまう。
【0041】
そこで、この第1実施例では、図5(b),(c)に示した如く、対物レンズ13を取り付けたレンズホルダー14をチルト方向に回動可能な状態にしている。即ち、レンズホルダー14の左右側面の上下に突出させた4本の端子14dの先端部に、レンズホルダー14の中心点LHOを中心にして半径rで先端部円弧状端面14d1を成形加工により形成している。そして、4本のサスペンションワイヤ15の各一端部を4本の端子14dの各先端部円弧状端面14d1の外側に配置すれば、4本のサスペンションワイヤ15の各一端部が4本の端子14dに当接することなく、レンズホルダー14を中心点LHOを中心にしてチルト方向に回動できるので、例えば図5(c)に示したようにレンズホルダー14に取り付けた対物レンズ13の光軸Kが不図示の光ディスクに対してθだけ傾いている場合には、図5(b)に示したように対物レンズ13の光軸Kが不図示の光ディスクに対して略垂直な姿勢を取るようにレンズホルダー14の傾斜角をチルト調整した後に、4本のサスペンションワイヤ15の各一端部を4本の端子14dの各先端部円弧状端面14d1のところで半田付けできる。
【0042】
尚、4本のサスペンションワイヤ15の各一端部を4本の端子14dの各先端部円弧状端面14d1のところで導電性ペーストを用いて接合しても良い。
【0043】
従って、第1実施例の光ピックアップ装置10Bによれば、特別なチルト調整機構をオプチカルベース11上に設ける必要がないために、光ピックアップ装置10Bを安価に提供できる。
【0044】
尚、上記した第1実施例では半田付けに対して耐熱性を有する樹脂材を用いてレンズホルダー14を成形し、且つ、このレンズホルダー14の左右側面の上下に突出させた4本の端子14dを一体成形して、4本の端子14dのいずれかにフォーカスコイル18の端部及びトラッキングコイル19の端部を予めからませることで4本のサスペンションワイヤ15の各一端部を4本の端子14dの先端部円弧状端面14d1のところで電気的に接続した場合を説明したが、これに限ることなく、レンズホルダー14を耐熱性のない樹脂材で成形した場合には、4本の端子14dを一体成形せずにこれに代えて4本の導電性端子(図示せず)をレンズホルダー14の左右側面の上下に圧入して突出させ且つ各導電性端子の先端に先端部円弧状端面を形成して上記と同じく配置すれば、レンズホルダー14をチルト調整した状態で4本の導電性端子の先端部円弧状端面に4本のサスペンションワイヤ15を電気的に接続できると共に、4本の導電性端子にフォーカスコイル18の端部及びトラッキングコイル19の端部も電気的に接続できる。
【0045】
尚更に、上記した第1実施例では、レンズホルダー14をチルト調整した状態で4本のサスペンションワイヤ15の各一端部を上記した4本の端子14dの先端部円弧状端面14d1のところでフォーカスコイル18の端部及びトラッキングコイル19の端部と一緒に半田付けるか、又は、導電ペーストを用いて電気的に接合しているが、これに限ることなく、フォーカスコイル18及びトラッキングコイル19を接合するために上記とは別の4本の端子をレンズホルダー14の左右側面の上下に追加して設けた場合には、レンズホルダー14をチルト調整した状態で4本のサスペンションワイヤ15の各一端部を上記した4本の端子14dの先端部円弧状端面14d1のところで接着剤を用いて接合すると共に、4本のサスペンションワイヤ15の各一端部の先端を別の4本の端子にフォーカスコイル18及びトラッキングコイル19と一緒に半田付けしても良い。
【0046】
<第2実施例>
図6は本発明に係る第2実施例の光ピックアップ装置を示した斜視図、
図7は本発明に係る第2実施例の光ピックアップ装置において、対物レンズを取り付けたレンズホルダーを4本のサスペンションワイヤを介して可動部枠体内に揺動自在に支持した状態で可動部枠体をチルト調整した後に、可動部枠体をオプチカルベース上に接着材を用いて接着した状態を示した斜視図、
図8は本発明に係る第2実施例の光ピックアップ装置において、オプチカルベースと可動部枠体とに形成したチルト調整機構を説明するための断面図である。
【0047】
図6及び図7に示した本発明に係る第2実施例の光ピックアップ装置10Cは、先に図1を用いて説明した従来例における一例の光ピックアップ装置10Aと、先に図2を用いて説明した従来例における他例の光ピックアップ装置60とを組み合わせて構成したものであり、ここでは説明の便宜上、先に示した構成部材に対しては同一の符号を付し、且つ、先に示した構成部材は必要に応じて適宜説明し、従来と異なる構成部材に新たな符号を付して従来と異なる点を中心にして説明する。
【0048】
図6及び図7に示した本発明に係る第2実施例の光ピックアップ装置10Cでは、先に図1を用いて説明した従来例における一例の光ピックアップ装置10Aに対して先に図2を用いて説明した従来例における他例の光ピックアップ装置60の技術的思想を適用している。
【0049】
この第2実施例では、オプチカルベース11の上面11aの上方に配置した可動部枠体41を樹脂材を用いて枠状に形成すると共に、この可動部枠体41の上面41aが開口され、且つ、後方部位にサスペンション部41bが一体的に形成されている。
【0050】
そして、可動部枠体41内に、対物レンズ13を取り付けたレンズホルダー14を複数本(4本)のサスペンションワイヤ15を介してサスペンション部41bに支持し、且つ、レンズホルダー14に取り付けた対物レンズ13が不図示の光ディスクに対してフォーカス方向FO及びトラッキング方向TRに揺動自在になっている。
【0051】
この第2実施例で可動部枠体41を適用するに伴って、先に図1を用いて説明した従来例における一例の光ピックアップ装置10Aと異なる点を説明すると、オプチカルベース11の上面11a上にヨークベース12が設けられてなく、これに代わってコ字状に折り曲げた一対のヨーク材43,43が可動部枠体41の前方部位と後方のサスペンション部41bに下面41e側から上面41a側に向かって圧入などにより固着されている。そして、一対のヨーク材43,43はコ字状に折り曲げた各一方の片に一対のマグネット17,17が固着され、且つ、各一方の片と対向する各他方の片がレンズホルダー14内で対物レンズ13を挟んだ前後に貫通して略矩形状に形成した一対の貫通孔14a,14b内に進入している。更に、ヨークベース12の上方には別体のサスペンション16が設けられてなく、これに代わって可動部枠体41内にサスペンション部41bが一体的に形成されている。
【0052】
そして、4本のサスペンションワイヤ15の各一端部をレンズホルダー14の左右側面の上下に突出形成した4本の凸部14cにそれぞれ支持させると共に、各一端部側の先端部位をレンズホルダー14の左右側面の上下に圧入した4本の導電性ピン21にフォーカスコイル18の端部又はトラッキングコイル19の端部と一緒に半田付けし、且つ、各一端部側と反対側の各他端部をサスペンション部41bの左右側面側の上下にそれぞれに充填したダンピング材44及び接着材45で固着した状態で支持させると共に、各他端部の先端部位をサスペンション部41bの後面に接着剤で固着させた配線基板22にそれぞれ半田付けしている。
【0053】
尚、この第2実施例でも、先に図1を用いて説明した従来例と同様に、レンズホルダー14を半田付けに対して耐熱性を有する樹脂材を用いて成形した場合には、レンズホルダー14の左右側面の上下に4本の導電性ピン21を圧入せずに、4本の導電性ピン21に代えてレンズホルダー14の左右側面の上下にレンズホルダー14と一体に4本の端子(図示せず)を突出させ、各端子にフォーカスコイル18の端部又はトラッキングコイル19の端部を予めからませた上で、フォーカスコイル18の端部又はトラッキングコイル19の端部と一緒にサスペンションワイヤ15の各一端部を半田付けする方法もある。
【0054】
また、図8に断面して示した如く、オプチカルベース11の上面11a上には、凹状球面部11hが対物レンズ13の中心点LOを中心として半径Rで形成され、且つ、この凹状球面部11hの中心部にレーザー光を通過させるための貫通孔11h1が穿設されている。
【0055】
また、可動部枠体41内で対物レンズ13の下方には、下面41eから下方に向けて突出形成した凸状球面部41fが対物レンズ13の中心点LOを中心として略半径Rで形成され、且つ、この凸状球面部41fの中心部にレーザー光を通過させるための貫通孔41f1が穿設されている。
【0056】
そして、オプチカルベース11に形成した凹状球面部11hと、可動部枠体41に形成した凸状球面部41fとでチルト機構が構成され、オプチカルベース11の凹状球面部11h上に可動部枠体41の凸状球面部41fを摺動可能に嵌合させて、対物レンズ13の光軸Kが不図示の光ディスクの信号面に対して略垂直な姿勢を取るように可動部枠体41の凸状球面部41fをオプチカルベース11の凹状球面部11h上でチルト方向に3次元的に変位させて、可動部枠体41の傾斜角をチルト調整した後に、傾斜角をチルト調整した可動部枠体41中で光ディスクの信号面に対して略垂直に設けた左右の外側面41c,41dの各上方部位と、オプチカルベース11の上面11a上で可動部枠体41の左右の外側面41c,41dよりも外側に光ディスクの信号面に対して略垂直に設けた左右の固定壁11f,11gの各上方部位との間に接着材42を用いて接着して固定している。この際、オプチカルベース11上に形成した固定壁11f,11gの各上方部位は、可動部枠体41の左右の外側面41c,41dの上方部位を接着し易いように外側面41c,41d側のコーナ部位を図示のように一段くぼませている。
【0057】
従って、可動部枠体41の左右の外側面41c,41dの各上方部位と、オプチカルベース11の上面11a上の左右に垂設した固定壁11f,11gの各上方部位との間に接着材42が充填されることで、図2に示した従来例における他例の光ピックアップ装置60の場合と異なって、接着材42の経時変化による収縮や、接着材42の温度変化による収縮に起因する接着材42の収縮方向がチルト方向(上下方向)に対して略直交した左右方向に生じ、この接着材42の収縮方向は可動部枠体41のオプチカルベース11への回動方向に対して影響しない方向であるために、チルト調整後に対物レンズ13のチルト角度がずれてしまう問題が激減するので、光ピックアップ装置10Cへの品質向上及び信頼性向上に寄与できる。
【0058】
この後、樹脂材を用いて成形した化粧カバー46(図6)をレンズホルダー14の上方部位に嵌め込んでいる。
【0059】
尚、第1,第2実施例では、揺動可能なレンズホルダー14にフォーカスコイル18及びトラッキングコイル19を固着させることでムービングコイル方式(MC方式)を適用した場合について説明したが、これに限ることなく、図示を省略するものの、固定部側となるオプチカルベース11側にフォーカスコイル及びトラッキングコイルが固着され、且つ、可動部側となるレンズホルダー側にマグネットが固着されたムービングマグネット方式(MM方式)を適用した場合でも、本発明の要部となるチルト調整を適用できる。
【0060】
【発明の効果】
以上詳述した本発明に係る光ピックアップ装置において、請求項1記載によると、とくに、対物レンズを取り付けたレンズホルダーを複数本のサスペンションワイヤを介して可動部枠体内に揺動自在に支持し、且つ、可動部枠体内で対物レンズの下方に形成した凸状球面部をオプチカルベースに形成した凹状球面部上に摺動可能に嵌合させて、対物レンズの光軸が光ディスクの信号面に対して略垂直な姿勢を取るように可動部枠体の凸状球面部をオプチカルベースの凹状球面部上で変位させることにより可動部枠体の傾斜角をチルト調整した上でこの可動部枠体の外側面をオプチカルベース上に接着材を用いて固着させるにあたって、傾斜角をチルト調整した可動部枠体中で光ディスクの信号面に対して略垂直に設けた外側面と、オプチカルベース上で可動部枠体の外側面よりも外側に光ディスクの信号面に対して略垂直に設けた固定壁との間を接着剤を用いて接着しているので、この結果、接着材の経時変化による収縮や、接着材の温度変化による収縮に起因する接着材の収縮方向は光ディスクの信号面に対して略直水平な左右方向に生じ、且つ、この接着材の収縮方向は可動部枠体のオプチカルベースへの回動方向に対して影響しない方向であるために、チルト調整後に対物レンズのチルト角度がずれてしまう問題が激減するので、光ピックアップ装置への品質向上及び信頼性向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例における一例のチルト調整機構を備えた光ピックアップ装置を示した斜視図である。
【図2】従来例における他例のチルト調整機構を備えた光ピックアップ装置を示した断面図である。
【図3】本発明に係る第1実施例の光ピックアップ装置を示した斜視図である。
【図4】本発明に係る第1実施例の光ピックアップ装置において、対物レンズを取り付けたレンズホルダーをチルト調整した状態で4本のサスペンションワイヤに半田付けした場合を示した斜視図である。
【図5】本発明に係る第1実施例の光ピックアップ装置において、対物レンズを取り付けたレンズホルダーをチルト調整する際に、レンズホルダーの側面に取り付けた4本の端子と4本のサスペンションワイヤとの位置関係を説明するために模式的に示した側面図であり、(a)はレンズホルダーが回動不可能状態を示し、(b),(c)はレンズホルダーが回動可能状態を示した図である。
【図6】本発明に係る第2実施例の光ピックアップ装置を示した斜視図である。
【図7】本発明に係る第2実施例の光ピックアップ装置において、対物レンズを取り付けたレンズホルダーを4本のサスペンションワイヤを介して可動部枠体内に揺動自在に支持した状態で可動部枠体をチルト調整した後に、可動部枠体をオプチカルベース上に接着材を用いて接着した状態を示した斜視図である。
【図8】本発明に係る第2実施例の光ピックアップ装置において、オプチカルベースと可動部枠体とに形成したチルト調整機構を説明するための断面図である。
【符号の説明】
10B…第1実施例の光ピックアップ装置、
10C…第2実施例の光ピックアップ装置、
11…オプチカルベース、11a…上面、11e…サスペンション部、
11f,11g…固定壁、11h…凹状球面部、
13…対物レンズ、13a…リング状縁部、
14…レンズホルダー、14d…端子、14d1…先端部円弧状端面、
14e…対物レンズ取付用段付き孔、
15…サスペンションワイヤ、
41…可動部枠体、41a…上面、41c,41d…左右の外側面、
41f…凸状球面部、
42…接着材、
K…対物レンズの光軸、
LHO…レンズホルダーの中心点、
LO…対物レズの中心点。
Claims (1)
- 対物レンズを取り付けたレンズホルダーを複数本のサスペンションワイヤを介して可動部枠体内に揺動自在に支持し、且つ、前記可動部枠体内で前記対物レンズの下方に形成した凸状球面部をオプチカルベースに形成した凹状球面部上に摺動可能に嵌合させて、前記対物レンズの光軸が光ディスクの信号面に対して略垂直な姿勢を取るように前記可動部枠体の凸状球面部を前記オプチカルベースの凹状球面部上で変位させることにより前記可動部枠体の傾斜角をチルト調整した上でこの可動部枠体の外側面を前記オプチカルベース上に接着剤を用いて固着させた光ピックアップ装置において、
前記傾斜角をチルト調整した前記可動部枠体中で前記光ディスクの信号面に対して略垂直に設けた外側面と、前記オプチカルベース上で前記可動部枠体の外側面よりも外側に前記光ディスクの信号面に対して略垂直に設けた固定壁との間を前記接着剤を用いて接着したことを特徴とする光ピックアップ装置。
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